鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
-マ [⸣-ma]接尾指小辞。「小。小さいもの、可愛いらしいもの」等を表す。
マー [⸢maː]どこ(何処)。不定の場所を表す。石垣方言、⸢ジゥマ[⸢ʣïma](どこ。いずこ。「いずま」の意)『石垣方言辞典』の転訛したもの。⸢ジゥマ[ʣïma]は、「梅の花散らくは伊豆久<イヅク>~。万、823」の⸢イヅ」に「磯の麻由<マユ>~。万、3619」の「間(所、空間)」が下接し、融合転訛して形成されたもの。「Izzucu.イヅク(何処)どこ、または、どの場所」『邦訳日葡辞書』と同じ。
マー [⸣maː]親族名詞の孫(本人の孫)。普通は、⸣マーッふァ[⸣maːffa](孫。「孫子」の義)という。
マー [⸢maː]{1}魔。妖怪。単独では用いず、熟語として用いられる。
マー [⸢maː]{2}副詞。ひどく(酷く)。異常に(⸢魔が付いて」の義)。
マー [⸢maː]更に。そのうえ。もう。今一つ。
マー- [⸢maː-]接頭まことの。真実の。本当の。下に付く語を強調表現する。
マーイーシ [⸢maːʔiːʃi](植)海草の名。ツノマタ。普通は⸢イー⸣シ[⸢ʔiː⸣ʃi]という。
マーイミ [⸢maːʔimi]正夢。夢に見たことが現実に起こる夢。
マーウール [⸢maːʔuːru](植)マクワウリ。しろうり。きゅうりに似た瓜で、食用となる。「真瓜(まうり)」『石垣方言辞典』の転訛したもの。
マーウイ [⸢maːʔui]真上。
マーウムティ [⸢maːʔumuti]まおもて(真面)。真正面。真向かい。
マーガ [⸢maː⸣ga]農具の一種。田植えの前に田の土を{均}{ナラ}して、水田に水が均等に溜まるようにする農具。巾約15センチ、長さ約約160センチの、木材を切り割って板状にしたものに柄をつけてハンドルにし、牛に引かせて田の土を均した。
マーガツ [⸢maːga⸣ʦu](動)魚の名。和名、スマ(体長約80センチ)。和名、ハガツオ(体長約60センチ)。漁船が沖から帰港する際、または石垣島へ回航する際に、パ⸢ニビキ[pa⸢nibiki](引き縄釣り。ハ⸢ニビキ{SqBr}ha⸢nibiki{/SqBr}ともいう)をして釣り上げることがあった
マーカマー [⸣maːkamaː]どこそこ。至る所。随所。あちらこちら。⸣マー[⸣maː](何処)と⸣カマー[⸣kamaː](あそこ)を重ねた語。具体的に指示されない場所。
マーガヤ [⸢maːgaja](植)、茅。チガヤ。「真茅」の義。「萓、和名、加夜<かや>」『和名抄』の転訛したもの。ナ⸢ビン⸣フタ[na⸢biŋ⸣ɸu̥ta](鍋蓋)や⸢フイ⸣バ[⸢ɸui⸣ba](茅で編み上げた穀物入れ)などを編むのに用いる長い茅。茅の叢中より、約150センチに成長した茅を選んで根っこから刈り取り、二、三日陰干しにして柔らかくなった頃に直径約1センチの太さに束ねて、⸢マー⸣ニ[⸢maː⸣ni]の皮や⸢クー⸣ジ[⸢kuː⸣ʤi]の皮で巻き締めながら編み上げて作る。
マーキ [⸢maː⸣ki]副助まで。動作・作用の到達するところ、範囲、極端な程度を表す。上接語の末尾が鼻音や狭母音[i]で終わる場合は、やや⸢マー⸣キ[⸢maː⸣ki]となる傾向が認められる。それ以外は⸢バー⸣キ[⸢baː⸣ki](まで)となるといえるが、[b]と[m]は自由変異となる場合も認められる。
マーキ [⸢maː⸣ki]接尾~かね(兼ね)る。~することができない。~することがむずかしい。他動詞の連用形に付いて不可能、困難を表す。
マーキー [⸢maːkiː]薪。わりき。燃料にする木。雑木を長さ約30センチに切り、斧で割って乾燥させたたきぎ。まき(薪)以外の燃料には、⸢ユシ⸣キ[⸢juʃi̥⸣ki](枯れたススキ)、ウ⸢ジ⸣ル[ʔu⸢ʤi⸣ru](枯れた小枝)がある。サツマイモをふかす<蒸す>際にはフ⸢ク⸣ジ[ɸu̥⸢ku⸣ʤi](木の枯れ葉やススキ、ソテツの枯れ葉など)なども利用された。終戦後1954年頃まで、鳩間島や西表島から薪を束ねて石垣島へ輸出する商売もあったが、石油の時代になって消滅した。
マーキム [⸢maːkimu]本心。本気。真心。愛情。「真」に「Qimo.キモ(肝・胆)肝臓、脾臓など」『邦訳日葡辞書』が付いて形成されたものが転訛し、意味派生した形。
マーギラ [⸢maːgira](動)シャコ貝の名。ヒレジャコ。シャゴウ。水深4~5メートルの海底の砂の上や枝珊瑚の中に棲息している。殻の長さ20~25センチ。身はしまって美味しい。最近は個体数が激減している。イ⸢シギラ[ʔi⸢ʃigira](ヒメジャコ)は珊瑚礁の岩の中に穴を開けて棲息しており、潮干狩りの際、女性たちがよく漁獲する。殻の長さは約10センチ。サ⸢ク⸣ラギラ[sḁ⸢ku⸣ragira](シラナミ)は細長い殻をもち、円筒状に近い形をしている。岩礁の表面に付着している。
マーサ [⸢maː⸣sa]人名。成人男子には⸢マー⸣サザー[⸢maː⸣saʣaː](眞佐兄、「眞勢兄」とも書く)、成人女性には⸢マー⸣サンマー[⸢maː⸣sammaː](マーサ姉さん)という。
マーザ [⸢maː⸣ʣa]侵入禁止の印しに木や竹をX形に結んで立てたもの。
マーサナイ [⸢maːsanai]六尺ふんどし(褌)。「眞褌」の義。
マーザピー [⸢maː⸣ʣapiː]おにび(鬼火)。きつねび。霊魂の火。火の玉。墓地などで闇夜に燃えて空中に浮遊する青白い火。
マーサマリ [⸢maːsamari]眞結び。本結び。こま結び。結んだ紐が並行の形になるような結び方。「Mamusubi.マムスビ(真結び)二重結び」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マーシ [⸢maːʃi]接尾~置きに。時間を表す語に付いて、それだけずつの間隔を置く意を表す。「~回し」の義。
マージー [⸢maːʤiː]くろつち(黒土)。{腐植土}{フ|ショク|ド}。「真地」の義か。鳩間島では、カ⸢ニク⸣ジー[ka⸢niku⸣ʤiː](砂土壌。堆積土壌)、ア⸢ガミツァ[ʔa⸢gamiʦa](赤土の粘土)、イ⸢ノンジー[ʔi⸢nonʤiː](砂地)があり、それらに対立する土地。農耕に最適の土壌。
マーシーシ [⸢maːʃiːʃi]肉。赤肉。「真・肉」の義。接頭語⸢マー[⸢maː](真)に、「肉、之之<しし>肌膚之肉也」『和名抄』が下接して形成された合成語。
マーシキムヌ [⸢maːʃi̥ki⸣munu]{1}魔に取り付かれたように、異常な行動をとる者。異常に取り乱した者。素行不良の者。ヤクザ者。「魔付き者」の義。
マーシキムヌ [⸢maːʃi̥ki⸣munu]{2}親に反抗する子。きかんぼう。素行不良。反抗する者(卑称)。
マーシヌキル [⸢maːʃinukiru]「回し{鋸}{ノコ}」の義。桶の底や⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](サバニ。板船)の底板を接合するために、幅の狭い鋸を入れて挽きながら接合部を密着させ、水漏れを防ぐために用いる鋸。
マーシフニ [⸢maːʃi⸣ɸuni]風上に向かってジグザグ航行すること。マ⸢ギフニ[ma⸢giɸuni](曲げ舟)ともいう。北風が吹いて鳩間島へ直線的に帰帆できないとき、向かい風の約45度斜めに一定距離帆走し、次に反対方向へ約45度斜めに一定距離帆走しながら目的地へ接近する航法。⸢プーザンプー[⸢puːʣampuː](片帆。「帆桟帆」の義か)は横風をはらませ、その力を推進力に変換するため、帆を船の右方に寄せてある。船頭は風力に合わせながら帆の右端につけたティンナー(手縄)を操り、楽に操船することが出来る。
マーシ ミルン [⸢maːʃi⸣ miruŋ]{覗}{ノゾ}き見る。{伺}{ウカガ}い見る。垣間見る。「回し見る」の義。
マーシムヌ [⸢maːʃimunu]回し者。{間者}{カン|ジャ}。
マーシムヌ [⸢maːʃimunu]回転させる玩具。「回し物」の義。あだん葉で作った風車やブ⸢ドゥ⸣ク[bu⸢du⸣ku](マガキガイ)で作った{独楽}{コ|マ}を回して遊んだ。
マーシヤドゥ [⸢maːʃijadu]西洋風の開き戸。戸の片面の桟に{蝶番}{チョー|ツガイ}を付け、それを戸口の柱に固定し、もう片方の桟に取っ手を付けて開閉する様式の戸。「回し屋戸」の義。とびら(扉)。ドア(door)。ピ⸢キヤドゥ[pi̥⸢kijadu](引き戸)の対義語。
マーシラ [⸢maːʃira]真正面の顔。対面すること。真顔。「マー(真)・シラ(面)」の転訛。
マーシンザ [⸢maːʃinʣa](植)甘蔗。サトウキビの品種名。黒糖製造用のサトウキビ。タイケイ種。茎が太く、節と節の間隔が比較的に長く、糖度の高い樹液を多く含んでいた。法事の供え物や生食にも供された。他に⸢コー⸣シシンザ[⸢koː⸣ʃiʃinʣa](菓子サトウキビ)や、在来種のア⸢ガシンザ[ʔa⸢gaʃinʣa](幹や茎の皮が紫色のサトウキビ)があった
マース [⸢maː⸣su]塩。「真塩」の義。塩には{穢}{ケガレ}を{祓}{ハラ}い清め、長寿延命を司る霊力があると信じられている。シゥ⸢カラマース[si̥⸢karamaːsu](盛り塩<力塩>。嘉例の塩)、カ⸢ニマース[ka⸢nimaːsu](黄金塩)は元旦や祝儀、祈願の際に床の間に供え、飾って健康を祈願し、礼拝する人にひとつまみずつ授けて嘉例を祈願する。また、葬儀に参列した人は自宅に入る際は塩で不浄を祓い落す。道で悪霊に襲われると戸口で塩を{撒}{マ}いて悪霊祓えをする。
マースカギン [⸢maː⸣sukagiŋ]塩加減。塩の付け具合。しおあんばい(塩塩梅)。
マースカミ [⸢maː⸣sukami]塩壷。塩を入れておく壷。「塩甕」の義。
マースクン [⸢maː⸣su̥kuŋ]自動魔が取り付いたように悪くなる。状態が余計にひどくる。
マースシキ [⸢maː⸣suʃi̥ki]塩漬け。⸢スー⸣シキ[⸢suː⸣ʃi̥ki](塩漬け)ともいう。
マースダーラ [⸢maː⸣sudaːra]塩俵。カ⸢マ⸣ジー[ka⸢ma⸣ʤiː](稲藁を二重に編んで造った、塩をいれる袋)に塩を入れた塩俵。
マース タクン [⸢maː⸣su tḁ⸢kuŋ]塩を焼く。
マース ッふァースン [⸢maː⸣su f⸢faːsuŋ]{1}塩をまぶ<塗>す。魚や蛸、{鱶}{フカ}をさばい<捌い>て濃く塩を{塗}{マブ}し、一晩樽に詰めた後、十分に天日乾燥させて⸢ソー⸣ギリ[⸢soː⸣giri](魚肉の乾物)製品に仕上げる。
マース ッふァースン [⸢maː⸣su f⸢faːsuŋ]{2}塩で{祓}{ハラ}い清める。不吉なことを言ったり、不都合なことを言う者に対して、{諌}{イサ}めて言う表現。
マースディ [⸢maːsudi]広袖。四角の形になった袖。⸢ティップスデ[⸢tippusudi](筒袖)やフ⸢クル⸣スディ[ɸu̥⸢kuru⸣sudi](袂袖。<袋袖>の義)に対していう『石垣方言辞典』という。
マースニー [⸢maːsu⸣niː]塩煮。塩味だけで煮ること。
マース パンクン [⸢maː⸣su ⸢paŋ⸣kuŋ]塩を撒く。悪霊<邪気>を祓うために、または不浄を祓い清めるために塩を撒いた。
マースヤー [⸢maː⸣sujaː]塩焼き小屋。「塩屋」の義。
マースン [⸢maːsuŋ]他動{1}回す。回転させる。
マースン [⸢maːsuŋ]他動{2}エンジンをかける。
マースン [⸢maːsuŋ]他動{3}船を回送する。
マーズン [⸢maːʣuŋ]{PoS_1}一緒に。共に。
マーズン [⸢maːʣuŋ]{PoS_2}{1}同時。同時期。
マーズン [⸢maːʣuŋ]{2}同級。同年。
マーズンシ [⸢maːʣuŋ⸣ʃi]一緒に。一緒になって。
マーダーッサー ナーヌ [⸢maːdaːssaː naː⸣nu]気分が正常でない。気分が勝れない。不元気である。
マーダーッサン [⸢maːdaːs⸣saŋ]{1}まとも(真面)である。人格的にきちんとしている。
マーダーッサン [⸢maːdaːs⸣saŋ]{2}気分が正常である。元気である。
マータキ [⸢maːtaki]同等。同程度。対等の高さ。同じ高さ。「ま・たけ(真丈)」の義。ユ⸢ヌ⸣タキ[ju⸢nu⸣tḁki](同じ高さ)ともいう。
マータク [⸢maːtaku](植)和名、ダイサンチク(泰山竹)。竿や天秤棒に利用された。
マータマシ [⸢maːtamaʃi]思慮分別。精神。根性。「真魂」の義。
マー タンガ [⸢maː taŋ⸣ga]もう一人。
マータンカー [⸢maːtaŋkaː]真向かい。
マーチ [⸢maː⸣ʧi](人名)女性の名。
マーッサール [⸢maːssaː⸣ru]間を取るもの。間を{塞}{フサ}ぐ物。部屋を塞ぐもの。部屋のさまたげ。障害物。
マーッふァ [⸣maːffa]孫。男女共に⸣マーッふァ[⸣maːffa]という。
マーッふァイムヌ [⸢maːffai⸣munu]場所をとるもの。広い面積を占有するもの。「間食いもの」の義。
マーツン [⸢maː⸣ʦuŋ]他動{1}期待する。請い願う。待ち望む。
マーツン [⸢maː⸣ʦuŋ]他動{2}待ち望んで間に合わせる。
マーティジ [⸢maːtiʤi]てっぺん。頂上。頂。「マ(真)・ティジ(頂)」の義。
マーティダ [⸢maːtida]灼熱の太陽。炎熱の陽光。ア⸢ガティダ[ʔa⸢gatida](灼熱の太陽。真っ赤な太陽)ともいう。
マーティ ナーン [⸣maːti ⸢naː⸣ŋ]ところ構わず。あたり一面に。「何処とて無く」の義。
マードゥー [⸢maːduː]完全な体。健康体。「マー(真)・ドゥー(胴)」の義。⸢マー[⸢maː](真。本物)が名詞、⸣ドゥー[⸣duː](身体。胴)に付いて形成された複合名詞。
マー トゥルン [⸣maː ⸣turuŋ]広い面積を必要とする。場所をとる。「間を取る」の義。
マーナサ [⸢maːna⸣sa]女性の名。
マーナダカ [⸢maːnadaka]まったく同じ高さ。ナ⸢ダ⸣カ(同じ高さ)は「ヌ[nu](の)・タキ[taki](丈)」の融合変化したものか。
マーナチ [⸢maːnaʧi]真夏。ン⸢ガナ⸣チ[ʔŋ⸢gana⸣ʧi]({酷暑}{コク|ショ}の夏。「苦夏」の義)ともいう。
マーニ [⸢maː⸣ni](植)クロツグ(桄榔)。ヤシ科の常緑低木。高さは2~3メートルに達する。長大な葉が幹頂につき、茎には黒色の強力な⸢フー⸣カラ[⸢ɸuː⸣kara](網状の繊維)が絡み付く。これが⸢フー⸣カラジナ[⸢ɸuː⸣karaʤina](くろつぐの繊維の綱)の原料となる。マーニは⸢ウイヌ⸣ウガン[⸢ʔuinu⸣ʔugaŋ](友利御嶽)やパ⸢カヤマ[pḁ⸢kajama](墓山)に密生している。葉柄の表皮は硬いが柔軟性があり、加工しやすいので、⸢クー⸣ジ[⸢kuː⸣ʤi](トウズルモドキ)と共に⸢フイ⸣バ[⸢ɸui⸣ba](穀物入れ)を編む際に陰干しにした茅を引き締めるのに使用する。
マーニヌ ウディ [⸢maːni⸣nu ⸣ʔudi]クロツグ(桄榔)の{葉柄}{ヨウ|ヘイ}。「クロツグの腕・枝」の義。直径2~3センチ、長さ1~1.5メートル。表皮は{蝋状}{ロウ|ジョウ}の光沢を有し、硬いが薄く削ると柔軟生がある。髄の部は柔らかく、白い発泡スチロール状の材質で{脆}{モロ}い。この表皮でフイバを編む。
マーニンギン [⸢maːniŋgiŋ]{1}真人間。まともな人。
マーニンギン [⸢maːniŋgiŋ]{2}幽霊でなく本当の人間。
マーヌムヌ [⸢maːnu⸣munu]間食。おやつ。「間の物」の義。
マーパカラーサン [⸢maːpakaraː⸣saŋ]しっかりしている。信用できる。まっとう(真っ当)である。
マーパカラサー ナーヌ [⸢maːpakarasaː naː⸣nu]まっとう(真っ当)でない。しっかりしていない。きちんとしていない。信用できない愚かである。利口者でない。
マーパカラサン [⸢maːpakara⸣saŋ]真っ当である。しっかりしている。信頼できる
マーバサ [⸢maːbasa](植)芭蕉。実の生る芭蕉。「真・芭蕉」の義。
マーパダカ [⸢maːpadaka]真っ裸。マ⸢ルパダカ[ma⸢rupadaka](丸裸)ともいう。
マーパブ [⸢maːpabu]毒蛇。「蛇、倍美<へみ>、一云久知奈波、日本紀私記云、乎呂知、毒虫也」『和名抄』の転訛したものか。「マー(真)・パブ(蛇、<波布>)」の義。
マービ [⸢maːbi]まね(真似)。模倣。「俲・傚、ナラフ・マナブ」『類聚名義抄』、「Manebi,u,oˆda.マネビ、ブ、ゥダ(まねび、ぶ、うだ)まねをする、似せる」『邦訳日葡辞書』の転訛したものか。
マービ スン [⸢maːbi suŋ]真似をする。
