鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
-ナ [⸣-na]終助~な。動詞の連体形に下接して、禁止を表す。
ナー [⸣naː]縄。イ⸢ガナー[ʔi⸢ganaː](烏賊釣り縄、直径約1、5ミリの縄)、サ⸢バナー[sa⸢banaː](鱶釣り用の、直径約4~5ミリの縄)、イ⸢ズホーシ⸣ナー[ʔi⸢ʣuhoːʃi⸣naː](魚釣り用の直径約1ミリ~1、5ミリの縄)、シ⸢ミ⸣ナー[ʃi⸢mi⸣naː](墨縄。墨壷の糸車に巻いてある、直径約1ミリの細い縄)などのように、⸣シナ[⸣ʃina](綱、直径約10ミリ以上)よりは細く、⸣イトゥ[⸣ʔitu](糸、直径約0、5ミリ以下)より太い、直径約1ミリから5ミリの太さに綯ったもの。サバナーには豚の血を繰り返し染めて乾燥させ、蒸してあるので黒光りしており、ナイロン縄のように硬くて強く、手繰っても{縺}{モツ}れないようになっている。
ナー [⸣naː](植)なっぱ。⸢菜」の義。葉菜一般にいう。⸢アウナー[⸢ʔaunaː](青野菜)、ッ⸢ス⸣ナー[s⸢su⸣naː](白菜)、⸢ナーン⸣パー[⸢naːm⸣paː](菜っ葉)ともいう。
ナー [⸢naː]名。名前。
ナー [⸢naː]各自。おのおの。
ナー [⸣naː]助動打消しの助動詞⸣ヌ[⸣nu](~ない)の連用形。動詞の未然形につく。「~ずに」。⸢~ないで」の意。明治生まれの古老が使う。ハ行四段系動詞につくときは、アクセントは高平になる。
ナー [⸣naː]格助~に。~で。{1}名詞について場所を表す。
ナー [⸣naː]格助{2}数詞や時を表す名詞について動作・作用の起きる時間を表す。
ナー [⸣naː]格助{3}動作、作用の原因、理由となる名詞について原因・理由を表す。
ナー [⸣naː]格助~にして。~しては~。連用形に下接して、「同じ動作を繰り返し、しきりに~する」の意を表す。古老の使用語。
ナー [⸣naː]副助{1}~ずつ。分量を表す語<数詞>に付いて、一定量を均等配分する意を表す。
ナー [⸣naː]副助{2}体言<助数詞>に付いて、程度や分量の許容の基準を示す。~ぐらい。
ナー [⸢naː]終助~なあ。~ねえ。文末で活用語の終止形や終助詞⸣サー[⸣saː](さ)に付いて、念押しや、感動、相手との共感を表す。{1}動詞の終止形につく。
ナー [⸢naː]終助{2}助動詞の終止形に付く。
ナー [⸢naː]終助{3}終助詞⸣-サ[⸣-sa](~さ。~よ)に付いて念押し、感動を表す。
ナー [⸢naː]ねえ。ほらねえ。でしょう?。文頭、文末に立ち、注意を促し、同意、確認の意味を表す語。
ナー [⸣naː]終助~か。終止形につく。疑問の意を表す。九十歳以上の古老が使用する。
ナー [⸣naː]助詞連語。~には。格助詞ナ[na](~に)に取り立ての係助詞ヤ[jaː](~は)が下接して、ナー[⸣naː](~には)と音韻変化したもの。
ナー [⸢naː]接頭長~。⸢ナー⸣ン[⸢naː⸣ŋ](長い)の語幹。
ナーアミ [⸢naːʔami]長雨。若年層は、ナ⸢ガアミ[na⸢gaʔami](長雨)ともいう。
ナーイ [naː⸢ji]{1}ただ。もっぱら。ひたすら。そのままずっと。何もしないでじっと。
ナーイ [naː⸢ji]{2}本気でなく、形だけ。ただたんに。仮に。
ナーイ スクン [naː⸢ji⸣ su̥kuŋ]放置しておく。そのままにしておく。
ナーイヌ [naː⸢jinu]連体ただの。並みの。普通の。
ナーウティプス [⸢naːʔuti⸣pu̥su]有名な人。高名な人。名高い人。「名うて人」の義。
ナー ウトゥン [⸢naː⸣ ʔutuŋ]有名になる。名前が鳴り響く。名前が響き渡る。
-ナーカ [⸢-naː⸣ka]副助~やら。~か。{1}疑問を表す語について、はっきりと特定しない、不確かなものごとを表す。
-ナーカ [⸢-naː⸣ka]副助{2}さらに格助詞⸣-ナー[⸣-naː](~に)が付く。
-ナーカ [⸢-naː⸣ka]副助{3}さらに格助詞⸣-ラ[⸣-ra](~から)に係助詞⸣-ン[⸣-ŋ](~も)の付いた助詞連語が付いて強調表現をつくる。
ナーカウ [⸢naː⸣kau]長い線香。⸢ピーマチカウ[⸢piːmaʧikau](日待ち香。長時間焚く線香)とタ⸢キカウ[tḁ⸢kikau](竹ひごで作った線香)がある。
ナーサ [⸢naː⸣sa]長さ。若年層は、ナ⸢ガ⸣サ[na⸢ga⸣sa](長さ)ともいう。
ナー シーシ [⸢naː ʃiːʃi]各自でしながら。銘銘のやり方。それぞれの仕方。
ナーシカク [⸢naːʃi̥ka⸣ku]長方形。「長四角」の義。
ナーシキウヤ [⸢naːʃi̥ki⸣ʔuja]名付け親。
ナーシキヨイ [⸢naːʃi̥ki⸣joi]名付け祝い。命名祝い。生後十日前後に命名して仏前、神前に報告し、{内祝}{ウチ|イワ}いをした。
ナー シキルン [⸢naː⸣ ʃi̥⸢ki⸣ruŋ]命名する。名前を付ける。
ナーシジキ [⸢naːʃiʤiki]長続き。
ナーシニ [⸢naːʃini]ながすね(長脛)。足の長い人。身長の高い人。
ナーシビ [⸢naːʃibi]{長座}{チョー|ザ}。長居。他人の家を訪ねて長くいること。「長尻」の義。酒飲みの長座は、ナ⸢マシ⸣キ ⸢スン[na⸢maʃi̥⸣ki ⸢suŋ](焦げ付く)という。女性が他家で長居することは嫌われた。
ナーシビー [⸢naːʃibiː]海底地名。干瀬の名。西表島伊武田の北にある干瀬の⸢ダイ⸣クビー[⸢dai⸣kubiː]の東側にある干瀬の名。鳩間島漁業組合の⸢イー⸣シ[⸢ʔiː⸣ʃi](角又)の養殖地であった。
ナーシラ [⸢naː⸣ʃira]面長。うまずら(馬面)。長い顔。「ながつら<長面>」の義。
ナーズー [⸢naːʣuː]たこ(凧)の尾の長い方。ブ⸢ネーズー[bu⸢neːʣuː](「母親尾」の義)ともいう。短い尾は、ッ⸢ふァズー[f⸢faʣuː](「子供尾」の義)という。
ナースン [⸢naː⸣suŋ]他動なえ(萎え)させる。萎ナやす。ぐったりさせる。柔らかくする。⸢ナイ⸣ルン[⸢nai⸣ruŋ](萎える<自動>)ともいう。
ナーダニ [⸢naː⸣dani]菜種。
ナータフージ [⸢naː⸣taɸuːʤi]人名。長田大主。16世紀初め頃、石垣島に割拠した英雄。ア⸢カハチ[ʔa⸢kahaʧi]征討の功績により、八重山の役人に任命されたという長栄氏の始祖。
ナータブイ [⸢naːtabui]長期保存すること。長く蓄えること。
ナー タマシ [⸢naː tamaʃi]各自の受け取り分。それぞれの分け前。各自の配分。
ナーツァ [⸢naːʦa]翌日。過去や未来における、ある時点の翌日の意を表す。
ナーツァヌ ナーツァ [⸢naːʦanu naːʦa]翌々日。「翌日の翌日」の義。
ナーッス [⸢naːs⸣su]{1}苗代。稲の苗床。稲の苗を育てあげるまでの田。「奈波之呂乃<ナハシロノ>小なぎが花を~。万、3576」の転訛したもの。⸢ナーッス⸣ダー[⸢naːssu⸣daː](苗代田)ともいう。
ナーッス [⸢naːs⸣su]{2}播種した後は、ミ⸢ジ ノース⸣ナ[mi⸢ʤi noːsu⸣na](容器の水をドローッと流すな)。これは大雨で種籾が流されるのを避けるためである。
ナーッス [⸢naːs⸣su]{3}⸣サー ⸣ヌメー ナ⸢ラ⸣ヌ[⸣saː ⸣numeː na⸢ra⸣nu](お茶を飲んではいけない)。これは、苗代田に金属錆色の水が出るのを避けるためという。
ナーッス [⸢naːs⸣su]{4}ピ⸢ネー⸣ ス⸢ラ⸣ヌ[pi⸢neː⸣ su⸢ra⸣nu](鬚は剃らない)。これは、種籾の毛根を切ることを避けるためという。
ナーティ [⸣naːti]格助{1}格助詞。~にて。~で。動作の行われた場所を強調して表す。
ナーティ [⸣naːti]格助{2}さらに連帯助詞⸣-ヌ[⸣-nu](の)が付いて、⸢~での」の意味を表す。
ナーティ [⸣naːti]格助{3}さらに、とりたて強調の係助詞⸢-ヤ[⸢-ja](~は)が付いて、「~では」の意味を表す。
ナーティ [⸣naːti]格助{4}さらに、係助詞⸣-ル[⸣-ru](ぞ)が付いて、「~てぞ」の意味を表す。
ナーティ [⸣naːti]格助{5}さらに、係助詞⸣-ン[⸣-ŋ](も)が付いて「~でも」の意味を表す。
ナーティー [naː⸣tiː]盗癖。盗み癖のある人。「長手」の義。⸢ティー ナー⸣ン[⸢tiː naː⸣ŋ](手が長い)ともいう。
ナート [⸢naː⸣to]副助~など。ある語に添えて類似のものが外にあることを示す。
ナードー [⸢naːdoː](地)「長堂」と表記されている。⸢長い窪地」の義。イ⸢ラ⸣カマイの南側、西村の村はずれの西側からヤ⸢ラ[ja⸢ra](屋良)までの間の窪地をいう。
ナードーリキー [⸢naːdoːrikiː]薙ぎ倒された立ち木。横様に倒された樹木。「長倒れ木」の義。
ナードーリ スン [⸢naːdoːri suŋ]横様に薙ぎ倒される。長々とぶっ倒れる。「長倒れする」の義。
ナー ドゥードゥー [⸢naː⸣ duːduː]各自。めいめい(銘銘)。おのおの。「各胴胴<自分自分>」の義。
ナー トゥルン [⸢naː⸣ turuŋ]名誉を獲得する。高名になる。有名になる。「名取る」の義。
ナーナー [⸢naːnaː]各自。めいめい(銘銘)。
ナーナーシ [naː⸢naː⸣ʃi]長く。⸢長々と」の強調表現。強調しない、ニュートラルな表現では、アクセントは第一モーラから高く始まる。⸢ナーナー⸣シ[⸢naːnaː⸣ʃi](長々と)という。若年層はナガー⸢ナガー⸣シ[nagaː⸢nagaː⸣ʃi](長々と)という。
ナーナーンウイビ [⸢naːnaːŋʔui⸣bi]薬指。名無し。無名指。「名無し指」の義。フ⸢シ⸣ルッシ ⸢ウイ⸣ビ[ɸu̥⸢ʃi⸣ruʃʃi⸢ʔui⸣bi](薬さし指)ともいう。
ナーナキ [⸢naːnaki]長泣き。若年層は、ナ⸢ガナキ[na⸢ganaki](長泣き)ともいう。
ナーニ [⸢naː⸣ni]人の背骨の両側にある長い筋肉。牛や豚のロース。首里方言のnagani(背中)のg音脱落による転訛。
ナーニ [⸢naː⸣ni]格助~に(動作作用の及ぶ相手。~に対して)の強調表現。プ⸢ス[pu̥⸢su](人)や、⸣ウヤ[⸣ʔuja](親)等に格助詞ン[ŋ](~に)が付く際には、⸢ナー⸣ニ[⸢naː⸣ni](~に対して)という強調表現をとることが多い。
ナーニビ [⸢naːnibi]長く眠ること。朝寝坊すること。「長寝」の義。
ナーヌ [⸢naː⸣nu]特殊変化。ない(無い)。人、動物以外のものが存在しない。今帰仁方言のネー⸢ヌのネーは、古代語の「なふ」の連用形「なひ」の転訛したものという『沖縄今帰仁方言辞典』。「~国をさ遠み安波奈波婆<アハナハバ>~。万、3426」。
ナーヌ [⸢naː⸣nu]助動{1}動詞の連用形に付いて、「~てない<~てしまった>」、「完了した」、の意を表す。
ナーヌ [⸢naː⸣nu]助動{2}形容詞の連用形に付いて、打消しの意味を表す。
ナーヌキ [⸢naːnuki]長く貫くこと。
ナーヌチ [⸢naːnuʧi]長命。長寿。ナ⸢ガヌチ[na⸢ganuʧi](長命。長寿)ともいう。⸢チョーミー[⸢ʧoːmiː](長寿。長命)ともいい、⸢チョーミー⸣ シ⸢キ⸣シミ タ⸢ボー⸣リ[⸢ʧoːmiː⸣ ʃi̥⸢ki⸣ʃimi ta⸢boː⸣ri](長寿をつけてください)のように、よい意味に用いる。⸢ナーヌチ[⸢naːnuʧi](長生き。長命)は、⸢ナーヌチヌ⸣ ア⸢リ⸣ル ⸣カイブ ア⸢ワ⸣リナンギーン ⸢スー[⸢naːnuʧinu⸣ ʔa⸢ri⸣ru ⸣kaibu ʔa⸢wa⸣rinaŋgiːn ⸢suː](長生きしているから<ぞ>このような難儀苦労<哀れ難儀>もするのだ)のように、悪い意味にも用いられる
ナーパイ [⸢naːpai]{1}だらし無く寝そべること。
ナーパイ [⸢naːpai]{2}長々と這うこと。
ナーハイバイ [⸢naːhaibai]各自勝手に行動すること。好き勝手にすること。めいめい(銘銘)ばらばらになること。首里方言からの借用語。
