ン | [⸢ŋm、n、ŋ、ŋ] | ▶ | 格助 | に。{1}動作の目的を表す。 |
ン | [⸢ŋm、n、ŋ、ŋ] | ▶ | 格助 | {2}動作の相手を表す。⸢ナー⸣ニ[⸢naː⸣ni](~に。~に対して)ということが多い。 |
ン | [⸢ŋm、n、ŋ、ŋ] | ▶ | 格助 | {3}受身、使役の相手(動作主)を表す。 |
ン | [⸢ŋm、n、ŋ、ŋ] | ▶ | 係助 | も。類似したものの中から取り上げて付け加え、並べ立てる意味を表す。「も」を受ける活用語は終止形でむすぶ。 |
ン | [⸢ŋm、n、ŋ、ŋ] | ▶ | 係助 | {Exp_1}名詞に付く。 |
ン | [⸢ŋm、n、ŋ、ŋ] | ▶ | 係助 | {Exp_2}動詞の連用形、形容詞の語幹につく。 |
ン | [⸢ŋm、n、ŋ、ŋ] | ▶ | 係助 | {Exp_3}格助詞-ラ[-ra](から)につく。 |
ン | [⸢ŋm、n、ŋ、ŋ] | ▶ | 係助 | {Exp_4}格助詞-ヌ[-nu](が)に付く。 |
ン | [⸢ŋm、n、ŋ、ŋ] | ▶ | 係助 | {Exp_5}格助詞-ユ[-ju](を)に付く。 |
ン | [⸢ŋm、n、ŋ、ŋ] | ▶ | 係助 | {Exp_6}格助詞⸣-ナー[⸣-naː](に)に付く。 |
ン | [⸢ŋm、n、ŋ、ŋ] | ▶ | 係助 | {Exp_7}格助詞⸣-シ[⸣-ʃi](で)に付く。 |
ン | [⸢ŋm、n、ŋ、ŋ] | ▶ | 係助 | {Exp_8}格助詞⸣-トゥ[⸣-tu](と)に付く。 |
ン | [⸢ŋm、n、ŋ、ŋ] | ▶ | 係助 | {Exp_9}副助詞⸢-バー⸣キ[⸢-baː⸣ki](まで)につく。 |
ンー | [ʔŋː] | ▶ | 感 | ええっと。思案する時に発することば。 |
ンー | [⸢ʔŋ⸣ː] | ▶ | 感 | うん。そうだ。同等及び目下の者に対する応諾の返事。 |
ンーナ | [⸢ʔnːna] | ▶ | 接頭 | から(空)。何も無いこと。「~丈夫や无奈之久<ムナシク>あるべき~。万4164」の形容詞「むなしく」の語幹が転訛したもの。 |
ンーナ | [⸢ʔnː⸣na] | ▶ | 名 | うんち。乳幼児の糞便。乳幼児の両腿を前向きに抱いて便器に向かい、排便を促す時にいう語。⸢ンー⸣ナ ⸢ンー⸣ナ[⸢ʔnː⸣na ⸢ʔnː⸣na]と力んで言いながら排便を促す |
ンーナー | [⸢ʔnː⸣naː] | ▶ | 名 | (幼児語)ねんね。寝ること。⸢ンー⸣ナー⸢ヨー ンー⸣ナー⸢ヨー[⸢ʔnː⸣naː⸢joː ʔnː⸣naː⸢joː](寝んねしな、寝んねしな)といいながら、母親は子供の肩を軽くたたいたり、さすったりして寝せつけた |
ンーナアーリ | [⸢ʔnːnaʔaːri] | ▶ | 名 | 空騒ぎ。騒ぎ立てるだけで何の効果もないこと。「{空}{カラ}・{慌}{アワ}て」の義。 |
ンーナアウリ | [⸢ʔnːnaʔauri] | ▶ | 名 | 徒労。無駄な苦労。むだぼねおり(無駄骨)。 |
ンーナイキ | [⸢ʔnːnaʔiki] | ▶ | 名 | こん睡状態。意識がなく、ただ呼吸だけしている状態。「空しい息<{空息}{カラ|イキ}>」の義。カ⸢ライキ[ka⸢raʔiki](空息。こん睡状態)ともいう。 |
ンーナイバリ | [⸢ʔnːnaʔibari] | ▶ | 名 | からいばり(空威張り)。実力がないのに、強がること。虚勢を張ること。カ⸢ライバリ[ka⸢raʔibari](空威張り)ともいう。 |
ンーナウムイ | [⸢ʔnːnaʔumui] | ▶ | 名 | 報いられない愛情。報いられない思い。空しい愛情。 |
ンーナカク | [⸢ʔnːnakaku] | ▶ | 名 | 空き屋敷。「空郭」の義。 |
ンーナガラ | [⸢ʔnːnagara] | ▶ | 名 | ぬけがら(抜け殻)。中身のない、空っぽの殻。 |
ンーナキム | [⸢ʔnːnakimu] | ▶ | 名 | 愛情のない心。誠意のない心や気持ち。「空<ムナ>肝」の義。 |
ンーナグル | [⸢ʔnːnaguru] | ▶ | 名 | 身の抜けた貝殻。空っぽの{甲羅}{コウ|ラ}。マキガイの{殻}{カラ}。中身の入っていない殻。⸢ンーナガラ[⸢ʔnːnagara]({抜}{ヌ}け{殻}{ガラ})ともいう。 |
ンーナサー | [⸢ʔnːnasaː] | ▶ | 名 | からちゃ(空茶)。茶だけだすこと。⸢サー⸣フキ[⸢saː⸣ɸu̥ki](茶請け)、茶の子の出ないお茶。 |
ンーナサニヤ | [⸢ʔnːnasanija] | ▶ | 名 | ぬかよろこび({糠喜}{ヌカ|ヨロコ}び)。あてがはずれて、喜びが無駄になること。 |
ンーナジー | [⸢ʔnːnaʤiː] | ▶ | 名 | 空き地。耕作してない土地。さらち(更地)。 |
ンーナシゥカイ | [⸢ʔnːnasi̥kai] | ▶ | 名 | {1}無駄遣い。 |
ンーナシゥカイ | [⸢ʔnːnasi̥kai] | ▶ | 名 | {2}ただ使い(徒使い)。無報酬で使用すること。 |
ンーナシゥカナイ | [⸢ʔnːnasi̥kanai] | ▶ | 名 | 無益な養育。養い甲斐のない養育。役に立たない飼育。「空・養い」の義。 |
ンーナシニ | [⸢ʔnːnaʃini] | ▶ | 名 | むだじに(無駄死に)。いぬじに。{徒死}{ト|シ}。「むなしに(空死に)」の義。 |
ンーナシマ | [⸢ʔnːnasima] | ▶ | 名 | 無人島。「むな<空>島」の義。 |
ンーナシル | [⸢ʔnːnaʃiru] | ▶ | 名 | からじる(空汁)。実のないお汁。具のないお汁。澄まし汁。おすまし。重湯。 |
