鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
[ta]接尾上接語の方面、場所、方位、方角を表す。「かた<方>、朝な朝な筑紫の方乎<カタヲ>出で見つつ~『万葉集 3218』」の転訛したものか。
[ta]助動~た。動作の完了や過去を表す。
ター [⸣taː]田。田圃。「秋の田之<タノ>~。万、88」の義。
ター [⸢taː]二つ。
ター [⸢taː]誰<不定称>。タ⸢ル[ta⸢ru](誰)ともいう<老年層。古謡>。「~梅の花 多礼可<タレカ>浮かべし~。万、840」の転訛したもの。そのままの形で主格(nominative)、属格(genitive)、対格(accusative)を表す。
ター [⸣taː]接尾{1}複数を表す。たち(達)。ら(等)。人に関してう。
ター [⸣taː]接尾{2}語末が[i]で終わる指示代名詞に下接すると、口蓋化して、⸣ッツァー[⸣tʦaː](達)となる。
ダー [⸢daː]助動助動詞。~だぞ。~ぞ。~よ。いろいろな語に付いて強い断定を表す。{1}名詞に付いて断定の陳述を表す。
ダー [⸢daː]助動{2}活用語の終止形に付く。
ダー [⸢daː]助動{3}動詞の命令形に付いて強い命令を表す。
ターイビ [⸢taː⸣ʔibi]田植え。⸢マイイビ[⸢maiʔibi](米植え)ともいう。
ターイビシンカ [⸢taːʔibiʃiŋ⸣ka]田植え人数。田植えをする人々<仲間>。「田植え臣下」の転訛したものか。田植えは5~10人が共同して⸢ユイ[⸢jui](結)をして実施した。互いに労力を出し合って、順々に田植えをした。一人の人が受け持つ田植えの範囲を、⸣パカ[⸣pḁka](はか。量)という。上手な人は目測で整然と田植えをするが、慣れない人は、⸢ケンナー[⸢kennaː](間縄。植え付け間隔の目印をつけた縄)を使って、後退りしながら田植えをした。田植えが済むと、ブ⸢ガリノー⸣シ[bu⸢garinoː⸣si](骨休め)の飲食をした。
ターウナイ [⸢taː⸣ʔunai](動)田や川などの淡水に棲息するウナギ(鰻)。⸢田鰻」の義。西表島の湧水のある水田に棲息していた。
ターウン [⸢taː⸣ʔuŋ](植)和名、サトイモ(里芋)。「田芋」の義。芋は根茎。鳩間島では栽培しない。西表島の船浦や上原で栽培されていた。
ターカイシ [⸢taːkai⸣ʃi]田打ち。「田耕し」の義。「むなしく春覆し夏植うる営み」『方丈記』、「墾、カヘス」『類聚名義抄』の転訛。⸢ターカイ⸣シ[⸢taːkai⸣ʃi](田打ち。田耕し)には、ア⸢ロー⸣ナ[ʔa⸢roː⸣na](粗打ち。最初に粗く耕すこと。「アラコナシ<粗熟し>の転訛。Tcuchiuo conasu<土をこなす。粘土を捏ねる>」『邦訳日葡辞書』の転訛)、マ⸢トーナ[ma⸢toːna](又打ち。「又こなし<熟し>」の転訛したもの。二度目の耕し)、⸢サン⸣トゥ[⸢san⸣tu](三度打ち)があり、働き者の百姓は、⸢ユントゥ[⸢juntu](四度打ち。四度耕し)をすることもあったという。
ター カイスン [⸣taː ⸢kai⸣suŋ]田を耕す。
ダーキ [⸢daː⸣ki]煮芋やご飯、餅などを、どろどろになるほど柔らかく、粘っこく炊いたもの。
ダーキイー [⸢daːki⸣ʔiː]柔らかすぎるご飯。糯米を入れすぎたり、水加減を誤って炊いたご飯。
ダーキムチ [⸢daːki⸣muʧi]柔らかすぎて、べっとりくっついた餅。
ターク [⸢taː⸣ku]くたくたに疲れたさま。足が立たないほどに疲れること。立てないほどに疲労困憊すること。
タークサイ [⸢taː⸣kusai]田ごしらえ。「田・拵え」の転訛したもの。田を三度耕し、田の畦草を刈り取り、畦を塗り固めて田植えの準備をすること。
ターグニ [⸢taː⸣guni]水田のある島。「田国」の義。⸢ヌー⸣グニ[⸢nuː⸣guni](水田の無い島。「野国」の義)の対義語。
タークヌ ミー [⸢taː⸣kunu ⸢miː]乳児に対する遊戯の一つ。「蛸の目」の義。⸢イージョーミー イージョーミー ター⸣クヌ ⸢ミー ター⸣クヌ ⸢ミー[⸢ʔiːʤoːmiː ʔiːʤoːmiː taː⸣kunu⸢miː taː⸣kunu ⸢miː](魚の目魚の目、蛸の目蛸の目)と唱えながら、握りしめた右手の人差し指で左手の{掌}{テノヒラ}の真ん中を突き刺すような仕草を繰り返し、次に⸢ピー⸣ジン⸢トー ピー⸣ジン⸢トー ミン⸣ミン⸢ミー ミン⸣ミン⸢ミー ガーバラガーバラ[⸢piː⸣ʤin⸢toː piː⸣ʤin⸢toː mim⸣mim⸢miː mim⸣mim⸢miː gaːbaragaːbara](肘、肘。耳、耳。あたま<こうむり。かがふり>振り振り)といって肘、耳を掴み、頭を揺らして遊ばせる遊戯
タークブ [⸢taː⸣kubu](植)ミズオオバコ。田の水中に生える。「田昆布」の義『石垣方言辞典』。鳩間島ではこれを食する習慣はなかった。
ダーシーダーシー [daː⸢ʃiːdaːʃiː]{1}それらしく立派に。えらそうに。きちんとして。崩れや乱れがなく、それなりに整然としているさま。
ダーシーダーシー [daː⸢ʃiːdaːʃiː]{2}立派に。
ターシグトゥ [⸢taːʃigu⸣tu]水田耕作。田仕事。
ターシタガヤー [⸢taːʃitagajaː]ままよ(儘よ)。誰が知ったことか。どうなったって誰が知るものか。若年層は、⸢ターシタガー[⸢taːʃitagaː](ままよ)ともいう。「誰が知ったことか」の転訛。自暴自棄になった時に発する言葉。
タースク [⸢taː⸣su̥ku]水田耕作地。田袋。⸢田底」の義か。転じて、水田耕作の場所。
タースクリ [⸢taːsu̥ku⸣ri]水田耕作。「田作り」の義。
タースクリプス [⸢taːsu̥kuri⸣pu̥su]水田耕作する人。「田作り人」の義。
タースン [⸢taː⸣suŋ]他動無駄にする。費やす。無益なものに使う。無にする。「絶やす。Tayaxi、su、aita(絶やし、す、いた)『邦訳日葡辞書』」の転訛したもの。
タースン [⸢taː⸣suŋ]他動悪戯や悪ふざけをして他人を怒らせる。からかう。ふざける。悪戯をしてけしかけ、子供の感情を害する。「Tauabure,uru,eta.タワブレ、ルル、レタ(戯れ、るる、れた)ひやかし、からかう、または、むつまじく遊びたわむれる、など、」『邦訳日葡辞書』の他動詞化したものか。
ターター [⸢taːtaː]誰たち。疑問代名詞の複数形。不定称の⸢ター[⸢taː](誰)、⸢~梅の花 多礼可<タレカ>浮かべし~。万、 840」の転訛したものに複数の接尾語⸢ター[⸢taː](達)が下接した形。
ダーダー [⸢da⸣ː⸢da⸣ː]牛や馬を停止させる声。
ターターティ ナーン [⸢taːtaːti naː⸣ŋ]誰彼無しに。相手かまわず。「誰誰と無く」の義。
タータバル [⸢taːtaba⸣ru]水田地帯。田原。田袋。「{田墾}{タ|ハリ}」の義か。
タータマ ジレータマ [⸢taːtama⸣ ʤireː⸢tama]誰彼のたまし。誰彼の分け前。⸢誰のたまし(受け取り分)、いづれのたまし(受け取り分)」の転訛したもの。
ダーチ [⸣daːʧi]~に沿って。線状的に続く長い道や石垣、海岸、川などに添うように移動するさま。
ダーチ [⸢daːʧi]接尾~沿い。
ターチーターチー [taː⸢ʧiː⸣taːʧiː]立つこと。幼児語。ABCDABCD型の畳語。乳児が立ち始める頃に、立つことを励ます掛け声。
ダーチダーチ [daː⸢ʧidaːʧi]幼児語。立っち。立っち立っち。あんよあんよ。
ターチュー [⸢taː⸣ʧuː]ふたご。双生児。同じ母から一回の分娩で生まれた二人の子。
ダーッカダーッカ [⸢daːkkadaːkka]びしょ濡れになってだらだら歩くさま。
ダーッカティ [daːk⸢kati]びっしょりと。ぐっしょり。びしょ濡れになって。ずぶ濡れになること。ひどく濡れているさま。ダッ⸢カティ[dak⸢kati](びっしょりと。ぐっしょりと)の強調表現。
ダーッサー ナーヌ [⸢daːs⸣saː ⸢naː⸣nu]良くない。信頼できない。
ダーッサン [⸢daːs⸣saŋ]{PoS_1}よい。素晴らしい。優れている。立派である。信頼できる。
ダーッサン [⸢daːs⸣saŋ]接尾{PoS_2}~らしく見える。~らしい。~いかにも~らしい。~にふさわしく見える。
ダーッふァダーッふァ [⸢daːffadaːffa]ざぶざぶ。ざんぶざんぶ。海や川の渚、水田の中を水を蹴って歩く音。水が大きく揺れて立てる音。
ターティ ナーン [⸢taːti naːŋ]たれかれなしに(誰彼無しに)。相手かまわず。
ターナ [⸢taː⸣na]副助{1}そのまま。そっくり同じ状態で。連体詞ウ⸢ヌ[ʔu⸢nu](その)に下接して副詞句をつくる。
ターナ [⸢taː⸣na]副助{2}過去、完了の助動詞タ[ta](た)に下接して、動作の完了した状態のまま、叉は<~たまま。~たなり。~してそれっきり>の意を表す。
ターナ [⸢taː⸣na]副助{3}(接助)~しながら。~のまま。「ある動作をしたまま同時並行で別の動作をする」の義。⸢ンテー⸣ナ[⸢nteː⸣na](~ながら。時間的に前後して)とも言う。
ターパタキ [⸢taːpata⸣ki]田畑。土地財産。
タービ [⸢taː⸣bi]足袋。
ターピル [⸢taː⸣piru](動)田圃に棲息するひる(蛭)。黒色で直径約5ミリ、体長約6センチの環形動物。両端に吸盤があり、稲刈りや田草取りで水田に入ると人の足にくっ付いて吸血するので子供達に恐れられている動物である。西表島には山にも、ヤ⸢マ⸣ピル[ja⸢ma⸣piru](山蛭)が棲息しており、山に入ると、ぴょんぴょん飛び跳ねてきて人の足に付き血を吸う。
ターブザ [⸢taː⸣buʣa]琉球国時代に農民の耕作を監督する村の下級役人。石垣方言からの借用語。農民の中から納税義務を免れる年代になったものが選ばれた。「田夫作」などと表記される『石垣方言辞典』。
ターフミ [⸢taː⸣ɸumi]田踏み。蹄耕。ガ⸢タダー[ga⸢tadaː](「潟田」の義。浅い水田。保水力の弱い水田)は数頭の牝牛の角を棒に結わえて水田に入れ、引き回しながら水田の土を踏み固めて保水力を増す水田工作法。
ダーブラミチ [⸢daːburamiʧi]泥んこ道。ぬかるんだ道。
ダーブル [⸢daːburu]二気筒(二個シリンダー)エンジン。英語のdoubleの訛ったもの。鳩間島には昭和の初期頃に二気筒の焼玉エンジンを搭載したカツオ漁船が導入されたという(加治工伊佐氏直話)。戦前は船主浦崎英行氏を中心にした組合の福吉丸はダーブルエンジン(東村)、船主慶田城勇氏を中心にした組合の建国丸は焼玉式一気筒エンジンであった(西村)。戦後は船主仲伊部正吉氏の正山丸がダーブルエンジン(東村)、船主小浜真吉氏の晃徳丸は焼玉式一気筒エンジン(東村)、船主大工定市(英祥)氏の大洋丸はダーブルエンジン(西村)を搭載してカツオ漁業を営業していた。二気筒エンジンの音はドロンドロンと力強く響いた。
ターマール [⸢taːmaː⸣ru]田圃の見回り。鳩間島から水田の稲の成長、猪の害、鼠の害、田の水加減を調べるために2、3日泊まりがけで西表島へ行き、水田を見回ること。
ターマシ [⸢taːma⸣ʃi]一定区画の水田。「田枡」の義。水田は、その位置により、⸢カン⸣ヌマシ[⸢kannu⸣maʃi](上の田<枡>。水源のシ⸢キム⸣トゥ{SqBr}ʃi̥⸢kimu⸣tu{/SqBr}<堰元>に近い水田)、ナ⸢カヌ⸣マシ[na⸢kanu⸣maʃi](中の水田<枡>)、ス⸢ムヌ⸣マシ[su⸢munu⸣maʃi](下流の田<枡>)と呼ばれた。また、水田の深さによって、ユ⸢ビター[ju⸢bitaː](深い田。「吸い込まれるように足が股や尻まで沈む深い田」の義。深いので牛が落ちて死んだという口伝がある。普通は木を田に沈め、それを踏みながら作業をしたという。フ⸢カ⸣ダー{SqBr}ɸu̥⸢ka⸣daː{/SqBr}<深い田>ともいう)とガ⸢タダー[ga⸢tadaː](浅い田。「潟田」の義か。海岸近くの水田で、保水力がないので牝牛数頭を繋いで田に入れ、田の土を踏ませて田の底を固めたという)がある。バ⸢ケーラマシ[ba⸢keːramaʃi](湧き水のある田)には⸢ター⸣ウナイ[⸢taː⸣ʔunai](田鰻)が棲息していた。ウ⸢ブマ⸣シ[ʔu⸢buma⸣ʃi](大きな田<枡>)、マ⸢シェー⸣マ[ma⸢ʃeː⸣ma](小さな田<枡>)は田の大小による区別であるし、マ⸢ルマシ[ma⸢rumaʃi](丸田<枡>)、⸢ナー⸣マシ[⸢naː⸣maʃi](長い田<長枡>)、⸣サンカクマシ[⸣saŋkakumaʃi](三角田<枡>)は形状による区別
ターミナ [⸢taː⸣mina]たにし(田螺)。⸢田」・⸢蜷」(「河貝子、美奈<みな>、俗用蜷字非也」『和名抄』)の義。
タームージ [⸢taːmuː⸣ʤi](植)水芋。「田芋」の義。
ターヤ [⸢taː⸣ja]誰か。
ターヤー [⸢taː⸣jaː]田小屋。西表島へサバニで通い、4・5日寝泊まりして水田耕作をするために造った小屋。5坪ほどの小屋。竹を編んで床を張り、炊事用具、寝具類、特に蚊帳も用意してあった。⸢プーキ[⸢puːki](風土病。「風気」の転訛。マラリア)に罹患することを恐れて、普段は鳩間島から⸣イダフニ[⸣ʔidaFuni](板舟。サバニ)で通って耕作した。⸢スー⸣ナビ[⸢suː⸣nabi](鍋)、⸢イー⸣ナビ[⸢ʔiː⸣nabi](釜)、マ⸢カ⸣ルドング[ma⸢ka⸣rudoŋgu](お碗類)を用意しておいて、煮炊きが出来るようにしていた。副食物には干潮時に獲ってきた魚や蛸などを当てた。
ターラ [⸢taː⸣ra]俵。麻で編んだ袋。麻袋。稲や粟などの穀物、ツノマタ等をカ⸢シガーフク⸣ル[ka⸢ʃigaːɸu̥ku⸣ru](南京袋)に詰めたもの。木炭は⸢ユシ⸣キ[⸢juʃi̥⸣ki](ススキ)で作った俵に詰めた。
ダーラー [daː⸢raː]ああ汚い!汚いよ!アーダー⸢ラー[ʔaːdaː⸢raː](ああ汚い{EOS!})の⸣アー[⸣ʔaː](ああ{EOS!})が脱落したもの。ダー⸢リー[daː⸢riː](ああ汚い{EOS!})ともいう。
ターラグ [⸢taːra⸣gu]{1}中身の入ってない俵(袋)。マニラ麻の袋<南京袋>。稲藁、ススキ等で編まれた穀物や塩、炭を入れるための袋(空の袋)。
ターラグ [⸢taːra⸣gu]{2}大食漢。
ダーラダーラ [⸢daːradaːra]だらだら。動作の鈍いさま。
ダーリー [daː⸢riː]汚い!ああ汚い!アーダ⸢リー[ʔaːda⸢riː](ああ汚い{EOS!}なんと汚いことよ)、イーダ⸢リー[ʔiːda⸢riː](まあ汚い{EOS!})ともいう。
ダーリダーリー [daːridaː⸢riː]子供に対して悪戯を仕掛け、はやしたてて子供の感情をがいすること。ふざけること。やあい!泣き虫やあい。やあい!おかしいぞ。人差し指を曲げたり伸ばしたりして相手を指し、ふざけてはやしたてる。
ターリバナ [⸢taːribana]熟睡した頃。熟睡の最中。眠りの最中。⸢タールン[⸢taːruŋ]は「熟睡する」の意。語源は「たはれ<戯れ>。常軌を逸し、一途にふける」の義か。ニ⸢ビタールン[ni⸢bitaːruŋ](熟睡する。<眠り戯れ>の義か)ともいう。⸢バナ[⸢bana]は、⸢パナ[⸢pana]の連濁現象で、⸢真っ盛り。最盛期」の義。ニ⸢ビバナ[ni⸢bibana](眠りの盛り)ともいう。
ターリルン [⸢taːriruŋ]自動熟睡する。ぐっすり寝入る。深い眠りに入る。⸢タールン[⸢taːruŋ](熟睡する)と同じ。
ダールダール [⸢daːrudaːru]とろとろ。どろどろ。ぐつぐつ。物が煮えて柔らかくとろけるさま。
タールン [⸢taːruŋ]自動熟睡する。ぐっすり寝入る。深い眠りに入る。
