鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
[⸣ku]接尾個。石、卵、芋、甕、瓶、急須、茶碗等を数える単位。
[⸢ku]数の名。数量や順序を表す。九。
[⸣gu]接頭ご(御)。敬意を表す。「御」の付く語例は少なく、次のような漢語系の語に限られている。
[⸣gu]五。五つ。
クー [⸣kuː]甲羅。甲。
クー [⸣kuː]粉。こな。
クー [⸣kuː]{1}鍋の穴を塞ぐこと。
クー [⸣kuː]{2}衣服の破れや傷んだところに継ぎを当てること。
クー [⸢kuː]接頭小。名詞や名詞相当句に上接して「小さいもの」の意を表す。形容詞⸢クー⸣サン[⸢kuː⸣saŋ](小さい)の語幹。
グー [⸣guː]{1}組。仲間。相棒。漢語の「伍<くみ。なかま。五人または五家を一組とした昔の制度>」の義に由来する語であろう。
グー [⸣guː]{2}伴侶。夫婦。カップル。連れ。伴侶。
グー [⸣guː]⸣イノー[⸣ʔinoː](礁内湖)海域で、干潮時に現れる海底珊瑚礁の岩盤。⸢アー⸣サ[⸢ʔaː⸣sa](あおさ)などの海草が密生しており、色々な貝類が棲息しているところ
グー [⸣guː]碁。囲碁。
クーイシ [⸢kuː⸣ʔiʃi]水成岩の一種。コー⸢シェー⸣マイシ[koː⸢ʃeː⸣maʔiʃi]ともいう。ナ⸢カン⸣ブレ[na⸢kam⸣bure](中岡)の下やパ⸢カヤマ[pḁ⸢kajama](墓山)にある。墓山の南斜面の水成岩には伝統的な⸢フインチ⸣バカ[⸢ɸuinʧi⸣baka](掘抜き墓。亀甲墓)が作られている。
グーイシ [⸢guː⸣ʔiʃi]碁石。
クーガーシ [⸢kuːgaː⸣ʃi]落雁。蒸し菓子。お盆の際に仏壇に供える蒸し菓子。バラの花や魚の型枠に入れて、型押しして作った菓子。⸢コーガー⸣シ[⸢koːgaː⸣ʃi]ともいう。糯米を水に浸けて水切りをし、搗き臼に入れて搗き、米粉にしたものに砂糖を混ぜて型枠で成形し蒸し上げて造った菓子。
クーコーシ [⸣kuːkoːʃi]らくがん(落雁)。「粉菓子」の義。⸢ソッ⸣コー[⸢sok⸣koː](焼香。法事)や⸢ソー⸣ラン[⸢soː⸣raŋ](お盆。精霊祭)の時に作って仏壇に供えた。
クーサ [⸢kuːsa]幼少。小さいこと。貧しいこと。
クーサアワリ [⸢kuː⸣saʔawari]貧困。貧苦。悲哀。貧困の苦しさ。
クーサスダティ [⸢kuːsasudati]貧乏育ち。
クーサビラー [⸢kuːsabi⸣raː]継ぎ接ぎだらけの着物。石垣方言の⸢クーシャ⸣ビラー[⸢kuːʃabira](継ぎ当てした着物)から転訛したもの。⸣ビラー[⸣biraː]は「夫恋に比例布利之(ヒレフリシ)より~。万、871」の「ひれ」(領巾)の義か。
クーサビラーキン [⸢kuːsabi⸣raːkiŋ]継ぎ接ぎだらけの着物
クーザラ [⸢kuː⸣ʣara]小皿。直径5~6センチ程の皿。銘々皿。大皿より料理を取り分けるのに用いる皿。ナ⸢カ⸣ザラ[na⸢ka⸣ʣara](中皿)、⸢チュー⸣ザラ[⸢ʧuː⸣ʣara](中皿)、⸢ウー⸣ザラ[⸢ʔuː⸣ʣara](大皿)等に対するもの。
クーサン [⸢kuː⸣saŋ]{1}幼い。小さい。幼少である。沖縄方言からの借用語か。
クーサン [⸢kuː⸣saŋ]{2}如才が無い。手抜かりが無い。詳しい。/クリヤ クムムラ ムジクイ クーサー<クーシェー> ハマサチドゥ ヤル/(罷り出でたるは<これは>この村の耕作<もの作り>に詳しい浜崎という者である)。⸣ピラ[⸣pira](狂言<へら>)『鳩間島古典民謡古謡集』。
クーサン [⸢kuː⸣saŋ]{3}貧しい。貧乏である。
