鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
バサ [⸣basa](植)芭蕉。
バサ [ba⸢sa]馬車。若年層は、バ⸢シャ[ba⸢ʃa](馬車)という。貨物運搬用の荷馬車。鳩間島にはなかった。昭和40年頃まで、石垣島の桟橋には、沖縄からの貨物を各商店へ運ぶ荷馬車が多数待機していた。
バサーギ [⸣basaːgi]助詞連語。~をさえ。対格の格助詞⸣バ[⸣ba](を)に副助詞⸣サーギ[⸣saːgi](さえ)が付いた形。
バサーギル [⸣basaːgiru]助詞連語。~をさえ<ぞ>。
バザールン [ba⸢ʣaːruŋ]自動勢いづく。勢いが強くなり、暴れまくる。
バザウン [ba⸢ʣauŋ]他動さばく(捌く)。解体する。魚や鶏、豚などを切り開いて肉・骨などに分ける。
パザキルン [pa⸢ʣakiruŋ]他動機会を逸する。幸運を取り逃がす。パ⸢ザクン[pa⸢ʣakuŋ](機会を逸する。幸運を逸する)ともいう。補助動詞となって動詞の連用形に下接し、~損ねる、~する機会を逸する、~チャンスを逸する、の意味を表す。
バサキン [⸣basakiŋ]芭蕉布で作った着。「芭蕉着」の義。
パザクン [pa⸢ʣakuŋ]他動{1}(他動)。機会を逸する。幸運を取り逃がす。
パザクン [pa⸢ʣakuŋ]他動{2}補助動詞。動詞の連用形に下接して、~損ねる、~する機会を逸する、~チャンスを逸する、の意味を表す。
パサシ [pḁ⸢sa⸣ʃi]しゃこ貝の貝柱。
パザスン [pa⸢ʣa⸣suŋ]他動着物を脱がせる。脱衣させる。使役動詞。
バサヌ ウディ [ba⸢sa⸣nu ⸣ʔudi]芭蕉の葉柄。「芭蕉の腕」の義。長さ約30センチの芭蕉の葉柄2本を約20センチのススキの幹2本で井の字型のカ⸢ビヤキムヌ[ka⸢bijakimunu](紙銭焼き台)を作った。
バサヌ カー [ba⸢sa⸣nu ⸣kaː]芭蕉の皮。
バサヌ スブ [ba⸢sa⸣nu su⸢bu]芭蕉の渋。
パサパサ スン [pḁ⸢sapasa suŋ]さくさくする。粘り気がなく、さくさくする。
バサムチ [ba⸢samuʧi]荷馬車で貨物を運搬する人。荷馬車の運送業者。「馬車持ち」の義。
パサムン [pḁ⸢sa⸣muŋ]他動挟む。箸などで挟む。「間、ハサマル」『類聚名義抄』。
バザラー [baʣa⸢raː]さっと。迅速に。敏速に。
バザラバザラ [ba⸢ʣarabaʣara]{1}さっさと。手早く。
バザラバザラ [ba⸢ʣarabaʣara]{2}{蛆}{ウジ}などが群がるさま。うようよ。
パサン [⸣pasaŋ]はさみ(鋏)。「Fasami.ハサミ(鋏)、また、蟹の手、すなわち、蟹の鋏」『邦訳日葡辞書』。
バサンナル [ba⸢san⸣naru]芭蕉の実。バナナ。
バサンパームチ [ba⸢sam⸣paːmuʧi]芭蕉の葉餅。芭蕉の葉で包んで蒸し上げた餅。⸢プール⸣ムチ[⸢puːru⸣muʧi](豊年祭の餅)ともいう。豊年祭の時に月桃の葉で包んだ餅と芭蕉の葉で包んだ餅を作って食べた。バ⸢サン⸣パームチは芭蕉の葉を、幅約20センチ、長さ約25センチに裂いて、それに餅のたねを置き、その上に芭蕉の葉を幅約10センチほどの大きさに裂いたものを載せて包み、蒸し煮して作ったもの。
パシ [⸣paʃi]箸。「Faxi.ハシ(箸)日本人が物を食べるのに使う、二本の小さな棒」『邦訳日葡辞書』とある。
パシ [pa⸢ʃi]{1}橋。「安麻能我波 々志和多世良波~。万、4126」の義。
パシ [pa⸢ʃi]{2}はしご(梯子)。
パシ [pḁ⸢ʃi]{1}端。へり。縁。端っこ。先端。切れ端。「短きものを端伎流等<ハシキルト>~。万、892」の「端」の義。
パシ [pḁ⸢ʃi]{2}はしばし(端々)。ちょっとした部分。
パジ [⸣paʤi]{1}恥。「~標結い立てて 結之辱爲都。万、401」の義。
パジ [⸣paʤi]{2}陰部。
パジ [⸣paʤi]{1}⸢はず(道理)」、「すること(~わけ。可能性)」を表す形式名詞。活用語の連体形に付く。
パジ [⸣paʤi]{2}文末に用いられて確率の高い推量<~するはずだ。~だろう>の意を表す形式名詞。
パジアーラスン [pa⸢ʤiʔaːra⸣suŋ]他動品物を等しく分配する。
パシゥカ [⸢pasï̥ka](数詞)廿日。
パシゥカソージ [⸢pasï̥kasoːʤi]⸢廿日精進」の義。産後廿日に行う行事。産後廿日めに、産褥中無事に経過することが出来たことに対する感謝の祈願を行い、産褥に張り巡らした注連縄を取り払って産屋を片付けること。
パシゥカヨーン [⸢pasï̥kajoːŋ]廿日宵闇。
パシカ [⸢paʃi̥⸣ka]病気の名。はしか(麻疹)。麻疹ウイルスによる急性伝染病。5~6歳までの幼児に多く、一度の罹患でほとんど一生免疫を得る。⸢イリガサー[⸢ʔirigasaː](はしか。measles)『医学沖縄語辞典』。ハシカの転訛したもの。鳩間島では、ア⸢ガニチ[ʔa⸢ganiʧi](赤熱)ともいう。
パジ カカスン [⸣paʤi kḁ⸢ka⸣suŋ]恥をかかせる。
パシ カキルン [pḁ⸢ʃi⸣ kḁ⸢ki⸣ruŋ]{1}橋を架け渡す。
パシ カキルン [pḁ⸢ʃi⸣ kḁ⸢ki⸣ruŋ]{2}男女の仲に橋を架ける(男女が情を通ずる)。
パジ カクン [⸣paʤi ⸣kḁkuŋ]恥をかく。
パシカヌ ピキックミ [⸢pḁʃika⸣nu pi̥⸢kik⸣kumi]「はしか(麻疹)の引っ込み」の義。[g]{麻疹}{ハシカ}の熱が一旦下がった状態。その後再発して高熱を発する。この種の病状をピ⸢キッ⸣クムン[pi̥⸢kik⸣kumuŋ](引っ込む)といい、悪質な麻疹の病状で、重病になることがある。麻疹に罹患して体を冷やすことによって発病するといわれている。
バシキカールン [⸢baʃikikaːruŋ]自動すっかり忘れ去る。
バシキグリサン [⸢baʃi̥kiguri⸣saŋ]忘れることが難しい。忘れにくい。動詞バ⸢シゥクン[ba⸢ʃi̥kuŋ](忘れる)の連用形に、形容詞型助動詞の-グ⸢リ⸣サン[-gu⸢ri⸣saŋ](~がたい。~にくい)が下接して形成された派生形容詞。
パジキサー [⸣paʤiki̥saː]恥知らず。「恥切れ者」の義。
パジキシムヌ [pa⸢ʤikiʃi⸣munu]恥知らず。厚顔無恥の者。鉄面皮の者。「恥切れ者」の義。⸣パジキラー[⸣paʤikiraː](恥知らず。厚顔無恥の者。恥切れ者)<卑語>ともいう。
バシキパヤーン [⸢baʃi̥kipajaː⸣ŋ]忘れやすい。「忘れ早い」の義。⸢バシキヤッ⸣サン[⸢baʃi̥kijas⸣saŋ](忘れやすい)ともいう。
バシキムヌ [⸢baʃi̥kimunu]忘れ物。
バシキルン [⸢baʃi̥kiruŋ]他動忘れる。
