鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
[⸣ʧi]助数つ(箇。個)。数に下接して数を表す。「~朝獵に伊保都(いほつ)鳥立て~。万、4011」のツ<都>の義。
チェッ [⸢ʧeʔ]ちえっ。予期に反して残念な時、いまいましい気持ちを表す音声。
チガイ [ʧi⸢gai]違い。相違。差異。
チガウン [ʧi⸢gauŋ]自動{1}違う。異なる。
チガウン [ʧi⸢gauŋ]自動{2}変わる。おかしくなる。
チカグル [ʧi̥⸢ka⸣guru]近頃。最近。
チカユルン [ʧi̥⸢ka⸣juruŋ]自動近くへ寄る。近づく。
チクサ [ʧi̥⸢ku⸣sa](植)野草の一種。この草は三ヶ月の旱魃にも耐えるといわれている。⸢トー⸣タビ[⸢toː⸣tabi](唐旅)に行って帰ってくるまで枯れなかったことから、この野草を井戸の祈願の供物にする⸣スナイ[⸣sunai](和え物)に加えるのだという『石垣方言辞典』。子供の⸢タンカーヨイ[⸢taŋkaːjoi](誕生祝)や、⸢カンヌ⸣ヨイ[⸢kannu⸣joi](神祝い。神事祝い)の際にもこの野草が用いられるという。
チサ [⸣ʧi̥sa](植)ちしゃ。野菜の一種。戦後に石垣島から種子を購入して作付けしていた。柔らかくて美味しい野菜であったが、鳩間島ではあまり作付けしなかった。
チジ [ʧi⸢ʤi]頂き。頂上。老年層は、ティ⸢ジ[ti⸢ʤi](頂き。頂上)という。
チジクン [ʧi⸢ʤikuŋ]自動続く。途切れずに繋がる。「針袋帯び都々氣<ツツケ>ながら~。万、4130」の転訛したもの。普通は、シ⸢ジクン[ʃi⸢ʤikuŋ](続く)という。
チジマルン [ʧi⸢ʤimaruŋ]自動縮む。縮まる。縮んだ状態になる。
チジミルン [ʧi⸢ʤimiruŋ]他動縮める。
チジムン [ʧi⸢ʤimuŋ]自動縮む。縮まる。
チジュヤーブシ [ʧi⸢ʤujaː⸣buʃi]浜千鳥節。沖縄本島の舞踊の一つ。雑踊り。明治27年ごろに那覇の端道演芸時代に上演されたという。紺地の衣装に白足袋、紫のサージのコスチュームで踊られる。鳩間島へは石垣島の芝居小屋から伝わったものであろう。
チジルン [ʧi⸢ʤiruŋ]自動ちじれる(縮れる)。細かくくるくる巻きに縮まる。
チチシミ [ʧi̥⸢ʧiʃimi]慎むこと。用心すること。自戒すること。
チチシムン [ʧi̥⸢ʧiʃimuŋ]他動つつしむ(慎む)。用心する。謹慎する。あやまちがないようにする。/ムニイザバ チチシミ フチヌ フカユ ンザスナヨー ンザシカラー マタトゥ フクミヤ ナラヌ デンサー/(ものを言うときは用心して簡単に口外するなよ。一度口外したら、言葉は再度口の中に含みこむことはできない)(デンサー節)。
チドリ [ʧi⸢du⸣ri](動)鳥の名。千鳥。ウミネコ(海猫)のこと。歌謡語。パ⸢マザ⸣キ[pa⸢maʣa⸣ki](浜先浜)の干潟に下りてよく餌をついばむ。また前の海の上を群れ飛んで小魚を捕る。日常会話では、シ⸢ドゥ⸣リ[ʃi⸢du⸣ri](千鳥)ともいう。/マイヌパマ ヨー チドゥリ ヨー トゥリ トゥブトゥリ ハーリ ミルク ヨーヌヨー チドゥリ/(前の浜、ヨー<囃子> 千鳥 ヨー<囃子> 鳥、飛ぶ鳥 ハーリ<囃子> 弥勒、ヨーヌヨー<囃子>千鳥)「鳩間浜千鳥節」『鳩間島古典民謡古謡集』
チニヒージー [⸣ʧiniçiːʤiː]常日頃。普段。平常。平生。「常・平常」の転訛したものか。
チパル [ʧi̥⸢paru]支柱。柱と柱の間に交叉して連結する耐震性の建材。柱と柱の間に対角線に、x状に渡した耐震構造の強化建材。「突っ張り」の転訛したものか。ヌ⸢キ[nu⸢ki](貫き)は連結材。
チミ [⸣ʧimi]罪。つみとが(罪科)。法律的、道徳的罪科。
チミトゥンガー [⸣ʧimituŋgaː]つみとが(罪科)。
チムエー [ʧi⸢mu⸣jeː]意味は。訳は。首里方言からの借用語。「つもり<心算>」の転訛したもの。[ʦumoriː] + [ja](は)→ [ʧimuijaː] → [ʧimujeː] のように音韻変化したもの。