マービン [⸢maː⸣biŋ]もっと。さらに。
マーブー [⸢maːbuː](植)からむし(苧麻)。「真麻」の義。普通は⸣ブー[⸣buː](からむし<苧麻>)という。この繊維から⸣ブーキン[⸣buːkiŋ](麻衣)を作った。御用布もこの繊維で織り上げて納めた。
マープスマ [⸢maːpu̥suma]真昼間。昼のさかり。昼の最中。
マーフユ [⸢maːɸuju]真冬。冬の最中。
マーホール キシムヌ [⸢maːhoːru⸣ ki̥⸢ʃi⸣munu]まったく思慮分別のない者。まったく気のきかない者。とんちきやろう(頓痴気やろう)。まぬけ。とんま。
マーマチ [⸢maːmaʧi](動)魚名。おおひめ(はまだいの仲間)。
マー ミーシキ [⸢maː miːsi̥ki]{再来月}{サ|ライ|ゲツ}。もう三ヶ月。三ヵ月後。
マー ミーティ [⸢maː miː⸣ti]{再来年}{サ|ライ|ネン}。明後年。「もう三年」の義。
マーミジ [⸢maːmiʤi]真水。淡水。天水。
マームスビ [⸢maːmusubi]本結び。二重結び。解けない結びかた。「Mamusubi.マムスビ(真結び)二重結び.Mamusubini suru(真結びにする)二重むすびにする」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マームティ [⸢maːmuti]着物の表。真正面。「まおもて(真表)」の義。
マームニ [⸢maːmuni]本心から出た言葉。本当の気持ち。真のことば。
マームヌ [⸢maːmunu]毒蛇。ほんもの。⸢真物」の義。
マー ユーティ [⸢maː juː⸣ti]もう四年。再来年の次の年。
マーユイ [⸢maːjui]女性の伝統的な日常の髪の結い方。きちんとした髪の結い方。洗髪をして乾かした後、きちんと髪を結った。結願祭などにはイ⸢ローラ[ʔi⸢roːra](かもじ。入れ髪)を足し添え、ウ⸢ブガマ⸣ジ[ʔu⸢bugama⸣ʤi](大髪結い)に結って伝統的古典民俗舞踊を上演した。
マーユナカ [⸢maːjunaka]真夜中。
マーラ [⸣maːra]場所を表す。辺り。付近。周辺。周囲。
マーラ [⸣maːra]{2}およその時を表す。~の頃。
マーラ [⸣maːra]何処から。[maː-kara] → [maːhara] → [maːra] と転訛したもの。
マーラ [maː⸢ra]連体ずっと。はるかに。空間的な隔たりが大きいさま。カー⸢マ[kaː⸢ma](ずうっと。はるか)は⸢空間的、時間的な隔たりの大きいさま」に用いられるが、マー⸢ラ[maː⸢ra]は空間的表現に用いられる。
マーラシフチ [⸢maːraʃiɸu̥ʧi]臨終。「死に目、死に際」の敬語。普通は、シ⸢ニミー[ʃi⸢nimiː](死に目)という。
マーラスン [⸢maːrasuŋ]自動亡くなる。亡くなられる。「死ぬ」ことを婉曲に言う敬語。「~高庭の駅家於て身故也<ミ・マカリキ>。万、886<題詞>」の「罷り(死去する)」が → [makari] → [mahari] → [maːri] と変化した動詞の未然形に助動詞⸣スン[suŋ](する)が付いて形成されたものか。
マーラン [⸣maːraŋ]馬艦船<マーラン>。近世琉球の大型船の一つ。船身が約14.2メートルで、進貢船や楷船の半分以下。中国のジャンク船タイプの帆船。⸣マーランシン[⸣maːramʃiŋ]、⸣マーランブニ[⸣maːrambuni]ともいう。
マーランブニ [⸣maːrambuni]馬艦船。琉球王国の官船の一種。中国のジャンクタイプの船。⸢船体を黒、赤で彩色し、舳先には両側に目玉を描いた帆船。蒸気船が導入される以前は、沖縄、八重山間に就航していた官船で、⸢ヤンバル⸣シン[⸢jambaru⸣ʃiŋ](山原船)ともいう」『石垣方言辞典』。⸣マーラン[⸣maːraŋ]の項参照
マーリザ [⸢maːri⸣ʣa]茅葺屋根の{甍}{イラカ}を固定するティ⸢ブ⸣ク[ti⸢bu⸣ku](竹串。「手矛」の義)。甍を固定するために、屋根の最上部(棟)の前面と背面に木の矛(串)を数本ずつ斜めに差し込んで、それに⸢フー⸣カラジナ[⸢ɸuː⸣karaʤina]({棕櫚}{シュ|ロ}で{綯}{ナ}った綱)のカ⸢キ⸣ナー[kḁ⸢ki⸣naː](掛け縄)を掛けて引き締めるのに用いるティ⸢ブ⸣ク[ti⸢bu⸣ku](手矛)のこと。直径約2、5センチ、長さ約3メートル程の若木を使用した。
マーリマーリ [⸢maːrimaː⸣ri]回り回って。次々に移り回って。巡りめぐって。
マール [⸢maː⸣ru]まり(毬)。
マール [⸢maːru](名){1}周囲。まわり。
マール [⸢maːru]{2}見回り。
マール [⸢maːru]{3}あたり。近所。付近。近辺。
マール [⸢maːru]接尾{1}~回り。ある地点やコースをまわって行くことを表す。
マール [⸢maːru]接尾{2}~おき。
マールマール [⸢maːrumaː⸣ru]{PoS_1}季節季節。時々。「回り回り」の義。
マールマール [⸢maːrumaː⸣ru]{PoS_2}たまには(偶に)。時として。時には。時おり。
マールマールーシ [⸢maːrumaːruː⸣ʃi]代り番こで。代わる代わるで。輪番で。普通は⸢カールカール⸣シ[⸢kaːrukaːru⸣ʃi](代り番こで)という。
マールン [⸢maːruŋ]自動{1}回る。めぐる。回転する。
マールン [⸢maːruŋ]自動{2}エンジンが起動する。
マールン [⸢maː⸣ruŋ]接尾~ぐむ。~を含む。
マーレー [⸢maːreː](地)船浦湾の南東最奥部にマーレー川があり、その河口部一帯をいう。寄合家の水田があった。
マーレーガーラー [⸢maːreːgaːraː]船浦湾南東奥部にある⸢マーレー[⸢maːreː]にある川の名。⸢マーレータバル[⸢maːreːtabaru](マーレーの水田地帯)の水源となっている
マーレーコーレー [⸢maːreː⸣koːreː]曲がりくねって。
マーレーコーレー [⸢maːreː⸣koːreː]{2}あちら回り、こちら回りして。あちらこちら回って。
マーンカマーン [⸣maːŋkamaːŋ]どこもかしこも。至るところ皆。
マーン ナーカ [maː⸢n naː⸣ka]何処か。ある所。
マー ンベーマ [⸣maː ʔm⸢beːma]もう少し。もうちょっと。マ行音に同化されて、⸣マー ン⸢メーマ[⸣maː ʔm⸢meːma](もう少し)ともいう。
マー ンメーマ [⸣maː ʔm⸢meːma]連・副もう少し。⸣マー ン⸢ベーマ[⸣maː ʔm⸢beːma](もう少し)ともいう。⸢マー[⸢maː]は、「ma.マ(ま・真)すなわち、Mata(また)さらにその上に.Mafitotçu.(ま一つ)さらに一つ」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マー ンメーマ スカー [⸣maː ʔm⸢meːma⸣ su̥kaː]連・副すんでのところ(既の所)で。もう少ししたら。ほとんど~のところ。⸣マー ン⸢ベーマ⸣ スカー[⸣maː ʔm⸢beːma⸣ su̥kaː](もう少しのところで。すんでのところで)、⸣マー ン⸢ベー⸣スカー[⸣maː ʔm⸢beː⸣su̥kaː](すんでのところ<既の所>で)ともいう。「もう少ししたら」の義。
マイ [⸣mai]{1}空間的な前。前方。物の正面。「~取り上げ麻敝尓於吉<マヘニオキ>~。万、4129」の義。
マイ [⸣mai]{2}時間的な前を表す。
マイ [⸢mai]{1}米。米穀。呉音系統の語。「米、姑米」『琉球館訳語』とある。ム⸢チマイ[mu⸢ʧimai]({糯米}{モチ|ゴメ})、サ⸢ク⸣マイ[sḁ⸢ku⸣mai](粳米)がある。
マイ [⸢mai]{2}稲。
マイ [⸣mai]接尾(数)。枚。紙や皿など薄く平たいものを十一枚以上数える際に用いる単位。標準語からの借用語。老年層の人は、十枚までは⸣-イラ[⸣-ira](~枚。「平、此れをば田比羅(ヒラ)という」『紀、齋明五年』の転訛したものか)を用いるのが普通である。
-マイ [⸣-mai]接尾敬意を表す。様。「前」の転訛したもの。
マイアーシ [⸢maiʔaːʃi]稲の脱穀。
マイ アースン [⸢mai ʔaːsuŋ]稲を脱穀する。
マイイビ [⸢maiʔibi]田植え。「稲植え」の義。
マイウチ [⸢mai⸣ʔuʧi]鍛冶屋の大きな金槌を打つ人。「前打ち」の義。
マイガキ [⸢maiga⸣ki]前掛け。前垂れ。着物の汚れを防ぐため、体の前面の胸部から膝までに掛けて着用する布。エプロンの一種。浜辺でカツオの頭を切り、⸢シーゾー⸣ヤー[⸢ʃiːʣoː⸣jaː](鰹節製造工場)でカツオを三枚下ろしにして、さらにヨ⸢ツ⸣ワリ[jo⸢ʦu⸣wari](四つ割り)にし、煮釜に入れ、煮あがったカツオからバ⸢ラ⸣ヌキ[ba⸢ra⸣nuki](小骨抜き)をし、シ⸢ル⸣ク ッ⸢ふァーシ[ʃi⸢ru⸣ku f⸢faːʃi](魚肉を練ったもので鰹節の形を補正する)などの作業をするが、⸢マイガ⸣キ[⸢maiga⸣ki]はその際に着用した。
マイ カトゥン [⸢mai⸣ kḁtuŋ]⸢ザイレー⸣マイ[⸢ʣaireː⸣mai](在来品種の米)をシ⸢ラ[ʃi⸢ra](稲叢)から必要な分だけ稲束を下ろし、フ⸢ドー⸣シ[ɸu⸢doː⸣ʃi](稲扱き用の竹管)で稲扱きをして脱穀し、それをカ⸢ティ⸣ウシ[kḁ⸢ti⸣ʔuʃi](搗き臼。{芒}{ノギ}を除去するための専用の搗き臼)で搗いて芒を除去し、さらに{碾}{ヒ}き臼で{挽}{ヒ}いて籾殻を落とした後、精米用の搗き臼に入れて杵で搗いて精米する<精げる>までの全過程をまとめていう。
マイカニティ [⸢maikani⸣ti]予て。前もって。あらかじめ。事前に。「前予て」の義。カ⸢ニティ[ka⸢niti](予て)は「かからむと 可祢弖<カネテ>知りせば~。万、3959」の転訛したもの。
マイカリ [⸢maikari]稲刈り。「米刈り」の義。鳩間島ではス⸢ク⸣マ[su̥⸢ku⸣ma](稲の初穂祭り。旧暦5月の壬に執り行われた)を過ぎると稲刈りの準備に入り、早い田圃では刈り入れが始まった。西表島北岸一帯にある⸢タータバ⸣ル[⸢taːtaba⸣ru](田袋)の各自の⸢ター⸣ヤー[⸢taː⸣jaː](田子屋)に、一週間、または10日の日程で宿泊して稲刈り作業を行った。⸢スー⸣マン[⸢suː⸣maŋ](小満、太陽暦5月20日)の頃から稲刈りが始まり、⸢ボースー[⸢boːsuː]({芒種}{ボウ|シュ}、太陽暦6月5日頃)の節に吹く⸢カーチー⸣バイ[⸢kaːʧiː⸣bai](南風。夏至の頃に吹く南風)に吹かれて稲刈りをした。刈り取った稲は、プ⸢ス⸣シゥカ[pu̥⸢su⸣si̥ka](一{掴}{ツカ}み。ヒトツカ<一束>)ずつ、X字状に捻じったス⸢リ⸣バイ[su⸢ri⸣bai](刈り株)の上に置いて天日に干し、刈り終えたらそれを束ねてタ⸢ブ⸣ル[ta⸢bu⸣ru](束。二掴みで一{束}{タバル}にしたもの)にし、それらを30束纏めてプ⸢スマラ⸣キ[pu̥⸢sumara⸣ki](一丸ぎ)にした。それらを田の畦の集荷場に積み重ね、フ⸢ナ⸣ジン[ɸu⸢na⸣ʤiŋ](⸢船積み」の義。高さ約4尺、長さ約6尺に積み、上にトゥ⸢マー{SqBr}tu⸢maː{/SqBr}<苫>を掛けて雨露を防ぐ)して置く。2、3日おいて脱穀機にかけて脱穀し、籾をカ⸢シガーフク⸣ル[ka⸢ʃigaːɸu̥ku⸣ru](南京袋。朝鮮袋)に詰めて鳩間島へ運んだ。天気をみて籾を天日乾燥し、モ⸢ミパク[mo⸢mipaku](籾箱)に入れて保管した。
マイガリ [⸢mai⸣gari]まえがり(前借り)。ぜんしゃく(前借)。
マイ カルン [⸢mai⸣ ka⸢ruŋ]稲<米>を刈る。
マイグスク [⸢maigusu̥⸣ku]屋敷の前面の石垣。前石垣。門と住宅の間にある目隠しの石垣には、ナ⸢カグス⸣ク[na⸢kagusu̥⸣ku](目隠し)という。
マイクメー [⸣maikumeː]小浜家<小浜正秀氏宅>。⸣マイクマヤー[⸣maikumajaː](「前小浜家」の義)ともいう。
マイクメーヌ セイショーザーテー [⸣maikumeːnu ⸢ʃeiʃoːʣaːteː]屋号。小浜正昌氏宅。
マイサーシ [⸢maisaː⸣ʃi]いなこき(稲扱き)。脱穀。シ⸢ラ[ʃi⸢ra](いなむら<稲叢>)より稲束を下ろし、フ⸢ドー⸣シ[ɸu⸢doː⸣ʃi](稲扱き管)で稲扱きをすること。ニ⸢ブ⸣ク[ni⸢bu⸣ku]({稲掃}{イナ|バ}き{筵}{ムシロ})に稲束を下ろし、シ⸢ビシゥカイビリ[ʃi⸢bisi̥kaibiri](片膝を立てて座ること。「尻支え座り」の義)をして、稲束を片膝を立てた足の指で押さえ、左手で稲藁を2,3本ずつ掴み、右手のフ⸢ドー⸣シ[ɸu⸢doː⸣ʃi](稲扱き管)に稲穂を挟んで穂先へ{扱}{コ}きおろす。
マイ サウ フドーシ [⸢mai⸣ sau ɸu⸢doː⸣ʃi]稲を{扱}{コ}く竹管。「米・さくる(渫)・管串」の転訛したもの。直径約8ミリ、長さ約9センチの竹管2本に藁しべを貫き{挿}{サ}し、{蝶番}{チョウ|ツガイ}にして作った一組の稲扱き用の器具。
マイ サウン [⸢mai⸣ sauŋ]在来種の稲をこく(扱く)。稲を扱く。稲をしごく。竹管で稲穂から籾を扱き取る。
マイザトゥ [⸢maiʣa⸣tu](地)前里集落。
マイシゥカイ [⸢mai⸣sï̥kai]こまづかい(小間使い)。走り使い。「前使い」の義。煙草盆の火を取ったり、急須にお湯を注いだり、隣へのお使いに行くなど、祖父母や両親の身の回りの雑用に使われる子供(多くの場合は少女だった)。
マイシキ [mai⸢ʃiki]まいつき(毎月)。まいげつ(毎月)。標準語からの転訛。普通は、⸣シキシキ[⸣ʃi̥kiʃi̥ki](月々)という。月ごと。月々。
マイシキ [⸢mai⸣ʃi̥ki]{米搗}{コメ|ツ}き。{稲搗}{イネ|ツキ}。搗き臼に玄米を入れて杵で搗いて精げること。老年層は普通は、イ⸢ニ⸣ッサイ[ʔi⸢ni⸣ssai](稲精げ)、⸢マイ⸣ッサイ[⸢mai⸣ssai](米精げ)という。1960年ごろからは祭祀用の米を運搬船で石垣島へ送り、精米所で精米してもらうようになった。精米賃は米で支払っていた。
マイシジ [⸢maiʃiʤi]米粒。玄米。
マイジマ [⸢maiʤima]米作のできる島。米の取れる島。
マイジラ [⸢maiʤira]いなむら(稲叢)。刈り取った稲<在来種の稲>を積み重ねたもの。単にシ⸢ラ[ʃi⸢ra](稲叢)ともいう。
マイジラ [⸢mai⸣ʤira]{1}前面。正面。「まえづら(前面)」の転訛。
マイジラ [⸢mai⸣ʤira]{2}⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](板舟。サバニ)の{舳先}{ヘ|サキ}の鋭三角形の前面。「前面」の転訛したもの。みよし(舳)。
マイシラシ [⸢maiʃira⸣ʃi]前兆。予兆。「前知らせ」の義。⸢マイジラ⸣シ[⸢maiʤira⸣ʃi](前兆。前知らせ)、単に、シ⸢ラシ[ʃi⸢raʃi]ともいう。
マイジン [⸢mai⸣ʤiŋ]前金。代金を前もって払うこと。「前銭」の転訛。
マイ スールン [⸢mai suː⸣ruŋ]稲を扱く。稲扱き管<{扱}{コ}き{箸}{ハシ}の一種>で稲穂の実を扱き落とす。
マイスクブ [⸢maisu̥ku⸣bu]{籾殻}{モミ|ガラ}。{籾摺}{モミ|スリ}の際に出る籾殻やその他の{塵}{チリ}や{埃}{ホコリ}。ス⸢ク⸣ブ[su̥⸢ku⸣bu]は、「Sucumo.スクモ(すくも)すなわち、Nuca.(糠)米や小麦などの殻」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マイスコール [⸢maisu̥koː⸣ru]前準備。
マイズニ [⸢mai⸣ʣuni]固有名詞。前曽根。鳩間島の南約1000メートルの海中に発達した珊瑚礁。⸢アーラマイズニ[⸢ʔaːramaiʣuni](東前曽根)とナ⸢カヌ⸣スニ[na⸢kanu⸣suni](中の曽根)、⸢イーリマイズニ[⸢ʔiːrimaiʣuni](西前曽根)の三つの曽根からなる。⸣スニ[⸣suni](曽根)とは、干潮時に海上に姿を現さない珊瑚礁の浅瀬のことである
マイスバ [⸢mai⸣suba]まえすそ(前裾)。着物のまえみごろ(前身頃)の裾。
マイター [⸣maitaː]前方。前の方。⸢空間的な前方」を表し、「時間的な前方」の意味はない。「まえかた(前方)」の転訛したもの。老年層は⸣マインター[⸣maintaː](前方)、⸣マンター[⸣mantaː](前方)ともいう。