パシグ [pḁ⸢ʃi⸣gu]はしご(梯子)。「天端文<アマハシモ>ながくもがも~。万、3245」の義。二本の垂木の間に幾段もの横木を渡し、それを踏んで高い所に上る道具。屋根葺きなどの際に使用した。使用後はユ⸢クンツァ⸣メー[ju⸢kunʦa⸣meː](床下の孔)に納めて保管した。
パシケー [⸢paʃi̥keː]破水。羊膜が破れて出る羊水。
パシシ [pa⸢ʃi⸣ʃi]歯茎。「齗、波之々<はじし>、歯之肉也」『和名抄』の転訛。
パシットゥ [pḁ⸢ʃittu]すっきりと。気分が爽快になるさま。病気が全快して元気になるさま。
パシナー [pa⸢ʃi⸣naː](動)魚の名。和名、イットウダイの仲間(体長20~25センチ)。若年層は、パ⸢チ⸣ナー[pḁ⸢ʧi⸣naː]ともいう。鳩間島では、夜の大潮の日に十四、五歳の子供たちが島の後ろの干瀬のヤ⸢トゥ[ja⸢tu](干瀬の割れ目。「やと(谷戸)関東方言」の転訛か)でよく釣った。
バシヌトゥル [ba⸢ʃinu⸣turu]歌謡の「鷲の鳥節」。
パジマキ [pa⸢ʤimaki]はぜまけ(櫨負)。はぜ<{黄櫨}{コウ|ロ}>にかぶれること。漆かぶれ。
パジマリ [pa⸢ʤimari]始まり。
パジマルン [pa⸢ʤimaruŋ]自動始まる。
パジミ [pa⸢ʤimi]初め。最初。
パジミティ [pa⸢ʤimiti]{PoS_1}初めて。
パジミティ [pa⸢ʤimiti]{PoS_2}最初。
パジミルン [pa⸢ʤimiruŋ]他動{PoS_1}始める。
パジミルン [pa⸢ʤimiruŋ]補動{PoS_2}連用形に下接してアスペクト動詞をかたちづくる。アクセントが中高アクセントに変わる。
パジムン [pa⸢ʤimuŋ]他動始める。「始む<下二段活用>」の四段活用化したもの。
バシャ [ba⸢ʃa]馬車。標準語からの借用語。荷車。鳩間島には馬車はなかったが、石垣島の桟橋では荷役に従事する人が馬車や荷車で貨物を運搬していた。
バシャムチ [ba⸢ʃamuʧi]馬車引き。「馬車持ち」の義。馬車で貨物を運ぶことを生業とする人。
バシャンーマ [ba⸢ʃaʔmːma]荷車を引く馬。遮二無二働く人。
ハショーフー [ha⸢ʃoːɸuː]破傷風。破傷風菌によって咬筋が強直し、開口不全、顔面筋その他の随意筋強直性{痙攣}{ケイ|レン}となって高熱を発し、重症のものは一日以内で死亡するといわれる。古釘を踏んで発症することが多かったという。
パシル [pa⸢ʃi⸣ru]戸。雨戸。ヤ⸢ドゥパシ⸣ル[ja⸢dupaʃi⸣ru](戸)ともいう。老年層の言葉。
パジン [pa⸢ʤiŋ](昆)蜂。
パジンキー [pa⸢ʤiŋkiː](植)木の名。はぜ。はぜのき(黄櫨の木)。
パジンヌ シー [pa⸢ʤinnu⸣ ʃiː]蜂の巣。
バス [⸣basu]時。場合。実質的意味を欠いた形式名詞。
パスクリルン [⸢pasu̥kuri⸣ruŋ]自動はじける(弾ける)。破裂する。爆発する。
パスクルン [⸢pasu̥⸣kuruŋ]自動破裂する。弾ける。爆発する。「はじく<下二段活用>」の四段活化したもの。
バスクン [⸢basu̥kuŋ]他動忘れる。「忘る<下二段活用>、~飯炊く事も和須礼提~。万、892」の四段活用化したもの。
パスクン [⸢pasu̥⸣kuŋ]他動弾く。指や竹、小枝などを曲げて、そのはね返る力で打つ。
パスコーン [⸢pasu̥⸣koːŋ]はしかし。こそばゆい。むずがゆい。ちくちくと痛痒い。稲や麦などの芒<のぎ>が皮膚に浅くちくちく刺すような、痛くて痒い感じがするさま。「苛、ハシカシ」『類聚名義抄』の転訛したもの。⸢パスコー⸣ン[⸢pasu̥koː⸣ŋ](はしかし<強調>)ともいう。
バスバス [⸣basubasu]{PoS_1}時々。折々。
バスバス [⸣basubasu]{PoS_2}時としては。時には。折々には。
パズン [⸣paʣuŋ]他動{1}脱ぐ。脱衣する。
パズン [⸣paʣuŋ]他動{2}外す。ほどく(解く)。祈願を解く。
バタ [⸣bata]{1}腹。「鱁、魚乃和太<うをのわた>」『新撰字鏡』の義。
バタ [⸣bata]{2}はらわた(腸)。臓物。内臓。
バタ [⸣bata]{3}なかご。瓜類の内部にある、種を含んだ柔らかい部分。
バタ [⸣bata]{4}布団の中身の綿。餅の餡。
バタ [⸣bata]{5}心。
バタ [⸣bata]湾。入り江。「ささ波の志賀の大和太<ワダ>よどむとも~。万、31」の「和太」の転訛したもの。
パタ [pḁ⸢ta]旗。大漁旗。「{幡}{バン} {旒附}{リュウ|フ} 考工記云幡(音翻 和名波太)~」『二十巻本和名抄』の義。カツオ漁船は漁獲高によって、ヒ⸢ノマル[çi⸢nomaru](日の丸。漁獲高約300キロ)、ア⸢ガパタ[ʔa⸢gapata](赤旗。漁獲高約500キロ)、⸢ミール[⸢miːru](三色の旗。漁獲高約800キロ)、⸢グイル[⸢guiru](五色の旗。漁獲高約1000キロ)等の旗を立てて帰港した。
パタ [pḁ⸢ta]{1}ふち(縁)。へり。周囲。
パタ [pḁ⸢ta]{2}側。
パダ [⸣pada]肌。皮膚。「あからひく 秦不經<肌も触れずて>~。万、2399」、「連膚、連訓安牟、下波太<ハダ>、音普」『新訳華厳経音儀私記』の転訛。
パダ [⸣pada]ころ。時。時分。時節。時代。
バター ウイ ナスン [⸣bataː ⸢ʔui⸣ nasuŋ]仰向けに寝る。「腹を上になす」の義。ア⸢バナクン[ʔa⸢banakuŋ](仰向けに寝る)、ウ⸢ツァバナ⸣クン[ʔu⸢ʦabana⸣kuŋ](仰向けになる。仰向けに寝る。卑語)ともいう。
バター ナールン [⸣bataː ⸢naːruŋ]腹が突き出る。妊婦のお腹が出てくる。
パダー ナーン ムヌ [⸣padaː ⸢naːm⸣ munu]しまりのない者。落ち着きのない者。悪ふざけをする者。女癖の悪い者。
バター フツルンケーリ [⸣bataː ɸu̥⸢ʦuruŋkeː⸣ri]激しく怒り。はらわたが煮え返って。腸が煮えくり返り。
バターマ [ba⸢taː⸣ma]小腸。ウ⸢ブ⸣バタ[ʔu⸢bu⸣bata](大腸)の対義語。
バタ アウニ ブー [⸣bata ⸢ʔauni buː]お腹が空になっている。妊娠していない。
バタ アスクン [⸣bata ⸢ʔasu̥⸣kuŋ]腹を預ける。お産の軽い人に肖る呪術行為。お産の重い人がお産の軽い人に対して、宜しくと頼むこと。
バタイシ [ba⸢ta⸣ʔiʃi]石垣を積む際に、表側と裏側の二重石積みの間に入れる小石。「腹石」の義。
バタイリ [ba⸢ta⸣ʔiri]綿入れ。綿を入れた冬着。⸢タン⸣ジン[⸢tan⸣ʤiŋ](丹前)ともいう。一般の人は着用できなかった。標準語からの借用語。
バタイリムチ [ba⸢taʔiri⸣muʧi]あんもち(餡餅)。普通は⸢アン⸣ムチ[⸢ʔam⸣muʧi](餡餅)、バ⸢タ⸣ムチ[ba⸢ta⸣muʧi](餡をを入れた餅。「腸餅」の義)という。