クージ [⸢kuː⸣ʤi](植)トウヅルモドキ。茎の直径約1センチ。長さは10~16メートルに達する蔓性植物。雑木に巻きついて伸びている。茎は強靭で弾力に富み。割いて芯を除き、表皮で笊を編みあげ、芋を入れて運ぶのに用いる。また茅葺の家を葺く際には柱を結わえたり、垂木を結わえ、ユ⸢チル[ju⸢ʧiru](えつり)を編んだりするのに用いた。
クーシカーシ [⸢kuː⸣ʃikaːʃi]継ぎ合わせ、接ぎ合わせすること。継ぎ接ぎすること。継をあてること。
クー シキ [⸣kuː ⸣ʃi̥ki]来月。「来る月」の義。
クーシキン [⸢kuːʃi⸣kiŋ]継ぎ接ぎした着物。継ぎ当てした着物。
クーシビー [⸢kuː⸣ʃibiː](海底地名)。干瀬の名。鳩間島の西側、やや北寄りの干瀬の名。連続して島を取り巻く環礁の一部位の名。フ⸢チマチル[ɸu̥⸢ʧimaʧiru]漁の行われる干瀬である
クージン [⸢kuː⸣ʤiŋ]小銭。グ⸢マ⸣ジン[gu⸢ma⸣ʤiŋ](小銭)ともいう。
クース [⸢kuːsu]唐辛子。「胡椒」の転訛。果皮や種子に刺激性の強い辛味があり、刺身に入れて食するのにこのまれる。各家の庭に2~3本植栽されている。果実は未熟の間は濃緑色を呈し、熟すると赤味をおびる。
クース [⸢kuːsu]古酒。
クーズメ [⸢kuːʣume]{1}(動物)貝の一種。和名、ヨメガガサか。卵形の平たい貝。海岸の岩にくっ付いている貝。食べられるが美味ではない。
クーズメ [⸢kuːʣume]{2}一箇所にくっ付いて、あまり動かないことから、転じて「引きこもりの人」、「外に出ないで閉じこもる人」を指していう。
クー スン [⸣kuː ⸢suŋ]{1}鍋の穴を塞ぐ。
クー スン [⸣kuː ⸢suŋ]{2}継を当てる。
クースン [⸢kuː⸣suŋ]他動崩す。
クードゥー [⸢kuː⸣duː]小鼓。「小胴」の義。⸢ウー⸣ドゥー[⸢ʔuː⸣duː](大きい鼓)の対義語。
クートゥシ [⸣kuːtuʃi]来年。「来る年」の義。
グーナー [⸣guːnaː]びっこ(跛)。びっこを引くこと。足の怪我や故障によって歩行の釣合いがとれないこと。若年層のことば。老年層は、⸣ネーガー[⸣neːgaː](びっこ)という。
グー ナルン [⸣guː ⸣naruŋ]{1}仲間になる。味方になる。
グー ナルン [⸣guː ⸣naruŋ]{2}男女が結ばれる。情を交わす。
クーヌ サミ [⸢kuː⸣nu sa⸢mi]砕け米。籾摺りや精白の際、または水に浸けた粳米を臼で搗いて上新粉を作る際、篩で篩った後に残る米粒の砕けたもの<砕米>や粗い米粉。
クーネーシ [⸢kuːneː⸣ʃi]調理法の名。「皮煮」の転訛したものか。ハリセンボンなど、はらわたを取って、皮のまま煮ること。薬効があるといって、妊婦や生理不順の女性に煎じて与えていた。
クーバイ [⸢kuː⸣bai]勾配。「勾配」からの転訛。傾斜面の斜度。屋根の斜度。
クーバリ [⸢kuː⸣bari]製粉すること。上新粉を作ること。「粉割」の義。水に漬けた粳米をシ⸢キ⸣ウシ[ʃi̥⸢ki⸣ʔuʃi](搗き臼。木臼)に入れて杵で搗き、製粉すること。搗いた粉を⸣シノー[⸣ʃinoː](篩。小麦粉用の篩)で篩って漉し、粗いものを更に搗いてメリケン粉のような細かい粉に製粉した。それを箕の上に振りかけ、まぶしておき、蒸し揚げた餅を成形する際に振りかけ、まぶし<塗し>て用いた。
グーパンチャー [⸢guːpan⸣ʧaː]不揃いのもの。対をなして揃うべきものの片方が欠けているもの。
グーパンツァーリムヌ [⸢guːpanʦaːri⸣munu]{1}対を成さないもの。不揃いのもの。「偶外れ物」の義。