タールン [⸢taːruŋ]接尾~ばむ。~色を帯びる。四段活用動詞、ア⸢ガムン[ʔa⸢gamuŋ](赤らむ)、ッ⸢サ⸣ムン[s⸢sa⸣muŋ](白む)、ッ⸢ふ⸣ムン[f⸢fu⸣muŋ](黒む)、⸢アウムン[⸢ʔaumuŋ](青む)の、連用形語尾ン[ŋ](~み)に⸢タールン[⸢taːruŋ](~ばむ。~色を帯びる。「戯る」<一途にふける>『徒然草』の義か)が下接して、ア⸢ガンタールン[ʔa⸢gantaːruŋ](赤ばむ。赤らむ)、ッ⸢サンター⸣ルン[s⸢santaː⸣ruŋ](白む)、ッ⸢ふンター⸣ルン[f⸢funtaː⸣ruŋ](黒ずむ。黒ばむ)、⸢アウンター⸣ルン[⸢ʔauntaː⸣ruŋ](青む。青黒くなる)のように派生語が語形成される。
ターンガサ [taː⸢ŋgasa]代名詞的連語。誰か。誰だか、はっきり特定できない人を指す。石垣方言の借用語か。ター⸢ンナー⸣カ[taː⸢nnaː⸣ka](誰か)ともいう。
ターング [⸢taːŋgu]炭俵。ススキで編んだ木炭を入れる袋。
ターンターン [taː⸢ntaːŋ]誰にも彼にも。
ダーンターンシ [⸢daːntaːŋ⸣ʃi]叩きつける音の形容。だんだん。たんたん。
ダーンティ [daːn⸢ti]{1}どすんと。どうんと。どたんと。重い物体が落ちたり、倒れたりする際にたてる音の形容。
ダーンティ [daːn⸢ti]{2}どっかと。どっかり。
ターンナーカ [taː⸢nnaː⸣ka]連・代誰か。某。不定代名詞的。はっきり特定できない人を表す。
タイ [⸣tai]松明。松のやにの多い部分や竹、ススキなどを束ねて火をつけ、照明用としたもの。
タイ [⸣tai]{嫉妬}{シッ|ト}。対抗心。{妬}{ネタ}み。{嫉}{ソネ}み。対立。{悋気}{リン|キ}。焼餅を焼くこと。
ダイ [⸢dai]代金。値段。代価。「代」の義。
ダイ [⸣dai]{PoS_1}台。テーブル。土台。物を載せたり、飾ったりする際に用いる器具。普通は背もたれのないものにいう。
ダイ [⸣dai]助数{PoS_2}車や機械などを数える語。
ダイ [⸣dai]{PoS_1}代。世代。
ダイ [⸣dai]助数{PoS_2}世代。家の世代を表す語。
ダイ- [⸢dai-]接頭数詞に冠して物の順序を表す語。
ダイイチ [⸢daiʔiʧi]最初。最も大切なこと。一番。何よりも大事なこと。「第一」の転訛したもの。
ダイカール [⸢daikaːru]{1}代わり。代理。「代替わり」の派生的意味が転訛したもの。
ダイカール [⸢daikaːru]{2}世代交代。
タイガイ [⸢tai⸣gai]大概。おおよそ。あらまし。おおむね。おおかた。概略。若年層は、⸢タイ⸣ゲー[⸢tai⸣gaː](大概。概略。)という。鳩間方言では連母音aiは融合しないのが法則的である。
タイガイ [⸢tai⸣gai]{2}大部分。ほとんど。
タイガイ [⸢tai⸣gai]{3}いい加減。
タイガイ [⸢tai⸣gai]{4}(副詞的に)たぶん。おそらく。
ダイカン [⸢dai⸣kaŋ]大寒。最も寒い時期。二十四節気の一つ。旧暦1月20日頃。
ダイギ [⸢dai⸣gi]物の台にする木材。「台木」の義。標準語からの借用語。
タイク [⸢tai⸣ku]太鼓。大太鼓。普通は締め太鼓のことをいう。
タイク ウティプス [⸢tai⸣ku ʔu⸢ti⸣pu̥su]太鼓を打つ人。太鼓打ち。
ダイクニ [⸢dai⸣kuni](植)野菜の名。大根。
ダイクニヌ パー [⸢daikuni⸣nu ⸢paː]大根の葉。
ダイクニパン [⸢dai⸣kunipaŋ]大根脚。
ダイクビー [⸢dai⸣kubiː](海底地名)。西表島の北岸、久浦、伊武田の北にある干瀬の名。フ⸢ツァー⸣マ[ɸu̥⸢ʦaː⸣ma](イーシビーの小津口)の東側のウ⸢ブ⸣ビー[ʔu⸢bu⸣biː](ウブ干瀬<大干瀬>)の東角にある干瀬の名。ガ⸢バナレーヌ⸣ フ⸢チ[ga⸢banareːnu⸣ ɸu̥⸢ʧi](赤離の津口)の西側に面する。ここにも鳩間島の漁業組合が角又養殖をした
タイゲー [⸢tai⸣geː]大概。おおよそ。おおかた。あらまし。若年層が多用する。老年層は、⸢タイ⸣ガイ[⸢tai⸣gai](対外。おおよそ)という。
ダイケー [⸢dai⸣keː]屋号。大工定市氏宅。⸢カーンパタ⸣グヮー[⸢kaːmpata⸣gwaː](井戸の側の家)ともいう。大工宇慶那氏は大正末期から昭和初期に鳩間村の⸢スー⸣ダイ[⸢suː⸣dai](部落会長。「総代」の転訛)の職にあって、宮良當壮氏が鳩間方言調査を実施された際のインフォーマントであったという。
タイコー [⸢tai⸣koː]沖縄線香で、イ⸢ツァ⸣カウ[ʔi⸢ʦa⸣kau](板香)の六枚一束になったもの。「束香」の義。
タイコーマ [tai⸢koː⸣ma]{1}小太鼓。上の面を2本のばち(桴)で打つ。
タイコーマ [tai⸢koː⸣ma]{2}小太鼓を打ち鳴らしながら飛び跳ねて踊る太鼓踊り。
タイシ [⸢tai⸣ʃi](植)イチゴ<苺>(ナワシロイチゴ『石垣方言辞典』)。「覆盆子、イチゴ」『類聚名義抄』。若年層には⸢タン⸣シ[⸢taŋ⸣ʃi](苺)という人もいる。野生のイチゴは畑の畦や原野に自生していた。子供達は野良仕事の手伝いをして帰りに、よくイチゴを採って食べたものである。⸣ガザフケー[⸣gaʣaɸu̥keː](ひばり。若年層は⸣チンチン{SqBr}⸣ʧinʧiŋ{/SqBr}<ひばり。鳴き声より命名>ともいう)が⸢タイ⸣シ[⸢tai⸣ʃi](苺)の魅力に惹かれて、天帝からの使いの途中、苺を採って食べているうちに、天帝から預かった不老長寿の妙薬を蛇が零して全身に浴びたため、蛇は毎年脱皮して蘇り、人間は髪の毛と爪先だけにしか不老長寿の妙薬を塗ることが出来なかった。それ故人間は爪と髪の毛だけが生え変わるという口碑が伝わっている。
タイシチ [⸢tai⸣ʃi̥ʧi]大切。重要なこと。「Taixet.タイセッ(大切)愛.~Taixetuni zonnzuru(大切に存ずる)」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
タイ スン [⸣tai ⸢suŋ]嫉妬する。対立する。対抗心を燃やす。
タイソー [⸢tai⸣soː]大将。
ダイタイ [⸢dai⸣tai]名・副おおよそのところ。大概。あらまし。
ダイダイ [⸣daidai]代々。
ダイダカムヌ [⸢daidaka⸣munu]値段の高いもの。高値商品。「値高物」の義。
ダイダティ [⸢dai⸣dati]付け値。言い値。ねつけ(値付け)。値を付けること。
ダイダマ [⸢dai⸣dama]ダイナマイト。石垣方言の⸢ダイ⸣ナマの転訛したもの。
タイティー [⸢tai⸣tiː]大体。大概。あらまし。
タイトー [⸢taitoː]ちぎばかり。ちきり。大きなさおばかり(大{桿秤}{サオ|バカリ})。一貫目(1000匁3、75キログラム)以上の重い物の目方を量るのに用いる大竿秤(さおばかり)。
タイヌ ピー [⸢tai⸣nu ⸣piː]いさりび(漁り火)。
ダイパー [⸢dai⸣paː]すりばち(擂鉢)。漏斗状の陶製の鉢で、内側に細い縦じまの刻み目がつけてある。味噌や胡麻を入れて、すりこぎ(擂粉木)で擂り潰すのに用いる鉢。「ライバン<擂盤>『物類称呼』」の転訛『石垣方言辞典』という。
ダイパーシリ [⸢daipaː⸣ʃiri]すりこぎ(擂粉木)。「擂鉢擂り」の義。普通は木質の硬い⸢キャーンギキー[⸢kjaːŋgikiː](槇)の垂木の余りを利用して作った。シ⸢ルング⸣チ[ʃi⸢ruŋgu⸣ʧi](擂粉木)ともいう。
タイパン [⸢tai⸣paŋ]台湾。戦前は鳩間島からも台湾へ出稼ぎに行く人がいた。台湾定期航路の大型貨客船は西表島の白浜港で燃料の石炭を積んで出港した。鳩間島の人は白浜港で乗船するのが多かったという。台湾帰りの人を、⸢タイパン⸣プス[⸢taipam⸣pu̥su](台湾人)と呼んでいた。
ダイバン [⸢dai⸣baŋ]大きな物。特にカツオの大型魚(約10キログラム程度)に対していう。「大判」の義。カツオの小型魚はク⸢バン[ku⸢baŋ](小振りのカツオ。「小判」の義)という。大きな人、肥満の人にも⸢ダイ⸣バンという。
タイパンサー [⸢taipan⸣saː]台湾茶。サンピン茶。
タイパンズニ [⸢taipan⸣ʣuni]地名。海底地名。台湾曽根。カツオの好漁場。
タイパンプステー [⸢taipampu̥su⸣teː]屋号。花城加那氏宅。「台湾帰りの人の家」の義。敗戦後、台湾から引き揚げてきた花城加那氏の家。
ダイ ビスン [⸣dai bi⸢suŋ]台を据える。基礎を築く。
タイビョー [⸢taibjoː]重病。「大病」の義。標準語からの借用語。普通は、ウ⸢ブヤン[ʔu⸢bujaŋ](大病)、ウ⸢ブヤンマイ[ʔu⸢bujammai](大病)という。
ダイブ [dai⸢bu]相当。大分。かなり。標準語から転訛したもの。老年層は、ユ⸢カラスコー[ju⸢karasu̥koː](相当。かなりな程度。相当程度)という。
タイフー [⸢tai⸣ɸuː]台風。標準語からの借用語。老年層の人は、⸢ウーカジ[⸢ʔuːkaʤi](大風、台風)、カ⸢ジフキ[ka⸢ʤiɸuki](⸢風吹き」の義。台風。暴風)というのが普通であった。⸢ボーフー[⸢boːɸuː](「暴風」の義。台風)ともいう。
タイフーヌ トゥシ [⸢taiɸuː⸣nu ⸣tuʃi]台風の年。台風の当たり年。台風が例年よりも多く襲来する年。
ダイマー [⸢dai⸣maː](植)竹の種類。ダイミョウチク(大名竹)。カンザンチク(寒山竹)。⸢ダイ⸣マーダキ[⸢dai⸣maːdaki](大名竹)、ク⸢モーマダキ[ku⸢moːmadaki](小浜竹)ともいう。
ダイマーダキ [⸢dai⸣maːdaki]ダイミョウチク(大名竹)。ク⸢モーマダキ[ku⸢moːmadaki](小浜竹)ともいう
ダイヤシムヌ [⸢daijaʃi⸣munu]安物。安値もの。値段の安いもの。
ダイ ヤッサン [⸢dai jas⸣saŋ]値が安い。
タイラーイー [⸢tairaː⸣ʔiː]ス⸢ク⸣マ[su̥⸢ku⸣ma](稲の初穂祭り。旧暦5月15日頃に行われる)に新米を炊いて作ったお握りを平らにしたもの。
タイラギルン [⸢tairagi⸣ruŋ]他動平らげる。飲食物を残らず飲食し尽くす。「~韓国をむけ多比良宜て~『万葉集 813』」の義。
タイラグン [⸢taira⸣guŋ]他動平らげる。飲食物を残らず飲食し尽くす。
タイワンクバガサ [⸢taiwaŋkuba⸣gasa]ちくひ(竹皮)で作った笠。台湾製の笠で、軽くて涼しく農作業に適しているが、八重山地元生産のク⸢バガサ[ku⸢bagasa](蒲葵笠)に比して壊れやすく、漁業者には不向きであるという弱点があった。
タイワンズニ [⸢taiwan⸣ʣuni](地)台湾曽根。海底地名でカツオのや鮪の好漁場といわれている。⸢タイパン⸣ズニ[⸢taipan⸣ʣuni](台湾曽根)と同じ
タイワンバサ [⸢taiwam⸣basa](植)タイワンバショウ(台湾芭蕉)。幹の高さが高いのを、⸢アウバサ[⸢ʔaubasa](青芭蕉)、タ⸢カ⸣バサ[ta⸢ka⸣basa](高芭蕉)といい、幹の低いのを、⸣サンジャクバサ[⸣sanʤakubasa](三尺芭蕉)という。台湾から導入だれた品種改良種と言われていた。⸣サンジャクバサンナル[⸣sanʤakubasannaru](三尺バナナ)はバナナの房が長く、実も太く、美味で、幹が低いだけに台風被害が少なかった。
タイワンボー [⸢taiwam⸣boː]タイワンハゲ(台湾禿)。「円形脱毛症(alopecia areata) 円形にはげる病気」『医学沖縄語辞典』。⸢タイワンボー⸣ジ[⸢taiwamboː⸣ʤi](台湾禿は頭の毛が所々禿げる病気で、日清戦争後、台湾から帰った兵隊が流行させたという)『石垣方言辞典』の転訛したもの。
タイワンボージ [⸢taiwamboː⸣ʤi]台湾坊主。東シナ海低気圧。旧暦二月ごろ急に発生して吹きまくる強風。標準語から転訛したもの。
タウ [⸢tau]窪地。低地。平地。平坦地。
タウジー [⸢tauʤiː]窪地。低地。平坦地。
タウマスン [⸢taumasuŋ]他動くぼ(窪)ます。へこます。⸢タウムン[⸢taumuŋ](くぼむ。へこむ)の未然形に、使役の助動詞⸢スン[⸢suŋ](~す。~せる。~させる)が下接して形成された使役動詞。
タウミ [⸢taumi]くぼみ(窪み)。
タウミルン [⸢taumiruŋ]他動窪める。窪ませる。
タウムン [⸢taumuŋ]自動窪む。へこむ。曲がる。「~思ひ多和美手<タワミテ>~。万、935」の転訛したものか。
タカ [tḁ⸢ka]収穫量。生産量。漁獲数。金額。
タカ [tḁ⸢ka](動)鳥の名。たか(鷹)。鳩間島にはあまり見られなかった。
タカー シムラリ ブー [tḁ⸢kaː⸣ ʃi⸢murari buː]程度や収量が推定されている。収量の程度が見積もられている。転じて「人物のレベルが知れている」の意にも用いられる。
タカータカーシ [tḁ⸢kaːtakaː⸣ʃi]非常に高く。高々と。形容詞タ⸢カー⸣ン[tḁ⸢kaː⸣ŋ](高い)の語幹重複形で、副詞的用法。
タカータカーヌ ヤマ [tḁ⸢kaːtakaːnu⸣ jama]高い山。高山。形容詞タ⸢カー⸣ン[tḁ⸢kaː⸣ŋ](高い)の語幹を重ねた畳語に同格の助詞ヌ[nu]が付いた形で非常に高いさまを表す。
タカーニ [tḁ⸢kaːni]たくさん。一杯。主として明治生まれの老年層の人が使用した。強調すると、タカー⸢ニン[tḁkaː⸢niŋ](たくさん)ともいう。
ダカールン [da⸢kaːruŋ]自動物と物が溶け合う。くっ付きあう。粘りつく。絡む。絡みつく。絡み合う。
ダカールン [da⸢kaːruŋ]自動たかる(集る)。寄り集まる。虫や蝿などがむらがる。
タカーン [ta⸢kaː⸣ŋ]高い。空間的位置、価値、名声、地位、音声、数値などの高いこと。
タカアシツァ [tḁ⸢kaʔaʃi̥⸣ʦa]高下駄。「高足駄」の義。さし下駄。新しく石垣島から導入された若者の下駄。タ⸢カ⸣ゲタ[ta⸢ka⸣geta](高下駄)、サ⸢シ⸣ゲタ[sa⸢ʃi⸣geta](さし下駄)ともいう。
タカアン [⸣tḁkaʔaŋ]⸢高網」の義。高さ約2メートル、長さ約4メートルの網。フ⸢クル⸣アン[ɸu̥⸢kuru⸣ʔaŋ](袋網)に繋ぐ背丈の高い網。⸣タカアンの上部には、幅約2センチ、厚さ約1、5センチ、長さ約20センチの棒状の浮きを付け、網の脚部にはン⸢ボー⸣マ[ʔm⸢boː⸣ma](宝貝)を付けて重石とした。
タカアンガリ [tḁ⸢kaʔaŋ⸣gari]自惚れて身分不相応に上座に座ること。思い上がること。
タガイルン [ta⸢gai⸣ruŋ]他動たがえる(違える)。約束を破る。そむく(背く)。そむいて裏切る。
タカウール [tḁ⸢kaʔuː⸣ru]エダサンゴの群落。鳩間島の北西部の干瀬の⸢フンシキ[⸢ɸuŋʃiki]や南南東部の干瀬のタ⸢カ⸣ビー[tḁ⸢ka⸣biː]、ミ⸢ズヌ⸣カン[mi⸢ʣunu⸣kaŋ](澪の上)にはエダサンゴの群落がある。また、⸢イー⸣シビー[⸢ʔiː⸣ʃibiː](ツノマタを養殖した干瀬)にもエダサンゴの群落がある。
タカカーシ [tḁ⸢kakaː⸣ʃi]高く売ること。高値売り。「高売り」の義。ヤ⸢シカー⸣シ[ja⸢ʃikaː⸣ʃi](安売り)の対義語。
タカカイ [tḁ⸢ka⸣kai]高買い。品物を定価より高く買うこと。
タカサピクサ [tḁ⸢ka⸣sapi̥kusa]高さ低さ。高低。/イヤイヤー シマヌ アリサマ ウフチバナリヌ アヌタ カヌタヌ タカサピクサヤ トゥナミ ナランサ~/(いやいや(囃子)島の有様は、大地<西表島>から離れ小島、こちら側あちら側<此方・彼方>均すことはできないよ~)⸢鳩間口説節」
タカジン [tḁ⸢ka⸣ʤiŋ]脚付きの膳。「高膳」の義。会席膳に高さ約30センチの脚の付いた膳。正月や祝儀の際に特別の招待客に用いられた。