バタウチ [ba⸢ta⸣ʔuʧi]内心。腹の中。胸中。「腹内」の義。
パダカ [pa⸢da⸣ka]裸。「裸、波太加奈利<はだかなり>」『新撰字鏡』の義。
バタガー [ba⸢ta⸣gaː]腹の皮。
パタガー [pḁ⸢tagaː]{鍋縁}{ナベ|ブチ}に張り付く黒糖。黒糖を製造する際に砂糖黍の汁を煮詰める鍋の内側に張り付く薄い黒糖。
バタ カーラスン [⸣bata ⸢kaːra⸣suŋ]空複を凌ぐために少量の食物をとる。空腹を紛らわすために少量の代用食をとる。
バタ カイヤン [⸣bata ⸢kai⸣jaŋ]心が美しい。こころね(心根)が優しい。我慢強い。キ⸢ムカイ⸣ヤン[ki⸢mukai⸣jaŋ]ともいう。
パダ カイヤン [⸣pada ⸢kai⸣jaŋ]肌が美しい<綺麗である>。肌の色が白く、きめ<木目>が細かい。
パダカウワン [pa⸢dakau⸣waŋ]怖くて身震いするさま。怖くて寒気立つ。悪寒をおぼえるほど怖い。おじけだつ。身の毛立つ。ぞっとする。
パタカキムヌ [pḁ⸢takakimunu]茶碗など陶器類の縁が一部分欠けたもの。縁が欠けた不良品。フ⸢チカキムヌ[ɸu̥⸢ʧikakimunu](口欠けもの)ともいう。
パダカムン [pa⸢daka⸣muŋ]裸麦。麦の穂にのぎ<芒>が少なく、脱穀しやすい麦。
バタ カルン [⸣bata ka⸢ruŋ]経産婦の腹を名義的に借りること。妊婦が胎児との相性が悪い時、相性の良い経産婦のお腹を名義的に借りること
バタ カローン [⸣bata ka⸢roː⸣ŋ]{1}お産が軽い。安産である。
バタ カローン [⸣bata ka⸢roː⸣ŋ]{2}お腹が軽い。
パタキ [pḁ⸢ta⸣ki]畑。「~蒔きし波多氣毛~。万、4122」、「陸田種子、<ハタケツモノ>」『類聚名義抄』の転訛したもの。
パダギ [pa⸢da⸣gi]肌着。標準語からの借用語が転訛したもの。老年層は、⸣ジバン[⸣ʤibaŋ](襦袢)と言った。
パタキウヤザ [pḁ⸢takiʔuja⸣ʣa](動)野鼠。「畑鼠」の義。
バタキクッツァーン [ba⸢takikut⸣ʦaːŋ]腹具合がわるい。「腹が重苦しい」の義。
パダキクッツァーン [pa⸢dakikut⸣ʦaːŋ]蒸し暑くて息苦しい。暑苦しい。熱気がこもって不快である。
パタキシグトゥ [pḁ⸢takiʃigu⸣tu]畑仕事。
パタキスクリプス [pḁ⸢takisu̥kuri⸣pu̥su]農夫。畑作人。百姓。「畑作り人」の義。
パタキトゥナル [pḁ⸢takituna⸣ru]畑隣り。畑がと隣り合っていること。
パタキドング [pḁ⸢takidoŋ⸣gu]畑道具。鍬、鎌、箆などの農具。
パタキヌ ッサ ソールン [pḁ⸢taki⸣nu ⸣ssa ⸢soːruŋ]畑の草をへら<箆>で鋤き起こして取る<除草する>。
パダキネーン [pa⸢dakineː⸣ŋ]いたずらっこ(悪戯っ児)である。腕白である。暴れん坊である。
パタキマール [pḁ⸢takimaː⸣ru]畑の見回り。作物の生育状況や鳥虫害の有無などを調べ、収穫時期の予想をたてるために畑を見回ること。
パタキマイ [pḁ⸢taki⸣mai]陸稲。おかぼ。「畑米」の義。終戦後の一時期、西表島から陸稲が導入されたことがあったが、味が不味く、鳩間島では定着しなかった。
パタキヤーマ [pḁ⸢takijaː⸣ma]畑小屋。畑の側に小さな小屋を作って畑作業の後、休憩をしたり、昼食のための湯茶をたてたりしたところ。戦後はほとんどなくなってしまった。
パダキン [pa⸢da⸣kiŋ]肌着。⸣ジバン[⸣ʤibaŋ](ジバン。gibão<ポルトガル語、肌着>の転訛したもの。襦袢。)ともいう。
パタキンガナ [pḁ⸢takiʔŋga⸣na]畑で栽培したにがな<苦菜>。栽培にがな。「畑苦菜」の義。⸢ヌーンガ⸣ナ[⸢nuːʔŋga⸣na](野苦菜。野生の苦菜)の対義語。
バタククチ [ba⸢takuku⸣ʧi]腹具合。胃腸の調子。「腹心地」の義。
バタクサー [ba⸢ta⸣ku̥saː]へそくり(臍繰り)。密かに溜めたお金。ワ⸢タ⸣クサー[wa⸢ta⸣kusaː](へそくり)ともいう。糸満方言からの借用語か。
バタグスク [ba⸢tagusu̥⸣ku]二重積みの石垣。前と後ろに二重に石垣を積んで、中間にバ⸢タ⸣イシ[ba⸢ta⸣ʔiʃi](腹石)を入れて積み上げた石垣。
バタ クダスン [⸣bata ku⸢dasuŋ]下痢する。⸢腹を下す」の義。
バタ グッふァン [⸣bata ⸢guf⸣faŋ]お腹がもたれる。お腹が張って重い。腹具合がわるい。「腹が重い」の義。
バタグルグルー [⸣bataguruguruː]下痢気味になること。腹がごろごろと鳴ること。「腹ゴロゴロ」の義。
バタグル スン [ba⸢ta⸣guru ⸢suŋ]お腹の具合が悪くなる。下痢気味になる。
バタグローン [ba⸢taguroː⸣ŋ]お腹の調子が悪い。下痢しやすい。
バタ コールン [⸣bata ⸢koː⸣ruŋ]{1}腹が落ち着く。お腹がかたくなる。
バタ コールン [⸣bata ⸢koː⸣ruŋ]{2}妊婦のお腹<胎児>が安定する。「腹強る」の義。
バタ コールン [⸣bata ⸢koː⸣ruŋ]{3}腹の皮がよじれる<腹の皮が硬くなる>。
パダ コールン [⸣pada ⸢koː⸣ruŋ]新生児や乳児が成長すること。赤ちゃんの首がすわる。「肌強る」の義。
ハダシ [ha⸢da⸣ʃi]裸足。標準語からの借用語。老年層は、カ⸢ラピサ[ka⸢rapisa](裸足)、カ⸢ラパン[ka⸢rapaŋ](裸足。<空足・カラァシ>の転訛)。キ⸢ザ⸣パン[ki⸢ʣa⸣paŋ](裸足。汚れた足)という。
バタシ [ba⸢ta⸣ʃi]酒器の一つ。神酒を入れて神前に供えるための挽き物の祭具。
バタシ [ba⸢taʃi]渡し場。
パダシ [pa⸢da⸣ʃi]裸足。「踱跣、波太志<はだし>」『新撰字鏡』の義。老年層は、キ⸢ザ⸣パン[ki⸢ʣa⸣paŋ](土足)、カ⸢ラピサ[ka⸢rapisa](裸足)、カ⸢ラパン[ka⸢rapaŋ](裸足)ともいう。
パダ シズマルン [⸣pada ʃi⸢ʣu⸣maruŋ]緊張する。かしこまる。恐れ慎む。うやうやしく<恭しく>かしこまる。「肌鎮まる」の義。
バタシブニ [ba⸢taʃi⸣buni]渡し船。
パダ シマルン [⸣pada ʃi⸢ma⸣ruŋ]緊張する。気を引き締める。「肌締まる」の義。⸣パダ ヌ⸢ビ⸣ルン[⸣pada nu⸢bi⸣ruŋ](気がゆるむ。油断する<怠ける>)の対義語。
バタジル コールン [ba⸢ta⸣ʤiru ⸢koː⸣ruŋ]腹の筋が硬くなる。腹筋を縒<よ>る。
バタズーワン [ba⸢taʣuː⸣waŋ]お腹が丈夫である。内臓機能が強くてお腹をこわしにくい。「腹強し」の義。
パダ スクマルン [⸣pada su̥⸢ku⸣maruŋ]肌が縮まる。体が縮まる。驚いて身が縮まる。身がすくま(竦ま)る。