チャー [⸢ʧaː]いつも(何時も)。常に。
チャー [⸢ʧaː]接頭{1}いつも~。常に~。
チャー [⸢ʧaː]接頭{2}それきり(其限)。それっきり。そのまま。動詞の連用形に上接して、その動詞の意味内容がそのまま継続することを表す合成語を造る。
チャーウティ [⸢ʧaː⸣ʔuti]病気が完治すること。病気が再発しないで健康を維持していること。⸢チャー[⸢ʧaː](そのまま)は接頭語。
チャーガ [⸢ʧaːga]どうだ。それ見ろ。恐れ入ったか。そうだろう。言ったとおりだろう。「如何か」の転訛したもの。首里方言からの借用語。普通は、⸢ヌー⸣シヤー[⸢nuː⸣ʃijaː](どうだ。恐れ入ったか)、イ⸢カ⸣シヤー[ʔi⸢ka⸣ʃijaː](どうか。如何か。如何だ)という。
チャー ガンズー [⸢ʧaː gan⸣ʣuː]何時も元気だ。首里方言からの借用語か。鳩間方言では、目上に対して、⸣ミサー ア⸢ロールン[⸣misaː ʔa⸢roːruŋ](お元気でいらっしゃいますか<良くておられますか>)と尋ねると、ミサン⸢ダー[misan⸢daː](元気だよ)と答える
チャーシー [⸢ʧaː⸣ʃiː]継続して行うこと。継続続行。ずっと続けてやっている。
チャーチャー [⸢ʧaː⸣ʧaː]父。お父さん。西原家の人が西原真津氏をチャーチャーと呼んでいた
チャートゥリ [⸢ʧaː⸣turi]取り続けること。
チャーニビ [⸢ʧaː⸣nibi]眠り続けること。
チャーバライ [⸢ʧaː⸣barai]笑い続けること。
チャーパリ [⸢ʧaː⸣pari]行ったまま、それっきりになること。
チャブダイ [ʧa⸢bu⸣dai]ちゃぶだい(卓袱台)。折り畳み式の四脚の低い食事台。「しっぽく(卓袱)」の唐音より転訛したものという。鳩間方言へは、標準語から借用されたものであろう。新式のハイカラな食台とされていた。
チャントゥ [ʧan⸢tu]ちゃんと。きちんと。間違いなく。
チャンプル [⸢ʧam⸣puru]料理名。豆腐や野菜の炒め物。中国の惣菜料理の「炒腐児」から転訛した語という。
チャンプルー [⸢ʧam⸣puruː]炒め物。沖縄本島方言からの借用語。
チューザラ [⸢ʧuː⸣ʣara]中皿。中程度の大きさの皿。銘々皿。標準語からの借用語か。おかず等を盛るのに用いる。⸢ウー⸣ザラ[⸢ʔuː⸣ʣara](大皿)と⸢クー⸣ザラ[⸢kuː⸣ʣara](小皿)の中間の大きさの皿。一般的には、⸣スルイ[⸣surui](皿)ということが多い。皿の総称として⸢カイ⸣キ[⸢kai⸣ki](皿。「貝笥」の義か)ともいう。
チューチュー [⸢ʧuː⸣ʧuː](幼)ちんちん。幼児の男根。チュー⸢チョー⸣マ[ʧuː⸢ʧoː⸣ma](可愛いおちんちん)ともいう。
チューバン [⸢ʧuːbaŋ]中程度の大きさのカツオ。「中判」の義。5~6キログラム程度のカツオ。
チューフー [⸢ʧuːɸuː]中風。「半身不随[hemiplegia] 脳出血等の疾病にみられる、手足の不自由」『医学沖縄語辞典』(稲福盛輝著)。
チュームン [⸢ʧuː⸣muŋ]注文。標準語からの借用語。普通は、ア⸢チ⸣ラウン[ʔa⸢ʧi⸣rauŋ](誂える。注文する)という。
チュファーラ [ʧu̥⸢ɸaːra]{1}腹一杯。満腹するほど。十分に。強調表現では、チュファー⸢ラ[ʧu̥ɸaː⸢ra](腹一杯)のように、アクセントが移動する。沖縄本島方言からの借用語。
チュファーラ [ʧu̥⸢ɸaːra]{2}飽き飽きするほど。こりごりするほど。
チュラーク [ʧu⸢raːku]綺麗に。見事に。すっかり。首里方言からの借用語。
チュラカーギ [ʧu⸢rakaː⸣gi]美人。美女。美貌。沖縄本島方言からの借用語。「清ら」からの転訛。ス⸢ラカー⸣ギ[su⸢rakaː⸣gi](美人)<老年層>ともいう。ア⸢バリミドゥ⸣ム[ʔa⸢barimidu⸣mu](美女。「あはれ女」の転訛)というのが伝統的鳩間方言である。