ンーナシン | [⸢ʔnːnaʃiŋ] | ▶ | 名 | 手ぶら。素手。手に何も持たずに他人の家に行くこと。土産を持参しないこと。 |
ンーナソー | [⸢ʔnːnasoː] | ▶ | 名 | 取り越し苦労。無駄な心配。{杞憂}{キ|ユウ}。 |
ンーナタルガキ | [⸢ʔnːnatarugaki] | ▶ | 名 | むなだのみ(空頼み)。そらだのみ。「Soradanomi.ソラダノミ(空頼み) 空しい期待」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。 |
ンーナッふァイ | [⸢ʔnːnaffai] | ▶ | 名 | 無駄飯を食うこと。徒食。 |
ンーナテイー | [⸢ʔnːnatiː] | ▶ | 名 | むなで(空手)。何も持たない手。手ぶら。すで。「{倶}{トモ}に利を得ず。空手<むなて>にして帰る」『日本書紀 神代下』の転訛したもの。 |
ンーナティー | [⸢ʔnːnatiː] | ▶ | 名 | 手ぶら。すで(素手)。むなで(空手)。からて。手に何も持たないで余所の家を訪ねる際にいう。「~岩間の真菰<まこも>刈りかねてむなで<空手>に過ぐる~。」『山家集上』の転訛したものか。 |
ンーナドゥー | [⸢ʔnːnaduː] | ▶ | 名 | 手ぶら。何も持たない体。何も持参しない体(胴)。「むな(空)・胴」の義。 |
ンーナトン | [⸢ʔnːnatoŋ] | ▶ | 名 | 空き地。何もない所。 |
ンーナナキ | [⸢ʔnːnanaki] | ▶ | 名 | そらなき(空泣き)。うそ泣き。泣くまね。 |
ンーナナダ | [⸢ʔnːnanada] | ▶ | 名 | そらなみだ(空涙)。見せ掛けだけの涙。 |
ンーナナンギ | [⸢ʔnːnanaŋgi] | ▶ | 名 | {徒労}{ト|ロウ}。{無駄骨}{ム|ダ|ボネ}。「むな(空)・難儀」の義。 |
ンーナニガイ | [⸢ʔnːnanigai] | ▶ | 名 | 無駄な願いごと。役に立たない頼みごと。 |
ンーナバタ | [⸢ʔnːnabata] | ▶ | 名 | 空腹。空きっ腹。「むな(空)・腹」の義。⸢ンーナバタ⸣ナー サ⸢キ⸣ ヌ⸢マ⸣ス ⸣ムノー ア⸢ラ⸣ヌ ヤー⸢ディン⸣ カ⸢ティ⸣ムノー ッ⸢ふァーシェー⸣ティル ヌ⸢マ⸣ス⸢ダー[⸢ʔnːnabata⸣naː sḁ⸢ki⸣ nu⸢ma⸣su ⸣munoː ʔa⸢ra⸣nu jaː⸢diŋ⸣ kḁ⸢ti⸣munoː f⸢faːʃeː⸣tiru nu⸢ma⸣su⸢daː]({空}{ス}きっ腹に酒を飲ませるものではない。必ずおかず<かてもの({糅}{カ}て物)の義。「雑、マジフ・カサヌ・カツ」『類聚名義抄』の転訛したものか>を食べさせながら<ぞ>飲ませるのだよ) |
ンーナパタラキ | [⸢ʔnːnapataraki] | ▶ | 名 | {徒労}{ト|ロウ}。ただ働き。無駄骨。「むな(空)・働き」の義。 |
ンーナパナシ | [⸢ʔnːnapanaʃi] | ▶ | 名 | 無駄話。何の役にも立たない話。「むな(空)・話」の義。 |
ンーナバライ | [⸢ʔnːnabarai] | ▶ | 名 | 意味のない笑い。{薄笑}{ウス|ワラ}い。「むな(空)・笑い」の義。 |
ンーナフチ | [⸢ʔnːnaɸu̥ʧi] | ▶ | 名 | よそ(余所)から来た人に何も食べさせないで帰すこと。「むな(空)・口」の義。 |
ンーナブンギ | [⸢ʔnːnabuŋgi] | ▶ | 名 | 無益な恩義。「むな(空)・恩義」の義。 |
ンーナマーリ | [⸢ʔnːnamaːri] | ▶ | 名 | 空回り。「むな(空)・回り」の義。 |
ンーナマギー | [⸢ʔnːnamagiː] | ▶ | 名 | うどのたいぼく({独活}{ウ|ド}の大木)。身体だけ大きくて役に立たない人や物。 |
ンーナマティ | [⸢ʔnːnamati] | ▶ | 名 | まちぼうけ({待}{マ}ち{惚}{ボウ}け)。待っていた人が遂に来ないこと。「むな(空)・待ち」の義。 |
ンーナムドゥル | [⸢ʔnːnamuduru] | ▶ | 名 | 手ぶらで戻ること。何も釣れないで漁から戻ること。出漁して空船で戻ること。「{空戻}{カラ|モド}り」。 |
ンーナムニ | [⸢ʔnːnamuni] | ▶ | 名 | 無駄口。お喋り。中身のない話。そらごと(空言)。 |
ンーナムヌ | [⸢ʔnːnamunu] | ▶ | 名 | 空っぽの物。中身が何もないもの。「むな(空)・物」の義。 |
ンーナムン | [⸢ʔnːnamuŋ] | ▶ | 名 | からむぎ(殻麦)。殻のついたままの大麦。⸢ボージャー⸣ムン[⸢boːʤaː⸣muŋ]ともいう。「殻麦」を「空麦」と誤解して受容した語彙であろう。多収量品種で、味噌の材料として利用され、粉を挽いてテンプラを揚げるのに重宝されたという。 |
ンーナヤー | [⸢ʔnːnajaː] | ▶ | 名 | 空き家。人の住んでない家。 |
ンーナヤシキ | [⸢ʔnːnajaʃi̥ki] | ▶ | 名 | 空き屋敷。⸢ンーナカク[⸢ʔnːnakaku](空き屋敷)ともいう。 |
ンーニ | [⸢ʔnːni] | ▶ | 名 | {1}胸。胸部。⸢ンニ[⸢nni](胸)ともいう。「胸・臆、訓並、牟禰(むね)」『華厳音義私記』の転訛したもの。 |
ンーニ | [⸢ʔnːni] | ▶ | 名 | {2}胸元。襟元。襟首。 |
ンーニ | [⸢ʔnːni] | ▶ | 名 | {3}心。精神。「~朝夕に魂ふれど吾が牟祢伊多之<ムネイタシ>~。万、3767」の転訛したもの。 |
ンーニ ウトゥン | [⸢ʔnːni⸣ ʔutuŋ] | ▶ | 連 | {動悸}{ドウ|キ}がする。胸がどきどきする。「胸打つ」の義。 |
