鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
-ワ [⸣-wa]終助{1}~か。動詞の連体形に下接し、文頭の疑問詞と呼応して疑問、質問の意を表す。
-ワ [⸣-wa]終助{2}~なあ。なんと~ことよ。形容詞の連体形について、詠嘆、感動の意を表す。
ワー [⸢waː]君。あなた。二人称単数形。男、女の区別なく用いられ、同輩、目上の人に対して用いられる。老年層は、ワ⸢ヌ[wa⸢nu](君。あなた)ともいう。⸢ワー[⸢waː](君。あなた)は、「{爾}{ナンジ}、此をば飫例<おれ>と云ふ<神武即位前>」『日本書紀』の「おれ」が ore → ora → ura(ura「語音翻訳」『海東諸国紀』、「你、烏喇哇」<ウラワ>『琉球館訳語』)と転訛したもの。更に、[ʔura](西表租納方言)は → [vva](宮古方言)→ [uva](黒島方言)→ [uwa](川平方言)→ [waː](鳩間方言)のように音韻変化する。
ワーシブテー [⸢waːʃibuteː]屋号。泉川二郎氏宅。泉川氏は沖縄本島からの寄留漁民であった。沖縄本島の民間療法を伝えた。終戦後のマラリア患者、その他の患者に民間療法を施して治療した。
ワーター [⸢waːtaː]君たち。対称(二人称)の代名詞。複数形。ワ⸢ター[wa⸢taː](君たち)ともいう。
ワーッティ [waːt⸢ti]わっと。大声で泣き崩れるさま。
ワーバ [⸢waːba]余分。余計なもの。「おわば 何事も本より外之事を申也」『混効験集』とある
ワーバグトゥ [⸢waːbagutu]余計な事。しなくてもよい事。余計なお世話。[ʔuwaba] → [ʔwaːba] → [waːba] と転訛したもの。
ワーバシグトゥ [⸢waːbaʃigutu]余計な仕事。無駄な仕事。賃金の貰えない仕事。
ワーバジン [⸢waːbaʤiŋ]無駄なお金。余計なお金。不必要な金。
ワーバムニ [⸢waːbamuni]余計な言葉。おせっかい(御節介)をやくこと。頼まれもしないのに、他人のことに口を挟むこと。
ワウワウシ [⸢wauwau⸣si]犬の泣き声(擬声語)のさま。わんわんと。
ワキ [⸣waki]{1}訳。理由。
ワキ [⸣waki]{2}侘び。
ワキ スン [⸣waki ⸢suŋ]あやまる(謝る)。詫びる。⸢言い訳をする」の義。
ワザ [⸣waʣa]{1}しわざ(仕業)。行為。所業。
ワザ [⸣waʣa]{2}仕事。職業。
ワザク [wa⸢ʣa⸣ku]からかい。いたずら(悪戯)。
ワザトゥ [wa⸢ʣatu]わざと。故意に。わざわざ。強調して、ワ⸢ザットゥ[wa⸢ʣattu](わざと)ということもある。
ワザムチ [⸣waʣamuʧi]{1}特殊技能を持っている人。
ワザムチ [⸣waʣamuʧi]{2}芸能に優れた人。
ワザワイ [wa⸢ʣawai]災い。災難。不幸なできごと。サ⸢ワリグトゥ[sa⸢warigutu](障り。支障)ともいう。
ワザワザ [wa⸢ʣawaʣa]わざわざ。特にそのために。標準語からの借用語。老年層は、⸣シンニン[⸣ʃinniŋ](わざわざ。もっぱら。「Xennen.センネン(専念)Mopparani vomô(専らに念ふ)」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの)ともいう。
ワジカ [wa⸢ʤi⸣ka]わずか(僅か)。少々。ほんの少し(量が少ないさま)。「僅、小也、和豆可尓<わづかに>」『華厳経音義私記』の転訛したもの。老年層は、ン⸢メーマ⸣ナー[ʔm⸢meːma⸣naː](少しずつ)という。
ワター [wa⸢taː]{1}君ら。君たち。二人称代名詞の複数。⸢バン⸣ター[⸢ban⸣taː](聞き手を含まない、私たち。僕ら)の対義語。⸢ワーター[⸢waːtaː](君たち。貴方方)ともいう。
ワター [wa⸢taː]{2}貴方がた(尊敬の複数形)。
ワタクサー [wa⸢ta⸣ku̥saː]へそくり。沖縄本島方言からの借用語。「手の中の荒るるを厭はず、わたくしを拵へ」『西鶴・諸艶大鑑三』の「わたくし(親方に内緒でする仕事。内職)」の転訛したものか。
ワタンジャー [wa⸢tan⸣ʤa]渡し場。首里方言からの借用語が転訛したものか。浦内川の渡し場。
ワチラースン [wa⸢ʧiraːsuŋ]他動わずらわせる。面倒をかける。ほねをおらせる。
ワチラウン [wa⸢ʧirauŋ]自動てこずる(梃子摺る)。処置に困る。難儀する。病む。「~かにかくに思ひ和豆良比<ワヅラヒ>ねのみし泣かゆ。万、897」の転訛したもの。
ワッサン [⸢was⸣saŋ]悪い。よくない。老年層はバ⸢ラ⸣サン[ba⸢ra⸣saŋ](悪い)ともいう。「劣、ワルシ、ワロシ」『色葉字類抄』の転訛したもの。
ワッテー [⸢wat⸣teː]君の家。貴方の家。{御宅}{オ|タク}。
ワビ [wa⸢bi]{謝罪}{シャ|ザイ}。{謝}{アヤマ}ること。
ワビルン [wa⸢biruŋ]自動詫びる。謝る。謝罪する。若年層のことば。老年層は⸢アイ⸣マルン[⸢ʔai⸣maruŋ](謝る)という。
ワラワラーッティ [warawa⸢raːtti]めらめらと。怒りの感情や衝動が燃え上がるさま。
ワリヤイ [wa⸢ri⸣jai]割合。標準語からの借用語。
ワンザ [⸣wanʣa]お前め。貴様。お前野郎。二人称単数の卑称。
ワンザンメー [⸣wanʣammeː]貴様ら。お前めら。お前野郎ども。二人称複数の卑称。
ワンダーッサン [⸢wandaːs⸣saŋ]優しい。性格がおとなしい。{柔和}{ニュウ|ワ}である。