鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
[⸣ba]接助{1}~ば。~たら。未然形に接続して仮定条件を表す。
[⸣ba]接助{2}~ので。~から。已然形に接続して確定条件を表す。
[⸣ba]終助~よ。動詞の命令形に下接して話者の強い意志をあらわす。
[⸣ba]格助{1}~を。対格(目的格)。体言またはそれに準ずる語に付く。他動詞と対応して対格をあらわす。
[⸣ba]格助{2}はだか格。他動詞が述語となる際、多くの場合、名詞がはだかのままで対格を表す。
バー [⸣baː]わたし。自分。一人称。単数。「吾・我、~和我多知久礼婆<吾が立ち来れば>~和波漕ぎ出ぬと~。万、4408」の転訛。「我 昴哇」『使琉球録。1534』、「我 瓦奴」『音韻字海。1572頃』、「我 昴哇」、「我酔了 昴哇由的」『琉球館訳語。16世紀半ば』とあり、アン系の音韻を写したもの『図説琉球語辞典』(中本正智著)といわれている。老年層は、⸣バン[⸣baŋ](私)ともいう。そのままの形で主格、属格を表す。
バー [⸢baː]終助~できたらなあ。~したいなあ。動詞の未然形に下接して希望、願望の意を表す「ばや」(~たいなあ<希望、願望>)の転訛したもの。「~取り替えて著者也<着なばや>~。万、2829」の「ばや」が転訛。
パー [⸣paː]歯。「歯、波<は>」『和名抄』の義。
パー [⸣paː]刃。
パー [⸣paː]祖母の名称。⸣アッパー[⸣ʔappaː](祖母)ともいう。⸣アッパーは、名称、呼称に用いられる。⸣パー[⸣paː]は呼称には用いない。
パー [⸢paː]葉。
パー [⸣paː]助数機織りの用語。数詞の下に添えて数量を表す。おさ(筬)の一目の中に入れる二本の経糸を表す単位。
パー [⸣paː]方角。方向。方位。方。「Fo∨gacu.ハゥガク(方角)方向,または,側(がわ)」『邦訳日葡辞書』を、トゥ⸢ランパーカドゥ[tu⸢rampaːkadu](寅の方角)のように、⸢パーカドゥ[⸢paːkadu](方角。方向)という。
パー アーラスン [⸣paː ⸢ʔaːrasuŋ]碾き臼(籾磨り臼)の歯を立てる。臼の歯が擦り減ると{鑿}{ノミ}で削って歯を立てた。
ハーガイ [haː⸣gai]浅瀬。暗礁。
パーカウワン [⸢paːkau⸣waŋ]{1}金属のきしむ(軋む)音を聞いた時に感じる不快な気持ちの形容。歯が浮くような悪い気持ちになることの形容。ぞっとして身の毛がよだつ不快な気持ち。不快な金属の{軋}{キシ}む音を聞いて総毛立ってむず痒い感じ。「歯痒し」の義。
パーカウワン [⸢paːkau⸣waŋ]{2}歯痒い。じれったい。
パーカカー [⸣paːkakaː]歯のない人。「歯欠け者」の義。卑語。⸢パーカキ⸣ムヌ[⸢paːkaki⸣munu](歯欠け者)よりも更に卑しめた言い方。⸢パー⸣モー[⸢paː⸣moː](歯の無い者)は沖縄本島(首里)方言からの借用語の転訛。
パーカキムヌ [⸢paːkaki⸣munu]歯欠け者。歯の欠けた人。
パー カムン [⸣paː ⸣kamuŋ]{1}歯を噛む。睡眠中に歯軋りする。歯軋りする。「齘歯、波賀美(はがみ)」『和名抄』の転訛。
パー カムン [⸣paː ⸣kamuŋ]{2}激怒する。悔しさや怒りを堪える。怒る。
ハーガラスン [⸢haːgara⸣suŋ]他動暗礁や浅瀬に船を乗り上げる。首里方言のhjaagajuN(干上がる)が転訛して他動詞化したものか。
ハーガルン [⸢haː⸣garuŋ]自動座礁する。浅瀬に乗り上げる。
バーキ [⸢baː⸣ki]{1}竹製の{笊}{ザル}の総称。竹の薄い皮で編み上げて造った容器。芋や烏賊、魚を入れるのに用いる。農業用の笊は、⸣ティル[⸣tiru](笊)といい、⸢クー⸣ジ[⸢kuː⸣ʤi](トウズルモドキ)の皮で製作されるのが普通であったが、稀にタ⸢キバーキ[tḁ⸢kibaːki](竹製の笊)を使用することもあった。イ⸢ガバーキ[ʔi⸢gabaːki](烏賊釣り漁の竹笊)は漁業用の笊である。
バーキ [⸢baː⸣ki]{2}大食漢。大食い。
バーキ [⸢baː⸣ki]副助{Exp_1}さらに格助詞⸣-ヌ[⸣-nu](~の<所属>)が付く。
バーキ [⸢baː⸣ki]副助{Exp_2}さらに格助詞⸣ン[⸣-ŋ](~に<時間的限界点>)が付く。
バーキ [⸢baː⸣ki]副助{Exp_3}さらに副助詞⸣-ン[⸣-ŋ](~も)同類のものを付け加える。
バーキ [⸢baː⸣ki]副助{Exp_4}さらに格助詞⸣-ナー[⸣-naː](に)を介して係助詞⸣ン[⸣-ŋ]、副助詞⸣-ツァン[⸣-ʦaŋ](すら。さえ。だに)が付く(限界点の強調)。
バーキ [⸢baː⸣ki]副助{Exp_5}さらに係助詞⸣-ル[⸣-ru](~ぞ)が付く(限定強調)。
バーキ [⸢baː⸣ki]副助{Exp_6}さらに格助詞⸣-シ[⸣-ʃi](~で)が付く(区切り点。限度)。
バーキ [⸢baː⸣ki]副助{Exp_7}更にとりたて強調の係助詞⸣-ヤ[⸣-ja](~は)が付く。
バーキ [⸢baː⸣ki]副助~まで。動作・作用の到達するところ、範囲、極端な程度を表す。上接語の末尾子音が鼻音、または長母音の場合、⸢マー⸣キ[⸢maː⸣ki](まで)となる傾向にあり、[b]と[m]は条件異音の関係にある場合もあり、また自由変異の場合も認められる。{1}場所の限界点。
バーキ [⸢baː⸣ki]副助{2}時間的限界点。
パーギシミ [⸢paːgiʃi⸣mi]{1}はぎしり(歯軋り)。せっし(切歯)。はまみ。
パーギシミ [⸢paːgiʃi⸣mi]{2}怒りや悔しさで歯軋りすること。残念がって歯軋りすること。
パーク [⸢paː⸣ku]早く。速く。*[paiaku] → *[pajaku] → [paːku] と音韻変化したものか。
パークティ [⸢paː⸣kuti]急いで。早々と。
パークブ [⸢paːkubu]葉昆布。普通の昆布。ウ⸢ラシ⸣クブ[ʔu⸢raʃi⸣kubu](卸し昆布。刻み昆布)の対義語。
バークラウン [⸢baː⸣kurauŋ]他動からかう。揶揄する。ひやかす。なぶる。
パーサリン [⸢paːsa⸣riŋ]自動おだてられる。「{囃}{ハヤ}される」の義。⸢パーサリ⸣ルン[⸢paːsari⸣ruŋ](おだてられる。囃される)ともいう。⸢パー⸣スン[⸢paː⸣suŋ](囃す)の未然形に受け身・可能の助動詞⸣リン[⸣riŋ](れる)、⸢リ⸣ルン[⸢ri⸣ruŋ](られる)が下接して形成された受け身・可能の派生動詞。
パースン [⸢paː⸣suŋ]他動{1}囃し立てる。けしかける。「~七重花咲く 八重花咲くと白賞尼<マヲシハヤサネ>万、3885」の転訛か。
パースン [⸢paː⸣suŋ]他動{2}そそのかす。おだてる。
パースン [⸢paː⸣suŋ]他動{1}這わせる。