ンーニ スクン | [⸢ʔnːni⸣ su̥kuŋ] | ▶ | 連 | 胸につかえる。しゃく(癪)などで胸が締めつけられて苦しむ。胸がふさがる。⸣スクン[⸣su̥kuŋ]は、「Xocuga tçucayuru(食が痞ゆる)もう腹一杯で、それ以上胃がもちこたえ得ないほどである」『邦訳日葡辞書』の転訛したものか。 |
ンーニヌ バルンケンバリルンケン | [⸢ʔnːninu⸣ ba⸢ruŋ⸣keŋba⸢riruŋkeŋ] | ▶ | 連 | 胸が張り裂けんばかり。胸が張り裂けるほど。「胸が割れるほど」の義。 |
ンーニ ビスン | [⸢ʔnːni⸣ bi⸢suŋ] | ▶ | 連 | 落ち着く。「胸を{据}{ス}える<置く。{座}{スワ}らせる>」の義。普通は、⸣キム ビ⸢スン[⸣kimu bi⸢suŋ](落ち着く。肝を{据}{ス}える)という。 |
ンーニ ヤクン | [⸢ʔnːni⸣ ja⸢kuŋ] | ▶ | 連 | 心配事で親の胸を痛める。親に心配をかける。苦悩する。 |
ンーネ | [⸣ʔnːne] | ▶ | 名 | 姉。若年層の言葉。老年層は、⸣アンマ[⸣ʔamma](姉)という。⸣ンーネ[⸣ʔnːne](姉)は黒島方言のッンーナ[ʔnːna](姉)の転訛したもの。 |
ンーバ | [⸢ʔmː⸣ba] | ▶ | 感 | 否だ。否定の気持ちを表すこと。いやだ。承諾しないこと。アー⸢イとも言う。 |
ンーパンーパ スン | [⸢ʔmː⸣pa⸢ʔmː⸣pa ⸢suŋ] | ▶ | 連 | 幼児語。いやいやする。 |
ンーマ | [⸢ʔmː⸣ma] | ▶ | 名 | (動)馬。 |
ンーマ | [⸢ʔmː⸣ma] | ▶ | 名 | {1}(動)馬。 |
ンーマ | [⸢ʔmː⸣ma] | ▶ | 名 | {2}{駒}{コマ}。 |
ンーマーマ | [ʔmː⸢maː⸣maː] | ▶ | 名 | 子馬。 |
ンーマガータ | [⸢ʔmːmagaː⸣ta] | ▶ | 名 | {肩車}{カタ|グルマ}。子供を両肩に{跨}{マタガ}らせて{担}{カツ}ぐこと(遊び)。 |
ンーマヌ カタ | [⸢ʔmːma⸣nu kḁ⸢ta] | ▶ | 連 | 馬の絵。歌謡語。 |
ンーマヌ クラ | [⸢ʔmːma⸣nu ⸣kura] | ▶ | 連 | 馬の鞍。若年層の使用語彙。老年層は⸢ンーマ⸣ヌ ⸣ッふァ[⸢ʔmːma⸣nu ⸣ffa](馬の鞍)という |
ンーマヌ シヌ | [⸢ʔmːma⸣nu ⸣ʃinu] | ▶ | 連 | 馬の角。あり得ないこと。 |
ンーマヌ シラ | [⸢ʔmːma⸣nu ⸣ʃira] | ▶ | 連 | {馬面}{ウマ|ヅラ}。馬のように長い顔。⸢馬の顔」の義。 |
ンーマヌ ッふァ | [⸢ʔmːma⸣nu ⸣ffa] | ▶ | 連 | 馬の鞍。⸣ッふァ[⸣ffa](鞍)は、[kura] → [fura] → [ffa] のように音韻変化したもの。 |
ンーマヌ ッふァ | [⸢ʔmːma⸣nu f⸢fa] | ▶ | 連 | {1}馬の子。子馬。 |
ンーマヌ ッふァ | [⸢ʔmːma⸣nu f⸢fa] | ▶ | 連 | {2}親離れ<乳離れ>しない子。いつも母親の側を離れない子。 |
ンーミ | [⸢ʔmː⸣mi] | ▶ | 名 | 士族のお祖母さん。祖母。石垣島の親類筋の人に対して言った。⸣トゥヌスクヌ ⸢ンー⸣ミ[⸣tunusu̥kunu ⸢ʔmː⸣mi](石垣市字登野城のお祖母さん<佐村家のお祖母さん>)、ア⸢ラカーヌ ンー⸣ミ[ʔa⸢rakaːnu ʔmː⸣mi](石垣市字新川のお祖母さん<宮良家のお祖母さん>)のようにいう。鳩間島では、⸣アッパー[⸣ʔappaː]という |
ンーンー | [ʔŋː⸢ŋː] | ▶ | 感 | いや。否。軽い否定の意味を表す。強く否定する場合は、ンー⸢ンー⸣ンー[ʔŋː⸢ŋː⸣ŋː](いや。否。いや違う)という。 |
ンーンー | [ʔŋːʔŋː] | ▶ | 感 | 豚を呼ぶ声。 |
ンーンーシ | [⸢ʔŋːʔŋː⸣ʃi] | ▶ | 副 | うんうんと。力を入れたり、苦しがったりしていきむ声。 |
ンガ | [ʔŋ⸢ga-] | ▶ | 接頭 | 厳しい。{酷}{ヒド}い。形容詞ン⸢ガー⸣ン[ʔŋ⸢gaː⸣ŋ](にがい<苦>)の語幹。 |
ンガー | [ʔŋ⸢gaː] | ▶ | 名 | (動)魚の名。和名、ナガタチカマス(体長約1、2メートル)。 |
ンカースン | [ʔŋ⸢kaːsuŋ] | ▶ | 他動 | 向ける。向かわせる。会わせる。 |
ンガーン | [ʔŋ⸢gaː⸣ŋ] | ▶ | 形 | 苦い。苦味がある。「~甘美の果を、これによりて皆減損して苦く<ニガク>渋くして~」『金光明最勝王経音義』、「nigai.ニガイ(苦い)苦い(もの)」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。 |
ンガアキリ | [ʔŋ⸢gaʔaki⸣ri] | ▶ | 名 | 嫌になるほど飽きること。飽きはてること。食傷気味になること。 |
ンカイカジ | [ʔŋ⸢kaikaʤi] | ▶ | 名 | 逆風。「向かい風」の義。 |
ンカイコーシ | [ʔŋ⸢kaikoːʃi] | ▶ | 名 | 「迎え菓子」の儀。お盆の精霊迎えの日に供える菓子。 |
ンガイシ | [ʔŋ⸢ga⸣ʔiʃi] | ▶ | 名 | 踏みつけると傷を負わせる石。毒石。「苦石」の義。 |
ンカイジラ | [ʔŋ⸢kaiʤira] | ▶ | 名 | 対面早々。出会いがしら。顔を合わせるなり。初っ{端}{ショッパナ}から。「迎え面」の義。 |