バタ スクムン [⸣bata su̥⸢ku⸣muŋ]お腹がすくむ<竦む>。腹がへこむ。お腹が縮む。
バタスクライ [ba⸢tasuku⸣rai]腹ごしらえ<腹拵え>。小腹が減るときに少量の食べ物を取って本食事に備えること。
バタスン [ba⸢tasuŋ]他動渡す。
パタスン [pa⸢ta⸣suŋ]他動果たす。成し遂げる。「~結びてし事者不果<言は果たさず>~。万、481」の義。
バタダイ [ba⸢ta⸣dai]腹持ち。腹力。食物の消化が遅く、満腹感が保たれること。バ⸢タ⸣タヤ[ba⸢ta⸣taja](腹の力)の転訛したもの。
バタタヤ [ba⸢ta⸣taja]腹の力。腹力(腹もち)。バ⸢タ⸣ダヤ[ba⸢ta⸣daja](腹の力)ともいう。
パタチ [pḁ⸢taʧi]二十歳。
バタチガイ [ba⸢taʧiga⸣i]腹違い。異母兄弟姉妹。
パタッカルン [pḁ⸢takkaru]他動{1}手足などを開き広げる。広げる。開く。「開、ハダクル『運歩色葉集』」の転訛したもの。
パタッカルン [pḁ⸢takkaru]他動{2}着物を開いて体を露出させる。
パダッカルン [pa⸢dakkaruŋ]自動手足を開き広げて立ち塞ぐ。立ちはだかる。前に立ち塞がる。パ⸢ダカルン[pa⸢dakaruŋ](立ちはだかる)ともいう。「跨、ハタカル」『類聚名義抄』の転訛したもの。「Fatacari,u,atta(ハタカル)」『邦訳日葡辞書』の義。
パタッキルン [pḁ⸢takkiruŋ]他動開ける。広げる。「はだける<開ける>」。「開、ハダクル」『運歩色葉集』の義。「Fatacari,u,atta.ハタカリ、ル、ッタ(扈り、る、った)両脚を開き、踏み広げて立つ」『邦訳日葡辞書』。
パタックン [pḁ⸢takkuŋ]自動ひらく(開く)。「開、ハダクル」『運歩色葉集』。
バタッサラー [⸣batassaraː]よく怒る人。激しやすく腹黒い人。心根の腐った人。「腹腐れ者」の義。⸣バタッサリムヌ[⸣batassarimunu](よく怒る者。腹腐れ者。腹黒い者)ともいう。
バタッサリムニ [ba⸢tassari⸣muni]腹立たしい言葉。{癪}{シャク}に障る言葉。「腹腐れ物言い」の義。
バタッサリムヌ [ba⸢tassari⸣munu]よく怒る者。腹腐れ者。腹黒い者。
バタ ッサルン [⸣bata ⸣ssaruŋ]腹立たしくなる。癪に{障}{サワ}る。不愉快になる。「腹が腐れる」の義。
パダ ッソーン [⸣pada s⸢soː⸣ŋ]肌が白い。色白である。
バタッふァー [ba⸢taf⸣faː]怒りっぽい人。「腹暗い者」の義。
バタッふァーン [ba⸢taf⸣faːŋ]怒りっぽい。立腹しやすい。「腹暗い」の義。
パダナーン [pa⸢danaː⸣ŋ]悪戯っぽい。悪ふざけする。しまりがなく、怠惰である。落ち着きが無い。女癖が悪い。「肌長し」の義。
バタナカラ [ba⸢tanaka⸣ra]腹半分。五分腹。
バタニジ [ba⸢ta⸣niʤi]空腹の我慢。ひだるい<ひもじい>思いを我慢すること。「腹念じ」の義。
バタヌ カー [ba⸢ta⸣nu ⸣kaː]腹の皮。カツオの腹皮は、ハ⸢ラ⸣ゴー[ha⸢ra⸣goː](腹皮)という
バタヌ サールン [ba⸢ta⸣nu ⸢saːruŋ]膨れた腹が痩せる。膨れた腹が細くなる。
バタヌ シームヌ [ba⸢ta⸣nu ⸢ʃiːmunu]腸(はらわた)の吸い物。豚の中身の吸い物。若年層は、ナ⸢カミ⸣ヌ ⸢シームヌ[na⸢kami⸣nu ⸢ʃiːmunu](中身の吸い物)という。
バタヌ シゥカイルン [ba⸢ta⸣nu sï̥⸢kairuŋ]腹が差し込むように痛む。
バタヌ ピッチン [ba⸢ta⸣nu ⸢pit⸣ʧiŋ]お腹のいっぱい。満腹。
パダヌビムヌ [pa⸢danubi⸣munu]ずぼら。怠け者。しまりのない者。
バタヌ フチル [ba⸢ta⸣nu ɸu̥⸢ʧi⸣ru]腹薬。整腸薬。下痢止め。「腹の薬」の義。
パダ ヌブン [⸣pada ⸣nubuŋ]怠ける。気がゆるむ。やる気を失って遊びまわる。
パダヌベーン [pa⸢danubeː⸣ŋ]だらしない。しまりがない。節度が無い。無分別で悪戯っぽい。ずぼらである。「肌伸び・あり」の義。
バタヌ ムシ [ba⸢ta⸣nu mu⸢ʃi]{1}腹の虫。寄生虫。
バタヌ ムシ [ba⸢ta⸣nu mu⸢ʃi]{2}空腹の原因を比喩的に⸢腹の虫が鳴く」と表現する。
バタバタ [ba⸢tabata]擬態語。忙しいさま。
パタパタ [pḁ⸢tapata]擬音語。
バタピーチ [ba⸢tapiː⸣ʧi]同母兄弟姉妹。同じ母から生まれたこと。「腹一つ」の義。
バタ ピナラスン [⸣bata pi⸢narasuŋ]お腹を減らす。腹ごなしをする。食後に運動をして消化を助ける。
バタ ピナルン [⸣bata pi⸢naruŋ]腹が減る。腹が空く。
バタフクビ [ba⸢taɸuku⸣bi]腹に巻く帯。腹帯。カ⸢サナイフク⸣ビ[kḁ⸢sanaiɸu̥ku⸣bi](負ぶい紐。おんぶひも)の対義語。
バタフクラー [ba⸢taɸu̥ku⸣raː]お腹の大きい者。「腹膨れ者」の義。卑語。⸣バタブター[⸣batabutaː](はらぶと<腹太>)ともいう。
バタフクリ [ba⸢taɸu̥ku⸣ri]腹膨れ。お腹にガスが溜まって腹が膨張すること。食いすぎによる消化不良でお腹が張ること。
バタフクル [ba⸢taɸu̥ku⸣ru]{1}ふくこう(腹腔)。お腹。腹部。「腹袋」の義。
バタフクル [ba⸢taɸu̥ku⸣ru]{2}心。内心。
バタフジムニ [ba⸢taɸuʤi⸣muni]憎まれ口。他人を不愉快にする言葉遣い。感情を逆撫でする物言い。⸢腹をくじる<抉る>物言い」の義。
バタフズン [ba⸢ta⸣ɸuʣuŋ]他動他人の感情を逆撫でする。憎まれ口をたたく。故意に嫌なことを言い立てて他人を不愉快にする。「腹くじる<抉る>」の転訛したもの。「挑 天彫反、久自流」『新訳華厳経音義私記』の義か。⸣バタ ⸣フズン[⸣bata ɸuʣuŋ](憎まれ口を叩く<腹くじる。心を抉る>)ともいう。
バタブター [⸣batabutaː]お腹の大きい人。太鼓腹。大食漢。卑語。「腹太奴」の義。ウ⸢ブ⸣バタ[ʔu⸢bu⸣bata](大きなお腹。妊婦。妊婦に対して親愛の情を持って言う)には卑語の意味はない。
バタマールン [ba⸢tamaː⸣ruŋ]自動湾曲する。曲がる。たわむ(撓む)。
バタ マイヤン [⸣bata ⸢mai⸣jaŋ]お腹が大きい。大食いである。
パダミー [pa⸢da⸣miː]肌身。
バタミチ [ba⸢ta⸣miʧi]満腹するほど。腹一杯に。「腹満ち」の義。
