鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
ウマ [⸣ʔuma]そこ。{1}中称の指示代名詞。話者から少し離れた所を示す。
ウマ [⸣ʔuma]{2}話題の場所や事柄を指示する。
ウマー [⸣ʔumaː]そこは。中称の⸣ウマ[⸣ʔuma](そこ)に係助詞-ヤ[-ja](は)が付いて、[ʔuma+ja] → [ʔumaː] と音韻変化したもの。
ウマーカマー [ʔu⸢maː⸣kamaː]あちらこちら。方々。いろいろな場所を表す。「其処彼処<そこかしこ>」の義。
ウマアラキカマアラキ [ʔu⸢maʔarakikamaʔara⸣ki]連・副あちらこちらぶらつくさま。ぶらぶらと歩き回ること。あちらこちら歩き回ること。ABCDEFBCDE型の重言。
ウマシーカマシー [ʔu⸢maʃiːkama⸣ʃiː]中途半端に仕事をするさま。腰を入れずに仕事をするさま。本気で仕事をしないさま。そこを手がけ、途中から別の所を手がけるような仕事振り。表面をなでるような仕事ぶり。「そこし、あそこし」の転訛したもの。
ウマシゥカッティ カマシゥカッティ [ʔu⸢masï̥katti⸣ ka⸢masï̥kat⸣ti]こっちぶつかり、あっちぶつかりして。「そこつかえ<閊え>、あそこつかえ<閊え>」の義。あちらこちらに突き当たって支障をきたす。
ウマナシカマナシ [ʔu⸢manaʃikama⸣naʃi]あっちこっちに移すさま。そこに置いたり、あそこに置いたり、工夫して位置を変える。
ウマナディカマナディ [ʔu⸢manadikama⸣nadi]連・副そこを撫でたり、あそこを撫でたりするさま。肌をさすりさすり、大事にするさま。
ウマナリカマナリ [ʔu⸢manarikama⸣nari]連・副落ち着かず頻繁に座席を変えるさま。あちらこちら座席を移すさま。あっち移り、こっち移りするさま。「そこになったり、あそこになったり」の義。
ウマヌ マーラー [ʔu⸢ma⸣nu ⸣maːraː]そこらあたり。その近辺。その辺。
ウマパリカマパリ [ʔu⸢maparikama⸣pari]連・副あっち行ったり、こっち行ったり。あっちこっちうろつくさま。落ち着かず頻繁に歩き回るさま。右往左往するさま。
ウマミー カマミー [ʔu⸢mamiː⸣ ka⸢ma⸣miː]そこをみたり、あそこを見たり。きょろきょろするさま。もの珍しく、せわしく辺りを見回すさま。
ウマミーカマミー [ʔu⸢mamiːkama⸣miː]連・副きょろきょろするさま。あちらを見たり、こちらを見たりするさま。ABCDEBCD型の重言。「そこ見、あそこ見」の転訛したもの。
ウマミリカマミリ [ʔu⸢mamirikama⸣miri]連・副きょろきょろ。落ち着かず、せわしくあたりを見回すこと。情緒不安定な様。
ウマンカマン [⸣ʔumaŋkamaŋ]そこも、あそこも。どこも(何処も)・かしこも(彼処も)。ABCDBC型の重言。
ウマンタ [⸣ʔumanta]そちら。その辺り。そこら辺(中称)。⸣クマンタ[⸣kumanta](こちら。この辺。ここら辺)近称、⸣カマンタ[⸣kamanta](あちら。あの辺。あちら辺)遠称、などの代名詞の一種。
ウマンチュ [ʔu⸢manʧu]衆人。人民。大衆。歌謡語。沖縄本島首里方言の「?umaNcu(御真人・御万人。人民)」からの借用語。「/ウブシクヌ マブルシュー アミブシャヌ/ウブトゥムル カミガナシ アミブシャヌ/ウマンチュヌ ニガイヤ アミブシャヌ/アカカラジヌ ニガイヤ アミブシャヌ/(大グスクの守り神さま、雨が欲しいのです、大友利御嶽の神様、雨が欲しいのです。大衆<人民>の願いは、雨が欲しいのです、百姓の願いは、雨が欲しいのです)」(『雨乞い歌』<トゥムルウガン・ナガミク>)と歌われている
ウミ [⸣ʔumi]海。日常会話では用いない。歌謡語として用いられる。八重山地方に流布しているン⸢ゾーニンブツァー[n⸢ʣoːnimbuʦaː](無蔵念仏節)に/ウヤヌ ウグヌヤ フカキムヌ チチグヌ ウグヌヤ ヤマタカサ ハハグヌ ウグヌヤ ウミフカサ/(親のご恩は深きもの、父御のご恩は山の如く高く、母御のご恩は海のように深い)(『沖縄文化』通巻36・37号、「八重山地方に流布する念仏歌について」)
ウミイシ [⸣ʔumiʔiʃi]{1}珊瑚石。菊目石<海花石>にもいう。ス⸢ブル⸣イシ[su⸢buru⸣ʔiʃi](半球形の珊瑚石、キクメイシ<菊目石>)と同じ。
ウミイシ [⸣ʔumiʔiʃi]{2}海の石。タ⸢カ⸣ビー[tḁ⸢ka⸣biː](高干瀬。島の南南東の干瀬)には海底噴火時に打ち上げられたという海石があったという。鳩間島の⸢グス⸣ク[⸢gusu̥⸣ku](石垣)は、島人がこれらの海石を運んで積み上げたものという
ウミカジ [ʔu⸢mi⸣kaʤi]潮風。「海風」の義。海を渡ってそよいでくる涼しい風。
ウミキ [ʔu⸢mi⸣ki]お神酒。「神酒」に尊敬の接頭辞ウ[ʔu](御)が付いたもの。
ウミザラシ [ʔu⸢miʣara⸣ʃi]海晒し。織り上げた芭蕉布や麻布を海岸の海中で洗って晒すこと。
ウミナーク [ʔumi⸢naːku]ほっとするさま。一安心するさま。精神的に安らぐさま。「思い無く」転訛か。
ウミナーク スン [ʔumi⸢naːku suŋ]ほっとする。ことが成就してほっとする。安心する。「思いなくする」の転訛か。
ウムータ トゥール [ʔu⸢muː⸣ta ⸢tuː⸣ru]思った通り。予想通り。
ウムームティ [⸣ʔumuːmuti]思うほど<愛すれば愛するほど>~。思うにつれて~。思えば思うほど~。
ウムーン [⸣ʔumuːŋ]他動{1}思う。物事について、ある判断を表す。「~長くとぞ於毛布<オモフ>。万、4499」の転訛か。
ウムーン [⸣ʔumuːŋ]他動{2}愛する。心配する。
ウムイ [⸣ʔumui]{1}思い。考え。愛情。いとしく<愛しく>思うこと。動詞⸣ウムーン[⸣ʔumuːŋ](思う)の連用形からの転成名詞。
ウムイ [⸣ʔumui]{2}心配すること。
ウムイアタルン [ʔu⸢muiʔata⸣ruŋ]自動思い当たる。納得する。経験的になるほどと気付く。