タカスク [tḁ⸢ka⸣suku](地)ティ⸢ドゥ⸣クヤマ[ti⸢du⸣kujama](古見岳の西側の連山で、⸢インダ{SqBr}⸢ʔinda{/SqBr}<伊武田>、⸢クーラ{SqBr}⸢kuːra{/SqBr}<久浦>あたりまで裾野を張り出している山)からインダ崎へ流れ出した台地の根幹の部分にある原野の窪地を水田に開いたところ。田が深く、牛を入れることができなかったという。所によっては水田に丸太を沈めて、それを踏んで稲を植え付け、刈り取りをしたといわれている。⸣ウブシケー[⸣ʔubuʃi̥keː](大城家)、⸢メー⸣ケー[⸢meː⸣keː](大城家<宮古屋>)の水田があった。
タカソンカー [⸣tḁkasoŋkaː]のっぽ。
タカダイ [ta⸢kadai]高価。高い値段。ヤ⸢シ⸣ダイ[ja⸢ʃi⸣dai](安値。安い値段)の対義語。
タカダイ [tḁ⸢ka⸣dai]高台。地面が高くて平たいところ。
タカダイ [tḁ⸢ka⸣dai]たかつき(高杯)。盃を載せる脚の付いた台。「高台」の義。約13センチ四方の盆に約10センチの脚が付いたもの。正月や祝儀の際に神前に供えて神酒を頂くのに用いる。
タカッツァ [tḁ⸢kat⸣ʦa]高所。高地。高台。崖の高いところ。崖っぷち。
タカッツァミチ [tḁ⸢kat⸣ʦamiʧi]坂道。⸢高所道」の義。
タカディ [ta⸢ka⸣di]高い所。
タカディ タウ [ta⸢ka⸣di ⸢tau]高い所と低い所。
タカディマ [tḁ⸢ka⸣dima]高い賃金。高給。⸢高い手間賃」の義。
タカディマ トゥリプス [tḁ⸢ka⸣dima tu⸢ri⸣pu̥su]高給を取る人。「高手間取る人」の義。
タカトー [tḁ⸢ka⸣toː]でこぼこ(凸凹)。起伏があって平らかでないさま。高低があり、不揃いであるさま。
タカドーリ [tḁ⸢kadoːri]倒れた樹木が他の樹木にもたれかかっていること。
タカナ [tḁ⸢ka⸣na](地)高那。西表島東北岸に位置する。サ⸢キンダ[sḁ⸢kinda](崎田)の崎を東に回ったところある。琉球王国時代から現代に至る地名。高那村は、1732年に立村、明治42年3戸6人が小浜島へ移転し、廃村となった。昭和2年銅山36万坪が、同45年には温泉、ヒスイが発見された。世帯・人口は昭和52年3月3日。『角川日本地名大辞典』。タ⸢カ⸣ナには⸣ウブシケー[⸣ʔubuʃi̥keː](大城家)の田圃があったが太平洋戦争後、耕作しなくなったという。舞踊のタ⸢カ⸣ナブシ[tḁ⸢ka⸣nabuʃi](高那節<ザンザブロウ節>)は、その歌詞と曲の特異さでも有名である
タカナキ [tḁ⸢kanaki]⸢高泣き」の義。声高に泣くこと。大声で泣く。
タカナブシ [tḁ⸢ka⸣nabuʃi]高那節。ザンザブロー節ともいう。躍動感に溢れた曲調で魅力的な古典民謡であるが、意味不明な歌詞でも有名である。
タガニ [ta⸢ga⸣ni]たがね(鏨)。「鏨、金工・石工用の鑿」『和名抄』。「Tagane、タガネ(鏨・鑽) 銀を切るのに使う鑿」『邦訳日葡辞書』の転訛。
タカニチ [tḁ⸢ka⸣niʧi]高熱。
タカヌズミ [tḁ⸢kanuʣumi]高望み。自分の能力や身分を越えたことを望むこと。
タカバーニーバル [tḁ⸢kabaː⸣niːbaru](動)魚の名。和名、ツチホゼリ(体長約90センチ)。鳩間島では、あまり漁獲されなかった。
タカパイ [tḁ⸢ka⸣pai]⸢高這い」の義。乳幼児が尻を高くして這うこと。
タカバサ [tḁ⸢ka⸣basa](植)高芭蕉。⸢アウバサ[⸢ʔaubasa](台湾芭蕉で幹の背丈の高いもの)ともいう。
タカパシル [tḁ⸢kapaʃi⸣ru]高窓。壁の上半分を窓にし、下半分を壁にしたもの。棒で戸を押し上げて開ける方式の窓、繰り戸方式の窓などがあった。タ⸢カ⸣マドゥ[tḁ⸢ka⸣madu](高窓)ともいう。鰹節製造工場が建てられるようになって導入された建築様式。
タカバタ [tḁ⸢ka⸣bata]たかはた(高機)。⸢ジーバ⸣タ[⸢ʤiːba⸣ta](地機)の対義語。織機の一つ。改良型の織機で、脚の高い織機。じばた(地機)よりも高く、踏み木を踏んでそうこう(綜糸光)を上下させて織る織機。「大和長機を改造して短く高く作った便利な新しい機で、八重山では明治二十一年、大浜当善が使用しはじめた」『石垣方言辞典』。
タカバタ [tḁ⸢kaba⸣ta]織機(高機)。ジ⸢バ⸣タ[ʤi⸢ba⸣ta](地機)の対義語。
タカパナ [tḁ⸢ka⸣pana]高い鼻。「高鼻」の義。ピ⸢タパナ[pi̥⸢tapana](平べったい鼻。平鼻)の対義語。
タカバライ [tḁ⸢ka⸣barai]高笑い。大声で笑うこと。哄笑。
タカバラビ [tḁ⸢kabara⸣bi](植)ヘゴ。茎は太く直立して4~5メートルに成長する大型のシダ植物。葉は笠状に幹の先端に付く。西表島の湿地帯に多く自生している。
タカビ [tḁ⸢ka⸣bi]たかべ(崇べ)。のりと(祝詞)。「たかべごと(崇べ言)、神を崇めたてまつり、願意を申し上げる言葉。ノダテゴトともいう。たたえる神の名、祈願をしている神女自身の名を唱え、それから願意をこめた言葉をとなえる」『沖縄古語大辞典』。ヤ⸢マタカビ⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[ja⸢matakabi⸣nu ⸢niŋ⸣gai]<山崇べの祈願>の義。⸢ニンガチニン⸣ガイ[⸢niŋgaʧiniŋ⸣gai]<二月願い。二月祈願>で、⸣アカカラジヌ ⸣ニガイ[⸣ʔakakaraʤinu ⸣nigai]<一般百姓の健康祈願>が執り行われる際の祝詞。雨願い、害虫祓えの祈願のほかに山に出入りする際に毒蛇による危害が人畜に及ばぬよう祈願する祝詞などがある
タカビー [tḁ⸢ka⸣biː]「高干瀬」の義。鳩間島を取り巻くリーフ(Coral reef)が⸢ナーバレー[⸢naːbareː]から南に延びて発達した干瀬。そこには⸢シンイシ[⸢ʃiŋʔiʃi](積み石)があって、他の干瀬よりも高くなっている。普通の珊瑚礁石とは異なり、海底火山が噴火したときに噴出した石だという。鳩間島の屋敷の石垣は、そこから石を運んで積み上げたものという(加治工伊佐氏談)。⸢アールマイズニ[⸢ʔaːrumaiʣuni](東前曽根)との間に約50メートルの天然の津口が形成されている。そこを、タ⸢カビ⸣ヌ フ⸢チ[tḁ⸢kabi⸣nu ɸu̥⸢ʧi](高干瀬の津口)という。
タカビーヌ インタヌ スニ [tḁ⸢kabiː⸣nu ⸢ʔintanu⸣ suni]高干瀬の西側の曽根。高干瀬との間に約50メートルの津口が形成されている。海路標識が立てられており、石垣島から鳩間島に入港する定期航海船や船浦、久浦、泊田、慶田、ヨシキラ、崎田あたりの田地耕作のために往来するイダフニ(サバニ)もこの津口から出入りする
タカビーヌ インタヌ スニ [tḁ⸢kabiː⸣nu ⸢ʔintanu⸣ suni]タ⸢カ⸣ビー[ta⸢ka⸣biː](高干瀬)の西側の曽根の義。終戦後までは松の木の海路標識が立っていた。篤志家の寄合三戸氏が建てたものという(加治工伊佐直話)。石垣島から鳩間島へ出入港する船はこの標識を目印にして操船した。
タカビーヌ ウブイシ [tḁ⸢kabiː⸣nu ʔu⸢bu⸣ʔiʃi]⸢高干瀬の大石」の義。高干瀬にある大きな石。
タカビヌ ウブイシ [tḁ⸢kabi⸣nu ʔu⸢bu⸣ʔiʃi]高干瀬にある大石。大石のある所
タカビヌ フチ [tḁ⸢kabi⸣nu ɸu̥ʧi]高干瀬の津口。タ⸢カ⸣ビー[tḁ⸢ka⸣biː](高干瀬)の西側、⸢アーラマイズニ[⸢ʔːramaiʣuni](東前曽根)との間にある約50メートルの津口。島の代表的な津口。石垣・鳩間・西表祖納・白浜の定期航海船が出入りするである。「冨川親方八重山島諸村公事帳」(同治14)によると「鳩間津口に諸船が潮懸の時、役人か筆者は早速小舟を出して用を足す。とりわけ天候が悪い時は助船の活動が重要である」『石垣市史叢書3』とあるから、現在の鳩間港には八反帆、六反帆の地船(公用船)は接岸出来なかったことになる。島から刳り舟や剥ぎ舟の小舟で高干瀬の津口まで漕ぎ出して用を足した
タカビンフチ [tḁ⸢kabiŋ⸣ɸu̥ʧi]高干瀬の津口。タ⸢カビ⸣ヌ フ⸢チ[tḁ⸢kabi⸣nu ɸu̥⸢ʧi](高干瀬の津口)ともいう。タ⸢カ⸣ビ[tḁ⸢ka⸣bi](高干瀬)と⸢アーラマイズニ[⸢ʔaːramaiʣuni](東前曽根)との間にある津口。鳩間島の桟橋から南南東約2キロの海にある津口で島の二大津口の一つ。石垣、鳩間、西表租納、白浜の定期航海船の出入りした津口である。西表島北岸の、⸢クーラ[⸢kuːra](久浦)、トゥ⸢マダー[tu⸢madaː](トゥマダ。苫田)、⸢ケー⸣ダ[⸢keː⸣da](慶田)、⸢ユシ⸣キダー[⸢juʃi̥⸣kidaː](ヨシキ田)、サ⸢キンダー[sa⸢kindaː](崎田)あたりへ水田耕作のために漕ぎ出す⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](板船。サバニ)もこの津口から出入りした。
タカプス [tḁ⸢ka⸣pu̥su]{1}背の高い人。のっぽ。
タカプス [tḁ⸢ka⸣pu̥su]{2}大人。成人。
タカフダ [ta⸢ka⸣ɸuda]こうさつ(高札)。役場からの通知や住民に広く知らせるべき衛生上の厳守事項などを小型の掲示板に貼って約1,5メートルの杭に打ちつけて路傍に立てたもの。
タカフタイ [tḁ⸢ka⸣ɸu̥tai]おでこ。額が高く突き出た人。⸢ガッ⸣パイ[⸢gap⸣pai](額が高く突き出た人)ともいう。
タカブルン [t⸢kḁ⸣buruŋ]自動威張る。自慢する。奢り高ぶる。高慢な態度をとる。⸢高ぶる」の義。標準語からの借用語。
タカマッふァ [tḁ⸢kamaf⸣fa]高枕。高く作った木製の枕。
タカマドゥ [tḁ⸢ka⸣madu]高窓。壁の半分を繰り戸の窓にしたもの。⸢ハン⸣マドゥ[⸢ham⸣madu](半窓)、タ⸢カパシ⸣ル[tḁ⸢kapaʃi⸣ru](高窓)ともいう。
タカマルン [tḁ⸢ka⸣maruŋ]自動高まる。物事の程度や度合いが高くなる。
タカミルン [tḁ⸢kami⸣ruŋ]他動高める。高くする。
タカムヌ [tḁ⸢ka⸣munu]高い物。高価な品。値段の高い物。
タカムン [tḁ⸢ka⸣muŋ]他動高める。
タカヤー [tḁ⸢ka⸣jaː]二階建ての家。「高屋」の義。老年層のことば。若年層は、⸣ニカイヤー[⸣nikaijaː](二階家)という。
タカヤマ [tḁ⸢ka⸣jama]沖縄相撲の技の一手。自分の腰に相手の体を乗せ、高く持ち上げて投げ飛ばす技。
タカラ [tḁ⸢ka⸣ra]宝。宝物。
タカラムヌ [tḁ⸢kara⸣munu]宝物。
タキ [⸣tḁki]{1}丈。身長。
タキ [⸣tḁki]{2}程度。身の程。地位。能力。身分。
タキ [tḁ⸢ki]竹。「~吾が苑の多氣乃<タケノ>林に~。万、824」の転訛したもの。鳩間島には竹はほとんど植栽されていないが西表島の水田の周辺や山野から伐ってきて利用した。
ダキ [⸣daki]接尾高山。山岳。⸣タキ[⸣taki](嶽。岳)が前接語と複合語を形成する際に連濁を起こしたもの。独立しては用いられず、特定の地名の下に付いて用いられる。
ダキ [⸣daki]副助~だけ。~のみ。限定、限度、限界、を表す。
ダキ [⸣daki]副助{Exp_1}係助詞⸣-ヤ[⸣-ja](~は)が付く。(i) 限定。
ダキ [⸣daki]副助{Exp_2}さらに格助詞⸣-シ[⸣-ʃi](~で)が付く。
ダキ [⸣daki]副助{Exp_3}さらに係助詞⸣-ル[⸣-ru](~ぞ)がつく。
ダキ [⸣daki]副助{Exp_4}さらに係助詞⸣-ツァン[⸣-ʦaŋ](~すら。~さえ。だに)がついて最低限の限度を表す。
ダキ [⸣daki]副助{Exp_5}さらに格助詞⸣-ヌ[⸣-nu](~の)が付く。
ダキ [⸣daki]副助{Exp_6}さらに格助詞⸣-シ[⸣-ʃi](~で)が付く。
タキアイク [tḁ⸢kiʔaiku]竹製のおうこ(朸)。竹製の天秤棒。直径約5センチ、長さ約4メートルの古いカツオ釣竿を利用して作った。この竹竿は九州より輸入されていた。
ダキウコースン [da⸢kiukoː⸣suŋ]他動抱き起こす。
タキウビ [t⸢kiubi]竹の輪。桶のたが(箍)。
タキカウ [tḁ⸢kikau]「竹香」の義。竹ひごで作った線香。イ⸢ツァ⸣カウ[ʔi⸢ʦa⸣kau](板香)と共にウ⸢キナー⸣カウ[ʔu⸢kinaː⸣kau](沖縄線香)といわれている。このタ⸢キカウ[tḁ⸢kikau](竹香)は⸢コー⸣ロ[⸢koː⸣ro](香炉)に立てやすい特性はあるが、竹の芯が燃え残るので、法事が済むと燃え残りの部分を取り出さなければならず、不便である。現在はヤ⸢マトゥ⸣カウ[ja⸢matu⸣kau](大和線香)を利用することが多い。
ダキカカイルン [da⸢kikakairuŋ]他動抱きかかえる。
ダキカカウン [da⸢kikakauŋ]他動抱きかかえる。
タキグサン [tḁ⸢kigusaŋ]竹で作った杖。竹杖。「みごしやん」『混効験集(乾・器材)』。「ゴシャンは杖にする材料である『ほていちく<布袋竹>』の別名、『こさんちく<鼓山竹>』からきたものである」『図説琉球語辞典』。
タキグシ [tḁ⸢kiguʃi]竹串。
タキクラビ [tḁ⸢kikura⸣bi]せいくらべ(背比べ)。せたけ(背丈)を比べること。
タキサウ [tḁ⸢kisau]竹竿。
タキシダル [tḁ⸢kiʃidaru]細い竹を藁縄で編みこんで作った簾。鳩間島ではイ⸢ガヤマ[ʔi⸢gajama](烏賊干し用の張り縄)で一日干した烏賊を庭先で、シ⸢ダ⸣ル[ʃi⸢da⸣ru](簾)に並べて片面を午前中日干して乾燥し、午後に裏返して更に日干し乾燥した。これを2~3日繰り返してスルメを製造した。
タキシブク [tḁ⸢kiʃibuku]竹製の釣り竿。2~3メートルのシ⸢ブクダキ[ʃi⸢bukudaki](布袋竹。竹の種類。釣り竿を作る竹)で作った釣り竿。
ダキシミルン [da⸢kiʃimiruŋ]他動抱きしめる。締め付けるように強く抱く。
ダキシムン [da⸢kiʃimuŋ]他動抱き締める。「抱きしむ(下二段)」の四段活用に転訛したもの。
タキダカー [⸣tḁkidakaː]身長の高い人。長身の人。⸢丈高」の義。
タキティブク [tḁ⸢kitibuku]⸢竹手矛」の義。ティ⸢ブ⸣ク[ti⸢bu⸣ku](手矛)は茅葺の屋根を葺く際に茅を押さえるのに用いる直径約3、5センチ、長さ約4メートル程度の若木や竹をいう。そのティ⸢ブ⸣クに竹を利用したもの。
タキドゥン [tḁ⸢ki⸣duŋ]竹富島。石垣島の南西約6kmの海上に浮かぶ島。周囲9,15km。標高20,15mの隆起珊瑚礁からなる島。
タキドゥンプス [tḁ⸢ki⸣dumpu̥su]竹富の人。「竹富人」の義。
タキドゥンムニ [tḁ⸢ki⸣dummuni]竹富方言。竹富ことば。「竹富物言い」の転訛したもの。
タキナムヌ [tḁ⸢ki⸣namunu]これっぽっちの人間。この程度の人間。つまらぬ者。ウ⸢ヌタキ⸣ヌ ⸣ムヌ[ʔu⸢nutaki⸣nu ⸣munu](この程度の者<人間>)ともいう。
タキヌカー [tḁ⸢kinu⸣kaː]ちくひ(竹皮)。竹の幹を約1センチに割き、内皮を除去した外皮。タ⸢キバーキ[tḁ⸢kibaːki](竹製の笊)の素材として用いる。
タキヌカー・クバガサ [tḁ⸢kinu⸣kaː-kubagasa]竹の子の皮で作った笠。軽くて、農作業の際に被って日除け用に利用した。主に台湾辺りから輸入されたが、島産のク⸢バガサ[ku⸢bagasa](蒲葵の葉で作った笠)よりも破れやすく、漁業者には利用されなかった。
タキヌッふァ [tḁ⸢kinu⸣ffa](植)タケノコ(筍)。「竹の子」の義。鳩間島では、一般的にあまり食されなかった。西表島の山から採ってきて祝儀や法事の料理に利用する家もあった。
タキヌ ブシ [tḁ⸢kinu⸣ buʃi]竹の節。