ンカイズーシ | [ʔŋ⸢kaiʣuːʃi] | ▶ | 名 | 「迎え雑炊」の義。お盆の初日の夕方、祖霊を迎えて供えるために作る雑炊(五目御飯)。豚肉、魚肉、かまぼこ等を{賽}{サイ}の目状に切り、醤油で味付けして炊き込んだ雑炊。 |
ンカイバナ | [ʔŋ⸢kaibana] | ▶ | 名 | 出会いがしら。「迎え端」の義。 |
ンカイビー | [ʔŋkaibiː] | ▶ | 名 | お盆の精霊迎えの日。⸢迎え日」の義。旧暦7月13日の夕方に門で{稲藁}{イナ|ワラ}におき({熾火}{オキ|ビ})を入れて{燻}{クスブ}らせて{祖霊}{ソ|レイ}を迎える風習があった。現在は線香を焚いて祖霊を迎えるようになっている。祖霊迎えの日には、仏壇を拭いたり、位牌を洗ったりして準備をする。ムルムルを供えて仏壇を飾り終えると、先祖の霊を迎えるために門の西側で藁束に熾火を入れて燻らせた。祖霊たちは、この煙を伝って各家に下りてくるといわれている。 |
ンカイルン | [ʔŋ⸢kairuŋ] | ▶ | 他動 | 迎える。「~櫻の花は迎<むかへ>けらしも。万、1430」の転訛したもの。ン⸢カウンとも言う。 |
ンカウン | [ʔŋ⸢kauŋ] | ▶ | 他動 | {1}むかう(向かう)。向き合う。「~東男は出で牟可比<ムカヒ>~。万、4331」の転訛したもの。 |
ンカウン | [ʔŋ⸢kauŋ] | ▶ | 他動 | {2}迎える。 |
ンガカザ | [ʔŋ⸢ga⸣kaʣa] | ▶ | 名 | {臭}{クサ}い体臭。 |
ンカザ | [ʔŋ⸢ka⸣ʣa] | ▶ | 名 | (動)むかで(百足)。「蜈蚣、・・名百足、無加天(むかで)」『和名抄』の転訛したもの。 |
ンガサ | [⸢ŋgasa] | ▶ | 係助 | 何か~ないか。疑問代名詞について、文末の打ち消し疑問の陳述と呼応し、詰問の意味を込めて「何か~ないか」のように用いられる。「~山ほととぎす奈尓加伎奈可奴<ナニカ キナカヌ>。万、4050」に類似した表現法。 |
ンガジル | [ʔŋga⸣ʤiru] | ▶ | 名 | 胃液。胃から口の中へ逆流してくる黄色い液体。「にがじる(苦汁)」の義。 |
ンガスク | [ʔŋ⸢ga⸣su̥ku] | ▶ | 名 | 一番深い底。どん底。一番奥。 |
ンガスン | [ʔŋ⸢ga⸣suŋ] | ▶ | 他動 | {1}逃がす。 |
ンガスン | [ʔŋ⸢ga⸣suŋ] | ▶ | 他動 | {2}逃げられる。 |
ンガダキ | [ʔŋ⸢ga⸣daki] | ▶ | 名 | (植)竹の一種。マダケ。メダケ。「ニガタケ」の義。竹の子に苦味があることからいう。「Nigataqe.ニガタケ(苦竹) 竹の一種で、菅の細長いもの」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。 |
ンガティー | [ʔŋ⸢ga⸣tiː] | ▶ | 名 | {1}料理を作るのが下手な手。⸢苦手」の義。ア⸢バ⸣ティー[ʔa⸢ba⸣tiː](油手。料理上手の手)の対義語。 |
ンガティー | [ʔŋ⸢ga⸣tiː] | ▶ | 名 | {2}その手で{叩}{タタ}かれると大きな傷を負わせるような手。「毒手」の義。 |
ンガティダ | [ʔŋ⸢ga⸣tida] | ▶ | 名 | {酷熱}{コク|ネツ}の太陽。{烈日}{レツ|ジツ}。 |
ンガトゥシ | [ʔŋga⸣tu̥ʃi] | ▶ | 名 | {凶年}{キョウ|ネン}。{凶作}{キョウ|サク}の年。「苦年」の義。ガ⸢シトゥシ[ga⸢ʃitu̥ʃi]({飢饉}{キ|キン}の年)ともいう。 |
ンガナー | [ʔŋ⸢ga⸣naː] | ▶ | 名 | (植)ホソバワダン。「苦菜」の義。路傍や畑に自生していた。医者のいない鳩間島では、胃の薬として苦菜の生の汁を絞って飲んだり、魚と煮て食したりした。子供には黒糖を混ぜて飲ませた。 |
ンガナー | [ʔŋ⸢ganaː] | ▶ | 名 | どもり({吃音}{キツ|オン}者)の卑称。{喧嘩}{ケン|カ}等のときに相手を{罵}{ノノシ}っていう語。 |
ンガナキ | [ʔŋ⸢ga⸣naki] | ▶ | 名 | {号泣}{ゴウ|キュウ}。死なんばかりに大声で泣くこと。 |
ンガナチ | [ʔŋ⸢ga⸣naʧi] | ▶ | 名 | {酷暑}{コク|ショ}の夏。{炎熱}{エン|ネツ}の夏。{猛暑}{モウ|ショ}の夏。最も暑い時期の夏。 |
ンガニ | [ʔŋ⸢gani] | ▶ | 名 | どもること({吃音}{キツ|オン})。どもり(吃音者)。 |
ンガニ スン | [ʔŋ⸢gani suŋ] | ▶ | 連 | どもる。「どもり(吃音)・する」の義。 |
ンガバライ | [ʔŋ⸢ga⸣barai] | ▶ | 名 | 苦笑い。苦笑。「Nigauarai.ニガワライ(苦笑ひ)心からではなくて、ひややかに笑うこと.」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。 |
ンガピラク | [ʔŋ⸢gapira⸣ku] | ▶ | 名 | 極寒。最も厳しい寒さ。大寒。 |
ンガプス | [ʔŋ⸢ga⸣pu̥su] | ▶ | 名 | 厳格な人。厳しい人。怒りっぽい人。 |
ンガプスマ | [ʔŋ⸢gapusu⸣ma] | ▶ | 名 | 酷熱の真昼間。炎熱の真昼間。 |
ンガフチ | [ʔŋ⸢ga⸣ɸu̥ʧi] | ▶ | 名 | 毒舌。毒舌家。極めて厳しい批評をする人。ア⸢マフチ[ʔa⸢maɸu̥ʧi](甘口。おべっか)の対義語。 |