ウムイカームイ [ʔu⸢muikaː⸣mui]連・副こう思い、ああ思いすること。思いあぐねるさま。思い悩んで、逡巡すること。
ウムイカイスン [ʔu⸢muikai⸣suŋ]他動思い返す。過去のことを改めて考える。
ウムイガカリ [ʔu⸢muigaka⸣ri]心に留めること。気掛かりなこと。何か変だと思うこと。
ウムイキシ [ʔu⸢mui⸣ki̥ʃi]{PoS_1}思い切り。思い切ること。断念すること。あきらめ。
ウムイキシ [ʔu⸢mui⸣ki̥ʃi]{PoS_2}程度・分量の甚だしいさま。非常に。思う存分。思い切って。力いっぱい。動詞ウ⸢ムイ⸣キスン[ʔu⸢mui⸣ki̥suŋ](思い切る。)の連用形から転成したもの。
ウムイキスン [ʔu⸢mui⸣ki̥suŋ]他動{1}思い切る。決心する。
ウムイキスン [ʔu⸢mui⸣ki̥suŋ]他動{2}諦める。断念する。
ウムイクガリルン [ʔu⸢muikugari⸣ruŋ]自動思い焦がれる。いちずに恋い慕う。
ウムイクガルン [ʔu⸢muikuga⸣ruŋ]自動思い焦がる。恋い慕って思い悩む。一途に恋しく思う。
ウムイクムン [ʔu⸢mui⸣kumuŋ]自動・他動固く決心する。固く信じる。深く愛する。「思い込む」の義。
ウムイザスン [ʔu⸢muiʣa⸣suŋ]他動思い出す(ぞんざいな表現)。丁寧な言い方は、ウ⸢ムインザ⸣スン[ʔu⸢muinʣa⸣suŋ](思い出す)という。
ウムイシギ [ʔu⸢mui⸣ʃigi]思い過ごし。考えすぎ。
ウムイスクン [ʔu⸢mui⸣su̥kuŋ]自動思いつく。気付く。
ウムイタトゥン [ʔu⸢mui⸣tatuŋ]他動思い立つ。ある事をしようと決意する。
ウムイダルン [ʔu⸢mui⸣daruŋ]自動思い疲れる。
ウムイツァーン [ʔu⸢mui⸣ʦaːŋ]惜しい。もったいない(勿体無い)。「思い・痛さ・あり」の転訛したもの。「おめちやさ おもひいたさ」『混効験集』とある。
ウムイツァムン [ʔu⸢mui⸣ʦamuŋ]他動ねたむ(妬む)。心に秘めて恨む。「思い・掴む」の義。[ʔumui]・[ʦukamu]の[ʦ]が[ʧi]となり、次の[k]が前接の狭母音[i]により、口蓋化して[ʧa]と転訛したものが再転訛して[ʦa]となったもの。
ウムイツミルン [ʔu⸢muiʦumi⸣ruŋ]他動思い詰める。一途に思いこむ。深く思い悩む。
ウムイツムン [ʔu⸢mui⸣ʦumuŋ]他動思い詰める。一途に思いこむ。思い悩む。「おもいつむ(思い詰む)下二段活用」の四段活用化し、転訛したもの。
ウムイトゥ アタラヌ [ʔu⸢mui⸣tu ʔa⸢taranu]予想と違って。こちらの思いと対応しない。
ウムイトゥドゥマルン [ʔu⸢muituduma⸣ruŋ]他動考えてある行為をやめる。思いとまる。断念する。
ウムイトゥドゥミルン [ʔu⸢muitudumi⸣ruŋ]他動思いとどめる。断念する。諦める。
ウムイナウムイナ [ʔu⸢mui⸣naʔumuina]思い思いに。
ウムイナガスン [ʔu⸢muinaga⸣suŋ]他動思い流す。思いを水に流す。無かったことにする。忘れ去る。
ウムイナスン [ʔu⸢muina⸣suŋ]他動侮る。嘲る。馬鹿にする。ひどく扱う。
ウムイヌカスン [ʔu⸢muinuka⸣suŋ]他動思い残す。未練を残す。心残りに思う。後悔する。
ウムイヌ トゥール [ʔu⸢nui⸣nu ⸢tuː⸣ru]思いの通り。思い通り。思うまま。
ウムイヌフカ [ʔu⸢mui⸣nuɸuka]思いの外。案外。予想外。
ウムイノースン [ʔu⸢muinoː⸣suŋ]他動思い直す。考え直す。思いを改める。
ウムイブリ [ʔu⸢mui⸣buri]恋狂い。「思い狂れること」の義。⸢クイ⸣ブリ[⸢kui⸣buri](恋狂い)というのが普通。
ウムイ ブン [⸣ʔumui ⸢buŋ]{1}思っている。動詞⸣ウムーン[⸣ʔumuːŋ](思う)の連用形に存在詞⸢ブン[⸢buŋ](居る)が下接して形成された派生動詞。「常に『思う』という属性、慣習を持って存在している」意を表す。
ウムイ ブン [⸣ʔumui ⸢buŋ]{2}愛している。
ウムイムヌ [ʔu⸢mui⸣munu]心配の種。後悔の念。
ウムイヤミ [ʔu⸢mui⸣jami]思い悩むこと。悶々とすること。後悔すること。「~使いも来ねば憶病<オモヒヤム>~。万、3811」の転訛したものか。
ウムインザシッふァ [ʔu⸢muiʔnʣaʃi⸣ffa]出産期が過ぎて思い出したように生まれた子供。
ウムインザシマーキ [ʔu⸢muiʔnʣaʃimaː⸣ki]思い出せずに。思い出すことが出来ないで。思い出し兼ねて。~⸢マー⸣キ[~⸢maː⸣ki](~兼ねて)は接尾語。カ⸢キマー⸣キ[kḁ⸢kimaː⸣ki](書き兼ねて)、トゥ⸢リマー⸣キ[tu⸢rimaː⸣ki](取り兼ねて)のように、動詞の連用形に付いて、~兼ねて<~出来ないで>の意味を表す。
ウムインザスン [ʔu⸢muiʔnʣa⸣suŋ]他動思い出す。丁寧な表現。
ウムカー [ʔu⸢mu⸣kaː]おもかじ(面舵)。航海用語。標準語からの借用語。舳先を右へ曲げるときの舵のとりかた。対語はト⸢リ⸣カー[to⸢ri⸣kaː](取り舵、舳先を左へ向ける)。
ウムカギ [ʔu⸢mu⸣kagi]面影。顔つき。心に浮かぶ顔や姿。
ウムカジ [ʔu⸢mu⸣kaʤi]面影。顔つき。心に思い浮かぶ顔や姿。首里方言から転訛したもの。若年層の使用語彙。
ウムクトゥ [ʔu⸢mu⸣kutu]思慮分別。賢明さ。存分。
ウムクトゥ ナーンムヌ [ʔu⸢mu⸣kutu ⸢naːm⸣ munu]思慮分別のない幼い子供。
ウムシ [ʔu⸢muʃi]おもし(重石)。物を押さえるのに用いるもの。
ウムジ [ʔu⸢mu⸣ʤi](動)イイダコ(飯蛸)。西表島の北岸辺りでよく捕れる。茹でたり煮たりして食する。茹でたイイダコ(飯蛸)の腹にある米粒大の卵がさくさく感を与えて美味である。体長約25センチ。タケノコガイの殻に縄を結わえて浜辺から海中に投げ入れ、手繰り寄せると、貝にしがみついてくる。