パースン [⸢paː⸣suŋ]他動{2}広げる。伸ばす。
パータキ [⸢paːtaki]葉の付いた竹。
パー タトゥン [⸣paː ⸣tatuŋ]鋸の歯を立てる。
パータバク [⸢paːtabaku]葉タバコ。刻み下ろしてない煙草の葉。
パーダリムヌ [⸢paːdari⸣munu]だらしない者。締まりのない者。着物の帯をしめず、前を開けたままだらだらしている者。
バーックラウン [⸢baːk⸣kurauŋ]他動からかう。揶揄する。冗談をいってひやかす。冗談をいって他人をばかにする。首里方言の'wacakujuN(からかう)の転訛したもの。⸢バー⸣クラウン[⸢baː⸣kuraun](からかう。揶揄する。ひやかす)ともいう。
パー ッサザラスン [⸣paː s⸢saʣara⸣suŋ]白い歯をみせる。「歯・白々す」の義。∫iraʤira(白々)が音韻の融合同化現象を起こして[s⸢saʣara](白々)となり、それに助動詞⸣スン[⸣suŋ](~させる<使役>)が付いたもの。
パーッティ [paːt⸢ti]ぱあっと。急に明るくなるさま。
パートゥンター [⸢paːtun⸣taː]出っ歯の人。八重歯の人。「歯の突き出た者」の義。⸢パートゥンティ⸣ムヌ[⸢paːtunti⸣munu](出っ歯の者)ともいう。
パートゥンティムヌ [⸢paːtunti⸣munu]出っ歯の人。
パーナライ [⸣paːnarai]ばあさんっ子育ち。身勝手、甘ったれの生活習慣。「祖母習い」の義。祖母は孫を可愛がりすぎるあまり、我儘で身勝手な性癖の孫に育てがちであるといわれている。
パーヌ ッス [⸢paː⸣nu ⸣ssu]歯くそ。はかす。「歯の糞」の義。
バーバ [⸢baː⸣ba](動)魚の名。和名、テンジクイサギ(体長25~30センチ、薄い青みがかった灰色の体色)。満潮時に鳩間島の裏海岸に群れて寄るところを網で巻き取って漁獲していた
ハーハー [⸢haːhaː]はあはあ。あえぐ<喘ぐ>様子。
バーバー [⸢baːbaː]{1}風が強く吹くさま。びゅうびゅう。擬音語。
バーバー [⸢baːbaː]{2}ぼうぼう。火が勢いよく燃えるさま。
バーブー [⸢baːbuː]幼児語。虫。
パー フーン [⸣paː ⸣ɸuːŋ]{1}歯を噛む。歯ぎしり<歯軋り>する。歯を食い縛る。怒る。⸣パー ⸣カムン[⸣paː ⸣kamuŋ](歯を噛む)ともいう。
パー フーン [⸣paː ⸣ɸuːŋ]{2}寒さで歯をがくがくさせて震える。
パーフイ [⸢paː⸣ɸui]寒さで歯をガチガチさせて震えること。{歯噛}{ハ|ガ}みすること。寒さで震えること。
パー フイッカースン [⸣paː ⸢ɸuikkaː⸣suŋ]歯をかみ合わせる。歯をくいしばる。
パーフカー [⸣paːɸu̥kaː]ほらふき(法螺吹き)。大言をする人。
パープジ [⸣paːpuʤi]祖父母。「⸣パー[⸣paː](祖母)にア⸢ブ⸣ジ[ʔa⸢bu⸣ʤi](大爺)」付いた複合名詞。
パー フッカースン [⸣paː ⸢ɸukkaː⸣suŋ]歯を器物で{挿}{ハサ}む。歯を両側から固定する。
パーミガキクー [⸢paːmigaki⸣kuː]歯磨き粉。若年層は、ハ⸢ミガキ⸣クー[ha⸢migaki⸣kuː](歯磨き粉)という。ム⸢カエィ⸣シェー ⸢パーミガキ⸣クーティ ⸢スーモー ナーン⸣シェン。⸢マー⸣スシル ミ⸢ガクタル[mu⸢ka⸣ʃeː ⸢paːmigaki⸣kuːti ⸢suːmoː naːŋ⸣ʃeŋ。⸢maː⸣suʃiru mi⸢gakutaru](昔は、歯磨き粉というのはなかった。塩で磨いたものだ)
パームイジブン [⸢paːmui⸣ʤibuŋ]歯の生える時分。歯が生える頃。
パームイ パヤーン [⸢paːmui⸣ pa⸢jaː⸣ŋ]歯の生えるのが早い。
パームヌ [⸢paː⸣munu]{1}刃物。山刀や包丁、鑿、鎌、剃刀など。
パームヌ [⸢paː⸣munu]{2}酒癖の悪い人。
パーメー [⸣paːmeː]ばばあ(婆)。老女の卑語。沖縄本島方言からの借用語。
パーモー [⸢paː⸣moː]歯のない者。歯欠け者。首里方言からの借用語が転訛したもの。若年層は、⸢ハー⸣モー[⸢haː⸣moː](歯のない者。歯欠け者)ともいう。
バー ヤー [⸣baː ⸣jaː]私の家。
パーヤサイ [⸢paːjasai]葉野菜。葉菜。主に葉を食用とする野菜。対義語は、ナ⸢リ⸣ムヌヤサイ[na⸢ri⸣munujasai](果菜)。
パーヤミ [⸢paː⸣jami]歯痛。「歯病み」の転訛したもの。
パーユシキ [⸢paːjuʃi̥ki]葉ススキ。葉のついたままのススキ。
パーヨージ [⸢paːjoː⸣ʤi]楊枝。歯の間にはさまっているものを除去して清潔にするのに用いる具。
パー ヨーン [⸣paː ⸢joː⸣ŋ]歯が弱い。
パーラパーラ [⸢paːrapaːra]{1}ひらひら。風に吹かれてひらひら揺れるさま。
パーラパーラ [⸢paːrapaːra]{2}ぺらぺら。
パーレー [⸢paː⸣reː]爬龍船競漕の行事。旧暦六月のミ⸢ジニー[mi⸢ʤiniː](壬)の日を選んで執り行われる⸢プー⸣ル[⸢puː⸣ru](豊年祭)の初日、⸢ゾーラキ[⸢ʣoːraki](西村、東村対抗の伝統的入子型奉納舞踊)の最終演目の終了と同時に、イ⸢リクヌ⸣ティー[ʔi⸢rikunu⸣tiː](入子の笛)が一段と高く吹き鳴らされると、ドゥ⸢ラーン[du⸢raːŋ](銅鑼)が強打され、カシラ持ちが旗頭を持ち上げ、棒踊りの曲に合わせながら東回りでカシラ[ka⸢ʃi⸣ra](旗頭)を⸣サンシキ[⸣saŋʃiki](桟敷)の浜に移動させる。浜には東西に二本のポール(旗頭の支柱)が立っており、カシラを支柱に結わえて立てておく。ポールの前には、東西の⸢パーレー⸣フニ[⸢paːreː⸣ɸuni](爬龍船)が並べてある。サ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司。女性神職者)やティ⸢ジリ⸣ビー[ti⸢ʤiri⸣biː](男性神職者)達が所定の座に着かれると、二艘の⸢パーレー⸣フニは漕ぎ手達によって、手で下げ持つようにして勢いよく進水され、漕ぎ手たちが一斉に乗船する。漕ぎ手が乗船すると、舳先が揃えられる。同時に⸢ユークイジラ⸣マ[⸢juːkuiʤira⸣ma](世乞い歌<豊年を引き寄せる神歌。世乞いジラマ>)が神職者、漕ぎ手、村人達によって厳かに歌い出される。漕ぎ手達は神歌ジラマのフレーズに合わせてゆっくりと一櫂漕いで櫂を高く持ち上げ、一節歌い終えて櫂を海に入れ、一漕ぎして船を進める。東西の爬龍船はトゥ⸢ムヌー⸣ル[tu⸢munuː⸣ru](船頭。艫乗り)によって直径約30メートルの円形に漕ぎ回されて舳先を揃え、出発の銅鑼の音を合図にスタートする。爬龍船は沖合い約200メートルに浮かべた折り返し点を目指して漕ぎ進む。折り返し点には⸢ブイ[⸢bui](浮標。