マイダーラ [⸢maidaːra]米俵。南京袋に籾を入れた袋。⸢ユントゥダーラ[⸢juntudaːra](四斗俵)、ル⸢クトゥダー⸣ラ[ru⸢kutudaː⸣ra](六斗俵)がある。
マイダニ [⸢maidani]たねもみ(種籾)。「米種」の義。⸣サニムミ[⸣sanimumi](種籾)、⸣サニマイ[⸣sanimai](種米)、タ⸢ニ⸣ムミ[ta⸢ni⸣mumi](種籾)ともいう。
マイタブル [⸢maitaburu]稲束。
マイタブレー [⸢maitabu⸣reː]固有名詞。吉川家の屋号。老年層は、⸢マイトゥブ⸣レー[⸢maitubu⸣reː](吉川亨氏家の屋号)というのが普通である。「前友利」の転訛か
マイダリ [⸢mai⸣dari]前掛け。前垂れ。
マイダン [mai⸢daŋ]{1}非常に。まことに。ほんとうに。「毎度(いつも)」の転訛したもの。
マイダン [mai⸢daŋ]{2}正常なさま。いつもの元気な状態。
マイツ [⸢mai⸣ʦu](固)人名。
マイツォンマー [⸢mai⸣ʦommaː]人名。マイツ姉さん。マイツお母さん。
マイッサーリ [⸢maissaː⸣ri]前ふさがり。前に立ちはだかること。
マイッサイ [⸢mai⸣ssai]米搗き。いねつき(稲舂)。「米・精げ(精、シラグ)『類聚名義抄』」の転訛したもの。シ⸢キ⸣ウシ[ʃi̥⸢ki⸣ʔuʃi](搗き臼)に玄米を入れ、イ⸢ナシ⸣キ[ʔi⸢naʃi̥⸣ki](杵。「稲搗」の義)で搗き精げること。普通は女性一人で搗くが、祭祀、祝儀用の米搗きの場合は搗き臼を2台据え、四名で搗くこともあった。庭のガ⸢ジ⸣マル[ga⸢ʤi⸣maru](榕樹)の下にニ⸢ブ⸣ク[ni⸢bu⸣ku]({稲掃筵}{イナ|バキ|ムシロ})を敷き、その上に搗き臼を2台据付け、1,5升~2升の玄米を臼に入れ、ウ⸢シ⸣ヌ ⸣シケー[ʔu⸢ʃi⸣nu ⸣ʃi̥keː](臼の揺輪)を臼の口縁部に{嵌}{ハ}め、⸢アイダ⸣チ[⸢ʔaida⸣ʧi](大槌の杵)で、二人一組にして米搗き<精米>をした。
マイツバーオン [⸢mai⸣ʦubaːʔoŋ]石垣市字新川にある御嶽の名。「真乙姥嶽」と記す。{⸢マイ⸣ツバー[⸢mai⸣ʦubaː](⸢ナー⸣タフージ{SqBr}⸢naː⸣taɸuːʤi{/SqBr}<長田大主>の妹)を祀った⸣ウガン[⸣ʔugaŋ](お願。御嶽)}。旧石垣市の豊年祭が行われるところ。
マイディマ [⸢mai⸣dima]前払い。仕事をする前に貰う手間賃。「まえでま(前手間)」の義。
マイトゥシ [mai⸢tuʃi]毎年。マイ⸢ニン[mai⸢niŋ](毎年)ともいう。
マイトゥジェー [⸣maituʤeː]屋号。通事力氏宅。竹富町議会議長を務めた通事隆一氏(船浦在住)は通事家の長男である。「前通事家」の義。
マイ トゥバスン [⸢mai⸣ tu⸢basuŋ]{箕}{ミ}でひる({簸}{ヒ}る)。籾を飛ばす。籾摺りしたものを{箕}{ミ}に入れて{煽}{アオ}ったり、風に吹かせたりして{籾殻}{モミ|ガラ}を飛ばして除去すること。蓬莱米などの脱穀した籾を風に煽らせて枯れ葉や{塵芥}{ジン|カイ}を除去した。
マイトゥブレー [⸢maitubu⸣reː]屋号。吉川家(吉川享氏の家)。「前友利家」の転訛したものか。
マイ ナスン [⸣mai ⸣nasuŋ]{1}目前にする。
マイ ナスン [⸣mai ⸣nasuŋ]{2}先にする。
マイ ナスン [⸣mai ⸣nasuŋ]{3}前に置く。揃えて。常用する。
マイ ナルン [⸣mai ⸣naruŋ]{1}前になる。先頭になる。
マイ ナルン [⸣mai ⸣naruŋ]{2}他人より先んじる。競争に勝つ。
マイナン [⸢mai⸣naŋ]前通り。屋敷の前通りの家並み。前の道沿い。前側。「前並」の転訛したもの。
マイニー [⸢mai⸣niː]船の前方の積み荷が重く不安定なこと。「前荷」の義。⸢マイ⸣ニー[mainiː](前荷)は船が沈没する原因という。トゥ⸢ム⸣ニー[tu⸢mu⸣niː](艫の荷が重く不安定なこと。操船不能になる原因となるという)の対義語。
マイニン [mai⸢niŋ]毎年。標準語の「毎年」から転訛したもの。老年層は、マイ⸢トゥシ[mai⸢tuʃi](毎年)とも、トゥシ⸢カージ[tu̥ʃi⸢kaːʤi](年ごとに)ともいう。
マイヌイー [⸢mainu⸣ʔiː]米飯。「米の飯」の義。⸢ウンヌ⸣イー[⸢ʔunnu⸣ʔiː](芋のご飯)の対義語。
マイヌシジ [⸢mainu⸣ʃiʤi]米粒。
マイヌ トゥシ [⸢mai⸣nu ⸣tu̥ʃi]前年。「前の年」の義。過去の基準となる一定の時の前の一年。⸢パッ⸣タトゥシ[⸢pat⸣ta ⸣tu̥ʃi](去った年。行った年)ともいう。
マイヌ ナイ [⸢mainu⸣ nai]稲の苗。日当たりの良い水田には、パ⸢ヤ⸣ナイ[pa⸢ja⸣nai](早苗。早稲の苗)が、山田には⸣アトゥナイ[⸣ʔatunai](おくて<晩稲の苗>)が作付けされていた。
マイヌプー [⸢mainu⸣puː]稲穂。⸢米の穂」の義。
マイヌ プー [⸢mainu⸣ puː]稲穂。「米の穂」の転化したもの。
マイヌミース [⸢mainumiː⸣su]米味噌。米だけで作った味噌。「米の味噌」の義。塩分は控えめで、泡盛の味が染み込んでいて、何ともいえない風味があった。三時の⸢サーサー⸣フキ[⸢saːsaː⸣ɸu̥ki](茶請け)として食された。また、黒糖やザ⸢ラ⸣ミ[ʣa⸢ra⸣mi](粗目糖)を混ぜると美味であった。祖父母の側に{纏}{マツ}わりついて、着物の裾を引っ張って⸢マイヌミー⸣スをおねだりする孫の小さな{掌}{テノヒラ}に一{摘}{ツマ}み載せていただいて、美味しそうに食べる光景がよく見られた。
マイネー [⸢mai⸣neː]自分の家より前<南>の方にある親戚の家。前隣。「前の家」が*[maɸeno・jaː] → [maweno・jaː] → [majeno・jaː] → [mainu・jaː] → [mainu・iaː] → [maineː] のように音韻変化したもの。⸢シー⸣ネー[⸢ʃiː⸣neː](後ろの家。後ろ隣)の対義語。
マイバー [⸣maibaː]前歯。門歯。切歯。
マイバライ [⸢mai⸣barai]前払い。前もって代金を支払うこと。
マイパン [⸣maipaŋ]獣や虫類の前足。前脚。「Mayeaxi.マエアシ(前足) 動物の前足.Atoaxi.(後足)」『邦訳日葡辞書』の義。⸣パン[⸣paŋ](足。脛)は「~夜都賀波岐(やつかはぎ=八束脛ノ意といふ)」『常陸風土記』の転訛したもの。⸣アトゥパン[⸣ʔatupaŋ](後足。後脚)の対義語。
マイピキウシ [⸢maipi̥kiʔuʃi]もみすりうす(籾摺り臼)。「米碾き臼」の義。ピ⸢キ[pi̥⸢ki]は、「Fiqi,u,ijta.ヒキ、ク、イタ(引・曳・挽・弾・碾き、く、いた)引っ張る.Cha,comugui nadouo fiqu.(茶、小麦などを碾く)茶(Cha)や小麦などを臼で碾く.」『邦訳日葡辞書』の転訛。単に、ピ⸢キウシ[pi̥⸢kiʔuʃi](碾き臼)ともいう。
マイピサ [⸢mai⸣pi̥sa]屋根の前面の斜面。前流れ。「前平」の転訛したもの。⸢シー⸣ピサ[⸢ʃiː⸣pi̥sa](屋根の後ろの斜面。後ろ流れ)の対義語。⸢アーラピサ[⸢ʔaːrapisa](屋根の東側の斜面)は⸢イーリピサ[⸢ʔiːripisa](屋根の西側の斜面)の対義語。
マイピュール [⸢maipjuː⸣ru]祭祀や行事を執り行う日和で{干支}{エ|ト}の前期に当たる日。「前日和」の義。前期の干支で不都合が生じる際には、⸣アトゥピュール[⸣ʔatupjuːru](後期の干支に当たる日和)で実施された。「Fiyori.ヒヨリ(日和) Tenqi(天気)に同じ.天気のめぐりあわせ.Fiyorigayoi,varui(日和が好い、または、悪い)航海などをするのに好い天気である、または、悪い天気である」『邦訳日葡辞書』。
マイフナー [⸢maiɸunaː]{1}利口者。しっかり者。お利口さん。
マイフナー [⸢maiɸunaː]{2}働き者。成功した者。「まゑけか 男の事 ゑけがとも云 まの字を云時は敬ふ言葉なり」『混効験集 坤人・倫』、「男 会几臈」『中山伝信録』の「真の男」の義が転訛したもの。
マイボー [⸢mai⸣boː]二人で荷を棒に吊るして担う際、棒の先の方を{担}{カツ}ぐ人。「前棒」の義。
マイボール [⸢maiboː⸣ru]菓子の名。メリケン粉に卵、砂糖を混ぜて焼いた、直径約6センチの平たい菓子。ポルトガル語のボーロ(bolo)の借用語が転訛したものという『石垣方言辞典』。石垣島で焼かれたマイボールを仕入れて、鳩間島でも販売していた。
マイマイ [⸣maimai]以前。ずっと以前。前方。「前前」の義。
マイマイシ [mai⸢mai⸣ʃi]大きく。大きめに。
マイマイヌ [mai⸢mainu]連体大きな。
マイマジミ [⸢maimaʤimi]刈り取った稲を一時的に積み上げたもの。「稲真積み」の義。⸢マイマジン[⸢maimaʤiŋ]ともいう。
マイマチブラーリ [⸢maimaʧiburaː⸣ri]体の前面に{纏}{マツ}わり付くこと。体の前方から絡みつくこと。「前まつわり(纏わり)」の義。
マイマラキ [⸢maimaraki]⸢まいまろぎ(稲丸ぎ)」の義。稲束を30束集めてひとまるぎ<一丸ぎ>にしたもの。稲束30束を{纏}{マトメ}た単位。
マイムッティ [⸣maimutti]前もって。あらかじめ。かねて。事前に。老年層は、⸢マイカニ⸣ティ[⸢maikani⸣ti](事前に。前もって。かねて)という。
マイムティ [⸣maimuti]前もって。あらかじめ。事前に。かねて(予て)。⸣マイムッティ[⸣maimutti](前もって)ともいう。
マイヤク [⸢mai⸣jaku]前の漕ぎ手。サバニの前方の漕ぎ手。
マイヤフ [⸢mai⸣jaɸu]厄年の前の年。「前厄」の義。⸣アトゥヤフ[⸣ʔatujaɸu](後厄。ハ⸢リ⸣ヤフ{SqBr}ha⸢ri⸣jaɸu{/SqBr}<晴れ厄>ともいう)の対義語。
マイヤマ [⸣maijama]まえやま(前山)。前の方にある山。村里に近い山。ウ⸢クヤマ[ʔu⸢kujama](奥山)の対義語。
マイヤン [⸢mai⸣jaŋ]大きい。
マイユーシ [⸢maijuː⸣ʃi]繰り上げ。「前寄せ」の義。
マイユッカ [⸢maijuk⸣ka]前床板。⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](板舟)の前方の床板。ウ⸢シカキ[ʔu⸢ʃikaki](帆柱を立てる梁)の後ろにある床板。⸢ピーヌール[⸢piːnuːru](舳乗り)が座って舟を漕ぐ床板。⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](板舟)の項参照
マイユッカーマ [⸢maijukkaː⸣ma]⸢マイユッ⸣カ[⸢maijuk⸣ka](前床板)の前、ウ⸢シカキ[ʔu⸢ʃikaki](帆柱を立てる梁)の前方の舳先に近い所にある床板。鋭三角形の小さい床板。⸣イダフニの項参照
マイ ユラスン [⸢mai⸣ ju⸢rasuŋ]米を{篩}{フルイ}にかける。籾摺りした後、ユ⸢ラシ[ju⸢raʃi](竹製の篩)で揺すって玄米の中のア⸢ラム⸣トゥ[ʔa⸢ramu⸣tu](あらもと<{粡}{アラモト}。糏>)を除去する。
マイヨーゾー [⸢maijoː⸣ʣoː]前養生。病気予防のために事前に養生すること。健康維持の手当てをすること。
マイヨイ [⸢mai⸣joi]前祝い。{1}祝いの準備をした後に、軽く飲み食いすること。
マイヨイ [⸢mai⸣joi]{2}物事の成就、完成を予祝すること。
マイリ [⸢mai⸣ri]参詣。御参り。石垣島の観音堂を拝みに行くこと。
マインタ [⸣mainta]前方。前の方。普通は、⸣マンタ[⸣manta](前方。前の方)という。⸣シンタ[⸣ʃinta](後方。後の方)の対義語。
マカグ [ma⸢kagu]重箱に詰めた御握り。地炉の神に産婦と新生児の健康を祈願するための供物
マカスン [ma⸢kasuŋ]他動負かす。相手を負けさせる。
マカスン [ma⸢kasuŋ]他動任す。任せる。委ねる。相手のするままにさせる。
マカタ [ma⸢ka⸣ta]人名。女性の名。マ⸢カ⸣テー[ma⸢ka⸣teː](女性の名)ともいう。
マガタマ [⸣magatama]祭祀用の玉。まがたま(曲玉)。
マカトー [ma⸢ka⸣toː]人名。女性の名。
マカナイ [ma⸢ka⸣nai]炊事。食事を作ること。給仕すること。「{賄}{マカナイ}」の転訛。
マカナイプス [ma⸢kanai⸣pu̥su]賄い人。下宿人。
マカナイミドゥム [ma⸢kanaimidu⸣mu]賄い女。琉球国時代に八重山の離島で役人の衣食住の世話をした女性。その役人との間に生まれた子を⸢グン⸣ボー[⸢gum⸣boː](混血児)という。
マカナウン [ma⸢ka⸣nauŋ]他動衣食住の世話をする。下宿人の給仕をする。「賄う」の義。琉球国時代には、離島では役人の給仕から身辺の世話、よとぎ(夜伽)まで、選ばれた未婚の女性が世話をした。
マカブ [ma⸢kabu](動)魚名。ベラ科のくさべら、体長約30センチや、同じくベラ科の、しろくさべら、体長約60センチも含めて云う。刺身や蒲鉾にして食すると美味である。
マガヤー [ma⸢ga⸣jaː]曲がったもの。
マガラ [ma⸢ga⸣ra]父系の血筋。血縁。「真・から(柄、族)」の義か。「~問ひさくる親族兄弟<ウカラハラカラ>無き国に~。万、460」の転訛したものか。マ⸢ガ⸣ラピキ[ma⸢ga⸣rapi̥ki](父系の血縁関係)は、⸢インビ⸣キ[⸢ʔimbi⸣ki](母系の血縁関係。姻戚関係)の対義語。
マガラピキ [ma⸢ga⸣rapi̥ki]父系の血縁関係を有する親族集団。⸢インビ⸣キ[⸢ʔimbi⸣ki](母系の血縁関係を有する親族集団。姻戚関係)の対義語。この血縁関係にある者は、法事の際、⸢ナン⸣カ[⸢naŋ⸣ka](初七日忌から四十九日忌の法事)や⸢ソッ⸣コー[⸢sok⸣koː](焼香。法事。一周忌から三十三年忌まで)の際に、⸣グシパナ[⸣guʃipana](酒と三合花米)やウ⸢ティン⸣ガビ[ʔu⸢tiŋ⸣gabi](紙銭<打ち紙>3枚)、⸢カウ[⸢kau](線香1束)をそなえる習慣が1960年代頃まであった。
マガリカドゥ [ma⸢garikadu]曲がり角。道の曲がっている所。進む方向の変わり目。
マガリクガリ [ma⸢gari⸣kugari]曲がりくねって。ABCDBC型の重言。
マカル [ma⸢ka⸣ru]{PoS_1}{1}ご飯やお汁用の茶碗。「椀、杯也、万利(まり)」『新撰字鏡』。「おまかり 茶碗の類をいふ 和詞にもまかり」『混効験集』、「碗 麻加立」『琉球館訳語』、「飯碗 麦介衣」『中山伝信録』、「鋺、おまへにしろがねのまがりなど~」『宇津保物語』の転訛したもの。
マカル [ma⸢ka⸣ru]接尾{PoS_2}杯。お碗に入れたものを数える単位。
マカルサバン [⸣makarusabaŋ]碗や皿の総称。食器類。
マカルザラ [⸣makaruʣara]茶碗や皿などの総称。食器類。
マカルドング [⸣makarudoŋgu]食器類。食器の総称。
マガルン [ma⸢garuŋ]自動{1}曲がる。
マガルン [ma⸢garuŋ]自動{2}縮こまる。萎縮する。
マガレークガレー [ma⸢gareː⸣kugareː]曲がりくねって。ABCDBC型の重言。
マキ [ma⸢ki]{1}牧場。昔は西表島の⸣インダ[⸣ʔinda](伊武田)地区とサ⸢キンダ[sḁ⸢kinda](崎田)地区に鳩間島のウ⸢シマキ[ʔu⸢ʃimaki](牛の放牧場)があった。伊武田にはフ⸢ク⸣ヌマキ[ɸu̥⸢ku⸣numaki](福浜の牧場)があり、ウ⸢シヌ⸣ウガン[ʔu⸢ʃinu⸣ʔugaŋ](牛の御嶽)もあって、毎年旧暦9月のウ⸢シニー[ʔu⸢ʃiniː](干支の丑の日)にウ⸢シニン⸣ガイ[ʔu⸢ʃiniŋ⸣gai](牛の繁盛祈願)が行われ、⸢牛の繁昌祈願<祝い>の歌」が歌われた。次に、伝承されている、ウ⸢シヌヨイヌ⸣ ウタ[ʔu⸢ʃinujoi⸣nu ⸣ʔuta](牛の繁昌祈願<祝い>の歌の歌詞(伝承者、加治工伊佐))を示す。/{Sg_1}キューヌ ピーヌ ウユワイムトゥ スイナウレ(今日の日の祝いの元、スイナウレ<囃子>)、{Sg_2}フクヌマキ ウユワイムトゥ スイナウレ(福浜の牧場の祝いの元スイナウレ)、{Sg_3}ムヤシバードゥ パンゾー スームトゥ スイナウレ(発情<ズブマイ>したらばこそ繁昌の元になるスイナウレ)、{Sg_4}パンジョー シーヌ ウミサク ムムドゥ スイナウレ(繁昌させるお神酒 百度 スイナウレ)/。