タキバーキ [tḁ⸢kibaːki]竹皮製の笊。基底部を四角に編み、次第に丸く編み上げて作った竹皮製の大きな笊。堅く仕上がるので持ち運びに便利であり、主にイカ釣り漁用のイ⸢ガバーキ[ʔi⸢gabaːki](イカ漁用の笊)として、また⸢イー⸣シトゥリ[⸢ʔiː⸣ʃituri](角又採集)用の竹笊として利用された。小型のタ⸢キバーキ[tḁ⸢kibaːki]は芋を入れる容器として利用されることもあった。
タキパシ [tḁ⸢kipaʃi]竹箸。竹製の箸。
タキブーチ [tḁ⸢kibuːʧi]竹のむち(鞭)。
タキフダ [tḁ⸢kiɸuda]竹製の札。
タキフダル [tḁ⸢kiɸudaru]竹で作った柄杓。直径約10センチ、高さ約15センチの竹の筒に柄を付けて水瓶から水を汲み取るのに用いる道具(柄杓)。「秀罇<ホダリ>取り、堅く取らせ」『古事記歌謡』の転訛したもの。戦後は缶詰缶を利用したカ⸢ニフダル[ka⸢niɸudaru](缶柄杓)が多くなった。
タキフディ [tḁ⸢kiɸudi]すみさし(墨刺)。竹筆。竹を割って箆のように作り、先端を細かく裂いて線描用に用い、片方は鉛筆大に尖らせ、先端部を細かく裂いて筆記用に用いるように作った筆。建築大工や船大工が⸢シン⸣スブ[⸢ʃin⸣subu](墨壷)からシ⸢ミ⸣ナー[ʃi⸢mi⸣naː](墨縄)を引き出し、墨縄を弾いて直線を引く際に用いる。
タキフドゥ [tḁ⸢ki⸣ɸudu]{1}体格。身長。
タキフドゥ [tḁ⸢ki⸣ɸudu]{2}成人。一人前。
タキフン [tḁ⸢kiɸuŋ]竹釘。カ⸢ツホーシ⸣サウ[kḁ⸢ʦuhoːʃi⸣sau](カツオ釣竿)を利用し、長さ約10センチ、直径約6ミリの竹釘に作ったもの。箸の大きさに削って先端を尖らせて作った竹の釘。一旦錐で開けた穴に竹釘を打ち込んで用いる。⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](板舟。サバニ)に用いる竹製の釘。サバニに金属製の釘を使うと錆びて船体が腐食するので、サバニには竹釘だけ使用する。接合する部分に直径約5ミリの錐で10センチ間隔に穴を開け、そこに竹釘を打ち込む。それらの間に⸢フン⸣ドゥ[⸢ɸun⸣du](ちきりじめ<榺締め>、両端が広く、中がくびれた木製の一種のカスガイ<鎹>)を填め込む。また塗り物(漆器)や木製の小道具などを接合する際にも小型の錐で穴を開けて竹釘を打ちこんで接合する。
タキフンツァ [tḁ⸢kiɸunʦa]竹床。竹で編んだ床。
タキポーキ [tḁ⸢kipoːki]竹箒。
タキマミ [tḁ⸢kimami]心臓。
タキヤシキ [tḁ⸢kijaʃi̥ki]竹の生えている屋敷。
タキヤマ [tḁ⸢kijama]竹林。竹藪。
タキヤリ [tḁ⸢kijari]竹槍。標準語からの借用語。太平洋戦争時にタ⸢キヤリで訓練された時に定着した言葉。方言では⸣フク[⸣ɸu̥ku](槍。「矛」の義)という。⸣フク[⸣ɸu̥ku]は、猪狩りで猪を突き刺したり、烏賊釣り漁の際に鮪や鮫を突き刺すのに用いた。茅葺屋根を葺く際に用いる竹槍は、⸢ヤーシキ⸣パル[⸢jaːʃi̥ki⸣paru](家突き針)という
タキユチル [tḁ⸢kijuʧiru]えつり(桟)。茅葺屋根のふきしたじ(葺下地)として垂木の上に竹を横に並べて編みこんだえつり。
タキヨージ [tḁ⸢kijoːʤi]竹製の楊枝。⸢竹楊枝」の義。標準語からの借用語。
タキヨーチ [ta⸢kijoːʧi]竹簪。竹製の{簪}{カンザシ}。忌中の婦人が用いた簪。「竹楊枝」の義。
タキリグイ [tḁ⸢kiri⸣gui]{唸}{ウナリ}り声。うめき声。
タキルン [tḁ⸢ki⸣ruŋ]自動{1}{吠}{ホエ}える。牛が{哮}{タケ}る。「噋哮、タケル、サケフ、ホユ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
タキルン [tḁ⸢ki⸣ruŋ]自動{2}唸る。
タキンーマ [tḁ⸢kiʔmː⸣ma]竹馬。二本の竹竿に、適当な高さに足がかりを作って、それに乗って遊ぶ遊具。⸢キーン⸣マ[⸢kiːʔm⸣ma](木馬。木の竿に足がかりを作り、それに乗って遊ぶ遊具)ともいう。
タク [⸣tḁku](動)タコ(蛸)の総称。マダコ。
タクアン [taa⸢ku⸣ʔaŋ]たくあんづけ(沢庵漬)。大根を樽に入れて塩をまぶし、米糠をたっぷり加えて重石を乗せ、漬け込んだもの。昭和35年ごろまで自家製の沢庵漬を作っていた。
タクトゥリ [tḁ⸢ku⸣turi]蛸捕り。鳩間島では干潮時に多くの女性が⸣ガルユクン[⸣garujukuŋ](先端部に鉤が付いた銛)を持って潮干狩りに行き、蛸を捕った。蛸の棲む穴を捜し、銛を差し込んで探ると蛸は手を伸ばしてくるので、頭部に銛を突き刺して引き出す。銛の先端部には鉤が付いているので蛸は銛から逃げられない。
タク ナルン [⸣tḁku ⸣naruŋ]泥酔してぐにゃぐにゃになる。「蛸になる」の義。
タクヌ アナ [t⸢ku⸣nu ⸣ʔana]蛸の穴。蛸の巣。タ⸢ク⸣ヌ ⸣ヤナ[ta⸢ku⸣nu ⸣jana](蛸の穴)ともいう。
タクヌ イルンガーリ [tḁ⸢ku⸣nu ʔi⸢ruŋgaː⸣ri]蛸の色変わり。変わり方の激しいさまをいう。
タクヌ スブル [tḁ⸢ku⸣nu su⸢bu⸣ru]{1}蛸の頭。
タクヌ スブル [tḁ⸢ku⸣nu su⸢bu⸣ru]{2}つるつる頭。転じて⸢禿頭」の義。
タクヌ ティー [tḁ⸢ku⸣nutiː]蛸の足。「蛸の手」の義。
タクヌ フル [tḁ⸢ku⸣nu ɸu⸢ru]蛸の墨袋。「蛸の睾丸」の義。蛸の頭に納まっている鶏卵大の墨袋。美味しくはないが、利尿剤といわれていた。
タクヌ ヤー [tḁ⸢ku⸣nu ⸣jaː]{1}蛸の巣。タ⸢クン⸣ヤー[tḁ⸢kuɲ⸣jaː](蛸の巣<家>)ともいう。
タクヌ ヤー [tḁ⸢ku⸣nu ⸣jaː]{2}最小限度の家財道具しかなく、家の中が片付けられているさま。蛸の巣に似ていることから比喩的に用いられる。
タクマ [tḁ⸢ku⸣ma]知恵者。奸計を企む者。悪知恵の働く者。
タクムン [tḁ⸢ku⸣muŋ]他動企む。悪事を計画する。
タクムン [tḁ⸢ku⸣muŋ]他動{1}たたむ(畳む)。折り重ねる。
タクムン [tḁ⸢ku⸣muŋ]他動{2}殺す。
タクライ [tḁ⸢kurai]血統。若年層は⸢タックイ[⸢takkui](血統)ともいう。首里方言の[⸢takkwiː](血統)からの転訛。「較、タクラブ」『黒本本節用集』の転訛したものか。[takurabi] → [takurawi] → [takurai] → [takkwiː] → [takkui] と音韻変化したものであろう。
タグラザン [ta⸢gu⸣raʣaŋ]漁船を陸揚げする際に引き綱のロープを巻き上げる装置(ウインチ)。巻揚げ機(老年層の言葉)。⸣ビービー[⸣biːbiː](巻き上げ機)ともいう。
タクラムン [tḁ⸢kura⸣muŋ]他動企む。悪事を企む。
タクン [tḁ⸢kuŋ]他動{1}炊く。⸢カイ[⸢kai](粥)、⸢ヌー⸣ル[⸢nuː⸣ru](糊)などを炊く意味に用いる。⸣イー[⸣ʔiː](ご飯)、⸣スー[⸣suː](お汁)、⸢ズー⸣シ[⸢ʣuː⸣ʃi](雑炊)などを炊く際は、バ⸢カスン[ba⸢kasuŋ](炊く。<沸かす>の義か)を用いる。
タクン [tḁ⸢kuŋ]他動{2}煎って搾油する。
ダクン [da⸢kuŋ]他動抱く。
-ダケー [⸣-dakeː]接尾⸢~する能力」の意を表す。常に文末の打消しの助動詞⸢ナー⸣ヌ[⸢naː⸣nu](~ない)と呼応して用いられる。動作動詞、状態動詞の連用形に下接して条件可能を表し、文末の打消しの陳述によって条件可能を婉曲に打ち消す。
タケー ッシ [⸣tḁkeː ʃ⸢ʃi]身の程をわきまえて。⸢身の丈を知って」の転訛したもの。自分の能力の程度をわきまえて。
タケーラ [tḁ⸢keːra]豚の脂肉を炒って油分を除去した残滓。豚の油粕。
タゴームン [ta⸢goː⸣muŋ]自動叱責されてひねくれる(捻くれる)。ひがむ(僻む)。心がねじける。くじける(挫ける)。
タコーラ [tḁ⸢koː⸣ra](動)蛇の一種。サキシマスジオ。宮古群島、八重山群島に棲息する大型の無毒蛇。西表島の伊武田地区、トゥ⸢マダ[tu⸢mada](トマダ地区)には戦時中に体長約2メートルのタ⸢コー⸣ラが棲息していた。
タシ [tḁ⸢ʃi]補い。不足を足すこと。加えること。たしまえ。
ダシ [⸣daʃi]{1}だし(出汁)。
ダシ [⸣daʃi]{2}{小節}{コ|ブシ}。民謡、歌謡の装飾的節回し。情緒纏綿とした節回し。
タシゥカリン [⸢tasi̥ka⸣riŋ]自動助けられる。救助できる。助かる。
タシゥカルン [⸢tasi̥ka⸣ruŋ]自動助かる。死やわざわい(禍)、罪などからまぬか<免>れる。救われる。若年層は、⸢タシカ⸣ルン[⸢taʃi̥ka⸣ruŋ](助かる)という。
タシゥカルン [⸢tasi̥karuŋ]自動火が燃え出す。点火される。
タシカ [taʃi̥⸢ka]形動確かである。しっかりして動かない。間違いない。確実である。「糸周密也、・・纏綿也、太志加爾<たしかに>、又、牟豆末也加爾<むつまやかに>」『新撰字鏡』。深く切実であるさま。「切々、敬也憂也、多志加爾<たしかに>」『新撰字鏡』の義。
タシカ [taʃi̥⸢ka]たしか(慥)。断言できないが多分~。「切々、敬也憂也、多志加尓(たしかに)」『新撰字鏡』の転訛したもの。
タシカミルン [⸢taʃi̥kami⸣ruŋ]他動確かめる。真偽を確認する。曖昧な点を明確にする。
タシカムン [⸢taʃi̥ka⸣muŋ]他動確かめる。真偽を確認する。曖昧な点を明確にする。「たしかむ<下二段活用>」の四段活用化したもの。
タシキ [⸢taʃi̥⸣ki]助け。救助。助けること。
タシキルン [⸢taʃi̥ki⸣ruŋ]他動助ける。救助する。
タシキルン [⸢taʃi̥kiruŋ]他動点火する。火を焚きつける。火を起こす。燃やす。
タジナイルン [ta⸢ʤinai⸣ruŋ]他動{1}訪ねる。
タジナウン [ta⸢ʤi⸣nauŋ]他動{1}訪ねる。
タジナウン [ta⸢ʤi⸣nauŋ]他動尋ねる。問う。質問する。
タシマ [tḁ⸢ʃima]他島。他の島。他の村。
タスクン [⸢tasu̥⸣kuŋ]他動助ける。救う。救助する。助力する。「~すめろきの御霊多須氣弖(タスケテ)~。万、4094」の転訛したもの。
タスクン [⸢tasu̥kuŋ]他動点火する。火を焚きつける。火を起こす。燃やす。「焚きつく」の義。「海人をとめ伊射里多久火能<イザリ・タク・ヒノ>~。万、3899」の転訛したもの。
タダ [ta⸢da]名詞。ただ。無料。報酬の無いこと。標準語からの借用語。普通は、イ⸢タン⸣ダ[ʔi⸢tan⸣da](無料。「徒<いたづら>」の転訛)という。
タダーイ [ta⸢daːji]どんどん。どしどし。次から次へ。タダー⸢イ[tadaː⸢ji]は強調表現。
タタカー [ta⸢ta⸣kaː]追い込み漁法の一つ。⸣タカアン[⸣tḁkaʔaŋ](高網)や⸣キタアン[⸣ki̥taʔaŋ](桁網)を4~5⸣キタ[⸣ki̥ta](張り<桁>)繋ぎ合わせて魚の通り道に張っておき、数人の人が竹や竿で海面を叩いたり、珊瑚礁を突っついて魚を追い込み、網に引っ掛けて漁獲する漁法。夜は潮時をみて、2~3人で組んで海岸やピ⸢ザ⸣フチ[pi⸢ʣa⸣ɸu̥ʧi](渚)などで魚を巻いて漁獲した
タタカースン [tḁ⸢takaː⸣suŋ]他動戦わせる。争わせる。喧嘩させる。普通は、⸢スー⸣ブ シ⸢ミルン[⸢suː⸣bu ʃi⸢miruŋ](勝負させる)という。
タタカイ [tḁ⸢ta⸣kai]戦い。戦争。争い。喧嘩。
タタカウン [tḁ⸢ta⸣kauŋ]自動戦う。喧嘩する。争う。闘う。
タタカウン [tḁ⸢ta⸣kauŋ]自動{1}戦う。戦争する。
タタカウン [tḁ⸢ta⸣kauŋ]自動{2}競技などで競う。勝負する。
タタキバルン [tḁ⸢taki⸣baruŋ]他動叩き割る。たたいて割る。打ち破る。
タダグトゥ [ta⸢dagutu]尋常なこと。普通のこと。あたりまえのこと。ただごと。下に打消しの語を伴って用いられることが多い。
タタスン [tḁ⸢ta⸣suŋ]他動立たす。立たせる。⸣タトゥン[⸣tḁtuŋ](立つ)の未然形に使役の助動詞⸣スン[⸣suŋ](~す。~さす)が付いて形成された使役動詞。
タダスン [ta⸢da⸣suŋ]他動正す。糾す。「Tadaxi,su,aita.タダシ,ス,イタ(正・糾し,し,いた)取り調べて,審理する.ある人の血統や家系を取り調べる」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
タタッキスン [tḁ⸢tak⸣kisuŋ]他動ぶった切る。「叩き切る」の義。
タタックバスン [tḁ⸢takkuba⸣suŋ]他動ぶちこぼす({零}{コボ}す)。ぶっ零す。水や粉を意図的に容器より勢いよく零す。「たたき零す」の義。
タタックムン [tḁ⸢tak⸣kumuŋ]他動放り込む。「叩き込む」の義。
タタックラサリン [tḁ⸢takkurasa⸣riŋ]他動ひどく叩かれる。ぶったたかれる。タ⸢タックラ⸣スン[tḁ⸢takkura⸣suŋ](ぶっ叩く)の未然形に、受身、可能の⸣助動詞⸣リン[⸣riŋ](れる)が下接して受身動詞、可能動詞として派生したもの。
タタックラスン [tḁ⸢takkura⸣suŋ]他動ぶん殴る。強く殴る。したたかに殴る。「叩き殺す」の転訛。
タタックン [tḁ⸢tak⸣kuŋ]他動{1}叩く。続けて打つ。
タタックン [tḁ⸢tak⸣kuŋ]他動{2}ぶつ。殴る。
タタッケールン [tḁ⸢takkeː⸣ruŋ]他動ぶっきる(打っ切る)。ぶったぎる(打つ手切る)。たたき切る。荒く切る。山刀や大刀で樹木などを打ち切る。
タタッコースン [tḁ⸢takkoː⸣suŋ]他動ぶち壊す。叩き壊す。打ち壊す。台無しにする。めちゃくちゃ<滅茶苦茶>にする。
タタミ [tḁ⸢tami]畳。藁を糸で刺し固めた床に、⸣ビー[⸣biː](藺)で編んだ表をつけたもの。イ⸢ツァフン⸣ツァ[ʔi⸢ʦaɸun⸣ʦaː](板床)やタ⸢キフンツァ[tḁ⸢kiɸunʦa](竹床)に敷いて用いた。
タタミウムティ [tḁ⸢tamiʔumuti]畳表。
タタミウムティ [tḁ⸢tamiʔumu⸣ti]畳表。
タタミシキパル [tḁ⸢tamiʃi̥kiparu]畳針。「畳突き針」の義。
タタミッスル [tḁ⸢tamissuru]雑巾。「畳拭き」の義。若年層は、⸢ゾー⸣キン[⸢ʣoː⸣kiŋ](雑巾)という。
タタミヌ ピル [tḁ⸢taminu⸣ piru]畳の縁。畳の縁取りとして、絹布や上質の布で飾ったもの。亀甲模様の布や黒色の布などを、巾約3、5センチ、長さ6尺、又は3尺にして畳みの両側を縁取ったもの。
タタミヤー [tḁ⸢tamijaː]畳屋。畳店。
タタムン [tḁ⸢ta⸣muŋ]他動たたむ(畳む)。標準語から転訛したもの。若年層のことば。老年層はタ⸢ク⸣ムン[tḁ⸢ku⸣muŋ](畳む)という。
タタラ [tḁ⸢ta⸣ra]房。バナナなどの実が一つの茎に群がり生じたもの。
タタラーサン [tḁ⸢taraː⸣saŋ]大げさである。派手である。目立たしい。明治生まれの古老までは使用した。大正、昭和初期生まれの人は理解語。
タタリ [ta⸢ta⸣ri]祟り。神罰。神仏や・怨霊などが人間に災禍をもたらすこと。「祟、タタルナリ、神祟」『新撰字鏡』の転訛したもの。
タタリムヌ [tḁ⸢tari⸣munu]人に祟るもの。「祟りもの」の義。神仏や怨霊などによってもたらされる災難。主として成仏できないで浮遊している悪霊が人間に災難をもたらすこと。
タダリルン [ta⸢dariruŋ]自動ただれる(爛れる)。火傷や炎症で皮膚や肉が腐乱する。
タタルン [tḁ⸢ta⸣ruŋ]自動祟る。神仏、怨霊などの禍いが身にかかる。神罰、仏罰が与えられる。「祟、タタルナリ、神禍」『新撰字鏡』の転訛したもの。