うき。英語からの借用語)に小旗が立ててあるので、そこでUターンして桟敷の方へ漕ぎ帰る。ブイは桟敷から鳩離島のパンガマイシ[⸢pagamaiʃi](羽釜石)とピ⸢ナイサキ[pi⸢naisaki](ピナイ崎)のマ⸢ニ⸣ツァイシ[ma⸢ni⸣ʦaiʃi](俎板石)の方向にあわせることになっている。パーレーフニがターンする際に船頭が小旗を櫂で倒す。これがルールであるが、出発の時点で、神歌の歌詞に東と西で違いがある。東の神歌の歌詞が一節だけ長い。従ってスタート時点において西村の爬龍船が一櫂入れる分だけ早めにスタートすることになるので、常に西村の爬龍船が勝つ仕組みになっている。これは西村<女性>が勝てば豊年が約束されるという伝承に基いている。若い人達はこの仕組みを知らないから、喧嘩沙汰を引き起こしたこともあった。両爬龍船がスタートした浜に到着すると、イ⸢チバン⸣ヤク[ʔi⸢ʧibaɲ⸣jaku](一番漕ぎ手)が船から飛び降り、サ⸢カサ達の座っているところへ駆け上り、先着順に{跪}{ヒザマズ}いて神酒を頂く。その間、浜では老若男女銅鑼や太鼓を乱打して⸢ガー⸣リ[⸢gaː⸣ri](応援。「自慢合戦」の義)をする。それが済むと、漕ぎ手を先頭に、⸢ユーアギジラ⸣マ[⸢juːagiʤira⸣ma](世揚げジラマ<豊年を迎える神歌>)と⸢パイミジラ⸣マ[⸢paimiʤira⸣ma]を応援参加者も共に歌いながら、東西それぞれの爬龍船の回りを廻る。漕ぎ手は櫂を立てて囃子の「サーユイユイ」と「ハイヨーシュラヨー」の部分を歌いながら進み、立てた櫂を左右に振る。爬龍船に海水が沢山入るとユ⸢ガフー[ju⸢gaɸuː](世果報)が{齎}{モタラ}されたといって喜ぶ。船のあか(淦)を方言で⸣ユー[⸣juː](湯)ともいうが、それを⸢ユー[⸢juː](世。世果報)に掛けたものである。歌い終わると、東村を先頭にして桟敷へ戻る。サカサ達が所定の場所に座ると、旗頭をサカサ達の前に立てて、⸣サンシキヌウタ[⸣saŋʃikinuʔuta](桟敷の歌)を歌う。それが済むと旗頭を⸢アイ⸣ザムトゥ[⸢ʔai⸣ʣamutu](旗頭出迎えの座)へ進め、⸢アイ⸣ザムトゥヌ ⸣ウタ[⸢ʔai⸣ʣamutunu ⸣ʔuta](旗頭出迎えの座の歌)を歌い、各トゥ⸢ニムトゥ[tu⸢nimutu](村の宗家。旗頭を保存する家)へ別れて帰り、トゥ⸢ニムトゥの門前でトゥ⸢ニムトゥヌ⸣ ウタ[tu⸢nimutunu⸣ ʔuta](村の宗家の歌)を歌いながら家の中へ入る。旗頭は一番座の東の所定の場所に立てて置きく。ピ⸢キ[pi⸢ki](血筋)の人、漕ぎ手、ティジリビー等が参加するが漕ぎ手は庭で、他の者は座敷に上がって酒肴の持て成しを受け、⸢サンバーレ[⸢sambaːreː]歌を歌う。その後漕ぎ手達は⸢パーレー⸣フニ[⸢paːraː⸣ɸuni](爬龍船)のフ⸢ナム⸣トゥ[ɸu⸢namu⸣tu](船主)の家へ、爬竜船の淦を瓶に入れて持参する。船主の家では酒肴の持て成しを受け、フ⸢ナム⸣トゥ[ɸu⸢namu⸣tu](船元)の歌を歌って解散する
パーレー クーン [⸢paː⸣reː ⸣kuːŋ]爬竜船を漕ぐ。
パーレーシンカ [⸢paːreːiŋ⸣ka]爬竜船の漕ぎ手。「爬竜船臣下」の義。トゥ⸢ム⸣ヤク[tu⸢mu⸣jaku](船頭。⸢艫櫂」の義)、イ⸢チバン⸣ヤク[ʔi⸢ʧibaɲ⸣jaku](一番櫂。一番漕ぎ手)、⸢ピーヌル[⸢piːnuːru](⸢舳乗り」の義。二人)、⸢マイヌー⸣ル[⸢mainuː⸣ru](「前乗り」の義。二人)、ナ⸢カヌー⸣ル[na⸢kanuː⸣ru](「中乗り」の義。二人)、トゥ⸢ムヌー⸣ル[tu⸢munuː⸣ru](「艫乗り」の義。二人)の計10人の漕ぎ手のこと。トウムヤク(艫櫂。舵取り)とイチバンヤク(一番漕ぎ手)の出来が勝負を左右するといわれ、最も重視される。
パーレーフニ [⸢paːreː⸣ɸuni]爬竜船。爬竜船競漕に使用する⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](サバニ)。東村、西村それぞれ一艘ずつ選び出す。各家は一艘のイダフニを所有していたから、青年たちがそれらのイダフニを漕ぎ比べて船足の速いイダフニを選出し、爬竜船に決めて豊年祭の当日に青と白のペンキで船側を波形模様に装飾した。みよし(舳先)も水切りの工夫を凝らして大きな目玉をペンキで描き入れた。櫂は中心から左右に白いペンキで羽模様の斜線を描き入れて装飾をほどこした。爬竜船が一斉に漕ぎ出すと、櫂の上下する様があたかも鶏が羽ばたくように見えた。
パーレーヤク [⸢paːreː⸣jaku]爬竜船漕ぎに用いる櫂。ヤ⸢コー⸣マ[ja⸢koː⸣ma](小型の櫂)の中央部から白いペンキで斜線を描いて装飾していた。
パーンケー [⸣paːŋkeː]お祖母さん方。祖母たち。
ハイ [⸢ha⸣i]ほれ。そら。軽く呼びかける時に発する語。自分と同等以下の者に対して、促すときに用いる。
バイ [⸣bai]芽。新芽。萌芽。「~伐れば伴要須礼<ハエスレ>~、万、3491」の名詞化したものか。
バイ [⸣bai]二倍。同じ数を二つ合わせること。
パイ [⸣pai]南。南方。
パイ [⸣pai]拝。礼拝。神仏に祈願をする際の礼拝の仕方。男女の区別がある。神前で大きな祈願が行われるとき、サ⸢カサ[sa⸢kasa](司。女性神職者)は膝をついて前屈みに座り、まず両手を胸の位置で深く{合掌}{ガッ|ショウ}した後、合掌したまま七回ほど畳を軽くたたいて祈願する。この祈願を五回ほど繰り返す。ティ⸢ジリ⸣ビ[ti⸢ʤiri⸣bi](手擦り部。男性神職者)は、四立五屈(よんりゅうごくつ)といい、{跪}{ヒザマズ}いて合掌したのち頭を下げたまま立ち上がり、また座って合掌する。四回立ち上がって五回の合掌を繰り返したのち、立ったまま両手を帯の位置で前方へ出し、手首を上下に振り動かして、サカサの祈願が終わるまでこれを続ける。最後は跪き、合掌して祈願を終える。
パイ [⸢pai]灰。きばい(木灰)。{灰燼}{カイ|ジン}。「~灰指物曾<ハヒサスモノゾ>~。万、3101」、「Fai ハイ(灰)」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
パイ [⸢pai](動)はえ(蝿)。「蝿、波閉<はへ>」『和名抄』。「Fai ハイ(蝿).Voifarai」『邦訳日葡辞書』。
パイカジ [⸢pai⸣kaʤi]南風。
パイカブン [⸢pai⸣kabuŋ]自動はびこる(蔓延る)。蔓草が延び拡がりすぎる。蔓草が増殖し{蔓延}{マン|エン}する。「這い被る」の義。
ハイカラー [⸢hai⸣karaː]おしゃれ(お洒落)。お洒落な人。現代風な人。「high collar(たけの高い襟)。英語」からの借用語が和語化したものが、更に鳩間方言に借用され、転訛したもの。