マキ [ma⸢ki]{2}豚舎。豚便所。「豚の牧」の義。
マキ [ma⸢ki]つむじ(旋毛)。人の頭頂にある、毛髪の渦巻き。ピ⸢ジ⸣ル[pi⸢ʤi⸣ru](つむじ。旋毛)ともいう。
マキ [ma⸢ki]{1}負け。
マキ [ma⸢ki]{2}かぶれ(気触れ)。かぶれによる発疹や炎症。
マギー [⸣magiː]大きいもの一般をさす。特別に大きいものには、ブ⸢サー⸣ラ[bu⸢saː⸣ra](大きい動物や植物)ということが多い。
マギーマギーシ [ma⸢giːmagiː⸣ʃi]大きく。大々的に。
マキイクサ [ma⸢kiʔikusa]負け戦。敗戦。
マキカビ [ma⸢kikabi]⸢巻き紙」の義。ム⸢ルムル[mu⸢rumuru](大焼香に供える砂糖黍を束ねたもの)を巻いて飾る幅約3センチ、長さ約30センチの紅白の紙。
マキザーラスン [ma⸢kiʣaːra⸣suŋ]他動撒き散らす。ばらばらに振り撒く。
マキシンカ [ma⸢kiʃiŋka]牧場を共同で経営している仲間。マ⸢キニンズー[ma⸢kininʣuː](牧人数)ともいう。
マキダ [ma⸢kida]ちまき(千巻)。織った布を巻き取る木製の円い棒。「巻き板の約まった形」という『石垣方言辞典』。
マキタバク [ma⸢kitabaku]巻きタバコ(煙草)。キ⸢ザミタバク[ki⸢ʣamitabaku](刻み煙草)の対義語。
マキックムン [ma⸢kikkumuŋ]他動巻き込む。仲間に入れる。
マキッツァースン [ma⸢kitʦaː⸣suŋ]他動撒き散らす。ばらまく。ばら蒔きにする。マ⸢キッツァーラ⸣スン[ma⸢kitʦaːra⸣suŋ](撒き散らす。ばらまく。ばら蒔きにする)ともいう。
マキヌ ヨイ [ma⸢kinu⸣ joi]牛牧の祝い。牧場の祝い。毎年旧暦の9月の干支のウ⸢シニー[ʔu⸢ʃiniː](丑の日)にフ⸢ク⸣ヌマキ[ɸu̥⸢ku⸣numaki](西表島伊武田地区の福の牧)のウ⸢シヌ⸣ウガン[ʔu⸢ʃinu⸣ʔugaŋ](牛の御嶽)で行われた。子牛の耳を切って⸢ヤー⸣バン[⸢jaː⸣baŋ](各家の目印)を付け、牛の繁昌祈願が行われた。その際、二人一組で対座して⸢ペンシキビリ[⸢peŋʃikibiri](正座。跪いて座ること)し、ミ⸢キバタ⸣シ[mi⸢kibata⸣ʃi](神酒を入れる容器)を持ち上げ、歌の調子に合わせて右上、左上へと交互に持ち上げた。歌い終わって次の組みに手渡す際は、次の詞章を交わした。A(ミキバタシを手渡す側):マ⸢ムレー⸣ マ⸢ムレー⸣ ッサリー ⸢キュー⸣ヌピー ク⸢ガニピー⸣ナ タ⸢ボーラリ⸣タル ⸢ウーミサ⸣クドゥ ⸢マーム⸣レー⸢ユー⸣ ッサリー シ⸢ギシューヤ タッ⸣テヌ ⸢ウンナーマ⸣ドゥ シ⸢ギシューユー⸣ ッサリー イ⸢メーヌ カー⸣ジ(マムレーマムレー<神の加護だ、神の加護だ>、申し上げます。今日の佳日、黄金の日に賜ったお神酒が神の御守護の印と申します。次の主は、どこそこの家のお方が次主でございます。サリー。さあお参りなさいませ)。B(受け取る側):⸢ウー⸣タリ(畏まりました)といって受け取る。
マキブドゥル [ma⸢kibuduru]巻き踊り。円陣を巻いて踊る踊り。豊年祭の⸢パー⸣レー[⸢paː⸣reː](爬竜船)やシ⸢ナ⸣ピキ[ʃi⸢na⸣pi̥ki](綱引き)の際に踊られる。
マギフニ [ma⸢gi⸣ɸuni]帆船のジグザグ航法(帆走方)。「曲げ船」の転訛したもの。⸢プーザンプー[⸢puːʣampuː](片帆)の⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](サバニ)を風上の方へ約45度斜めに一定距離走行して後、反転して反対方向の斜め風上へ走行することを繰り返しながら風上の目的地へ辿りつく航法。
マギプニ [ma⸢gipuni]たこ(凧)の頭部の幅広の竹骨。此れを強い糸で曲げたわめて張り、油紙を貼り付けて鳴らした。「曲げ骨」の義。ブーブーと鳴るので、普通は⸣ブーブーブニ[⸣buːbuːbuni](ブーブー唸り骨)という。
マキポールン [ma⸢kipoː⸣ruŋ]他動撒き散らす。あたり一面にばら撒いて散らす。
マギムヌ [ma⸢gi⸣munu]まげもの。杉やひのき<檜>などの薄い板を円形に曲げ、合わせ目を桜の皮などで綴じて作った容器。標準語から転訛したもの。
マギリ [ma⸢gi⸣ri]間切り。琉球国時代の行政区画。八重山全体が石垣間切り、大浜間切り、宮良間切りの三間切りに区画されていた。間切りの長が⸣カサ[⸣kḁsa](カ⸢シ⸣ラ{SqBr}kḁ⸢ʃi⸣ra{/SqBr}<頭>の転訛)である。鳩間島は宮良間切りに所属していた。
マキルン [ma⸢kiruŋ]自動負ける。「負け<下二段>」のラ行四段活用化したもの。「~もころ男に負而者不有跡<マケテハアラジト>~。万、1809」の転訛。
マギルン [ma⸢giruŋ]他動曲げる。「橈、木曲折也、弱也、加久、又、万久(まく)」『新撰字鏡』の転訛か。「Mague,uru,eta.マゲ、グル、ゲタ(曲げ、ぐる、げた)ゆがめ曲げる、または、たわめる」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マキワラ [ma⸢kiwara]杉の皮の繊維を十分に乾燥させて、カツオ船や⸢ティンマ[⸢timma](伝馬船)の接ぎ板の接合部に強く差し込み、水漏れを防ぐのに用いるもの。また、平釘を打つ際に、平釘の頭部に巻きつけて打ち込み、鉄錆による船板の直接の傷みを防ぐのに用いた。
マク [⸣maku]幕。結願祭の奉納芸の舞台に地謡と舞台の間に張る幕。「幕、万玖(まく)」『和名抄』の転訛。「Maku.マク(幕) 船の中、陣営、演劇(能)などで使う長い幕.Macuuo faru.(幕を張る)」『邦訳日葡辞書』の転訛。
マクウチ [ma⸢ku⸣ʔuʧi]楽屋裏。「幕内」の義。
マグクル [ma⸢gukuru]真心。真実の心。「Magocoro.マゴコロ(真心) すなわち、Makotono cocoro.(真の心)素直で誠実な心.」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マクトゥ [ma⸢kutu]真実。本当のこと。正直者。「~眞間の手兒名を麻許登賀聞<マコトカモ>~。万、3384」。「太々志支己止、又、万己止<マコト>也」『新撰字鏡』の転訛したもの。
マクブ [ma⸢kubu](動)魚の名。和名、クサベラ(体長約30センチ)。和名、シロクラベラ(体長約50センチ)の総称。魚肉は白色の淡白な味であるが、刺身にして、その肝を味噌で溶かし、⸢シークヮー⸣サーで和えて食すると美味である。蒲鉾の材料としても重宝された。
マクン [ma⸢kuŋ]自動負ける。「負け<下二段>」のカ行四段活用化したもの。「~もころ男に負而者不有跡<マケテハアラジト>~。万、1809」の転訛。マ⸢キルンとも言う。
マクン [ma⸢kuŋ]他動巻く。長いものをくるくる丸める。「玉ならば手にも將巻乎(まかむを)~。万、729」の転訛。「Maqi,u,aita.マキ、ク、イタ(巻き、く、いた)ぐるぐる巻く、または、包みくるむ.」『邦訳日葡辞書』の転訛。
マクン [⸣makuŋ]他動{1}種を蒔く。播種する。「Maqi,u,aita.マキ、く、イタ(蒔き、く、いた)種子をまく」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マクン [⸣makuŋ]他動{2}撒く。散水する。
マグン [ma⸢guŋ]他動曲げる。湾曲させる。「橈、木曲折也、弱也、加久、又、万久(まぐ)」『新撰字鏡』の転訛したもの。「まぐ<下二段>」のガ行四段活用化したもの。
マコヤ [⸣makoja](動)ヤシガニ。
マサーカサー ナーヌ [⸣masaːkasaː ⸢naː⸣nu]{1}不元気である。体調不良である。
マサーカサー ナーヌ [⸣masaːkasaː ⸢naː⸣nu]{2}差障りのある、意味不明瞭な話。すっきりしない話。
マザーシイー [ma⸢ʣaːʃi⸣ʔiː]米と芋を混ぜて炊いたご飯。「混ぜご飯」の義。日常は⸢ウンヌダー⸣キ[⸢ʔunnudaː⸣ki](芋だけを煮て潰し捏ねたご飯)を食したが、時々は⸢マイヌ⸣イー[⸢mainu⸣ʔiː](米飯)を食した。冬期から若夏の稲刈りまでは米の蓄えが少なくなり、マ⸢ザーシ⸣イー[ma⸢ʣaaːʃi⸣ʔiː](米と芋の混ぜご飯)がご馳走になった。
マザーシカザーシ [ma⸢ʣaː⸣ʃikaʣaːʃi]まぜこぜに。ごちゃまぜに。ごたまぜに。ABCDEBCD型の重言。
マザースン [ma⸢ʣaː⸣suŋ]他動混ぜる。混ぜ合わせる。
マサーマサ [ma⸢saːmasa]正しく。本当に。
マザーリカザーリ [⸣maʣaːrikaʣaːri]入り混じって。ごた混ぜになって。ABCDEBCD型の重言。
マザールン [ma⸢ʣaː⸣ruŋ]自動混じる。混ざる。交わる。交際する。
マサーン [ma⸢saː⸣ŋ]占いや巫女のお告げがよく当たる。予兆、予言などがそのまま実現する。「まさし(正し)」の義。「大船の津守の占にのらむとは益爲尓<マサシニ>知而~。万、109」の転訛したものか。
マサル [ma⸢saru]連体良い。優る。優れた。それ以上の。「優る」の連体詞用法。「~麻佐礼留<マサレル>寶~。万、803」の転訛したもの。
マサルン [ma⸢saruŋ]自動勝る。優れる。「~麻佐礼留多可良<まされる寶>~。万、803」の義。
マシ [⸣maʃi]{PoS_1}田圃の一区画。水田の一枚。「升、麻須(ます)、十合器也」『和名抄』の転訛したものか。
マシ [⸣maʃi]助数{PoS_2}水田を数える単位。
マシ [ma⸢ʃi]形動他より勝っている<良い>。増しである。「Maxi,su,aita.マシ、ス、イタ(増し、す、いた)越えしのぐ、また、まさる、~」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。/インダ フクパマ シザバナリ フノーラカラヌ マシヌジー(伊武田、福浜、下離は船浦よりも良い土地<増しの地>だ)/(鳩間中岡)『鳩間島古典民謡古謡集』。
マジ [⸣maʤi]まず(先ず)。最初に。真先に。第一に。「~春立たば 末豆和我夜度尓<マヅわがやどに>~。万、4490」の転訛したもの。
マジェー [⸣maʤeː]先ずは。はじめに。とにかく。⸣マジ[⸣maʤi](最初に。真っ先に)に取立ての係助詞⸣ヤ[⸣ja](は)が下接して、[maji] + [ja] → [maʤe] と変化したもの。
マシカク [ma⸢ʃikaku]真四角。正方形。⸢マッカク[⸢makkaku](真四角)ともいう。
マシビ [ma⸢ʃi⸣bi]船の真後ろから吹く風。「ましり<真尻>吹く風」の義。「まとも(真艫)から吹く風」のこと。
マジマジ [⸣maʤimaʤi]先ずは。とにかく。何はともあれ。「先ず先ず」の義。
マジミ [ma⸢ʤi⸣mi]いなむら(稲叢)。高く積み重ねてあるもの。マ⸢ジン[ma⸢ʤiŋ](真積み)ともいう。マ⸢ジ⸣ムン[ma⸢ʤi⸣muŋ](高く積み上げる)の連用形から転成した名詞。
マジミルン [ma⸢ʣimi⸣ruŋ]他動物をうず高く積み上げる。積み重ねる。マ⸢ジ⸣ムン[ma⸢ʤi⸣muŋ](積み重ねる)ともいう。
マジムヌ [ma⸢ʤimunu]{1}化け物。魔物。幽霊。妖怪。「まじもの(蠱物)」の義。「蠱、万自物(まじもの)」『新撰字鏡』の転訛したもの。ヤ⸢ナ⸣ムヌ[ja⸢na⸣munu](悪魔。魔物)ともいう。
マジムヌ [ma⸢ʤimunu]{2}相手を軽く罵倒する際にいう。「馬鹿者」程度の義。
マジムヌヌ タク [ma⸢ʤimununu⸣ tḁku](動)ヒトデ。「化け物の蛸」の義。海中で五本の手を広げて珊瑚礁や砂地に這っているのが異形の蛸を思わせることから命名されたもの。
マジムン [ma⸢ʤi⸣muŋ]他動山のように積む。積み重ねる。積み込む。「Maʦume,uru,eta.マツメ、ムル、めた(集め、むる、めた)散らばったもの、あるいは、雑然としたものを集める」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マタ [⸣mata]また(股)。「椏、樹岐為椏、木乃万太(きのまた)」『新撰字鏡』。「胯、万太(また)、両股の間也」『和名抄』。
マタ [ma⸢ta]{PoS_1}また。さらに。その上に。
マタ [ma⸢ta]{PoS_2}再び。「~いやしき吾が身 麻多越知奴倍之<マタをちぬべし>。万、848」の義。
マダ [ma⸢da]まだ。「イマダ(未)」の転化したもの。「Imada.イマダ(未だ)副詞.まだ~ない。書き言葉で末尾に常に否定形を伴う」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マダーサリン [ma⸢daːsariŋ]自動惑わされる。化かされる。マ⸢ダースン[ma⸢daːsuŋ](惑わす)の未然形に受身の助動詞⸢リン[⸢riŋ](れる)が付いて形成された受身動詞。
マダーシムヌ [ma⸢daːʃimunu]{1}化け物。まじもの(蠱物)。
マダーシムヌ [ma⸢daːʃimunu]{2}⸢人を惑わす者」の義。人を誘惑する者。悪友。
マダースン [ma⸢daːsuŋ]他動惑わす。{妖怪}{ヨウ|カイ}などが人を惑わす。ばかす(化かす)。
マタイチフ [ma⸢taʔiʧiɸu]またいとこ(又従兄弟・又従姉妹)。
マタイビ [ma⸢taʔibi]定植。植え替え。植物を苗床から本田や畑に移し植えること。フ⸢タ⸣イビ[ɸu̥⸢ta⸣ʔibi](じかまき<直播>。⸢直接植え」)の対義語。
マタイラビ [ma⸢taʔirabi]再検討。二度選び。「又選び」の義。
マタウトゥザ [ma⸢taʔutuʣa]親類の親類。直接の親類ではなく、姻戚の親類など。「又弟者」の義。
マタオーシ [ma⸢taʔoːʃi]貰い物({到来物}{トウ|ライ|モノ})を、さらに余所へ贈る<差し上げる>こと。「又贈り」の義。⸢オーシ[⸢ʔoːʃi]は、「みおやすら 進上の事也 おやすら共云」『混効験集 乾・言語』の転訛したもの。
マタカーシ [ma⸢takaːʃi]転売。又売り。「又買わせ」の義。
マタカイシ [ma⸢takaiʃi]再度耕すこと。二度耕し。「又返し」の義。畑を粗く耕して後、植え付けに適するように細かく耕すこと。
マタカサビ [ma⸢takasabi]又重ね。二重に重ねること。
マタカザミ [ma⸢takaʣami]洗骨。改葬。「二度隠し」の義。ア⸢ライクサイ[ʔa⸢raikusai](洗骨。「洗い拵え」の義。「誘、古之良布<こしらふ>」『華厳経音義私記』の転訛したものか)ともいう。火葬が普及する以前は、埋葬して三年以後に骨を洗って甕に入れ、フインチバカ(掘抜き墓)に納めた。故加治工津久里(1921<大正10>年2月22日死去)、故加治工マイツ(1932<昭和7>年12月5日死去)の場合、骨は、安国寺の指導に基き、ア⸢ライクサイ[ʔa⸢raikusai](洗骨)の済んだ骨を荼毘に付して、その灰を甕に入れ、平成16年9月吉日に首里石嶺霊園の加治工家の墓に納められた。
マダカスン [ma⸢daka⸣suŋ]他動{1}{退}{ノ}かす。人や物を{他所}{ヨ|ソ}に移す。{塞}{フサ}がっている物を{除}{ヨ}ける。{退}{ノ}かせる。取り除く。
マダカスン [ma⸢daka⸣suŋ]他動{2}自動詞、マ⸢ダ⸣クン[ma⸢da⸣kuŋ]({退}{ノ}く。いる場所から立ち去る)。{Ref_1}は、{Ref_2}の未然形に使役の助動詞⸣スン[⸣suŋ](~せる)が付いて形成された使役動詞。
マタカラシ [ma⸢takaraʃi]又貸し。借りた物を持ち主に無断で他人に貸すこと。
マタカンガイ [ma⸢takaŋgai]再考。考え直すこと。思いなおすこと。「又考え」の義。⸢カンガイナウ⸣シ[⸢kaŋgainau⸣ʃi]ともいう。ユ⸢クカンガイ[ju⸢kukaŋgai](別の考え)は類義語。
マタギー [ma⸢ta⸣giː]股木。股になった木。
マダキルン [ma⸢daki⸣ruŋ]自動{PoS_1}のく(退く)。避けて離れる。立ち去る。
マダキルン [ma⸢daki⸣ruŋ]他動{PoS_2}{退}{ノ}ける。のける。{除}{ヨ}ける。物を他の場所へ移す。
マダクン [ma⸢da⸣kuŋ]自動{PoS_1}退く。遠のく。退く。よける(避ける)。立ち去る。
マダクン [ma⸢da⸣kuŋ]他動{PoS_2}退ける。除ける。退かせる。
マタゴイ [ma⸢tagoi]追肥。おいごえ。
マタザーク [ma⸢taʣaːku]やり直し。しなおし。「又仕事」の義。