ナーパニスビ [⸢naːpanisubi](動)魚の名。和名、ビンナガ(体長約1メートル)。{胸鰭}{ムナ|ビレ}の長いマグロ
ナーパマ [⸢naːpama]長浜。西表島伊武田の浜の名の一つ。
ナーバレー [⸢naːbareː](海底地名)。鳩間島を取り巻く環礁の、島の東にある干瀬の窪んだ所。ナ⸢ラ⸣リパマ[na⸢ra⸣ripama](ナラリ浜)から東に延びる干瀬で、タ⸢カ⸣ビー[tḁ⸢ka⸣biː](高干瀬)に続く干瀬であるが、その部分は細長く窪んだ所で、満潮時にはイカ釣り舟を外洋へ通過させることができる。カツオ漁船も大潮の満潮時にはそこを通って帰港していた。満ち潮は外洋からこの部分を通って礁池部に流れ込む。その流れが早いので、歩いてタ⸢カ⸣ビー[tḁ⸢ka⸣biː](高干瀬)へ潮干狩りに行く時は、この溝を越えることに気を配った。遅くなると、女性はこの溝を渡ることが難しくなる
ナーバレーヌ ウブイシ [⸢naːbareːnu⸣ ʔu⸢bu⸣ʔiʃi](海底地名)。⸢ナーバレーにある大石。その大石のある一帯の地名
ナーパン [⸢naː⸣paŋ]長足。歩幅の大きいこと。大股。「長はぎ<脛>」の義。
ナーピキダールン [⸢naːpikidaːruŋ]自動だらりと長引く。引きずる。
ナーブイ [⸢naːbui]長吠え。遠吠え。犬の長鳴き。「長吠え」の転訛したもの。不吉なことが起きる前兆といわれている。
ナーブク [⸢naːbu⸣ku]縄箱。⸢ナーバ⸣ク[⸢naːba⸣ku](縄箱)ともいう。漁師が出漁するに際して、釣り針や釣り糸などの漁具の必要な物と、その予備を揃えて縄箱の中蓋に整然と並べておき、箱の底にはマッチやタバコ類、その他の貴重品を入れて持参する収納箱。大型の縄箱は縦約50センチ、横約40センチ、高さ約40センチの木製の箱で、衣類まで収納できる箱。小型の縄箱は縦約25センチ、横約20センチ、高さ約15センチの木箱。これらは水漏れしないように精密に造られており、舟が転覆しても浮いて中のものが濡れないようになっている。
ナーフクビ [⸢naːɸu̥ku⸣bi]長帯。長い帯。
ナーフダ [⸢naːɸuda]名札。
ナーブンブン [⸢naːbumbuŋ]各自。おのおの。めいめい(銘銘)。⸢ナーブン[⸢naːbuŋ](各自)ともいう。
ナーポーキ [⸢naːpoː⸣ki]ながほうき(長箒)。長さ約1、8メートルの竹を数本結わえた箒。柄の付いた竹箒で庭の掃除に使用する箒(外箒)。室内用の⸢ナーポー⸣キ[⸢naːpoː⸣ki](長箒)は藁しべや麦藁などをY字形に編み組んで、それに長い柄を付けた上品な箒。新しく導入されたもの。多くは石垣島の店から購入した。旧来の室内箒は藁しべを扇型に編みこんだバ⸢ラフ⸣タポーキー[ba⸢raɸu⸣tapoːkiː](ワラシベ箒)で、{屈}{カガ}みながら使用した。
ナー ポッチポッチ [⸢naː potʧipotʧi]各自ばらばらに。各自散らばって。
ナーマ [⸢naː⸣ma]接尾小さいもの、可愛いもの、などの意を表す接尾語⸣マ[⸣ma]の異形態。上接語の音節構造により、次のような異形態が生成される。
ナーマ [⸢naː⸣ma]接尾{Exp_1}上接語の音節構造がCVCV(v=a)の場合、CVCV + [ma] → [~ːma]。
ナーマ [⸢naː⸣ma]接尾{Exp_2}CVNの場合、CVN + [ma] → [~nnaːma]。
ナーマ [⸢naː⸣ma]接尾{Exp_3}CVV(v=i)の場合、CVCVV + [ma] → [~jaːma]。
ナーマ [⸢naː⸣ma]接尾{Exp_4}CVCVV(v=u)の場合、CVCVV + [ma]→ [~waːma]、[~aːma]。
-ナーマ [⸢-naː⸣ma]接尾指小辞。~っこ。名詞の語末が[ŋ]で終わる際、指小辞の-マ[-ma](~っこ)が付くと連声現象を起こし、~ンナーマ[~⸢naː⸣ma](~っこ)となる。例、イン⸢ナー⸣マ[ʔin⸢naː⸣ma](子犬)。
ナー マイマイ [⸢naː⸣ maimai]各自の利益のために。「各自の前前」の義。
ナーマタ [⸢naːmata]大股。大股で歩くこと。「ながまた(長股)」の義。ウ⸢ブ⸣マタ[ʔu⸢bu⸣mata](大股)ともいう。
ナーマヤー [⸣naːmajaː]長間家。民間伝承上で語られる家。鳩間島のパ⸢カヤマ[pḁ⸢kajama](墓山)の頂上に、⸣ナーマヤーヌ ⸢ヤシ⸣キ[⸣naːmajaːnu ⸢jaʃi̥⸣ki](長間家の屋敷)と伝えられる屋敷跡がある。昔から鳩間島には⸢ヨーラ⸣サー[⸢joːra⸣saː](夕烏<ホシゴイ>)が鳴くのを不吉として{忌}{イ}み{嫌}{キラ}い、⸣ナーマヤーヌ ッ⸢ふァー⸣マ⸢ドー[⸣naːmajaːnu f⸢faː⸣ma⸢doː](長間家の子孫だよ{EOS!})と叫んで、カ⸢ラウシ[ka⸢raʔuʃi](空の臼)を叩く習俗がある。伝承によると、誰も助けなかった旅の者が長間家の人に助けられた恩返しとして、自分たちは⸢ピー⸣ヌカン[⸢piː⸣nukaŋ](火の神)であると告げ、火事が起きたときは、⸣ナーマヤーヌ ッ⸢ふァー⸣マ⸢ドーといって空の臼を叩いて知らせなさい。そうしたら、そこだけは災厄から逃れることが出来ると教えて立ち去ったという。以後、島では⸢ヨー⸣ラサーが鳴くと、⸣ナーマヤーヌ ッ⸢ふァー⸣マ⸢ドーと叫びながら空の臼を叩くようになったという
ナーミチ [⸢naːmiʧi]長道。⸢トゥーミチ[⸢tuːmiʧi](遠道)(老年層)ともいう。
ナー ムキムキ [⸢naː⸣ mu⸢kimuki]各自の向き向き。各自の適性。各自の性格に適したもの。
ナームス [⸢naː⸣musu]ながむしろ(長筵)。長さ約9尺の筵で、あまり利用しなかった。普通は長さ約6尺の筵を多用した。若年層はナ⸢ガ⸣ムス[na⸢ga⸣musu](長筵)ともいう。
ナームティ [⸢naːmuti]{1}長持ち。長持ちすること。長く維持すること。長く使えること。若年層では⸢ナームチ[⸢naːmuʧi](長持ち)ともいう。
ナームティ [⸢naːmuti]{2}長く生きること。長命すること。
ナームティ [⸢naː⸣muti]{1}無いのに。無いくせに。
ナームティ [⸢naː⸣muti]{2}無いなりに。
ナームティムティ [⸢naːmutimuti]各自の分担。各自の持分。
ナームヌ [⸢naː⸣munu](動)蛇。毒蛇。「ながもの(長物)」の義。呪言や祝詞で、蛇を直接的に表出するのを避けて、「ながもの」と間接的に表出し、連想によって「蛇」を指し示す表現法。パ⸢ブ[pa⸢bu](蛇)という語はタブーの一種である。
ナー メーメー [⸢naː meːmeː]各自。各自銘銘。
ナーヤ [⸣naːja]助詞連語。~には。格助詞⸣ナ(―)[na(ː)](~に)に取り立ての係助詞⸣ヤ[ja](は)が下接した形。動作、作用、存在する場所や時を限定強調する意味を表す。
ナー ヤーヤー [⸢naː⸣ jaːjaː]各自の家。銘銘の家。
ナーヤン [⸢naːjaŋ]長患い。「長病み」の義。
ナーラ [naː⸢ra]終助~ください<尊敬>。~くださいませんか。動詞の未然形に下接し、希望の意味の尊敬表現を形成する。語源は、*ni+owaram<御座す・む> → [naːram] → [naːra] のように音韻変化したものと考えられる。九十歳以上の古老が石垣島から来られる役人や校長先生などの人物に対して使用していた。八十歳以下では理解語である。
ナーライシ [⸢naːra⸣ʔiʃi]えださんご(枝珊瑚)の死骸が浜辺に打ち上げられたもの。枝珊瑚の砂利。⸣ザラ[⸣ʣara](砂利)ともいう。「流れ石」の転訛したものか。浜辺から枝珊瑚の砂利を運び庭に敷いて家運隆盛を願ったものである。正月が近づくと、子供達が浜砂を運んで庭に敷き、新年を祝う習慣もあった。
ナーラシ [⸢naːra⸣ʃi]ならし(均し)。ならし竹。かけ竿。作業用の衣類を掛けるために、軒や土間の壁にそって設置したり、吊るしたりして置く竿。「Naraxi.ナラシ(ならし)または、caqezauo(掛竿)衣類をかける竹、あるいは、木」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ナーラスン [⸢naːra⸣suŋ]他動流す。
ナーラスン [⸢naːrasuŋ]他動鳴らす。
ナーラブン [⸢naːrabuŋ]自動並ぶ。老年層の使用語。若年層は、ナ⸢ラブン[na⸢rabuŋ](並ぶ)ともいう。
ナーリ [⸢naː⸣ri]流れ。動詞⸢ナー⸣ルン[⸢naː⸣ruŋ](流れる)の連用形から転成した名詞。
ナーリキー [⸢naːri⸣kiː]流木。「流れ木」の義。普通は、⸢ユーリキー[⸢juːrikiː](寄り木。流木)という。
ナーリプシ [⸢naːri⸣pu̥ʃi]流れ星。若年層の使用語。老年層は⸢ユー⸣ベープシ[⸢juː⸣beːpu̥ʃi](よばいぼし<夜這星>)という。
ナーリプス [⸢naːri⸣pu̥su]漂流者。「流れ人」の義。
ナーリフニ [⸢naːri⸣ɸuni]流れ舟。漂流船。
ナーリミジ [⸢naːri⸣miʤi]流水。流れ水。老年層は、ミ⸢ジピキ[mi⸢ʤipiki](流水。<水引>)ともいう。
ナーリムヌ [⸢naːri⸣munu]{1}漂流物。「流れ物」の義。老年層は、普通、⸢⸢ユーリムヌ[⸢juːrimunu](寄り物)という。
ナーリムヌ [⸢naːri⸣munu]{2}放浪する人。さすらいびと。流浪人。流れ者。
ナーリムヌ [⸢naːrimunu]楽器。三線や笛、鉦、銅鑼、太鼓など。「なりもの(鳴り物)」の義。
ナーリルン [⸢naːri⸣ruŋ]自動流れる。「流れる<下一段活用>」の転訛したもの。
ナール [⸢naːru]鳴り。鳴ること。音響。物音。
ナールミナ [⸣naːrumina](動)貝の名。ムカデガイ科、和名フタモチヘビガイ。⸣ナーラミナ[⸣naːramina]ともいう。殻は直径約1、5センチの丸いパイプ状で、長さ約5センチ。珊瑚礁の表面や岩礁の表面に蛇状に付着している。キチン質の蓋を有する。採取する時は平釘の先端を研いだ{釘箆}{クギ|ベラ}を管の入り口に差し込んで身を取り出す。身はカ⸢ラ⸣ス[ka⸢ra⸣su](塩漬け)にして酢で和えるとサクサクとした食感がある。甘味もあって美味であり、琉球料理店などで高値で売れた。鳩間島の珍味料理の一つである。鳩間島で2、3ヶ月の間イカ釣り漁をした糸満漁師は島人が製造したナールミナのカ⸢ラ⸣ス[ka⸢ra⸣su](塩辛)を買い付けて沖縄へ持参し、那覇市の料亭などに売りさばいたという。
ナールン [⸢naː⸣ruŋ]自動流れる。「流る<下二段>」の四段活用化したもの。「~たぎち流留<ナガルル>~。万、991」の転訛したもの。
ナールン [⸢naːruŋ]自動鳴る。響く。「~そよと奈流麻埿<ナルマデ>~。万、4398」の転訛したもの。
ナールン [⸢naːruŋ]他動手を長く突き出す。長く差し延べる。手を出す。
ナーレー [⸢naːre⸣ː]助詞連語。~だろうねえ。⸢ナー[naː](~ね)・ウ⸢レー[ʔu⸢reː](それは)の融合同化した形。{1}動詞の終止形について動作作用の確認を表す。
ナーレー [⸢naːre⸣ː]{2}疑問の終助詞に付いて、事柄に対する疑問、不確かであやふやな気持ちを表す。
ナーン [⸢naː⸣ŋ]長い。八十歳以上の古老が使用する。ナ⸢ガー⸣ン[na⸢gaː⸣ŋ](長い)<七十歳台以下の使用語>ともいう。
ナーン [⸣naːŋ]助詞連語。~にも。格助詞⸣ナー[naː](~に。場所)に係助詞⸣ン[ŋ](も)の付いた形。
ナーンカー ナーン クラシ [⸢naːŋ⸣kaː ⸢naːŋ⸣ ku⸢raʃi]無ければ無いなりの暮らし。⸢金が無ければ無いなりに慎ましやかに暮らせる」の意。<諺>
ナーンクトゥ [⸢naːŋ⸣ku̥tu]無いこと。嘘。実在しないこと。
ナーンナスン [⸢naːn⸣nasuŋ]他動無くなす。なくす。なくならせる。失う。
ナーンナルン [⸢naːn⸣naruŋ]自動無くなる。無いようになる。消失する。紛失する。
ナーンパー [⸢naːm⸣paː](植)菜っ葉。
ナーン リーヤ タティルナ [⸢naː⸣n ⸢riː⸣ja tḁ⸢tiru⸣na]無い例<前例の無いこと>は立てる<新設する>な。<諺>