ンガフチル | [ʔŋ⸢gaɸu̥ʧi⸣ru] | ▶ | 名 | 苦い薬。「苦薬」の義。ン⸢ガ⸣ナー[ʔŋ⸢ga⸣naː](苦菜)は、ン⸢ガフチ⸣ル[ʔŋ⸢gaɸu̥ʧi⸣ru](苦薬。{胃腸薬}{イ|チョウ|ヤク}の{効能}{コウ|ノウ}がある薬草)といって、家庭菜園で栽培していた。フ⸢チン⸣パー[ɸu̥⸢ʧim⸣paː](よもぎば。{蓬}{ヨモギ}の葉)も苦薬だが、蓬の葉を⸢ダイ⸣パー[⸢dai⸣paː]({擂鉢}{スリ|バチ})で{擂}{ス}って汁液を{解熱剤}{ゲ|ネツ|ザイ}として飲ませた。ナ⸢ツァー⸣ラ[na⸢ʦaː⸣ra]({海人草}{カイ|ニン|ソウ})も苦薬で、これは、ム⸢シクダシ[mu⸢ʃikudaʃi]({回虫駆除剤}{カイ|チュウ|ク|ジョ|ザイ})として{煎}{セン}じて服用させた。 |
ンガマサン | [ʔŋ⸢gama⸣saŋ] | ▶ | 形 | やかましい(喧しい)。騒がしい。うるさい(煩い)。ヤ⸢ガマ⸣サン[ja⸢gama⸣saŋ](喧しい。気難しい。厳しい)ともいう。 |
ンガミン | [ʔŋ⸢ga⸣miŋ] | ▶ | 名 | 耳の中が常にじくじくして湿っている人。「苦耳」の義。 |
ンガムニ | [ʔŋ⸢ga⸣muni] | ▶ | 名 | 苦言。毒舌。 |
ンガユー | [ʔŋ⸢ga⸣juː] | ▶ | 名 | 不作の年。凶作の年。「にがよ(苦世)」の義。ア⸢マユー[ʔa⸢majuː](豊年。甘世)の対義語。 |
ンガヨーン | [ʔŋ⸢gajoːŋ] | ▶ | 名 | 真っ暗闇。 |
ンガリ | [ʔŋ⸢ga⸣ri] | ▶ | 名 | にがり(苦汁)。豆腐を製造する際に{凝固剤}{ギョウ|コ|ザイ}として用いる。普通は海水を汲んできて用いた。 |
ンギ | [ʔŋ⸢gi] | ▶ | 名 | {1}のぎ(芒)。のげ。稲の外殻にある針のような堅い毛。「芒、乃木<のぎ>、禾穂の芒なり」『和名抄』。イ⸢ナ⸣ピニ[ʔi⸢na⸣pini]({芒}{ノギ})ともいう。 |
ンギ | [ʔŋ⸢gi] | ▶ | 名 | {2}{刺}{トゲ}。喉に{刺}{サ}さった魚の骨(のぎ<鯁>)。「喉(のみど)に鯁ありて、物え食はず」『古事記 神代』の転訛したもの。 |
ンギウシ | [ʔŋ⸢gi⸣ʔuʃi] | ▶ | 名 | 牧場や牛舎から逃げた牛。牛の鼻綱を切って逃げた牛。「逃げ牛」の義。⸢ピンギ⸣ウシ[⸢piŋgi⸣ʔuʃi](逃亡牛)ともいう。 |
ンキコーマ | [ʔŋ⸢kikoː⸣ma] | ▶ | 名 | むき卵。 |
ンギサン | [⸢ŋ⸣gisaŋ] | ▶ | 助動 | ~そうだ。~らしい。~ようだ。動詞、助動詞の連用形、形容詞の語幹に付いて、様子、気配などの様態を表す。形容詞型活用をしめす。語源的には、「~げ[nge]・さ・あり(~気・さ・あり)」が融合変化して形成されたものと考えられる。ギ[gi]は、「家の人出で入り、にくげ<ゲ>ならず」『土佐日記 二月十五日』、「~聞えまほしげ<ゲ>なることは、ありげ<ゲ>なるを~」『源氏物語 桐壺』の⸢~ゲ」の転訛したもの。 |
ンギプス | [ʔŋ⸢gi⸣pu̥su] | ▶ | 名 | 離縁された女性。出戻り女。家出女。「逃げ人」の義。 |
ンキルン | [ʔŋ⸢ki⸣ruŋ] | ▶ | 自動 | むける(剥ける)。皮が自然に剥ける。 |
ンギルン | [ʔŋ⸢gi⸣ruŋ] | ▶ | 自動 | (牛馬が)逃げる。逃走する。 |
ンクビ | [ʔŋ⸢kubi] | ▶ | 名 | にきび。「痤、邇岐美(にきみ)、{小癤}{ショウ|セツ}也」『和名抄』の転訛したもの。 |
ングムン | [ʔŋ⸢gumuŋ] | ▶ | 自動 | いきむ(息む)。息を込めて腹に力を入れる。力む。 |
ングリサン | [⸢ŋguri⸣saŋ] | ▶ | 助動 | ~づらい。~(し)づらい。~(し)にくい。形容詞型活用。⸢グリ⸣サン[⸢guri⸣saŋ](~にくい。~づらい)ともいう。{1}動詞の連用形(音節構造がCVCVの場合)を受ける時は、⸢ングリ⸣サン[⸢ŋguri⸣saŋ](~づらい。~にくい)となることが多い(老年層)。例、カ⸢キングリ⸣サン[kḁ⸢kiŋguri⸣saŋ](書きにくい)。 |
ングリサン | [⸢ŋguri⸣saŋ] | ▶ | 助動 | {2}動詞の連用形(語幹の音節構造がCVVの場合)を受ける時は、バ⸢ライグリ⸣サン[ba⸢raiguri⸣saŋ](笑いにくい)のように鼻音Nが脱落することが多い(若年層)。 |
ングリサン | [⸢ŋguri⸣saŋ] | ▶ | 助動 | ~しづらい(し辛い)。~しにくい。~することが困難である。動詞の連用形について形容詞型の活用を示す助動詞。 |
ンクン | [⸣ʔŋkuŋ] | ▶ | 他動 | むく(剥く)。表面を{覆}{オオ}っているものを除去し中身を表す。 |
ングン | [⸣ʔŋguŋ] | ▶ | 自動 | (牛馬が)逃げる。 |
ンケーリ | [⸢ʔŋkeː⸣ri] | ▶ | 接尾 | ~に熱中する。~に夢中になる。粘っこく入念に~する。~熟睡する。擬態語や擬声語、状態を表す語等の限られた語につく。 |
ンコールン | [ʔŋ⸢koː⸣ruŋ] | ▶ | 他動 | 召し上がる。ッ⸢ふン[f⸢fuŋ~fuŋ](食う)の尊敬語。 |
ンゴーンゴー | [ʔŋ⸢goːŋgoː] | ▶ | 感 | 赤子をあやす時にいう言葉。なんご(喃語)。ン⸢クーンクー[ʔŋ⸢kuːŋkuː](喃語)ともいう。 |
ンザ | [⸣ʔnʣa] | ▶ | 名 | {1}奴。ぬひ(奴婢)。「奴婢、ヌビ、下人」『黒本本節用集』、「NVbi.ヌビ(奴婢)奉公人の男、または女」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。 |
ンザ | [⸣ʔnʣa] | ▶ | 名 | {2}下男、下女の{蔑称}{ベッ|ショウ}。 |
ンザシペーラシ | [ʔn⸢ʣa⸣ʃipeːraʃi] | ▶ | 名 | 出し入れ。 |