マタサーリ [ma⸢tasaːri]男の再婚。「又連れ」の義。女の場合は、マ⸢タドゥー[ma⸢taduː](又胴<所帯>)という。
マタサカー [⸣matasakaː]二股。二股に分かれているもの。あちらについたり、こちらについたりして態度が一定しない者。「股の裂けた者」の義。
マタサカー [⸣matasakaː](動)魚の名。和名、コバンアジ(体長約40センチ。白銀色の体色をもつ)
マタサキ [ma⸢tasaki]返り咲き。二度咲き。くるいざき。「又咲き」の義。
マタシキ [ma⸢taʃi̥ki]{1}又聞き。聞いた人からさらに聞き知ること。
マタシキ [ma⸢taʃi̥ki]{2}聞き返す。反問する。
マタシキ [ma⸢taʃi̥ki]二度漬け。塩辛などを漬物や塩分を足して再度塩漬けにすること。
マタスクリ [ma⸢tasu̥kuri]作り直し。作り替えること。改作。改造。「又作り」の義。ス⸢クリノー⸣シ[su̥⸢kurinoː⸣ʃi](作り直し。作り替え)ともいう。
マタソーリ [ma⸢tasoːri]二度目の除草。ア⸢ラソー⸣リ[ʔa⸢rasoː⸣ri](一回目の除草。「あらさくり<粗刳>」の転訛か)の対義語。{箆}{ヘラ}でさくる<{刳}{サク}る>ように細かく再度除草すること。
マタトゥ [ma⸢tatu]またと。再び。二度と。文末の打ち消し表現と呼応して陳述副詞的働きを示す。
マタドゥー [ma⸢taduː]女性の再婚。「又身<胴>を持つ」の義。⸣ドゥー ⸣ムトゥン[⸣duː ⸣mutuŋ](所帯<身>を持つ<立てる>)ことを再び行うこと。
マタナシ [ma⸢tanaʃi]初産でない、二度目のお産。経産婦。「又生し<産し>」の義。パ⸢チナシ[pḁ⸢ʧinaʃi](初産)の対義語。
マタニバシ [ma⸢tanibaʃi]二度醗酵させること。{麹}{コウジ}を作る際に、蒸した米、麦、豆等に麹菌を植え、ある程度醗酵させた後、筵などに広げて更に醗酵させること。「又寝かせ」の義。フ⸢タニバ⸣シ[ɸu̥⸢taniba⸣ʃi](最初から筵に広げて醗酵させること<直接醗酵>)の対義語。
マタニビ [ma⸢tanibi]またね(又寝)。一度目を覚まして再び寝ること。またぶし(又臥し)。「フ⸢タ⸣ニビ」(熟睡すること。寝たっきり目を覚まさないこと)の対義語。
マタヌール [ma⸢tanuː⸣ru]馬乗り。「股乗り」の義。
マタヌール [ma⸢tanuːru]塗り直し。「又塗り」の義。
マタバイ [ma⸢ta⸣bai]股ずれ。股の内側の皮膚がすれて、すりむけること。「バイ」は「ハギ(はげ)」のgが脱落した形『石垣方言辞典』の説がある。
マタバイ [ma⸢tabai]ひこばえ(蘖)。稲のひこばえ(またばえ)。ひつじいね(穭稲)。「穭、ヒツチ」『類聚名義抄』。刈り取った草木の根や株から出た芽。「またばえ(又芽)」の義。「荑、比古波江(ひこばえ)」『新撰字鏡』の義。ひこばえ(蘖)を放置しておくと穂が出て収穫できるが、翌年の収穫に影響を及ぼすので、田の地力を養うため、マ⸢タバイを田の泥の中に踏み入れて肥料にした。
マタピサシ [ma⸢tapisaʃi]ご飯を炊く際に、初めは多めに水を入れ、ある程度煮えたとき、余分の水を捨てて適量にし、更に煮ること。「又{蒸}{ム}らし」の義。
マタブシ [ma⸢ta⸣buʃi]またぐら(股座)。両ももの間。股間。「股節」の義。
マタブシコーヤク [ma⸢tabuʃikoː⸣jaku]ふたまたこうやく(二股膏薬)。うちまたこうやく(内股膏薬)の転訛したもの。内股に貼った膏薬のように、あっち付き、こっち付きして、定見、節操のない者。
マタブトゥ [ma⸢tabutu]二度目の夫。のちぞいの夫。ごふ(後夫)。「又夫」の義。
マタフトゥッツァシ [ma⸢taɸututʦaʃi]煮返し。になおし。「又沸騰」の義。夏期は煮物が{饐}{ス}えやすいので、一度炊いたお汁や煮物などを煮返して<再度沸騰させて>食した。
マタマー [ma⸢tamaː]ひまご。孫の子。曾孫。「またまご(又孫)」の義。曾孫の子は、ピ⸢チマー[pi̥⸢ʧimaː](やしゃご<玄孫>)という。
マタムティ [ma⸢tamuti]女性が再婚すること。「又持ち」の義。
マタムニ [ma⸢tamuni]同じ言葉を再度言うこと。同じ言葉を繰り返すこと。「又物言い」の義。
マタリン [ma⸢ta⸣riŋ]自動待つことができる。⸣マトゥン[⸣matuŋ](待つ)の未然形に可能の助動詞⸣リン[⸣riŋ](れる)が下接して形成された可能動詞。
マタンブシ [ma⸢taʔmbuʃi]蒸し返し。一度蒸したものを再度蒸すこと。「又蒸し」の義。
マチ [⸣maʧi]市場。魚介類、肉類、野菜類、食料品類を売るところ。石垣島にあった。石垣方言からの借用語。
マチ [⸣maʧi](植)木の名。松。マツ科の常緑樹。長寿、不変の象徴として古来尊ばれている。「~木足る木<こだるき>を 麻都<マツ>と汝が云はば~。万、3433」。⸣マチキー[⸣maʧikiː](松の木)、⸣マチフニ[⸣maʧiɸuni](松の刳り舟)、⸣マチヤマ[⸣maʧijama](松林)、⸣マチアバ[⸣maʧiʔaba](まつやに<松脂>)などがある。西表島の⸣インダ[⸣ʔinda](伊武田)のウ⸢シヌ⸣ウガン[ʔu⸢ʃinu⸣ʔugaŋ](牛の御嶽)の周辺には松の大木が生えている。
マチアバ [⸣maʧiʔaba]まつやに(松脂)。「松油」の義。琉球松には松根油が豊富に含まれている。枯れた松の根には褐色になるほどの松根油を含んだ木質部があり、ア⸢カ⸣シ[ʔa⸢ka⸣ʃi](灯。ともしび)に利用された。
マチガイ [ma⸢ʧi⸣gai]{PoS_1}間違い。誤り。
マチガイ [ma⸢ʧi⸣gai]{PoS_2}ごめんなさい。謝罪するときにいう。
マチガイルン [ma⸢ʧigai⸣ruŋ]他動間違える。たがえる(違える)。取り違える。
マチガウン [ma⸢ʧi⸣gauŋ]自動・他動間違う。くい違う。誤る。「まちがふ<下二段>」の四段活用化したもの。
マチカンティ [ma⸢ʧikan⸣ti]待ち遠しいこと。待ちかねること。待ち兼ね。「待ち兼ねて」の義。老年層は、マ⸢ティカン⸣ティ[ma⸢tikan⸣ti](待ち兼ね)という。
マチカンテイ スン [ma⸢ʧikan⸣ti ⸢suŋ]待ちわびる。待ち遠しく思う。待ち兼ねる。「待ち兼ねてする」の義。
マチキー [⸣maʧikiː]松。松の木。松の木材。
マチクガリルン [ma⸢ʧikugari⸣ruŋ]他動待ち焦がれる。沖縄方言からの借用語か。
マチクガルン [ma⸢ikuga⸣ruŋ]他動待ち焦がれる。沖縄方言からの借用語か。
マチグシ [ma⸢ʧiguʃi]供物の神酒。「祀り御酒」の義。神前や仏前に供えた神酒。
マチダイ [ma⸢ʧidai]末代。末の代。石垣方言からの借用語。老年層は、ア⸢トゥ⸣ヌ ⸢ユー[ʔa⸢tu⸣nu ⸢juː](後の世)ともいう。
マチナバ [⸣maʧinaba](植)キノコ(茸)の一種。マツタケ(松茸)。⸣ナバ[⸣naba](キノコ<茸>)を食することは、鳩間島ではあまりなかった。桑の木やガジマル(榕樹)に自生する⸢ミン⸣グル[⸢miŋ⸣guru](キクラゲ<木耳>)を食した。
マチニー [ma⸢ʧi⸣niː]まつげ(睫毛、睫)。若年層はマ⸢チ⸣ギ[ma⸢ʧi⸣gi](睫)ともいう。「睫、万豆介(まつげ)、目瞼毛也」『和名抄』。「Matçugue.マツゲ(睫) まつげ」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マチヌ アバ [ma⸢ʧi⸣nu ⸣ʔaba]まつやに(松脂)。「松の脂」の義。⸣マチアバ[⸣maʧiʔaba]ともいう。「松脂 万豆夜邇」『和名抄』の義。
マチヌ ナル [ma⸢ʧi⸣nu ⸣naru]松の実。松かさ。松ぽっくり。
マチヌ ニー [ma⸢ʧi⸣nu ⸣niː]松の根。
マチヌパー アーシ [ma⸢ʧi⸣nupaː ⸢ʔaː⸣ʃi]子供の遊戯の名。松葉の喧嘩。松の葉を互いに根元の方を掛け合わせて引張り合い、切れた方を負けとする遊び。「松の葉合わせ」の義。子供は正月の門松を廃棄する際に、松葉を合わせて引き合いながら、その強さを競って遊んだ。森林愛護運動が起ってからは門松を飾ることが廃止され、その遊びも見られなくなった。
マチバーリ カサバーリ [ma⸢ʧibaːri⸣ kḁ⸢sabaːri]まつわり、{絡}{カラ}まりつくこと。「まつわり<{纏}{マツ}わり>からまり<絡まり>」の転訛したもの。
マチバールン [ma⸢ʧibaːruŋ]自動まつわり({纏}{マツ}わり)つく。子供が母親にまとい({纏}{マトイ})つく。
マチフニ [⸣maʧiɸuni]松の木で作った{刳}{ク}り舟。直径50~60センチ、長さ約5メートルの⸣マチキー[⸣maʧikiː](松材。松の幹。「松木」の義)を刳り貫いて作った舟。明治18年頃の鳩間島には丸木舟が13隻あったという「鳩間島巡検統計誌」(田代安定)。この丸木舟に乗って西表島へ通い、人頭税を納めるために水田耕作をした。
マチブルン [ma⸢ʧiburuŋ]自動{1}仕事に熱中する。夢中になる。耽る。没頭する。「まつわる(纏わる)」の転訛したもの。「~藤波の思纏<オモヒマツハリ>若草の~。万、3248」、「縈、マツハレリ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
マチブルン [ma⸢ʧiburuŋ]自動{2}女性に{惚}{ホ}れて{現}{ウツツ}を{抜}{ヌ}かす。芸事に現を抜かす。
マチヤー [ma⸢ʧijaː]店。商家。商店。町屋。「店家、マチヤ、坐売舎也」『色葉字類抄』、「Machiya.マチヤ(町屋) 町の家」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マチャーヘー [⸣maʧaːheː]人名。「真津氏」の義。大城真津氏の愛称。⸣マチャーヒー[⸣maʧaːçiː]ともいう。
マチャーヘースニ [⸣maʧaːheːsuni](海底地名)。マチャーヘー曽根。大城真津氏がカツオ漁船のザ⸢コー⸣バ[ʣa⸢koː⸣ba](餌獲り場。「雑魚獲り場」)とした曽根。フ⸢ターチズニ[ɸu̥⸢taːʧiʣuni](二つ曽根)の内側で、ヤ⸢マ⸣タジル[ja⸢ma⸣taʤiru]の南側にある
マチヤマ [⸣maʧijama]松林。松の森。「松山」の義。
マチリ [ma⸢ʧiri]祭り。
マチンパー [ma⸢ʧim⸣paː]松葉。「松の葉」の転訛したもの。鳩間島には琉球松は自生していない。西表島には見事な琉球松が繁茂していたが、多くは戦時中に伐採された。伐採されて枯れた松の幹や根からは松根油を含んだ、ア⸢カ⸣シ[ʔa⸢ka⸣ʃi](あかし<灯>)がとれた。終戦直後は、これを鉛筆大に割って、二三本ずつ燃やしてランプの代用にしていた。
マツォー [⸣maʦoː](人)男性の名。名称、呼称にいう。⸣マツァー[⸣maʦaː](眞津)ともいう。明治時代の男子の名前には「松」、「眞津」、「多呂」、「多良」と戸籍に記される人名が多い。明治以後は戸籍上の大和風の名前と日常家庭で呼ばれる旧来の童名があった。カ⸢ザケヌ⸣ マツォーザー[ka⸢ʣakenu⸣ maʦoʣaː](加治工の眞津兄さん)は、戸籍上の名は「加治工実」である
マッカーラ [mak⸢kaːra]真っ赤。
マッカク [⸢makkaku]真四角。正方形。
マックルー [mak⸢kuruː]真っ黒。
マッコー [⸣makkoː](植)木の名。盆栽用植物。ハリツルマサキ。
マッサ [⸢massa](動)魚の名。和名、テングハギの仲間。体長は80センチに達するというが、鳩間島ではあまり漁獲されない
マッシル [maʃ⸢ʃiru]名・形動真っ白。純白である。標準語からの借用語が転訛したもの。
マッシング [maʃ⸢ʃiŋgu]{1}真っ直ぐに。
マッシング [maʃ⸢ʃiŋgu]{2}(名)真っ直ぐ。正直。
マッシング [maʃ⸢ʃiŋgu]名・形動真っ直ぐ。少しも曲がっていないこと。老年層の使用語。
マッスグ [mas⸢sugu]名・形動真っ直ぐ。少しも曲がっていないこと。標準語からの借用語か。若年層の使用語。
マッタキ [mat⸢taki]全く。完全に。そっくり。「Mattacu.マッタク(全く).副詞.確かに疑いも無く,または,すべて,完全に」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マットーバ [mat⸢toːba]真っ直ぐ。真っ正直。
マットーン [⸢mattoː⸣ŋ]正直である。真っ直ぐである。
マッふァ [⸢maf⸣fa]枕。「枕、万久良(まくら)」『和名抄』。「Macura.マクラ(枕)枕.Macurauo catamuquru.(枕を傾くる)寝るために枕を{整}{トトノ}える」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マッふァイズ [⸢maf⸣faʔiʣu](動)魚の名。和名、ハコフグ(体長約30センチ)。和名、コンゴウフグ(体長約40センチ)の総称。形態が枕に似ることから命名された。⸢ブー⸣ナー[⸢buː⸣naː](ふぐ<河豚>)ともいう。⸢マッ⸣ふァイズ[⸢maf⸣faʔiʣu]も⸢ブー⸣ナー[⸢buː⸣naː]も全く食しない。網にかかっても捨てた
マツラ [ma⸢ʦu⸣ra]船の⸢カー⸣ラ[⸢kaː⸣ra](竜骨)に据え付けるL字型、V字型の肋骨。多くはV字型、L字型の股木を利用していた。これに板を接ぎ合わせて伝馬船の船体を造っていた。
マツン [ma⸢ʦuŋ]他動まつる。神仏に供物を供える。「祭る、祀る」の義。「~神のみ坂に奴佐麻都理<ヌサマツリ>~。万4402」、「Matçuri,u,utta.マツリ、ル、ッタ(祭り、る、った)神(Camis)に対して祭礼や儀式を行い、いけにえを捧げ、祈願をする.」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マティカンティ [ma⸢tikan⸣ti]待ち遠しいさま。待ちかねること。待ちあぐむこと。その状態になることを待ちわびること。
マティングリサン [ma⸢tiŋguri⸣saŋ]待ちづらい。待ち兼ねる。待ちきれなくなる。「待ち苦しい<待ち難い>」の義で、厳しい状況表現が中心的意味。「Machicane.uru,eta.マチカネ、ヌル、ネタ(待ち兼ね、ぬる、ねた)待ちきれないほどになる」『邦訳日葡辞書』の語形に対応するマ⸢ティカン⸣ティ[ma⸢tikan⸣ti](待ち兼ねて。待ち遠しい)は、「期待して待つ」ことが中心意味。
マトー [ma⸢toː](動)魚の名。和名、イスズミ(体長約55センチ、薄い銀色の体色)。鳩間島では大型の成魚は、あまり漁獲されなかった
マトーナ [ma⸢toːna]又こなし(またこなし<又熟し>)。二度耕し
マトーナー [ma⸢toːnaː]又ごな(熟)し。田圃を二度目に耕すこと。マ⸢タ[ma⸢ta](又)に「Conaxi,su,aita.コナシ、ス、イタ(こなし、す、いた)、Tçuchiuo conasu(土をこなす)粘土を捏ねる」『邦訳日葡辞書』が融合して形成され、更に転訛したもの。ア⸢ロー⸣ナ[ʔa⸢roː⸣na](水田の初耕し<初起こし。粗こなし>)の後、マ⸢トーナ[ma⸢toːna](又起こし。又こなし)、⸢サン⸣トゥ[⸢san⸣tu](三度耕し<三度こなし>)をして田植えをするのが普通であった。⸢マイフナー[⸢maiɸunaː](働き者<立派な男>)は、⸢ユントゥ[⸢juntu](四度こなし)までするので、その人は村の誉れと言われたという。
マトゥ [ma⸢tu]的。目標。「的、万斗(まと)、射的也」『和名抄』。「Mato.マト(的)射垜(あずち)に立てる標的」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マドゥ [⸣madu]{1}暇。あいた時間。
マドゥ [⸣madu]{2}時間的な間隔。
マドゥキドゥ [ma⸢du⸣kidu]すきま(隙間)。空き間。ABCB型の重言。「間遠・気遠」の義。「~鳴き行く鶴の麻登保久<マトホク>~。万、3522」、「~近からむと思ひつるを、されどけどほしかりけり」『源氏物語 帚木』の「間遠・気遠」が転訛したものか。空間的、時間的に離れたものを表す。
マドゥスクル [ma⸢dusu̥ku⸣ru]{間作}{カン|サク}。麦や粟の畝や株の間に植えてつくる大豆など。
マドゥ ヌクン [ma⸢du nukuŋ]まどお({間遠}{マ|ドオ})になる。往き来が遠のいていく。関係が薄れていく。キ⸢ドゥ ヌクン[ki⸢du nukuŋ]({気遠}{ケ|ドオシ}になる。気遠退く)ともいう。