バイカン [⸢bai⸣kaŋ]{焙乾}{バイ|カン}。鰹節製造の際、ヨ⸢ツワリ[jo⸢ʦuwari](四つ割り)にしたカツオをニ⸢コミ[ni⸢komi](煮込み)した後、バ⸢ラ⸣ヌギ[ba⸢ra⸣nugi](ピンセットで骨を抜くこと)をし、シ⸢ル⸣ク[ʃi⸢ru⸣ku](鰹節補修用に煮た魚肉を搗き練ったもの)を付けて乾燥部屋に移し、薪を焚いて燻製にすること。
バイカンガマ [⸢baikaŋ⸣gama]焙乾窯。バ⸢ラ⸣ヌギ[ba⸢ra⸣nugi]して、シ⸢ル⸣ク[ʃi⸢ru⸣ku]を塗って補修したカツオ節の素材を幅約60センチ、長さ約1、5メートルの⸢シェイローカグ[ʃeiroːkaku](蒸籠)に並べて、それを4、5枚重ね、窯に薪を燃やし、その熱と煙で半乾燥する窯。総ての蒸籠が下段に来るように時間を約2時間おきに下から上へと順に重ね替えた。そこで半乾燥した鰹節を⸢バイカン⸣ヤー[⸢baikaŋ⸣jaː](焙乾屋)に移して完成した
バイカンヤー [⸢baikaɲ⸣jaː]焙乾屋。⸢バイカン⸣ガマ[⸢baikaŋ⸣gama](焙乾窯)で半乾燥したカツオ節を更に焙乾して鰹節を完成する小屋。一階の土間には数箇所に薪を焚くため、壁には粘土を漆喰のように厚めに塗ってある。二階と中二階、三階の床は竹床にし、そこにカツオ節を並べて本格的に焙乾した。
ハイグヮー [⸢hai⸣gwaː]小さな梁。「小梁」の義。糸満方言からの借用語。⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](板舟。サバニ)の艫の{梁}{ハリ}。直径約5センチ、長さ約70センチの棒を両舷側にわたし、舷側を固定したもの。その下に銅線のワイヤーで舷側を引き締め、ハイグヮーにしっかり巻き締めてある。ウ⸢シカキの梁とハイグヮーの梁で⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni]の船腹は固められている
パイサ [⸢pai⸣sa]早く。
パイザイ [⸢pai⸣ʣai]{蒲鉾}{カマ|ボコ}を作る際に、魚肉の擂り身に加える澱粉。つなぎ(繋ぎ)となる澱粉。適切に配分して加えるもの。「配剤」の義。
ハイジョー [⸢haiʤoː]⸢張り竿」の義。フ⸢クル⸣プー[ɸu̥⸢kuru⸣puː](袋帆)の⸣カタ[⸣kḁta](左半分。「肩」の義か)の中間部にある⸢ジー⸣ヨー[⸢ʤiː⸣joː](前方へ張る縄。帆をバタつかせないために張る縄。前方へ張る⸢ティン⸣ナー{SqBr}⸢tin⸣naː{/SqBr}<手縄>)に結んで⸢プーザンプーをバタつかせないように固定する竿
パイジン [⸢pai⸣ʤiŋ]配膳。神事や法事の供物を供えること。普通は⸢ジンバイ[⸢ʣimbai](膳配り)という。「Faijen.ハイゼン(配膳) Ienuo cubaru(膳を配る)」『邦訳日葡辞書』。
パイタ [⸢pai⸣ta]南。南方。西表島北岸一帯の水田地帯。⸣パンター[⸣pantaː](南。南方。西表)ともいう。
パイディン [⸢pai⸣diŋ]⸢拝殿」の義。⸣ウボー[⸣ʔuboː](威部。杜の中の神の坐す神聖な所)へ通ずる道の入り口にある小屋付きの門。そこには⸢コー⸣ロ[⸢koː⸣ro](香炉)が据えられてあり、男性はそこより中へは入れないといわれている。普通はそこで香を焚き、祈願を行う。パイディン(拝殿)とウ⸢ブ⸣ヤー[ʔu⸢bu⸣jaː](母屋)の間の空間を、⸣メー[⸣meː](庭。広場)という。キ⸢チゴン[ki̥⸢ʧigoŋ](結願祭)には、パイディンの前にサカサ(司)やティジリビー(手擦り部。男性神職者)、バ⸢キサカ⸣サ[ba⸢kisaka⸣sa](脇司)らが座り、左右の見物席には村人達が筵を敷いて座る。ウブヤー(母屋)の南側にバンコ(舞台)を作ってブドゥ⸢ルキョンギン[bu⸢durukjoŋgiŋ](踊り狂言)が奉納された。その際、ウブヤー(母屋)は楽屋の機能を果たした。余興は総てバンコの舞台で上演され、西村と東村が合同でなされた。⸣ジーシンカ[⸣ʤiːʃiŋka](地謡方<臣下>)、ブ⸢ドゥルシンカ[bu⸢duruʃiŋka](舞い方<臣下>。踊り方<臣下>)が豊年祭のように東村、西村が対抗して競演することはなかった
パイナー [⸢pai⸣naː]延縄。{釣漁法}{チョウ|ギョ|ホウ}の一つ。{釣具}{ツリ|グ}の一つ。一条の長いム⸢トゥ⸣ナー[mu⸢tu⸣naː](本縄)に一定間隔にユ⸢ダナー[ju⸢danaː](枝縄)を取り付け、それぞれに釣り針をつけて釣る漁法、または漁具。鳩間島では本格的な延縄漁はなく、簡単な⸣イノーパイナー[⸣ʔinoːpainaː](沿岸での延縄漁)が行われていた。
パイニー [⸢pai⸣niː]支根。主根から分かれた小さい根。「這い根」の義。ム⸢トゥ⸣ニー[mu⸢tu⸣niː](主根)の対義語。
パイヌ ッス [⸢painu⸣ ssu]はえ(蝿)の糞。「そばかす」の義はない。
パイヌ ボーンケールン [⸢painu boːŋkeː⸣ruŋ]蝿がたかる。
パイネー [⸢pai⸣neː]屋号。友利家の東にある小浜家の屋敷の古い名称
パイノーラ [⸢painoː⸣ra]伝承上、遠い南方に存在すると想念された島。
パイバタ [⸢paiba⸣ta]南。南方。西表北岸一帯の水田地帯。「南端」の義。/⸢マンカ パイバタ⸣ ミ⸢ワタシ⸣バ パ⸢マヌ⸣ ミ⸢ル⸣スヤ ク⸢ラ⸣ヌ ⸣パマ/[⸢maŋka paibata⸣ mi⸢wataʃi⸣ba pa⸢manu⸣ mi⸢ru⸣suja ku⸢ra⸣nu ⸣pama](真直ぐ南方を見渡すと浜が見えるのは久浦の浜)。鳩間中岡(鳩間節)『鳩間島古典民謡古謡集』
パイフキ [⸢paiɸuki]灰吹き。煙草の吸殻を叩き入れるための竹筒。煙草盆に備え付けてある。「Faibuqi.ハイブキ(灰吹)」『邦訳日葡辞書』。
パイマール [⸢paimaː⸣ru]先回り。他人を出し抜くこと。抜け駆けすること。「早回り」の義。
パイマルン [⸢pai⸣maruŋ]自動{1}早まる。速さが増す。
パイマルン [⸢pai⸣maruŋ]自動{2}急ぎすぎて判断を誤る。
パイミ [⸢pai⸣mi]地名。南風見(西表島東部の豊原<大原、大富>地区)。竹富住民の移住によって開拓された。
パイミジラマ [⸢pai⸣miʣirama]豊年祭の歌の一つ。⸢パー⸣レー(爬竜船競漕)の後、⸢ユーアギジラ⸣マ(世揚げジラマ)の後に歌われる神歌。⸢プール⸣ウタ[⸢puːru⸣ʔuta](豊年祭の歌)参照
パイミルン [⸢paimi⸣ruŋ]他動早める。早くする。若年層は、パ⸢ヤミ⸣ルン[pa⸢jami⸣ruŋ](早める)という。
パイムキ [⸢pai⸣muki]南向き。ニ⸢シムキ[ni⸢ʃimuki](北向き)の対義語。
バイヤーマ [bai⸢jaː⸣ma]わかめ(若芽)。しんめ(新芽)。バ⸢カ⸣バイ[ba⸢ka⸣bai](若芽)ともいう。
