鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
テー [⸣teː]接尾~の家。
デーカー [⸢deː⸣kaː]接助~であるなら。~なら。後件を導くための仮定条件を表す。係助詞⸣-ドゥ[⸣-du]に、断定の助動詞⸢-ヤン[⸢-jaŋ](である)の連体形が付いて融合変化した形に接続助詞⸣-カー[⸣-kaː](~なら)が付いたもの。
デージ [⸢deː⸣ʤi]{1}大変。一大事。重大なこと。
デージ [⸢deː⸣ʤi]{2}⸢形動」的用法。大変であること。ゆゆしいこと。はなはだしいこと。
デージ [⸢deː⸣ʤi]{PoS_1}大変なこと。一大事。
デージ [⸢deː⸣ʤi]形動{PoS_2}事が重大である。
デージ ゲラ [⸢deː⸣ʤi ⸢ge⸣ra]大変だよ。大変さ。
デージ スン [⸢deː⸣ʤi ⸢suŋ]大変なことになる。
デージナ [⸢deːʤi⸣na]連体たいへんな。非常な。
デージムイサン [⸢deː⸣ʤimuisaŋ]心配性である。{些細}{サ|サイ}なことでも怖がりがちな性質である。⸢デー⸣ジ[⸢deː⸣ʤi](大変)に接尾語⸣ムイサン[⸣muisaŋ](~がる。~がりである)が下接して形成された合成語。
テーナ [⸢teː⸣na]接助~ながら。~がてら。同時進行。異なる行動を同時に、また、一つの行動を行うことを表す。動詞の連用形に付く。
テーナイ [⸢teː⸣nai]手伝い。沖縄方言の⸢tigane:(手伝い。加勢)の転訛したもの。[tinganai] → [tiganai(tiganeː)] → [tianai] → [teːnai] の音韻変化を経たもの。
テーナイ [⸢teː⸣nai]かじづか(舵柄)。船の舵棒。{舵}{カジ}の頭部に付ける棒。舵のとって(取手)。
テーヌ アヤ [⸢tiː⸣nu ⸣ʔaja]手相。手のひらの手筋。「手の文<綾>」の義。手のひらの手筋に運勢が現れるという。
テーパタッカリ [⸢tiːpḁtak⸣kari]忙しくて手が回らず、てんてこ舞いする。「お手上げ」状態。「手はだかり」の義。
テーファ [⸢teː⸣ɸa]冗談。ふざけて言う話。滑稽話。おどけ(戯け)。
テーファー [⸢teː⸣ɸaː]おどけ者。道化者。冗談口をたたく者。冗談持ち。
テーファームヌ [⸢teːɸaː⸣munu]冗談持ち。滑稽者。冗談をいう者。
テーラ [teːra]接助~てから。動詞の連用形に付く。上接語の指し示す動作内容の終了後という時間的順序を表す。ティ<て>・ラ<から>の融合変化した形。
ティ [⸣ti]格助~と。動作・作用・状態の内容を表す(引用)。
ティ [⸣ti]格助{Exp_1}さらに係助詞⸣-ル[⸣-ru](~ぞ)が付いてとりたて強調の係り結びとなる。
ティ [⸣ti]格助{Exp_2}さらに係助詞⸣-ヤ[⸣-ja](~は)がついてとりたての⸣-テー[⸣-teː](~とは<強調>)がついて終止形で結ぶ。
ティ [⸣ti]格助{Exp_3}さらに係助詞⸣-ン[⸣-ŋ](~も)が付いた⸣ティン[⸣-tiŋ](~とも<強調>)がつき、終止形の陳述と呼応して係り結びとなる。
ティ [⸣ti]接助{Exp_1}さらに係助詞⸣-ル[⸣-ru](~ぞ)が付いて係り結びとなる。
ティ [⸣ti]接助{Exp_2}さらに係助詞⸣-ヤ[⸣-ja](~は)が付いて、~⸣-テー[⸣-teː](~ては)となり、「~ては~(動詞連用形の重複形)」のような、動作が連続的に起きる<継起>ことを表す。
ティ [⸣ti]接助{Exp_3}さらに係助詞⸣-ン[⸣-ŋ](も)が付く。
ティ [⸣ti]接助~て。{1}動詞の連用形に下接して順態接続表現となり、動作、状態の時間的継起の意を表す。
ティ [⸣ti]接助{2}動詞の連用形に付いて、逆接関係を表す。
ティ [⸣ti]接助{3}形容詞の連用形に下接して、原因.理由の因果関係を表す。
ティ [⸣ti]接尾(数)年を数える単位。
ディ [⸣di]接尾とし(年)。
ティー [⸣tiː]{1}手。
ティー [⸣tiː]{2}方法。技術。技。流儀。
ティー [⸣tiː]{3}取っ手<把手>。柄。器具の握って持つところ。
ティー [⸣tiː]{4}人手。
ティー [⸣tiː]{5}種類。程度。
ティー [⸣tiː]{6}空手。
ティー [⸣tiː]{7}すじ(筋)。
テイー [⸢tiː]一つ。
ディー [⸢diː]さあ。人を誘う時にいう語。
ディー [⸢diː]終助動詞の未然形に付いて、勧誘、念押しの意を表す。
ティー アースン [⸣tiː ⸢ʔaː⸣suŋ]{1}手を合わせる。手のひらを合わせて神仏を拝む。
ティー アースン [⸣tiː ⸢ʔaː⸣suŋ]{2}二人の踊りの型を三味線に合わせる。
ティー アウヌン [⸣tiː ⸢ʔaunuŋ]手が空く。手があく。
ティーアザナーン [⸢tiːʔaʣanaː⸣ŋ]手にまつわり付いて煩雑である。手に絡まりついて煩わしい。
ティーアティ [⸢tiː⸣ʔati]手当て。病気や怪我などに対する処置。
ティーアバ [⸢tiː⸣ʔaba]料理を念入りに作ること。おふくろの味。「手の油」の義。料理上手の母親の手からは油が出て美味な味をつけるという。
ティーアラーン [⸢tiːʔaraː⸣ŋ]手が荒(粗)い。仕事が粗雑である。手作業が粗削りである。扱い方が乱暴である。⸢ティークマー⸣ン[⸢tiːkumaː⸣ŋ](手作業が緻密である。<手が細かい>)の対義語。
ティーアライ [⸢tiː⸣ʔarai]{1}手洗い。手を洗うこと。古老は、⸢ティー⸣シミ[⸢tiː⸣ʃimi](手洗い)ともいう。
ティーアライ [⸢tiː⸣ʔarai]{2}洗濯物を手で揉み荒いすること。
ティーイナシキ [⸢tiːʔina⸣ʃi̥ki]てぎね(手杵)。たて杵。単に、イ⸢ナ⸣シキ[ʔi⸢na⸣ʃi̥ki](杵、「稲舂」の義)ともいう。直径約10センチ、長さ約90センチの樫の円柱で作った杵。中央部を削って握りやすいように作ってある。普通は家庭の婦女子が一人で必要に応じて、必要な分だけ米を搗いた。⸢アイダ⸣チ[⸢ʔaida⸣ʧi](横杵。⸢相槌」<『日葡辞書』>の転訛か)は複数の女性が一緒に米を搗く際に用いた杵である。家屋建築や祝儀、法事の際には庭に搗き臼を並べて、それぞれの臼に2~3人の婦人が向き合いながら米を搗くのが普通であった。昭和40年ごろから石垣島の精米所に依頼して米を送って精米してもらうようになった。精米賃は精米した米から差し引いて依頼者へ届けられた。