マドゥヌ ムヌ [ma⸢du⸣nu ⸣munu]おやつ。間食。食事と食事の間に食べるもの。「間の物」の義。「~鳴き行く鶴の麻登保久<マトホク>思ほゆ。万、3522」の形容詞語幹の名詞化したものが意味派生したもの。
マドゥヌムヌ [ma⸢dunu⸣munu]魔物。悪霊。「魔道のもの」の義か。無縁仏で成仏できずにさ迷って、道行く人に供物をねだったり、頼みごとをして危害を加えると信じられている。キ⸢ドゥヌ⸣ムヌ[ki⸢dunu⸣munu](「外道のもの」の義か)と対語で用いられる。乳幼児を連れて夜間外出する必要がある場合、マ⸢ドゥヌ⸣ムヌ(魔道のもの)に乳幼児をさらわれぬよう、眉間に鍋墨を付けたり、祖母が舌で眉間を{舐}{ナ}めてやったりした。
マドゥ パカラウン [ma⸢du⸣ pḁ⸢ka⸣rauŋ]合間をぬう。合間を見計らう。物事の途切れる間の短時間を活用する。
マドゥマドゥ [ma⸢du⸣madu]ひまひま(暇暇)。時々。
マトゥマルン [ma⸢tumaruŋ]自動まとま({纏}{マトマ})る。ひとかたまりになる。整った状態になる。
マトゥマルン [ma⸢tumaruŋ]自動{2}全うする。
マトゥミルン [ma⸢tumiruŋ]他動まとめ(纏め)る。ひとかたまりにする。整った状態にする。
マトゥムン [ma⸢tumuŋ]他動まとめ(纏め)る。ひとかたまりにする。整った状態にする。総括する。
マトゥン [⸣matuŋ]他動待つ。「之保麻都等<シホマツト>~。万、3594」の「麻都」の転訛したもの。
マドゥン キドゥーン ナーヌ [ma⸢duŋ⸣ kiduːn ⸢naː⸣nu]暇も余裕もない。隔たりがない。物理的心理的距離がない。ぎっしりと詰まっている。「間遠も気遠もない」の義。
マナー [⸣manaː]どこ(何処)に。代名詞⸣マー[⸣maː](どこ<何処>)に、格助詞⸣ナー[⸣naː](に)が付いた形成された形。
マナマ [ma⸢na⸣ma]{1}今。現在。接頭語⸢マ[⸢ma](真実)が名詞⸣ナマ[⸣nama]に付いて形成された形。
マナマ [ma⸢na⸣ma]{2}すぐ。やがて。直ちに。
マナマーキ [ma⸢namaː⸣ki]連・副{1}今まで。先刻まで。若年層では、マ⸢ナバー⸣キ[ma⸢nabaː⸣ki](今まで)ともいう。
マナマーキ [ma⸢namaː⸣ki]連・副{2}陳述副詞的用法。未だに。まだ。打ち消しの語を伴って「未だに~ない」のように用いられる。
マナマ カキティン [ma⸢na⸣ma kḁ⸢ki⸣tiŋ]今もって。いまだに。「今にかけても」の義。
マナマグル [ma⸢na⸣maguru]いまごろ(今頃)。
マナマ シキティン [ma⸢na⸣ma ʃi̥⸢ki⸣tiŋ]いまだに。いまなお。今もって。
マナマジブン [ma⸢na⸣maʤibuŋ]今時分。今の時期。今頃。
マナマタ [ma⸢namata]先刻。さきほど。今しがた。ついさっき(先)。「いま先」の義。マ⸢ナマッタ[ma⸢namatta](先刻。強調表現)ともいう。
マナマトー [ma⸢na⸣matoː]今には決して~ない。今すぐには決して~ない。今には~。「今とは」の義。下に打ち消しの語を伴って用いられる陳述副詞的用法。
マナマ ドーレーラ [ma⸢na⸣ma ⸣doːreːra]今頃になってから。いまさら<今更>に。この期に及んで。
マナマ ナートー [ma⸢na⸣ma ⸢naː⸣toː]今なんぞ~ない。今には~ない。今更~ものか、~ない。
マナマ ナリ [ma⸢na⸣ma ⸣nari]{1}今になって。今までに。
マナマ ナリ [ma⸢na⸣ma ⸣nari]{2}いまさら(今更)。
マナマヌ アイ [ma⸢nama⸣nu ⸣ʔai]この間。この間ずっと。今までの間。
マナマヌ パンシ [ma⸢nama⸣nu ⸢paŋʃi]当面。さしあたり。当座しのぎ(凌ぎ)。「今の外し」の義。
マナマバーキ [ma⸢namabaː⸣ki]今まで。マ⸢ナマー⸣キ[ma⸢namaː⸣ki](今まで。{SqBr}ma⸢namamaː⸣ki{/SqBr}の略)というのが普通。上接語の末尾音がマ行音、鼻音の場合、[b]が[m]に変わる自由変異の傾向が強い。
マナマパダ [ma⸢na⸣mapada]今の年代(の子供)。今の年頃(の子供)。今時(の子供)。当世(の子供)。
マナマブカラ [ma⸢na⸣mabukara]{1}今ぐらい。今の程度。この程度。マ⸢ナ⸣マ[ma⸢na⸣ma](今)に副助詞⸣ブカラ[⸣bukara](物事を示して、それとほぼ等しい分量や程度を表す)が付いた形。
マナマブカラ [ma⸢na⸣mabukara]{2}今ぐらい<時間的な程度>。今頃。
マナマプス [ma⸢na⸣mapu̥su]今人。現代の人。ム⸢カ⸣シプス[mu⸢ka⸣ʃipu̥su](昔の人。昔人)の対義語。
マナマムティ [ma⸢na⸣mamuti]今もって。いまだに。今でも。文末に打ち消しの表現を伴って、「今もって~ない」のように陳述副詞的に用いられる。
マナマユー [ma⸢na⸣majuː]今の世。現代。ム⸢カ⸣シユー[mu⸢ka⸣ʃijuː](昔の世。前代)の対義語。
マナマンチン [ma⸢namanʧiŋ]直ちに。いますぐに。じきに。あっという間に。「唯今の内に」の転訛したもの。
マニアースン [ma⸢niʔaː⸣suŋ]他動間に合わせる。時刻に遅れないようにする。
マニアウン [ma⸢ni⸣auŋ]自動間に合う。予定された時刻や日程に遅れない。
マニツァ [ma⸢ni⸣ʦa]俎板。魚を料理するのに用いる板。「俎、末奈以太(まないた)」『和名抄』の転訛したもの。普通は厚さ約3センチ、巾約15センチ、長さ約30センチの板を用いた。時には、その板に脚を付けたものも使った。脚付きの俎板は、庭先で魚を捌いたり、蒲鉾を作る際に魚を三枚おろしにするのに用いた。
マニツァイシ [ma⸢ni⸣ʦaʔiʃi]俎板石。ピ⸢ナイサキ[pi⸢naisaki](ピナイ崎)の海中にある岩。俎板のように見えることから命名された。⸢グンカンイシ[⸢guŋkaniʃi](軍艦石)ともいう。軍艦の形をした岩。古老たちはこれを、マ⸢ニ⸣ツァイシ[ma⸢ni⸣ʦaʔiʃi](俎板石)という。鳩離島の⸢パンガマイシ[⸢paŋgamaiʃi](羽釜形の石)と対を成して、神話的空間世界をなすと考えられる。
マニッカ [ma⸢nik⸣ka]怠け者。ずるい奴。
マニッカ マーシノ [ma⸢nik⸣ka ⸢maːʃi⸣no]怠け者めが。他人を{罵}{ノノシ}る言葉。{罵詈}{バ|リ}表現。⸢マーシ⸣ノ[⸢maːʃi⸣no]は、「Maxi.マシ(猿) Maxira(猿)と言う方がまさる.猿」『邦訳日葡辞書』の転訛したものか。
マニヤースン [ma⸢nijaː⸣suŋ]他動間に合わせる。予定された時刻や日程に合うようにする。
マビキ [ma⸢bi⸣ki]間引き。「Mabiqi,u,ijita.マビキ、ク、イタ(間引き、く、いた)何か種子を蒔いた物が非常に密生しているのを、他の所へ移し植えるために引き抜く。Yasaiuo mabiqu(野菜を間引く)」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マフカー [⸢maɸu̥kaː]真っ盛り。最中。「Mappucura.マップクラ(真脹ら)何かが円い物のまん中、または、中心.また何かが栄える時期、あるいは、その力と勢いのある時期」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マフタネー [⸣maɸu̥taneː]石垣島の四個字の山手の平民集落。
マブル [ma⸢bu⸣ru]魂。霊魂。「守り」の義。「~浪かしこみ風守<かぜマモリ>~。万、1390」の転訛か。人間の体内に宿っている魂のこと。極度に驚いたり、事故に遭遇したりすると、そこでマ⸢ブ⸣ル[ma⸢bu⸣ru]が人体から遊離してさ迷うという。魂の抜けた体は、気だるくなり、病弱になると信じられている。子供が樹上から落ちたり、転倒して怪我をすると、マブルが落ちるので、その現場から小石や砂を掴んで懐に入れ、マブルを逃がさぬようにした。
マブル ウティルン [ma⸢bu⸣ru ʔu⸢ti⸣ruŋ]魂が落ちる。魂が抜け落ちる。「守り<守護霊・魂>が落ちる」の義。魂が肉体より抜け落ちる。遊離魂となる。何かにひどく驚かされると魂が肉体より遊離していくと信じられている。そして、魂の抜け殻となった肉体は生気を失い、病弱になると信じられている。
マブルカルイ [ma⸢bu⸣rukarui]「魂籠め」の義。⸣カルイ[⸣karui]は「Carui,u,uta.カルイ、ゥ、ゥタ(かるひ、ふ、うた)物を背負う.下(X)の語」『邦訳日葡辞書』の転訛したものか。マ⸢ブ⸣ルクミ[ma⸢bu⸣rukumi](魂籠め)と同じ。人体から遊離して浮遊している魂を追まわし、囲いまわして連れ戻し、元の体に魂籠めをする儀式。
マブルカルイヌ ニンガイフチ [ma⸢bu⸣rukaruinu ⸢niŋgai⸣ɸu̥ʧi]{魂籠}{タマ|ゴメ}めの祝詞。「マブル籠め願い口」の義。マ⸢ブ⸣ル(魂)が人体より抜け落ちた場合、サ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司。神女。女性神職者)か、祖母に依頼して魂籠めの儀式を執り行ってもらうが、その際に次のような[g]{祝詞}{ノリト}を唱える。{Sg_1}⸣ヌーディマリヌ マ⸢ブ⸣ル ⸣プサティ ドー⸢ディン キュー⸣ヌ ⸢カイピール⸣バ ム⸢トゥ⸣バ ⸣シー ウ⸢ガミトゥー⸣シ ア⸢ギル⸣ ウ⸢ガミ⸣ヌ ニ⸢ガイ⸣ヤー ドー⸢ディンマー⸣ ピ⸢ナカンガナシヌ⸣ マイシー シ⸢キウキ⸣ トゥ⸢リウ⸣キ タ⸢ブ⸣ローレーティ ウ⸢ス⸣バユシ ウ⸢ガマ⸣リ タ⸢ブ⸣ローリ[⸣nuːdimarinu ma⸢bu⸣ru ⸣pu̥sati doː⸢diŋ kjuː⸣nu ⸢kaipiːru⸣ba mu⸢tu⸣ba ⸣ʃiː ʔu⸢gamituː⸣ʃi ʔa⸢giru⸣ ʔu⸢gami⸣nu ni⸢gai⸣jaː doː⸢dimmaː⸣ pi⸢nakaŋganaʃinu⸣ maiʃiː ʃi̥⸢kiʔuki⸣ tu⸢ri⸣ʔuki ta⸢bu⸣roːreːti ʔu⸢su⸣bajuʃi ʔu⸢gama⸣ri ta⸢bu⸣roːri](何年生まれの人が、マブル<魂>が欲しいので、どうぞ今日の{佳日}{カ|ジツ}をもとにして、黄金の佳日をもとにして拝み通しあげる拝みの願いを、どうぞ火の神様の御前<御自身>がお聞き受け、お取り受け下さってお側にお寄せになって、拝まれてください){Sg_2}(ドー⸢ディン⸣ティ ⸢シー)⸢ゴー⸣サナガラ ⸢ヨーミ⸣サナガラ ウ⸢ス⸣バユリ ウ⸢ガミ トゥー⸣シ ア⸢ギル⸣ ニ⸢ガイ⸣ヤー ドー⸢ディンマー⸣ ピ⸢ナカンガナシヌ⸣ マイ トゥ⸢クヌ⸣マイ ッ⸢サリ⸣ シ⸢キウ⸣キ トゥ⸢リウ⸣キ タ⸢ボー⸣ローレーティ ウ⸢ス⸣バユシ ウ⸢ガマ⸣リ タ⸢ブ⸣ローリ ドー⸢ディン⸣ ドー⸢ディン⸣ティ ⸢シー⸣ ウ⸢ス⸣バユリ ウ⸢ガミトゥー⸣シ ア⸢ギル⸣ ニ⸢ガイ⸣ヤー ⸢ジューニホン⸣ヌ コー ⸢トゥー⸣シ ⸣アギ ⸣ヌーディマリヌ ⸢トゥーヌ ティー⸣ピサ ウ⸢サーシ⸣ ス⸢ブシピサ⸣ ウ⸢シトーシ⸣ ウ⸢ガミトゥー⸣シ ア⸢ギル⸣ ニ⸢ガイ⸣ヤー ドー⸢ディンマー カンヌ⸣マイ ⸢ミートゥクルヌ カンヌ⸣マイ ドー⸢ディン⸣ シ⸢キウキ⸣ トゥ⸢ル⸣ウキ タ⸢ブ⸣ローレーティ ウ⸢ス⸣バユシ ウ⸢ガマ⸣リ タ⸢ブ⸣ローリ ⸢キュー⸣ワ ⸣カイブー ⸣ヌーディマリヌ ア⸢サビブリバ シー⸣ ア⸢ラ⸣クンケン キ⸢ムウダラ⸣キ ン⸢ニウダラキ シーベー⸣ティ ⸢ティーダル⸣サ ⸣ピサダルサ ⸢ティー⸣パン ⸣ダルサ ⸢ティーダラダラー⸣シ ⸢ブーユンダ⸣ ノー⸢シン⸣ マ⸢ブル⸣ヌ ⸣ドゥーナー シゥ⸢カ⸣ン ⸣ウティ ⸢ベー⸣ティル ア⸢サビブリ シー ベー⸣ティル ⸣カイ ⸢ブーダー⸣バ ドー⸢ディンマー⸣ アイ ヤ⸢ル⸣スクン ⸢デー⸣カー ナ⸢カミ⸣チェーラ ⸢アンタ⸣ナー ⸣ヌーディマリヌ マ⸢ブローマ⸣ヌ ア⸢サビブリバ ⸢シー⸣ ア⸢ラ⸣クスクン ⸢デー⸣カー ドー⸢ディンマー カンヌ⸣マイシ ⸢ウイマーシ⸣ カ⸢ルイマー⸣シ ⸢サーロー⸣リ ⸣ヌーヤーヌ ⸣ヌーディマリヌ ⸢フンダメー⸣ル ⸢ヤー⸣ウチ キ⸢ナイウチ トゥー⸣リ ウ⸢フムン⸣ヌ ウ⸢チェー⸣ニ ン⸢カイシミ⸣ タ⸢ボー⸣リ ン⸢カイシミ⸣ タ⸢ボー⸣レーティ マ⸢ナマ⸣ヌ ⸢カイ⸣トゥキナー ドー⸢ディン⸣ マ⸢ブル⸣ヌ ミ⸢ジ⸣ プサティ ⸢オー⸣ル スクン ⸢デー⸣カー ミ⸢ジヌ⸣ パ⸢チーン⸣ シ⸢ル⸣ミジ ア⸢マ⸣ミジ チャン⸢トゥ⸣ イ⸢リー⸣ ウ⸢ツァナ⸣クーン ⸣グシパナーン チャン⸢トゥ⸣ イ⸢リー⸣ マ⸢ミ⸣ヌ ⸣スーン バ⸢カシ⸣ シケーバ マ⸢ナ⸣マ ヤ⸢ラビ サーロー⸣リ ⸢ブー⸣ヌ ⸣タマ ナ⸢ナチ⸣ヌ ⸣タマ イ⸢チチ⸣ヌ ⸣タマ ⸢ミーチヌ⸣ タマナー ク⸢ミ⸣シミ タ⸢ブ⸣ローリ マ⸢ブロー⸣マ マ⸢ブロー⸣マ ⸢イー⸣ユン マ⸢ミ⸣ヌスーン バ⸢カシ⸣シケーバ ダン⸢ティ⸣ キー ッ⸢ふァイ⸣ ッ⸢ふァイ[doː⸢din⸣ti ⸢ʃiː goː⸣sanagara ⸢joːmi⸣sanagara ʔu⸢su⸣bajuri ʔu⸢gamituː⸣ʃi ʔa⸢giru⸣ ni⸢gai⸣jaː doː⸢dimmaː⸣ pi⸢nakaŋganaʃinu⸣mai tu̥⸢kunu⸣mai s⸢sari⸣ ʃi̥⸢kiʔu⸣ki tu⸢riʔu⸣ki ta⸢boː⸣reːti ʔu⸢su⸣bajuʃi ʔu⸢gama⸣ri ta⸢bu⸣roːri doː⸢din⸣ doː⸢din⸣ti ⸢ʃiː⸣ ʔu⸢su⸣bajuri ʔu⸢gamituː⸣ʃi ʔa⸢giru⸣ ni⸢gai⸣jaː ⸢ʤuːnihon⸣nu ⸣koː ⸢tuː⸣ʃi ⸣ʔagi ⸣nuːdimarinu ⸢tuːnu tiː⸣pi̥sa ʔu⸢saːʃi⸣ su⸢buʃipisa⸣ ʔu⸢ʃitoːʃi⸣ ʔu⸢gamituː⸣ʃi ʔa⸢giru⸣ ni⸢gai⸣jaː doː⸢dimmaː kannu⸣mai ⸢miːtukurunu kannu⸣mai doː⸢diŋ⸣ ʃi̥⸢kiʔuki⸣ tu⸢ru⸣ʔuki ta⸢bu⸣roːreːti ʔu⸢su⸣bajuʃi ʔu⸢gama⸣ri ta⸢bu⸣roːri ⸢kjuː⸣wa kai⸢buː⸣ nuːdimarinu ʔa⸢sabiburiba ʃiː⸣ ʔa⸢ra⸣kuŋkeŋ ki⸢muʔudara⸣ki n⸢niʔudaraki ʃiːbeː⸣ti ⸢tiːdaru⸣sa pi̥⸢sadarusa tiː⸣pan ⸣darusa ⸢tiːdaradaraː⸣ʃi ⸢buːjunda⸣ noː⸢ʃim⸣ ma⸢buru⸣nu ⸣duːna sï̥⸢ka⸣n ʔuti⸢beː⸣tiru ʔa⸢sabiburi ʃiːbeː⸣tiru ⸣kai ⸢buːdaː⸣ba doː⸢dimmaː⸣ ʔai ja⸢ru⸣su̥kun ⸢deː⸣kaː na⸢kami⸣ʧeːra ⸢ʔanta⸣naː ⸣nuːdimarinu ma⸢buroːma⸣nu ʔa⸢sabiburiba ʃiː⸣ ʔa⸢ra⸣kusu̥kun ⸢deː⸣kaː doː⸢dimmaː kannu⸣maiʃi ⸢ʔuimaːʃi⸣ ka⸢ruimaː⸣ʃi ⸢saːroː⸣ri ⸣nuːjaːnu ⸣nuːdimarinu ⸢ɸundameː⸣ru ⸢jaː⸣ʔuʧi ki⸢naiʔuʧi tuː⸣ri ʔu⸢ɸumun⸣nu ʔu⸢ʧeː⸣ni ŋ⸢kaiʃimi⸣ ta⸢bu⸣roːreːti ma⸢nama⸣nu ⸢kai⸣tukina doː⸢dim⸣ ma⸢buru⸣nu mi⸢ʤi⸣ pu̥sati ⸢ʔoː⸣ru su̥kun ⸢deː⸣kaː mi⸢ʤinu⸣ pḁ⸢ʧiːn⸣ ʃi⸢ru⸣miʤi ʔa⸢ma⸣miʤi ʧan⸢tu⸣ ʔi⸢riː⸣ ʔu⸢ʦana⸣kuːŋ ⸣guʃipanaːn ʧan⸢tu⸣ ʔi⸢riː⸣ ma⸢mi⸣nu ⸣suːm ba⸢kaʃi⸣ʃi̥keːba ma⸢na⸣ma ja⸢rabi saːroː⸣ri ⸢buː⸣nu ⸣tama na⸢naʧi⸣nu tama ʔi⸢ʧiʧi⸣nu ⸣tama ⸢miːʧinu⸣ tamanaː ku⸢mi⸣ʃimi ta⸢bu⸣roːri ma⸢buroː⸣ma ma⸢buroː⸣ma ⸢ʔiː⸣jum ma⸢mi⸣nu ⸣suːm ba⸢kaʃi⸣ ʃi̥keːba dan⸢ti⸣ kiː f⸢fai⸣ f⸢fai](どうぞ、願わくば、と言って、恐れ多いことですが、お側近くに寄って拝み通して祈願し申し上げる願い事は、どうぞ火の神様、床の間の神様へ申し上げますから、お聞き届け取り受け賜って、お側へ寄せて祈願されて下さい。願わくば、どうぞと言ってお側に寄って拝み通し上げる願いは、十二本の香を灯し通して祈願し、何年生まれの者が、十の掌を合わせ、足膝を押し倒して拝み通し上げる祈願は、どうぞ神様、三箇所の神様、どうぞお聞き届け、取り受け下さって、お側へ寄せさせ、拝まれ<祈願され>て下さい。今日は、このように、何年生まれの者が遊び{惚}{ホ}けているうちに、肝驚き胸驚きをしているので、手がだるく、足がだるく、手も足もだるく、手がだらだらしているので、きっとマブル<魂>が肉体に付かずに抜け落ちているので、魂が遊び惚けているので、このようにしているでしょうから、どうぞ、そうであるならば、中道から東の方に、何年生まれのマブローマ<幼い魂>が遊び惚けているようでしたらば、どうぞ神様で魂を追い回し、囲い回し<負ぶい回して>てお連れ下さって、何家の、何年生まれが踏み固めた<建立した>家内、家庭内、通り大門の内側に向かわしめてください。向かわしめてくださって、今の佳き時に、どうぞ魂<マブル>が水を欲しがっておられるのなら、水のお初も白水<神酒>、雨水<真水>もちゃんと入れ、{供物}{ク|モツ}もお酒も米のお初もちゃんと入れ、豆のお汁も炊いてありますから、今すぐ呼んで連れてきてくださって、麻糸の玉の、七つの玉、五つの玉、三つの玉に籠めさせてください。マブローマ<幼い魂>よ、マブローマよ、ご飯も豆も炊いてあるから、早くきてお食べ、すぐ来てお食べ)と唱える。⸢マブル籠め」は、夕食の頃に執り行われるのが普通であったから、その時分に来客があると大変に喜ばれた。その客が男性の場合は最高に良いとされた。来客に連れられてマブローマが門より家の中へ入ってくると信じられているからである。マブル<魂>は水と大豆のお汁が大好物であるといわれている