パイヤキガマ [⸢paijakigama]石灰焼き窯。⸢ウールパイ[⸢ʔuːrupai](石灰)を作る窯。⸢ウールイシ[⸢ʔuːruiʃi](枝珊瑚)を焼いて石灰を作るために砂浜で急ごしらえの窯を作っていた。
パイル [⸢pairu]酢。明治・大正生まれの老年層が用いる。
パイルヌ ッふァ [⸢pairunu ffa]酢の素。「酢の子」の義。酢を入れた瓶の底に溜まるどろどろとした粘液状の物質。新しく酢を作る際に、これを入れると酢の素になって早く酢を醸造することができるので,各家庭で大事に保存されていた。
バイルン [⸢bairuŋ]他動酒などに他の液体を混ぜて薄める。水で割る。⸢バウン[⸢bauŋ](水で薄める)ともいう。
パイルン [⸢pai⸣ruŋ]他動縄や綱を引き延ばす。地面や海面に這わせて延ばす。網を延べる。這わせる。
バウ [⸢bau]{1}棒。手に持てる細長い木や竹。老年層の言葉。若年層は、⸣ボー[⸣boː](棒)という。[au] → [oː] の音韻変化によるもの。
バウ [⸢bau]{2}棒術。棒踊り。豊年祭には棒踊りが上演された。
バウ ウトゥン [⸣bau ⸣ʔutuŋ]棒を打つ(棒踊りをする)。豊年祭りには奉納舞踊として、伝統的「棒踊り」が上演された。西村、東村対抗で競演された。サ⸢ク⸣ボー[sḁ⸢ku⸣boː](木刀踊り)、ル⸢クサク⸣ボー[ru⸢kusaku⸣boː](六尺棒踊り)、ナ⸢ギナタ[na⸢ginata](長刀踊り)が演じられたが、東村の棒踊りは一般的に力強く、激しい動きが特徴であり、西村の棒踊りは動きが柔らかで、型を重視するものであった。
パウル [⸢pauru]羽織。一般の人は着用しなかった。
バウン [⸢bauŋ]他動酒を水で割る。薄める。⸢バイルンとも言う。
パウン [⸢pauŋ]他動配る。配布する。
パウン [⸣pauŋ]自動{PoS_1}這う。腹這う。動物が腹部を物の表面につけて、伝うように移動する。蔓草などがものに絡み付いて伝わっていく。
パウン [⸣pauŋ]他動{PoS_2}縄などを長く延ばす。
パウン [⸢pauŋ]他動船を造る。造船する。「Fagu,i,u,aida.ハギ,グ,イダ(矧・接ぎ,ぐ,いだ)~.Itauo fagu.(板を接ぐ)戸・扉などを作る時に板を接着する」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。「接ぐ」の連用形が音便化してg音脱落し(Faida『邦訳日葡辞書』)、それに「居り」が下接して形成された語。
バカ- [⸣baka-]接頭形容詞の語幹で、名詞に冠して⸢若い」「新しい」の意を表す接頭語となる。
パカ [pḁ⸢ka]墓。亀甲墓。明治中期以降、糸満系寄留民(金城二郎氏)等の手で砂岩を掘り抜いて作られた、いわゆる⸢フインチ⸣バカ[⸢ɸuinʧi⸣baka](掘り抜き墓)が、現在のパ⸢カヤマ[pḁ⸢kajama](墓山)南面から西面一体に建造されたという。古い時代には、フ⸢ジマレーパカ[ɸu⸢ʤimareːpaka](テーブルサンゴで四角く囲って郭を作り、テーブルサンゴで蓋をして土で{被}{オオ}い、その周囲を丸く石積みにした墓)があった。柔らかい砂岩を刳り貫いて建造した本墓には、本墓の両脇に小さな袖墓が作られている。⸢ニンブ⸣ツァー[⸢nimbu⸣ʦaː](念仏歌)では、墓のことを⸣フカヤー[⸣ɸu̥kajaː](外の家)と歌われている。
パカ [⸣pḁka]区切り。畑や宅地などの区切り。稲を植えたり、刈ったり、畑や田を耕す際に受け持つ区切り。「秋の田の吾が刈婆可<カリバカ>の~。万、2133」の転訛したもの。
パガー [⸣pagaː]禿げ頭。頭の禿げた人。卑称。
バカーバカーシ [ba⸢kaːbakaː⸣ʃi]細かく。非常に細く。
バカー ミドゥム [ba⸢kaː⸣ mi⸢du⸣mu]若い女。
バカームヌ [ba⸢kaː⸣munu]若者。青年男女。
バカームンケー [ba⸢kaː⸣muŋkeː]若者たち。
バカーン [ba⸢kaː⸣ŋ]若い。幼年である。青年期である。「和可家礼婆<ワカケレバ>~。万、905」の転訛したもの。
バカーン [ba⸢kaː⸣ŋ]細い。細かい。糸、髪の毛、などの細いものについていう。ア⸢ラー⸣ン[ʔa⸢raː⸣](粗い)の対義語。
バカーンケン [ba⸢kaːŋ⸣keŋ]若い時。若かりし時。
バカイックナー [ba⸢kaik⸣kunaː]奪い合い。
バカイトゥルン [⸣bakaituruŋ]他動奪い取る。ひったくる。{掠}{カス}め取る。
バカウン [⸣bakauŋ]他動奪う。取り上げる。無理に取る。
バカキー [ba⸢ka⸣kiː]若木。幼木。
バカギー [ba⸢ka⸣giː]うぶげ(産毛)。
バカサ [ba⸢ka⸣sa]若さ。若い年代。
バカザコー [ba⸢kaʣa⸣koː]カツオの撒き餌にする小魚。体長3~4センチ、幅2~3ミリ、銀白色の小魚。キビナゴの稚魚といわれている。
バカシ [ba⸢ka⸣ʃi]区別。バ⸢カ⸣スン[ba⸢ka⸣suŋ](分ける)の連用形から転成した名詞。
バカシ [ba⸢ka⸣ʃi]酒瓶の名。口の小さい黒茶色の陶器の一升入りの瓶。
バカシキ [ba⸢ka⸣ʃi̥ki]新月。三日月。「若月」の義。「ふりさけて若月見者<ミカヅキミレバ>~。万、994。若月の さやにも見えず~。万、2464」の転訛。月の始めから三日目の月。ミ⸢チ⸣シキ[mi⸢ʧi⸣ʃi̥ki](満月。満ち月)、⸢ウイ⸣シキ[⸢ʔui⸣ʃi̥ki](老い月。下弦の月)の対義語。
パカシキ [pḁ⸢kaʃiki]墓所。墓地。墓の敷地。墓の地相。「墓敷」の義。
バカジニ [ba⸢ka⸣ʤini]若死。
バカジラプス [ba⸢ka⸣ʤirapu̥su]出産して間もない産婦。産屋<地炉>から出て間もない産婦。「若・地炉・人」の義。バ⸢カ⸣ジラムヌ[ba⸢ka⸣ʤiramunu]ともいう。
バカジラムヌ [ba⸢ka⸣ʤiramunu]出産して間もない者(産婦)。
バカスー [ba⸢ka⸣suː]干満の差の小さい潮干。「若潮」の義。カ⸢ラスー[ka⸢rasuː](あまりひかない時期の引き潮<干潮>)ともいう。⸢ウー⸣スー[⸢ʔuː⸣suː](大潮)の対義語
バカスーチ [ba⸢kasuː⸣ʧi]干満の差の小さい潮干。「若潮干」の義。「難波方 潮干<シホヒノ>~。万、976」の義。⸢ウー⸣スー[⸢ʔuː⸣suː](大潮)、⸢スー⸣チズー[⸢suː⸣ʧiʣuː](大潮干)の対義語。
バカスクリ [ba⸢kasu̥Ku⸣ri]若作り。年齢よりも若く見える面立ち。若い顔立ち。
バカスン [ba⸢kasuŋ]他動炊く。「沸かし」の義。「和可須(わかす)」『新撰字鏡』の転訛。
バカスン [ba⸢ka⸣suŋ]他動分けて離す。区別する。分類する。分ける。
パカスン [pḁ⸢ka⸣suŋ]他動吐かせる。嘔吐させる。