タダルン [ta⸢daruŋ]自動ただれる(爛れる)。炎症などのために皮膚や皮下組織が破れくずれる。
タチ [ta⸢ʧi]十二支の第五。辰。
タチ [tḁ⸢ʧi]質。性質。性格。
タチアイ [tḁ⸢ʧi⸣ʔai]立ち合い。後日の証拠のために、その場に責任者が臨席すること。標準語からの借用語。
タチウイ [tḁ⸢ʧi⸣ʔui]立ち泳ぎ。タ⸢ティ⸣ウイ[tḁ⸢ti⸣ui](立ち泳ぎ)ともいう。
タチウジ [tḁ⸢ʧiʔuʤi](動)魚の名。和名、オナガウツボ(体長約1、5メートル)
タチウトゥシ [tḁ⸢ʧiʔutuʃi]三線音楽の曲名。沖縄方言の借用語。「滝落とし」の義か。古典音楽の弦調で弾奏されたり、沖縄芝居の戦いの場面の音響効果音楽として用いられたりした。
タチカーリ イリカーリ [tḁ⸢ʧikaː⸣ri ʔi⸢rikaːri]立ち代り入れ替わり。多くの人が代わる代わる現われるさま。
タチザーク [tḁ⸢ʧiʣaː⸣ku]立ってする仕事。鰹節製造の仕事。水汲み、炊事など。⸣タティ[⸣tḁti](立ち)に、ッ⸢サーク[s⸢saːku](仕事)が下接して形成された複合語。タ⸢チッサー⸣ク[tḁ⸢ʧissaː⸣ku](立ち仕事)ともいう。
タチザク [tḁ⸢ʧiʣa⸣ku]暮らし。生計。生業。
タチシグトゥ [tḁ⸢ʧiʃigu⸣tu]立ち仕事。老年層はタ⸢ティシグ⸣トゥ[tḁ⸢tiʃigu⸣tu](立ち仕事)という。ビ⸢リシグトゥ[bi⸢riʃigutu](座業。「座り仕事」の義)の対義語。
タチタル ビリッタル [tḁ⸢ʧi⸣taru bi⸢rittaru]立ったり座ったり。
タチッカーリ イリッカーリ [tḁ⸢ʧikkaː⸣ri ʔi⸢rikkaːri]立ち代り入れ替わり。多くの人が代わる代わる現れる。
タチッサーク [tḁ⸢ʧissaː⸣ku]立ち仕事。タ⸢チザー⸣ク[tḁ⸢ʧiʣaː⸣ku](立ち仕事)ともいう。
タチディ [tḁ⸢ʧidi]辰年。
タチディマリ [tḁ⸢ʧidimari]辰年生まれ。辰年生まれの人。
タチドゥシ [tḁ⸢ʧiduʃi]辰年。
タチニー [tḁ⸢ʧiniː]十二支の辰の日。
タチヌ パー [tḁ⸢ʧinu paː]十二支の辰の方角。東南東。
タチノールン [tḁ⸢ʧinoː⸣ruŋ]自動立ち直る。
タチバ [tḁ⸢ʧi⸣ba]立場。置かれている状況。観点。
タチパナシ [tḁ⸢ʧipana⸣ʃi]立ち話。
タチバル [tḁ⸢ʧi⸣baru](地)⸢立原」の義。大前農道を北西に延びた一帯。この農道がヤ⸢ラ[ja⸢ra](屋良)へ至る分岐点から北西の海岸に至る畑地をタ⸢チ⸣バル[tḁ⸢ʧi⸣baru](立原)といい、その道が海岸に通じた所の小さな浜をタ⸢チ⸣バルパマ[tḁ⸢ʧi⸣barupama](立原浜)という。西村の人々が潮干狩りに最も多く利用した道である。
タチバルパマ [tḁ⸢ʧi⸣barupama](地)立原浜。
タチマーリ トゥンマーリ [tḁ⸢ʧimaː⸣ri ⸢tummaːri]しばしば立ち寄るさま。「立ち回り飛び回り」の義。
タチムドゥル [⸣taʧimuduru]出戻り。いったん嫁いだ人が離縁されて実家に戻ってくること。
タチワザ [tḁ⸢ʧi⸣waʣa]立ち仕事。「立ち業」の義。
タチングリサン [tḁ⸢ʧiŋguri⸣saŋ]暮らしにくい。生活するのが難しい。所帯を維持しにくい。
ダッカテイ [dak⸢kati]びっしょりと。
ダッカティ [dak⸢ka⸣ti]{1}どっかりと。どかっと座るさま。
ダッカティ [dak⸢ka⸣ti]{2}べったりとくっ付くさま。
ダッカティ [dak⸢kati]びっしょり。ぐっしょり。ひどく濡れるさま。
タツカワ [tḁ⸢ʦu⸣kawa]滝。歌謡語。ピ⸢ナイサーラ[pi⸢naisaːra](ピナイ<鬚川>滝)の対語。/マエニ ミユルワ ピナイサラ ウミニ ナガユル タツカワワ ユユム カワラン ウムシルヤ/(前に見えるのはピナイ滝、海に流れる立つ川は、世世<代代>に変わらず見事である)「鳩間口説」
タックイ [⸢takkui]血統。血筋。古老は、タ⸢クライ[tḁ⸢kurai](血統)という。
ダックヮースン [⸢dakkwaː⸣suŋ]他動くっつける。ひっつける。接合する。
ダックヮールン [⸢dakkwaː⸣ruŋ]自動{1}くっつく。ひっつく(引っ付く)。粘着する。ぴったりと付く。
ダックヮールン [⸢dakkwaː⸣ruŋ]自動{2}男女が親しくなる(夫婦になる)。
タックヮイムックヮイ [⸢takkwaimuk⸣kwai]くっつきあうさま。男女がいちゃつくさま。沖縄本島方言からの借用転訛した語。
タッシ [⸢taʃʃi]役場からの通知命令。達し。令達。命令。通達。
タッター [⸢tattaː]誰たち<不定称。複数形>。誰々。誰等。⸣-ター[-taː](~達)は名詞、代名詞に下接して複数形をつくる接尾辞。
タッタン [tat⸢taŋ]次第に。ますます。自然の時の移ろいにしたがって静かに変化するさま。変化の状態が動的に、視覚的に感じられるさまを表す。タ⸢ダーイ[ta⸢daːi](次第に。ますます。意図的に次から次へ行動し変化させるさま、変化させる意志を表す)とは多少ニュアンスが異なる。
タッチュー [⸢tat⸣ʧuː]岩や山が壁のように立ちはだかっているもの。棒立ちになっている岩。
タッテー [⸢tat⸣teː]誰の家。どの家。どこの家。
タッテー カッテー [⸢tat⸣teː ⸢kat⸣teː]どこの家・彼の家。ABCDEBCD型の重言。
ダッティ [dat⸢ti]ぱったり。突然風が止まるさま。
タットゥビカットゥビ [⸢tattubikat⸣tubi]崇め敬うさま。こよなく尊ぶさま。ABCDEBCD型の重言。
タットゥブン [⸢tat⸣tubuŋ]他動崇めうやまう。「尊ぶ」の義。
ダッふァースン [⸢daffaː⸣suŋ]他動たっっぷり塗りつける。塗りたくる。めちゃくちゃに塗る。ぺたっとくっつける。
ダッふァダッふァ [⸢daffadaffa]{1}だぶだぶ。桶の水を揺らして零すさま。擬音語。
ダッふァダッふァ [⸢daffadaffa]{2}ざっくざっく。じゃぶじゃぶ。水田を耕すさま。水中を歩くさま。
ダッふァティ [daf⸢fati]{1}どかっと。どさっと。重い物が勢いよくくっ付くさま。大量の物が一気に集まるさま。擬態語。
ダッふァティ [daf⸢fati]{2}どさっと。どばっと。どかっと。液体を一度に{零}{コボ}すさま。
タツン [⸣tḁʦuŋ]他動裁断する。⸢裁つ」の義。標準語からの借用語。型紙などに当てて裁断する。
タデーマ [ta⸢deː⸣ma]今すぐ。直に。「Tadaima.タダイマ(只今)副詞.ただ今」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
タデーマンチン [ta⸢deːmanʧiŋ]直ちに。今すぐに。短時間のうちに。「~只今参らむと侍るといふ」『源氏物語 帚木』、「Tadaima.タダイマ(只今)」『邦訳日葡辞書』に ⸣ンチン[⸣nʧiŋ](の・内に)が付いて、それが転訛したもの。
タティ [⸣tḁti]たて(縦)。上から下までの長さ。ユ⸢ク[ju⸢ku](横)の対義語。標準語からの借用語。普通は⸣ナイ[⸣nai](縦)、シ⸢マー[ʃi⸢maː](横)という。
タティアヤ [tḁ⸢ti⸣ʔaja]縦模様。ユ⸢クアヤ[ju⸢kuʔaja](横模様)の対義語。
タティカイルン [tḁ⸢tikai⸣ruŋ]他動立て替える。他人に代わって一時代金を支払う。
タティカウン [tḁ⸢ti⸣kauŋ]他動立て替える。
ダディクダキ [da⸢di⸣kudaki](植)竹の一種。西表島北部の伊武田地区の南に聳える山(古見岳の連山)に産する竹。竹床を編むのに利用した。
ダディクヤマ [da⸢di⸣kujama]古見岳の連山の一つ。伊武田地区の南に聳える山。この山の北側山麓にウ⸢ブ⸣ミジ[ʔu⸢bu⸣miʤi](大見謝川)、⸢ケーダガー⸣ラ[⸢keːdagaː⸣ra](ケーダ川)、⸢クーラガーラ[⸢kuːragaːra](クーラ川)が形成され、北海岸に流出している。
タティザーク [tḁ⸢tiʣaː⸣ku]立ち仕事。なりわい(生業)。生活のための職業。すぎわい(生業)。タ⸢ティッサー⸣ク[tḁ⸢tissaː⸣ku](立ち仕事)ともいう。
タティシグトゥ [tḁ⸢tiʃigu⸣tu]立ち仕事。立ってする仕事。ビ⸢リシグトゥ[bi⸢riʃigutu](座業。座り仕事)の対義語。
タティシジ [tḁ⸢ti⸣ʃiʤi]たてじま(縦縞)。「縦筋」の義。
タティズク [tḁ⸢ti⸣ʣuku]暮らし。暮らしを立てること。生計。
タティトゥースン [tḁ⸢tituː⸣suŋ]自動立ち続ける。「立ち通す」の義。
タティドゥマルン [tḁ⸢tiduma⸣ruŋ]自動立ち止まる。
タティナー [tḁ⸢ti⸣naː]漁法の一種。一本釣り漁法。⸢インタヌ ピーヌ⸣クシ[⸢ʔintanu piːnu⸣ku̥ʃi](西の干瀬の後ろ<外洋部>)や⸣スニ[⸣suni](曽根)でアンカーを2本下ろして舟を揺れないように固定させ、一本の釣り糸を船上から深い海底へ下ろして釣る漁法。⸢パイ⸣ナー[⸢pai⸣naː](延縄)の対義語。「立て縄」の義。
タティナライ [tḁ⸢ti⸣narai]立つことに慣れること。
タティヌクン [tḁ⸢tinu⸣kuŋ]自動居所を立ち去る。他所へ移る。「立ち退く」の義。⸣タティパルン[⸣tḁtiparuŋ](立ち去る)ともいう。若年層は、タ⸢チヌ⸣クン[tḁ⸢ʧinu⸣kuŋ](立ち退く)ともいう。
タティノールン [tḁ⸢tinoː⸣ruŋ]自動立ち直る。もとの良い状態に戻る。なおる。若年層は、タ⸢チノー⸣ルン[tḁ⸢ʧinoː⸣ruŋ](立ち直る)ともいう。
タティパルン [⸣tatiparuŋ]自動立ち去る。
タティビリ [⸣tḁtibiri]立ったり、座ったりすること。日常の所作。「たなびく雲の立ちゐ~」『古今集序』の転訛したもの。
タティブガリ [tḁ⸢tibuga⸣ri]立ち続けて疲れること。「立ち疲れ」の義。ビ⸢リブガリ[bi⸢ribugari](座り続けて疲れること)の対義語。
タティフダ [tḁ⸢ti⸣ɸuda]立て札。掲示板。
タティフチ [tḁ⸢ti⸣ɸu̥ʧi]立て方。
タティブニ [tḁ⸢ti⸣buni]凧の縦骨。凧の縦の竹骨。
タティマーリ トゥンマーリ [tḁ⸢timaː⸣ri ⸢tummaːri]よく見回りをすること。気をつけて見回りすること。気をつけて見守ること。「立ち回り飛び回り」の義。
タティムヌ [tḁ⸢ti⸣munu]建物。建築物。標準語からの借用語。
タティユク [⸣tḁtijuku]縦横。標準語からの借用語。老年層は、⸣ナイシマー[⸣naiʃimaː](縦横)という。
タディヨーゾー [ta⸢dijoːʣoː]患部を温湿布して治療すること。{罨法}{アン|ポウ}。
タティルン [tḁ⸢ti⸣ruŋ]他動立てる。建てる。
タディルン [ta⸢diruŋ]他動{1}たでる。いぶす(燻す)。腫物などの痒みや傷むところを温湯で蒸す。温熱湿布する。「Tade,zzur,、eta.タデ,ヅル,デタ。痛みや痒みを鎮め和らげるために、疥癬を洗いながら、ある布ぎれでぴたぴた叩く。また、比喩。船を食う虫を殺すため船を焦がす」『邦訳日葡辞書』。
タディルン [ta⸢diruŋ]他動{2}船虫害を防ぐために船底を茅やススキを燃やして焼く。
タティングリサン [ta⸢tiŋguri⸣saŋ]立ちにくい。生活しにくい。⸣タトゥン[⸣tḁtuŋ](立つ。生活する)の連用形に、形容詞型助動詞⸢ングリ⸣サン[⸢ŋguri⸣saŋ](~ずらい。~にくい)が付いて形成された派生形容詞。
タティン ビリン シー ブララヌ [⸣tḁtim ⸣biriŋ ⸢ʃiː⸣ bu⸢raranu]居ても立っても居られない。不安やいらだち、喜びなどでじっとしていられない。「立っても座っても居られない」の義。
タティン ビリン ナラヌ [⸣tḁtim ⸣birin na⸢ra⸣nu]立錐の余地も無く動けない。混雑して狭苦しく動けない。身動き出来ない。「立ちも座りも出来ない」の義。
タトゥーン [⸣tḁtuːŋ]他動たとえる(譬える。譬える)。なぞらえる。ある事柄の内容や性質などを他の事物との共通点に対比させて表す。「たとふ<下二段活用>。世の中を何に将譬<たとへむ>『万葉集 351』」の四段活用化したもの。普通は、イ⸢ズ⸣カー[ʔi⸢ʣu⸣kaː](言うなれば。いわば)という。
タトゥイ [⸣tḁtui]喩え。事例。故事。例え話。昔から言い伝えられてきた事柄。「喩え。譬え」の転訛したもの。
タトゥイ [tḁ⸢tui]たとえ(仮令)~とも。仮に~でも。接続助詞⸢バン[⸢baŋ](ても<ばも>)、⸣ティン[⸣tiŋ](~ても)がついて、逆接の仮定条件句を導く。標準語からの転訛か。
タトゥイバナシ [tḁ⸢tuibana⸣ʃi]たとえばなし(譬え話)。寓話。
タトゥイルカー [tḁ⸢tui⸣rukaː]喩えるならば。例えば。標準語から転訛したもの。老年層は、イ⸢ズ⸣カー[ʔi⸢ʣu⸣kaː](言うなれば。いわば)を多用する。
タトゥイルン [tḁ⸢tui⸣ruŋ]他動たとえる(例える。譬える。喩える)。なぞらえる。
タドゥリスクン [ta⸢duri⸣su̥kuŋ]自動辿り着く。道を尋ね求めて行き着く。
タドゥルン [ta⸢du⸣ruŋ]他動{1}たどる(辿る)。先祖を探る。探り求める。尋ねて求めて行く。
タドゥルン [ta⸢du⸣ruŋ]他動{2}道を迷いながら尋ね行く。道や川に沿って進む。
タトゥン [⸣tḁtuŋ]自動{1}立つ。直立する。「見渡しに妹等者立志<たたし>~『万葉集 3299』」の義。
タトゥン [⸣tḁtuŋ]自動{2}新しい月・季節がくる。
タトゥン [⸣tḁtuŋ]自動{3}年月、時間が経過する。
タトゥン [⸣tḁtuŋ]自動{4}発つ。出発する。
タトゥン [⸣tḁtuŋ]自動{5}生活していく。暮らしていく。自活していく。
タドゥン [ta⸢duŋ]他動{1}温湿布する。「たづ<下二段活用>。腫物や病気の箇所を温湯で蒸す」の四段活用化したもの。
タドゥン [ta⸢duŋ]他動{2}船底をいぶし({燻}{イブ}し)て船虫を駆除する。
タナ [ta⸢na]{1}舟棚。「棚閣、和名多奈<たな>」『和名抄』の義。⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](板船。サバニ)の船べりに装着する幅約20センチ、長さ約3メートルの棚板。約1、5メートルの板を填め込み式に繋ぎ合わせて使用した。波頭が船腹に入るのを防ぐのに用いた。「~こぎたみゆきし棚無小舟『万葉集 58』」の「棚」の義。「たなきよら<棚清ら>」、船の美称、船棚の清いものの意。対語「いたきよら」。オモロ原注に「はね也」「船の異名なり」とある『沖縄古語大辞典』。
タナ [ta⸢na]{2}棚。
タナ [ta⸢na]{3}蔓性の植物を棚仕立てにして栽培する装置。
タナシ [ta⸢naʃi]士族女性のひとえ<一重>の内掛け。古典舞踊、パ⸢トゥ⸣マナカムリ[pḁ⸢tu⸣manakamuri](鳩間中岡)の衣装の一つ。カ⸢カン[kḁ⸢kaŋ](女性の礼装用腰巻<袴>)とス⸢ディ⸣ナ[su⸢di⸣na](脇の長く開いた、ついたけ<対丈>の衣。カカンと対をなす)の上から着る衣装で、加治工家と寄合家に伝わる。