バタミチソージ [ba⸢tamiʧisoː⸣ʤi]祭祀の名。パ⸢マウリソー⸣ジ[pa⸢maʔurisoː⸣ʤi](浜下り精進)の別名。満腹する精進祈願の義。ご馳走を作って、村中の人々が⸣サンシキ[⸣saŋʃi̥ki](桟敷)に集まり、神職者(司や手擦り部)が友利御嶽で稲の下葉枯れ予防を祈願をしている間、村人等が模擬的に夜籠もりをした後、村役人の鶏鳴の合図によって一斉に起き出して、昼食のご馳走を食して帰宅した村行事。
バタミツン [ba⸢ta⸣miʦuŋ]自動満腹する。⸢腹満つ」の転訛したもの。
バタミングル [ba⸢tamiŋ⸣guru]腹具合。腹巡り。お腹の循環具合。消化から排泄までの胃腸の循環。「腹廻り」の義。
バタ ムーン [⸣bata ⸢muːŋ]はら<腸>が煮えくり返る。非常に立腹する。激怒する。「腹・燃ゆ<下二>」の転訛したもの。
バタ ムイルン [⸣bata ⸢muiruŋ]はら<腸>が煮えくり返る。非常に立腹する。非常に腹が立つ。激怒する。「腹が燃える」の義。
バタ ムゲールン [⸣bata mu⸢geːruŋ]はら<腸>が煮え返る。激怒する。「はら<腸>が沸騰する」の義。
パダムス [pa⸢da⸣musu]寝具用の{筵}{ムシロ}。ねござ(寝茣蓙)。「肌筵」の義。就寝の際に畳の上に敷く上質の筵。上質の備後産の藺で編んだ茣蓙。直接肌に接触する筵であることから命名されたものであろう。普通は幅3尺、長さ6尺の筵であるが、二枚続きで長さ9尺の筵もある。6畳敷きの筵は長いので、⸢ナー⸣ムス[⸢naː⸣musu](長筵)という。
バタムチ [ba⸢ta⸣muʧi]あんもち(餡餅)。「わた<腹>餅」の義。あずきあん(小豆餡)、ごまあん(胡麻餡)、ユ⸢ナ⸣クアン[ju⸢na⸣kuʔaŋ](黒糖を削って麦焦がしに混ぜ、餅餡にしたもの)等を中に入れた餅。⸢アンム⸣チ[⸢ʔammu⸣ʧi](餡餅)ともいう。バ⸢タム⸣チ[ba⸢tamu⸣ʧi](餡餅)ともいう。
パダムチ [pa⸢damu⸣ʧi]肌触り。外気が肌に心地よく感じる感覚。
バタ ムトゥン [⸣bata ⸣mutuŋ]はらむ(孕む)。妊娠する。「腹を持つ」の義。
バタヤビ [ba⸢ta⸣jabi]下痢。腹痛
パダヤビプス [pa⸢dajabi⸣pu̥su]ハンセン病患者。「肌破れ者」の義。⸢クン⸣キャー[⸢kuŋ⸣kjaː](ハンセン病患者)は卑語。パ⸢ダヤビ⸣ムヌ[pa⸢dajabi⸣munu](ハンセン病患者)ともいう。
パダヤビヤン [pa⸢dajabi⸣jaŋ]ハンセン病。
バタ ヤブルン [⸣bata ja⸢bu⸣ruŋ]お腹をこわす。
バタ ヤブン [ba⸢ta⸣ jabuŋ]お腹をこわす。「腹を破る」の義。
バタ ヤムン [ba⸢ta⸣ jamuŋ]腹が痛む。腹痛がする。
バタヤン [ba⸢ta⸣jaŋ]腹痛。腹の病気。「腹病み」の義。
バタヨーン [ba⸢tajoː⸣ŋ]お腹をこわしやすい。腹を下しやすい。下痢しやすい。「腹・弱い」の義。
パダラ [pa⸢da⸣ra](動)魚の名。和名、ヤクシマイワシ(体長約12センチ)。和名、オキナワトウゴロイワシ(体長約13センチ)。パ⸢ダ⸣ライズ[pa⸢da⸣raʔiʣu]とも言う。成魚は夏に群れをなして海岸近くまで遊泳してくる。投網で漁獲し、パ⸢ダ⸣ラナマシ[pa⸢da⸣ranamaʃi](トウゴロイワシの刺身)にして食したが、あっさりした味で、あまり美味ではなかった。お盆の獅子舞のミ⸢チウタ[mi⸢ʧiʔuta](道歌)に/シシェマヌ オールンドー アンガマターヌ オールンドー パダラヤ ナマシ ナマシヤ パイル パイルヤ フナブ オンガキヤ シーソヌパー ソーランヤーヌ アッパター ミーザンマーザン オーショーリー ソーランヤーヌ アッパター/(獅子舞が来られるよ、入子踊り隊のアンガマ達が来られるよ、パダラ魚を刺身にして、刺身には酢を掛けて、酢には九年母を用い、刺身の妻<あしらい>には紫蘇の葉を用いてある、精霊会のお婆さん達よ、美味くても不味くても召し上がってください、精霊会のお婆さん達よ)『鳩間島古典民謡古謡集』と歌われている
パタラーッティ [pata⸢raːtti]{1}ばたばたと。鳥が羽ばたいて飛び立つさまの様子。
パタラーッティ [pata⸢raːtti]{2}ぱったりと。はたと。すっかり。途絶えるさま。
パダラーン [pa⸢daraː⸣ŋ]俊敏である。素早く動き回る。すばしこい。腕白ではしこい。腕白で、言うことを聞かない。
パタラカー [pḁ⸢tarakaː]働き者。働きすぎる者への多少のジェラシーをこめて言う。
パタラキジブン [pḁ⸢tarakiʤibuŋ]働く時刻<時分>。作業をする時刻<時分>。
パタラキバナ [pḁ⸢tarakibana]働き盛り。働き盛りの年頃。-バナ[-bana](~時期。~年ごろ。~真っ最中)は、接尾語の-パナ[-pana](~時期。~年ごろ。~真っ最中)が複合語を構成する際に連濁をおこしたもの。プ⸢ス⸣パナー[pu⸢su⸣panaː](一頃、一時期)、ウ⸢ヌ⸣ パナー イッ⸢ケン⸣ サ⸢カリパンジョー シーブタン[ʔu⸢nu⸣ panaː ʔik⸢ken⸣ sa⸢karipanʤoː ʃiːbutaŋ](その頃は非常に繁昌していた)のように用いられる。
パタラキムヌ [pḁ⸢tarakimunu]働き者。働き手。精出して働く人。
パタラクン [pḁ⸢tarakuŋ]自動働く。活動する。
パタラッティ [pḁta⸢ratti]ぱっと。ぱたっと。
パダラムン [pa⸢daramuŋ]腕白者。腕白坊主。
パタランケーリ [pḁ⸢taraŋkeː⸣ri]バタバタのた打ち回って。
バタルン [ba⸢taruŋ]他動{1}渡る。
バタルン [ba⸢taruŋ]他動{2}もらう。手渡す。
バタンバタンシ [ba⸢tambataŋ]バタンバタント。擬音語。
ハチ [⸣haʧi](数詞)八。標準語からの借用語。普通は⸢ヤーチ[⸢jaːʧi](八つ。八)、パ⸢チングヮ⸣チ[pḁ⸢ʧiŋgwa⸣ʧi](八月)という。
バチ [ba⸢ʧi]ばち(桴)。太鼓などを打ち鳴らす棒。「木包、豆豆美乃波知(つづみのばち)」『和名抄』の転訛。
バチ [⸣baʧi]{1}ばち(罰)。神罰。
バチ [⸣baʧi]{2}悪事のむくい。たたり。
パチ [pḁ⸢ʧi]{PoS_1}お初。
パチ [pḁ⸢ʧi]接頭{PoS_2}パ⸢チウクシ[pḁ⸢ʧiʔukuʃi](正月二日の仕事初め。初起こし)。
パチ [pḁ⸢ʧi]鉢。皿より大きくて深い容器。鰹漁船で餌を入れる木製の箱状の容器はザ⸢コー⸣バチ[ʣa⸢koː⸣baʧi](餌<雑魚>鉢)という。
パチイミ [pḁ⸢ʧiʔimi]初夢。元旦の夜にみる夢。
パチウクシ [pḁ⸢ʧiʔukuʃi]正月二日(元旦の翌日)の仕事始め。新年の仕事初め。「初起こし」の義。
パチ ウクスン [pḁ⸢ʧi⸣ ʔu⸢ku⸣suŋ]供物料理のお初を起こすこと。法事の際に仏前に供えた料理を祈願の途中に、「お初」として、重詰め料理の各品を箸で起こすこと。それによって先祖が召し上がったことを意味しているといわれている。