ンザシマイ | [ʔn⸢ʣaʃi⸣mai] | ▶ | 名 | 出し前。割り当てられた金額、または米や酒類の物品。 |
ンザシミー | [ʔn⸢ʣaʃi⸣miː] | ▶ | 名 | 出し分。分担すべき花米など。村の祭祀用の費用。「出し前」の義。 |
ンザスン | [ʔn⸢ʣa⸣suŋ] | ▶ | 他動 | 出す。いだす。「Idaxi,su,aita.イダシ、ス、イタ(出だし、す、いた)取り出す、あるいは外へほうり出す」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。 |
ンジェーペーリペーリ | [ʔnʤeː⸢peːripeː⸣ri] | ▶ | 副 | 出たり入ったり。せわしなく<{忙}{セワ}しなく>出入りするさま。「出ては入り入り」の義。 |
ンジパー | [ʔn⸢ʤi⸣paː] | ▶ | 名 | 出羽。古典舞踊の出だしの舞踊。ピ⸢キバー[pi̥⸢kibaː](入り端<引き端>。古典舞踊における退場の場面の舞踊)の対義語。 |
ンジバナ | [ʔn⸢ʤi⸣bana] | ▶ | 名 | でばな(出花)。煎茶などが最も香味のよいとき。煎茶の最盛期。 |
ンジフチ | [ʔn⸢ʤi⸣ɸu̥ʧi] | ▶ | 名 | 出口。 |
ンジフニ | [ʔn⸢ʤi⸣ɸuni] | ▶ | 名 | 出船。「Defune.デフネ(出船)まさに出帆、あるいは、出港しようとしている船」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。 |
ンジペーリ | [⸣ʔnʤipeːri] | ▶ | 名 | 出入り。来客。 |
ンジマイ | [ʔn⸢ʤi⸣mai] | ▶ | 名 | 出費。支出すべき分担金。村の祭祀に納める花米や酒類。ン⸢ジ⸣ミー[ʔn⸢ʤi⸣miː](出費)ともいう。 |
ンジムヌ | [ʔn⸢ʤi⸣munu] | ▶ | 名 | おでき(御出来)。できもの。はれもの。ふきでもの。 |
ンジルン | [ʔn⸢ʤi⸣ruŋ] | ▶ | 自動 | 出る。「あしひきの山より出流<イヅル>月待つと~。万、3002」の転訛したもの。 |
ンズン | [⸣ʔnʣuŋ] | ▶ | 自動 | 出る。 |
ンゾサカナサ | [ʔn⸢ʣo⸣sakanasa] | ▶ | 連 | 非常に可愛がること。老年層の言葉。「むぞさ(無慚さ)・かなさ(愛しさ)(哭、ナク、カナシブ)『類聚名義抄』」の転訛したもの。 |
ンター | [⸣ʔntaː] | ▶ | 名 | 糞。大便。うんち。うんこ。幼児語。乳幼児に排便を促す際は、乳幼児の両腿を{掴}{ツカ}んで後ろから抱き上げ、⸣ンター ⸢スン⸣ドー ⸢ンーンー[⸣ʔntaː ⸢sun⸣doː ʔnːʔnː](うんちをするよ、うん うん<力んで排便を促す擬態語>)といった |
ンダー | [⸣ʔndaː] | ▶ | 感 | どれどれ。さあさあ。相手に物事をこちらへ寄越すよう、要求することば。 |
ンダマルン | [ʔn⸢damaruŋ] | ▶ | 自動 | 相手を睨んでじっと押し黙る。息んでおし黙る。 |
ンダミルン | [ʔn⸢damiruŋ] | ▶ | 他動 | 構える。支柱を構えて固定する。固定して支える。 |
ンダムン | [ʔn⸢damuŋ] | ▶ | 他動 | 構える。固定して支える。 |
ンチャ | [⸣ʔnʧa] | ▶ | 感 | まことに。なるほど(成程)。いかにも。合点がいった時、相手の言うことを肯定して相づちを打ち、まさにその通りだ、の意を表す。沖縄本島方言からの借用語。老年層は、⸣ンチャ ⸢アイ⸣ユンシェー ⸢ワー⸣ ア⸢ズ トゥール⸣ユン[⸣ʔnʧa ⸢ʔai⸣juŋʃeː ⸢waː⸣ ʔa⸢ʣu tuːru⸣juŋ](成程、そうだなんだ。君がいう通りなんだよ) |
ンツァイルン | [ʔn⸢ʦairuŋ] | ▶ | 自動 | むせる({噎}{ム}せる。{咽}{ム}せる)。飲食物や煙で喉を詰まらせて咳き込む。むせる。「~涙をのごひ牟世比都々<ムセビツツ>~。万、4398」の転訛したもの。 |
ンツァウン | [ʔn⸢ʦauŋ] | ▶ | 自動 | むせる(噎せる。咽る)。飲食物や煙で喉を詰まらせてせき込む |
ンツァン | [⸢nʦaŋ] | ▶ | 係助 | ⸢だにも、すらも、さえも」の意味に対応する。「も・だに」が、*[mo-dani] → [muʣaŋ] → [nʣaŋ] → [nʦaŋ] のように音韻変化したものか。名詞や動詞の連用形、形容詞の終止形などに付く。{1}なし得る最小限のもの、可能性の最小限のものを例示して、それ以上のものを類推させる語。文末の打ち消し疑問の陳述と呼応して用いられる。 |
ンツァン | [⸢nʦaŋ] | ▶ | 係助 | {2}仮定条件と呼応し、条件が満たされる意味を表す。 |
ンツン | [ʔn⸢ʦuŋ] | ▶ | 自動 | むせる(噎せる)。飲食物や煙で喉が詰まらされて咳き込む。ン⸢ツァイルン[ʔn⸢ʦairuŋ](咳き込む)ともいう。「~心のみ咽乍有尓<ムセツツアルニ>~。万、546」の転訛したものか。 |
ンテーナ | [⸢nteː⸣na] | ▶ | 接助 | ~ながら。~のついでに。~がてら。動詞の連用形に付いて、動作の同時進行の意味を表す。 |
ンドーシ | [n⸣doːʃi] | ▶ | 連 | ~ずに。~ないで。動詞の未然形を受けて、打消しの意を伴って文を中止したり、連用修飾する。 |
-ンドーレー | [⸣-ndoːreː] | ▶ | 副助 | ~など。~なんか。~なんど。{1}いろいろな語句に付いて、それに類する事物を示す。 |
-ンドーレー | [⸣-ndoːreː] | ▶ | 副助 | {2}さらに副助詞⸢-ナー⸣ト[⸢-naː⸣to](~など。~なんど)が付く。 |