ナイ [⸣nai]苗。「~佐野田の奈倍能<ナヘノ>~。万、3418」の転訛したもの。
ナイ [⸣nai]{1}長さ。空間的、時間的な長さ。→ [naga] → [nagi] → [nai] のように音韻変化したもの。対語は シ⸢マー[ʃi⸢maː](横)。
ナイ [⸣nai]{2}縦。
ナイ [⸣nai]地震。「地震、ナヰ」『類聚名義抄』の転訛。
ナイ ウラスン [⸣nai ʔu⸢ra⸣suŋ]苗を下ろす<種蒔きをする>。
ナイシマー [⸣naiʃimaː]めちゃくちゃになるさま。「縦が横になる」の義。
ナイシマー [⸣naiʃimaː]縦横。
ナイシマー ナリ [⸣naiʃimaː ⸣nari]縦は横になり。正常でなくなる様。ごちゃごちゃになる様。混雑するさま。
ナイダーチ [⸣naidaːʧi]長さに沿って。道の長さが続いて。長さのかぎりずっと。道沿いに。
ナイチ [⸢nai⸣ʧi]内地。日本本土のこと。「外地」の対義語。新しく標準語から借用された語。
ナイチプス [⸢naiʧi⸣pu̥su]内地人。本土の人。
ナイチャー [⸢nai⸣ʧaː]内知人に対する卑称。
ナイトースン [⸢naitoː⸣suŋ]他動薙ぎ倒す。雑草を横ざまに刈り払う。
ナイトゥリ [⸣naituri]苗取り。苗代から苗を取ること。
ナイナガー [⸣nainagaː]縦長。長さの長いもの。縦の長いもの。長方形。⸣ナギナガー[⸣naginagaː](長さの長いもの)ともいう。
ナイラスン [⸢naira⸣suŋ]他動萎えさせる。しおれさせる。{⸢ナイ⸣ルン[⸢nai⸣ruŋ](萎える)の未然形に使役の助動詞⸣スン[⸣suŋ](~せる。~させる)が下接して形成された使役動詞(派生動詞)}。
ナイルン [⸢nai⸣ruŋ]自動萎える。しおれる。しぼむ。野菜などの鮮度が失われてしなびる。気力、体力が抜けてぐったりする。
ナウスン [⸢nau⸣suŋ]他動{1}治す。治療する。若年層は⸢ノー⸣スン[⸢noː⸣suŋ](治す。直す。元通りにする)ともいう。
ナウスン [⸢nau⸣suŋ]他動{2}直す。元通りにする。
ナウリユー [⸢nauri⸣juː]豊年。稔りの年。
ナウルン [⸢nau⸣ruŋ]自動{1}治る。治癒する。元通りになる。老年層のことば。若年層は、⸢ノー⸣ルン[⸢noː⸣ruŋ](治る。治癒する)ともいう。
ナウルン [⸢nau⸣ruŋ]自動{2}作物が実る。豊作になる。
ナウレ [⸢nau⸣re]自動⸢ナウ⸣ル(稔る)(古謡語)の命令形、稔れ。⸢ナウ⸣レ[⸢nau⸣re]、⸢ナウ⸣リ[⸢nau⸣ri]。日常の方言では⸢ナウ⸣ルン[⸢nau⸣ruŋ](稔る)と言い、その命令形は⸢ナウ⸣リ[⸢nau⸣ri](稔れ<老年層>)、若年層は⸢ノー⸣リ[⸢noː⸣ri](稔れ)という。古謡「カムラーマ歌」では/パトゥマユーヌ ナウラバ トゥムルユーヌミギラバ~/(鳩間村<世>が稔ったら、友利御嶽の守護する村<世>が豊作になったら~)のように対句仕立てで歌われている。古謡「ユークイジラマ」では、/パトゥマユーヌ <囃子>ヨーホ トゥムリユーヌ ナウラバ<囃子>ヨーホ スイ ナウレ~/(鳩間村<世>が<囃子>ヨーホ 友利御嶽の守護する村が稔ったならば<囃子>すい稔れ)と歌われている
ナウン [⸣nauŋ]他動なう(綯う)。「搓・索、ナフ」『類聚名義抄』の転訛。縄を綯う。若年層は⸣ヌーン[⸣nuːŋ](綯う)ともいう。
ナカ [⸣naka]仲。人間関係。間柄。
ナカ [na⸢ka]中。内。心の中。胸中。
ナガ [na⸢ga]接頭長い。⸢ナー[⸢naː](長い)ともいう。
ナガー [⸣nagaː]長いもの。
ナカーッパ [⸣nakaːppa]祖父母の二番目の姉。「中祖母。中お祖母さん」の義。名称、呼称にいう。単に⸣アッパ[⸣ʔappa](お祖母さん)ともいう。
ナガーナガーシ [nagaː⸢nagaː⸣ʃi]長く。長々と(強調表現)。ニュートラルな表現では、ナ⸢ガーナガー⸣シ[na⸢gaːnagaː⸣ʃi](長々と。長く)のアクセント型を示す。
ナガーン [na⸢gaː⸣ŋ]長い。老年層は⸢ナー⸣ン[⸢naː⸣ŋ](長い)ともいう。「~今は長跡<ナガシト>たけといへど~。万、124」の転訛したもの。
ナガアサビ [na⸢gaʔasabi]長遊び。長時間遊びふけること。⸢ナーアサビ[⸢naːʔasabi](長遊び。遊びふけること)ともいう。
ナガアミ [na⸢gaʔami]{1}長雨。
ナガアミ [na⸢gaʔami]{2}梅雨の季節。
ナガイキ [na⸢gaʔiki]長生き。長命。
ナガイズ [na⸢ga⸣ʔiʣu](動)魚の名。和名、クサヤムロ(体長約25センチ)。糸満方言で、オオシマナガイユ、という
ナカイリ [na⸢ka⸣jiri]おくみ(衽)。
ナカウール [na⸢kaʔuː⸣ru]海底地名。中間の枝珊瑚地帯。タ⸢チ⸣バルパマ[tḁ⸢ʧi⸣barupama](立原浜)と⸢ピーン⸣ティジ[⸢piːn⸣tiʤi](干瀬の頂上)の間に⸢ズンズン[⸢ʣunʣuŋ](引き潮になると海水が干瀬の頂上部から⸢フンシキ{SqBr}⸢ɸuŋʃi̥ki{/SqBr}の方へ小さな滝のように流れ落ちるところ)があり、その西側に礁池部へ続く窪地がある。その一帯は⸢フンシキ[⸢ɸuŋʃi̥ki]といわれ、そこから更に北西部の⸢ピーヌ⸣クシ[⸢piːnu⸣ku̥ʃi](干瀬の頂上)に至る部分には、タ⸢カウー⸣ル[tḁ⸢kaʔuː⸣ru](枝サンゴ)が密生している。その一帯の地名をいう。潮干狩りをする島の女性たちは、ナ⸢カウー⸣ル一帯でタコやフ⸢クラ⸣ベー[ɸu̥⸢kura⸣beː](タスキモンガラ)類、イ⸢ラブ⸣チ[ʔi⸢rabu⸣ʧi](ブダイの仲間)、⸣ギラ[⸣gira](シャコ貝)等を漁獲した
ナカウビ [na⸢ka⸣ʔubi]中指。ナ⸢カ⸣イビ[na⸢ka⸣ʔibi](中指)ともいう。
ナカガイ [na⸢ka⸣gai]仲買。仲買人。ブローカー。
ナカ カイヤン [⸣naka ⸢kai⸣jaŋ]親しい。仲が良い。仲睦まじい。
ナカカマチ [na⸢kakama⸣ʧi]中の{竈}{カマド}。⸢パンガマ[⸢paŋgama](羽釜)や⸢スー⸣ナビ[⸢suː⸣nabi](汁鍋)を据える竈。
ナカグー [na⸢ka⸣guː]{1}なかご(中子)。瓜や南瓜、パパイヤ等果実の種子を含んだ部分。
ナカグー [na⸢ka⸣guː]{2}石垣を積む際に表の石積みと裏の石積みの間に入れる小石。
ナカグスク [na⸢kagusu̥⸣ku]目隠しの石塀<石垣>。首里では、hwinpuN。門と母屋の間にある、高さ約6尺、長さ約9尺の石塀。防風と目隠し、悪霊の進入を防ぐ等の機能があるという。鳩間島ではナ⸢カグス⸣ク[na⸢kagusu̥⸣ku]と母屋の軒との距離は葬儀の際に必要な、最低でも⸢ガンダラゴー[⸢gandaragoː](龕)の長さを必要とされていた。神事に関する客はナ⸢カグス⸣クの右<東>側を通って入室し、普段の客や不祝儀の客は、ナカグスクの左<西>側を通って入室した。ナ⸢カグス⸣クの内側にはパ⸢ナ⸣ギ[pa⸢na⸣gi](活花用の花卉類、イ⸢ツァン⸣パイキー{SqBr}ʔi⸢ʦam⸣paikiː{/SqBr}<榊。サカキ>、クロトン、トゥ⸢ラヌズー{SqBr}tu⸢ranuʣuː{/SqBr}<虎の尾>など)を植栽した。また、鑑賞用に薔薇をうえたり、生活に実用の⸢クース[⸢kuːsu](唐辛子。「胡椒」の義)を植栽する家もあった。
ナカグル [na⸢ka⸣guru]{1}中ごろ。時間的に用いる。
ナカグル [na⸢ka⸣guru]{2}果実の中身。瓢箪の中身。
ナカグルン [na⸢ka⸣guruŋ]他動道の途中に荷物を一度集積し、休憩して運び出す。中継ぎする。「中繰る」の転訛か。
ナカザ [na⸢ka⸣ʣa]台所の土間。母屋の西側に約1間巾に3間の張出を作り、炊事場とした。西壁に沿って土の竈を設置し、三番座との間に土間を作った。その土間をナ⸢カ⸣ザ[na⸢ka⸣ʣa](土間<中座>)という。農家では畑から帰って着替える間もなく台所仕事に取り掛からなければならないので、土間は便利であった。
ナカザー [⸣nakaʣaː]次兄。二番目の兄。ナ⸢カ・アー⸣ザ[na⸢ka・ʔaːʣa](中の兄)の約まったもの。
ナガサナイ [na⸢ga⸣sanai]長い褌。⸢ナー⸣サナイ[⸢naː⸣sanai](長褌)ともいう。鳩間島では鮫避けに六尺の赤い褌を着用したといわれている。
ナカザポーキ [na⸢ka⸣ʣapoːki]台所の土間用の箒。普通はソテツの葉で作った。
ナカザラ [na⸢ka⸣ʣara]中くらいの大きさの皿。中皿。⸢チュー⸣ザラ[⸢ʧuː⸣ʣara](中皿)ともいう。⸢ウー⸣ザラ[⸢ʔuː⸣ʣara](大皿)、⸢クー⸣ザラ[⸢kuː⸣ʣara](小皿)の対語。
ナカシ [na⸢ka⸣ʃi](地)西表島北岸浦内湾に流れ入るナ⸢ダラガーラ[na⸢daragaːra](ナダラ川)の南岸とニ⸢シダガーラ[ni⸢ʃidagaːra]の北岸一帯にに開けた水田地帯。
ナカシー [na⸢ka⸣ʃiː]なかぶた(中蓋)。内蓋。二重に取り付けた容器の内側の蓋。容器の中を上下に仕切る蓋。深さ約5センチの軽くて浅い箱状の蓋が容器の中に{填}{ハ}め込まれている。その上から蓋を被せるように作られている。「中巣」の義か。
ナカシゥカイ [na⸢ka⸣si̥kai]代理人。人と人の間に立って両方の用を果たす人。「中使い」の義。⸢マイ⸣シゥカイ[⸢mai⸣si̥kai](前使い。小間使い。走り使い)とは異なる。
ナカシケー [na⸢kaʃi̥⸣keː]屋号。仲底家。仲底真那氏宅。竹富町の除籍原本によると、宮良間切鳩間村三十七番地、前戸主仲底眞祢。亡夫妻仲底ヨホシ。天保十年十二月五日生。安政五年三月二十日同間切同村、亡加治工屋眞二女入籍。明治七年七月二十日相続。明治三十六年三月十五日死亡。同月十八日届出。明治二十三年六月二十日、同間切同村、鳩間慶佐長男入籍ス。養子、眞阿禰。明治十五年十一月八日生。明治三十七年九月十二日家督相続届出受付、とある。従って現在の仲底真那氏は鳩間家血統の養子眞阿禰の子孫ということになる。伝承によると、古典民謡⸢鳩間中岡」の原歌は仲底家のマンナ主であるという(鳩間真吉氏伝承)。それが「前戸主仲底眞祢」を指すのかどうか、検討する必要がある。
ナカシケー [na⸢ka⸣ʃi̥keː]搗き臼の口縁部に嵌めるゆりわ(揺輪)。杵で米搗きをする際に、米粒が飛散するのを防ぐ道具。「中揺輪」の義。単に⸣シケー[⸣ʃi̥keː](揺輪)ともいう。
ナカシザ [⸣nakaʃiʣa]中堅の年上。年輩。「中兄者」の義。村落社会を構成する中堅層(三十歳代~四十歳代)で村の年中行事や生活習慣、その他の諸々のことに通じた実行力のある指導層の人々。⸣シザウヤ[⸣ʃiʣaʔuja](五十歳代以上)とバ⸢カー⸣ムヌ[ba⸢kaː⸣munu](若者。二十歳代以下)の中間にあって、社会的に両者の橋渡しをする。
ナガシジキ [na⸢gaʃiʤiki]長続き。古老は、⸢ナーシジキ[⸢naːʃiʤiki](長続き)という。
ナガシビ [na⸢gaʃibi]ちょうざ(長座)。ながい(長居)。「長尻」の義。⸢ナーシビ[⸢naːʃibi](長座。長尻)ともいう。特に、酒席で長座することを、ナ⸢マ⸣シキ ⸢スン[na⸢ma⸣ʃi̥ki ⸢suŋ](焦げ付く)という。
ナカジル [⸣nakaʤiru](地)。西表島の船浦湾の奥<南>に流入する⸢マーレーガーラ[⸢maːreːgaːra](マーレ川)の西側、ヤシ川の川上一帯のナ⸢カ⸣ダ[na⸢ka⸣da](仲田)の東に位置する水田地帯。河口一帯はヒルギが群生しているので、1955年頃は満潮時を利用して⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](サバニ)で田圃へ行き来した。
ナカジル [na⸢ka⸣ʤiru]三線の中の弦。第二弦。⸢ウー⸣ジル[⸢ʔuː⸣ʤiru](雄弦)と⸢ミー⸣ジル[⸢miː⸣ʤiru](女弦。小弦)の中間の弦。
ナカスー [na⸢ka⸣suː]中潮。干満の差が中ぐらいの時の潮時。大潮と小潮の中間の潮時。