ティーイリ [⸢tiː⸣ʔiri]手入れ。世話をして良い状態にすること。
ティーウクリ [⸢tiːʔuku⸣ri]手遅れ。手当てや処置が遅れること。
ティーウサーシ [⸢tiːʔusaː⸣ʃi]合掌。手を合わせること。
ティー ウサースン [⸣tiː ʔu⸢saːsuŋ]手を合わせる。老年層は⸣ティー ウ⸢サースン[⸣tiː ʔu⸢saːsuŋ](合掌する)という
ティー ウサースン [⸣tiː ʔu⸢saːsuŋ]合掌する。手を合わせる。「手を押し合わせる」の義。神前、仏前に手を合わせて祈願する。
ティーカイヤン [⸢tiːkai⸣jaŋ]{1}手先が器用で作品が美しい。仕事の出来栄えがいい。手仕事が美しい。仕事が上手である。
ティーカイヤン [⸢tiːkai⸣jaŋ]{2}踊りの型が美しい。
ティーカカジ [⸢tiːkaka⸣ʤi]慌てふためくこと。大慌てすること。「手掻き合わせ」の義か。
ティー カカルン [⸣tiː kḁ⸢ka⸣ruŋ]手がかかる。世話がやける。
ティーカキルン [⸢tiːkaki⸣ruŋ]他動{1}手がける。取り掛かる。仕事に着手する。
ティーカキルン [⸢tiːkaki⸣ruŋ]他動{2}暴力を振るう。手を出す。
ティーカギン [⸢tiː⸣kagiŋ]手で調節すること。手で握ったり、触ったりして量や程度を調節すること。目分量で塩梅すること。「手加減」の義。
ティーカクン [⸢tiː⸣kḁkuŋ]他動{1}手がける。取り掛かる。着手する。
ティーカクン [⸢tiː⸣kḁkuŋ]他動{2}手を出す。手を下す。暴力を振るう。
ティーカジ [⸢tiː⸣kaʤi]{1}人手の数。働き手。働く人。「手数」の義。
ティーカジ [⸢tiː⸣kaʤi]{2}技量。技芸の数。てすう(手数)。
ティーカタ [⸢tiː⸣kata]形見。形見となる作品。生前に作っておいた品々。「手形」の義。
ティー カバッサン [⸢tiːkabas⸣saŋ]料理が上手である。美味しい。「手香ばしい」の義。
ティーガンバリ [⸢tiːgam⸣bari]手の悪戯。手で物事をいじくって遊ぶ<悪戯する>こと。
ティー キシルン [⸣tiː ki̥⸢ʃi⸣ruŋ]{1}手が切れる。手が切れたように仕事が出来なくなる。
ティー キシルン [⸣tiː ki̥⸢ʃi⸣ruŋ]{2}関係が切れる。縁が切れる。無関係になる。
ティー キスン [⸣tiː ⸣kisuŋ]{1}手を切る。
ティー キスン [⸣tiː ⸣kisuŋ]{2}縁を切る。
ティーグ [⸢tiː⸣gu]柄の付いた丸い竹籠。「手籠」の転訛したもの。直径約60センチ、深さ約12センチの箕状に竹ひごで編み上げた蓋付きの籠で、半円形の柄<吊り手>が付いている。サ⸢ギティー⸣グ[sa⸢gitiː⸣gu](吊り手付きの手籠。下げ手籠)、サ⸢ギソー⸣キ[sa⸢gisoː⸣ki](吊るしそうき<笊器>)ともいう。冷蔵庫のなかった時代には揚げ物や蒲鉾、豆腐、煮物などをこれに入れて通風の良い場所に吊るして保存した。台所の梁や桁などにも吊るして保存した。蓋をして蝿が付かぬように気を配った。
ティー クバーン [⸢tiː⸣ ku⸢baː⸣ŋ]不器用である。手仕事に不慣れで下手である。「手・こはし(「磽、己波志<こはし>」『新撰字鏡』)」の転訛したものか。
ティークバリ [⸢tiːkuba⸣ri]手配り。手分け。ティ⸢ク⸣バリ[ti̥⸢ku⸣bari](手配り)、⸢ティー⸣バキ[⸢tiː⸣baki](手分け)ともいう。
ティークマーン [⸢tiːkumaː⸣ŋ]手業<手仕事>が精巧である。技量が精密・精緻である。器用である。「手が細かい」の義。
ティー クムン [⸢tiː⸣ kumuŋ]手を組む。ある目的のために他人と協力する。
ティーザーク [⸢tiːʣaː⸣ku]手仕事。手業。手細工。手工。⸢ティー[⸢tiː](手)と、ッ⸢サーク」[s⸢saːku](仕事)の複合語[⸢tiːssaː⸣ku](手仕事)が形成された際に後接語の頭子音が濁音化して転訛したもの。
ティーサドゥル [⸢tiːsadu⸣ru]手探り。
ティー サラーン [⸢tiː⸣ sa⸢raː⸣ŋ]手際よい。上手に仕事をする。手早く仕事をする。
ティーサンミン [⸢tiːsam⸣miŋ]指折り計算すること。「手計算」の義。
ティー シゥカウン [⸣tiː si̥⸢kauŋ]空手を使う。空手を演舞する。
ティーシゥカミ [⸢tiːsi⸣kami]手掴み。箸を使わないで手で直接に食物を取って食うこと。若年層が多用する。
ティーシゥカラ [⸢tiːsi̥ka⸣ra]手の力。腕力。握力。
ティーシゥカン [⸢tiː⸣sï̥kaŋ]手掴み。箸を用いないで、手で食物を取って食べること。老年層が多用する。
ティーシゥカン スン [⸢tiː⸣si̥kan ⸢suŋ]手掴みする。
ティーシキヨー ナラヌ [⸢tiːʃi̥ki⸣joː na⸢ra⸣nu]手の施しようがない。始末に負えない。
ティーシキルン [⸢tiːʃi̥ki⸣ruŋ]他動手がける。仕事に着手する。手をつける。「手付ける」の転訛したもの。
ティーシグトゥ [⸢tiːʃigu⸣tu]手仕事。手先でする仕事。手わざ。
ティー シナイルン [⸣tiː ʃi⸢nairuŋ]手を繋ぐ。⸣ティー シ⸢ナウン[⸣tiː ʃi⸢nauŋ](手を繋ぐ)と同じ
ティー シナウン [⸣tiː ʃi⸢nauŋ]{1}手を繋ぐ。
ティー シナウン [⸣tiː ʃi⸢nauŋ]{2}協力を約束する。
ティーシミガクムン [⸢tiː⸣ʃimigakumuŋ]読み書きソロバンの教育。「手墨学問」の義。
ティー シムン [⸣tiː ⸣ʃimuŋ]手を洗う。「手を澄ませる」の義か。
ティージリゴーサー [⸢tiːʤirigoː⸣saː]手をすり合わせて合掌祈願すること。恐れかしこみ<畏み>、手をすり祈願すること。「ゴーサ」は「怖さ」の義。転じて「畏む」の意。
ティージル [⸢tiː⸣ʤiru]手塩。手塩にかけること。世話をすること。親の愛情を受けること。「手汁」の義。
ティー スールン [⸣tiː ⸢suː⸣ruŋ]技能、技量が向上する。⸢腕前が強くなる」の義。
ティー スクムン [⸣tiː su̥⸢ku⸣muŋ]手を握る。手を握り締める。「手をすくむ<竦む>」の転訛したもの。
ティー スクン [⸢tiː⸣ su̥kuŋ]手を付ける。手がける。開始する。⸢ティー⸣ シ⸢キ⸣ルン[⸢tiː⸣ ʃi̥⸢ki⸣ruŋ](手を付ける)ともいう。