タナドゥル [ta⸢na⸣duru]稲の種を蒔く行事。「種取り」の義。旧暦10月のミズノエ<壬>の日から10日間に亘って執り行われる。⸢ソージイバ⸣チ[⸢soːʤiʔiba⸣ʧi](精進飯初。直径約7センチ、高さ約10センチの円錐形の握り飯を作ってお膳の四隅に1個ずつ置き、真ん中に大きなイバチを置いて火の神の前に供える供物)を火の神に供え、ブ⸢ナル[bu⸢naru](おなり神、戸主の姉妹)によって稲の種が順調に発芽し、生育するよう祈願される。そしてイバチは親戚の家にも配られた。種取り祭りには、サ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司。女性神職者)やティ⸢ジリ⸣ビ[ti⸢ʤiri⸣bi](男性神職者。「手擦り部」の義)達が神職者の家を回って稲種の順調な発芽と成育を祈願した後、神歌のタ⸢ナ⸣ドゥルアヨー[ta⸢na⸣duruʔajoː](種取りアヨー)や⸢ユングトゥ[⸢juŋgutu](種取りユンゴゥトゥ<「読みごと」の義か。寿詞。吉言>)を歌いながら、この時期に島の神歌を口承伝授させたという。種取り祭には鳴り物<楽器>は鳴らすことはタブーであった。
タナドゥルソージ [ta⸢na⸣durusoːʤi]⸢種取精進」の義。播種した種籾が順調に発芽し生育するよう、精進潔斎して祈願すること。その期間は茶を飲まない(茶色が出るのは田圃に赤錆た水が出るのでタブー)、鬚を剃らない、髪を刈らない(鬚を剃ることは、苗の根を刈り取ることに繋がるのでタブー)、畑の畦の草を焼かない、子供が飛び跳ねることを禁じる等のタブーを守った。
タナバタ [ta⸢nabata]たなばた(七夕)。旧暦7月7日に墓の掃除をし、先祖にお盆の案内をする習慣がある。また諸般の事情で延期している諸法事を干支のひえり<日択り>をすることなく、この日に執り行うことが出きるといわれている。
タナミ [ta⸢na⸣mi]頼み。
タナミプス [ta⸢nami⸣pu̥su]雇い人。雇っている人。「頼み人」の義。
タナムン [ta⸢na⸣muŋ]他動頼む。依頼する。当てにする。老年層が多用する。
タニ [⸣tani]{1}種子。「種」の義。「~あげに種蒔き~『万葉集 2999』」の転訛したもの。「因、ヨシ・タネ」『類聚名義抄』の義。⸣サニ[⸣sani](種子)ともいう。
タニ [⸣tani]{2}男根。
タニ [⸣tani]{3}リンパ腺のぐりぐり。
タニウシ [ta⸢ni⸣ʔuʃi]種牛。繁殖用の種付け牛。
タニウラシ [ta⸢niʔura⸣ʃi]種おろし。種蒔き。⸣ナイ ウ⸢ラ⸣スン[⸣nai ʔu⸢ra⸣suŋ](苗をおろす)ともいう。
タニオー [ta⸢ni⸣oː]種豚。種付け用の雄豚。サ⸢ニ⸣オー[sa⸢ni⸣oː](種豚)ともいう。
タニ キスン [⸣tani ⸣ki̥suŋ]血統が切れる。「種切れる」の義。種が断絶する。種が絶滅する。
タニ シキルン [⸣tani ʃi̥⸢ki⸣ruŋ]種を付ける。交尾させる。交配させる。
タニ トゥルン [⸣tani ⸣turuŋ]種子を取る。採種する。
タニヌ サウ [ta⸢ni⸣nu ⸣sau]陰茎。「男根の竿」の義。⸣マラ[⸣mara](陰茎)ともいう。
タニヌ フル [ta⸢ni⸣nu ɸu⸢ru]睾丸。陰嚢。フ⸢ル[ɸu⸢ru](ふぐり)ともいう。「Fuguri.フグリ(陰嚢)」『邦訳日葡辞書』。
タニ パタッカリヤラビ [⸣tani pḁ⸢takkarijarabi]下半身丸裸の幼児。「ちんちんをはだかる(開る)童」の転訛したもの。マラタリヤラビとも言う。
タニ パンクルン [⸣tani ⸢paŋ⸣kuruŋ]陰茎の亀頭の外皮がめくれる。
タニピビザ [ta⸢nipibi⸣ʣa]種山羊。種付け用の山羊。
タニブッター [⸣tanibuttaː]果物や野菜などの実に種子が多いもの。
タニマイ [⸣tanimai]たねもみ(種籾)。⸢種米」の義。種用にとっておく籾。⸣サニマイ[⸣sanimai](種米)、 タ⸢ニ⸣ムミ[ta⸢ni⸣mumi](種籾)ともいう。
タニマキ [ta⸢ni⸣maki]種蒔き。サ⸢ニ⸣マキ[sa⸢ni⸣maki](種蒔き)ともいう。
タニムヌ [ta⸢ni⸣munu]穀物の種子。種物。
タニムミ [ta⸢ni⸣mumi]たねもみ(種籾)。種蒔きに使う籾。⸣タニマイ[⸣tanimai](種米)ともいう。
タニユー [ta⸢ni⸣juː]菜種油。たねあぶら。食用油。「種油」の義。天麩羅などの揚げ物に用いる食用油。一度使用した油はガーゼで濾して油壺に保存し、必要に応じて再利用した。菜種油がなかった頃は、豚肉のア⸢バッ⸣タラ[ʔa⸢bat⸣tara](脂身。ラード)を煎って搾油した。
タニン [ta⸢niŋ]他人。無縁の人。標準語からの借用語。
タニンガーリ [ta⸢niŋgaː⸣ri]変種。変り種。突然変異。同じ種の中で一風変わったもの。親兄弟とかけ離れた身体的特性や能力のあるもの。「種変わり」の義。サ⸢ニンガー⸣リ[sa⸢niŋgaː⸣ri](変種。変り種)ともいう。
タニンガーリムヌ [ta⸢niŋgaːri⸣munu]変わり者。「種変わり者」の義。風貌や性格、行動等が他の兄弟と変わっている者。
タニンガールン [ta⸢niŋgaː⸣ruŋ]自動種子が突然変異する。変異が起きる。⸢種変わる」の義。
タニンマ [ta⸢niʔm⸣ma]種馬。
タヌシミ [ta⸢nu⸣ʃimi]楽しみ。
タヌシムン [ta⸢nu⸣ʃimuŋ]自動楽しむ。楽しく思う。満足して安らぐようにする。「~梅ををきつつ多努之岐(タヌシキ)終へめ。万、815」、「倡、太乃之(たのし)~」『新撰字鏡』の転訛したもの。
タヌマッサン [ta⸢numas⸣saŋ]頼もしい。
タヌムン [ta⸢nu⸣muŋ]他動頼む。依頼する。標準語から転訛したもの。若年層が多用する。
タヌンザ [⸣tanunʣa]どいつ。不定称の代名詞。なにやつ。どやつ。古老が使用する。大正生まれ以降の若年層は⸣タンザ[⸣tanʣa](どいつ)と言うことが多い。
ダネーママイ [da⸢neː⸣mamai](植)稲の品種名。赤紫色を呈し、香ばしくて美味である。粥に炊くと薄く油分が出る。ア⸢ガマイ[ʔa⸢gamai](赤米)、⸢ザイレー⸣マイ[⸢ʣaireː⸣mai](在来米)ともいう。
タノール [ta⸢noː⸣ru]器用さ。巧みさ。要領がいいこと。うまく処理する手順やこつがあること。手際のよいこと。技量が優れていること。「手馴れ」の転訛したもの。「~吾が背子が多那礼乃<タナレノ>み琴~『万葉集 812』」の転訛したもの。
タノールヌ アン [ta⸢noːru⸣nu ⸣ʔaŋ]仕事や芸事に手馴れて巧みである。仕事や芸事を器用にこなす。巧みにこなす才能がある。
タバ [⸣taba]{PoS_1}稲や茅などの束。一まとめに束ねたもの。タ⸢バ⸣ル[ta⸢ba⸣ru](束)、タ⸢ブ⸣ル[ta⸢bu⸣ru](束)ともいう。片手に握った分量(プ⸢ス⸣シゥカ{SqBr}pu̥⸢su⸣si̥ka{/SqBr}<一束。ひとつか>)を二つ併せて束ねたもの。
タバ [⸣taba]助数{PoS_2}束を数える単位。
タバク [ta⸢ba⸣ku]タバコ(煙草)。ポルトガル語からの借用語の転訛したもの。関連する語彙に⸢パータバク[⸢paːtabaku](葉タバコ)、タ⸢バク⸣ヌ⸢パー[ta⸢baku⸣nu⸢paː](タバコの葉)、タ⸢バク⸣ヌ フ⸢キ⸣ガラ[ta⸢baku⸣nu ɸu̥⸢ki⸣gara](タバコの吸殻)。
タバクイリ [ta⸢baku⸣ʔiri]タバコ入れ。⸣プゾー[⸣puʣoː](宝蔵。女持ちの煙草入れ)ともいう。
タバクダイ [ta⸢baku⸣dai]タバコ代。タバコの代金。
タバクフキ [ta⸢ba⸣kuɸu̥ki]煙草を吸う人。喫煙者。タ⸢バ⸣ク フ⸢キ⸣プス[ta⸢ba⸣ku ɸu̥⸢ki⸣pu̥su](煙草を吸う人<吹く人>)ともいう。
タバク フクン [ta⸢ba⸣ku ⸣ɸu̥kuŋ]煙草を吸う。
タバクブン [ta⸢baku⸣buŋ]たばこ盆。約25センチ正方形に高さ約10センチの箱の中に陶製の広口壷型の火入れと、竹筒の⸢パイフキ[⸢paiɸu̥ki](灰吹き)を備えたもの。{竈}{カマド}の{熾}{オキ}を火入れに取り、タバコの火を点けるのに用いた。タバコを吸い終わると[g]{煙管}{キセル}をパイフキに叩いて吸殻を集めた。
タバル [ta⸢ba⸣ru]助数束。稲などの束を数える単位。一まとめに束ねたもの。タ⸢ブ⸣ル[ta⸢bu⸣ru](束)ともいう。
タバル [ta⸢ba⸣ru]水田地帯。「田原」の義。首里方言のtaabuQkwa(田のたくさんあるところ。田袋)のこと。トゥ⸢マダタバル[tu⸢madatabaru](トゥマダ田原)、⸢ケーダタバ⸣ル[⸢keːdataba⸣ru](ケーダ田原)、⸢ユシ⸣キダタバル[⸢juʃi̥⸣kidatabaru](南ヨシキダ田原)、サ⸢キンダタバル[sḁ⸢kindatabaru](崎田田原)などがある。
タバル スン [ta⸢ba⸣ru ⸢suŋ]束ねる。「束する」の義。タ⸢ブ⸣ル ⸢スン[ta⸢bu⸣ru ⸢suŋ](束ねる)ともいう。
タバルン [ta⸢ba⸣ruŋ]他動束ねる。纏める。普通はタ⸢バニ⸣ルン[ta⸢bani⸣ruŋ](束ねる)という。30束を束ねるのは、マ⸢ラクン[ma⸢rakuŋ](丸く)という。
タビ [ta⸢bi]旅。
タビ [da⸢bi]だび(荼毘)。葬式。鳩間島では昭和30年ごろまでは土葬や亀甲墓<掘り抜き墓>に納めて墓を密閉する風葬が中心であった。土葬した遺骸や、亀甲墓で風葬した遺骸を三年後にア⸢ライクサイ[ʔa⸢raikusai](洗骨葬。改葬)する際に、お骨を荼毘に付したり、洗骨して骨壷に納めて亀甲墓に納骨した。その際にお骨を焼くことをダ⸢ビ[da⸢bi](荼毘)といっていた。
タビシタフ [ta⸢biʃi̥ta⸣ɸu]たびじたく(旅支度)。タ⸢ビシゥコー⸣ル[ta⸢bisï̥koː⸣ru](旅の準備、旅支度)ともいう。
タビダチ [ta⸢bida⸣ʧi]旅立ち。
タビニガイ [ta⸢bi⸣nigai]旅の安全祈願。「旅願い」の義。タ⸢ビニン⸣ガイ[ta⸢biniŋ⸣gai](旅願い)ともいう。
タビヌウガン [ta⸢binu⸣ʔugaŋ]旅のお願。旅の御嶽。⸢マイドゥム⸣ルウガン[⸢maidumu⸣ruʔugaŋ](前泊御嶽<お願>)ともいう。「旅お願」の義。戦前は出稼ぎや兵役で旅立つ人は、必ずこの御嶽で祈願をして出立し、帰省した時はお礼の祈願をした。石垣島へ行く人も船上から、この御嶽に向かって合掌礼拝をした。出征兵士は船を一時この御嶽の前に停船させて無事を祈った。カツオ漁業が盛んだった頃は、出漁の初めと終わりには、この御嶽で祈願した。終わりの祈願を、ス⸢ビニンガイ[su⸢biniŋgai](終業祈願。⸢首尾願」の義)といっていた。
タビマール [ta⸢bimaː⸣ru]{1}旅回り。出稼ぎで旅に出ること。島で働くことを嫌って、旅に出て働くこと。
タビマール [ta⸢bimaː⸣ru]{2}郵便物や役人を竹富島まで届ける村役人。運搬船が就航する以前の大正初期頃の鳩間島では、⸢スー⸣ダイ[⸢suː⸣dai](総代)が⸣フダニン[⸣ɸudaniŋ](十五歳以上の男子)三人に命じて、役人や学校の先生、郵便物を石垣島や竹富島まで送り届けさせた。そのための役割をいう。加治工伊佐も三回任命されたことがあるという(加治工伊佐氏談)
タブ [ta⸢bu](植)タブノキ。大高木で高さ約15メートルに達する。材は建築材、器具材に利用されるほか、薪炭材に利用される。タ⸢ブキー[ta⸢bukiː]ともいう。
タブ [ta⸢bu]たも網<攩網>。直径約25センチ、深さ約15センチの丸い袋網を竹竿の先端に固定したもの。カツオ漁船の生簀<イ⸢キ⸣マ[ʔi⸢ki⸣ma](餌の雑魚を活けておく水槽<生け間>)の中から雑魚を掬い取るたも網。
タブーン [ta⸢buːŋ]他動蓄える。貯蓄する。保存する。「惜、タバフ」、惜しむ。大切にまもる」『類聚名義抄』。「Tabai、タバイ、ウ、ウタ(よく貯えて保存する)」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
タブイ [ta⸢bui]蓄え。貯蓄。
タブイルン [ta⸢buiruŋ]他動蓄える。貯蓄する。保存する。若年層はタ⸢クワイルン[tḁ⸢kuwairuŋ](蓄える)ともいう。
ダフダフ [⸣daɸudaɸu]どきどき。不安や恐怖などで胸の動悸が激しくなるさま。
ダフッティ [daɸut⸢ti]{1}どきっと。突然の出来事に驚いて心臓が大きく鼓動するさま。
ダフッティ [daɸut⸢ti]{2}ざぶんと。水に勢いよくつけるさま。
ダブッティ [dabut⸢ti]でっぷり。太っているさま。肥満した様子。
ダブラ [da⸢bu⸣ra]大腿筋。腿の後部の膨らんだ筋肉の部分。
タブル [ta⸢bu⸣ru]{PoS_1}たば(束)。タ⸢バ⸣ル[ta⸢ba⸣ru](束)ともいう。
タブル [ta⸢bu⸣ru]助数{PoS_2}フ⸢タタブル[ɸu̥⸢tataburu](二束)。
タブル スン [ta⸢bu⸣ru ⸢suŋ]束ねる。「束をする」の義。
タボーラ ナーラ [ta⸢boː⸣ra naː⸢ra]~してくださいませんか。~してください。補助動詞タ⸢ボー⸣ルン[ta⸢boː⸣ruŋ](くださる。<賜る>)の未然形に、ナー⸢ラ[naː⸢ra](ませんか。<*ン・ネーラ<*ぬ・あらむ、の転訛か)が付いた形。九十歳以上の古老が用いる。
タボーラリムヌ [ta⸢boːrari⸣munu]賜り物。頂き物。到来物。
タボーラリン [ta⸢boːra⸣riŋ]他動賜られる。頂かれる。頂戴される。タ⸢ボー⸣ルン[ta⸢boː⸣ruŋ](賜る)の未然形に受身、可能の助動詞⸣リン[⸣riŋ](れる)が下接して形成された受身・可能の派生動詞。
タボールン [ta⸢boː⸣ruŋ]他動{PoS_1}頂く。頂戴する(謙譲語)。下位の者が上位の者から頂く意で、くれる人や神を敬う。「足柄のみ坂多麻波里<たまはり>~『万葉集 4372』」、「Tamauari、ru、atta.タマワリ、ル、ッタ(賜はり、る、った)尊敬すべき人がほかの下級の人とか同等の人に与える~」『邦訳日葡辞書』の転訛。/ウマンチュヌ ニガイヤヨー アカカラジヌ ニガイヤヨー ハーリ アミタボリ リューガナシ(御真人<衆生、民衆>の願いは、百姓の願いは、はーり<囃子>、雨を下さい<賜れ>竜神さま)/「雨乞い歌<ハヤミク>」『鳩間島古典民謡古謡集』。
タボールン [ta⸢boː⸣ruŋ]補動{PoS_2}補助動詞(~て下さる)。
ダボンガスン [da⸢boŋgasuŋ]他動海中や川の水の中に物を投げ込む。大きな水音を立てて投げ入れる。
ダボンティ [dabon⸢ti]ざぶんと。水中に飛び込む音の形容。強い勢いで水中に入る音の形容。
タマ [⸣tama]{1}玉。
タマ [⸣tama]{2}弾丸。
タマ [⸣tama]{3}ガラス。
タマ [ta⸢ma]配分。漁獲物を配分する際の一人分。割り当てられた分。取り分。タ⸢マシ[ta⸢maʃi](取り分)のこと。
タマータマ [ta⸢maːtama]たまたま(偶々)。偶然。
タマーニ [ta⸢maːni]たまに(偶に)。まれに。
タマーニ [ta⸢maːni]固有名詞。成底タマーニ氏。喜舎場永珣氏が鳩間島の古謡を調査した際にインフォーマントとして協力した人
タマウーキ [ta⸢maʔuː⸣ki]「玉桶」の義。漁具の一つ。底をガラスで張った桶。直径約25センチ、高さ約35センチのガラス張りの桶。船べりからこれで海中を覗き見ながら蛸を捕ったり、魚を釣ったりするのに用いる。
タマガイ [ta⸢ma⸣gai]魂が火の玉となって飛ぶこと。妖火のこと。タ⸢マン⸣ガイ[ta⸢maŋ⸣gai]、⸢ピー⸣ダマ[⸢piː⸣dama](火の玉<妖火>)ともいう。「魂上がり」の義か。人の死の前兆という。死者の出る家の上から上がって飛んで行くという。人によっては、それを見ることが出来るといわれている。
タマガラス [ta⸢magara⸣su]ガラス(硝子)。「玉ガラス」の義。
タマクビン [ta⸢ma⸣kubiŋ]ガラス瓶。ガラスの小瓶。「玉小瓶」の義。
タマサカ [ta⸢masaka]たまさか(偶さか)。たまたま。「かいこう、タマサカ」『類聚名義抄』の義。
タマシ [ta⸢maʃi]配分。取り分。漁獲物を配分する際の一人分の受け取り高。割り当てられた当然の権利と義務。職分。