ナガスディ [na⸢ga⸣sudi]長袖。⸢ハン⸣スディ[⸢han⸣sudi](半袖)の対義語。
ナカスン [na⸢kasuŋ]他動泣かす。
ナガスン [na⸢ga⸣suŋ]他動{1}流す。液体を流す。普通は、⸢ナーラ⸣スン[⸢naːra⸣suŋ](流す)という。
ナガスン [na⸢ga⸣suŋ]他動{2}散水機を掛けてカツオを釣る際に、スクリューを止めて船を潮の流れに浮かべて流すこと。
ナカダ [na⸢ka⸣da]地名。船浦湾底のやや西寄りに流入する船浦川の上流、⸢ソー⸣ジ[⸢soː⸣ʣi]の南に開けた水田地帯。美田地帯であったが、戦後米軍の伐採隊が水源地帯にブルトーザーを入れて伐採したのため、大雨で流出した赤土がシ⸢キム⸣トゥ[ʃi̥⸢kimu⸣tu](堰元。水源に近い所)のカ⸢ザケー[ka⸢ʣakeː](加治工家)の水田を全部埋めてしまった。その後、被害のなかったフ⸢ク⸣マレー[ɸu̥⸢ku⸣mareː](友利家)、トゥ⸢ムシェー[tu⸢museː](宮良家)、シ⸢マフ⸣ケー[ʃi⸢maɸu̥⸣keː](島袋家)の水田も耕作されなくななり、放置されたままになっている
ナカタガイ [na⸢kataga⸣i]仲たがい。なかちがい。仲が悪くなること。
ナカダチ [na⸢kada⸣ʧi]仲立ち。仲介人。仲介すること。媒酌人。古老はナ⸢カダ⸣ティ[na⸢kada⸣ti](仲介人。媒酌人)ともいう。
ナカダティ [na⸢kada⸣ti]仲立ち。仲人。仲介人。媒酌人。ナ⸢カダ⸣チ[na⸢kada⸣ʧi](仲介人)に同じ。
ナガタビ [na⸢gatabi]長旅。長期旅行。
ナカディ [na⸢ka⸣di]中間程度の大きさ。手頃な大きさ。大きくもなく、小さくもない中程度の大きさ。⸢中手」の転訛したもの。
ナカディプス [na⸢kadi⸣pu̥su]中堅の人。壮年の人。⸢ウイ⸣プス[⸢ʔui⸣pu̥su](老人)とバ⸢カー⸣ムヌ[ba⸢kaː⸣munu](若者)の中間の人。
ナカディムヌ [na⸢kadi⸣munu]手頃の物。中程のもの。大きさの大中小、質の上中下のうちの中程度のもの。
ナカドーミチ [na⸢kadoː⸣miʧi]地名。石垣市の登野城から平得、真栄里へ通ずる大きな道。大きなアコウの大木が生えており、民謡トゥバラーマ節にも歌われている古道。
ナカトゥ [na⸢ka⸣tu]{砥石}{ト|イシ}の中で中間の荒さのもの。ア⸢ラトゥ[ʔa⸢ratu](荒い砥石。斧や山刀を研ぐ砥石)とク⸢マトゥ[ku⸢matu](細かい砥石。鑿や鉋、剃刀などの刃を研いで仕上げる砥石)との中間の砥石。包丁などを研ぐのに用いる砥石。
ナカ トゥルン [⸣naka ⸣turuŋ]仲裁する。仲直りさせる。仲を取り持つ。和解させる。
ナカ トゥルン [na⸢ka⸣ turuŋ]中間を取る。双方にとって公平になるようにする。「中を取る」の義。
ナカナウリ [na⸢kanau⸣ri]仲直り。和睦。喧嘩の後仲良くなること。
ナカナカ [na⸢kanaka]泣かんばかりに。泣きそう。泣きべそかいて。「泣こう泣こうして」の義。
ナカナカー スン [na⸢kanakaː suŋ]今にも泣き出そうとする。泣きそうになる。泣きべそをかく。「泣こう泣こう・する」の義。
ナガナキ [na⸢ganaki]長泣き。長時間泣くこと。普通は⸢ナーナキ[⸢naːnaki](長泣き)という。
ナカヌ スニ [na⸢kanu⸣ suni]海底地名。⸢中の曽根」の義。⸢マイ⸣ズニ[⸢mai⸣ʣuni](前曽根)の中の中央部の曽根。鳩間桟橋と、真南に位置するパ⸢トゥ⸣マレー[pḁ⸢tu⸣mareː](鳩離島)を結ぶ線上に位置する。その西側の⸢イーリマイズニ[⸢ʔiːrimaiʣuni](西前曽根)との間にある曽根の切れ目が⸢ウイバル(上原)やフ⸢ノー⸣ラ(船浦)へ往来する⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](サバニ)等の小船以外通行出来ない⸢トゥーラン⸣フチ[⸢tuːraŋ⸣ɸu̥⸢ʧi](通りぬけられない津口)である
ナガヌチ [na⸢ganuʧi]長命。長生き。「ながいのち(長命)」の転訛したもの。
ナカノーリ [na⸢kanoː⸣ri]仲直り。古老は、ナ⸢カナウ⸣リ[na⸢kanau⸣ri](仲直り)という。
ナカノーリ [na⸢kanoː⸣ri]一時快方にむかうこと。病気の一時的治癒。
ナカバ [na⸢ka⸣ba]半ば。中途。中ごろ。
ナガパタラキ [na⸢gapataraki]長働き。長く働くこと。長時間労働。
ナガパナシ [na⸢gapanaʃi]長話。⸢ナーパナシ[⸢naːpanaʃi](長話)ともいう。
ナガハマ [na⸢ga⸣hama](植)サツマイモの品種名。白色で皮が薄く、甘味がすくない。ぽろぽろした食感があった。四、五年で作付けされなくなったようである。
ナカバヤビ [na⸢kaba⸣jabi]中年になって身を持ち崩すこと。半ば破れ。
ナカバヤブリ [na⸢kabajabu⸣ri]青年期に不良になること。青年期にぐれること。「中途破れ」の義。
ナカバラー [na⸢ka⸣baraː]大黒柱。「中柱」の義。家の中心部にある柱。棟の方に達する一本柱。イ⸢チバン⸣ザー[ʔi⸢ʧiban⸣ʣaː](一番座)と⸢ニーバン⸣ザー[⸢niːban⸣ʣaː](二番座)の中間に立つ柱。普通は⸢キャーンギ[⸢kjaːŋgi](槙。イヌマキ)、⸣イゾイキー[⸣ʔiʣoikiː](モクコク)の大木を使用した。家の祈願はこの柱に向かってなされる。家の構造体の中心となる柱。
ナカバリ [na⸢ka⸣bari]一つの物を二分すること。真二つに割ること。「中割り」の義。
ナカビ [na⸢ka⸣bi]なかぞら(中空)。中天。「中辺」の義という『石垣方言辞典』。
ナガビクン [na⸢gabikuŋ]自動長引く。
ナガビリ [na⸢gabiri]{1}長居。長座。「長座り」の義。ナ⸢ガシビ[na⸢gaʃibi](長尻)ともいう。
ナガビリ [na⸢gabiri]{2}トイレの長いこと。
ナカプー [na⸢ka⸣puː]中帆。本帆と{弥帆}{ヤ|ホ}の間に立つ柱に張る帆。三本マストの中間の帆柱に張る帆。本帆より一回り小型の帆。
ナカフクル [na⸢kaɸu̥ku⸣ru]山の中腹。山腹。
ナカフタ [na⸢ka⸣ɸuta]おとしぶた(落し蓋)。鍋の中の食材と蓋の間に置くもの。「中蓋」の義。多くの場合、芭蕉の葉を鍋の中の食材に直接かぶせて中蓋とし、更に本蓋をして煮た。
ナカブニ [na⸢ka⸣buni]動物の脊椎。背骨。「中骨」の義。カツオのナ⸢カ⸣ブニ[na⸢ka⸣buni]や⸢ズーブニ[⸢ʣuːbuni](尾びれ)は出汁を取るのに用いたり、畑の肥料にしたりした。鰹節製造工場からは多量のカツオの脊椎や尾びれが廃棄された。
ナカマガーラ [na⸢kamagaː⸣ra]川の名。仲間川。西表島東部の大原集落と大冨集落の間に河口を有する川。河口の汽水地帯にヒルギの大群落がある
ナカマミツケー [na⸢ka⸣mamiʦukeː]人物名。仲間満慶。十五世紀頃に活躍した川平村の豪傑。豪族オヤケアカハチによって殺されたと伝えられている
ナカマムラ [na⸢ka⸣mamura]村落名。仲間村。琉球王国時代から明治41年に存在した村の名。1737年(元文2年)、竹富島から西表島の仲間村へ移民させられた。明治37年に廃村。戦後、沖縄本島北部の大宜味村と竹富町からの移民によって大冨となった
ナガミ [na⸢ga⸣mi]眺め。見わたすこと。眺望。景色を見わたすこと。遠くをのぞむこと。ナ⸢ガ⸣ムン[na⸢ga⸣muŋ](眺める)の連用形から転成した名詞。
ナカミー [na⸢ka⸣miː]{1}中身。内容。
ナカミー [na⸢ka⸣miː]{2}吸い物などのたね<種。汁の実>。豚の内臓の吸い物。
ナカミーヌ シームヌ [na⸢kamiː⸣nu ⸢ʃiːmunu]豚の内臓の吸い物。沖縄本島方言からの借用語。
ナガミク [na⸢gami⸣ku]長め句。アーパーレー歌等の歌謡で前半部を「ゆったりした調子で歌う句」の意。
ナガミクー [na⸢gami⸣kuː]古謡アーパーレー(新室寿歌)のメメロディーの一つ。前半のゆったりした歌い方。
ナカミチ [na⸢ka⸣miʧi]真ん中の道。「中道」の義。旧鳩間郵便局の前を東西に走る道。この道を境に、上の方を⸢ウイヌムラ[⸢ʔuinumura](上の村)といい、下の方を、ス⸢モー[su⸢moː](下の方)といっていた。
ナガミルン [na⸢gami⸣ruŋ]他動眺める。見渡す。
ナカムカシ [na⸢kamuka⸣ʃi]中昔。⸢ウームカシ[⸢ʔuːmukaʃi](大昔)とマ⸢ナ⸣マ[ma⸢na⸣ma](今。現在)の中間。曾祖父母の世代。
ナガムティ [na⸢gamuti]{1}長持ち。長く維持、保存されること。古老は、⸢ナームティ[⸢naːmuti](長持ち)という。
ナガムティ [na⸢gamuti]{2}長命すること。長く生きること。
ナガムヌ [na⸢ga⸣munu]ハブ(毒蛇)の隠語。「長もの」の義。⸢カン⸣フチ[⸢kaŋ⸣ɸu̥ʧi](祝詞。神口)で、直接にハブを表出することはタブーたされ、それを避けて言う語
ナカムル [na⸢ka⸣muru]一合枡。
ナガムン [na⸢ga⸣muŋ]他動眺める。「眺む<下二段活用>」の四段活用化したもの。
ナカヤー [⸣nakajaː]真中の家。⸢中家」の義。ウ⸢ブ⸣ヤー[ʔu⸢bu⸣jaː](母屋)と⸢トー⸣ラ[⸢toː⸣ra](炊事後屋)の間にあった小屋。
ナカヤドゥ [na⸢ka⸣jadu]座敷を区切る板張りの戸。「中戸」の義。古い家には一番座と二番座の間に板戸を立てて、ナ⸢カ⸣ヤドゥ[na⸢ka⸣jadu](中戸)と称していた。
ナカ ヤニヤン [⸣naka ja⸢ni⸣jaŋ]仲が悪い。
ナカヤビ [na⸢ka⸣jabi]中年になって身を持ち崩すこと。青年後期に素行がみだれること。ナ⸢カヤブ⸣リ[na⸢kajabu⸣ri](中破れ)ともいう。
ナガヤブリ [na⸢gajaburi]長期悪天候。長期間天候が悪くなること。「長破れ」の義。
ナガヤン [na⸢gajaŋ]長患い。⸢長病み」の義。普通は⸢ナーヤン[⸢naːjaŋ](長患い。長病み)という。
ナカユー [na⸢ka⸣juː]「なかよ(中世)」の義。⸢ウームカシ[⸢ʔuːmukaʃi](大昔。鼻祖の世代)とイ⸢マ⸣ユー[ʔi⸢ma⸣juː](現代<今世>)との中間の時代。ほぼ曾祖父の時代に相当する世代。
ナガユー [na⸢gajuː]長寿。長い寿命。長生きすること。「長い世」の義。
ナカユークイ [na⸢kajuː⸣kui]中休み。途中休憩。「中憩い」の義。
ナカユッカ [na⸢kajuk⸣ka]中床板。
ナカラ [na⸢ka⸣ra]半分。なかば。途中。「Nacara.ナカラ(半ら)どんな物にもせよ、その半分の量」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
-ナガラ [⸢-nagara]接助~ながらも。~つつも。上接語動詞の同時進行を表しつつ、前件と後件が逆の結果となる逆接の意味を表す。
ナガライルン [na⸢garairuŋ]自動生き永らえる。長生きする。
ナカラウイプス [na⸢karaʔui⸣pu̥su]初老。「半ば老人」の義。
ナガラウン [na⸢garauŋ]自動生き永らえる。長生きする。「永らふ<下二段活用>」の四段活用化したもの。
ナガラク [na⸢garaku]長らく。長期に。老年層は⸢ナー⸣サ[⸢naː⸣sa](長らく。長く)ともいう。
ナカラタティ [na⸢kara⸣tḁti]中腰。「半ら立ち」の義。
ナカラニー [na⸢kara⸣niː]半分荷。船に積載量の半分しか積載しないこと。⸢マン⸣シン[⸢maŋ⸣ʃiŋ](満船)の反義語。
ナカラバタ [na⸢kara⸣bata]腹半分。腹五分。半分満ちたお腹。「半分腹」の義。
ナカラフニ [na⸢kara⸣ɸuni]積載量の半分しか積んでない船。
ナカラミチ [na⸢kara⸣miʧi]半分道。道半ば。