ティーソー [⸢tiː⸣soː]手相。⸢ティー⸣ヌ ⸣アヤ[⸢tiː⸣nu ⸣ʔaja](手の綾、手の襞)ともいう。
ティーソーリ [⸢tiːsoː⸣ri]手探り。暗闇の中で手探りして探すこと。「手さわり<触り>」の転訛したもの。
ティー ダクン [⸣tiː da⸢kuŋ]拱手傍観する。手をこまぬく。無為に過ごす。手の怪我をして仕事が出来なくなり困る。手が不自由になる。「手を抱く」の義。
ティーダラーン [⸢tiːdaraː⸣ŋ]手に力の入らないさま。握力が無いさま。握力が弱く、掴んでいる物をよく落とす状態である。
ティーダラスン [⸢tiːdara⸣suŋ]他動手をたたいて諌める。
ティーダリ [⸢tiː⸣dari]手が疲れてだるくなること。手に力が入らないこと。「手垂れ」の義か。
ティーダリムヌ [⸢tiːdari⸣munu]手に力の入らない者。手の力がなく、動作の鈍い者。相手を罵っていう語。⸢ティーダリクン⸣キャー[⸢tiːdarikuŋ⸣kjaː](のろま<鈍間>。愚鈍)ともいう。
ティーッサーク [⸢tiːssaː⸣ku]手仕事。手細工の仕事。手工。⸢ティーザー⸣ク[⸢tiːʣaː⸣ku](手仕事)参照。
ティーッサール [⸢tiːssaː⸣ru]仕事で手が{塞}{フサ}がること。仕事で手が一杯になる。手不足になる。繁忙を極める。「手塞がり」の義。
ティー ッサイルン [⸢tiː⸣ s⸢sai⸣ruŋ]手を擂り合わせて祈る。手を擂り合わせて念ずる。「手・擂り合わせる」の転訛したもの。
ティー ッサウン [⸢tiː⸣ ssauŋ]手をすり合う。手を擂り合い祈る。[te・suri・au] → [tiː-ssauŋ](手・擂り合う)のように音韻変化して再転訛したもの。⸢ティー⸣ ッ⸢サイ⸣ルン[⸢tiː⸣ s⸢sai⸣ruŋ](手を擂り合わせる。合掌する)ともいう。
ティーッシ [⸢tiː⸣ʃʃi]{1}手をすり合せること。合掌してすり合わせること。合掌して祈ること。
ティーッシ [⸢tiː⸣ʃʃi]{2}手で肌をさすること。
ティー ッシ ヤムン [⸢tiː⸣ ʃʃi ⸣jamuŋ]化膿したお出来や傷が熱をもって放射状に痛みがはしる。刺し込むように痛みが放射状に広がる。
ティーッスル [⸢tiːssu⸣ru]てぬぐい(手拭)。手拭き。明治生まれの老年層の使用語彙。⸣サジ[⸣saʤi](手拭。タオル)ともいう。
ティー ッスン [⸢tiː⸣ ssuŋ]手を擦る。両手のひらをすり合わせる。手を擦って祈る。⸢ティー⸣ ッサウン[⸢tiː⸣ ssauŋ](合掌する)ともいう。
ティーッふァイムヌ [⸢tiːffai⸣munu]手間ひまのかかるもの。手間取るもの。「手食いもの」の義。
ティー ッふン [⸣tiː f⸢fuŋ]{1}手間がかかる。「手を食う」の義。
ティー ッふン [⸣tiː f⸢fuŋ]{2}養育される。世話になる。
ティートー [⸢tiː⸣toː]抵当。担保。
ティートゥリ [⸢tiː⸣turi]仲直りをすること。仲良くすること。手を結ぶこと。「手取り」の転訛したもの。
ティードゥリ [⸢tiː⸣duri]手取り。手に入る金高。現金収入。
ティーナーリ パンナーリ [⸢tiːnaː⸣ri ⸣pannaːri]手を出し、足を出しして喧嘩すること。じゃれて喧嘩を仕掛けるさま。⸢ティーナー⸣リ ⸣ピサナーリ[⸢tiːnaː⸣ri ⸣pisanaːri](手を出し、足を出し。じゃれて喧嘩する)ともいう。
ティー ナールン [⸣tiː ⸢naːruŋ]{1}手を出して喧嘩する。手出しをする。
ティー ナールン [⸣tiː ⸢naːruŋ]{2}手を差し出す。
ティー ナーン [⸢tiː naː⸣ŋ]手癖が悪い。盗癖がある。「手が長い」の義。
ティーナガー [⸣tiːnagaː]盗癖のある人。てくせ(手癖)の悪いこと。
ティーナビ [⸢tiː⸣nabi]つるなべ(弦鍋)。鍋の耳に付いている弦<柄。手>を掴んで持ち運ぶ鍋。「手鍋」の義。
ティー ナブッタラーン [⸢tiː⸣ na⸢buttaraː⸣ŋ]手が滑らかですべすべしている。
ティーナライ [⸢tiː⸣narai]大工仕事の見習い。仕事を師匠から直接に習うこと。師匠から手をとって教えられること。「手習い」の義。半農半漁の島だったから、習字や芸事については用いなかった。
ティーナラビ [⸢tiːnara⸣bi]人並み。世間並み。
ティーニー [⸢tiːniː]丁寧。「丁寧」の転訛したもの。伝統的表現では、⸣キモー イ⸢リ⸣ シ⸢グトゥ シー[⸣kimoː ʔi⸢ri⸣ ʃi⸢gutu ʃiː](心<肝>をこめて仕事をしなさい)のようにいう。
ティーニーバン [⸢tiːniː⸣baŋ]仕事の手が遅い。仕事の手がのろい<鈍い>。
ティーヌ ウチ [⸢tiː⸣nu ʔu⸢ʧi]手の内。手並み。腕前。奥の手。心の中の計画。
ティーヌ カナーヌ [⸢tiː⸣nu ka⸢naː⸣nu]手が不自由である。手が叶わない。手が健全でない。
ティーヌ ガンマリ [⸢tiː⸣nu ⸢gam⸣mari]悪戯。手でする悪戯。⸢ティー⸣ヌ ⸢ガン⸣バリ[⸢tiː⸣nu ⸢gam⸣bari](手の悪戯)ともいう。
ティーヌ クシ [⸢tiː⸣nu ku̥⸢ʃi]手の甲。「手の後ろ」の義。⸢ティーヌ⸣バタ[⸢tiːnu⸣bata](手のひら。<手の腹>)の対義語。手の表。
ティーヌ シー [⸢tiː⸣nu ⸣ʃiː]手袋。⸣シー[⸣ʃiː]は「物を入れて仕舞っておく袋や箱」の意。「鞘」の転訛したものか。[saja] → [saia] → [ʃeː] → [ʃiː] の音韻変化が考えられる。「手の袋<巣>」の義。
ティーヌ シミ [⸢tiː⸣nu ⸣ʃimi]手の爪。⸢ティーン⸣シミ[⸢tiːŋ⸣ʃimi](手の爪<名詞>)ともいう。
ティーヌ シル [⸢tiːnu⸣ ʃiru]手塩にかけて育てること。心をこめて手ずから養育すること。「手の汁」の義。⸢ティー⸣ジル[⸢tiː⸣ʤiru](手塩)と同じ。
ティー ヌバスン [⸣tiː nu⸢ba⸣suŋ]{1}手を伸ばす。
ティー ヌバスン [⸣tiː nu⸢ba⸣suŋ]{2}手を広げる。事業を拡大する。
ティーヌバタ [⸢tiːnu⸣bata]手のひら。たなごころ(掌)。「掌、和名太奈古々呂<たなごころ>」『和名抄』。「手の腹」の義。
ティーヌピサ [⸢tiːnu⸣pi̥sa]手のひら。たなごころ(掌)。手首から先の、内側の面。
ティーヌブシ [⸢tiːnu⸣buʃi]指の節。指の関節。「手の節」の義。