グーパンツァーリムヌ [⸢guːpanʦaːri⸣munu]{2}配偶者の欠けた者。やもめ(寡婦。鰥夫「鰥夫、無妻曰\kaeriten{㆑}鰥、和名夜無乎<やもを>『和名抄』」)。
クーピキ [⸢kuː⸣pi̥ki]製粉。「粉挽き」の義。ム⸢チマイ[mu⸢ʧimai](糯米)を一晩水に{浸}{ツ}けてふやかし、⸢ウー⸣キ[⸢ʔuː⸣ki](桶)の上にア⸢ジ⸣マー[ʔa⸢ʤi⸣maː](十文字に組んだ台木)を置いてイ⸢ソーシ[ʔi⸢soːʃi](石臼)を載せ、それに糯米を入れて石臼をまわす。水を少量ずつ流しながら挽く。乳液状の汁が桶に溜まると袋に入れて水切りをする。袋の上に石臼を乗せておくと一晩で水切りが完了し、澱粉がとれる。その澱粉を成形して蒸すと餅ができあがる。
クーピキウーキ [⸢kuːpi̥kiʔuː⸣ki]「粉挽き桶」の義。石臼で糯米や大豆を挽くのに用いる桶。桶の上にア⸢ジ⸣マー[ʔa⸢ʤi⸣maː](十字に交差した支え棒)を掛け、その上に石臼を据えて糯米や大豆を挽いた。
クー ピクン [⸣kuː pi̥⸢kuŋ]製粉する。糯米を一晩水につけてふやかし、石臼で水を少しずつ加えながら挽く。
クーフキウン [⸢kuːɸu̥ki⸣ʔuŋ](植)サツマイモの一種。「粉ふき芋」の義。澱粉が多く、ふかす<蒸かす>と粉がふきでるように、ふかふかして美味なサツマイモ。
クー フクン [⸣kuː ⸣ɸu̥kuŋ]粉がふく。サツマイモをふかす(蒸かす)と澱粉質が粉のようにふかふかする。
クーフシル [⸢kuːɸuʃi⸣ru]粉薬。散薬。「こぐすり」の義。⸢クーフチ⸣ル[⸢kuːɸu̥ʧi⸣ru](粉薬)とも言う。ミ⸢ジフチ⸣ル[mi⸢ʤiɸuʧi⸣ru](水薬)の対義語。
クーフチル [⸢kuːɸu̥ʧi⸣ru]こぐすり(粉薬)。⸢クーフシ⸣ル[⸢kuːɸuʃi⸣ru]ともいう。ミ⸢ジフチ⸣ル[mi⸢ʤiɸuʧi⸣ru](水薬)の対義語。
クーマイ [⸣kuːmai]砕けまい。砕米。粒が砕けた米。
グーマンチャー [⸣guːmanʧaː]不揃い。ちぐはぐなもの。
クームチ [⸢kuːmuʧi]供物。神に供える一式の品物。若年層はク⸢ムチ[ku⸢muʧi](供物)ともいう。イ⸢キ⸣パナ[ʔi⸢ki⸣pana](生け花。イ⸢ツァン⸣パイキー{SqBr}ʔi⸢ʦam⸣paikiː{/SqBr}<まさき>の小枝を活けた)一対。ア⸢ライパナ[ʔa⸢raipana](洗米。精米した粳米を水で洗って茶碗に盛ったもの)一対。⸢サー⸣ドー[⸢saː⸣doː](茶湯)一対。⸢トゥイ⸣ミョー[⸢tui⸣mjoː](灯明。キザク貝の殻に種油を入れ、約10センチのこより<紙縒>を灯心としたもの)一対。ウ⸢ツァナ⸣ク[ʔu⸢ʦana⸣ku](白玉粉で作った小さな餅)一対。
クーラ [⸢kuːra](地)西表島北岸の伊武田地区の西に広がる水田地帯。⸢久浦」と表記されている。⸢クーラガーラ[⸢kuːragaːra](クーラ川)からウ⸢ボル⸣ダー[ʔu⸢boru⸣daː]、⸣ウシダー[⸣ʔuʃidaː]、⸢クーラ[⸢kuːra]、⸢ナーダ[⸢naːda]、⸣シザバナリ[⸣ʃiʣabanari](下離)に至る水田地帯。⸢トゥー⸣ジェ[⸢tuː⸣ʤe](通事家)、ア⸢マシェー[ʔa⸢maʃeː](小浜家)、イ⸢ラ⸣ブレー[ʔi⸢ra⸣bureː](西原家)、ナ⸢カン⸣テー[na⸢kan⸣teː](仲本家)、カ⸢ナ⸣ケー[ka⸢na⸣keː](兼久家)、⸢ウイカナケー[⸢ʔuikanakeː](浦崎家<上兼久家>)、ク⸢メー[ku⸢meː](小浜家)、⸣ユージェー[⸣juːʣeː](松竹家)、カ⸢ザケー[ka⸢ʣakeː](加治工家)、ナ⸢カシ⸣ケー[na⸢kaʃi̥⸣keː](仲底家)、パ⸢トゥ⸣メー[pḁ⸢tu⸣meː](鳩間家)、⸢ウイザテー[⸢ʔuiʣateː](上里家)、ム⸢ルスメー[mu⸢rusumeː](盛島家)、⸣ナラシケー[⸣naraʃi̥keː](成底家)などの水田があった。