マブルクミ [ma⸢bu⸣rukumi]魂籠め。マ⸢ブ⸣ルカルイ[ma⸢bu⸣rukarui]ともいう。戸外で転倒したり、悪霊に遭遇して極度に驚いたり、何かの事故を起こして驚愕すると、魂が肉体より抜け落ちて浮遊していくので、病弱になると信じられている。その浮遊している魂を呼び戻し、体内に籠めるための祈願を執り行う儀式。樹木から落ちたり、道で転倒して怪我をすると、事故現場の小石や土砂を掴みとって懐中に入れるだけでも取り{敢}{ア}えず魂を拾うことが出来ると信じられている。そして後日、改めて正式に魂籠めの祈願を執り行った。魂が抜け落ちると、体がダラダラして気だるくなり、何事に対しても意欲が湧かなくなっていき、寝込むようになるという。顔色も青白くなり、影が薄くなっていくので、そんな時は浮遊している魂を呼び寄せ、⸢ブー⸣ジナ[⸢buː⸣ʤina](麻糸で7、5、3の結び玉を作ったもの)で縛って逃がさないようにし、衣類の袖に結び付け、そのブージナを首に穿かせることによって体内に魂を戻すことが出来ると信じられている。肉体から遊離したマ⸢ブ⸣ル(魂)は、よく水を欲しがるという。それ故、魂籠めの祈願では、必ず水と豆腐(または大豆の)お汁を供物として供える。お膳の最前列に、⸣サバン[⸣sabaŋ](茶碗)に水を入れて置き、次に⸣パナ[⸣pana](お皿に白米を入れたもの)を⸢イッチー[⸢ʔitʧiː](一対)、塩を皿に盛ったもの、それに⸣グシ[⸣guʃi](神酒)を供えて祈願する。マブルを呼び寄せてくると、水を入れた茶碗の上に三回⸢ブー⸣ジナ(麻糸)を回して待機する。祈願の祝詞が終わると、⸣ヌーディマリ[⸣nuːdimari](何年生まれ)の{誰某}{ダレ|ソレ}と名前を唱えて、マ⸢ナマ⸣ヌ ⸢カイ⸣トゥキナー マ⸢ブ⸣ル ク⸢ミ⸣シミ タ⸢ブ⸣ローリ(今の佳き時に魂を籠めさせてください)と唱え、ブージナで縛って魂籠めをする。そして供物の⸣パナ(白米)から3回米を摘んで紙に入れ、塩も一摘み取って入れ、マブルと一緒に包んで着物の袖に入れ、袖の両端をしっかりと結んでおく。祈願する人が指を水に付けて水をとり、三回魂籠めをする本人の額に塗ってやって儀式は終了する。
ママ [ma⸢ma]接頭まま(継)。血のつながらない親子、兄弟の間柄。
ママ [ma⸢ma]{PoS_1}{1}まま。もとと同じ状態であること。⸢マーマ[⸢maːma](まま)ともいう。
ママ [ma⸢ma]{2}その通りにすること。動詞の連体形に付いて、上接語の意味内容の儘になること。
ママ [ma⸢ma]接助{PoS_2}(接続助詞的)物事が次の事態に進展せず、そのままの状態であることを表す。
ママ [ma⸢ma]接尾{PoS_3}(接尾語的)~ごと。~と一緒に。名詞について、そのものごとの意味を表す。
ママウヤ [ma⸢maʔuja]ままおや(継親)。
ママキョーダイ [ma⸢makjoːdai]まま(継)兄弟姉妹。
ママッふァ [ma⸢maffa]ままこ(継子)。ナ⸢サンッ⸣ふァ[na⸢saŋf⸣fa](産さぬ子)ともいう。「Mamaco.ママコ(継子)継子」『邦訳日葡辞書』の転訛。
ママルン [ma⸢maruŋ]自動塗られる。くっつかれる。接着される。液体などが体に塗布される(受身形で用いられる)。他動詞、マ⸢ミルン[ma⸢miruŋ](塗る。くっつける)、マ⸢ムン[ma⸢muŋ](塗る。くっつける)が受身動詞に派生変化したもの。
マミ [⸣mami](植)豆。豆類の総称。「道の邊のうまらの末<うれ>に這ほ麻米<マメ>乃~。万、4352」。「大豆、一名菽、万米<まめ>」『和名抄』の転訛。「Mame.マメ(豆)日本の豆、または、大豆.」『邦訳日葡辞書』の転訛。
マミ [ma⸢mi]牛や豚の腎臓。形が豆に似ていることからの命名という『石垣方言辞典』。首里方言では、maami(腎臓)、hukumaami(心臓)という『沖縄語辞典』。
マミグル [ma⸢mi⸣guru]{1}まめがら(豆殻)。⸣マミ[⸣mami](豆)に、グ⸢ル[gu⸢ru](殻。屑。水などの飲み残し)が付いて形成された合成語。⸣グル[⸣guru](殻)は、「吾がやどの穂蓼古幹<フルカラ>~。万、2759」、「柄、賀良(から)、器物茎柯也」『和名抄』の転訛したものか。⸢ムン⸣グルクバガサ[⸢muŋ⸣gurukubagasa]は⸢麦藁で作った笠」の義。
マミグル [ma⸢mi⸣guru]{2}豆を収穫した後の畑。
マミッツァースン [ma⸢mitʦaːsuŋ]他動塗りたくる。塗りまくる。めちゃくちゃに塗る。「塗り散らす」の義。「まみれ(塗れ)」 の他動詞化したものか。⸢ヌッツァースンとも言う。
マミドーマ [ma⸢midoː⸣ma]竹富島の伝統的民謡と民俗舞踊の名称。農耕に従事する村人の生活の実態と収穫の喜びを写実的に、コミカルに、しかもアップテンポに描写することに成功した作品。「マ・ミド˜ー[ma・mido˜ː](真の乙女)」の義か。
マミナー [ma⸢mi⸣naː]{1}(植)モヤシ(萌やし)。
マミナー [ma⸢mi⸣naː]{2}痩せた人。
マミナーチャンプルー [ma⸢minaːʧam⸣puruː]萌やしの炒め物(チャンプルー)。老年層は、イ⸢ラキ⸣ムヌ[ʔi⸢raki⸣munu](炒りもの)という。
マミヌアン [ma⸢mi⸣nuʔaŋ]あずきあん(小豆餡)。「豆の餡」の義。ゆでた小豆に砂糖を混ぜ、さらに煮て練ったもの。餅の中に包み入れて{餡餅}{アン|モチ}にした。
マミヌカー [ma⸢mi⸣nukaː]連・名{1}豆の皮。
マミヌカー [ma⸢mi⸣nukaː]連・名{2}一張羅。一枚しかない着物。
マミヌクー [ma⸢mi⸣nukuː]きなこ(黄な粉)。「豆の粉」の義。大豆を煎って{碾}{ヒ}いて粉にしたもの。
マミヌ ニンガイ [ma⸢mi⸣nu ⸢niŋ⸣gai]豆の祈願。⸢ニンガチニン⸣ガイ[⸢niŋgaʦiniŋ⸣gai](名)の際に、⸢ヤーバン[⸢jaːbaŋ](「八番」の義か。八回祈願すること)の一つとして祈願されたもの。ア⸢ガマミ[ʔa⸢gamami](アズキ<小豆>)やク⸢マミ[ku⸢mami](ヤエナリ<緑豆>)、⸢トー⸣フマミ[⸢toː⸣ɸumami](大豆<豆腐豆>)等が稔るよう祈願する祭祀。戦後まで祈願されていたが、村行事が多いとのことで1960年ごろに廃止された。
マミマキ [ma⸢mi⸣maki]豆まき。豆の種を蒔くこと。
マミルン [ma⸢miruŋ]他動液体や軟膏、塗料などを塗りつける。塗る。「Mamexi,su.マメシ、ス(まめし、す)」『邦訳日葡辞書』がラ行四段活用に転訛したものか。マ⸢ムンとも言う。
マムリガミ [ma⸢muri⸣gami]守り神。守護神。標準語からの借用語。神歌では、⸣ウヤンガミ[⸣ʔujaŋgami](親神様)、マ⸢ブ⸣ルシュー[ma⸢bu⸣ruʃuː](守り主<神>)、カミガ⸢ナ⸣シ[kamiga⸢na⸣ʃi](神様)のように歌われている。/ウブシクヌ マブルシュー アミブシャヌ、 ウブトゥムルヌ カミガナシ アミブシャヌ、ウマンチュヌ ニガイヤ アミブシャヌ、アカカラジヌ ニガイヤ アミブシャヌ、タンディトートゥ マブルシュー アミブシャヌ、ガラクトートゥ カミガナシ アミブシャヌ。(大城の守り主<神>、雨が欲しゅうございます。大友利御嶽の神様、雨が欲しゅうございます。民衆<御万人>の願いは雨が欲しゅうございます、百姓の願いは雨が欲しゅうございます、どうぞ守り神様雨が欲しゅうございます、なにとぞ神様、雨が欲しゅうございます)(雨乞い歌)/『鳩間島古典民謡古謡集』
マムリヌ カン [ma⸢muri⸣nu ⸣kaŋ]守護神。「守りの神」の義。⸢コン⸣ジン[⸢kon⸣ʤiŋ](女性個人用の守り神。根神)のこと。その家の娘は床の間に⸢コン⸣ジンをたてて拝んでいた。嫁いでいく時には香炉を下げて嫁ぎ先の家の{床}{トコ}の間に移した。
マムルン [ma⸢mu⸣ruŋ]他動守る。守護する。「~筑紫の国は安多麻毛流<仇マモル>~。万、4331」の義。
マムン [ma⸢muŋ]他動液体や軟膏、塗料を{塗}{ヌ}りつける。塗る。「Mamexi,su.マメシ、ス(まめし、す)粟の粉や豆の粉などに餅を入れてするように、粉をつける.また、泥だらけにする、泥まみれにする。.上(Cami)では、Mabuxi,su(塗し、す)と言う」『邦訳日葡辞書』の転訛したものか。
マヤ [⸣maja](動)猫。鼠の害を防ぐために飼われていた。
マヤーサリン [ma⸢jaːsa⸣riŋ]自動妖怪などに化かされる。迷わされる。マ⸢ヤー⸣スン[ma⸢jaː⸣suŋ](化かす。惑わす。たぶらかす)の未然形に受身の助動詞⸣リン[⸣riŋ](れる、られる)が付いて形成された受身動詞。
マヤーブー [⸣majaːbuː](植)メドハギ(蓍萩)。メドギ(蓍木)。「猫の尾」の義。野原に自生しており、日常は雑草として利用されることのない植物であるが、⸢ソー⸣ラン[⸢soː⸣raŋ](お盆)には仏前へ食事を供える際の箸に作ったり、朝、昼、晩の食事を供えて線香を立てる直前に、ミ⸢ジヌ⸣クー[mi⸢ʤinu⸣kuː](<水の粉>の義か。無縁仏へのお布施として用意される供物で、砂糖黍の茎や茄子を小さく賽の目に刻んだものに米、小豆、昆布を刻んだもの等を加え、7回水洗いしたもの)を戸外へ弾き飛ばすのに用いるもの。長さ約30センチの箒状に結わえたもの。
マヤーリ ンジルン [ma⸢jaːri⸣ ʔn⸢ʤi⸣ruŋ]ものに{憑}{ツ}かれたように飛び出る。躍り出る。浮かれて出る。
マヤールン [ma⸢jaːruŋ]自動憑かれたように舞い上がる。何かに浮かされて起き上がる。調子にのって浮かれ出る。「舞い上がる」の転訛したもの。
マヤスクグル [⸣majasu̥kuguru](動)リュウキュウコノハズク『石垣方言辞典』。⸣ミンスクグル[⸣minsu̥kuguru](みみずく<木菟>)ともいうが、分類学的には不明。
マヤヌ カタ [ma⸢ja⸣nu kḁ⸢ta]猫の絵。歌謡語。
マヤヌ ッス ウズムン カタチニ [ma⸢ja⸣nu ⸣ssu ʔu⸢ʣumuŋ⸣ kḁtaʧini]仕事を粗雑にすること。いいかげんに仕事をすること。「猫が糞を埋めるように」の義。
マヤヌ フタイ [ma⸢ja⸣nu ɸu̥⸢tai]猫の額。面積の小さいことの比喩表現。
マユ [ma⸢ju]眉。まゆげ。「眉<マヨ>の如~。万、998」、「Maju.マユ(眉)眉.Mayuuo fisomuru(眉を{顰}{ヒソ}むる)悲しみや驚きのために、しかめ面をする、あるいは、いやな顔をする」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マユ [⸣maju]繭。蚕の繭。「繭、和名万由(まゆ)蚕衣也」『和名抄』、「Mayu.マユ(繭)蚕のまゆ」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。老年層は⸣マンムシヌ ⸢コー⸣マ[⸣mammuʃinu ⸢koː⸣ma](蚕の卵。「殻、和名与\kaeriten{㆑}貝<かひ>同、虫之皮甲也」『和名抄』)と言った。若年層は、⸢カイコ⸣ヌ ⸣マユ[⸢kaiko⸣nu maju](蚕の繭)という。
マユーン [⸣majuːŋ]自動迷う。「紕、漢語抄云、万与布(まよふ)、一云与流(よる)」『和名抄』の転訛したもの。
マユイルン [ma⸢jui⸣ruŋ]自動迷う。右往左往する。さまよう。「紕、漢語抄云、万与布(まよふ)、」『和名抄』、「Mayoi,oˆ,oˆta.マヨイ、ゥ、ゥタ(迷ひ、ふ、うた)誤る Mayoi ariqu(迷い歩く)道を知らないで迷い歩く」『邦訳日葡辞書』のラ行四段に転訛したもの。
マユヌ フタナカ [ma⸢junu⸣ ɸu̥⸢tanaka]眉と眉の間。みけん(眉間)。
マラ [⸣mara]{1}陰茎。「魔羅」の義。
マラ [⸣mara]{2}籾摺り臼の下の台にある回転軸となる棒。杭。石臼の下の台にある突起物。建築用材木のほぞ({枘}{ホゾ})。ろぐい(艪杭)。
マラキ [ma⸢raki]{PoS_1}⸢マイマラキ[⸢maimaraki](稲のまろげ<丸げ>。一巻き<30束>)。
マラキ [ma⸢raki]助数{PoS_2}30タ⸢バ⸣ル[ta⸢ba⸣ru](束)を一まとめにまろげた<丸げた>単位。
マラキカラキ [ma⸢rakikara⸣ki]稲、稲藁などは30束を一丸げに、茅などは直径約30センチほどの大きさに束ね丸げることの強調表現。ABCDBC型の重言。カラキ[karaki]は「Carague,uru,eta.カラゲ、グル、ゲタ({紮}{カラ}げ、ぐる、げた)荷物などを結ぶ、または、しばりつける」『邦訳日葡辞書』の転訛したものか。
マラクン [ma⸢rakuŋ]他動稲、稲藁などは30束を一丸げ<一巻き>にする。茅などは直径約30センチほどの大きさに束ね丸げる。
マラスン [ma⸢rasuŋ]他動{1}産ませる。誕生させる。「~吾が中の産礼出有<ウマレイデタル>~。万、904」の「ウマレ<生まれ>」に使役の助動詞⸣スン[⸣suŋ](せる。させる)が付いて転訛したものか。
マラスン [ma⸢rasuŋ]他動{2}酒や醤油を醸造す<産まらせ>る。豆腐を製造す<産まらせ>る。
マラタリムヌ [ma⸢ratari⸣munu]褌をしめないで男根を露出させ<垂らし>た者。思慮分別のない子供。ティ⸢ジリ⸣ビー[ti⸢ʤiri⸣biː](男性神職者)が台風の後片付けのために⸣ウボー[⸣ʔuboː](威部)へ立ち入る際は、褌の前を垂らして無分別者であることを{装}{ヨソオ}う必要があったという。
マラ タルン [⸣mara ⸣taruŋ]魔羅を垂れる。男が下着を着ないで男根を露出させる。
マラヌ サウ [ma⸢ra⸣nu ⸣sau]陰茎。「魔羅(男根)の竿」の義。
マラバスン [ma⸢rabasuŋ]他動{PoS_1}殴る。打ちのめす。「馬展、マロバス」(身を転倒させる。倒し伏す)『類聚名義抄』の転訛したもの。
マラバスン [ma⸢rabasuŋ]補動{PoS_2}動詞の連用形に付いて、上接語の意味を強める。
マラビッツァーン [ma⸢rabit⸣ʦaːŋ]すべっこい(滑っこい)。「転び易い」の義。「馬展、マロバス」『類聚名義抄』、「展 車専(コイマロビ)~。万、2274」の転訛したものか。
マラブン [ma⸢rabuŋ]自動転ぶ。まろぶ。転がる。{転倒}{テン|トウ}する。「展轉<コイマロビ> 恋はしぬとも~。万、2274」、「Marobi,u,oˆda.マロビ、ブ、ゥダ(転び、ぶ、うだ)地上に倒れる.」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