ウムジェーマ [ʔumu⸢ʤeː⸣ma](動)小さなイイダコ(飯蛸)。ウ⸢ム⸣ジ[ʔu⸢mu⸣ʤi](イイダコ)に指小辞の⸣-マ[⸣-ma](小さいもの。ガマ{SqBr}gama{/SqBr}<小>の転訛したもの)が付いた形。
ウムシル [ʔu⸢mu⸣ʃiru]連体{1}面白い。楽しい。
ウムシル [ʔu⸢mu⸣ʃiru]連体{2}興味ある。歌謡語。
ウムシルムヌ [ʔu⸢mu⸣ʃirumunu]面白いこと。愉快な事。楽しいこと。歌謡語。「○、心楽也 於毛志呂之」『新撰字鏡』の転訛したもの。話し言葉では、ウ⸢ムッ⸣サン[ʔu⸢mus⸣saŋ](形)(面白い。楽しい)という。/イヤイヤー ユタカナルユヌ シルシサミエー アミヤトゥカグシ カジヤシジカニ シクリムジクイ マンサクソーリバ イヒンカタトゥキ ユダンヤナランサキットゥ キバリヨニセタ ウムシルムヌサミ ナマヌパヤシニ クドゥキユミユミ/(ああ<イヤイヤー>豊かなる御世の兆候というものだ。雨は十日越しに降り、風はそよそよと静かに吹き、稲は稔って<満作して>いるから、一時も片時も油断はできないものだ。きっと頑張れ<気張れ>若者たちよ。愉快な<嬉しい>ことだ。今の囃子に口説きを歌えよ)「鳩間口説」第6連、『鳩間島古典民謡古謡集』、『竹富町史第六巻鳩間島』
ウムター [ʔu⸢mu⸣taː](人名)平民子女の名前。普通は、⸣ムター[⸣mutaː]という。
ウムッサ スン [ʔu⸢mus⸣sa ⸢suŋ]面白がる。「面白く・する」の義。
ウムッサン [ʔu⸢mus⸣saŋ]面白い。見事である。
ウムティ [ʔu⸢mu⸣ti]{1}表。
ウムティ [ʔu⸢mu⸣ti]{2}顔。おもて(面)。上品な感情を表す語。⸣シラ[⸣ʃira](顔。つら<面>)の対義語。(つら、頬「頬、豆良<つら>、一云保保<ほほ>~」『和名抄』)参照。
ウムティ シムン [ʔu⸢mu⸣ti ⸣ʃimuŋ]洗面する。顔を洗う。「おもて<面>・清み」の転訛したものか。
ウムトゥ [ʔu⸢mu⸣tu](地)おもと岳(於茂登岳)。おもと山。石垣島にある沖縄県最高の山。「大本(おおもと)」の義という。
ウムトゥダキ [ʔu⸢mu⸣tudaki](地)山の名。オモトヤマ(於茂登山)。石垣島にある沖縄県最高の山。
ウムナー [ʔu⸢mu⸣naː](動)魚の名。和名、キツネフエフキ(体長約80センチ)。白身魚の最高級魚。⸢クー⸣シビー[⸢kuː⸣ʃibiː](島の西側の干瀬)の⸢ピーヌ⸣クシ[⸢piːnu⸣ku̥ʃi](干瀬の外海)で、タ⸢ティ⸣ナー[tḁ⸢ti⸣naː](一本釣り)をして釣った
ウムナイ イルン [ʔu⸢mu⸣nai ʔi⸢ruŋ]皺を伸ばして入れる。皺を伸ばして畳んで入れる。
ウムニー [ʔu⸢muniː]重荷。重い荷物。標準語からの借用語の転訛したもの。ン⸢ブニー[ʔm⸢buniː](重荷)とも言う。
ウムリ [ʔu⸢muri]おもり(錘)。ちんし(沈子)。釣針や魚網を沈めるために付ける鉛。
ウムル [ʔu⸢mu⸣ru]クバ(ビンロウジュ)の葉やクワズイモの葉で作った水汲み用の柄杓。釣瓶より小型で柄がついている。東村にある⸢アンヌカー[⸢ʔannukaː](東の井戸)はウ⸢リ⸣カー[ʔu⸢ri⸣kaː](下り井戸。鍾乳洞の底へ下りて水汲みをする井戸)であるので、ウ⸢ム⸣ルを水汲み用の柄杓として使用した。
ウムンズン [ʔu⸢munʣuŋ]他動重く見る。大切に扱う。
ウモーザハラーザ [ʔu⸢moː⸣ʣaharaːʣa]思いもかけず。思いもよらず。意外にも。予期しないうちに。
ウモーリン [ʔu⸢moː⸣riŋ]自動思われる。⸣ウムーン[⸣ʔumuːŋ](思う)の未然形に、受身・可能の助動詞⸣リン[⸣riŋ](れる)が下接して形成された受身・可能の派生動詞。
ウモーンムヌ ウモーシ [ʔu⸢moːm⸣munu ʔu⸢moː⸣ʃi]寝た子を起こす。忘れかけていた事を思い出させて悩ませる。「思い悩まずともよいことを思い起こさせる」の義。
ウヤ [⸣ʔuja]親。
ウヤーギルン [ʔu⸢jaːgiruŋ]他動督促する。追い立てる。「追い上げる」の義。石垣方言からの借用語。ア⸢ギマースンとも言う。
ウヤースン [ʔu⸢jaːsuŋ]他動追い上げて不足分の仕事を埋め合わせる。後追いして補充する。不足分を補填する。「追い合わせる」の義か。
ウヤービ [ʔu⸢jaːbi]うわべ。表面。
ウヤーラー [⸣ʔujaːraː]大声で叫ぶ人。絶叫する人。
ウヤーリカヤーリ [ʔu⸢jaː⸣rikajaːri]騒々しいこと。大声をだして騒ぐこと。ABCDEBCD型の重言。
ウヤールン [ʔu⸢jaː⸣ruŋ]自動叫ぶ。大声を出す。
ウヤーンチズン [ʔu⸢jaːnʧi⸣ʣuŋ]他動念願する。祈る。祈念する。期待する。「拝み手摺る」の転訛したものという(『石垣方言辞典』)説があるが、「拝み手擦りおる」が音韻法則に適合するようだ。「先人の余沢にあずかることが出来るよう祈願<念願>する」の意が強い。
ウヤーンツン [ʔu⸢jaːn⸣ʦuŋ]他動念願する。祈る。祈念する。期待する。「拝み手擦る」の転訛したものか。下二段系動詞「擦れる」が「拝み・手」に複合して四段活用化したものか。
ウヤウシ [ʔu⸢ja⸣uʃi]親牛。
ウヤウムイ [⸣ʔujaumui]親思い。孝心の篤い子。
ウヤカール [⸣ʔujakaːru]親代わり。
ウヤカタ [ʔu⸢ja⸣kḁta]親方。親分。カツオ漁業の経営者。自分の仕えている主人。
ウヤガミ [⸣ʔujagami]親神様。島の生みの親なる守り神様。歌謡語。/ヘイヤー ウブトゥムル ホー マブルシュー ヘイヤー ウブシクヌ ホー ウヤガミ/(ヘイヤー<囃子> 大友利嶽 ホー<囃子>の守り神様 ヘイヤー 大グシク<城>の ホー 親神様)(豊年祭の歌、「大友利嶽」の第一連)
ウヤキ [ʔu⸢ja⸣ki]富貴。裕福の家。資産家。「天事、オホヤケコト」『類聚名義抄』の転訛したものか。
ウヤキアカハチ [ʔu⸢ja⸣kiʔakahaʧi](人)十六世紀の初頭に首里王府に対して謀反を起こした八重山の豪族。波照間島から身を起こし、石垣島へ渡って大浜を根拠に勢力を伸ばしたといわれている。