パカスン [pḁ⸢kasuŋ]他動{1}首に掛けさせる。首に{穿}{ハ}かせる。
パカスン [pḁ⸢kasuŋ]他動{2}弁償させる。負わせる。
パガスン [pa⸢ga⸣suŋ]他動剥がす。はぎ取らせる。引き剥く。
パカソージ [pḁ⸢kasoː⸣ʤi]墓掃除。ジ⸢ル⸣クンチ[ʤi⸢ru⸣kunʧi](旧暦十六日祭)の当日や⸢ソー⸣ラン[⸢soː⸣raŋ](お盆<精霊会>)の一週間前のタ⸢ナバタ[ta⸢nabata](旧暦の7月7日)に墓の清掃をすること。
バカソッコー [ba⸢kasok⸣koː]死後間もない時期の法事。一周忌の法事から十三年忌までの法事。「若・焼香」の義。これらの法事には蒲鉾、餅などの供物や道具類に朱色の色物は一切使用しない。
バカッサ [ba⸢ka⸣ssa]若草。若い雑草。
バカッサイ [ba⸢ka⸣ssai]若白髪。
バカドゥームティ [ba⸢kaduː⸣muti]早婚。「若身持ち」の義。「Mimochi.ミモチ(身持) 妊娠.Cano vonna mimochini natta,」『邦訳日葡辞書』の義。早く結婚して所帯を持つことの意。
パカドゥルン [pḁ⸢ka⸣duruŋ]自動はかどる(捗る)。仕事が{進捗}{シン|チョク}する。
パガナーン [pa⸢ga⸣naːŋ]おんなたらし(女誑し)である。好色な人である。利口でよく女を騙す。
バカナイ [ba⸢ka⸣nai]若苗。早苗。若い苗木。
バカナシ [ba⸢ka⸣naʃi]歳若くして出産すること。「若生し」の義。
バカナチ [ba⸢ka⸣naʧi]初夏。若夏。旧暦四、五月ごろ。ウ⸢ル⸣ズン[ʔu⸢ru⸣ʣuŋ](旧暦二、三月ごろ)の対語。
パガニ [pa⸢ga⸣ni]{1}はがね(鋼)。鋼鉄。
パガニ [pa⸢ga⸣ni]{2}切れ者。達者な人。利口者。
パガニムヌ [pa⸢gani⸣munu]才知にたけて女を騙す者。{女誑}{オンナ|タラシ}。
パカヌ ゾー [pḁ⸢kanu⸣ ʣoː]墓の庭。
パカヌ ヨイ [pḁ⸢kanu⸣ joi]墓の落成祝い。
バカバー [⸣bakabaː]祖父母の三番目の姉や妹。名称、呼称にもいう。
バカパー [ba⸢ka⸣paː]若葉。
バカバイ [ba⸢ka⸣bai]若芽。バイ⸢ヤー⸣マ[bai⸢jaː⸣ma](小さい若芽、新芽)、バ⸢カ⸣フキ[ba⸢ka⸣ɸu̥ki](若い茎、新芽)ともいう。
パカバリ [pḁ⸢ka⸣bari]うねたて(畝立て)。「はか<量>割」の義。稲を植えたり、刈ったり、畑を耕したりする時の分担する範囲を決めること。
パカ バルン [⸣pḁka ba⸢ruŋ]畝を立てる。耕す範囲を決める。
バカビキドゥム [ba⸢kabiki⸣dumu]若い男。
バカピル [ba⸢ka⸣piru]まだ鱗形が形成されていない若いニンニク(大蒜)。若大蒜。
バカフキ [ba⸢ka⸣ɸu̥ki]新芽。若芽。「若茎」の義。
バカプスマ [ba⸢kapusu⸣ma]午前十時~十一時ごろ。「若昼間」の義。⸢マープスマ[⸢maːpusuma](真昼間。現在の正午頃。九つ時分)の前で、あまり暑くならないころ。「わかひるま 九つ時分。ひるまとは八つ時分也「混効験集」」『おもろ語辞書』。ア⸢サカイ[ʔa⸢sakai](午前六時~十時ごろ。朝陰時)の直後ごろ。夏場はア⸢サカイの内に畑仕事を終えて帰り、⸣アシスコール[⸣ʔaʃisu̥koːru](昼食準備)をし、一息入れて午後は⸢ヨーコイ[⸢joːkoi](午後三時~四時ごろ。夕陰時)になったら畑仕事に出たものである。夕方は六時~七時ごろに帰宅し、⸢ユー⸣ボンスコール[⸢juː⸣bonsu̥koːru](夕飯支度)をした。
パカマ [pḁ⸢kama]袴。
パカマイル [pḁ⸢kamai⸣ru]墓参り。旧暦の一月十六日祭とお盆の七夕には墓参りをして墓の掃除をし、茶湯をした。また、死後一週間は朝早く墓参りをした。三十三年忌までの法事の前日に墓参をして掃除をしたが、それ以外の日に墓参りをする習慣はほとんどなかった。
バカマチ [ba⸢ka⸣maʧi]若松。松の若木。常緑樹の松と竹は長寿、若返りの縁起物として門松に使用されたが、1950年代に緑化推進のために廃止された。
バカマリ [ba⸢ka⸣mari]早産の子。月足らずで生まれた子。「若生まれ」の義。⸣シキ タ⸢ラーン マリ[⸣ʃi̥ki ta⸢raːmmari](月足らずのうまれ。月足らず)ともいう。
バカミース [ba⸢kamiː⸣su]作り立ての味噌。新味噌。「若味噌」の義。⸢ミーミース[⸢miːmiːsu](新味噌)ともいう。ッ⸢ふミー⸣ス[f⸢fumiː⸣su](古い味噌)の対義語。
バカミートゥ [ba⸢kamiː⸣tu]若夫婦。「わかめおと<若夫婦>」の義。
バカムティ [ba⸢kamu⸣ti]早婚。若身持ち。「若持ち」の義。
バカヤ クトゥ [ba⸢ka⸣ja ⸣ku̥tu]恥ずかしいこと。
バカヤ シミルン [ba⸢ka⸣ja ʃi⸢miruŋ]恥ずかしがらせる。恥をかかせる。
バカヤ スン [ba⸢ka⸣ja ⸢suŋ]{1}可笑しがる。
バカヤ スン [ba⸢ka⸣ja ⸢suŋ]{2}恥ずかしがる。「恥ずかしくする」の義。
パカヤマ [pḁ⸢kajama]墓地のある岡の森。「墓山」の義。ナ⸢カン⸣ブレー[na⸢kam⸣bureː](ナカモリ<中岡>)の西側にある岡の森で、フ⸢クンキー[ɸu̥⸢kuŋkiː](福木)やガ⸢ジ⸣マル[ga⸢ʤi⸣maru](ガジマル<榕樹>)、ヤ⸢ラブ[ja⸢rabu](テリハボク)、キ⸢ダ[ki⸢da](リュウキュウコクタン。黒檀。「烏木」『中山伝信録』)、⸢マー⸣ニ[⸢maː⸣ni](クロツグ)、⸢バン⸣スル[⸢ban⸣suru](バンジロウ)、その他雑木が密生している。岡の南斜面の砂岩を利用して横穴を掘り抜いて造った亀甲墓群がある。各家の本墓が約三十基ほどある。ジ⸢ル⸣クンチ[ʤi⸢ru⸣kunʧi](十六日祭)は各家の墓前でご馳走を供え、親戚一同が集まって祈願が行われた。パカヤマの頂上部は⸣ナーマヤーヌ ⸢ヤシ⸣キ[⸣naːmajaːnu ⸢jaʃi̥⸣ki](長間屋の屋敷)といわれており、石垣積みの跡が残っている
バカヤン [ba⸢ka⸣jaŋ]おかしい(可笑しい)。こっけいである。「わが心しぞ いや袁許<ヲコ>にして~『古事記 中・歌謡』」、「~可笑し<をかし>と思ひて~」『今昔物語』の転訛したもの。
バカヤン [ba⸢ka⸣jaŋ]恥ずかしい。
-バカラ [⸣-bakara]副助ばかり。ぐらい。ほど。体言に下接して分量、程度など、おおよその見積りを表す。普通は⸣-ブカラー[⸣-bukaraː](ばかり。ぐらい。ほど)という。
パカラーサン [pḁ⸢karaː⸣saŋ]しっかりして信頼できる。思慮分別があり、きちんとしている。まともである。⸢計<ハカ>らさあり」の義。普通は⸢マーパカラー⸣サン[⸢maːpakaraː⸣saŋ](全く信頼できる。真っ当である)という。