タマシ [ta⸢ma⸣ʃi]{1}魂。霊魂。精霊。
タマシ [ta⸢ma⸣ʃi]{2}思慮分別。真人間になること。
タマシ イリルン [ta⸢ma⸣ʃi ʔi⸢riruŋ]しっかりと分別のある人間になる。深く思い知らされる。身にしみて分かる。「魂を入れる」の義。
タマシ イルン [ta⸢ma⸣ʃi ʔi⸢ruŋ]しっかりと分別のある人間になる。深く思い知らされる。身にしみて感じ、行動する。「魂を入れる」の義。
タマシ ウタスン [ta⸢ma⸣ʃi ʔu⸢ta⸣suŋ]「魂を落とす」の義。驚いたり、転んだり、事故に遭ったりした時に霊魂が肉体から抜け落ちること。
タマシダリ [ta⸢maʃida⸣ri]玉簾。玉のような立派な簾。
タマシ ナーンムヌ [ta⸢ma⸣ʃi ⸢naːm⸣munu]思慮分別のない者。しっかりした心がけの無い者。
タマシ ヌガスン [ta⸢ma⸣ʃi nu⸢ga⸣suŋ]びっくり仰天する。「魂を抜かす」の義。
タマシ ヌギルン [ta⸢ma⸣ʃi nu⸢gi⸣ruŋ]びっくり仰天する。ひどく驚く。腰が抜ける。「魂が抜ける」の義。
タマシ ヌグン [ta⸢ma⸣ʃi ⸣nuguŋ]びっくり仰天する。ひどく驚く。腰が抜ける。「魂が抜ける」の義。タ⸢マ⸣シ ヌ⸢ギ⸣ルン[ta⸢ma⸣ʃi nu⸢gi⸣ruŋ](魂が抜ける)ともいう。
タマシ プサウン [ta⸢ma⸣ʃi pu̥⸢sauŋ]魂を拾う。体から抜け出て遊離した霊魂を拾う。体から遊離した霊魂は、遊離した場所の石や砂に付着しているので、それを拾って懐に入れ、家に持ち帰えって改めてマ⸢ブ⸣ルクミ[ma⸢bu⸣rukumi](霊籠め)の儀式をしてもらった。
ダマスン [da⸢masuŋ]他動だます(騙す)。あざむく(欺く)。だまかす。
タマタマ [ta⸢matama]{1}偶然に。たまたま。
タマタマ [ta⸢matama]{2}時折り。
タマドゥール [ta⸢maduː⸣ru]「玉灯籠」の義。カ⸢ク⸣ランプ[kḁ⸢ku⸣rampu](角ランプ)ともいう。板ガラスで四面を囲い、中にローソクや石油ランプを灯す携帯用照明器具。角ランプ。
タマナー [ta⸢ma⸣naː](植)和名、タマナ(玉菜)。キャベツ(cabbage)。アブラナ科植物で葉が巻き込んで球形を形成する。大きいものは直径約25センチに達する。戦後の一時期、大々的に栽培されたが換金できず、島での栽培は失敗した。
タマヌ カキ [ta⸢ma⸣nu kḁ⸢ki]ガラスの欠片。タ⸢マ⸣ヌ バ⸢リ[ta⸢ma⸣nu ba⸢ri](ガラスの割れ)ともいう。
ダマリクムン [da⸢mari⸣kumuŋ]自動黙ってしまう。一言も言わなくなってしまう。押し黙る。
タマリミジ [ta⸢marimiʤi]窪地や池に溜まった水。流れずにたまっている水。
ダマリムヌ [da⸢mari⸣munu]だまりん坊。黙っている人。
タマルン [ta⸢maruŋ]自動溜まる。水などが一所にとどまる。集まりとどまる。「~蓮葉に停有水之<タマレルミズノ>~『万葉集 3289』」の転訛したもの。
タマルン [ta⸢ma⸣ruŋ]自動まっすぐになる。狙いが定まる。矯める。「矯、タム」『類聚名義抄』の転訛したもの。
ダマルン [da⸢ma⸣ruŋ]自動黙る。
タマン [ta⸢maŋ](動)鯛一種。和名、シモフリフエフキ(体長約35センチ)。和名、ハマフエフキ(体長50~70センチ)。和名、フエフキダイの仲間(体長約30センチ)。和名、アマミフエフキ(体長約70センチ)などは白身魚の最高級魚。島の西の⸢クー⸣シビー[⸢kuːʃi⸣biː](クーシ干瀬)の⸢ピーヌ⸣クシ[⸢piːnu⸣kuʃi](外海。<干瀬の後ろ>)で、タ⸢ティ⸣ナー[tḁ⸢ti⸣naː](一本釣り<立て縄>)でよく釣れた。
ダマンガルン [da⸢maŋgaruŋ]自動ひどく驚いて相手を睨みつける。無言で睨む。「Tamagari,ru,atta.タマガリ,ル,ッタ(魂がり,る,った)驚く.」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
タミ [ta⸢mi]{1}ため<為>。利益。利得。「姫君の御ため<為>を思せば~『源氏物語<少女>』」の義。
タミ [ta⸢mi]{2}形式名詞。目的を表す。
タミ [ta⸢mi]{3}原因、理由を表す。
タミシ [ta⸢mi⸣ʃi]前例。先例。証拠。道理。理由。
タミシ [ta⸢mi⸣ʃi]試すこと。試みること。試験。動詞タ⸢ミ⸣スン[ta⸢mi⸣suŋ](試す)の連用形から転成した名詞。
タミスン [ta⸢mi⸣suŋ]他動試す。試みる。実験する。
タミルン [ta⸢miruŋ]他動溜める。貯える。貯金する。一杯にしておく。「~生<む>し多米難き~『万葉集 3227』」の義。
タミルン [ta⸢mi⸣ruŋ]他動ためる(矯める)。まっすぐにする。直線に狙いを定める。「揉、太無<たむ>」『和名抄』。「矯、タム」『類聚名義抄』の転訛したもの。
タムティ [ta⸢mu⸣ti]保ち。持続すること。持ちこたえること。保存すること。
タムトゥ [ta⸢mu⸣tu]たもと(袂)。袖の下の袋状になったところ。
タムトゥン [ta⸢mu⸣tuŋ]他動{PoS_1}保つ。維持する。保持する。守る。
タムトゥン [ta⸢mu⸣tuŋ]他動{PoS_2}{2}自動詞的用法。
タムヌ [ta⸢mu⸣nu]薪。
タ ムヌ [⸣ta ⸣munu]~したものを。~たのに。過去の助動詞⸣タン[⸣taŋ](~た)の連体形に逆接の助詞⸣ムヌ[⸣munu](~ものを)が付いた形。
タムヌ イブン [ta⸢mu⸣nu ʔi⸢buŋ]薪をくべる。
タムヌ カーシプス [ta⸢mu⸣nu ⸢kaːʃipu̥su]たきぎ<薪>売り。薪を売る人。「薪売り人」の義。昭和37年頃まではガスコンロが普及していなかったので、薪を束ねて燃料として売っていた。
タムヌ キスン [ta⸢mu⸣nu ⸣ki̥suŋ]薪にする丸太を西表島から伐り出してくる。
タムヌダナ [ta⸢mu⸣nudana]薪棚。⸢キー⸣ダナ[⸢kiː⸣dana](薪棚)ともいう。普通は竈の上に{設}{シツラ}えられている。吊棚式に作った薪棚。バ⸢リタムヌ[ba⸢ritamunu](割った薪)を薪棚に積み、竈の熱気で乾燥されるように工夫されている。
タムヌ バクン [ta⸢mu⸣nu ⸣bakuŋ]丸太を鋸で約30センチの長さに切る。
タムヌバリ [ta⸢mu⸣nubari]薪割り。丸太を斧で割って薪にする仕事。
タムヌバリブーヌ [ta⸢mu⸣nubaribuːnu]薪割り斧。各家庭で薪割りに用いた斧。単に⸢ブー⸣ヌ[⸢buː⸣nu](斧)、⸢キーバリブー⸣ヌ[⸢kiːbaribuː⸣nu](木割り斧)ともいう。ヤ⸢マブー⸣ヌ[ja⸢mabuː⸣nu](山斧。山で材木を削るのに用いる斧)の古くなったものを薪割り斧に利用した。楔形の堅牢な鉄の刃をつけた頭部が山斧よりも大きくて重い。薪割りの際、⸢マッ⸣ふァ[⸢maf⸣fa](枕。当て木。ア⸢ティ{SqBr}ʔa⸢ti{/SqBr}<当て>ともいう)を置いて斧の刃こぼれが起きないように配慮した。
タムラ [ta⸢mura]他村。他の村。余所の村。⸣ドゥームラ[⸣duːmura](自分の村)の対義語。タ⸢シマ[tḁ⸢ʃima](他の島)、ユ⸢スシマ[ju⸢suʃima](余所島)ともいう。
タムン [ta⸢muŋ]他動溜める。貯える。一杯にしておく。「溜め<下二段活用>」の転訛<四段活用化>したもの。
タムン [⸣tamuŋ]他動矯める。真直ぐにする。狙いを定める。「矯、タム<下二段活用>」『類聚名義抄』の転訛<四段活用化>したもの。
タヤ [ta⸢ja]力。体力。耐える力。⸣タイ[⸣taji](耐える力)ともいう。
ダヤー [⸣dajaː]虚弱体質の人。体力のない者。手足の力がなく、何の仕事も出来ない人。役立たず。多少蔑視した表現。ダ⸢リ⸣ムヌ[da⸢ri⸣munu](虚弱体質の人。体力のない者。病的にだらだらしている者)ともいう。
ダヤーッピー [⸢dajaːppiː]人名。動作の鈍い兄さん。
タヤシグトゥ [ta⸢jaʃigutu]力仕事。体力の要る仕事。若年層が多用する。
タヤッサーク [ta⸢jassaːku]力仕事。体力の要る仕事。老年層が多用する言葉。タ⸢ヤシグトゥ[ta⸢jaʃigutu](力仕事)ともいう。
タヤッサン [ta⸢jas⸣saŋ]たやすい。簡単である。
タヤン ブーン ナーヌ [ta⸢jam⸣buːn ⸢naː⸣nu]体力が無い。「ブー」は「分<ぶ>、強さの度合い『読本椿説弓張月』」『日本国語大辞典』の義か。「玉の緒」説『石垣方言辞典』は取らない。
タユリ [ta⸢ju⸣ri]縁故。頼り。タ⸢ユ⸣ル[ta⸢ju⸣ru](縁故。便り。音信)とも言う。
タユル [ta⸢ju⸣ru]{1}音信。手紙。老年層が多用する。「便り」の義。
タユル [ta⸢ju⸣ru]{2}頼り。頼みにするもの、または人。
タユル [ta⸢ju⸣ru]{3}つて<伝>。てずる。縁故。「Tayori.タヨリ(便り)使いの者、ちょうどよい折.また援助、あるいは、役に立ったり為になったりする事物など.」『邦訳日葡辞書』の義。
タユルピキ [ta⸢ju⸣rupi̥ki]縁故。てずる。
タユルン [ta⸢ju⸣ruŋ]他動頼る。よりすがる。たのみとする。
ダラ [⸣dara]終助~だなあ。~だことよ。名詞や形容詞の語幹について、感嘆の意を表す。語形は、[du] <ぞ>・[ara] <有ら>・[mu] <む> → [darau] → [dara] <だなあ>のような音韻変化を経て形成されたものであろう。
ダラー [⸣daraː]だらけた者。不活発な者。⸣ダルン[⸣daruŋ](だれる。疲れる)の連用形⸣ダリ[⸣dari]に接尾辞⸣ヤー[⸣jaː](~する者)が付いて形成された語。
タラーシユースン [ta⸢raːʃijuːsuŋ]他動不足を補うことが出来る。充分に満たす。他人の欠点を補って補強することが出来る。タ⸢ラースン[ta⸢raːsuŋ](足す。満たす。不足を補う)の連用形に助動詞⸢ユー⸣スン[⸢juː⸣suŋ](~出来る。~し得る)が付いて形成された派生動詞。
タラースン [ta⸢raːsuŋ]他動不足を補う。足す。満たす。足りるようにする。「足らせる」の義。
ダラーン [da⸢raː⸣ŋ]だるい(怠い)。動作がのろい(鈍い)。動作がとろい。若年層ではダ⸢ロー⸣ン[da⸢roː⸣ŋ](だるい)ともいう。
タライ [⸣tarai]たらい(盥)。「手洗い」の転訛か。水や湯を入れて手や顔を洗うための器。「盥、多良比<たらひ>、俗用手洗二字」『和名抄』の転訛したもの。
タラウン [ta⸢rauŋ]自動{1}足りる。十分にである。満ち足りる。
タラウン [ta⸢rauŋ]自動{2}打ち消し形で、一人前でない、の意味となる。
タラクジ [ta⸢rakuʤi]古典民謡の「タラクジ節」。鳩間島で伝承されている「たらくじ」は第一連、第二連に石垣島の「赤馬節(その二)」の歌詞を、第三連に竹富島の「マザカイ節」の歌詞を混ぜたもので、キ⸢チゴン[ki̥⸢ʧigoŋ](結願祭)などの奉納舞踊として歌い踊られる。/イラサニサ キユヌヒ ドゥキサニサ クガニヒ/バンシディル キユダラ パニムイルタキダラ/マリヤタキドゥン スダティヤ ナカマヌマザカイ/ナユヌユイ イキヤヌシナンドゥ ナカマクイラ/『鳩間島古典民謡古謡集』
ダラシキ ビルン [da⸢raʃi̥⸣ki bi⸢ruŋ]べったりと座ること。
ダラシキルン [da⸢raʃi̥ki⸣ruŋ]自動叩きつけられてぐったりする。くたばる。
タラシパナ [ta⸢raʃi⸣pana]古典舞踊⸢鳩間節」の髪飾り。頭にティジバナ[ti⸢ʤibana]、ヨ⸢コザ⸣シ[jo⸢koʣa⸣ʃi]の花を挿し、タ⸢ラシ⸣バナ[ta⸢raʃi⸣bana](紙をカールさせて作った細長い造花)を頭から背中に垂らす。
ダラスクン [da⸢rasu̥⸣kuŋ]自動{PoS_1}叩きつけられてぐったりする。くたばる。へたばる。弱って動けなくなる。衰弱して動けなくなる。
ダラスクン [da⸢rasu̥⸣kuŋ]他動{PoS_2}叩きのめす。
タラスン [ta⸢ra⸣suŋ]他動溶かす。とろかす(蕩かす)。
タラスン [ta⸢ra⸣suŋ]他動垂らす。したたら(滴ら)す。液体を流す。
ダラスン [da⸢ra⸣suŋ]他動強く打つ。強く叩く。
ダラスン [da⸢ra⸣suŋ]他動ゆるませる(弛ませる。垂らす)。
ダラダラ [da⸢radara]だらだら。動作ののろいさま。擬態語。
ダラダラ [⸣daradara]だらだら。動作が鈍く続くさま。怠けて時を過ごすさま。ABAB型重言。
ダラダラ [da⸢radara]{1}ぐつぐつ。とろとろ。物を十分に煮え立たせるさま。
ダラダラ [da⸢radara]{2}たらたら。濃度の濃い液体、汗や血液、油、醤油などが途切れることなく流れるさま。
ダラッカダラッカ [da⸢rakkadarakka]のっそりのっそり。だらりだらりと。擬態語。
ダラッティ [darat⸢ti]ぐったりと。体力や気力が失われてへたり込むさま。
ダリー [da⸢riː]まあ汚い。まあ、嫌らしい。アダ⸢リー[ʔada⸢riː](まあ汚い)の略語。イダ⸢リー[ʔida⸢riː](まあ汚い)は、揶揄する気持ちが含まれる。ダー⸢リーとも言う。
ダリッサールン [da⸢rissaː⸣ruŋ]自動元気が無くなる。疲れて元気が無くなる。しょげかえる(悄気返る)。ひどくしょげる(悄気る)。しょげこむ({SqBr}g{/SqBr}{悄気}{ショゲ}こむ)。しおれる。
ダリッサリムヌ [da⸢rissari⸣munu]全く気力のない者。動作が緩慢でだらだらした者。「だれくされ者」の義。卑語として用いられる。
タリマユ [ta⸢ri⸣maju]たれまゆ(垂れ眉)。
タリミー [ta⸢ri⸣miː]垂れ目。目尻が下がっていること。その目。
ダリミー [da⸢ri⸣miː]たれ目。目尻が下がった目。
ダリムヌ [da⸢ri⸣munu]虚弱体質の者。手足の力が弱く、何の仕事も出来ない人。
ダリヤン [da⸢ri⸣jaŋ]体の不自由な病気。ちゅうぶう(中風)。腕や脚に麻痺が生じる病気。
タリルン [ta⸢ri⸣ruŋ]自動{1}溶ける。
タリルン [ta⸢ri⸣ruŋ]自動{2}朽ち果てる。朽ち溶ける。腐食する。
タリルン [ta⸢ri⸣ruŋ]自動垂れる。重みで下にだらりとさがる。⸣タルンとも言う。
ダリルン [da⸢ri⸣ruŋ]自動疲れる。疲労困憊する。疲れて気持ちがゆるむ。
タル [⸣taru]たる(樽)。標準語からの借用語か。普通は⸢ウー⸣キ[⸢ʔuː⸣ki](桶)という。製糖組合が出来て、黒糖輸出用の容器として樽が作られるようになった。
タル [⸣taru]人名。男の名前。「太郎」の義。昔は「多呂」、「樽」と表記された。
タル [ta⸢ru]誰。老年層、古謡で用いられる。普通の日常会話では、⸢ター[⸢taː](誰)という。/タルトゥユードゥ ティーユマス ジリトゥユードゥ ナートゥラス カムラマーヌ アマイヤー ウヤキユーバ タボラリ/(誰と一緒に鳴り響かせようか、誰と共に有名にしようか、カムラーマの歓びは豊年満作の年<御世>を賜ることです)「かむらーまぬうた」『鳩間島古典民謡古謡集』
ダル [⸣daru]人名。平民女性の名。
ダル [⸣daru]おり(澱)。おどみ。沈殿物。液体の底に沈んだかす(滓)。
タルウーキ [⸣taruʔuːki]樽。桶。酒樽や砂糖樽を桶に転用したもの。
タルガー [ta⸢ru⸣gaː]樽を組み立てる板。ク⸢リ⸣タ[ku⸢ri⸣ta]ともいう。
タルガキ [ta⸢rugaki]頼ること。頼りにすること。当てにすること。悪い意味で用いられることが多い。
タルガキルン [ta⸢rugakiruŋ]他動頼りにする。当てにする。他人の力に頼る。タ⸢ルガクンとも言う。
タルガクン [ta⸢rugakuŋ]他動他人をたよりにする。頼る。当てにする。タ⸢ルガキルンとも言う。