ウヤキ スン [ʔu⸢ja⸣ki ⸢suŋ]金持ちになる。裕福になる。
ウヤキパンジョウ [ʔu⸢ja⸣kipanʤoː]富貴繁盛。裕福で子孫繁盛すること。明治生まれの古老は、ウ⸢ヤ⸣キパンゾー[ʔu⸢ja⸣kipanʣoː]という。
ウヤキフクジン [ʔu⸢ja⸣kiɸu̥kuʤiŋ]大金持ちで子孫繁盛した人。⸣フクジン[⸣ɸu̥kuʤiŋ]は(福人<富裕な人)」『天草本伊曾保物語』の義。
ウヤキプス [ʔu⸢ja⸣kipu̥su]金持ち。金満家。富貴人。
ウヤキミン [ʔu⸢ja⸣kimiŋ]福耳.福相の耳。金持ちになる相の耳。耳たぶの大きな耳。
ウヤキヤー [ʔu⸢ja⸣kijaː]金持ちの家。資産家。
ウヤキョーダイ [⸣ʔujakjoːdai]親兄弟。
ウヤグニ [ʔu⸢ja⸣guni]本国。鳩間島からは蔵元のある石垣島をいい、宮古・八重山からは琉球国王の居られる沖縄本島をさしていう。「親国」の義。
ウヤグヮンス [⸣ʔujagwansu]ご先祖。「親元祖」の意。
ウヤコーコー [⸣ʔujakoːkoː]親孝行。
ウヤザ [ʔu⸢ja⸣ʣa](動)ネズミ(鼠)。「おやんちよ」『琉球戯曲辞典』。鼠を表す琉球方言は、ユムヌ系(宮古諸方言)、ッエンチュ、ウヤンチュ系(沖縄本島、八重山諸方言)、ウヤザ系(八重山諸方言)、ネズミ系(奄美諸方言)のように分布している(『図説琉球語辞典』)。
ウヤザヌ ニンガイ [ʔu⸢jaʣa⸣nu ⸢niŋ⸣gai]鼠駆除の祈願。鼠害が発生すると、友利御嶽において鼠駆除の祈願が執り行われた。その際、ムラヤクサ(村役人)たちが鼠を捕獲して、板やクバの葉柄で作った小舟に乗せ、鶏肉や神酒、花米なども載せて、御嶽での祈願の終了とともに、島の西の崎から外海へ流した。村役人は、小舟を流す際に、ク⸢ヌ⸣ シマー ッ⸢ふァイムヌン ナー⸣ヌ ⸣シマン グ⸢マー⸣ティ ⸣クナーヤ タ⸢タラン⸣バ ⸢インヌホー⸣ナ ⸢マー⸣ビン ユ⸢チク⸣ヌ ク⸢ニヌ⸣ アリ⸢ベー⸣ティ ⸣ウマナ ⸢オー⸣リ タ⸢トー⸣リ[ku⸢nu⸣ ʃimaː f⸢faimunun naː⸣nu ⸣ʃimaŋ gu⸢maː⸣ti ⸣kunaːja tḁ⸢taram⸣ba ⸢ʔinnu hoː⸣na ⸢maː⸣biŋ ju⸢ʧiku⸣nu ku⸢ninu⸣ ʔari⸢beː⸣ti ⸣ʔumana ⸢ʔoː⸣ri tḁ⸢toː⸣ri](この島は、食べ物がありません。島も小さいので、ここでは暮らしていけません<立たれない>ので、西の方に、もっと豊かな国がありますので、そこへ行かれて暮らして行きなされ)と唱えた
ウヤザヌパナ [ʔu⸢jaʣa⸣nupana](植)草の名。オシロイバナ。オシロイバナ科の多年草。夏から秋に数花ずつ集まり咲く。色は白や紅。鳩間島では好まれない花とされ、屋敷内に自生すると引き抜いて捨てた。
ウヤザヤマ [ʔu⸢ja⸣ʣajama]ネズミ捕り器。板ばね(発条)仕掛けのネズミ捕り器が多かった。
ウヤジマ [ʔu⸢ja⸣ʤima]主要な島。統治者のいる島。離島からは石垣島を指していい、宮古、八重山からは沖縄本島を指していう。「親島」の義。
ウヤッふァ [ʔu⸢jaf⸣fa]親子。
ウヤッふァヌ サカシキ [ʔu⸢jaffa⸣nu sḁ⸢kaʃi̥ki]親子の盃。親子の固めの盃。結婚式の時の盃事。新郎は嫁方の両親と、新婦は婿方の両親と親子の固めの盃を交わす。
ウヤティン ッふァティン [⸣ʔujatiŋ f⸢fa⸣tiŋ]親とも子とも。下に打ち消しの陳述を伴って副詞句を作る。
ウヤドゥル [ʔu⸢ja⸣duru]親鳥。
ウヤトゥン ッふァトゥン [⸣ʔujatuŋ f⸢fa⸣tuŋ]親子の間でも。「親とも子とも」の転訛したもの。
ウヤヌ クイヤ カンヌ クイ [ʔu⸢ja⸣nu ⸢kui⸣ja ⸢kan⸣nu ⸣kui]親の声は神の声。⸢親の言うことは神のお告げと同じだ」の義。親の意向には逆らえないの意(諺)
ウヤヌ プリムヌ [ʔu⸢ja⸣nu pu⸢rimunu]親ばか。子煩悩。「親の狂れ者」の義。
ウヤヌ プリムヌ ッふァチクショー [ʔu⸢ja⸣nu pu⸢rimunu⸣ f⸢faʧikuʃoː]親は大の子煩悩で、子供は恩知らずの畜生同然である。親は自分の子供のこととなると善悪の区別を忘れるほどに思うのに、子供は親の気持ちを理解せず畜生同然であるの意。
ウヤヌマイ [ʔu⸢ja⸣numai]み親。親御様。親の敬語。マイ[mai](前)は尊敬の接尾語で、「~様」の意。
ウヤヌヤー [ʔu⸢ja⸣nujaː]実家。里。ウ⸢ヤン⸣ヤー[ʔu⸢jaŋ⸣jaː](実家<親の家>)ともいう。
ウヤパーブジ [⸣ʔujapaːbuʤi]先祖。「親大祖父」の義。曽祖父より上の代の先祖。祖先神となって常に子孫を守護していると信じられている。
ウヤビ [ʔu⸢ja⸣bi]指。手足の指。老年層の言葉。
ウヤピュール [ʔu⸢japjuː⸣ru]祭祀、祈願行事の本日程。「おやひより(親日和)」の義。
ウヤフコー [⸣ʔujaɸu̥koː]親不幸。
ウヤプス [ʔu⸢ja⸣pusu]先祖。「親人」の義か。
ウヤプスヌマイ [ʔu⸢japu̥su⸣numai]ご先祖様。ご仏前。
ウヤ ブラーンッふァ [⸣ʔuja bu⸢raːnffa]孤児。みなしご。「親のいない子」の義。
ウヤブン [ʔu⸢ja⸣buŋ]親分。親方。網元。船主。
ウヤマール [ʔu⸢jamaː⸣ru]琉球国時代の役人。地方巡検使。「親回り」の義。{⸣ウヤ[⸣ʔuja](親。役人)に⸢マー⸣ル[⸢maː⸣ru](回り、巡視、巡見)が結合して形成された複合語(合成語)}。/ウヤマーリヌ オールカージ サンピキアイヌ ユシルカージ パイバタン バタショーリ インダパマ バタショーリ~/(ウヤマール<地方巡検使>がいらっしゃる度に、検地係<算引き合い>がお寄りになる度に、南端<西表島>にお渡しして、伊武田浜へお渡しして~)「バガパトゥマジラマ、第4、5連」『鳩間島古典民謡古謡集』。
ウヤマイクトゥバ [ʔu⸢jamaikutuba]尊敬語。「敬い言葉」の義。
ウヤマイルン [ʔu⸢jamairuŋ]他動敬う。ウ⸢ヤマウンとも言う。