パカライグトゥ [pḁ⸢karai⸣gutu]悪巧み。奸計。計略。「計らいごと」の転訛。
パカラウン [pḁ⸢ka⸣rauŋ]他動塩梅する。相談する。協議する。手加減する。配慮する。調整する。適当に処置する。⸢計らう」の転訛。
バカリ [ba⸢ka⸣ri]{1}分かれ。分岐。分家。
バカリ [ba⸢ka⸣ri]{2}別れ。離別。離婚。
バカリカンティ [ba⸢karikan⸣ti]別れかねること。「別れかねて」の転訛したもの。
バカリキナイ [ba⸢kari⸣kinai]分家。「分かれ家内」の義。キ⸢ナイバカリ[ki⸢naibakari](分家。「家内分かれ」の義)、⸢ヤーバカ⸣リ[⸢jaːbaka⸣ri](家別れ。分家)というのが普通。
バカリグリサン [ba⸢kariguri⸣saŋ]別れづらい。別れることが辛い。バ⸢カ⸣ルン[ba⸢ka⸣ruŋ](別れる)の連用形に、形容詞型助動詞のグ⸢リサン[gu⸢ri⸣saŋ](~辛い。~にくい)が下接して形成された派生形容詞。
バカリナチ [ba⸢kari⸣naʧi]残暑。「別れ夏」の義。秋口に一段と暑さが増して、それが最後の暑さとなること。
バカリピーサ [ba⸢karipiː⸣sa]寒の戻り。「別れ寒さ」の義。春先に一時的に寒波が押し寄せて寒さがぶり返し、最後の寒さとなること。沖縄方言からの借用語か。
バカリピラク [ba⸢karipira⸣ku]寒の戻り。「別れ寒さ」の義。春先に一時的に寒波が押し寄せて寒さがぶり返し、最後の寒さとなること。バ⸢カ⸣リ[ba⸢ka⸣ri](別れ)に、ピ⸢ラ⸣ク[pi⸢ra⸣ku](寒波)が付いて合成された「最後の寒波」の意の複合名詞。
パカリビリ [pa⸢kari⸣biri]計り減り。枡や秤で計量して売買するうちに、量りこんで全体として減量すること。また穀類などを干しているうちに量が減ること。
バカリミチ [ba⸢kari⸣miʧi]分かれ道。岐路。
バカリムラ [ba⸢kari⸣mura]分村。「分かれ村」の義。普通は、ム⸢ラバカリ[mu⸢rabakari](村分かれ)という。
バカリヤー [ba⸢kari⸣jaː]分家。本家から分家した次男以下の所帯。普通は、⸢ヤーバカ⸣リ[⸢jaːbaka⸣ri](分家。<家分かれ>)という。
バカリルン [ba⸢kari⸣ruŋ]自動{1}分かれる。分離される。動詞⸣バクン[⸣bakuŋ](分ける)の未然形に助動詞⸢リ⸣ルン[⸢ri⸣ruŋ](られる)が下接して形成された形。
バカリルン [ba⸢kari⸣ruŋ]自動{2}別れる。離別する。
パガリルン [pa⸢gari⸣ruŋ]自動剥がれる。剥ぐことができる。
バカリン [ba⸢ka⸣riŋ]自動分けられる。分けることが出来る。バ⸢キラ⸣リン[ba⸢kira⸣riŋ](分けられる)ともいう。⸣バクン[⸣bakuŋ](分ける)の未然形に助動詞⸣リン[⸣riŋ](れる)が下接して形成された可能動詞。
パガリン [pa⸢ga⸣riŋ]自動剥がれる。剥げる。剥ぐことができる。⸣パグン[⸣paguŋ](剥ぐ)の未然形に助動詞⸣-リン[⸣-riŋ](れる)が下接して形成された受け身・可能動詞。
バカルン [ba⸢ka⸣ruŋ]自動{1}分かる。別々になる。離れる。「派、水出流也、美奈万太和加留<みなまたわかる>也」『新撰字鏡』。「天地と別之時從<わかれしときに>~。万、2092」の義。
バカルン [ba⸢ka⸣ruŋ]自動{2}分かる。理解する。了解する。合点が行く。筋道がはっきりする。
パカルン [pḁ⸢ka⸣ruŋ]他動{1}測る。量る。計測する。物差しや秤、枡などで距離、重量、体積、形態などを計量する。「計、ハカル・ハカリミル」『類聚名義抄』の転訛。
パカルン [pḁ⸢ka⸣ruŋ]他動{2}{謀}{ハカ}る。他人を陥れようと{企}{タクラ}む。
バカンガイルン [ba⸢kaŋgai⸣ruŋ]自動若返る。若年層は、バ⸢カンゲー⸣ルン[ba⸢kaŋgeː⸣ruŋ](若返る)ともいう。
ハギ [ha⸢gi]軒。ひさし(庇)。母屋の縁側から更に軒を出したところ。そこは天井を張らない。「接ぎ」の転訛か。ピ⸢サシ[pi̥⸢saʃi](庇)とも、パ⸢ギ[pa⸢gi](庇)ともいう。シ⸢ティパギ[ʃi̥⸢tipagi](軒の下、土間の部分)は防風、灼熱の太陽光を防ぐ機能を果たした。
バキ [⸣baki]脇。腋。
パギ [⸣pagi]{1}はげ(禿げ)。禿頭。「頇、ハゲ、無\kaeriten{㆑}髪也」『文明本節用集』の転訛したもの。
パギ [⸣pagi]{2}不漁。
パギカクン [pa⸢gi⸣kakuŋ]自動脱色しはじめる。色が落ち始める。剥げかける。剥げ始める。
パギクジ [pa⸢gi⸣kuʤi]からくじ(空籤)。しらくじ。当らない籤。「剥げ籤」の義。
バキサカサ [ba⸢kisaka⸣sa]神女<巫女>の一人。⸢脇司」の義。サ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司。巫女)の側で祈願に必要な祭具類を揃えたり、⸢コー⸣パナ[⸢koː⸣pana](線香や花米)の準備をし、ア⸢ライパナ[ʔa⸢raipana](花米を洗って供えるもの)の準備をしたりする巫女で、サカサの脇で手を合わせて拝礼する。それぞれのピ⸢キ[pi̥⸢ki](ひき。血統)の中から⸣サーダカマリ[⸣saːdakamari](セヂ高い生まれの人)の女性がそれになる。
パギジー [pa⸢gi⸣ʤiː]痩せ地。地味が痩せて作物があまり生長しない土地。フ⸢キ⸣ジー[ɸu̥⸢ki⸣ʤiː]({沃土}{ヨク|ド})の対義語。「剥げ地」の義。
パギスブル [pa⸢gisubu⸣ru]剥げ頭。禿頭。
パギター [pa⸢gi⸣taː]痩せた田圃。地味の痩せた田。「はげ田」の義。
バキダマ [ba⸢ki⸣dama]分け前。分与された財産。権利として配分されたもの。追い込み漁等で漁獲物を能力に応じて配分した分量。
バキチ [ba⸢ki⸣ʧi]バケツ(bucket)。外来語(英語)の転訛したもの。アルミ板や鉄板製の水桶。逆円錐形の桶で半円形の柄が付いており、天秤棒で担いで水を運んだ。
パキッツァースン [pḁ⸢kitʦaː⸣suŋ]他動吐き散らす。散々に吐く。
パギッツァースン [pa⸢gitʦaː⸣suŋ]他動剥ぎ散らす。散々に剥ぐ。
パキッツァーン [pḁ⸢kit⸣ʦaːŋ]嘔吐しそうである。嘔吐をもよおす。船酔いしてもどしそうである。「吐きたさ・あり」の転訛したもの。