ティーヌフビ [⸢tiːnu⸣ɸubi]手首。腕と手のひらの繋がるところ。うでくび。
ティーヌマタ [⸢tiː⸣numata]手の股。指の間
ティーヌユリー [⸢tiːnu⸣juriː]神職引退の儀式。「手のお許し」の義。自分の勤めていた、サ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司)やティ⸢ジリ⸣ビー[ti⸢ʤiri⸣biː](男性神職者)の神職を、神に願い出て引退する儀式のこと。⸢インクニガイ[⸢ʔiŋkunigai](隠居願い。引退願い)ともいう。
ティーヌ ワザ [⸢tiːnu⸣ waʣa]手仕事。細工仕事。「手の技」の義。
ティーバキ [⸢tiː⸣baki]手分け。
ティーパシキ [⸢tiːpaʃi̥⸣ki]指はじき。爪弾き。曲げた中指の爪先を親指の腹にかけて力を溜め、強くはじくこと。「手はじき」の義。
ティーバタシ [⸢tiːbata⸣ʃi]手渡し。手から手に渡すこと。
ティー パタッカルン [⸣tiː pḁ⸢takkaruŋ]手を開き広げる。両手を広げて阻止する。「手はだかる」の義。
ティーバッパイ [⸢tiːbap⸣pai]手違い。手順や手法を間違えること。
ティーパナスン [⸢tiːpana⸣suŋ]他動{1}掴んでいるものを手許から放す。手放す。掴んでいる手を緩める。
ティーパナスン [⸢tiːpana⸣suŋ]他動{2}している仕事を中止する。中断する。放置する。
ティーパヤーン [⸢tiːpajaː⸣ŋ]{1}手早い。仕事が早い。
ティーパヤーン [⸢tiːpajaː⸣ŋ]{2}すぐ手が出る。すぐ暴力を振るう。
ティーパン [⸢tiː⸣paŋ]手足。手と足。
ティーパンキ [⸢tiːpaŋ⸣ki]手はじき。⸢ティーパシ⸣キ[⸢tiːpaʃi̥⸣ki](指はじき)と同じ。可愛い孫などの過度の悪戯をたしなめ<嗜め>たり、とがめ<咎め>たりする際に、片手の指で相手の手の甲を弾くこと。⸢ボー⸣レー ⸢ボー⸣レー ク⸢ヌ ティー⸣ル ⸢ワッ⸣サ⸢ドー[⸢boː⸣reː ⸢boː⸣reː ku⸢nu tiː⸣ru ⸢was⸣sa⸢doː](お利口さんお利口さん、この手が悪いのだね)と言いながら祖母が軽く手を弾いて教えた
ティーピキ [⸢tiː⸣pi̥ki]蚕のまゆ(繭)を湯で煮沸し、⸣ユナキー[⸣junakiː](オオハマボウ)の葉を湯に浸して引き揚げて、繭から糸口を手繰り出し、数本まとめて糸を撚り始めること。「手引き」の義。
ティー ピクン [⸣tiː pi̥⸢kuŋ]{1}手を引く。
ティー ピクン [⸣tiː pi̥⸢kuŋ]{2}関係を断つ。
ティー ピクン [⸣tiː pi̥⸢kuŋ]{3}激情<怒り>を抑え、直接行動を抑制する。感情を抑えて手出ししないようにする。イ⸢ジヌ⸣ ン⸢ジ⸣ルカー ⸣ティー ピ⸢キ ティー⸣ヌ ン⸢ジ⸣ルカー イ⸢ジ ピキ[ʔi⸢ʤinu⸣ ʔn⸢ʤi⸣rukaː ⸣tiː pi̥⸢ki tiː⸣nu ʔn⸢ʤi⸣rukaː ʔi⸢ʤi pi̥ki](感情が激したら手を抑制<押さえ>せよ、手が出かけたら感情を抑え<理性を働かせ>よ)沖縄の諺からの転訛
ティーピサ [⸢tiː⸣pi̥sa]手のひら(掌)。C1V1C2V2の音節構造で、C2=r、V1=iの場合、[pira] → [pisa] のように法則的に音韻変化する。⸢ティー⸣ピサ[⸢tiːnu⸣pi̥sa](掌)ともいう。
ティーピサ ウサースン [⸢tiː⸣pi̥sa ʔu⸢saːsuŋ]合掌する。「掌を合わせる」の義。
ティーピサ カイスン [⸢tiː⸣pi̥sa ⸢kai⸣suŋ]手のひらを返す。態度を急変させる。裏切る。
ティー フイッツァムン [⸣tiː ⸢ɸuit⸣ʦamuŋ]指をくわえ<{銜}{クワ}え>る。物欲しそうに<ものほしげに>指を銜える。
ティー フイルン [⸣tiː ⸢ɸuiruŋ]手が震える。
ティーフキ [⸢tiː⸣ɸu̥ki]指笛。「手吹き」の義。火事や非常事態の場合、指笛を吹き鳴らして緊急の合図に用いる。豊年祭の余興、演舞競技、綱引き、爬龍船競漕、結願祭の余興などで応援したり、感激したりするときに吹き鳴らす。
ティーフクザー [⸢tiːɸu̥ku⸣ʣaː]手仕事の鈍いもの。のろま(鈍間)。愚鈍である。
ティー フクローン [⸢tiː ɸu̥kuroː⸣ŋ]手が柔らかい。柔らかい手触りである。手触りが柔らかい。
ティーフコーン [⸢tiːɸu̥koː⸣ŋ]手が遅い。手仕事が鈍い。不器用である。「手鈍さあり」の義。
ティーフシ [⸢tiː⸣ɸu̥ʃi]手癖。盗癖。
ティーフスク [⸢tiːɸusu̥⸣ku]手不足。手が塞がって人手が足りない。他の事をする余裕がない。
ティーブドゥル [⸢tiːbudu⸣ru]簡単な手踊り。簡単な歩き舞い。本格的な儀式の舞踊でない踊り。⸢モー⸣ヤー[⸢moː⸣jaː](手踊り。<モーユン{SqBr}moojuŋ{/SqBr}>の転訛か)ともいう。
ティー フバラリン [⸣tiː ɸu⸢barariŋ]{1}手を縛られる。足手まといとなって身動きができなくなる。
ティー フバラリン [⸣tiː ɸu⸢barariŋ]{2}逮捕される<手を縛られる>。
ティーフバリムヌ [⸢tiːɸubari⸣munu]あしてまとい(足手纏い)。特に乳飲み子。「手縛りもの」の義。
ティー フバルン [⸣tiː ɸu⸢baruŋ]手を縛る。
ティーブリ [⸢tiː⸣buri]手振り。踊りの手振り。
ティーポーキ [⸢tiːpoː⸣ki]てぼうき(手箒)。片手で持って使用する柄の短い小さな箒。バ⸢ラフ⸣タポーキ[ba⸢raɸu̥⸣tapoːki](稲藁で作った藁箒)、⸢ユシ⸣キポーキ[⸢juʃi̥⸣kipoːki](ススキの尾花で作った箒)、シ⸢トゥッチ⸣ヌパーポーキ[ʃi̥⸢tutʧi⸣nupaːpoːki](蘇鉄の葉箒)などが作られ、使用されていた。
ティー ホースン [⸣tiː ⸢hoː⸣suŋ]ドアや圧搾機等に手を挟む。「手・喰わせる」の義。
ティーマービ [⸢tiːmaː⸣bi]てまね(手真似)。手で動作や状態を真似すること。
ティーマーマー [⸢tiːmaː⸣maː]てんてこ舞いすること。うろたえ騒ぐこと。周章狼狽すること。あわてふためくこと。
ティー マーラヌ [⸣tiː ⸢maːranu]手が回らない。手配りが十分に行き届かない。
ティーマイフナー [⸢tiːmai⸣ɸunaː]手の器用な人。「手技の優秀な人」の義。