ウヤマウン [ʔu⸢jamauŋ]他動敬う。ウ⸢ヤマイルンとも言う。
ウヤマサリ [ʔu⸢jamasa⸣ri]親勝り。子が親より優れていること。
ウヤミサ [ʔu⸢jami⸣sa]畏れ多いこと。神にお詫びし、お許しを乞うこと。「おやむめさ<恐れ多い>」(『混効験集』)の転訛したもの。
ウヤムトゥ [ʔu⸢jamu⸣tu]親元。親の住むところ。実家。
ウヤムラ [ʔu⸢ja⸣mura]親村。現在の村へ分村して来る前の村。元の村。
ウヤユズリ [⸣ʔujajuʣuri]親譲り。
ウヤンガサ [⸣ʔujaŋgasa]悪性の出来物。背中や肩の後ろにできるよう(廱)。石垣方言からの借用語か。
ウヤンケー [⸣ʔujaŋkeː]親たち。「ウヤヌ・キヤ(複数を表す接尾語)」の融合縮約した形。
ウヤンヤー [ʔu⸢jaŋ⸣jaː]親の家。実家。里。
ウユブン [ʔu⸢jubuŋ]自動{1}及ぶ。あるところに達する。追いつく。
ウユブン [ʔu⸢jubuŋ]自動{2}匹敵する。叶う。
ウヨーンガサ [⸣ʔujoːŋgasa]うなじ(項)の中央のくぼんだ所、「盆の窪」に出来る悪質のおでき(腫れ物)。盆の窪に出来物ができると助からないという
ウヨーンダー [⸣ʔujoːndaː]先祖代々受け継いでいる田地。「親の田」の転訛したものという。
ウラ [⸣ʔura]浦。港。海が湾曲して入りこんだところ。
ウラ [⸣ʔura]蔵元。琉球国時代の八重山全体の行政庁。語源については、(i) 地名(ウラカイジ)起源説『新八重山歴史』、(ii) 浦<港>起源説『八重山方言の素性』、(iii)「蔵元」起源説『八重山語彙』、(iv)「うふわ」(大蔵<ウフクラ>)起源説『宮古島旧記並史歌集解』、『石垣方言辞典』がある。(iii)、(iv) は八重山方言の音韻法則({SqBr}kura{/SqBr} → {SqBr}ffa{/SqBr})に反する。(i) はカイジ省略の理由がなく、推定の域に留まる。(ii) は可能性が高いと考えられる。民謡パ⸢トゥ⸣マナカムリ[pḁ⸢tu⸣manakamuri](鳩間中岡)の第七連/クウラヌ パマカラ カユウピトゥヤ ウラヌ マイヌ ピトゥグクル/(久浦の浜を往来する<通う>人はウラ<蔵元>の前の人の賑わいのようだ)と歌われている。離島各地からの貢納船の発着と、それに伴う人々の往来は港湾を中心にしてなされたものと考えるのが普通であろう
ウラ [⸣ʔura]裏。表と反対側の隠れているところ。
ウラ [⸣ʔura]あなた(貴方)。君。歌謡語としてのみ用いられる。日常会話では用いない。/ウラトゥ バントゥヌ カヨーダ イバミテェーマ ナマニナリ フサバ ムイカバシ/(貴方と私とが人目を忍んで通った狭い小道は、通わない今ではもう草が生い茂っている)『八重山民謡誌』。16世紀初のハングル資料である「語音翻訳」には「'u-ra 汝」(『海東諸国紀』申叔舟、1501年)、15世紀の漢語資料では「烏喇哇 汝」(『琉球館訳語』15世紀半ば)、18世紀の漢語資料に「汝 牙」(『中山伝信録』徐保光1721年)とある。15世紀末の首里方言では、<貴方>を表す語はウラ系の語であった。八重山方言のウラ[ʔura](君)と宮古方言のッヴァ[vva](君)は15世紀の'ura(汝)に繋がる
ウラー ウムティ ナスン [⸣ʔuraː ʔu⸢mu⸣ti ⸣nasuŋ]{1}裏返す。「裏を表になす」の義。
ウラー ウムティ ナスン [⸣ʔuraː ʔu⸢mu⸣ti ⸣nasuŋ]{2}衣類は、⸢カイ⸣シマー[⸢kai⸣ʃimaː](裏返し)というのが 普通。
ウラーウラーシ [ʔuraːu⸢raː⸣ʃi]細かく。極細に。産毛のように細く柔らかく。
ウラー マームテイ [⸣ʔuraː ⸢maːmuti]裏返し。正反対。あべこべ。逆。「裏は真表」の義。
ウラーミサ スン [ʔu⸢raːmi⸣sa ⸢suŋ]羨ましがる。羨ましくする。
ウラーミサン [ʔu⸢raːmi⸣saŋ]羨ましい。
ウラーンタムニ [ʔu⸢raːnta⸣muni]英語。西洋語。「オランダことば<物言い>」の義。首里方言からの転訛。
ウラウムティ [⸣ʔuraʔumuti]裏と表。
ウラガイスン [ʔu⸢ragai⸣suŋ]他動裏返す。ひっくり返す。覆す。
ウラグイ [ʔu⸢ra⸣gui]裏声。普通の発声法では出せないような甲高く脳に響く声。
ウラザ [ʔu⸢ra⸣ʣa]裏座。家の北面にある部屋。ユ⸢コー[ju⸢koː](裏座)ともいう。イ⸢チバンウラ⸣ザ[ʔi⸢ʧibaŋʔura⸣ʣa](一番裏座)、⸢ニーバンウラ⸣ザ[⸢niːbaŋʔura⸣ʣa](二番裏座)があるのが普通である。
ウラスン [ʔu⸢ra⸣suŋ]他動細かく刻む。葉タバコや野菜類を細かく刻む。刃物で細く切る。「Voroxi,su,iota ~大根,山葵などを下ろす」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ウラスン [ʔu⸢rasuŋ]他動織らせる。{ウ⸢ルン[ʔu⸢ruŋ](織る)の未然形に使役の助動詞⸣スン[⸣suŋ](~せる。~させる)が下接して形成された派生動詞(使役動詞)}。
ウラスン [ʔu⸢ra⸣suŋ]他動{1}降ろす。下ろす。乗客を下ろす。
ウラスン [ʔu⸢ra⸣suŋ]他動{2}堕胎する。
ウラスン [ʔu⸢ra⸣suŋ]他動{3}擂り卸す。
ウラスン [ʔu⸢ra⸣suŋ]他動{4}種子を蒔く。
ウラハラ [ʔu⸢ra⸣hara]裏腹。正反対。あべこべ。
ウラミ [ʔu⸢ra⸣mi]恨み。
ウラミルン [ʔu⸢rami⸣ruŋ]他動恨む。
ウラムニ [ʔu⸢ra⸣muni]皮肉。あてこすり。
ウラムン [ʔu⸢ra⸣muŋ]他動恨む。「逢はずとも吾は不怨<ウラミジ>~。万、2629」の転訛したもの。
ウラモールン [ʔu⸢ra⸣moːruŋ]他動恨まれる。お恨みになる。{ウ⸢ラ⸣ムン[ʔu⸢ra⸣muŋ](恨む)の連用形に補助動詞⸢オー⸣ルン[⸢ʔoː⸣ruŋ](居られる)が下接して形成された派生動詞(敬語動詞)}。
ウランガイシ [ʔu⸢raŋgai⸣ʃi]うらがえし(裏返し)。