ナカラムヌ [na⸢kara⸣munu]感情の激しやすい人。粗暴な性格の人。度量の狭い者。「半分程度の人」の義。
ナカラヤビ [na⸢kara⸣jabi]中途半端に身を持ち崩すこと。中途半端な不良。
ナガリ [na⸢ga⸣ri]流れ。⸢ナー⸣リ[⸢naː⸣ri](流れ)ともいう。
ナガワチライ [na⸢gawaʧirai]長患い。長期間病気になること。「長患い」の転訛したもの。
ナカワリ [na⸢ka⸣wari]鰹節製造過程で、生のカツオを三枚おろしにして、その上身と下身を更に半分に切り分けること。
ナカングシチ [na⸢kaŋguʃi̥⸣ʧi]屋号。久しく空屋敷となっていたが、1957年ごろの一時期、そこに鳩間青年団が会館を建築し、青年団研修の場所として利用され、部落常会などにも使用されていた所
ナカンテー [na⸢kan⸣teː]屋号。仲本長栄氏宅。仲本家。フ⸢シ⸣マヤー[ɸu̥⸢ʃi⸣majaː](黒島家)ともいう。ナ⸢カン⸣テー[na⸢kan⸣teː]は、ナ⸢カン⸣トゥ[na⸢kan⸣tu](仲本)に接尾辞⸣テー[⸣teː](<~の家>。接尾語⸣~ヤー{SqBr}⸣~jaː{/SqBr}が前接語の末尾母音と音韻の融合変化を起こして、⸣~テー{SqBr}⸣~teː{/SqBr}となったもの)が付い生成された合成語。屋号の語構成法から、黒島系統の古い移住者の屋号と考えられる。
ナカンテーヌ ヤシキ [na⸢kan⸣teːnu ⸢jaʃi̥⸣ki]屋敷名。空き屋敷。
ナカンブレ [na⸢kam⸣bure]地名。なかもり(中岡)。明治期に作成された古地図では「仲盛」と表記されている。従来は「中森」の表記が通用している。しかし、鳩間方言では、ム⸢ル[mu⸢ru](岡)は「土地の盛り上がった所」の意味である。「森」を意味する鳩間方言は、⸣ウガンヤマ[⸣ʔugaŋjama](御嶽の森<山>)、パ⸢カヤマ[pḁ⸢kajama](墓の森<山>)などのように、⸣ヤマ[⸣jama](山。林)といっている。従って、島の中央部が盛り上がっている意味のナ⸢カン⸣ブレ[na⸢kam⸣bure]は、「中岡」と表記することが正しい。
ナカンマ [⸣nakamma]中の姉。⸣ナカアンマ[⸣nakaʔamma](中の姉)の転訛<約言>したもの。
ナキアカスン [na⸢kiakasuŋ]自動泣き明かす。一晩中泣き続けて夜を明かす。
ナキアザ [na⸢kiaʣa]泣きぼくろ。目にあるほくろ。
ナキカカルン [na⸢kikakaruŋ]自動泣きかかる。泣きつく。
ナキグイ [na⸢kigui]泣き声。動物の鳴き声。老年層は、ナ⸢キングイ[na⸢kiŋgui](鳴き声。泣き声)ともいう。
ナキクガルン [na⸢kikugaruŋ]自動泣き焦がれる。思い焦がれて泣く。
ナキクラスン [na⸢kikurasuŋ]自動泣き暮らす。泣いて日々を過ごす。
ナキ ザマンドゥルン [na⸢ki⸣ ʣa⸢man⸣duruŋ]泣いて戸惑う。泣きすぎて途方にくれる。
ナキジラ [na⸢kiʤira]泣き顔。泣き出しそうな顔つき。「泣き面」の転訛したもの。
ナキニビ [na⸢kinibi]泣き寝。泣き寝入り。泣きながら寝入ること。
ナキバカリ [na⸢kibakari]泣き別れ。
ナキバライ [na⸢kibarai]泣いたり笑ったり。
ナキブー [na⸢kibuː]泣き虫。ナ⸢キブサー[na⸢kibusaː](泣き虫)の卑しめた言い方。
ナキブガリ [na⸢kibugari]泣き疲れること。
ナキブガリルン [na⸢kibugari⸣ruŋ]自動泣き疲れる。
ナキブサー [na⸢kibusaː]泣き虫。ナ⸢キフチ[na⸢kiɸu̥ʧi](泣き虫)の卑称。相手を{卑}{イヤ}しめた言い方。
ナキフチ [na⸢kiɸu̥ʧi]泣き虫。泣き味噌。ちょっとしたことにもよく泣く子。
ナキマービ [na⸢kimaːbi]泣き真似。
ナキムニ [na⸢kimuni]泣きながら喋る言葉。泣きながら不平不満を述べること。泣きわめく<喚く>こと。「泣き物言い」の義。
ナキヤムン [na⸢kijamuŋ]自動泣き止む。
ナキングイ [na⸢kiŋgui]泣き声。ナ⸢キグイ[na⸢kigui](泣き声。動物の鳴き声)ともいう。
ナグイ [na⸢gui]うねり。風がおさまってのちも、なお暫く立っている波。「なごり(余波)」「なごろ(余波)、~潮干の奈疑<なごり>~。万、976」、「波、ナゴロ」『類聚名義抄』の転訛したもの。ウ⸢ブ⸣ナン[ʔu⸢bu⸣naŋ](大波)ともいう。
ナグサミ [na⸢gusami]慰め。気晴らし。
ナグサミルン [na⸢gusamiruŋ]他動慰める。気をまぎらす。
ナグサムン [na⸢gusamuŋ]他動慰める。
ナクラースコー [na⸢kuraː⸣su̥koː]恐ろしいほど。恐ろしく。非常に多く。
ナクラーン [na⸢kuraː⸣ŋ]{1}恐ろしい。怖い。
ナクラーン [na⸢kuraː⸣ŋ]{2}危険である。危ない。
ナグラワン [na⸢gurawaŋ]地名。名蔵湾。石垣島南西部、富崎と屋良部半島の間に形成された半円状の湾。
ナクン [na⸢kuŋ]自動泣く。鳴く。「~吾が那久那美多<ナクナミダ>~。万、798」の転訛したもの。
-ナクン [⸢-na⸣kuŋ]接尾~こむ。動詞の末尾に付いて強意を表す。
ナケー [⸣nakeː]{1}泣き虫。よく泣く子。ナ⸢キブサー[na⸢kibusaː](泣き虫)ともいう。
ナケー [⸣nakeː]{2}女の名。
ナサー [⸣nasaː]{1}多産の女性。子供を多く生む女。
ナサー [⸣nasaː]{2}繁殖用母豚。
ナサガスン [na⸢sagasuŋ]他動けなす({貶}{ケナ}す)。くさす。そしる(謗る)。名誉を傷つける。
ナサキ [na⸢sa⸣ki]情け。愛情。人情。「Nasaqe.ナサケ(情) あわれみの情、または愛情」『邦訳日葡辞書』の義。
ナサスン [na⸢sa⸣suŋ]他動産ませる。他動詞⸣ナスン[⸣nasuŋ](産む)の未然形に使役の助動詞⸣-スン[⸣-suŋ](~せる。~させる)が付いて形成された使役動詞。
ナサビ [na⸢sa⸣bi](植)野菜の一種。ナスビ(茄子)。「茄子、奈須比(なすび)」『和名抄』、「Nasubi.ナスビ(茄子)」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。御盆<盂蘭盆>に歌われる⸢ニンブ⸣ツァー[⸢nimbu⸣ʦaː](念仏歌。⸢ウシトゥ⸣ヌ ⸣クイ{SqBr}⸢ʔuʃi̥tu⸣nu ⸣kui{/SqBr}<弟の声>)には、「~ウギヌスラ ウリナスビ~(~甘蔗の茎にウリ、ナスビ~)」とあるが、口語ではナ⸢サ⸣ビ[na⸢sa⸣bi](ナスビ)という。
ナサラカサラ [na⸢sarakasa⸣ra]種々。さまざま。いろいろ。様々な[g]{下手物}{ゲテモノ}。
ナサリカー [na⸢sa⸣rikaː]できたら。できるなら。可能なら。なるべく。「成されるなら」の義。
ナサリン [na⸢sa⸣riŋ]自動できる。「成される」の義。
ナサンウヤ [na⸢saŋ⸣ʔuja]生さぬ親。マ⸢マウヤ[ma⸢maʔuja](ままおや<継親>)ともいう。ナ⸢シ⸣ヌウヤ[na⸢ʃi⸣nuʔuja](産みの親。実の親)の対義語。
ナサンッふァ [na⸢saŋ⸣ffa]生さぬ子。ままこ<継子>。ナ⸢シヌ⸣ッふァ[na⸢ʃinu⸣ffa](実子。生みの子)の対義語。
ナシアガルン [na⸢ʃiʔaga⸣ruŋ]自動産みあがる。出産可能な時期が過ぎる。
ナシアトゥ [na⸢ʃi⸣ʔatu]産後。
ナシゥカサ スン [⸢nasi̥ka⸣sa ⸢suŋ]懐かしく思う。懐かしがる。恋しがる。慕う。
ナシゥカサン [⸢nasi̥ka⸣saŋ]{1}なつかしい(懐かしい)。「~今見れば山夏香思母<なつかしも>~。万、1333」の転訛。
ナシゥカサン [⸢nasi̥ka⸣saŋ]{2}悲しい。
ナシキ [⸢naʃi̥ki]口実。かこつけること。こと寄せること。「名付け」の義。
ナシキカシキ [⸢naʃi̥kikaʃi̥⸣ki]かこつけ(託け)ること。「名付け{託}{カコツケ}」の義か。他の事を口実にすること。他のことにことよせること。
ナシキムニ [⸢naʃi̥kimuni]他の事にかこつけ<{託}{カコツ}け>てする言い訳や申し訳。弁解。
ナシキルン [⸢naʃi̥kiruŋ]他動口実にする。言い訳にする。事寄せる。かこつける。「名付ける」の義。
ナシクン [⸢naʃi̥kuŋ]他動事寄せる。かこつけ(託け)る。口実にする。
ナシシキ [na⸢ʃi⸣ʃi̥ki]臨月。産み月。「生し月」の義。
ナシゾージ [na⸢ʃiʣoː⸣ʤi]産み上手。安産の人。お産の軽い人。
ナシッキラー [⸣naʃikkiraː]一人っ子。
ナシックル [na⸢ʃik⸣kuru]末っ子。「生し殻」の義。先に生まれた者に中身の良いものがすっかり取られてしまい、末っ子は残り殻だけだという意味。
ナシッふァ [na⸢ʃi⸣ffa]生みの子。実子。「生し子」の義。⸢イーリ⸣ッふァ[⸢ʔiːri⸣ffa](貰い子)の対義語。
ナシヌ ウヤ [na⸢ʃi⸣nu ⸣ʔuja]生みの親
ナシヌウヤ [na⸢ʃi⸣nuʔuja]生みの親。実の親。⸢ソーウヤ[⸢soːʔuja](真の親。本当の親)ともいう。
ナシヌッふァ [na⸢ʃinu⸣ffa]実子。自分の産んだ子。「産みの子」の義。「~授け給へる宇美乃古能<ウミノコノ>~。万、4465」の転訛したもの。「~おのが生さぬ子なれば~」『竹取物語』参照。
ナシパンジョー [⸣naʃipanʤoː]子孫繁盛。子孫繁栄。子宝に恵まれること。「生し繁盛」の義。
ナシマイ [na⸢ʃi⸣mai]産前。出産の直前。
ナシユースン [na⸢ʃijuː⸣suŋ]自動出産できる。
ナシンガタ [na⸢ʃiŋ⸣gata]産む頃。臨月。
ナスクン [⸢nasu̥kuŋ]他動かこつけ<託け>る。口実にする。言い訳にする。言寄せる。
ナスビ [na⸢su⸣bi](植)野菜の一種。なす(茄子)。歌謡語。日常会話では、ナ⸢サ⸣ビ[na⸢sa⸣bi](茄子)という。「茄子、奈須比(なすび)」『和名抄』の転訛したもの。/ウギヌ スラ ウリ ナスビ キザンムヌ シースヌ ウハンキヌ ミジスイティ~/(砂糖黍の茎、ウリ ナスビの刻んだもの、メドハギ<蓍萩。マヤーブー>の束で戸外へ撒き撥ねて無縁仏に布施をするミジヌクーに水を添えて)「念仏歌(ウシトゥヌクイ<弟の声>)」『鳩間島古典民謡古謡集』
ナスン [⸣nasuŋ]他動産む。「生す。おのが生さぬ子なれば~。『竹取物語』」の義。
ナスン [⸣nasuŋ]他動なす(為す)。~にする。自動詞⸣ナルン[⸣naruŋ](なる)の対語。
ナダ [⸣nada]涙。「ま袖持ち奈美太<なみだ>をのごひ~。万、4398」の転訛。
ナダカ [na⸢da⸣ka]物の高さ。たけ(丈)。
ナダグルグルー [⸣nadaguruguruː]涙ぐむさま。目を潤ませるさま。
ナダシトゥルンケーリ [na⸢daʃi̥turuŋkeː⸣ri]涙ぐむさま。涙がじわっとにじみ出るさま。涙がしっとりとにじみ出るさま。
ナダズーワン [na⸢daʣuː⸣waŋ]なかなか涙を見せないさま。強く涙を堪えることが出来るさま。
ナダ ホースン [⸣nada ⸢hoː⸣suŋ]涙を落とす。涙を流す。「涙降らす」の義。
ナダマールン [na⸢damaː⸣ruŋ]自動涙ぐむ。目が潤む。
ナダミルン [na⸢dami⸣ruŋ]他動なだめる(宥める)。穏やかにする。機嫌をとる。しずめる。怒りや悲しみの感情を和らげる。
ナダムン [na⸢da⸣muŋ]他動宥める。機嫌をとる。しずめる。怒りや悲しみの感情を和らげる。「なだむ(宥む)下二段活用」の四段活用化したもの。「寛、ナダム・ユルス」『類聚名義抄』の転訛。
ナダヤシー [na⸢dajaʃiː]連体簡単な。易しい。
ナダヤッサン [na⸢dajas⸣saŋ]おとなしい(大人しい)。優しい。性格が穏やかである。
ナダヨーン [na⸢dajoː⸣ŋ]涙もろい。「涙弱い」の義。
ナダラカ [na⸢dara⸣ka]平ら。勾配のゆるいさま。平らかなさま。
ナダラカスン [na⸢darakasuŋ]他動平坦にする。均す。平らかにする。