ティーマサーン [⸢tiːmasaː⸣ŋ]巫女の祈祷が霊験あらたかである。祈願に対する霊妙な効験がある。「手正し」の義。
ティーマサル [⸢tiːmasa⸣ru]手勝り。技量の優れた人。腕利き。敏腕家。腕前の優れた者。
ティーマチガイ [⸢tiːmaʧi⸣gai]手過ち。過失。誤って相手に怪我を負わせること。
ティーマチブリ [⸢tiːmaʧi⸣buri]足手まとい。手足に纏いつかれる。手足にまとわりつかれる。くっ付いて離れない。「手まつわり<手纏わり>」の義。子供などに纏いつかれること。
ティーマッふァ [⸢tiːmaf⸣fa]手枕。腕を枕にすること。
ティーマニキ [⸢tiːmani⸣ki]手招き。
ティーミーザン [⸢tiːmiː⸣ʣaŋ]料理が下手である。「手不味しさあり」の義。
ティーミジ [⸢tiː⸣miʤi]掌で掬って飲ませる水。手で掬った水。「手水」の転訛したもの。
ティームタビ [⸢tiːmuta⸣bi]手でいたずらすること。いじくること。
ティーヤーマ [tiː⸢jaː⸣ma]小さな手。
ティー ヤーラーン [⸣tiː ⸢jaː⸣raːŋ]踊りの手付きがしなやかで美しい。「手が柔らかである」の義。
ティーヤ カナイティ [⸢tiː⸣ja ⸣kanaiti]腕が優れて。腕が立って。優れた腕前<技量>を持っていて。腕が適って。
ティーヤ クサーナリ [⸢tiː⸣ja ku̥⸢saː⸣ nari]{1}零落するさま。落ちぶれるさま。
ティーヤ クサーナリ [⸢tiː⸣ja ku̥⸢saː⸣ nari]{2}悪事を働いて逮捕されるさま。「手を後ろにされて」の義。
ティーヤニヤン [⸢tiːjani⸣jaŋ]手が汚い。「手汚し」の義。
ティーヤニヤン [⸢tiːjani⸣jaŋ]{2}手業が拙い。手業が下手である。不器用である。
ティー ヤバーン [⸣tiː ja⸢baː⸣ŋ]手先が器用である。巧みである。巧くこなす。上手である。「手が柔らかい」の義。
ティー ユーコースン [⸢tiː jukoː⸣suŋ]手を休ませる。一息入れさせる。「手憩わせる」の義。
ティーユクイ [⸢tiː⸣jukui]手休め。仕事の途中で手を休めること。中休み。「手憩い」の義。
ティーヨー [⸢tiː⸣joː]{1}手真似。身振り。
ティーヨー [⸢tiː⸣joː]{2}手振り。手招き。
ティーヨーゾー [⸢tiːjoː⸣ʣoː]自己療法。鍼灸治療や瀉血治療などを施して、自分で自己流に治療すること。「手養生」の義。
ティーヨーピサヨー [⸢tiːjoːpi̥sa⸣joː]身振り手振り。「手真似足真似」の義。
ティーヨームイヨー [⸢tiːjoːmui⸣joː]手振り身振り。手付き目付き。「手様・目様」の転訛したもの。
ティーワザ [⸢tiː⸣waʣa]{1}手仕事。
ティーワザ [⸢tiː⸣waʣa]{2}手で犯した悪いこと。手口。
ティーワチライ [⸢tiːwaʧi⸣rai]手こずること。手を煩わすこと。手を奪われること。「手煩い」の義。
ティーンカイ [⸢tiːʔŋ⸣kai]手向かい。抵抗すること。反抗。
ティーンザーリ [⸢tiːnʣaː⸣ri]手を煩わし、手こずること。煩雑になって手がもつれ<縺>ること。「手あざり」の転訛か。
ティー ンザスン [⸣tiː ʔn⸢ʣa⸣suŋ]手を出す。暴力を振るう。
ティーンザスン [⸢tiːʔnʣa⸣suŋ]他動殴る。殴りかかる。手出しする。
ディカ [di⸢ka]さあ。勧誘の意味を表す。気取った、high collarな表現。青年、壮年層の男性が多用した。首里方言からの借用語。普通は⸢ディ⸣ー[⸢di⸣ː](<さあ~よう>よ)という。
ティガキルン [ti⸢gaki⸣ruŋ]他動手掛ける。仕事を始める。
ディカシェーン [di⸢ka⸣ʃeːŋ]でかした。うまくやった。よくやったぞ。
ティガミ [ti⸢ga⸣mi]手紙。
ティガラ [ti⸢ga⸣ra]{1}手柄。
ティガラ [ti⸢ga⸣ra]{2}獲物。
ティキ [ti̥⸢ki]敵。仇。
ティキウチ [ti̥kiʔuʧi]敵討ち。仇討ち。
ディキブツ [di⸢ki⸣buʦu]優れた人物。秀才。標準語「できぶつ(出来物)」から転訛したもの。
ディキヤー [di⸢ki⸣jaː]秀才。出来物。よく出来る人。沖縄方言からの借用語。
ディキラスン [di⸢kira⸣suŋ]他動{1}稔らせる。
ディキラスン [di⸢kira⸣suŋ]他動{2}成功させる。
ディキルン [di⸢ki⸣ruŋ]自動{1}出来る。作物が実る。豊作である。
ディキルン [di⸢ki⸣ruŋ]自動{2}勉強がよくできる。
ディクッチ [di⸢kut⸣ʧi]理屈っぽい人。聡明な人。悪智恵の働く人。利得に{聡}{サト}い人。リ⸢クッ⸣チ[ri⸢kut⸣ʧi](聡明な人。利得に聡い人)ともいう。
ディクッツァー [di⸢kut⸣ʦaː]悪智恵の働く人。理屈を{捏}{コ}ね回す人。相手を{貶}{オトシ}めた表現。若年層は、リ⸢クッ⸣ツァー[ri⸢kut⸣ʦaː]ともいう。
ティクバリ [ti⸢ku⸣bari]手配り。手配。
ティグル [ti⸢gu⸣ru]手頃。その人に相応しいもの。それに適しているもの。
ティジ [ti⸢ʤi]頂上。頂き。てっぺん。
ティシー [ti⸢ʃiː]~として。~とて。活用語の終止形を受けて、~ということで、~という理由で、の意味を表す。⸣ティ[⸣ti]は格助詞で、引用を表す。⸢シー[⸢ʃiː](して)は⸢スン[⸢suŋ](する)の接続形。
ティジバナ [ti⸢ʤibana]頂花。女踊りの際、⸢カン⸣プー[⸢kam⸣puː](女の頭頂の結い髪)に{挿}{サ}す花のかんざし(簪)。
ティジリビー [ti⸢ʤiri⸣biː]男性神職者。「手擦り部」の義。各御嶽にはサ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司。女性神職者)とティ⸢ジリ⸣ビー[ti⸢ʤiri⸣biː](男性神職者。⸢カン⸣プス{SqBr}⸢kam⸣pu̥su{/SqBr}<神人>ともいう)が一人ずつ所属している。ティ⸢ジリ⸣ビーはシ⸢キダ⸣チ ズングニチ[ʃi̥⸢kida⸣ʧi ⸣ʣuŋguniʧi]({朔日}{ツイ|タチ}、十五日)の朝、御嶽に参拝して清掃するのが慣わしであった。
ティスクン [⸢tisu̥⸣kuŋ]げんこつ(拳骨)。握りこぶし(拳)。「手つくみ」の義。
ティスクンドゥル [⸢tisu̥kun⸣duru]拳骨を床に打ちつけて激しく怒るさま。
ティ スヌ [⸣ti su⸢nu]~というが。「⸣-ティ ア⸢ズヌ[-ti ʔa⸢ʣunu](~というが)」の転訛したもの。