チュラムニ [ʧu⸢ra⸣muni]甘い言葉。巧言。
チョー [⸣ʧoː]ちょう(疔)。皮膚や皮下組織にできる悪性の腫れ物。激痛と急に化膿するのが特徴といわれている。手遅れになると命取りになるという。
チョー [⸣ʧoː]助数ちょう(挺)。丁。砂糖樽を数える助数詞。
チョーアンザーテー [⸢ʧoːanʣaːteː]屋号。大浜長安氏宅。名前の⸢チョーアン[⸢ʧoːaŋ](長安)に、⸢アー⸣ザ[⸢ʔaː⸣ʣa](兄さん)が下接し、更に接尾語⸢テー[⸢teː](~の家)が付いた合成語
チョーウティ [⸢ʧoː⸣ʔuti]記帳漏れ。記録漏れ。「帳落ち」の義。
チョーチン [⸢ʧoː⸣ʧiŋ]ちょうちん(提灯)。標準語からの借用語。お盆に仏壇に吊るして祖霊を迎えるのに用いた。日常生活で提灯を用いることはなかった。
チョーナ [⸢ʦoː⸣na]ちょうな(手斧)。斧で荒削りしたところを細かく削って平らかにする大工道具。平鑿を大きくした身に、直角に柄をつけた鍬形の斧。
チョーナン [⸢ʧoːnaŋ]長男。サ⸢ク⸣シ[sḁ⸢ku⸣ʃi](嫡子)というのが普通である。
チョーヒーキンサ [⸢ʧoːçiːkin⸣sa]徴兵検査。
チョーミー [⸢ʧoːmiː]長命。長寿。⸢チョーミガフー[⸢ʧoːmigaɸuː](長寿の果報、幸運)ともいう。
チョーミー シキルン [⸢ʧoːmiː⸣ ʃi̥⸢ki⸣ruŋ]長生きする。長寿を全うする。⸢チョーミー⸣ スクン[⸢ʧoːmiː⸣ su̥kuŋ](長生きする。長寿を全うする<長寿付く>)ともいう。
チョーミン [⸢ʧoːmiŋ]帳面。
チョーンドゥ [ʧoː⸢ndu]{1}ちょうど(丁度)。ぴったり。かっきり。ソー⸢ンドゥ[soː⸢ndu](丁度)<老年層>ともいう。
チョーンドゥ [ʧoː⸢ndu]{2}あたかも。さながら。
チョンチョンシ [⸢ʧonʧoŋ⸣ʃi]ポトポトと。液体が滴るさま。点々と。
チリチリー [ʧi⸢ri⸣ʧiriː]豚肉や猪肉、山羊肉のすき焼き。沖縄本島方言からの借用語。
チリチリーナビ [ʧi⸢riʧiriː⸣ nabi]すき焼き鍋のこと。豚肉などをすき焼きにする鍋。鳩間島の一般家庭では普通の汁鍋を利用してチリチリー料理を作っていた
チリナキ [ʧi⸢rinaki]夜明け前に鶏が一斉に鳴くこと。⸢サンバン⸣ドゥル[⸢samban⸣duru](三番鶏鳴)の次に一斉に鳴く鶏鳴。それが済むと白白と夜が明ける。「連れ鳴き」の転訛したもの。
チリブドゥル [ʧi⸢ribuduru]連れ舞。二人以上の者が一緒に舞うこと。またその舞。石垣島からの伝承という。鳩間島では祝儀の際に姉妹、兄弟が揃って舞い祝う事を美徳とする風習がある。
チリブニ [ʧi⸢ribuni]ともぶね(伴舟)。「連れ舟」の義。
チリルン [ʧi⸢riruŋ]自動散る。腫れ物が化膿しないで治る。腫れ物が化膿しないで腫れが退く。
チル [ʧi⸢ru](動)鶴。歌謡の中でよく用いられるが日常会話ではあまり使用しない。石垣方言からの借用語か。
チルカミブシ [ʧi⸢rukamibuʃi]鶴亀節。祝いの座で歌い踊られる節歌。石垣島の古典民謡で、⸢赤馬節、鷲ヌ鳥節」と共に鳩間島にも伝えられた。祝儀の歌謡として、パ⸢トゥ⸣マナカムリ[pḁ⸢tu⸣manakamuri](鳩間中岡。鳩間節)の次に歌い踊られている。
チン [⸣ʧiŋ]賃。代金。
チン [⸢ʧiŋ]接尾~の内に。一定の時間内を表す。
チン [⸢ʧiŋ]接尾粒。個。「粒」の訛語。
チンチ [⸢ʧin⸣ʧi]つば(唾)。唾液。「液、小児口所\kaeriten{㆑}出汁也、豆波木(つはき)」『新撰字鏡』の転訛したものか。
チンチ ヌンツァー スン [⸢ʧin⸣ʧi ⸢nun⸣ʦaː ⸢suŋ]唾を呑み込んで喉が詰まって息苦しくなる。{噎}{ム}せ返る。
チンチン [⸣ʧinʧiŋ](動)ひばり(雲雀)(若年層)。⸣ガザフケー[⸣gaʣaɸukeː](ひばり<雲雀>)(老年層)というのが普通。
チンビン [⸢ʧim⸣biŋ]