ナダラカミチ [na⸢darakamiʧi]平坦な道。
ナダラクン [na⸢darakuŋ]他動なだらかにする。平らかにする。
ナチ [na⸢iʧi]夏。「~鮎走る 奈都能左加利等<ナツノサカリト>~。万、4011」の転訛。
ナチアシブ [na⸢ʧiʔaʃibu]あせぼ(汗疹)。「夏あせぼ」の義。「Axebo.アセボ(熱沸瘡・汗瘡) あせも、または水疱」『邦訳日葡辞書』。
ナチアミ [na⸢ʧiami]夏の通り雨。そばえ。
ナチアモーリ [na⸢ʧiʔamoːri]夏の雨。夕立。にわか雨。「夏あまぐれ」の義。
ナチキン [na⸢ʧi⸣kiŋ]夏着。夏用衣服。「夏衣(素、キヌ。『類聚名義抄』)」の転訛。
ナチマキ [na⸢ʧimaki]夏ばて。暑気あたり。夏負け。夏の暑さのために体が衰弱すること。
ナチムヌ [na⸢ʧi⸣munu]夏物。夏の着物。⸣バサキン[⸣basakiŋ](芭蕉布の着物)や⸣ブーキン[⸣buːkiŋ](麻布の着物)をいう。
ナツァーラ [na⸢ʦaː⸣ra](植)海草の名。かいにんそう(海人草)。回虫駆除薬として重用された。鳩間島の海岸や西表島北岸の海岸で採集された。これを乾燥して石垣島へ輸出した。島の学校では、毎年夏に回虫駆除のため、全校生徒にナツァーラを煎じて飲ませた。
ナツァガスン [na⸢ʦagasuŋ]他動はかどらせる(捗らせる)。
ナツァグン [na⸢ʦaguŋ]自動はかどる(捗る)。らちがあく(埒が明く)。
ナツァラカツァラ [na⸢ʦarakaʦa⸣ra]色々様々。あれやこれや。つまらないことども。
ナツァラカツァラ [na⸢ʦa⸣rakaʦara]いろいろ。さまざま。ABCDBC型の重言。
ナッチン [⸢nat⸣ʧiŋ]{1}同じ小ささ。
ナッチン [⸢nat⸣ʧiŋ]{2}小さいものを表す。
ナットゥク [⸢nattu⸣ku]納得。承知すること。認めること。標準語からの転訛。老年層は、キ⸢ム⸣フグン[ki⸢mu⸣ ɸuguŋ](満足する。納得する)という。
ナティ [⸢na⸣ti]接尾日、年を表す語に付いて、⸢~日(年)前」の意味を表す。何日前、何年前。{1}⸣キノー[⸣kinoː](昨日)、⸢ブシ⸣トゥイ[⸢buʃi̥⸣tui](一昨日)、⸢ミーカナ⸣ティ[⸢miːkana⸣ti](三日前の日)、⸢ユーカナ⸣ティ[⸢juːkana⸣ti](四日前の日)。
ナティ [⸢na⸣ti]接尾{2}⸣クズ[⸣kuʣu](去年)、⸢ミーティナ⸣ティ[⸢miːtina⸣ti](三年前)、⸢ユーティナ⸣ティ[⸢juːtina⸣ti](四年前)。
ナディマースン [na⸢dimaː⸣suŋ]他動撫で回す。手のひらで撫でる。
ナディルン [na⸢di⸣ruŋ]他動撫でる。優しくさする。⸣ナドゥン[⸣naduŋ](なづ<撫づ>)ともいう。「~袖もち奈弖氐<ナデテ>わがからに~。万、4356」の転訛したもの。
ナドゥ [⸣nadu]{1}空間的長さ。
ナドゥ [⸣nadu]{2}時間的長さ。
ナドゥン [⸣naduŋ]他動撫でる。「なづ(撫づ)下二段活用」の四段活用化したもの。「梳、ナヅ」『類聚名義抄』。「我が母の袖もちなでて~。万、4356」の転訛。
ナナ [⸣nana](数)数の名。なな(七)。しち。⸢ティー[⸢tiː](ひとつ)、⸢ター[⸢taː](二つ)、⸢ミー[⸢miː](みっつ)、⸢ユー[⸢juː](四つ)、⸣イチ[⸣ʔiʧi](五つ)、⸢ムー[⸢muː](六つ)、⸣ナナ[⸣nana](七つ)、⸢ヤー[⸢jaː](八つ)、ク⸢ク⸣ヌ[ku̥⸢ku⸣nu](九つ)、⸢トゥー[⸢tuː](十)の⸢七つ」の意。
ナナイラ [na⸢nai⸣ra]七枚。七平。⸢イラ⸣ [⸢ira⸣] は皿や紙などを数える数詞。
ナナカサビ [na⸢nakasa⸣bi]七重。七重ね。七枚重ねること。衣類の場合は、普通ナ⸢ナッ⸣クビ[na⸢nak⸣kubi](七重)という。
ナナクルビ ヤーウキ [na⸢nakuru⸣bi ⸢jaːʔuki]七転び八起。
ナナサイヌ パナ [na⸢nasai⸣nu ⸣pana]七咲きの波の花。{渚}{ナギサ}に寄せてくる波の花を七回汲み取って家に持ち帰り、家を清めるために撒いた海水。お祓いのために用いる海水。波打ちぎわから砂を七回掴みとって撒くこともある。
ナナシキ [na⸢na⸣ʃi̥ki]七ヶ月。妊娠七ヶ月。
ナナシキッふァ [na⸢naʃi̥ki⸣ffa]妊娠七ヶ月で生まれる子。「七月子」の義。
ナナスーヌ ナナスク [na⸢nasuː⸣nu na⸢na⸣su̥ku]海の底。深海底。「七潮の七底」の義。浜の砂は深海底より湧き出てきたものと考えられている。波打ち際の人の足跡の付いてない砂は聖なるものといわれ、その砂を運んで屋敷内に撒き、祓い清めた。
ナナタンブー [na⸢natam⸣buː]七反の布で作った帆。七反帆。七反帆帆船(伝馬船)。伝馬船の大きさを表す語。
ナナチ [na⸢na⸣ʧi]七つ。七歳。ナ⸢ナッ⸣チ[na⸢nat⸣ʧi](七つ。七歳)ともいう。
ナナチンブシ [na⸢naʧim⸣buʃi]七つ星。北斗七星。
ナナック [na⸢nak⸣ku]七個。卵や丸い小石、瓶や水瓶等を数える単位。
ナナッチ [na⸢nat⸣ʧi]{1}七つ。
ナナッチ [na⸢nat⸣ʧi]{2}七歳。
ナナティ [na⸢na⸣ti]七年。七年目。
ナナティヌ ソッコー [na⸢nati⸣nu ⸢sok⸣koː]七年忌。七回忌。「七年の焼香」の義。若年層は、シ⸢チニン⸣キ[ʃi̥⸢ʧiniŋ⸣ki](七年忌)ともいう。三年忌から十三年忌までの焼香<法事>をバ⸢カソッ⸣コー[ba⸢kasok⸣koː](若焼香)という。
ナナトゥ [na⸢na⸣tu](数)七斗。
ナニックラ [nanik⸢kura]突然。だしぬけに。
ナハ [⸣naha](地)那覇市。
ナバ [⸣naba]しいたけ(椎茸)。キノコ類。
ナバンドー [na⸢ban⸣doː](地)⸣カンドー[⸣kandoː]の北側奥にある窪地。ナ⸢ビン⸣ドー[na⸢bin⸣doː]ともいう。
ナビ [⸣nabi]なべ(鍋)。
ナビウティフチ [na⸢biʔuti⸣ɸu̥ʧi]鍋取。「鍋取り草履<靴>」の転訛したもの。つる<鉉>のない鍋を竈からおろす際、鍋に当てて持つ藁製の道具。幅約5センチ、長さ約10センチのわらじ(草鞋)形に編んだもの二枚を藁縄で{繋}{ツナ}いで一式としたもの。
ナビカマ [⸣nabikama]鍋釜。炊事道具。
ナビクーサー [⸣nabikuːsaː]鋳掛屋。鍋の壊れたところを修理する人。⸣ナビ ⸢クーシ⸣プス[⸣nabi ⸢kuːʃi⸣pu̥su](鋳掛屋。鍋の破損を修復する人)ともいう。
ナビシケー [⸣nabiʃi̥keː]{鍋敷}{ナベ|シ}き。{釜敷}{カマ|シ}き。⸣ナビシキ[⸣nabiʃi̥ki]ともいう。竈から鍋を下ろした時に丸底の鍋を安定させるために敷くもの。「鍋敷き」の義。直径約2センチの太さに藁や藁縄を巻き締めて、直径約12センチの輪に作ったもの。
ナビッツ [na⸢bit⸣ʦu](人)女性の名前。
ナビッツォンマー [na⸢bit⸣ʦommaː]ナビツ姉さん。ナビツお母さん。
ナビヌ クー [na⸢bi⸣nu ⸣kuː]いかけ(鋳掛)。鍋の壊れた部分を修理すること。鍋の穴を{塞}{フサ}ぐこと。⸣クー[⸣kuː]は、漢語の「金固」の義か。
ナビヌ ティー [na⸢bi⸣nu ⸣tiː]鍋づる(鍋弦)。鍋に取り付けたつる。「鍋の手」の義。
ナビヌ ピサビ [na⸢bi⸣nu pi̥⸢sa⸣bi]鍋墨。鍋の墨。鍋墨は魔除けとされ、乳児が外出する際には鍋墨を眉間に付けた。
ナビヌ ピング [na⸢bi⸣nu ⸢piŋgu]鍋墨。鍋の煤。⸢ピング[⸢piŋgu](鍋墨)は「竈・黒<ヘ・クロ>」の転訛したものか。ナ⸢ビ⸣ヌ ピ⸢サ⸣ビ[na⸢bi⸣nu pi⸢sa⸣bi](鍋墨。⸢鍋の竈・錆」の転訛したものか)ともいう。
ナビンフタ [na⸢biŋ⸣ɸu̥ta]鍋蓋。「鍋の蓋」の転訛したもの。茅で円錐形に編み上げて作った鍋蓋。⸢マーガヤ[⸢maːgaja](⸢真茅」の義。約1メートル50センチの茅)を根元から刈り取り、2~3日陰干しにし、柔らかくなったところを直径約1、5センチの太さに束ね、⸢クー⸣ジ[⸢kuː⸣ʤi](籐蔓もどき)の皮や⸢マー⸣ニ[⸢maː⸣ni](くろつぐ<桄榔>)の皮で強く締め付けて、直径約60センチ、高さ約30センチの円錐形に編み上げて作った鍋蓋。⸢シンマイ⸣ナビ[⸢ʃimmai⸣nabi](四枚鍋。芋を煮る大鍋)の鍋蓋に用いた。
ナブッタールン [na⸢buttaː⸣ruŋ]自動腹ばう。横になる。縁側にべったりと腹ばう。
ナブッツァーン [na⸢but⸣ʦaːŋ]滑らかである。すべりやすい。すべっこい。ナ⸢ブラーッ⸣ツァンとも言う。
ナブラーッツァン [na⸢buraːt⸣ʦaŋ]すべっこい(滑っこい)。すべすべしている。
ナブラーナブラーシ [nabu⸢raːnaburaː⸣ʃi]すべすべして。なめらかで。つるつるして。
ナベー [⸣nabeː]平民女子の名前。
ナベーマ [na⸢beː⸣ma]小さな鍋。小鍋。⸣ナビ[⸣nabi](鍋)に指小辞の-マ[-ma](小)が付いて形成された合成語。
ナベーラ [na⸢beː⸣ra](植)和名、ヘチマ(糸瓜)。果実は円柱状で若いうちは食用、完熟すると繊維組織が網目状に生じるので、晒して垢すりに使われた。普通は食用として利用される。
ナベーラシー [na⸢beː⸣raʃiː]ヘチマ乳房。ヘチマのように長く垂れ下がった乳房。
ナベーラダナ [na⸢beː⸣radana]ヘチマ棚。ヘチマを栽培するために竹などで作った棚。
ナベンマー [⸣nabemmaː]ナベ姉さん。ナビ・アンマ[nabi・ʔamma](ナビ・姉さん)の義
ナベンマテー [⸣nabemmateː]屋号。大浜トミ氏宅。
ナマ- [nama-]{PoS_1}なま(生)。煮たり、焼いたり、干したりしていないもの。
ナマ- [nama-]接頭{PoS_2}ナ⸢マ⸣ムヌ[na⸢ma⸣munu](生もの)。
ナマーナマシ [namaː⸢nama⸣ʃi]ふてぶてしく。生意気に。
ナマアシ [na⸢ma⸣ʔaʃi]冷や汗。緊張したり、ひどく恥ずかしい思いをする時に出る冷たい汗。
ナマイー [na⸢ma⸣ʔiː]{1}生煮えのご飯。「生飯」の義。
ナマイー [na⸢ma⸣ʔiː]{2}其の他、ナ⸢マ[na⸢ma](生)が接頭語となって形成される合成語に、ナ⸢マ⸣イズ[na⸢ma⸣ʔiʣu](生魚)、ナ⸢マ⸣ウン[na⸢ma⸣ʔuŋ](生芋)、ナ⸢マコー⸣マ[na⸢makoː⸣ma](生卵)、ナ⸢マ⸣キー[na⸢ma⸣kiː](生木)、ナ⸢マ⸣タキ[na⸢ma⸣taki](生竹)、ナ⸢マ⸣カザ[na⸢ma⸣kaʣa](生蔓)、ナ⸢マ⸣ッス[na⸢ma⸣ssu](生糞。脱糞したばかりの糞)など多い
ナマイズ [na⸢mai⸣ʣu]生魚。
ナマウン [na⸢ma⸣ʔuŋ]生芋。生のサツマイモ。⸢ネーシウン[⸢neːʃiʔuŋ](煮芋)、プ⸢シ⸣ウン[pu̥⸢ʃi⸣uŋ](干し芋。切り干し芋)の対義語。
ナマカー [na⸢ma⸣kaː]生皮。生の皮膚。
ナマカザ [na⸢ma⸣kaʣa]生臭い臭い。特に魚類の生臭さについていう。生の臭い。⸢アウカザ[⸢ʔaukaʣa](魚類の生臭い臭い)、⸢アウッサリ⸣カザ[⸢ʔaussari⸣kaʣa](生臭い匂い)ともいう。
ナマキー [na⸢ma⸣kiː]生木。サ⸢リキー[sa⸢rikiː](枯れ木)の対義語。
ナマキジ [na⸢ma⸣kiʤi]生傷。生々しい傷。新しい傷。擦ったり、切ったり、打ったりしてできた傷。ッ⸢ふ⸣キジ[f⸢fu⸣kiʤi](古傷)の対義語。
ナマキムヌ [na⸢maki⸣munu]怠け者。標準語からの借用語。普通は⸣スブットゥ[⸣subuttu](怠け者)、ウ⸢シクラシムヌ[ʔu⸢ʃikuraʃimunu](怠け者。<牛屠殺者>)という。
ナマキルン [na⸢maki⸣ruŋ]自動怠ける。労を惜しんで精を出さない。老年層は⸣フユー ス⸢ン[⸣ɸujuː ⸢suŋ](怠ける)という。
ナマグミ [na⸢ma⸣gumi]生米。炊いたり炒ったりしてない米。ナ⸢マ⸣マイ[na⸢ma⸣mai](生米)ともいう。