-ンドーレー | [⸣-ndoːreː] | ▶ | 副助 | {3}さらに格助詞⸣-ヌ[⸣-nu](~が<主格>)、格助詞⸣-バ[⸣-ba](~を)、格助詞⸣-ニ[⸣-ni](~に)、格助詞⸣-ラー[⸣-raː](~から)が付く。 |
-ンドゥ | [⸢-n⸣du] | ▶ | 接助 | ~ので。~の故に。~のために。動詞、形容詞の連用形について、条件節の原因・理由を表し、主節へ順態接続する。接続助詞⸣-ヌ[⸣-nu](~が)に強意の係助詞⸣-ドゥ[⸣-du](ぞ)が付いて形成されたもの。[nudu] → [ndu](~ので<がぞ>)のように音韻変化したもの。 |
ンドゥン | [⸣nduŋ] | ▶ | 副助 | ~でも。~にでも。名詞、代名詞、助詞、に付く。 |
-ンナーニ | [⸢-nnaː⸣ni] | ▶ | 格助 | ~に。~に対して。-ン[-n](~に)の項参照 |
ンニ | [ʔn⸢ni] | ▶ | 名 | 棟。屋根の頂上の水平部分。「棟宇 上都弄反、(略)倭言 牟年」『新訳華厳経音義私記』の転訛したもの。ム⸢ニ[mu⸢ni](棟)ともいう。 |
ンニ | [ʔn⸢ni] | ▶ | 名 | 嶺。山の高く尖った所。「~見れどもあやし弥祢太可美(ミネダカミ)~。万、4003」の転訛か。/カイサ ムイタル ムニンヌ クバ タカサ ムイタル ティジヌクバ(美しく生えた{棟}{ムネ}の{蒲葵}{キ|バ}、高く生えた頂上の蒲葵)/『鳩間島古典民謡古謡集』ともいう |
ンニアギ | [ʔn⸢niʔagi] | ▶ | 名 | 棟上。棟上式。ム⸢ニアギ[mu⸢niʔagi](棟上式)の項目参照 |
ンニウチ | [ʔn⸢niʔuʧi] | ▶ | 名 | 胸中。胸のうち。「胸内」の義。バ⸢タ⸣ウチ[ba⸢ta⸣ʔuʧi](腹の内)ともいう。 |
ンニギー | [ʔn⸢nigiː] | ▶ | 名 | むなぎ(棟木)。家を建てる際、柱・{梁}{ハリ}などを組み立てて、その上に{棟木}{ムナ|ギ}を上げる、その材木。ン⸢ニギタ[ʔn⸢nigita](棟桁)ともいう。棟木には、「天官賜福紫微鸞駕」と{墨書}{ボク|ショ}し、ピ⸢ル[pi⸢ru](大蒜)と塩を包んで、棟木に{吊}{ツル}るす。{上棟式}{ジョウ|トウ|シキ}は満ち潮に合せて行う。四隅の⸣ムヤーバラー[⸣mujaːbaraː](母屋柱)の上には、紅白の餅を供え、ナ⸢カ⸣バラー[na⸢ka⸣baraː](中柱、大黒柱)の上にも紅白の餅を供えて、安全・健康・繁盛の祈願をし、建築の施主と棟梁が屋根から餅撒きをする。子供たちや村人たちが餅を拾うためにたくさん集まってくる。 |
ンニギタ | [ʔn⸢nigita] | ▶ | 名 | 棟桁。ン⸢ニギー[ʔn⸢nigiː](棟木)ともいう。棟の柱と柱の上に掛け渡した桁材。「~板田の橋の壊れなば従桁<ケタヨリ>行かむ~。万、2644」の転訛したもの。ン⸢ニギー[ʔn⸢nigiː](棟木)の項参照 |
ンニタラーシ | [ʔn⸢nitaraːʃi] | ▶ | 名 | {寛恕}{カン|ジョ}。相手の欠点をひろい心で許すこと。{赦免}{シャ|メン}する。「胸足らし」の義。キ⸢ムタラー⸣シ[ki⸢mutaraː⸣ʃi](許すこと。赦免する。「肝足らし」の義)と同義語で対句的に用いられる。 |
ンニブニ | [ʔn⸢nibuni] | ▶ | 名 | {鎖骨}{サ|コツ}。「むなぼね(胸骨)」の義。⸢ンーニブニ[⸢ʔnːnibuni](鎖骨。むなぼね<胸骨>)ともいう。 |
ンノーン | [⸢n⸣noːŋ] | ▶ | 副助 | ~でも。~だけでも。一部を挙げて他を暗示する、「せめて~でも」の意味を表す。名詞、代名詞、動詞の連用形などに付く。 |
ンパー スン | [⸢m⸣paː ⸢suŋ] | ▶ | 連 | ~たがらない。~なくする。~嫌がる。動詞の未然形に付く。 |
ンバイムヌ | [ʔm⸢baimunu] | ▶ | 名 | 食べると傷や腫れ物が化膿したり、悪化するもの。 |
ンバイルン | [ʔm⸢bairuŋ] | ▶ | 自動 | 化膿する。傷やおでき(御出来)等が特定の食物によって化膿が促進される。 |
ンバウン | [ʔm⸢bauŋ] | ▶ | 自動 | 化膿する。傷やおでき<御出来>等が脂肪分の多い特定の食物によって化膿が促進される。 |
ンバウン | [ʔm⸢bauŋ] | ▶ | 他動 | {奪}{ウバ}う。{強奪}{ゴウ|ダツ}する。ウ⸢バウン[ʔu⸢bauŋ](奪う)ともいう。 |
ンバウン | [ʔm⸢bauŋ] | ▶ | 自動 | 傷やおでき(御出来)が化膿し悪化する。 |
ンパルン | [ʔm⸢paruŋ] | ▶ | 自動 | おくび(噯気)。げっぷをする。ン⸢パイルン[ʔm⸢pairuŋ]ともいう。カ⸢クラー⸣キ[kḁ⸢kuraː⸣ki](胸焼け)をする時に喉が詰まるようになって、げっぷをする。古老が用いる。ほとんど死語化している。 |
ンブー | [⸣ʔmbuː] | ▶ | 名 | 幼児語。牛。 |
ンブサー | [ʔm⸢bu⸣saː] | ▶ | 名 | 蒸し物。蒸して作る料理。煮しめもの。 |
ンブサリン | [ʔm⸢busa⸣riŋ] | ▶ | 連 | {蒸}{ム}される。ン⸢ブ⸣スン[ʔm⸢bu⸣suŋ](蒸す)の未然形ン⸢ブサ[ʔm⸢busa]に、受身、可能の助動詞⸣リン[⸣riŋ](~れる)が付いて形成された派生動詞。 |
ンブシ | [ʔm⸢buʃi] | ▶ | 名 | おもし(重石)。漬物のおもし。⸢錘、オモシ・ハカリノヲモシ」『類聚名義抄』の転訛したもの。ウ⸢ムシ[ʔu⸢muʃi](重石)ともいう。 |
ンブシナビ | [ʔm⸢buʃi⸣nabi] | ▶ | 名 | 蒸し鍋。 |