ウランザキ [ʔu⸢ranʣa⸣ki](地)宇奈利崎。現行の地図では「ニシ崎」とあるが、鳩間島では昔からウ⸢ランザ⸣キ(宇奈利崎)と称している。ここの干瀬は、カ⸢ジマール[ka⸢ʤimaːru](「風回り」の義。北風になって時化ること)になると、干瀬に砕け散る波の花が一段と高くなるので、鳩間島の人は天候の荒れを予知し、台風や時化の程度を推定した
ウランタ [ʔu⸢ran⸣ta]{1}欧米。西洋。「オランダ」の義。
ウランタ [ʔu⸢ran⸣ta]{2}あだ名。体格の大きな人に対してつけたニックネーム。
ウランタヤー [ʔu⸢ranta⸣jaː]友利家の屋号の別称。
ウリ [ʔu⸢ri]{1}それ(中称、単数)。話者と聞き手の領域に属さず、話者や聞き手から遠くの領域に属しないものを指す。
ウリ [ʔu⸢ri]{2}話者と聞き手が共通に認識している話題のもの。そのこと。
ウリ [ʔu⸢ri]{3}そのひと(話題の人物)。
ウリ [⸢ʔu⸣ri]それ。そら。ほら。
ウリーグトゥ [ʔu⸢riː⸣gutu]憂いごと。悲しいこと。不幸。「憂いごと」の義。石垣方言からの借用語。
ウリーシュンギ [⸣ʔuriːʃuŋgi]「憂い祝儀」の義。結婚式。不慮の凶事に遭遇しても、予定された結婚式は延期せずに執り行うことにいう。石垣方言からの借用語。
ウリカー [ʔu⸢ri⸣kaː]鍾乳洞の井戸。⸢下り井戸」の義。
ウリカジ [ʔu⸢ri⸣kaʤi]南風。穏やかに吹く南の風。「降り風」の義。台風は多くの場合石垣島の東海上を北西の進むので、東北方からの強風が吹き荒れるが、台風が通過するにつれて北西、西南、東南の方に変わり、穏やかになる。北風が南風になること。
ウリカリ [ʔu⸢ri⸣kari]あれこれ。「それあれ」の義。
ウリ カンガイ クリ カンガイ [ʔu⸢ri kaŋ⸣gai ku⸢ri kaŋ⸣gai]それを思い、これを思って。あれこれ思い煩って。
ウリクリ [ʔu⸢ri⸣kuri]それこれ。それやこれや。
ウリシー カリシー [ʔu⸢riʃiː⸣ ka⸢riʃiː]あれこれすること。いろいろと試みること。「それをし、あれをし」の転訛したもの。
ウリダチ [ʔu⸢rida⸣ʧi]海や浜辺に降りる所。船着場へ下りる所。「下り立ち」の義。
ウリティバ クイテイバ [ʔu⸢ritiba kuitiba]あれとか、これとか。それやこれや。「それとかこれとか」の義。
ウリトゥン [ʔu⸢rituŋ]それ<彼>とも。
ウリヌーリ [⸣ʔurinuːri]{1}乗り降り<下り上り>。
ウリヌーリ [⸣ʔurinuːri]{2}上り坂や下り坂<下り上り>。
ウリヒャー [⸣ʔuriçaː]ほらほら。そらそら。「それ!」と指示して注意を喚起する言葉。
ウリヒャー ウリヒャー [⸣ʔuriçaː ⸣ʔuriçaː]さあ大変だぞ、大変だぞ。⸣ウリヒャー[ʔuriçaː]の畳語で強意表現。
ウリミチ [ʔu⸢ri⸣miʧi]下り道。下り坂の道。
ウリヨークリヨー [ʔu⸢rijoːkuri⸣joː]苦労。辛苦。やれそれよ、やれこれよと生活苦に追われること。「それよこれよ」の義。
ウリルン [ʔu⸢ri⸣ruŋ]自動{1}下りる。
ウリルン [ʔu⸢ri⸣ruŋ]自動{2}風が北から南に変わる。穏やかな天気になる。
ウリン クリン [ʔu⸢riŋ⸣ kuriŋ]それもこれも。
ウリンツァン [ʔu⸢rinʦaŋ]それすらも~ない。それさえも~ない。ウ⸢リ・ンツァン[ʔuri-ŋʦaŋ](それ・さえも<だにも>)からなる合成語。副助詞⸢ンツァン[⸢ŋʦaŋ](すらも)は、{1}文末に打ち消しの助動詞を要求し、上接語を容易なことなのにという気持ちでとりたて、打ち消し表現と呼応して否定の意味を強調する陳述副詞。
ウリンツァン [ʔu⸢rinʦaŋ]{2}、{1}が条件句を作り、どうにもならないという帰結句を強調する。
ウルシマキ [ʔu⸢ruʃi⸣maki]漆かぶれ。「漆負け」の義。石垣方言からの借用語。
ウルズン [ʔu⸢ru⸣ʣuŋ]春。旧暦二、三月ごろ。バ⸢カ⸣ナチ[ba⸢ka⸣naʧi](若夏)の直前の時期。
ウルナウン [ʔu⸢ru⸣nauŋ]他動潤わし捏ねる。湿らして捏ねる。メリケン粉などに水を加えて練る。大正元年生まれの古老が使用していた。ほぼ死語に近い。
ウルプトゥキ [ʔu⸢ruputu⸣ki]たむし(田虫)。白癬菌の寄生による皮膚疾患。輪状に蔓延し、痒みが甚だしい。若年層は、グ⸢ツァ⸣バ[gu⸢ʦa⸣ba](ゼニタムシ<銭癬>)ともいう。
ウルン [⸣ʔuruŋ]自動下りる。「下る<おる、上二段活用>」の四段活用化したもの。ウ⸢リ⸣ルンとも言う。
ウルン [ʔu⸢ruŋ]他動織る。布を織る。
ウレー [ʔureː]それは。その人は。指示代名詞、ウ⸢リ[ʔu⸢ri](それ)に係助詞-ヤ[-ja](は<とりたて強調>)が下接融合して形成されたもの。CVCV構造の上接語の末尾母音が[i]の場合、係助詞-ja(は)と融合同化して[-eː]となり、同じく[-u]の場は[-oː]となる。
ウレーラ [ʔu⸢reː⸣ra]{1}それから。その後。[ʔuri・kara] → [ʔurihara] → [ʔureːra] と音韻変化したもの。
ウレーラ [ʔu⸢reː⸣ra]{2}彼から。
ウレーラン [ʔu⸢reː⸣raŋ]それよりも。「それからも」の転訛したもの。
ウローウローシ [ʔuroː⸢ʔuroː⸣ʃi]ざらざらするように。粉などの粒が少し粗いさま。ウ⸢ロー⸣ン[ʔu⸢roː⸣ŋ](粗い<形容詞>)の語幹を重ねた副詞。
ウロイ [⸣ʔuroi]おしめり(御湿り)。「潤い」の義。⸣ウルイ[⸣ʔurui]ともいう。雨が程よく降って作物の植え付けに適する状態になること。「Vruoi,ô,ôta.ウルヲイ,ゥ、ゥタ(湿・潤ひ、ふ、うた)~、または湿り気をもっている」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ウワーラスン [ʔu⸢waːrasuŋ]他動終えさせる。使役動詞。「終わらせる」の転訛したもの。
ウワーリ [ʔu⸢waːri]終わり。仕舞い。終了。動詞ウ⸢ワールン[ʔu⸢waːruŋ](終わる)の連用形から転成した名詞。