タルキ [ta⸢ru⸣ki]垂木。「榱、太流岐(たるき)」『和名抄』の転訛したもの。家の棟から軒へ渡す木材。直径約8センチ、長さ約4メートルの丸太。その上に竹のユ⸢チル[ju⸢ʧiru](えつり<桟>)を編んで茅葺屋根を葺いた。瓦葺の場合はえつり<桟>の上に粘土を載せて瓦を葺いた。垂木は西表島北岸の山から、シ⸢ター⸣マ[ʃi̥⸢taː⸣ma](「えごのき」の一種か)、ア⸢ゴ⸣チ[ʔa⸢go⸣ʧi](「もくたちばな」の一種か)などの若木を伐って使っていた。
タル ジリーティ ナーヌ [ta⸢ru⸣ ʤiriːtteː ⸢naː⸣nu]たれかれ(誰彼)となく。相手かまわず。誰彼という区別なく。
タルタル [ta⸢rutaru]誰々。タ⸢ル[ta⸢ru](誰)の重言。歌謡語や老年層で使用される。若年層は⸢ターター[⸢taːtaː](誰々)ともいう。
ダルマ [da⸢ru⸣ma]{1}張子の玩具。倒してもまっすぐに立つように造られているので、開運の縁起物として重宝される。
ダルマ [da⸢ru⸣ma]{2}だるまのように、ずんぐりと太った人にいう。
ダルマー [da⸢ru⸣maː](動)魚名。和名、ヨコシマクロダイ。フエフキダイ科。体長約50センチ。白身魚の高級魚。
タルン [⸣taruŋ]他動{PoS_1}{1}溶かす。液体に他の物質を混ぜて均一な液体をつくる。
タルン [⸣taruŋ]他動{2}醸造する。
タルン [⸣taruŋ]他動{3}脂肉から脂を抽出する。絞り出す。
タルン [⸣taruŋ]自動{PoS_2}溶ける。湿気で溶解する。
タルン [⸣taruŋ]自動垂れ下がる。緩む。
タルン [⸣taruŋ]自動滴り落ちる。水滴が落ちる。
ダルン [⸣daruŋ]自動{1}だれる。疲れる。疲労困憊する。ダ⸢リ⸣ルン[da⸢ri⸣ruŋ](だれる)ともいう。{1}⸣ダリティ ⸢ウーカラ⸣ヌ[⸣dariti ⸢ʔuːkara⸣nu](疲れて動けない)。
ダルン [⸣daruŋ]自動{2}緩む。たるむ。気持ちがゆるむ。
タルン ジリン [ta⸢run⸣ ʤiriŋ]誰も彼も。老年層の使用語。若年層は、ター⸢ンターン[taː⸢ntaːŋ](誰も彼も)という。
ダレーマ [da⸢reː⸣ma]赤米。在来種の稲。ダ⸢ネー⸣ママイ[da⸢neː⸣mamai]の転訛したもの。西表祖納ではダネーマイといっていた。玄米の色は赤く、粳米で芒の長さも長かった。粒の量も多い品種であったという。
タン [⸣taŋ]助動~した。完了の助動詞「たり」の転訛したもの。動詞の連体形に付く。
タン [⸣taŋ]助動{Exp_1}【活用形】。
タン [⸣taŋ]助動{Exp_2}さらに接続助詞⸣ティン[⸣tiŋ](~とも)が付く。
タン [⸣taŋ]助動{Exp_3}さらに格助詞⸣-ティ[⸣-ti](~と)に係助詞⸣-ヤ[⸣-ja](~は)の付いた形、⸣-テー[⸣-teː](~とは)がついて、引用部を強調する。
タン [⸣taŋ]たん(痰)。風邪を引くと気管から吐き出される黄色い粘液性の物質。老年層は⸣カサヌール[⸣kḁsanuːru](痰)ともいう。
タン [⸢taŋ]木炭。炭。昭和28年ごろまでは、鳩間島では前の砂浜で子供たちが暖房用の炭焼きをしたものである。西表島北岸から雑木を伐って島に運び、浜に深さ約1尺程の横穴を掘り、雑木を3尺ほどの高さに積み上げ、上に茅を被せて土を盛り、亀甲形に作る。入り口に火を焚きつけ、積み上げた木が燃え始めると入り口を塞ぐ。二、三日で積み上げた木全体が蒸し焼きにされた頃、排煙口も塞いで火を消す。一週間後には炭を取り出すことができた。
タン [⸣taŋ]助数{1}田畑の大きさを表す単位、反(300坪)。
タン [⸣taŋ]助数{2}布の大きさ表す単位(並幅で鯨尺2丈6尺)。標準語からの借用語。{1}⸢イッ⸣タン[⸢ʔit⸣taŋ](1反)。
タン [⸣taŋ]助数{2}ッ⸢スヌー⸣ヌ ⸢イッ⸣タン ⸢カイ⸣ クー[s⸢sunuː⸣nu ⸢ʔit⸣taŋ ⸢kai⸣ kuː](白生地<白布>1反買って来い)
ダン [⸣dan]{1}段。階段。
ダン [⸣dan]{2}棚。
ダン [⸣dan]{3}こと。場合。事態。くだり<件>。旨。
タンガ [⸢taŋga]{PoS_1}一人。独身。
タンガ [⸢taŋga]副助{PoS_2}~だけ。~ばかり。(副助)ニ⸢ビタン⸣ガー ⸢サンドー⸣シ ⸣ウキティ ウ⸢ヤ⸣ヌ ⸢テー⸣ナインツァン ⸢シー⸣バ[ni⸢bitaŋ⸣gaː ⸢sandoː⸣ʃi ⸣ʔukiti ʔu⸢ja⸣nu ⸢teː⸣nainʦaŋ ⸢ʃiː⸣ba](寝てばかりいないで<眠りだけしないで>、起きて親の手伝いでもしなさいよ)
タンカー [⸢taŋkaː]{1}真正面。真向かい。
タンカー [⸢taŋkaː]{2}生後一年目の誕生日。
タンカー [⸢taŋkaː]{3}等量。二等分。
タンカー [⸢taŋ⸣kaː]短気者。卑語。⸢タンキムヌ[⸢taŋkimunu](短気者)ともいう。
ダンカー [⸢daŋkaː]談合。交渉。談判。相談。
ダンカー スン [⸢daŋkaː suŋ]談判する。議論する。談合する。話し合う。
タンカーバイ [⸢taŋkaːbai]水と酒を半々に調合して薄めること。半々に混ぜ合わせて薄めること。酒を水と半々に割ること。
タンカーバキ [⸢taŋkaːbaki]山分け。折半。二等分。
タンカービリ [⸢taŋkaːbiri]対座。差し向かい。向かい合って座ること。
タンカーマザーシ [⸢taŋkaːmaʣaːʃi]等量配合。同等の量で混ぜ合わせること。
タンカーマチ [⸢taŋkaːmaʧi]遥拝。遠方の神仏に向かって供物を供えて祈願すること。
タンカーマンカー [⸢taŋkaːmaŋ⸣kaː]互いに向き合うさま。相対するさま。「手向ひ真向ひ」の義か。首里方言のtaNkaamaNkaa(相対するさま。向かい合うさま)の転訛したもの。
タンカーヨイ [⸢taŋkaːjoi]誕生日。生後一年目の誕生祝い。昔は、太陽が⸢アーリビラティダ[⸢ʔaːribiratida](東天の太陽<午前十時ごろ>)のうちに床の間に集まり、供物を⸢フン⸣ジン[⸢ɸun⸣ʤiŋ](根神)に供えて子供の健康と順調な発育祈願した。その後、床の間に飾ってある (i) すずり箱、(ii) そろばん、(iii) 本、(iv) 三味線、(v) 銭(男児の場合)等の前に連れて行き、(i)~(v) を取って遊ぶよう話しかけ、子供が最初に選んだ物によって、その子の将来の専門職業を推し量って楽しんだ。
タンガウヤ [⸢taŋga⸣ʔuja]片親。⸢一人親」の義。
タンガクラシ [⸢taŋgakura⸣ʃi]一人暮らし。
ダンガサ [⸢daŋga⸣sa]こうもりがさ(蝙蝠傘)。らんがさ(蘭傘。洋傘)の転訛したもの。⸣サナ[⸣sana](日傘。雨傘。からかさ)に対して蝙蝠傘をいう。新しく導入された傘で、鳩間島では一般家庭には普及していなかった。
タンガシ [⸢taŋga⸣ʃi]{1}一人で。
タンガシ [⸢taŋga⸣ʃi]{2}副助詞連語。~だけで。~のみで。体言に下接して、それと限る意味を表す。
タンガダチ [⸢taŋga⸣daʧi]独身者。「独り立ち」の義。
タンガッふァ [taŋgaffa]一人っ子。プ⸢スル⸣ッふァ[pu̥⸢suru⸣ffa](一人っ子)ともいう。
タンガナキ [⸢taŋga⸣naki]独り泣き。
タンガバライ [⸢taŋga⸣barai]独り笑い。思い出し笑い。ひとりえみ。
タンガプス [⸢taŋga⸣pu̥su]独身者。独り者。やもめ(寡婦)。やもお(寡男・鰥夫)。
タンガマリ [⸢taŋga⸣mari]一人っ子。「一人生まれ」の義。
タンガミドーンッふァ [⸢taŋgamidoːŋ⸣ffa]一人っ子娘。
タンガムニ [⸢taŋga⸣muni]独り言。「独りもの言い」の義。
タンガムヌ [⸢taŋga⸣munu]独り者。独身者。独身所帯。
タンキ [⸢taŋki]短気。標準語からの借用語。普通は、バ⸢タッ⸣ふァーン[ba⸢taf⸣faːŋ](怒りっぽい。⸢腹黒い」の義)という。
タンキムヌ [⸢taŋkimunu]短気者。
タング [⸢taŋ⸣gu]たご(担桶)。たごおけ。水や水肥を入れて運ぶ桶。「擔桶、たご、桶也」『和漢通用集』の転訛したもの。
タング [⸢taŋgu]炭俵。ススキを編んで作った俵。炭を入れて運ぶススキを編んで作った袋状の容器。グ[gu](籠)は「籠毛與美籠母乳<コモヨミコモチ> ふくしもよ~。万、1」の「籠」の義か。前接語の語尾の鼻音Nに融合同化して有声化したもの。
ダング [⸢daŋ⸣gu]道具。老年層のことば。⸢ドン⸣グ[⸢doŋ⸣gu](道具)と同じ
タングンジマ [⸢taŋgunʤima]山や川があって水田耕作を主とする島。古成層、第三期層などからなる島。石垣島、西表島、与那国島、小浜島など。ターグニ[taːguni] → タングン[taŋguŋ]の変化を経たものであろう。⸢ヌングンジマ[⸢nuŋgunʤma](畑作を主とする島。竹富島、黒島、鳩間島、波照間島、新城島など)の対義語。
タンコー [⸣taŋkoː]炭坑。西表島には大正期に、ナ⸢ミノ⸣ウエタンコー[na⸢mino⸣ʔuetaŋkoː](波之上炭坑。船浦の対岸、⸢サーラ⸣ミジ{SqBr}⸢saːra⸣miʤi{/SqBr}<ひない滝>の近くで採炭し、⸣シザバナリ{SqBr}⸣ʃiʣabanari{/SqBr}<下離>から積み出した)があった。昭和期になって、ウ⸢タ⸣ラタンコー[ʔu⸢ta⸣rataŋkoː](宇多良炭坑)、⸣ノダタンコー[⸣nodataŋkoː](野田炭坑)が浦内地区で開設された。ウ⸢タ⸣ラ[ʔu⸢ta⸣ra]や、ウ⸢ランザ⸣キ[ʔu⸢ranʣa⸣ki](宇奈利崎)、ニ⸢シ⸣ミジ[ni⸢ʃi⸣miʤi]辺りの炭坑で採炭した石炭を白浜港へ運び、そこで台湾航路の定期船、⸢ゾーキ[⸢ʣoːki](蒸気船)に積み込まれた。
タンコーマーヤー [⸣taŋkoːmaːjaː](動)昆虫。かまきり(蟷螂)。若年層、幼児語。大人、老年層は、⸢サン⸣トゥルサー[⸢san⸣turusaː](カマキリ<蟷螂>)という。子供は蟷螂を捕らえて、⸢タンコーマーヤー[⸢taŋkoːmaːja](炭坑はどこか)と唱えて遊んだ。蟷螂は前肢の捕獲肢の鎌を振りあげるように動かすので、あたかも子供の呼びかけに応じて方向を指し示しているように思い、それを面白がって遊んだものである
タンザ [⸣tanʣa]どいつ(何奴)。なにやつ。どやつ。不定称<単数>の卑称。
タンザヌメー [⸣tanʣanumeː]どいつらめ。どやつらめ。⸣メー[⸣meː](接尾語)は卑称の複数形。「前」の転訛したものか。⸣タンザンメー[⸣tanʣammeː]の丁寧な言い方
タンザンメー [⸣tanʣammeː]どいつら。どやつら(何奴等)。不定称<卑称>の複数形。ぞんざいな言い方。
タンシ [⸢taŋ⸣ʃi]たんす(箪笥)。
ダンシ [⸢daŋ⸣ʃi]はやばやと(早々に)。早く。
ダンシキビリ [⸢daŋʃikibiri]あぐら(胡坐)。足を組んでどっかと座ること。
ダン スクルン [⸣dan su̥⸢ku⸣ruŋ]段をなす。「段を作る」の義。
タンダーラ [⸢tandaːra]炭俵。
ダンダン [⸢dan⸣daŋ]いろいろ。さまざま。
ダンタンシ [⸢dantaŋ⸣ʃi]足音を高く踏み鳴らすさま。勇ましく。
ダンダンシ [⸢dandaŋ⸣ʃi]さっさと。急いで。ぐずぐずしないですばやく。多くの場合文末の命令形と照応する表現形式をとる。
ダンチガイ [⸢dan⸣ʧigai]段違い。桁違い。桁外れ。標準語からの借用語。
タンディ [⸢tan⸣di]なにとぞ。どうか。願わくば。ひたすら良い結果を祈る。「頼うで」の転訛したもの。「~汝<いまし>を多能美<タノミ>母に違ひぬ。万、3359」の転訛したものか。
ダンティ [dan⸢ti]{1}直ちに。すぐ。さっそく。即座に。大至急。
ダンティ [dan⸢ti]{2}どっかと。どっしりと。
ダンティ [dan⸢ti]{3}ぷっつんと。ぷっつりと。きっぱりと。
タンティー [⸢tan⸣tiː]探偵。密かに他人の事情や秘密、内情を探ること。スパイ。密偵。まわしもの。
タンディカンディ [⸢tan⸣dikandi]どうか、どうか。なにとぞ、なにとぞ。⸢タン⸣ディのABCDBC型の重言。
タンディトートゥ [⸢tan⸣ditoːtu]恐れ多くも、お願い申し上げます。謹んでお願い致します。願わくば。なにとぞ。神仏や相手にに対し、ひたすらに請い願い、良い結果を{齎}{モタラ}すよう祈る際に用いる。⸢タン⸣ディ[⸢tan⸣di]は「頼みて」の転訛したものか。⸢トートゥ[⸢toːtu]は「かしこし<畏し。尊し>」の転訛したものか。
タンディトートゥ ガラクトートゥ [⸢tan⸣di⸢toːtu⸣ ga⸢ra⸣kut⸢oːtu]畏れ多くもお願い申し上げます。謹んでお願い致します。ガ⸢ラ⸣クトートゥは、⸢タン⸣ディトートゥ[⸢tan⸣ditoːtu]の対句
タンデイル [⸢tandiru]木炭入れ。炭箱。「炭籠」の義。
タンティン [⸣tantiŋ]~たとしても。~ても。助動詞⸣タン[taŋ](た)に接続助詞⸣ティン[⸣tiŋ](ても)が付いた形。
タントゥ [tan⸢tu]沢山。たんまり。どっさり。石垣方言からの借用語。
ダントゥク [⸢dan⸣tu̥ku]仏壇の下の押入れ。裏座の方に引き戸があり、それを開閉して祭祀用の什器類、貴重な調度品、その他の家具類を収納していた。
ダンドゥリ [⸢dan⸣duri]段取り。仕事や物事の組み立て。仕事の順序、手順。物事の準備。
ダンナーマ [dan⸢naː⸣ma]小さな段。-マ[-ma](指小辞)。ある語に付加してその語の示すものより更に小さい観念、親愛の情を示す接辞。鳩間方言では、語末がCVNの場合、指小辞-マ[-ma]が下接すると、連声現象をおこして-ナーマ[-naːma]となる。
タンバク [⸢tambaku]石炭箱。貯炭箱。石炭を貯えておく箱。
ダンパチ [⸢dam⸣paʧi]断髪。散髪。調髪。理髪。
ダンパチ シミルン [⸢dam⸣pḁʧi ʃi⸢miruŋ]散髪させる。断髪させる。
ダンパチ シムン [⸢dam⸣pḁʧi ʃi⸢muŋ]散髪させる。断髪させる。「断髪摘む」の義。
ダンパチヤー [⸢dam⸣pḁʧijaː]床屋。理髪店。「断髪屋」の義。
タンビ [⸢tambi]たび(度)。その時は必ず。その時はいつも。⸢~ごとに、~たびに」の強調表現。標準語からの借用語か。
タンビー [⸢tambiː]炭火。
ダンプ [⸣dampu]ランプ。老年層の言葉。若年層はランプという。外来語ランプ(Lamp<洋灯>)の借用語。⸣ランプ[⸣rampu](石油ランプ)は、灯油を燃料とする照明器具。ア⸢バ⸣スブ[ʔa⸢ba⸣subu](ガラス製の油壺)、フ⸢ヤ[ɸu⸢ja](ガラス製の火屋)、⸣カサ[⸣kḁsa](セルロイド製の笠)が針金の枠に組み込まれており、桁柱に吊るして用いる照明器具。
ダンブル [⸢dam⸣buru]漁船の舷側に張り出した幅約30センチの棚。⸢ダン⸣バラ[⸢dam⸣bara](舷側の棚)ともいう。
ダンベー [⸢dam⸣beː]{1}だんべえぶね(団平船)。西表島浦内港や白浜港から石炭を石垣島へ運んだ船。
ダンベー [⸢dam⸣beː]{2}太った大きな女。でぶ。比喩表現。
タンミー [⸢tammiː]短命。首里方言からの借用語か。普通は、パ⸢ヤ⸣ジニ[pa⸢ja⸣ʤini](早死に)という。⸢チョーミー[⸢ʧoːmiː](長命)の対義語。
タンムヌ [⸢tammunu]反物。
タンメー [⸢tam⸣meː]老翁。おじいさん。沖縄本島から鳩間島に移住した人の家庭で話されている言葉。首里方言のtaNmee(0)(士族の祖父)からの借用語が転訛したもの。
タンヤキ [⸢taɲjaki]炭焼き。
タンヤキプス [⸢taŋjakipu̥su]炭焼き。炭を焼く人。