ティダ [⸣tida]{1}太陽。
ティダ [⸣tida]{2}ひなた<日向>。
ティダ [⸣tida]{3}日光。太陽光。
ティダアミ [⸣tidaʔami]そばえ。わたくし雨。日照雨。日光がさしているのに降る雨。むらしぐれ。通り雨。狐の嫁入り。限られた小地域に降るにわか雨。お天気雨。「太陽雨」の義。
ティダイ [⸣tidai]おごり(奢)。他人にご馳走を振舞うこと。
ティダイキ [⸣tidaʔiki]太陽の熱気。ティ⸢ダ⸣ヌ ⸣イキ[ti⸢da⸣nu ⸣ʔiki](太陽の息、熱気)ともいう。「太陽の息」の義。
ティダイムヌ [ti⸢dai⸣munu]金を出して人にふるまうもの。奢るもの。
ティダイルン [ti⸢dai⸣ruŋ]他動奢る。他人にご馳走を振舞う。
ティダウン [⸣tidauŋ]他動おごる(奢る)。他人にご馳走を振舞う。
ティダガナシ [ti⸢dagana⸣ʃi]お天道様。
ティダナカ [⸣tidanaka]ひなた(日向)。日光の差し込んでいる所。日光のあたる所。「太陽中」の転訛したもの。
ティダ ナマルン [⸣tida na⸢ma⸣ruŋ]灼熱の陽光が弱まる。陽光がなまる({鈍}{ナマ}る)。夏の太陽は午後3時頃から日差しが弱くなり始めるので、その時刻を見計らって野良仕事に出かけ、日没頃まで働き、ゆうずつ(夕星。宵の明星)を見ながら帰宅した。
ティダヌ アーリジブン [ti⸢da⸣nu ⸢ʔaːriʤibuŋ]日の出時分。太陽が上る時分。
ティダヌ イーリジブン [ti⸢da⸣nu ⸢ʔiːriʤibuŋ]日暮れ時。日没時。太陽の入る時分。
ティダヌ カタ [ti⸢da⸣nu kḁ⸢ta]太陽の絵。太陽の形。歌謡語。
ティダヌ カタカ [ti⸢da⸣nu kḁ⸢ta⸣ka]日除け。「太陽の影」の義。
ティダ ヌクムン [⸣tida nu⸢ku⸣muŋ][g]{日向}{ヒナタ}ぼっこをする。陽に当たって温まる。「太陽を温む」の義。
ティダヌヤフ [ti⸢da⸣nujaɸu]日食。「太陽の厄」の義。
ティダビー [⸣tidabiː]日射病。熱中症か。「太陽酔い」の義。夏の強い直射日光に長時間{曝}{サラ}されると起きる症状。倒れたり、体温が上昇して激しい{倦怠感}{ケン|タイ|カン}をおぼえたりする。熱くて気だるくなり、何も出来なくなる状態。
ティダプスマ [ti⸢dapusu⸣ma]日中。白昼。昼日中。「太陽昼間」の義。
ティダマキ [⸣tidamaki]夏の強い直射日光に長時間{晒}{サラ}されて体調に異常をきたすこと。⸣ティダビー[⸣tidabiː]の重い症状。発熱したり、気分が悪くなったり、頭痛・めまい・意識消失などを起こす。熱中症。一種の日射病か。「太陽負け」の義。
ティツ [ti̥⸢ʦu]鉄。新しく借用された語。「鉄」の転訛したもの。普通は、カ⸢ニ[ka⸢ni](鉄)という。ティ⸢ツナビ[ti̥⸢ʦunabi](鉄鍋)、ティ⸢ツ⸣ヤッコン[ti̥⸢ʦu⸣jakkoŋ](鉄製の薬缶)などというが、カ⸢ニ⸣ヤッコン[ka⸢ni⸣jakkoŋ](鉄製の薬缶)が普通の言い方。カ⸢ニ⸣ヤッコンが普及する以前は、⸣ブラヤッコン[⸣burajakkoŋ](法螺貝の薬缶<湯沸し>)で湯を沸かした
ティッツァー [⸢tit⸣ʦaː]拍手。手を打つこと。「手打ち合い」の転訛したもの。「手打ち手打ち」『虎寛本狂言・鬼の継子』の転訛か。
ティッツァー スン [⸢tit⸣ʦaː ⸢suŋ]拍手する。
ティットーマキ [⸢tittoː⸣maki]糸を親指と小指に掛けて、8の字形に巻き取ること。
ティップー [⸢tippuː]鉄砲。
ティップーヌ タマ [⸢tippuːnu⸣ tama]{1}鉄砲の弾。
ティップーヌ タマ [⸢tippuːnu⸣ tama]{2}鉄砲の弾のように行ったきり戻らないこと。
ティップスディ [⸢tippusudi]筒袖。
ティツヤッコン [ti̥⸢ʦu⸣jakkoŋ]鉄製の薬缶。鉄瓶。カ⸢ニ⸣ヤッコン[ka⸢ni⸣jakkoŋ](鉄瓶)ともいう。
ティドゥク [ti⸢du⸣ku]山の名。西表北岸の⸢クーラ[⸢kuːra](久浦)、トゥ⸢マダー[tu⸢madaː](泊田)、⸢ケー⸣ダ[⸢keː⸣da](慶田)の南に聳える古見の連山。この山からウ⸢ブ⸣ミジ[ʔu⸢bu⸣miʤi](大見謝川)、⸢ケーダガー⸣ラ[⸢keːdagaː⸣ra](ケーダ川)、⸢クーラガーラ[⸢kuːragaːra](久浦川)、ナ⸢ダラガーラ[na⸢daragaːra](ナダラ川)などが流出する
ティヌ [⸣tinu]助詞連語。~との。動作・作用・状態の内容、伝聞を表す格助詞⸢トゥ[⸢tu](と)に、格助詞⸢ヌ[⸢nu](の)が付いた形。活用語の終止形、命令形につく。
-ティバ [⸣-tiba]並立~とか。~やら。~や。
-ティバ [⸣-tiba]並立{Exp_1}名詞類に付いて同類のものごとを列挙して示す。
-ティバ [⸣-tiba]並立{Exp_2}用言の終止形に付いて同類の物事を列挙して示す。
ティバーヤ [⸣tibaːja]終助~ってば。~ったら。{1}動詞の命令形について、軽い命令を表す。
ティバーヤ [⸣tibaːja]終助{2}形容詞の終止形について、確認強調を表す。
ティバフ [ti⸢ba⸣ɸu]かせ(綛)を巻き取る道具。糸枠。カ⸢シ⸣カキ[kḁ⸢ʃi⸣kaki](綛掛け踊り)の小道具にも用いる。鳩間島の古典舞踊、カ⸢ナ⸣カキ[ka⸢na⸣kḁki](綛掛け踊り)の小道具として用いられる。演舞者の左手に持つ工字形の糸枠。右手に持つ六角柱形の糸巻きは、イ⸢トゥ⸣マキ[ʔi⸢tu⸣maki](糸巻き)という(大城學氏伝承)。また、人によっては、右手に持つ糸巻きを、ティ⸢バ⸣フ[ti⸢ba⸣ɸu]、左手に持つ工字形の糸枠を、ワ⸢ク[wa⸢ku](枠)という(大城初氏、仲本ユキ氏伝承)こともある
ティブク [ti⸢bu⸣ku]⸢手矛」の義。茅葺き屋根を葺く際に、茅を押さえるのに用いる、直径約3センチ、長さ約3メートルの若木叉は竹。根の先端を削って矛状にし、それを差し込みながら継ぎ足していく。屋根葺きは屋内からパ⸢ルシキ⸣プス[pa⸢ruʃi̥ki⸣pu̥su](針突き人)が⸢ヤーシキ⸣パル[⸢jaːʃi̥ki⸣paru](竹槍の家葺き針。屋根突き針)を突き出すと、それに屋根葺きがシ⸢ミ⸣ナー[ʃi⸢mi⸣naː](締め縄)を貫き通し、針突きが一旦屋内に引き込んで垂木を{跨}{マタガ}らせて再び屋根の上に突き出す。屋根葺きはそれを受け取って、ティ⸢ブ⸣ク[ti⸢bu⸣ku]に掛け、縄を二重に強く巻き締めて葺き茅を抑え、順々に屋根を葺きあげていく。足でトントンと踏み固めて締めつけ、葺き進める。葺き手とパルシキプスが声を掛け合いながら竹槍の針を突き出すタイミングを計って屋根葺きをした。