バチカビムヌ [ba⸢ʧikabi⸣munu]罰当たり。「罰被り者」の義。他人を罵るときに用いる卑語。
バチ カブン [ba⸢ʧi⸣ kabuŋ]罰があたる。「罰を被る」の義。
パチカンナール [pḁ⸢ʧikannaːru]初夏に最初に鳴り響く雷鳴。「初雷」の義。
バチクヮースン [ba⸢ʧikwaːsuŋ]自動すばらしい目にあう。{僥倖}{ギョウ|コウ}に恵まれる。幸運にめぐり合う。沖縄(首里)方言からの借用語。バ⸢チックァースン[ba⸢ʧikkwaːsuŋ]ともいう。
バチクヮイ [ba⸢ʧikwai]しめた!やった!沖縄方言からの借用語。思い通りに事が運んだ時に喜んで発する語。
パチソーラン [pa⸢ʧisoːraŋ]初盆。新盆。「初精霊会」の義。死者が迎える最初のお盆。
パチソンガチ [pḁ⸢ʧi⸣soŋgaʧi]節祭のこと。「初正月」の転訛したもの。
パチタビ [pa⸢ʧitabi]初旅。
パチタユル [pa⸢ʧitajuru]初便り。
パチッふァ [pḁ⸢ʧiffa]初子。ういご。
パチナシ [pa⸢ʧinaʃi]初産。「はつなし<初生し>」の義。
パチナル [pḁ⸢ʧinaru]初生り。果実や野菜の最初に生る果実。
パチナンカ [pḁ⸢ʧinaŋka]初七日。死後七日目の⸢ソッ⸣コー[⸢sok⸣koː](法事)。ア⸢ラナン⸣カ[ʔa⸢ranaŋ⸣ka](新七日法事)ともいう。以下、フ⸢タナンカ[ɸu̥⸢tanaŋka](二七日)、⸢ミーナンカ[⸢miːnaŋka](三七日)、⸢ユーナンカ[⸢juːnaŋka](四七日)、イ⸢チナン⸣カ[ʔi⸢ʧinaŋ⸣ka](五七日)、⸢ムーナンカ[⸢muːnaŋka](六七日)、⸣シンズク[⸣ʃinʣuku](四十九日)、⸢ピャーッカニ⸣チ[⸢pjaːkkani⸣ʧi](百か日焼香)が行われる
パチヌ ッふァ [pḁ⸢ʧinu⸣ f⸢fa]初の子。第一子。最初に生まれた子。
パチパチ [pḁ⸢ʧipaʧi]各果物のお初。各種果物の初生り。根菜や果物、野菜の初生り。食べられる木の実の初生り。/ナチカシヤ ナチンガチヌ ナチヌヤマ キーヌナル パチパチバ ブリカザリ ムスビティ ウヤニ マイラシバ スリトゥム ウヤヌヨー タミドゥナル/(懐かしい夏季の夏山の木の実のお初<初生り>を取り供え、結んで亡き親に差し上げると、あるいは親の孝行<ため>になる)。「⸢ウシトゥヌ クイ[⸢ʔuʃi̥tu⸣nu ⸣kui](弟の声<歌>)。念仏歌」『鳩間島古典民謡古謡集』
パチパチ [pḁ⸢ʧipaʧi]擬音語。ぱちぱち。拍手する音。はじける音。
ハチバンシェン [hḁ⸢ʧibaŋ⸣ʃeŋ]「八番線」の義か。直径約4ミリの鋼線。ワイヤロープに用いる鋼線。これを約30センチに切り、先端部を研いで竹竿の先に填めて小魚を突く{銛}{モリ}に作った。
ハチブランプ [hḁ⸢ʧibu⸣rampu]八分ランプ。灯心が八分のランプ。
パチマー [pḁ⸢ʧimaː]初孫。
ハチマキ [ha⸢ʧima⸣ki]鉢巻。標準語からの借用語。
パチミカスン [pḁ⸢ʧimika⸣suŋ]他動パチンと平手打ちにする。張りとばす。ぶん殴る。
パチミングラスン [pḁ⸢ʧimiŋgura⸣suŋ]他動平手で打って張り倒す。殴り倒す。ぶん殴る。
パチユー [pḁ⸢ʧijuː]お供え用に。ほんの少量。ほんの少しの供物用として。神仏に供える少量の穀物。程度をあららわす。「お初用に」の義。
ハチョーフ [hḁ⸢ʧoːɸu]破傷風。標準語の「破傷風」の転訛したもの。普通は、⸢ピン⸣グル ⸢ペー⸣ルン[⸢piŋ⸣guru ⸢peː⸣ru](ヒジュル<破傷風菌が傷口から侵入しておこる病気>が入る)『医学沖縄語辞典』という。
パチンガカー [pa⸢ʧiŋgakaː]ニ⸢シ⸣ドー[ni⸢ʃi⸣doː](西堂。「北の窪地」の義)と⸣カンドー[⸣kandoː](地名。「上の窪地」の義)の境界地点の、加治工家の畑の側にある鍾乳洞洞穴の井戸。昔は、農作業の途中に水が欲しくなると、この鍾乳洞の洞穴を下りていって、洞窟底の湧水を汲んで飲料水に利用したという。⸢ウイヌカー[⸢ʔuinukaː]が整備されて以後、あまり利用されなくなったという。伝説によると、この洞窟は西表島のウ⸢ラン⸣ザキ[ʔu⸢ran⸣ʣaki](宇奈利崎)に通じているという
パチングヮチ [pḁ⸢ʧiŋgwa⸣ʧi]八月。若年層は、パ⸢チンガ⸣チ[pḁ⸢ʧiŋga⸣ʧi](八月)という。八月は良い月といわれており、⸢ソーニヨイ[⸢soːnijoi](生年祝い)や⸣ドゥーパダニンガイ[⸣duːpadaniŋgai](健康祈願)を行う月である。
パチングヮチシキ [pḁ⸢ʧiŋgwaʧi⸣ʃi̥ki]八月。八月の月。「八月・月」の義。
パチンジ [pḁ⸢ʧiʔnʤi]{1}初出。初出漁。
パチンジ [pḁ⸢ʧiʔnʤi]{2}産婦が出産後の{庚}{カノエ}、{辛}{カノト}の日に実家の仏前、親戚の家の仏前にお参りして元祖拝みをすること。
パツァーン [pḁ⸢ʧaː⸣ŋ]せっかちである。性急で落ち着かない。怒りっぽい。普通は、⸢キーパツァー⸣ン[⸢kiːpaʦaː⸣ŋ](せっかちで怒りっぽい性分である)という。
パツァーンパツァーン [pḁ⸢ʦaːmpaʦaːŋ]擬音語。ぽきりぽきり。ぽきぽき。木の枝などが{脆}{モロ}く折れる音。
パツァグミ [pḁ⸢ʦa⸣gumi]おこし(興し。{SqBr}g{/SqBr}{粔籹}{オコシ})。
バツァミルン [ba⸢ʦami⸣ruŋ]他動鼻綱を結わえる。牛馬など家畜類の鼻綱を草木に結わえ、一定時間放置して草を食べさせる。バ⸢ツァ⸣ムン[ba⸢ʦa⸣muŋ]ともいう。
バツァムン [ba⸢ʦa⸣muŋ]他動牛馬などの鼻綱を草木に繋いで放牧する。
パツァラパツァラ [pa⸢ʦarapaʦara]{1}ぱちぱち。枯ススキや竹が燃えはじけるさま。擬音語。
パツァラパツァラ [pa⸢ʦarapaʦara]{2}ぽりぽり。煎り豆などを噛み砕く音の形容。
パツァラパツァラシ [pḁ⸢ʦarapaʦara⸣ʃi]擬声語。ぽきぽきと。ぽきぽきと音を立てて食うさま。
パツァンティ [pḁʦan⸢ti]ぷつりと。ぷつんと。綱や縄、糸や紐などが切れるさま。擬音語からの転訛。
ハッカ [⸢hak⸣ka](植)ハッカ(薄荷)。標準語からの借用語か。頭痛薬として用いられた。戦前は台湾から防虫、防臭用の⸢ショー⸣ノー[⸢ʃoː⸣noː](樟脳)などと共に輸入されていた。
ハッカク [⸣hakkaku]八角形の凧。⸣ハッカクピキダマ[⸣hakkakupi̥kidama](八角凧)の略語。
パッキルン [⸢pakkiruŋ]自動はち切れる。内部が膨らんできて、表面が裂け切れる。
バッキン [⸢bakkiŋ]罰金。
バックラスン [⸢bakkurasuŋ]他動ばらばらにする。こわす。割って壊す。
バックリルン [⸢bakkuriruŋ]自動ばらばらに割れる。割れて崩れる。