ウワーリンガタ [ʔu⸢waːriŋgata]終わり方。終わり近く。終わり頃。終了間近。
ウワールン [ʔu⸢waːruŋ]自動{PoS_1}終わる。
ウワールン [ʔu⸢waːruŋ]他動{PoS_2}仕舞う。終える。終了する。
ウン [ʔuŋ](植)甘藷。サツマイモ。「うも」の義。芋類。「蕷・芋、伊母(いも)」『新撰字鏡』の転訛。
ウン [⸣ʔuŋ]{1}鬼。仁王仏。
ウン [⸣ʔuŋ]{2}容貌や性格が鬼のように恐ろしい人。
ウン [⸢ʔuŋ]運。運命。運勢。
ウン [⸢ʔuŋ]その時。当時。
ウン カイスン [⸣ʔuŋ ⸢kai⸣suŋ]芋を掘る。⸢芋を耕す」の義。稔った畑の芋を鍬で土を掘り起こして収穫する。
ウンカブン [⸣ʔuŋ ⸣kabuŋ]鬼のような恐ろしい形相になる。「鬼被る」の義。鬼面になる。
ウンキ [⸢ʔuŋki]運気。運勢のこと。人間の五運六気。運気が弱いと病気になると信じられている。毎年石垣の⸣サンギンソー[⸣saŋginsoː](易者)を訪ねて家族の運勢を占ってもらっていた。
ウンキ クラスン [⸢ʔuŋki⸣ ku⸢ra⸣suŋ]占わせる。「運気を繰らす」の義。⸣サンギンソー[⸣saŋginsoː](易者。三世相)やユ⸢タ[ju⸢ta](口寄せをする巫女。かんなぎ<巫・覡>)に運気祈願の日時、方法を占ってもらう。
ウンキクリプス [⸢ʔuŋkikuri⸣pu̥su]運気を占う人。三世相。易者。
ウンキ クルン [⸢ʔuŋki⸣ kuruŋ]運気を占う。「運気を繰る」の義か。
ウンキニンガイ [⸢ʔuŋkiniŋ⸣gai]各家庭で健康、安全、幸福を祈願する祭祀。「運気願い」の義。年周りが悪くて、運気が厳しい時、運気を呼び込んで良い方向へ導くための祈願。その人のマ⸢リビー[ma⸢ribiː](生まれた日の干支)に合わせて佳日を選定して祈願させた。⸣ドゥーパダニンガイ[⸣duːpadaniŋgai](健康祈願、⸢胴肌願い」の義)ともいう。旧暦一月<正月>と八月に祈願された。
ウンキリ [ʔuŋ⸢kiri]それっきり。丁寧にいうときは、ウヌッ⸢キリ[ʔunuk⸢kiri](それっきり)という。
ウンク [⸢ʔuŋ⸣ku]うみ(膿)。シッタ⸢リー⸣ ウ⸢レー⸣ ヌーヤ。
ウンザ [⸢ʔunʣa]そいつ。そやつ<其奴>。対称の指示代名詞ウ⸢リ[ʔu⸢ri](それ)に、ヌザ[nuʣa](人の卑語)が下接して形成された表現。人を卑しめた待遇表現。卑語。
ウンザカンザ [⸢ʔunʣakanʣa]そいつめ、あいつめ。そいつら、あいつら。⸢ウンザ[⸢ʔunʣa](そいつ)、⸢カンザ[⸢kanʣa](あいつ等)のABCDBC型構造の重言。
ウンザンメー [⸢ʔunʣammeː]そいつら。そやつら(其奴等)。人称代名詞三人称、中称、卑称、複数を表す。
ウンシー [⸢ʔuŋʃiː]運命。「運勢」の義か。
ウンター [⸢ʔuntaː]上。上方。頂上。「上の方」の転訛したもの。⸢ウインター[⸢ʔuintaː](上方)ともいう。
ウンタマ [⸢ʔun⸣tama]狡賢い者。狡猾な者。悪知恵者。
ウンタマギール [⸢ʔuntamagiː⸣ru]義賊。沖縄方言からの借用語。沖縄本島に居たといわれる義賊の名前。石垣島で芝居に上演されて鳩間島にも伝えられたという。
ウンチュー [⸢ʔun⸣ʧuː]下男。首里方言の⸢ウンチュミー[⸢wunʧumiː](下男)からの借用語。
ウンチン [⸢ʔunʧiŋ]運賃。船賃。
ウンツァイ [⸣ʔunʦai](植)野菜の一種。ようさい(甕菜)。ヒルガオ科植物。一年草。湿地に栽培され、茎も葉も料理に用いられる。真夏にも繁茂するので夏野菜として重宝される。西表島の水田地帯の湿地帯を利用して栽培された。葉はサツマイモの葉に似ており、長卵形で濃緑色。茎は中空で細長く、蔓性で地面を這う。煮ると柔らかくなり、カツオの頭のだし汁の生臭みをよく消し、その味をたっぷりと含む。
ウンディル [⸢ʔun⸣diru]芋笊。芋を入れる笊。⸢クー⸣ジ[⸢kuː⸣ʣi](トウヅルモドキ)の皮で編んで造った笊。両端に吊り紐が付いており、⸢アイ⸣ク[⸢ʔai⸣ku](天秤棒)にかけて担ぐ農具。鳩間島では⸣ティル(笊)に入れた芋を笊ごと浜辺の海に入れ、片足を笊の中に突っ込んで{扱}{コ}き洗う。ティ⸢ル⸣ヌ ⸢ブー[ti⸢ru⸣nu ⸢buː](笊の紐)を片手で引っ張ったり、緩めたりしながら笊の中の芋を回転させて洗う。
ウンドーレー [⸢ʔundoːreː]あんな時刻から(遅い時刻に)。「そんな時から」の義。過去の出来事に対して用いる。
ウンナ [⸢ʔun⸣na]それに。そのうえ。かつ。それに加えて。
ウンナ [⸢ʔun⸣na]連体そんな。そのような。指示代名詞ウ⸢リ[ʔu⸢ri](それ)の連体用法。
ウンナカンナ [⸢ʔun⸣nakanna]連体そんなあんな。あんなこんな。ABCDBC型の重言。⸢ウン⸣ナクンナ[⸢ʔun⸣nakunna](そんなこんな)ともいう。
ウンナクンナ [⸢ʔun⸣nakunna]そんなこんな。あれこれ。あれやこれや。ABCDBC型の重言。⸢ウン⸣ナカンナ[⸢ʔun⸣nakanna](あんなこんな、そんなこんな)と同じ。
ウンナ ムヌ [⸢ʔun⸣na ⸣munu]そんなもの。
ウンナリ ザーンナリ [⸣ʔunnari ⸢ʣaːn⸣nari]鬼にもなり、蛇にもなって。
ウンナリ ザーンナリ [⸣ʔunnari ⸢ʣaːn⸣nari]{2}恐ろしい形相で。非情になって。
ウンヌイー [⸢ʔunnu⸣iː]サツマイモを煮て、イ⸢ビ⸣ラ[ʔi⸢bi⸣ra](大型のしゃもじ、「飯箆」の義)で捏ねたもの。握ったり、そのまま碗に装って食した。
ウンヌカイ [⸢ʔunnu⸣kai]芋粥。芋を粥状に炊いたもの。
ウンヌカザ [⸢ʔunnu⸣kaʣa]いもかずら(芋蔓)。
ウンヌカシ [⸢ʔunnu⸣kaʃi]いもかす(芋粕)。サツマイモを擂り、絞って澱粉を取り、残り粕を寿司の大きさに手で握り丸めて天日乾燥したもの。非常用の食品として保存した。搗いて粉にし、小麦粉代に用いたり、米や麦、粟と混ぜ煮にして食することもあった。