ティフン [tiɸuŋ]手本。模範。
ティマ [⸣tima]{1}手間。手数。
ティマ [⸣tima]{2}手間賃。
ティマー カカルン [⸣timaː kḁ⸢ka⸣ruŋ]手間隙が<は>掛かる。手数が掛かる。時間がかかる。
ティマー カキルン [⸣timaː kḁ⸢ki⸣ruŋ]手間隙を掛ける。手数を掛ける。世話を掛ける。
ティマー カクン [⸣timaː ⸣kḁkuŋ]手間隙をかける。手数を掛ける。⸣ティマー カ⸢キ⸣ルン[⸣timaː kḁ⸢ki⸣ruŋ](手間を掛ける)と同じ。
ティマーピマー [timaː⸢pimaː]手間隙。
ティマシグトゥ [ti⸢maʃigu⸣tu]手間仕事。一定の手間賃を貰ってする仕事。
ティマッふァイムヌ [timaf⸢faimunu]手間を食うもの。手間のかかるもの。時間のかかるもの。
ティマトー アタラヌ [ti⸢ma⸣toː ʔa⸢taranu]仕事が割りに合わない。引き合わない。
ティラ [ti⸢ra]寺。
ティラスン [ti⸢ra⸣suŋ]他動照らす。
ティラテー [ti⸢rateː]屋号。大城伊佐氏宅。旧鳩間小学校の西隣にある。同家の前の道で、豊年祭の綱引きや⸢プールゾーラ⸣キ[⸢puruzoːra⸣ki](豊年祭りの奉納舞踊)が行われた。
ティラヌ ウニプトゥキ [ti⸢ranu⸣ ʔunipu̥tuki]寺の仁王仏。「寺の鬼仏」の義。桃林寺門の仏像。鳩間島では、病弱な子供を石垣島へつれて行き、桃林寺の仁王仏を拝観させると邪気が祓われて健康になると伝えられていた。
ティラヌボージ [ti⸢ranuboː⸣ʤi]僧侶。坊主。和尚さん。「寺の坊主」の義。
ティリユーナー [ti⸢rijuːnaː]照り合い。
ティル [⸣tiru]{1}助詞連語。~とぞ。引用の格助詞⸣ティ[⸣ti](と)に強意の係助詞⸣ル(ドゥ)[ru(du)](ぞ)が付いた形。
ティル [⸣tiru]{2}~という。~とした。
ティル [⸣tiru]{笊}{ザル}。笊の総称。普通は⸢ウン⸣ディル[⸢ʔun⸣diru](芋を入れる笊)をさす。⸢クー⸣ジ[⸢kuː⸣ʤi](トウズルモドキ)の皮を使って編み上げた笊。フ⸢タディル[ɸu̥⸢tadiru](竹の皮で編んだ蓋付きの弁当籠)には弁当を入れて畑へ持参したり、台所に吊るしておいたりした。クージは西表島に豊富に産する。皮は柔らかく扱いやすい。長いものは20メートル以上に達するので、大小さまざまな笊を編むことができる。⸢クー⸣ジ[⸢kuː⸣ʤi]は小屋を造ったりする際にも藁縄の代用に使用された。
ティル [⸣tiru]漁獲用の籠(笊)。直径約1メートル、高さ約20センチの円形の枠に網を張って作った漁獲用の籠。中央部の垂れ下がった丸い入り口から魚が中の餌にひかれて籠の中に入る仕組みで、一度中に入ったら出られない仕掛けになっている。糸満漁師が鳩間島に導入したもの。
ティルン [⸣tiruŋ]自動照る。
ティローマ [ti⸢roː⸣ma]小さな笊。潮干狩りで漁獲物を入れるのに用いる小さな笊。びく(魚籠)の一種。トウズルモドキの皮や竹の皮で編んで作った。アダンの気根の繊維で綯った縄で作った魚籠は⸢アン⸣スク[⸢ʔan⸣su̥ku](箱型網袋の運搬具。一種の野外用ハンドバッグ)という。
ティン [⸢tiŋ]{1}天。天空。空。蒼穹。
ティン [⸢tiŋ]{2}天の神様。天帝。
ティン [⸣tiŋ]接助{1}~とも。格助詞⸣ティ[⸣ti](~と、<引用>)に係助詞⸣ン[⸣ŋ](~も)の付いた形。活用語の終止形、体言、体言相当語に付く。
ティン [⸣tiŋ]接助{2}たとい~ても。たとい~とも。たとい~たとしても。たとい~とて。過去の助動詞⸣タン[tan](~た)の終止形につく。仮定の条件をあげて後件が前件に拘束されない意を強く表す。
ティンガーラ [⸢tiŋgaːra]天の川。
ティンガイ [⸢tiŋgai]葬具の一つ。朱塗りの槇棒の頂に竜頭<たつがしら>を付けてある。「天蓋(てんがい)」の義。葬列の、⸢ガンダラゴー[⸢gandaragoː](龕<がん>。棺を納めて担ぎ運ぶ葬具)の前をティンガイを持った人が歩く。死者を守るといわれている。
ティンガマー [⸢tiŋ⸣gamaː]悪戯小僧。腕白坊主。悪戯坊主。あくたれ(悪たれ)。⸢テン⸣ガマー[⸢teŋ⸣gamaː](悪戯小僧)ともいう。
ティンガマーン [⸢tiŋ⸣gamaːŋ]腕白である。悪戯っぽい。若年層は、⸢テン⸣ガマーン[⸢teŋ⸣gamaːŋ](腕白である。悪戯坊主である)ともいう。
ティンガラ [⸢tiŋ⸣gara]かなてこ(鉄梃)。鉄製のてこ。石ころ道や岩盤の多い屋敷の整地作業に用いられる道具。長さ約1.8メートル、直径約4センチの八角形の鉄棒。先端の片方は{鑿}{ノミ}の刃のように平たく、片方は丸く尖っている。石工の道具。
ティンガラーマ [⸢tiŋgaraː⸣ma]小さなかなてこ({鉄梃}{カナ|テコ})。金串の一種。直径約1、5センチ、長さ約30センチの鉄棒の{金串}{カナ|グシ}で、先端が細く尖っている漁具。これで珊瑚礁の岩の中にいる、イ⸢シギラ[ʔi⸢ʃigira](イシシャコ貝。岩の中に棲息するシャコ貝)をほじくり<穿り>出して漁獲した。
ティンキ [⸢tiŋki]天気。標準語からの借用語。普通は、⸢オーシキ[⸢ʔoːʃi̥ki](天気、「上つ気」の義か)という。
ティンキヤブリ [⸢tiŋkijabu⸣ri]天気くずれ。普通は⸢オーシキヤブ⸣リ[⸢ʔoːʃikijabu⸣ri](天気くずれ)という。
ティングス [⸢tiŋgu⸣su]てぐす(天蚕糸)。釣り針用の糸。石垣島の釣具店から購入してきて利用した。普通は、⸢ティングス⸣ル[⸢tiŋgusu⸣ru](てぐす)という。
ティングスル [⸢tiŋgusu⸣ru]てぐす(天蚕糸)。⸢ティング⸣ス[⸢tiŋgu⸣su](てぐす)ともいう。釣り針用の糸。楓蚕<ふうさん>・樟蚕<くすさん>の幼虫の体内から絹糸腺を取りだし、酸に浸して引き伸ばし、精製した白色透明の糸。約50センチの長さで、一方を釣り針に直接結わえる部分に用い、他方を釣り糸に繋いで用いた。
ティングトゥ [⸢tiŋgutu]天災。自然現象の災害。「天ごと」の義。