ナマクラシ [na⸢makura⸣ʃi]生殺し。半殺し。若年層は⸢ハングルシ[⸢haŋguruʃi](半殺し)ともいう。
ナマクン [na⸢ma⸣kuŋ]他動・自動怠ける。労を惜しんで精を出さない。ア⸢サブンとも言う。
ナマコーマ [na⸢makoː⸣ma]生卵。
ナマザリ [na⸢ma⸣ʣari]生枯れ。半枯れ。半ば枯れかかっていること。
ナマザリキー [na⸢ma⸣ʣarikiː]生枯れの木。半枯れの木。「生枯れ木」の義。
ナマシ [na⸢ma⸣ʃi]刺身。生魚の肉などを細かく切って作った食品。「~吾宍者<ヮ ガシシハ>御奈麻須<ミナマス>はやし~。万、3885」の転訛したもの。
ナマシー [na⸢ma⸣ʃiː]生血。
ナマシキ [na⸢ma⸣ʃi̥ki]おこげ(お焦げ)。鍋や釜などの底に焦げ付いたもの。子供はそれを⸢ガー⸣ガー[⸢gaː⸣gaː](おこげ)といって好んで食した。
ナマシキ [na⸢ma⸣ʃiki]ながじり(長尻)して立ち去らないこと。長座すること。特に、酒席で長居をすることに嫌味の意味をこめていう。
ナマシキカザ [na⸢maʃi̥ki⸣kaʣa]おこげの匂い。焦げつきの匂い。焦げ臭い匂い。
ナマシケーナ [na⸢maʃi̥keː⸣na]生のままで。生の状態で。加工せずに。調理せずに。
ナマシミ [na⸢ma⸣ʃimi]生爪。
ナマジラー [na⸢ma⸣ʤiraː]生意気な面構えの者。卑下した言い方。「生面」の転訛。
ナマジラスン [na⸢maʤira⸣suŋ]他動{1}こじらす({拗}{コジ}らす)。
ナマジラスン [na⸢maʤira⸣suŋ]他動{2}じらす(焦らす)。じれさせる。いらいらさせる。
ナマジラスン [na⸢maʤira⸣suŋ]他動{3}病気を完治させないで長引かせる。
ナマジリッふァイ [na⸢maʤiri⸣ffai]嫌々ながら食べること。食傷気味の食い方。食いあきたような食べ方。
ナマジリフイ [na⸢maʤiri⸣ɸui]しょぼしょぼと降ること。本降りにならないでだらだら降ること。
ナマジルン [na⸢ma⸣ʤiruŋ]自動ぐずつく(愚図つく)。のろのろする。優柔不断になる。
ナマスブル [na⸢masubu⸣ru]生首。⸢生頭」の義。サ⸢リスブル[sa⸢risuburu](しゃれこうべ<髑髏>)の対義語。
ナマスブルヤン [na⸢masuburu⸣jaŋ]少々の頭痛。何となしに痛むような頭痛。二日酔いのような鈍痛。
ナマタキ [na⸢ma⸣taki]生竹。サ⸢リタキ[sa⸢ritaki](枯れた竹)の対義語。青竹。
ナマタムヌ [na⸢matamu⸣nu]生の薪。生木を切って割った薪。「生焚き物」の転訛したものか。
ナマッサ [na⸢ma⸣ssa]生の草。青々とした草。サ⸢リッサ[sa⸢rissa](枯れ草)の対義語。
ナマッサリカザ [na⸢massari⸣kaʣa]生臭い臭い。魚類の腐臭。⸢アウッサリ⸣カザ[⸢ʔaussari⸣kaʣa](生臭い臭い。魚類の腐臭)ともいう。
ナマッス [na⸢ma⸣ssusu]なまぐそ(生糞)。排便後間のない、生の状態の糞。乾燥していない糞便。
ナマトーフ [na⸢matoː⸣ɸu]生豆腐。加熱してない豆腐。煮る、焼く、揚げる等の調理をしてない豆腐。
ナマドゥー [na⸢ma⸣duː]生身。生身の体。
ナマニー [na⸢ma⸣niː]生煮え。
ナマニク [na⸢ma⸣niku]生肉。なまの肉。調理してない肉。
ナマパー [na⸢ma⸣paː]生の葉っぱ。青葉。サ⸢リパー[sa⸢ripaː](枯れ葉)の対義語。
ナマパー [na⸢ma⸣paː]虫歯になっていない健康な歯。⸢生歯」の義。フ⸢トゥッチ⸣パー[ɸu̥⸢tutʧi⸣paː](虫歯。朽ち歯)の対義語。
ナマパティムヌ [na⸢mapati⸣munu]生意気な者。横着な者。「生果て者」の義。
ナマバライ [na⸢ma⸣barai]生意気な笑い。人を食った笑い。人を馬鹿にした笑い。ふてぶてしい<不敵不適しい>笑い。
ナマプニ [na⸢ma⸣puni]生の骨。サ⸢リプニ[sa⸢ripuni](枯れた骨。死後何年も経つた骨)の対義語。
ナマプリムヌ [na⸢mapuri⸣munu]半気違い。うすばか。「生狂れ者」の義。ナ⸢マンダプリムヌ[na⸢mandapurimunu](半気違い。<生狂れ者>)ともいう。
ナママイ [na⸢ma⸣mai]生米。玄米。
ナマミース [na⸢mamiː⸣su]生味噌。料理してない味噌。⸢アンダミー⸣ス[⸢ʔandamiː⸣su](脂味噌)の対義語。
ナマミジ [na⸢ma⸣miʤi]生水。
ナマムヌ [na⸢ma⸣munu]生もの。加熱調理して無いもの。
ナマラスン [na⸢mara⸣suŋ]他動{1}刃物を切れないようにする。
ナマラスン [na⸢mara⸣suŋ]他動{2}不名誉にする。人の名をおとしめ(貶め)る。
ナマリ [na⸢ma⸣ri]鉛。
ナマルン [na⸢ma⸣ruŋ]自動不名誉になる。恥をかく。⸣ウヤ ナ⸢マラ⸣スン[⸣ʔuja na⸢mara⸣suŋ](親に恥をかかせる)ともいう。
ナマルン [na⸢ma⸣ruŋ]自動なまる(鈍る)。切れ味が鈍くなる。技量や力が落ちてくる。
ナマルン [na⸢ma⸣ruŋ]自動小潮になる。潮の干満の差が小さくなる。⸢訛る」の意味派生したもの。
ナマンダ- [na⸢manda-]接頭中途半端。生半可。名詞、動詞の連用形(転成名詞)に上接してそれを修飾し、未熟なもの、不十分なこと、完全に~しない状態の意を表す。
ナマンダアクビ [na⸢mandaʔakubi]なまあくび(生欠伸)。中途半端な欠伸。
ナマンダイキ [na⸢mandaʔiki]絶え絶えの息。やっとで呼吸しているような息遣い。カ⸢ライキ[ka⸢raiki](絶え絶えの息遣い)ともいう。
ナマンダイビ [na⸢mandaʔibi]不十分な植え方。粗雑な植え方。整然としない半端な植え方。手入れの悪い植え方。
ナマンダウーミ [na⸢mandaʔuːmi]{1}半熟すること。中途半端に熟れること。未熟。「生熟れ」の義。
ナマンダウーミ [na⸢mandaʔuːmi]{2}中途半端に化膿すること。
ナマンダウブイ [na⸢mandaʔubui]なまおぼえ(生覚え)。{疎}{ウロ}覚え。中途半端な記憶。
ナマンダカーラキ [na⸢mandakaːraki]生乾き。半乾き。十分に乾いていないこと。「生乾き」の転訛したもの。
ナマンダカイシ [na⸢mandakaiʃi]中途半端な耕し方。じっくり耕さないこと。念入りに耕さないこと。
ナマンダカマンダ [na⸢mandakaman⸣da]不十分に。中途半端に。ABCDEBCD型の重言。
ナマンダカンザリ [na⸢mandakanʣari]充分に{咀嚼}{ソ|シャク}しないこと。中途半端に噛むこと。生半可な噛み方。
ナマンダクラシ [na⸢mandakuraʃi]半殺し。生殺し。
ナマンダシー [na⸢mandaʃiː]中途半端にすること。好い加減にすること。
ナマンダシキ [na⸢mandaʃi̥ki]なまぎき(生聞き)。十分に聞き取らないこと。中途半端な聞き方。ちょっと聞いて知ったふりをすること。
ナマンダシキ [na⸢mandaʃi̥ki]不十分な漬け方。塩分不足の不完全な浸け方。
ナマンダシグトゥ [na⸢mandaʃigutu]中途半端な仕事。いい加減な仕事。
ナマンダシニ [na⸢mandaʃini]半死半生。「半端死に」の義。生殺しの状態。半殺しの状態。
ナマンダスーピサール [na⸢manda⸣suːpisaːru]小潮。大潮でないときの潮干。⸢スー⸣チズー[⸢suː⸣ʧiʣuː](大潮の時の潮干)の対義語。
ナマンダスクリ [na⸢mandasu̥kuri]中途半端な作り方。いい加減な作り方。
ナマンダスリ [na⸢mandasuri]{1}中途半端な茅の刈り方。
ナマンダスリ [na⸢mandasuri]{2}中途半端な髭剃り。
ナマンダソーリ [na⸢mandasoːri]中途半端な草取り。不徹底な草取り。
ナマンダッサーク [na⸢mandassaːku]中途半端な仕事。
ナマンダッシ [na⸢mandaʃʃi]中途半端な理解をすること。一知半解すること。なまかじり。なまわかり。「なま<生>知り」の義。
ナマンダッふァイ [na⸢mandaffai]中途半端な食べ方。しっかり食べないこと。食い散らすこと。
ナマンダニー [na⸢mandaniː]生煮え。全体的に十分に煮えないこと。よく煮えていないこと。
ナマンダニビ [na⸢mandanibi]なまね(生寝)。十分に眠らないこと。熟睡してないこと。
ナマンダネーシ [na⸢mandaneːʃi]生煮えにすること。
ナマンダノーシ [na⸢mandanoːʃi]不完全な治療。中途半端な治療。「生治し」の義。
ナマンダノーリ [na⸢mandanoːri]なまいえ(生癒え)。病気や傷が、まだ治りきっていないこと。半分治り。「生治り」の義。
ナマンダバライ [na⸢mandabarai]苦笑い。作り笑い。そら笑い。
ナマンダビー [na⸢mandabiː]生酔い。ほろ酔い。酒に少し酔うこと。
ナマンダピーリ [na⸢mandapiːri]十分に冷えないこと。中ほどに冷めること。「生冷え」の義。
ナマンダフイ [na⸢mandaɸui]小雨が陰気に降り続くさま。中途半端な降り方。本降りにならないで、小雨がしょぼしょぼ降ること。そぼ降り。しとしと降り。
ナマンダプシ [na⸢mandapuʃi]半乾燥。中途半端な乾燥。「生干し」の義。
ナマンダミリ [na⸢mandamiri]中途半端に見ること。しっかり見ないこと。注意して見ないこと。⸢キシ⸣キミリ[⸢kiʃi̥⸣kimiri](注視すること。凝視すること)の対義語。
ナマンダムーミ [na⸢mandamuːmi]中途半端な揉み方。心無い揉みかた。
ナマンダムニ [na⸢mandamuni]中途半端な言い方。煮え切らない言い方。不明瞭な言い回し。なまへんじ(生返事)。
ナマンダリムヌ [na⸢mandari⸣munu]怠け者。だらだらして仕事をしない者。ウ⸢シクラシムヌ[ʔu⸢ʃikuraʃimunu](怠け者)ともいう。
ナミ [na⸢mi]普通。平均的。特によくも悪くもないこと。
ナミ [na⸢mi]波。⸣ナン[⸣naŋ](大波)ともいう。「~寄する奈弥見尓<ナミミニ>。万、3954」の転訛。
ナミカジ [na⸢mi⸣kaʤi]波風。風波。
ナミナミートゥ [na⸢minamiːtu]満々と。溢れるほどに満ちたさま。
ナミヌ パナ [na⸢minu⸣ pana]白波。「波の花」の義。白波を花に譬えていう語。
ナミルン [na⸢miruŋ]他動並べる。平均にする。ならす(均す)。比較する。老年層のことば。
ナミルン [na⸢mi⸣ruŋ]他動なめる(嘗める)。ねぶる。舌先でなでる。老年層は、ヌ⸢ベー⸣ルン[nu⸢beː⸣ruŋ](嘗める)という。
ナヤ [na⸢ja]納屋。カツオ漁業でカツオ節を製造する建物をいう。カツオ漁業の導入と共に沖縄の本部や慶良間島から借用された語であろう。魚網や漁具を収納し保管する小屋に対してもいう。カツオ節製造工場全体を、⸢シーゾー⸣ヤー[⸢siːʣoː⸣jaː](製造屋)といい、その中の燻製室を、⸢バイカン⸣ヤー[⸢baikaŋ⸣jaː](焙乾屋)という
ナユ [na⸢ju]なぜ(何故)。古語。歌謡などで用いられる。イ⸢カ⸣シャル[ʔi⸢ka⸣ʃaru](如何なる)と対語で用いられる。鳩間方言の口語では、⸣ヌー[⸣nuː](何)、⸢ヌー⸣シ[⸢nuː⸣ʃi](如何に)、ヌー⸢シェー⸣ル[nuː⸢ʃeː⸣ru](どのような)の意味に用いられている。/ナユシャル フニヌドゥ カヨーダ イカシャル フニヌドゥ カシャラクガ/(如何なる船が通うたのか、如何なる船が走っている<徒歩く。「~多摩の横山 加志由加也良牟<カシユカ ヤラム>。万、4417」の転訛したものか)「鳩間節」『宮良当壮全集12』
ナラーシ [na⸢raː⸣ʃi]{1}しつけ(躾け)。教育。
ナラーシ [na⸢raː⸣ʃi]{2}習わし。習慣。