ンブシムチ | [ʔm⸢buʃi⸣muʧi] | ▶ | 名 | 蒸し餅。甑や蒸篭で蒸しあげて作る餅。 |
ンブシムヌ | [ʔm⸢buʃi⸣munu] | ▶ | 名 | 蒸し物。行事食の一つ。一度煮た魚や大根類、パパイヤ(蕃瓜樹)、{芋}{イモ}、{蛸}{タコ}、{蒲鉾}{カマ|ボコ}などを[g]{蒸篭}{セイロ}に入れて蒸し煮したもの。祭祀行事の際に作られた料理。 |
ンブスン | [ʔm⸢bu⸣suŋ] | ▶ | 他動 | 蒸す。湯気をとおして熱する。ふかす。{甘藷}{カン|ショ}を煮る際に甘藷の上に芭蕉の葉でナ⸢カ⸣フタ[na⸢ka⸣ɸu̥ta]({中蓋}{ナカ|ブタ}。内蓋)をしてその上に餅や蒲鉾等をおいて蒸した。 |
ンブニー | [ʔm⸢buniː] | ▶ | 名 | 重荷。重い荷物。 |
ンブリルン | [ʔm⸢buri⸣ruŋ] | ▶ | 自動 | {蒸}{ムサ}れる。蒸される。蒸し暑くなる。「o、可志久 又宇牟須」『新撰字鏡』の転訛したもの。 |
ンブルン | [ʔm⸢bu⸣ruŋ] | ▶ | 自動 | {蒸}{ム}れる。蒸される。蒸し暑くなる。他動詞、ン⸢ブ⸣スン[ʔm⸢bu⸣suŋ](蒸す。「宇牟須」『新撰字鏡』)の自動詞化したもの。 |
ンベー | [⸣ʔmbeː] | ▶ | 名 | {1}幼児語。山羊。 |
ンベー | [⸣ʔmbeː] | ▶ | 名 | {2}擬声語。山羊の鳴き声。 |
ンベーマ | [ʔm⸢beːma] | ▶ | 副 | 少し。わずか。ちょっと。ン⸢メーマ[ʔm⸢meːma](少し)、イ⸢ベーマ[ʔi⸢beːma](少し)ともいう。 |
ンベールン | [ʔm⸢beːruŋ] | ▶ | 自動 | 食べ物が古くなって悪くなる。腐れかかる。石垣方言からの借用語。 |
ンベー ンベー | [ʔm⸢beː⸣ ʔm⸢beː] | ▶ | 感 | めえめえ。山羊の鳴き声(擬声語)。 |
ンボーマ | [ʔm⸢boː⸣ma] | ▶ | 名 | {1}幼児語。子牛。 |
ンボーマ | [ʔm⸢boː⸣ma] | ▶ | 名 | {2}貝の名。和名、ハナマルユキ。タカラガイ(宝貝)やコヤスガイのこと(幼児語)。長楕円形で鶏卵大の大きさの貝。茶褐色に黒の斑点があり、腹部は白色を呈する。網の重しに用いられたが、食べなかった。{格好}{カッ|コウ}が子牛に似ることからいう。子供は、それを玩具にして遊んだ。 |
ンボーン | [ʔm⸢boː⸣ŋ] | ▶ | 形 | 重い。老年層の言葉。⸢グッ⸣ふァン[⸢guf⸣faŋ](重い)ともいう。シ⸢トゥ⸣ケーン[ʃi̥⸢tu⸣keːŋ](乳児などが発育して重い)は乳児に対してのみ用いる。 |
ンマ | [⸣ʔmma] | ▶ | 名 | うま(午)。十二支の第七番目。 |
ンマームヌ | [ʔm⸢maː⸣munu] | ▶ | 名 | ご馳走。「おいしい物」の義。 |
ンマーン | [ʔm⸢maː⸣ŋ] | ▶ | 形 | 美味しい。美味である。「飯喫めど味母不在<ウマクモアラズ>~。万、3875」、「~此れをば于麻時<うまし>といふ」『日本書紀 神代上』の転訛したもの。 |
ンマーンギサン | [ʔm⸢maː⸣ŋgisaŋ] | ▶ | 連 | 美味しそうだ。形容詞の語幹に様態の助動詞⸢ン⸣ギサン[⸢ŋ⸣gisaŋ](~しそうだ)が付いた形。 |
ンマーンマーシ ニブン | [ʔm⸢maːʔmmaː⸣ʃi ni⸢buŋ] | ▶ | 連 | {熟睡}{ジュク|スイ}する。{美味}{オ|イ}しそうに眠る。 |
ンマカザ | [ʔm⸢ma⸣kaʣa] | ▶ | 名 | おいしい匂い。おいしそうな匂い。 |
ンマサカバサ | [ʔm⸢ma⸣sakabasa] | ▶ | 名 | 衣食住の生活が豊かなこと。特に食生活が豊かであること。 |
ンマザキ | [ʔm⸢maʣa⸣ki] | ▶ | 名 | 馬酒。暴れ酒。飲酒すると暴れる癖のある酒の飲み方 |
ンマディマリ | [ʔm⸢ma⸣dimari] | ▶ | 名 | 午年生まれ。 |
ンマニー | [ʔm⸢ma⸣niː] | ▶ | 名 | うま(午)の日。 |
ンマヌール | [ʔm⸢manuː⸣ru] | ▶ | 名 | 馬乗り。 |
ンマヌパー | [ʔm⸢manu⸣paː] | ▶ | 名 | 午の方角。南の方角。 |
ンマムヌ | [ʔm⸢ma⸣munu] | ▶ | 名 | うまいもの。美味なもの。特別に美味しいものの意味を表す。「飯喫めど味母不在<ウマクモアラズ>~。万、3857」の転訛したもの。 |
ンミ | [⸣ʔmmi] | ▶ | 名 | (植)梅。鳩間島には、梅は栽培されていない。歌謡語として用いられる。「烏梅能波奈<ウメノハナ>~。万、825」の転訛したもの。 |
ンミブシ | [ʔm⸢mibuʃi] | ▶ | 名 | 梅干。石垣方言からの借用語。梅は、鳩間島には産しない。梅干は石垣島から買ってきた。 |
ンメーマ | [ʔm⸢meːma] | ▶ | 副 | 少し。ちょっと。物量や時間量の少ないことを表す。ン⸢ベーマ[ʔm⸢beːma](少し)ともいう。古老のなかには、イ⸢メーマ[ʔi⸢meːma](少し)という人もいる。この場合の[m]と[b]は、自由変異。 |
ンメーマスカー | [ʔm⸢meːma⸣su̥kaː] | ▶ | 連 | 副。{1}少ししたら。しばらくしたら。 |
ンメーマスカー | [ʔm⸢meːma⸣su̥kaː] | ▶ | 連 | {2}もうちょっとで。すんでのところで。 |
ンメーマナー | [ʔm⸢meːma⸣naː] | ▶ | 連 | 少しずつ。ン⸢メーマ[ʔm⸢meːma](少し)に、副助詞⸣ナー[⸣naː](ずつ。一定量のものを均等に割り当てること)の付いた形。 |