ディングン [⸢diŋ⸣guŋ]伝言。ことづて。石垣方言からの借用語。普通は、⸣イイェイ[⸣ʔijei](伝言。「言い遣り」の義)という。
ティンシー [⸢tiŋʃiː]天水。雨水。若年者は、⸢ティンスイ[⸢tinsui](天水)ともいう。昔は天水を溜めて湯茶の用水に使用した。井戸水は石灰分が多く、湯茶には適しなかった。
ティンジルン [⸢tinʤi⸣ruŋ]自動突き出る。老年層は、普通、⸢ピンジ⸣ルン[⸢pinʤi⸣ruŋ](突き出る。露出する)、⸢トゥンジルン[⸢tunʤiruŋ](飛び出る。突き出る)という。
ティンスー [⸢tinsuː]天命。運命。天寿。自然の命数。天から授けられた運命。⸢ミースー[⸢miːsuː](命数。天命。天寿)ともいう。
ティンゾー [⸢tin⸣ʣoː]天井。「Teɲov.テンジヤゥ(天井)」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ティンゾーイツァ [⸢tinʣoː⸣ʔiʦa]天井板。天井を張る板。
ティンゾーヌ サン [⸢tinʣoː⸣nu ⸣saŋ]天井の桟。
ティンゾーブチ [⸢tinʣoː⸣buʧi]板張り天井の板を支え、化粧するために取り付けた細長い桟。四隅を桟で縁取ってあるもの。竿縁。
ティンダティ [⸢tinda⸣ti]起工式。家屋新築の着工式。建築着手の儀礼。吉日を選んで着工する。「手だて」の義から意味派生したものか。イ⸢チバンザイ⸣ク[ʔi⸢ʧibanʣai⸣ku](棟梁。一番大工)が家主<建築主>や手伝いの村人らと一緒に安全祈願をした後、材木にシ⸢ミ⸣ナー[ʃi⸢mi⸣naː](墨縄)を打ったり、ほぞあな(枘穴)を掘ったり、枘を作ったりして建築工事を開始する。
ティントーガナシ [⸢tintoːganaʃi]お天道様。太陽神。
ティントゥ ジー [⸢tintu⸣ ʤiː]天神地祇<てんじんちぎ>。神々。「天と地」の義。
ティンナー [⸢tin⸣naː]帆を操作するため、帆桁の端から引いた細い縄。「手綱」の転訛したもの。⸣ティー[⸣tiː](手)に、ʦuna(綱)→ʧina→ʃina→nnaと音韻変化した語が下接して生成された合成語。サバニの帆には5~6本の⸢ティン⸣ナー[⸢tin⸣naː](手綱)が船頭の所に伸びている。船頭は左手でティンナーを握り、右手でト⸢ム⸣ヤク[tu⸢mu⸣jaku](艫櫂)を握って梶となし、それでサバニを操船した。
ティンヌ アブジェーマヌ シバル [⸢tinnu⸣ ʔa⸢buʤeːma⸣nu ʃi⸢ba⸣ru]お天気雨。日照り雨。日が照っていながら降る雨。⸣ティダアミ[⸣tidaʔami](そばえ。日照り雨。狐の嫁入り)というのが普通。「天の百姓じいさんの小便」の義。
ティンヌ ッサーンタ [⸢tinnu⸣ s⸢saːnta]天の下。あめがした。世界。
ティンヌ ッサーンナー [⸢tinnu⸣ s⸢saːn⸣naː]天が下で。天の下で。天下で。世の中で。
ティンヌ ナイ [⸢tin⸣nu ⸣nai]天ほど。量や長さが天体ほど無限大であるさま。「天の長さ」の義。
ティンヌ ナカシタ [⸢tinnu⸣ na⸢ka⸣ʃi̥ta]なかぞら(中空)。中天。「天の中下」の義。⸢ティンヌ⸣ ナ⸢カシタ⸣ヌ ム⸢チマイダーラー⸣ ヌーヤ。
ティンヌ ナダカ [⸢tinnu⸣ na⸢da⸣ka]天の高さほど。天くらい。
ティンヌ ニー [⸢tinnu⸣ niː]天の果て。天空の果て。「天の根」の義。
ティンヌ ヤキルン [⸢tinnu⸣ ja⸢kiruŋ]夕焼けする。朝焼けする。「天が焼ける」の義。
ティンバチ [⸢timbaʧi]天罰。天の下す罰。悪事のむくい。
ティンブッツ [⸢timbutʦu]でべそ(出臍)。突き出ている臍。昔は家庭で出産をした。村々には経験豊かな取り上げ婆が産婆の役割を果たした。出臍は取り上げ婆が臍の尾を長く切ったことによるといわれていた。
ティンプラ [⸢tim⸣pura]てんぷら(天麩羅)。魚介・野菜類を芯に、小麦粉を溶かしたものに⸢コー⸣マ[⸢koː⸣ma](卵の黄身)を掻き混ぜ、それをころもにして油で揚げた料理。
ディンポー [⸢dim⸣poː]電報。戦後、昭和23年に鳩間郵便局に初めて電信電報の施設が整備された。
ティンマ [⸢timma]伝馬船。昔の上納米や御用布等の貢納物を運んだ六反帆や七反帆の地舟。「伝馬」の義。
ティンマー [⸣timmaː]~ときには。~際には。
ティンマク [⸢timmaku]天幕。古語ではフ⸢タカツァ[ɸu̥takaʦa](天幕。「蓋蚊張」の義)という。
ティンマグヮー [⸢timma⸣gwaː]小伝馬舟。沖縄本島糸満方言からの借用語。鰹漁船の餌捕りに用いる小舟。幅約1メートル、長さ約4メートルの小舟で餌捕りの際、本船と小伝馬舟の間に掬い網を下ろして⸣ザコー[⸣ʣakoː](雑魚、カツオの餌)を掬い捕るのに用いる小舟。港では砂浜と本船の間のはしけ舟<艀舟>として使用された。沿岸では本船に曳航され、港では備え付けの⸢リュー[⸢rjuː](櫓)と⸣サウ[⸣sau](竿)で操船して、漁獲したカツオや船員を浜辺へ運んで陸揚げした。
ティンマムチ [⸢timmamuʧi]小伝馬の係り。「小伝馬持ち」の転訛したもの。カツオ漁船の小伝馬係りは中学卒業したての、15歳前後の男の子が漁師見習いとして担当させられた。カツオの生餌取りがすんで、⸢フン⸣シン[⸢ɸuŋ⸣ʃiŋ](本船)が外洋へ出漁した後、ティンマムチ(小伝馬舟係)は本船から放され、⸢リュー[⸢rjuː](艪)を漕いで海岸に接岸し、ム⸢ジ⸣アン[mu⸢ʤi⸣ʔaŋ](生餌取り用の網)を浜辺に干したり、漁船の飲料水を井戸から汲んでドラム缶一本の水タンクを満杯にし、漁船の飯炊き、湯沸し用の薪割りの作業を一人で行った。
テンガマー [⸢teŋ⸣gamaː]悪戯小僧。悪ふざけをする者。不義を働く者。⸢ティン⸣ガマー[⸢tiŋ⸣gamaː](悪戯小僧)ともいう。
テンガマーン [⸢teŋ⸣gamaːŋ]悪戯っぽい。じっとして居れず、悪い戯れをしがちである。
デンサーブシ [⸢densaː⸣buʃi]歌謡名。デンサー節。八重山を代表する上原村の教訓歌謡で、儒教道徳を中心的内容とした歌謡。
テンテンシ [⸢tenteŋ⸣ʃi]点々と。点を打ったように散在しているさま。
デントゥンテン [⸢den⸣tunteŋ]{PoS_1}三線の音の形容。
デントゥンテン [⸢den⸣tunteŋ]{PoS_2}幼児語。三線。
テンブッツ [⸢tembutʦu]でべそ(出臍)。