バックルン [⸢bakkuruŋ]自動ばらばらに割れる。割れて崩れる。
バッサイ [⸢bas⸣sai]伐採。山や森の樹木を伐りとること。標準語からの借用語。
ハッサマヨー [⸣hassamajoː]{驚愕}{キョウ|ガク}したり、{呆}{アキレ}返る際に発する語。呆れて言いようがない。何とまあ。沖縄本島糸満方言からの借用語が転訛したものか。
バッザラバザラ [⸢badʣarabaʣara]{1}うじゃうじゃ。うようよ。多数の虫や昆虫が重なり合ったり{絡}{カラミ}合ったりしてうごめくさま。バ⸢ザラバザラ[ba⸢ʣarabaʣara]ともいう。
バッザラバザラ [⸢badʣarabaʣara]{2}むずむず。あせも<汗疹>などが盛んに痒くなるさま。
パッサン [⸣passaŋ]発散。発熱後、熱が体内にこもらないように発汗させて体熱を外へ発し散らすこと。
ハッスンジブク [⸢hassunʤibu⸣ku]八寸角の正方形の重箱。「八寸重箱」の義。祝儀や法事の際に用いられる重箱。石垣方言からの借用語か。
パッタ シキ [⸢pat⸣ta ⸣ʃi̥ki]先月。「去った月」の義。
パッタンティン [⸢pat⸣tantiŋ]行ったとしても。行ったところで。自動詞⸣パルン[⸣paruŋ](行く)の連用形⸣パリ[⸣pari](行き)に完了の助動詞⸣タン[⸣taŋ](た。たり)が下接し、その連用形にさらに接続助詞⸣ティン[tiŋ](~ても)が下接した形。
パッチー [⸢pat⸣ʧiː]めんこ。子供の遊具。円形または方形に作られ、表面に絵や写真が張られた厚紙。地上に置いた相手のものに交互に打ち付けて裏返す遊びに用いる。
パッチマルン [⸢patʧima⸣ruŋ]自動お腹等がパンパンに張る。はち切れる。
ハッチョールー [⸢hatʧoː⸣ruː]八丁艪。⸢プーシン[⸢puːʃiŋ](帆船)時代のカツオ漁は八丁の艪を装着して漕ぎながらカツオを釣ったという。
バッツァースン [⸢batʦaːsuŋ]他動粉々に割り砕く。「割り散らかす」の義。
パッツァースン [⸢patʦaː⸣suŋ]自動夢中で走る。走りまくる。⸢走り散らす」の転訛したもの。
バッツァールン [⸢batʦaːruŋ]自動粉々に砕ける。粉々に割れる。散り散りになる。ばらばらになる。
パッツォールン [⸢patʦoː⸣ruŋ]自動ばらばらに散る。ほつれ<解れ>てばらばらになる。散らかる。はじけ散る。
パットゥ [⸢pattu]法度。おきて。禁令。禁制。禁止。
ハッパ [⸢hap⸣pa]ダイナマイト。⸢ダイ⸣ダマ[⸢dai⸣dama](ダイナマイト)ともいう。「発破」の義。西表炭坑などで使用されていた語が借用されたもの。戦後の一時期、八重山では⸢ハッ⸣パ[⸢hap⸣pa]で魚を乱獲する人が現れ、誤って死亡する事件が続発したので、その使用が禁止された。
バッパー [⸢bappaː](幼)タバコ(煙草)。
バッパイ [⸢bap⸣pai]誤り。間違い。取り違え。誤解。⸢バッパイ⸣ルン[⸢bappai⸣ruŋ](間違える。取り違える)の連用形より転成した名詞。
バッパイルン [⸢bappai⸣ruŋ]他動間違える。誤る。取り違える。誤解する。
バッパウン [⸢bap⸣pauŋ]他動間違える。誤る。取り違える。
バップー [⸢bap⸣puː]配分。分配。等分に分け合うこと。「割賦」の転訛したあもの。⸢ワッ⸣プー[⸢wap⸣puː]ともいう。
パップガスン [⸢pappugasuŋ]他動暴露する。ばらす。秘密を暴く。若年層は⸢ハップガスン[⸢happugasuŋ](暴露する)ともいう。「Fogaxi,u,aita.ホガシ、ス、イタ(ほがし、ほがす、いた){穿孔}{セン|コウ}する、すなわち、孔をあける」『邦訳日葡辞書』に強意の接頭語⸢パッー[⸢pap-](うち~)が付いて再転訛した語か。
パップギルン [⸢pappugiruŋ]自動ばれる。発覚する。露見する。⸢⸢ハップギルン[happugiruŋ](ばれる)ともいう。
ハッポー [⸣happoː]八方。方々。標準語からの借用語か。普通は⸣ウマーカマー[⸣ʔumaːkamaː](あちこち。<ここあそこ>)という。
ハツリ [hḁ⸢ʦuri]はつる(削る)こと。材木をはつること。山で材木を伐り、運び出した後、斧で軽く斜めに切り込み、次に本格的に削って角材に作ること。少しずつ削り落としていくことをいう。左足を丸太にかけ、右足で体重を支えながら、ヤ⸢マブー⸣ヌ[ja⸢mabuː⸣nu](山斧)で木材の右側から10センチ間隔に打ち込んでおいてから削ると削りやすいという。これを繰り返して角材に仕上げた
ハツルン [hḁ⸢ʦuruŋ]他動はつる(削る)。丸太を削って角材にしあげる。大工用語。家屋建築の技術が導入された時に定着した語であろう。
パティ [pḁ⸢ti]果て。おわり。はしっこ。かぎり。端。はずれ。限界に行きつくところ。
パティムニ [pa⸢ti⸣muni]すてぜりふ(捨て台詞)。最低のことば。「すてことば<物言い>」の義。去り際に言いたい放題、悪しざまにいうこと。
パティムヌ [pḁ⸢ti⸣munu]命知らず。怖いもの知らず。「果て者」の義。
パティヨーゾー [pḁ⸢tijoː⸣ʣoː]荒療治。手荒く治療すること。「果て養生」の義。
パティルマ [pa⸢tiruma](地)波照間島。石垣島の南西約53キロメートルの洋上に浮かぶ日本最南端の島。
パティルマプス [pa⸢tirumapusu]波照間の人。
パティルマムル [pa⸢tirumamuru]波照間森<波照間岳>。西表島の浦内川の源流にある山。カツオ漁船は沖へ出漁する際、鳩間島や西表島が水平線に没するところで波照間森が目印となる。
パティルン [pḁ⸢ti⸣ruŋ]自動我慢できず爆発する。限界に達して理性が失われる。切れる。きわまる。死ぬ。「果てる」の転訛したもの。日常的にはあまり使用されない。「昨日こそ年は極之賀<はてしか>~。万、1843」の義。
パティワザ [pa⸢ti⸣waʣa]命がけの仕事。最低の仕事。冒険。
パトゥグザ [⸣patuguʣa]はと。山鳩。きじばと(雉鳩)。子供は、⸣パトゥザ[⸣pḁtuʣa](山鳩)ともいう。鳩間島には山鳩が多かった。体長約20センチで、稲や豆、麦などを食い荒らす害鳥であった。木の枝やススキの中に巣を作ったので、子供達は雛を捕らえて鳥かごの中で育てて楽しんだ。パ⸢トゥザー⸣ グックー[pḁ⸢tuʣaː⸣ gukkuː]と鳴いた。
パトゥザ [⸣pḁtuʣa]はと。山鳩。きじばと(雉鳩)。老年層は、⸣パトゥグザ[⸣pḁtuguʣa](山鳩)という。
パトゥザーグック [pḁ⸢tuʣaː⸣gukku]擬声語。山鳩の鳴く声。転じて山鳩の幼児語。幼児たちは、パ⸢トゥザー⸣グック ⸢ベントー⸣ヌ ⸣ヌカル ⸢タール⸣ ッふーッふ[pḁ⸢tuʣaː⸣gukku ⸢bentoːnu⸣ nukaru ⸢taːru⸣ ffuːffu](パトゥアーグックと鳴く山鳩よ、弁当の残りは誰が食うか)と歌っていた