ウンヌクジ [⸢ʔunnu⸣kuʣi]芋(甘藷)の澱粉。「芋の葛粉」の義。単に⸣クジ[⸣kuʣi](澱粉)といえば、甘藷や⸢キー⸣ウン[⸢kiːʔuŋ](キャッサバ)の芋の澱粉を指す。この澱粉でつくるテンプラを、⸢ウンヌ⸣クジティンプラ[⸢ʔunnu⸣kuʣitimpura](芋葛粉テンプラ)といい、誠に美味である。これで⸢ブッ⸣トゥル[⸢but⸣turu](澱粉を揚げてつくった、粘り気のあるジェリー状の食物)を作り、病人に与えて栄養食とした。子供のお八つとしても喜ばれた。サツマイモの澱粉。
ウンヌクジティンプラ [⸢ʔunnu⸣kuʤitimpura]芋の澱粉<芋葛粉>で揚げたテンプラ。
ウンヌクジブットゥル [⸢ʔunnu⸣kuʤibutturu]芋の澱粉を熱湯で溶かしてゼリー状にしたものを軽く油揚げにした食品。子供のお八つにしたり、老人が黒砂糖を{塗}{マブ}して食するお茶請けに重宝された。
ウンヌジブン [⸢ʔunnuʤibuŋ]その時期。その時分。
ウンヌ シラ [⸢ʔun⸣nu ⸣ʃira]鬼の面(ツラ)。鬼の顔。鬼のような恐ろしい形相。
ウンヌシル [⸢ʔun⸣nuʃiru]{1}芋の煮汁。「甘藷の汁」の義。掘りたての芋を大鍋で煮る際、煮え上がった煮汁を切ったもの。戦前は芋の煮汁を原料にして酢を造った。それを⸢ウンヌ⸣シルパイル[⸢ʔunnu⸣ʃirupairu](芋汁酢)という。
ウンヌシル [⸢ʔun⸣nuʃiru]{2}芋の実からでる乳液状の汁。芋ほりの際、汁液が衣類や手について汚れ、なかなか落ちないので若者達はそれを嫌がった
ウンヌシル [⸢ʔunnu⸣ʃiru]芋の汁。芋や芋蔓から出る汁液。芋を掘ったり、芋蔓を切ったりする際に出る汁液。手や衣類について黒いシミになる。
ウンヌ シル [⸢ʔun⸣nu ⸣ʃiru]{1}芋の汁。芋を掘ったときに出る芋の汁。手や衣服に付着すると落としにくい。
ウンヌ シル [⸢ʔun⸣nu ⸣ʃiru]{2}芋を煮た煮汁。豚の飼料を煮るのに利用した。
ウンヌ スーワン [⸢ʔunnu suː⸣waŋ]{1}運勢が強い。幸運である。強運である。
ウンヌ スーワン [⸢ʔunnu suː⸣waŋ]{2}運のめぐり合わせが厳しい。
ウンヌダーキ [⸢ʔunnudaː⸣ki]芋を炊いて、イ⸢ビ⸣ラ[ʔi⸢bi⸣ra](大型の杓文字。「飯箆」の義)で捏ねて作った食品。芋を潰し、捏ねて作ったご飯。お握りにしたり、そのままお碗に入れて食した。稀に米を入れて炊くこともあった。煮た芋を捏ねた状態が⸢ダー⸣キ[⸢daː⸣ki]である。
ウンヌ ニージル [⸢ʔun⸣nu ⸢niːʤiru]サツマイモの煮汁。
ウンヌパー [⸢ʔunnu⸣paː]芋の葉。サツマイモ(甘藷)の葉。野菜の少ない鳩間島では、お汁の具にすることが多かった。カツオの頭のだし汁の濃厚な味を抑えて調和した味を作り出した。また、水中眼鏡のガラスが曇るとサツマイモの葉を擦りつけて磨くと透明になった。
ウンヌパーズーシ [⸢ʔunnu⸣paːʣuːʃi]芋の葉雑炊。芋の葉と米と魚を入れて炊いた雑炊。離島では降雨の少ない夏季には青野菜が収穫できないので芋の葉を青野菜の代わりに利用した。
ウンヌバス [⸢ʔunnu⸣basu]その時。ある事件のあった(または、ある事件の起きる)時。その場合。
ウンヌ ピン [⸢ʔunnu⸣ piŋ]その時(話題の中の事件の時)。当時<話題の時>。
ウンヌピン [⸢ʔunnu⸣piŋ]その時。ある事が行われた、また、ある事が行われる日(その時)。その当日。
ウンヌマーラー [⸢ʔunnu maːraː]その頃(話題の時季、時刻を含む)あの頃。あの時分(会話時に近い時刻)。
ウンヌミース [⸢ʔunnumiː⸣su]芋の味噌。芋味噌。お汁の調味料に用いる味噌。甘藷をウ⸢ルシン⸣ガニ[ʔu⸢ruʃiŋ⸣gani](卸がね。芋すり器)で卸して蒸し、糠は⸢シンマイ⸣ナビ[⸢ʃimmai⸣nabi](大鍋。四枚鍋)で炊いて、冷ました蒸し芋と混ぜてねかし、麹をたてる。出来た麹に卯の花<おから>の蒸したものを混ぜ、塩を加えてよく搗いてから甕に詰めて仕込む。一ヶ月ほど醗酵させて仕上げる。
ウンヌムチ [⸢ʔunnu⸣muʧi]芋の餅。サツマイモを磨り下ろし、それを芭蕉の葉に包んで蒸し上げて作った餅。もち米がないとき、または間食用につくった。
ウンネ [⸢ʔun⸣ne]{1}その家。話題の家。
ウンネ [⸢ʔun⸣ne]{2}<その家>。心理的に話者に近い。「この家」と重なる。⸢カン⸣ネ[⸢kan⸣ne](あの家<話者より遠いあの家>)の対義語。
ウンバカシジブン [⸢ʔumbakaʃi⸣ʤibuŋ]サツマイモを煮る<炊く>時刻(時分)。午後5~6時頃に畑から掘ってきたサツマイモを笊に入れて海へ行き、笊に片足を突っ込んで芋粗いをして泥を落とし、⸢シンマイ⸣ナビ[⸢ʃimmai⸣nabi](大鍋<四枚鍋>)に入れて炊いた。
ウンパンシン [⸢ʔumpaŋ⸣ʃiŋ]運搬船。昭和に入って石垣から鳩間経由西表祖内行きの定期航路に運搬船が就航した。鳩間島からは石垣向けに米や鰹節、ツノマタ、豚、薪などの貨物が運賃を支払って定期的に運ばれた。
ウンプトゥキ [⸣ʔumputuki]石垣市桃林寺正門の両側に安置された{阿吽}{ア|ウン}の仁王像。「鬼仏」の義。鬼のような激しい形相の仏像で、拝観者の邪気を祓うと信仰されている。鳩間島では虚弱体質で病気がちな子供は一度桃林寺の仁王像を拝ませると病気が治るといわれていた。
ウンマガータ [⸢ʔummagaː⸣ta]かたぐるま(肩車)。
ウンミサク [⸣ʔu⸢misaku]藷酒。芋の神酒。ミ⸢サク[mi⸢saku](神酒。御酒)に、原料の藷が付いたもの。古典民謡パ⸢トゥ⸣マナカムリ[pḁ⸢tu⸣manakamuri](鳩間中岡)の中に歌われている。/ウンミサクン シゥクリヨリヨー アワミサクン シゥクリヨリヨー/ウンミサクヌ フカイバナヨー アワザキヌ アムリバナヨー/(芋神酒もお造りなさいませ 粟神酒もお造りなさいませ/芋神酒が最も醗酵する時、粟酒が泡を盛り上げる時)(「鳩間中岡」第十、十一連参照。『鳩間誌』)