バキトゥルブン [ba⸢kituru⸣buŋ]⸢脇取り盆」の義。かよいぼん(通盆)。給仕に使う盆。幅約33センチ、高さ約6センチ、長さ約70センチの長方形の盆。餅を作る際、脇取り盆に餅粉をふって餅を並べておいたり、供物の料理を並べて持ち運びするのに用いる。イ⸢キ⸣パナ[ʔi⸢ki⸣pana](活花)、ア⸢ライパナ[ʔa⸢raipana](洗い花米)、⸢サー⸣ドー[⸢saː⸣doː](茶湯)、⸢トゥイ⸣ミョー[⸢tui⸣mjoː](灯明)、ウ⸢ツァナ⸣ク[ʔu⸢ʦana⸣ku](白餅、団子。「御茶の子」の転訛したものか)、ミ⸢キ[mi⸢ki](神酒)、クバン[⸣kubaŋ](燻製魚肉の角切り)などの供物を各一対、バキトゥリブンに並べて供えられた。
バキトゥルン [⸣bakituruŋ]他動分けて取る。分割する。他動詞⸣バクン[⸣bakuŋ]の連用形に、他動詞⸣トゥルン[⸣turuŋ](取る)が下接して形成された複合動詞。
パギトゥルン [⸣pagituruŋ]他動剥ぎ取る。
パギヌー [pa⸢gi⸣nuː]地滑りを起こして山肌が露出したところ。「剥げ野」の義。樹木が生えていない原野。
バキパカ [ba⸢ki⸣paka]脇墓。本墓の両脇にある小さな墓。ス⸢ディパカ[su⸢dipaka](袖墓)ともいう。本葬<洗骨して本墓に納めること>にする前に仮に棺を納めておく墓。出戻りの人や分家筋の人のお骨を納める墓。
ハギバラー [ha⸢gibaraː]軒下の柱。「{脛}{ハギ}・柱」の転訛か。ヌ⸢キヤー[nu⸢kijaː](本建築。<貫き家>)の最外側の柱列をいう。南面の軒を更に外側へ三尺延ばした軒の柱を、シ⸢ティハギ[ʃi⸢tihagi](「外脛」の転訛したものか)という。
パギフタイ [pa⸢gi⸣ɸu̥tai]禿げ上がった額。「剥げ額」の義。
パギミー [pa⸢gi⸣miː]ただれ目。眼瞼湿疹。「蠛、タダレメ」『類聚名義抄』の義。⸣ミーパガー[⸣miːpagaː](剥げ目の人)ともいう。
バキミジ [ba⸢kimiʤi]湧き水。
バキムヌ [ba⸢ki⸣munu]分配物。分配すべき物。「分け物」の義。
ハギヤー [ha⸢gijaː]母屋に接ぎ足して作った小家。
パギヤマ [pa⸢gi⸣jama]はげやま(禿山)。草ばかり生えて、樹木の生えてない山。
バキラリン [ba⸢kira⸣riŋ]自動分けられる。他動詞バ⸢キ⸣ルン[ba⸢ki⸣ruŋ](分ける)の未然形に受け身・可能の助動詞⸣リン[⸣riŋ](れる)が下接して形成された受身・可能の派生動詞。
バキルン [ba⸢ki⸣ruŋ]他動分ける。分配する。分割する。
パギルン [pa⸢gi⸣ruŋ]自動{1}はげる(禿げる)。毛がなくなる。剥げる。「はぐ<剥ぐ>、下一・二段」のラ行四段活用化したもの。
パギルン [pa⸢gi⸣ruŋ]自動{2}土地が痩せる。
パギルン [pa⸢gi⸣ruŋ]自動{3}色が褪せる。
パギルン [pa⸢gi⸣ruŋ]自動{4}籤が外れる。籤が当らない。
パギルン [pa⸢gi⸣ruŋ]自動{5}失敗する。外れる。
バキンッサーラ [ba⸢kinssaː⸣ra]腋。腕のつけ根の下部。「腋の下」の義。
パク [pḁ⸢ku]箱。
ハクサイ [hḁ⸢ku⸣sai]白菜。標準語からの借用語か。石垣島の商店から種子を購入して栽培していた。
パクジミ [pḁ⸢ku⸣ʤimi]箱詰め。箱の中に物を詰め込むこと。貴重品は箱に入れて保管したり輸送したりした。
ハクジョー [hḁ⸢kuʤoː]薄情。人情の薄いこと。標準語からの借用語。
ハクジョー スン [hakuʤoː suŋ]隠し事を打ち明ける。自分の犯した罪を申し立てる。白状する。標準語からの借用語が転訛したもの。
ハクブン [hḁ⸢kubuŋ]他動運ぶ。荷物を運送する。「Facobi, u, ôda. ハコビ,ブ,ウダ(運び,ぶ,だ)運搬する」『邦訳日葡辞書』。
パクマッふァ [pḁ⸢kumaffa]箱枕。板で箱形に作った枕。縦約12センチ、横約18センチ、高さ約7センチの箱を作って枕としたもの。軽くて扱いやすく、老人たちに重宝された。
バクヨー [ba⸢ku⸣joː]牛馬などの家畜を仲介、{周旋}{シュウ|セン}する人。西表の山から貴重な建築材を伐り出したり、その仲介、周旋をする人。建材の仲買人。「ばくろう(博労)」の転訛したものか。
ハクラン [⸣hḁkuraŋ]病気の名。コレラ(cholera)。コレラ菌による、米のとぎ汁状の激しい下痢を伴う疾患『医学沖縄語辞典』。「かくらん<霍乱>」の転訛したもの『石垣方言辞典』。
バクン [⸣bakuŋ]他動わかつ。区別する。弁別する。配分する。「~布由奈都登 和久許等<ワクコト>母奈久~。万、4003」の転訛。
バクン [⸣bakuŋ]他動木をひく<{挽}{ヒ}く>。切り割る。鋸を挽いて木を縦に切り裂く。「わく<分く>」の義。
バクン [ba⸢kuŋ]自動{1}湧く。湧出する。「~又、水之泡、和久(わく)」『新撰字鏡』の転訛。
バクン [ba⸢kuŋ]自動{2}醗酵する。熟成する。
パクン [⸣pḁkuŋ]他動吐く。嘔吐する。
パクン [pḁ⸢kuŋ]他動首にかける。数珠やネックレスなどを首に貫きかける。⸢穿く、佩く」と同源か。
パクン [pḁ⸢kuŋ]他動被る。背負う。背負い込む。償う。弁償する。
パグン [⸣paguŋ]他動剥ぐ。はがす。へがす。「~もむ楡を五百枝波伎<ハギ>垂れ~。万、3886」の転訛したもの。
パグン [⸣paguŋ]自動{1}禿げる。⸢禿ぐ<下二活用>」の四段活用化したもの。パ⸢ギ⸣ルン[pa⸢gi⸣ruŋ](禿げる)ともいう。
パグン [⸣paguŋ]自動{2}脱色する。
バケーラ [ba⸢keːra]湧泉。「湧き川原」の転訛したものか。
バケーラマシ [ba⸢keːramaʃi]湧水のある田圃。「湧水田」の義。
バコー [⸣bakoː]結いによる共同作業。村人が相互に労働提供の義務を負う共同作業。「ばくろう(博労、バクラウ)『文明本節用集』(室町)」→ [bakurau] → [bakuroː] → [bakkoː] → [bakoː]<物と物を交易すること>と音韻変化し、意味も「結いによる共同作業」へと派生変化したものと考えられる。
パゴーサン [pa⸢goː⸣saŋ]パ⸢ゴー⸣ン[pa⸢goː⸣ŋ]ともいう。{1}汚い。嫌らしい。
パゴーサン [pa⸢goː⸣saŋ]{2}くすぐったい。
パゴーサン [pa⸢goː⸣saŋ]{3}畏れ多い。
バコーシンカ [ba⸢koːʃiŋ⸣ka]共同作業の人員。共同作業仲間。
バコープス [ba⸢koː⸣pu̥su]共同作業をする人。
パコーマ [pḁ⸢koː⸣ma]小箱。⸢コーブ⸣ク[⸢koːbu⸣ku](香箱)や⸢ジン⸣パク[⸢ʤim⸣pḁku](銭箱)などは、パ⸢コー⸣マ[pḁ⸢koː⸣ma](小箱)であった。
パゴームニ [pa⸢goː⸣muni]汚い言葉。いやらしい言葉。畏れ多い言葉。神仏にたいする失礼な言葉。
パゴームヌ [pa⸢goː⸣munu]汚いもの。不潔なもの。
バコーヤー [ba⸢koː⸣jaː]⸣バコー[⸣bakoː](共同作業)を行う家。共同作業をするために人手を集めている家。