パトゥマ [pḁ⸢tu⸣ma](地)鳩間島。西表島の北約5,5キロメートルの洋上に浮かぶ小島。周囲約3、491キロメートル、面積は約1、080平方キロ。中央にナ⸢カン⸣ブレ[na⸢kam⸣bure](中岡。標高34メートル)があり、その東側に⸣ウガンヤマ[⸣ʔugaɲjama](⸢ウイヌ⸣ウガン{SqBr}⸢ʔuinu⸣ʔugaŋ{/SqBr}<友利御嶽>の杜)、西側にはパ⸢カヤマ[pḁ⸢kajama](墓山)がある。周囲は珊瑚礁がよく発達していて、島はリーフで囲われ、昔から良好な漁場となっている。島の南面には⸢マイ⸣ヌパマ[⸢mai⸣nupama](前の浜)、⸢イントゥ⸣マパマ[⸢ʔintu⸣mapama](イントゥマ浜)が形成されている。リーフも島の南側には⸢マイ⸣ズニ[⸢mai⸣ʣuni](前曽根)が形成発達し、東南のタ⸢カ⸣ビー[ta⸢ka⸣biː](高干瀬)との間と、西の⸢クー⸣シビー[⸢kuː⸣ʃibiː](クーシ干瀬)の間に天然の津口が形成され、船の出入港となっている。カツオ漁業、烏賊漁の漁船もそこから出入りして漁業を発達させた。集落は島の南斜面に形成され、西村と東村に分かれて発達している。村井戸も⸢インヌカー[⸢ʔinnukaː](西村井戸)、⸢アンヌカー[⸢ʔannukaː](東村井戸。下り井戸)、⸢ウイヌカー[⸢ʔuinukaː](上の井戸)、パ⸢チンガカー[pḁ⸢ʧiŋgakaː](初の井戸。アブ{SqBr}ʔa⸢bu{/SqBr}<洞穴>型の井戸)などがある。古記録によると、1702(元禄15)年、黒島から60人、を強制移住させ、鳩間の人口50人を加えて独立村とした『八重山民謡誌』という。人口は1737(元文2年)に381人、1753(宝暦3)年に450人、1873(明治6)年に110人、1892(明治25)年に163人、1925(大正14)年に380人、1930(昭和5)年に499人、1936(昭和11)年に525人であったが、1995(平成7)年には45人に激減している。島では、昔から男性は⸢パイ⸣ター[⸢pai⸣taː](西表島北岸)に渡って稲作に従事し、女性は島で畑を耕し、イモ、麦、粟、豆、黍、などを栽培し、干潮時には島を取り巻くリーフに降りてタコや魚、貝類の蛋白源を漁獲して生活するのが慣わしであった。明治37年以前、女性は人頭税である⸢グイ⸣フ[⸢gui⸣ɸu](御用布)の芭蕉布や麻布を織って納入しなければならず、生活を支えるのに追われたという。鳩間島は昔からマラリヤの風土病がない島として、西表島上原村や船浦の鬚川村から人々が移住してきた。黒島や古見村からの琉球王府の移住政策による移住民が増え、友利御願<御嶽>を中心として、ピナイ<鬚川>御願、新川御願、西堂御願、前泊(旅)御願などの宗教基盤が築かれ、祭祀行事が盛んとなった。明治以降はカツオ漁業、イカ釣り漁が導入され、西表島の石炭産業との商業上の交流も盛んになって島の経済が発展した。戦後は一時600余人に人口増加し、カツオ漁業やイカ釣り漁も賑わったが、高度経済発展に伴う日本政府の所得倍増計画政策によって若者が島から流出し、高校進学のために一家ごと石垣島への移住が増えて人口は激減し、今日の状態に至った
パトゥマナカムリ [pḁ⸢tuma⸣nakamuri]節歌の⸢鳩間節」、及びその古典舞踊。石垣島では節歌の⸢鳩間節」と称されているが、鳩間島ではパ⸢トゥ⸣マナカムリ(鳩間中岡)、またはウ⸢ブ⸣ブシ[ʔu⸢bu⸣buʃi](本節)といっている。名優伊良波尹吉がアレンジ創作した「鳩間節」は「早節」といって区別している。パ⸢トゥ⸣マナカムリは、従来「鳩間中森」と表記されてきたが、鳩間方言では、ム⸢ル[mu⸢ru](岡。土が盛り上がったところ)の義で、漢字表記の「岡」が意味上はより正確に対応する。森や林は鳩間方言では、⸣ヤマ[⸣jama](林。密林)という。⸣ウガンヤマ[⸣ʔugaɲjama](友利御嶽の杜)、パ⸢カヤマ[pḁ⸢kajama](墓山。墓所の杜。中岡の西側にある林)がこれを実証する。「鳩間節」は、原歌「鳩間ユンタ」の口碑によると仲底真那の作という。/パトゥマナカムリ パリヌブリ クバヌシタニ パリヌブリ ハイヤヨーティーバ カイダキ ティトゥルトゥ テンヨーマサティ ミグトゥ/(鳩間中岡を走り上って、蒲葵の下に走り上ってみると、<囃子>南の方はといえば、美しい古見岳<古見の連山>が手に取るようで、実に何処よりも勝って見事な眺めである)以下略。『鳩間島古典民謡古謡集』
パトゥマナツァーラ [pḁ⸢tu⸣manaʦaːra](固)鳩間人のあだ名。鳩間産の海人草をよく石垣島への土産にしたからという。
パトゥマブシ [pḁ⸢tu⸣mabuʃi]節歌の⸢鳩間節」。石垣島の歌集に収載された古典民謡の鳩間節。鳩間島では、パ⸢トゥ⸣マナカムリ(鳩間中岡)という。伊良波尹吉がアレンジした鳩間節は「早節」といっている
パトゥマムニ [pḁ⸢tu⸣mamuni]鳩間言葉。鳩間方言。「鳩間物言い」の義。
パトゥマレー [pḁ⸢tu⸣mareː]地名。鳩離島。老年層のことば。若年層(昭和生まれ以降)は、⸢ホートゥ⸣バレー[⸢hoːtu⸣bareː](鳩離)という。西表島船浦湾の北部湾口に位置する。干潮時にはピナイ崎から潮干狩りに行くことができる。無数の土鳩が島のススキの上や下に巣を作っており、岩の間にはウミネコがたくさん卵を産んでいた。昭和40年ごろまでは、故慶田城勇氏所有の島だったという。
パトゥムヌ [pḁ⸢tu⸣munu]機。織機。「はたもの<機物>」の義。「~織りつがむ 我が廿物~。万、1298」、「機、ハタモノ・ハタ」『類聚名義抄』の転訛したもの。タ⸢カバ⸣タ[tḁ⸢kaba⸣ta](高機)と⸢ジーバ⸣タ[⸢ʤiːba⸣ta](地機)がある。
パトゥメー [pḁ⸢tu⸣meː]屋号。鳩間家。鳩間真佐氏宅。鳩間村創建時の古い家という伝承がある。
パトゥメーヌ カブッチテー [pḁ⸢tu⸣menu ka⸢butʧiteː]屋号。鳩間真吉氏宅。鳩間家の本家という。「鳩間カブ・ヤッチー<兄>宅」の転訛したもの。⸢ヤッチー[⸢jatʧiː](兄)、首里方言」は沖縄方言からの借用語。鳩間真吉氏は、フ⸢ナ⸣バルウガン[ɸu⸢na⸣baruʔugaŋ](船原御嶽)のティ⸢ジリ⸣ビー[ti⸢ʤiri⸣biː](男性神職者)を努められた。鳩間カブ氏は太平洋戦争中、軍による西表島避難命令を無視し、老齢の夫婦二人で島に残って芋を栽培した。敗戦後、鳩間島に帰った住民で、カブ氏の畑から芋蔓の苗を分けてもらってイモの植え付けをした人も多い
-パトゥン [⸣-patuŋ]補動限界に行き着くことを表す補助動詞。⸢~しつくす」。⸢~きわまる」の義。下二段動詞「はつ(果つ)」の四段活用化したもの。動詞の連用形に下接する。