ナラーシグリサン [na⸢raːʃiguri⸣saŋ]教えにくい。ナ⸢ラーシヤッ⸣サン[na⸢raːʃijas⸣saŋ](教えやすい)の対義語。
ナラーシゾージ [na⸢raːʃiʣoː⸣ʤi]教え上手。ブ⸢ク[bu⸢ku](不得手。下手)、ナ⸢ラーシ⸣ピタ[na⸢raːʃi⸣pi̥ta](教え方が下手)の対義語。
ナラーシナ ムヌ [na⸢raːʃi⸣na ⸣munu]教え方次第。教え方の問題。躾け方次第で如何様にも変わるということ。
ナラーシミチ [na⸢raːʃi⸣miʧi]教え方。教える方法。躾け方。教育方法。
ナラーシヨー [na⸢raːʃi⸣joː]教え方。ナ⸢ラーシ⸣カタ[na⸢raːʃi⸣kḁta](教え方)ともいう。
ナラースン [na⸢raː⸣suŋ]他動教える。⸢習わせる」の義。
ナラースン [na⸢raː⸣suŋ]他動慣らす。馴らす。慣れるようにする。馴れさせる。
ナラーリン [na⸢raː⸣riŋ]自動習える。習うことが出来る。動詞⸣ナラウン[⸣narauŋ](習う)の未然形に、可能の助動詞⸣リン[⸣riŋ](れる)が付いて形成された可能の派生動詞。
ナライ [⸣narai]{1}習慣。慣習。しきたり。癖。動詞⸣ナラウン[⸣narauŋ](習う。学ぶ)の連用形が名詞化したもの。
ナライ [⸣narai]{2}馴れること。動物が飼い主に馴れること。
ナラウン [⸣narauŋ]他動{1}習う。学ぶ。
ナラウン [⸣narauŋ]他動{2}慣れる。馴れる。動物が人間になつく。ナ⸢リ⸣ルン[na⸢ri⸣ruŋ](慣れる。馴れる)ともいう。
ナラシケー [⸣naraʃi̥keː]{1}屋号。成底家(本家)。鳩間西村七班の成底伊久津氏宅。
ナラシケー [⸣naraʃi̥keː]{2}成底家の空き屋敷。⸢キー⸣ヤザーテー[⸢kiː⸣jaʣaːteː](木屋兄さんの家)ともいう。元々空き屋敷であったが、小浜木屋氏が戦後与那国からそこへ引っ越してこられた。
ナラスン [na⸢ra⸣suŋ]他動{1}作り上げる。実らせる。結実させる。「成らせる」の義。
ナラスン [na⸢ra⸣suŋ]他動{2}~に成す。成長させる。
ナラスン [na⸢ra⸣suŋ]他動均す。平らにする。平坦にする。
ナラヌ [na⸢ra⸣nu]{1}~{堪}{タマ}らない。~てならない。感覚や感情が抑えられない意味を表す。
ナラヌ [na⸢ra⸣nu]{2}義務、当然、必要を表す。
ナラヌ [na⸢ra⸣nu]{3}禁止の意味を表す。
ナラバスン [na⸢rabasuŋ]他動並ばせる。ナ⸢ラブン[na⸢rabuŋ](並ぶ)の未然形に使役の助動詞⸢スン[⸢suŋ](す。せる。させる)が付いて派生した使役動詞。
ナラビ [na⸢rabi]並び。並ぶこと。れつ。沿道。老年層は、⸣ナン[⸣naŋ](並び。沿道<⸢{並}{ナミ}」の転訛したもの>)という。
ナラビルン [na⸢rabiruŋ]他動並べる。「~那良敝弖<ナラベテ>見れば~。万、3450」の転訛したもの。
ナラブン [na⸢rabuŋ]自動並ぶ。「比・雙・駢・方、ナラブ」『類聚名義抄』、「~二人那良田比<ナラビ>居~。万794」の転訛。
ナラリパマ [na⸢ra⸣ripama](地)浜の名。現在の鳩間小中学校の祈念運動場の東南一帯の浜の名。海岸にはア⸢ダン⸣ブラ[ʔa⸢dam⸣bura](アダン。タコノキ科の熱帯性常緑低木)や⸣ユナキー[⸣junakiː](はまぼう<黄槿>。島はまぼう)、シ⸢ダフ⸣カ[ʃi⸢daɸu̥⸣ka](はまゆう<浜木綿>。ハマオモト<浜万年青>)が密生していた
ナリウチ [na⸢riʔu⸣ʧi]事情。内情。
ナリウン [⸣nariʔuŋ](植)芋の一種。ジャガイモに似て、皮が固く、凸凹になっている。「生り芋」の義か。「むかご」の生る山芋のこと。西表島の船浦や上原辺りで栽培されていた。
ナリカールン [na⸢rikaː⸣ruŋ]自動なりかわる(為り変わる)。生まれ変わる。
ナリヌ ムヌ [na⸢ri⸣nu ⸣munu]要するに慣れることだ。慣れることが大事だ。「慣れのものだ」の義。
ナリバサ [na⸢ri⸣basa]実の生るバショウ。⸢生り芭蕉」の義。
ナリムヌ [na⸢ri⸣munu]生り物。食用となる果実。果物。
ナリムヌヤサイ [na⸢ri⸣munujasai]実を食べる野菜。「生り物野菜」の義。ナ⸢サ⸣ビ[na⸢sa⸣bi](ナスビ<茄子>)、カ⸢ブッチ[ka⸢butʧi](カボチャ<南瓜>)、シ⸢ブル[ʃi⸢buru](トウガン<冬瓜>)、⸢ウー⸣ル[⸢ʔuː⸣ru](キュウリ<胡瓜>)、ナ⸢ベー⸣ラ[na⸢beː⸣ra](ヘチマ<糸瓜>)など。⸢パーヤサイ[⸢paːjasai](葉野菜)の対義語。
ナリルン [na⸢ri⸣ruŋ]自動{1}慣れる。
ナリルン [na⸢ri⸣ruŋ]自動{2}馴れる。
ナリン ナラナーン [⸣narin na⸢ra⸣naːŋ]どのみち。いずれにしても。「出来るにせよ、出来ないにせよ」の義。
ナル [⸣naru]果実。草木の実。生り物。なりくだもの。「生り」の転訛したもの。
ナルカー [⸣narukaː]できたら。なるべく。可能なら。⸣ナルン[⸣naruŋ](成る。出来る)の仮定条件の意味を表す。
ナルカギリ [⸣narukagiri]できるだけ。なりたけ。なるたけ(成る丈)。なるべく。可能な限り。
ナルスクン デーカー [⸣narusu̥kun ⸢deː⸣kaː]出来ることならば。出来るかぎり。可能ならば。⸣ナルスクンドゥ ヤ⸢ル⸣カー[⸣narusu̥kundu ja⸢ru⸣kaː](出来ることならば)の縮約融合した形。
ナルスコー アラヌ [⸢narusu̥koː ʔa⸢ra⸣nu]{1}手に負えない。如何にもならない。「成る程度ではない」の義。
ナルスコー アラヌ [⸢narusu̥koː ʔa⸢ra⸣nu]{2}我慢できない。
ナルダキ [⸣narudaki]なるたけ(成る丈)。可能なかぎり。力の及ぶかぎり。
ナルニ [⸣naruni]成るように。自然に推移するままに。老年層の言葉。若年層は、⸣ナルヨーニ[⸣narujoːni](なるように)という。
ナルビク [na⸢rubi⸣ku]できるだけ。なるべく(成るべく)。なるたけ。
ナル フーナー [⸣naru ⸣ɸuːnaː]出来るふり。出来る素振り。
ナルフドゥ [⸣naruhudu]なるほど。いかにも。⸣アイヌシェーとも言う。
ナルヨーニ [⸣narujoːni]なるように。出来るように。
ナルン [⸣naruŋ]自動{1}成る。~になる。成長して~になる。
ナルン [⸣naruŋ]自動{2}出来る。
ナルン [⸣naruŋ]自動{3}草木の実が生る。実る。
ナルン [⸣naruŋ]自動{4}以前と違ったある状態・内容になる。
ナン [⸣naŋ]{1}大波。
ナン [⸣naŋ]{2}津波。
ナン [⸣naŋ]並。程度。
ナン [⸣naŋ]接尾{1}~に沿って。~沿いに。「並み」の義か。老年層が多用する。若年層が多用する接尾語⸢ダー⸣チ[⸢daː⸣ʧi](~に沿って。~伝い)と同じ。
ナン [⸣naŋ]接尾{2}並び。「並み」の転訛したもの。
ナン [⸣nan]{1}疑問代名詞ナニ[nani](何)の音便形。
ナン [⸣nan]{2}接頭語。どれくらい。どういう。
ナンカ [⸢naŋ⸣ka]なぬか(七日)。
ナンカソーラン [⸢naŋkasoː⸣raŋ]旧暦七月七日。「七日精霊」の義。タ⸢ナバタ[ta⸢nabata](七夕)ともいう。この日に墓の掃除をし、また仏前を清め、パ⸢ナ⸣イキ[pa⸢na⸣ʔiki](花生け)、⸢サー⸣ドー[⸢saː⸣doː](茶湯)、ぶっしょう(仏餉)、お茶請けなどを供える。
ナンカソッコー [⸢naŋkasok⸣koː]旧暦七月七日のタ⸢ナバタ[ta⸢nabata](七夕)に執り行う法事(焼香)。七日焼香。この日には法事のための⸢ピール[⸢piːru](ひえり<日択り>)をせずに執り行うことができるという。都合によって延び延びになっている法事はタ⸢ナバタ[ta⸢nabata](七夕)に執り行った。
ナンカナンカ [⸢naŋ⸣kanaŋka]人の死後の初七日からしちしちき(七七忌)までの法事。各七日忌。
ナンカマーシ [⸢naŋkamaː⸣ʃi]七日続けて。
ナンギ [⸢naŋ⸣gi]難儀。苦労。
ナンギアワリ [⸢naŋ⸣giʔawari]難儀苦労。⸢ナン⸣ギアウリ[⸢naŋ⸣giʔauri](難儀苦労)、ア⸢ワ⸣リナンギ[ʔa⸢wa⸣rinaŋgi](難儀苦労。「哀れ難儀」の義)ともいう。
ナンギクチサ [⸢naŋ⸣giku̥ʧisa]難儀苦労。肉体的苦労と精神的苦しみ。
ナンギシティルン [⸢naŋgiʃi̥ti⸣ruŋ]他動投げ捨てる。惜しげもなく捨てる。
ナンギ シトゥン [⸢naŋ⸣gi ʃi̥⸢tuŋ]投げ捨てる。投げて捨てる。
ナンギッツァースン [⸢naŋgitʦaː⸣suŋ]他動投げ散らす。動詞⸢ナン⸣グン[⸢naŋguŋ](投げる)の連用形に、⸢ッツァー⸣スン[⸢tʦaː⸣suŋ](散らす。「~鶯の木傳落<ちらす>~。万、1873」)が複合して形成された合成語。
ナンギルン [⸢naŋgi⸣ruŋ]他動投げる。⸢ナン⸣グンとも言う。
ナンギン [⸣naŋgiŋ]何斤。
ナンギングイ [⸢naŋgiŋ⸣gui]捨てぜりふ。逃げ吠え。暴言を吐くこと。「投げ声」の義。
ナンククル [⸢naŋkuku⸣ru]自然に。ひとりでに。おのずと。若年層は、⸢ナンク⸣ル[⸢nakku⸣ru](自然に)ともいう。
ナングン [⸢naŋ⸣guŋ]他動投げる。下二段活用「なぐ、~鮎を惜しみ投左乃<ナグルサノ>~。万、3330」の四段活用化したもの。
ナングン [⸢naŋ⸣guŋ]自動びっこ(跛)をひく。「なえ<蹇>ぐ」の義。「跛、那閇久<なへく>」『和名抄』の転訛。
ナンゲー [⸣naŋgeː]びっこ(跛)。びっこをひくこと。⸢跛、那閇久(なへぐ)」『和名抄』の転訛したもの。
ナンゲー ナルン [⸣naŋgeː ⸣naruŋ]びっこ(跛)になる。
ナンザン [⸢nanʣaŋ]難産。
ナンズー [⸣nanʣuː]何艘。船の数が分からない時に用いる。
ナンゾー [⸢nan⸣ʣoː]それほど~ない。あまり~ない。否定の陳述と呼応してもちいられる陳述副詞。
ナンツァ [⸢nan⸣ʦa]銀。「なんりょう(南鐐)」の転訛したもの。
ナンツァガニ [⸢nanʦa⸣gani]銀の鋼材。「銀のような優れた鋼材」の義。歌謡語。
ナンツァピュール クガニピュール [⸢nanʦapjuː⸣ru ku⸢ganipjuːru]銀の日和、黄金の日和。金銀のような素晴らしい日和
ナンツァヨーチ [⸢nanʦajoː⸣ʧi]銀の簪。銀簪。
ナントゥキン [⸣nantukiŋ]何時。何時。普通に話すと[n]の後ろでは連濁して、⸣ナンドゥキン[⸣nandukiŋ](何時)となり、[t]、[d]は自由変異。
ナンドゥキン [nan⸢dukiŋ]いつでも。何時でも。「何時も」の義。
ナントゥムチ [⸢nantu⸣muʧi]もち米の粉に味噌、黒糖、胡椒などを入れて月桃の葉に包んで蒸し上げた餅。ハチジュー⸢ゴーヌ ソーニヨイ[haʧiʤuː⸢goːnu soːnijoi](八十五の生年祝い)やウ⸢ブソッ⸣コー[ʔu⸢busok⸣koː](二十五年忌以上の大法事)に作られた。
ナンニチ [⸢nanni⸣ʧi]何日。日数が不明なときに用いる。
ナンニン [⸢nan⸣niŋ]何人。標準語からの借用語の転訛。人数が不明の時に用いる。普通は、ギュ⸢タール[gju⸢taːru](何人。「幾たり」の義)という。
ナンニン [⸢nan⸣niŋ]何年。標準語からの借用語が転訛したもの。老年層は⸢ギュートゥシ[⸢gjuːtuʃi](幾年。何年)という。
ナンバ [⸢nam⸣ba]滑車。軸を中心に回転する円板で、周囲に溝があり、これに綱をかけて回転させ、重い物を持ち上げる際に使用する道具。鰹漁船を陸揚げする際に滑車を⸣ビービー[⸣biːbiː](巻上げ機)に装着して利用した。
ナンバンガミ [⸢nambaŋgami]なんばんがめ(南蛮甕)。南方渡来の甕で、酒を入れるのに用いた。陶質が蜜で上質の甕といわれていた。