マラベークルベー [ma⸢rabeː⸣kurubeː]転転と転がるさま。まろび(転び)ころび。幼児が母親に駄々をこねて転がりながら泣き喚くさま。普通は、ク⸢ルベー⸣マラベー[ku⸢rubeː⸣marabeː](ころび<転び>まろび)と言う。
マラリヤ [mararija]マラリア。ハマダラカの媒介するマラリア原虫の血球内寄生による感染症。鳩間島では、老年層は⸢フイヤキ[⸢ɸuijaki](三日熱、二日熱マラリア。高熱と震えを伴う病気)という。戦争中に西表島へ強制避難させられた鳩間島の人々がマラリアに{罹患}{リ|カン}し、戦中戦後に多くの死亡者を出した。特効薬の⸣キナイ[⸣kinai](キニーネ)やア⸢テブ⸣リン(Atebrin)は戦後になって八重山民政府から配給されるようになった。
マリ [ma⸢ri]{1}生まれ。出身。
マリ [ma⸢ri]{2}一族一統特有の形質。性質。性分。
マリ [ma⸢ri]{3}生まれつき。
マリ [ma⸢ri]{4}運命。
マリ [⸣mari]形動まれ(稀)。めったにないさま。標準語からの借用語か。
マリカーリ [ma⸢rikaːri]生まれ変わり。生まれ変わりの人。
マリカールン [ma⸢rikaːruŋ]自動{1}生まれ変わる。人が更正する。
マリカールン [ma⸢rikaːruŋ]自動{2}死んだ者が再度生命を得て生まれてくる。
マリカタチ [ma⸢rikataʧi]姿形。容姿。体格。「生まれ形」の義。
マリサニ [ma⸢risani]血統。一統。
マリシキ [ma⸢riʃi̥ki]生まれ月。生まれた月。せいげつ(生月)。
マリシジ [ma⸢riʃiʤi]血筋。血統。「生まれ筋」の義。
マリジマ [ma⸢riʤima]郷里。故郷。「生まれ島」の義。
マリソー [ma⸢risoː]{1}天性。生まれつきの性質。「うまれじょう(生まれ性)」の義。
マリソー [ma⸢risoː]{2}もって生まれた運命。宿命。
マリッコー [⸣marikkoː]背の低い人。{矮小}{ワイ|ショウ}な体。ちび。石垣方言からの借用語か。
マリッツァースン [ma⸢ritʦaː⸣suŋ]他動大便を排泄し散らかす。まり<放り>散らす。「送糞、此をば倶蘇摩屡<くそまる>と言ふ」『日本書紀 神代下』。「~倉立てむ 屎遠麻礼<クソトホクマレ>~。万、3832」の転訛したものか。
マリッツァーン [ma⸢rit⸣ʦaːŋ]自動排便したい。まり(放り)たい。「送糞、此をば倶蘇摩屡(くそまる)といふ」『日本書紀 神代下』の連用形マ⸢リ[ma⸢ri](まり<放り>)に、「~たさ・あり」が融合変化して形成された形容詞型の接尾語⸣ッツァーン[⸣tʦaːŋ](~たい)が付いて形成された動詞。生理現象を表す特定の動詞につく。
マリトーラ [ma⸢ritoːra]{PoS_1}生まれつき。生来。マ⸢リットーラ[ma⸢rittoːra](生まれつき。強調表現)ともいう。
マリトーラ [ma⸢ritoːra]{PoS_2}副詞的用法。
マリドゥシ [ma⸢riduʃi]生まれ年。干支の上での自分の生まれた年。
マリパー [ma⸢ripaː]生まれた年の干支の方向。子(ね)年生まれの人は子<北>の方向、寅(とら)年生まれの人は、寅<東北>の方向。
マリパキ [⸣maripaki]下痢と嘔吐。「まり(放り)・吐き」の義。吐いたり、下痢したりする病気。
マリパンジョー [ma⸢ripanʤoː]子孫繁昌。子宝繁昌。「生まれ繁昌」の義。
マリビー [ma⸢ribiː]生まれた年の干支に当る日。「生まれ日」の義。
マリピキ [ma⸢ripiki]血縁。血族。血統。「生まれ・引き」の義。
マリフチ [ma⸢riɸu̥ʧi]生まれ{際}{キワ}。生まれる時。「生まれ口」の義。
マリポールン [ma⸢ripoː⸣ruŋ]他動大小便を排泄し散らかす。まり(放り)ちらかす。
マリヤブリムヌ [ma⸢rijaburi⸣munu]{1}{片端}{カタ|ワ}者。体の不自由な人。「生まれ破れ者」の義。マ⸢リヤビムヌ[ma⸢rijabimunu]ともいう。
マリヤブリムヌ [ma⸢rijaburi⸣munu]{2}根性の悪い者。
マリルン [ma⸢riruŋ]自動生まれる。出生する。誕生する。「~吾が中の産礼出有<ウマレイデタル>~。万904」の転訛したもの。マ⸢ルンとも言う。
マリンガーリ [ma⸢riŋgaːri]生まれ変わり。更生。性格や生活態度が一変して良くなること。
マル [ma⸢ru]丸。丸い形。円。
マル [ma⸢ru]接頭まる。すっかり。全く。
マルーマルーシ [ma⸢ruːmaruː⸣ʃi]丸々と。まん丸で。
マルアライ [ma⸢ruʔarai]丸洗い。全体を洗うこと。シゥ⸢カン⸣アライ[si̥⸢kaŋ⸣ʔarai](部分洗い。「掴み洗い」の義)の対義語。
マルカナ [ma⸢rukana]まるかんな(丸鉋)。⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](サバニ)の船底や⸢ウー⸣キ[⸢ʔuː⸣ki](桶)、ミ⸢ジタン⸣グ[mi⸢ʤitaŋ⸣gu](水桶。担桶)の内側などの曲面を削る際に用いる鉋。
マルキー [ma⸢rukiː]丸木。一本木。
マルケーティ [ma⸢rukeːti]たまに(偶に)。稀に。たまさか。
マルケーティ [ma⸢rukeːti](連体)まれ(稀)。めったにないこと。たま(偶)。たまさか。
マルケーティナー [ma⸢rukeːti⸣naː]稀には。たまには(偶には)。マ⸢ルケーティ[ma⸢rukeːti](偶)に、格助詞⸣ナ[⸣na](に)のとりたて強調の係助詞⸣ヤー[⸣jaː](は)が付いて形成された形。
マルザー [ma⸢ruʣaː]車座。円形をつくって座ること。えんざ(円座)。
マルスニ [ma⸢rusuni](海底地名)。タ⸢カビー⸣ヌ フ⸢チ[tḁ⸢kabiː⸣nu ɸu̥⸢ʧi](高干瀬の津口)の西にある⸢イシケーズニ[⸢ʔiʃi̥keːʣuni](イシケー曽根)と⸢アーラマイズニ[⸢ʔaːramaiʣuni](東前曽根)の間にある丸い曽根
マルスン [ma⸢rusuŋ]まるぞん(丸損)。すっかり損すること。
マルタ [ma⸢ruta]まるた(丸太)。丸材。標準語からの借用語か。
マルヌミ [ma⸢runumi]丸呑み。噛み砕かずに、そのまま飲み込むこと。老年層は、マ⸢ルヌン[ma⸢runuŋ](丸呑み)というのが普通。
マルヌン [ma⸢runuŋ]丸呑み。噛み砕かずに、そのまま飲み込むこと(古老の言葉)。
マルヌン [ma⸢runuŋ]まるのみ(丸鑿)。まるい穴をうがつのに用いる、刃のまるい{鑿}{ノミ}。
マルバイ [ma⸢rubai]全裸。まる出し。陰部を露出すること。下着を全く着ていないこと。すっぽんぽん。沖縄本島方言からの借用語か。老年層は、マ⸢ルパダカ[ma⸢rupadaka](丸裸)という。
マルパダカ [ma⸢rupadaka]まるはだか(丸裸)。
マルブン [ma⸢rubuŋ]丸盆。直径約30センチの大木の幹を厚さ約4センチに切り、中を刳って御盆にに作ったもの。普通は、⸢サー⸣ブン[⸢saː⸣buŋ](茶盆)に用いられた。仏壇にパ⸢ナン⸣グミ[pa⸢naŋ⸣gumi](花米)を供える際にはマ⸢ルブン[ma⸢rubuŋ](丸盆)を用いた。
マルマブンサン [ma⸢ru⸣mabunsaŋ]西表島租内湾の海中に浮かぶ周囲約200メートルの小島。「丸い盆のような島」の義。⸢マルマブンサン節」に歌われている小島。/ヨーホー マルマブンサン ユナユナミリバ カジヌニユシチ イチュルシルサヤ(ヨーホー<掛け声>、マルマ盆山と称する小島を毎夕暮時に眺めて見ると、風の風位と方向をよく知っていると見えて、坐っている白鷺の群れはじつに利口なものじゃ)/『八重山民謡誌』
マルモーキ [ma⸢rumoːki]丸儲け。
マルン [ma⸢ruŋ]自動{1}生まれる。出生する。誕生する。
マルン [ma⸢ruŋ]自動{2}人が立派に育つ。人が~になる。神女<司。神職者>が誕生する。
マルン [⸣maruŋ]他動排便する。脱糞する。「まる({放}{マ}る)」の義。「送糞、此をば倶蘇摩屡(くそまる)と云ふ」『日本書紀 神代下』の転訛したもの。
マレーラ シデーラ [ma⸢reːra⸣ ʃideːra]生まれてこのかた。生まれて初めて。「生まれてから、孵化してから」の義。次に続く否定表現と呼応して打消しを強調する、一種の陳述副詞的用法。
マローン [ma⸢roː⸣ŋ]丸い。まん丸である。「丸、マロカス」『類聚名義抄』の転訛したものか。
マン [⸣maŋ]数の名。万。
マンイチ [⸢maŋʔiʧi]{PoS_1}万の中に一つ。万が一。ほとんどないが、きわめて稀にあること。
マンイチ [⸢maŋʔiʧi]{PoS_2}まんがいち。もしも。ひょっとして。標準語「万一」からの借用語。
マンカ [⸢maŋ⸣ka]真っ直ぐ。直接に。
マンカーマ [maŋ⸢kaːma]真正面から。正直に。率直に。⸢マン⸣カ[⸢maŋ⸣ka](真っ直ぐ。直接)の強調表現。ウ⸢レー⸣ カ⸢ク⸣シ ⸣ユクシ ⸢スー⸣ プ⸢ソー⸣ ア⸢ラ⸣ヌ マン⸢カーマル⸣ ア⸢ズ[ʔu⸢reː⸣ kḁ⸢ku⸣ʃi ⸣jukuʃi ⸢suː⸣ pu̥⸢soː⸣ ʔa⸢ra⸣nu maŋ⸢kaːmaru⸣ ʔa⸢ʣu](彼は隠しごとや嘘<讒、与己須(よこす)『新撰字鏡』>をする人ではない。正直に<ぞ>言う)。
マンカーマンカー [maŋ⸢kaːmaŋkaː]真っ直ぐに。まっとうに。真っ正直に。ABCDABCD型の重言。
マンガイチ [⸢maŋgaʔiʧi]万一。もしも(若しも)。
マンガナ [⸢maŋ⸣gana]おろしがね(下ろし金)。「おろし鉋」の義。⸢ダイ⸣クニ[⸢dai⸣kuni](大根)や⸢マン⸣イズイ[⸢man⸣ʣui](パパイアの実)をすりおろす器具。薄いブリキ板に斜孔をあけ、その先端部を研いでおき、中央部を刳りぬいた板に張りつけて大根や人参を細かくおろすのに用いる料理器具。巾約10センチ、長さ約23センチ程度のものが多く用いられた。「眞鉇<マカナ>持ち~。万、1385」の転訛したものか。「鏟、平\kaeriten{㆑}木鉄也、加奈(かな)」『新撰字鏡』の転訛したもの。
マンカミチ [⸢maŋka⸣miʧi]目的地への真っ直ぐな道。直線道路。直行する道。
マンカムヌ [⸢maŋka⸣munu]正直者。馬鹿正直な者。愚直な者。
マンククル [⸣maŋkukuru]美しい心。優しい心。⸢絹、繭のような心」の義。「マン」は、⸢マン[⸢maŋ](繭。絹)の意。
マングル [⸢maŋguru]あたり。付近。近辺。頃。~の時代。沖縄本島糸満方言からの借用語。{烏賊}{イ|カ}釣り漁のため、糸満から鳩間島に季節労働者として移住する人がいたが、その人たちからの影響であろう。老年層は、⸢マーラ[⸢maːra](~のあたり)という。
マンケーザーテー [⸢maŋ⸣keːʣaːteː]屋号。仲本満慶氏宅。「満慶兄の家」の義。
マンサク [⸢mansaku]満作。豊年。
マンサン [⸢mansaŋ]生誕一ヶ月目の日。「満産」の義。産婦が産褥で過ごす日が満了したことを意味し、新生児と産婦の健康を祝う。
マンジュ [⸢man⸣ʤu]女陰の幼児語。マン⸢ジョー⸣マ[man⸢ʤoː⸣ma]ともいう。ズッ⸢カー⸣マ[ʣuk⸢kaː⸣ma](男児の性器。幼児語)の対義語。
マンシン [⸢maŋʃiŋ]船に満載すること。「満船」の義。
マンズイ [⸢man⸣ʣui](植)パパイアの木。まんじゅか(万寿果)。幹は柔軟で約3~4メートルに育つ。葉はヤツデに似て40~50センチの大きさになる。葉柄は中空で60~70センチになり、子供たちはこれで水鉄砲を作って遊んだ。果実は楕円形で約20センチに成長する。内部に小豆大の種子が20~30個ほど認められる。未熟果は濃緑色であるが、完熟すると赤黄色になり、芳香を放つ。未熟菓の皮を剥くと白い乳液状の汁が出る。この未熟菓を⸢マン⸣ガナ[⸢maŋ⸣gana](下ろし金)で下ろして、魚肉や豚肉と煮たり、炒ったりして食した。また、シ⸢チ⸣ビシチビー[ʃi̥⸢ʧi⸣biʃiʧibi](節日。祭日)のイ⸢ラキ⸣ムヌ[ʔi⸢raki⸣munu](炒り物。炒め物料理)にも必須の食材であった。各家には2~3本のパパイアが植えられていた。幼児語の⸢マン⸣ジュー[⸢man⸣ʤuː](女性の性器)は⸢マン⸣ズイ(パパイア)からの派生語という『八重山語彙』。パパイアの幹の根に近い方の髄部は食用になる。灰汁抜きをして魚や豚肉と煮しめると美味である。
マンズク [⸢manʣuku]満足。満ち足りること。標準語からの借用語の転訛したもの。普通は、キ⸢ム⸣ フグン[ki⸢mu⸣ ɸuguŋ](満足する。<{肝}{キモ}{祝}{ホ}ぐ>)という。
マンタ [⸣manta]前方。前の方。⸣シンタ[⸣ʃinta](後ろ。後方)の対義語。丁寧に言う場合は、⸣マインタ[⸣mainta](前方)となる。
マンダイ [⸣mandai]万代。
マンタヌ ヨーカミー [⸣mantanu ⸢joːka⸣miː]前方の排水用の穴。「前の湯淦目<孔>」の転訛したもの。ふなゆを排水する穴。パ⸢ラータティ⸣ミー[pa⸢raːtati⸣miː](帆柱を立てる穴)の直前にある。船底に溜まった水を、⸣アカ[⸣ʔaka](ふなゆ。{淦}{アカ})という。⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni]の項参照
マンタヤー [⸣mantajaː]前隣。「前の家」の義。⸢マイ⸣ネー[⸢mai⸣neː](前の家。前隣)ともいう。
マンダル [⸢man⸣daru]人名。平民女子の名前。
マンツァー [⸢man⸣ʦaː]混合物。混ぜこぜ。ごた混ぜ。若年層は、⸢マン⸣チャー[manʧaː](ごた混ぜ)という。
マンツァークンツァー [⸢manʦaːkun⸣ʦaː]混ぜこぜ。ごた混ぜ。雑然とごた混ぜになっているさま。混乱したさま。ABCDEBCD型の重言。若年層は⸢マンチャークン⸣チャー[⸢manʧaːkun⸣ʧaː](ごた混ぜ)ともいう。
マンツァースン [⸢manʦaː⸣suŋ]他動混ぜこぜにする。雑多なものを無原則に掻き混ぜる。沖縄本島方言からの借用語か。マ⸢ザー⸣スン[ma⸢ʣaː⸣suŋ](混ぜる)よりも「意図的で強引」の悪い語感を持ち、語構成上からも「混ぜ散らかす」の悪いニュアンスを伴う。
マンツァールン [⸢manʦːruŋ]自動{1}混ざる。「~新草麻自利~。万、3452」の転訛したものか。マ⸢ザー⸣ルン[ma⸢ʣaː⸣ruŋ](混じる)ともいう。
マンツァールン [⸢manʦːruŋ]自動{2}交際する。進んで交じり合う。
マン トン [⸢man⸣ toŋ]どこ。「何処の所」の義。⸢マーン⸣ トン[⸢maːn⸣ toŋ]ともいう。⸢マー⸣ヌ ⸣トン[⸢maː⸣nu ⸣toŋ](何処<いづれ>の所)の縮まった形。多くの場合、若年層が急いだり、ぞんざいに発音する際に現れる。
マンナカ [⸢mannaka]真ん中。中央。
マンニン [⸣manniŋ]万人。
マンニン [⸣manniŋ]万年。
マンブリ [⸢mamburi]すっかり惚れこむこと。くびったけ(首っ丈)であること。異性に夢中であること。「万惚れ」の義という『石垣方言辞典』。
マンマ [⸢mamma]そのまま(儘)。もとと同じ状態であること。成り行きに任せること。連体修飾語を受けて、形式名詞的に用いられる。
マンマ [⸢mam⸣ma]まんま。ご飯(幼児語)。
マンマルー [⸢mammaruː]真ん丸。正円。
マンムシ [⸣mammuʃi](動)蚕。「繭虫」の転訛か。⸣マン[⸣maŋ](繭)は、「筑波嶺の尓比具波麻欲能<ニヒグハマヨノ>~。万、3350」の「麻欲」の転訛したもの。若年層は⸢カイ⸣ク[⸢kai⸣ku](蚕)、「蚕、カイコ」『類聚名義抄』という。
マンムシヌ コーマ [⸣mammuʃinu ⸢koː⸣ma]繭。「蚕の卵」の義(老年層)。⸢コー⸣マ[⸢koː⸣ma](卵)は、「鶯の生卵乃<カヒゴノ>中に~。万、1755」、「卵、加比古<かひご>」『和名抄』、「卵、鳥殻、カヒゴ」『類聚名義抄』の「加比」が、[kaɸigo] → [kawigo] → [koː・ma]<美称の接尾語>と転訛したもの。
マンリキ [⸢manri⸣ki]万力。ねじの作用で重い物を上げ下ろししたり、締め付けたりして固定するのに用いる工具。標準語からの借用語。家の柱を交換する際やカツオ漁船を持ち上げたりする際に使用していた。