クーラミナトゥ [⸢kuːraminatu]クーラ川の川口。⸢久浦港」の義。伊武田の西側と久浦田原の境を流れる川の河口。古見岳の西側、タ⸢カ⸣スクヤマ[tḁ⸢ka⸣su̥kujama](タカスク山)とティ⸢ドゥ⸣クヤマ[ti⸢du⸣kujama](ティドゥク山)から流れる雨水を集めて流れる⸢クーラガーラ[⸢kuːragaːra](久浦川)の河口は海砂が堆積して干潮時には船の通行ができない。満潮時に伝馬船やサバニを河口から乗り入れて荷物の積み下ろしをした
クーリ [⸢kuːri]{1}氷。
クーリ [⸢kuːri]{2}氷砂糖。⸢クーリザタ[⸢kuːriʣata](氷砂糖)の略。
クーリ [⸢kuːri]柳行李。
クーリザタ [⸢kuːriʣata]氷砂糖。
クーリミジ [⸢kuːrimiʤi]氷水。
クーリルン [⸢kuːri⸣ruŋ]自動崩れる。崩壊する。⸢クー⸣ルンとも言う。
クール [⸢kuːru](植)紅露。山地に自生する蔓性の植物で、1~3キロの丸い長芋の根茎をつける。八重山特産の赤色染料。
クール [⸢kuːru]「{庫裡}{ク|リ}」の転訛か。籾を積んで保管しておくところ。ユ⸢コー[ju⸢koː](裏座の片隅)や⸢トー⸣ラ[⸢toː⸣ra](炊事小屋)の一角に穀類の保管場所を作る家もあった。老年層(80歳以上)の人が使用する語である。
クールン [⸢kuː⸣ruŋ]自動崩れる。「崩る<下二段活用>」の四段活用に転訛したもの。
クーレー [⸢kuː⸣reː](動)魚の名。和名、チョウチョウコショウダイ。体長約60センチに達するという。和名、ムスジコショウダイ(体長約35センチ)、和名、クロコショウダイ(体長約35センチ)、和名、オシャレコショウダイ(体長約40センチ)、コロダイ(体長約50センチ)などの総称。鳩間島では35~40センチの成魚が釣れた。⸢クー⸣シビー[⸢kuː⸣ʃibiː](島の西側にある干瀬)の⸢ピーヌ⸣クシ[⸢piːnu⸣ku̥ʃi](干瀬の外海)あたりで漁獲された
クーン [⸣kuːŋ]自動カ変。{1}来る(こちらへ向かって近づく)。「之多比己之 伊毛我己許呂乃~<慕い来し妹が心の>『万葉集 796』」の義。
クーン [⸣kuːŋ]自動{2}<目的地に話者の意識を置いた、来る>行く。「倭爾者 鳴而か來良武~<大和には鳴きてか来らむ>『万葉集 70』」の義。
クーン [⸣kuːŋ]他動こぐ(漕ぐ)。櫓や櫂を動かして船を進める。「麻萬能宇良末乎 許具布祢能~<眞間の浦回を漕ぐ船の>『万葉集 3349』」の義。
クーン [⸣kuːŋ]他動{1}乞う。求める。貰う。
クーン [⸣kuːŋ]他動{2}借りる。
クーン [⸢kuːŋ]他動越える。ものごとの上を越える。障害物を乗り越える。⸢クイルン[⸢kuiruŋ](越える)ともいう。「~あしひきの山坂古延弖<コエテ>~。万、3962」の転訛したもの。
クイ [⸣kui]恋。
クイ [⸣kui]声。
グイ [⸢gui]杭。地中に打ち込む棒。直径約4センチ、長さ約80センチの垂木の先端部を削って土中に打ち込んで支柱に使用するもの。畑の畦などに打ち込んで藁縄を張り、畑に侵入する者を防ぐ。
グイ [⸢gui]みおつくし(澪標)。水路標識。「水脈(みお)の串」の義。通行する船に深い水脈を知らせるために立てた杭。タ⸢カビー⸣ヌ フ⸢チ[tḁ⸢kabiː⸣nu ɸu̥⸢ʧi](高干瀬の津口)から桟橋に至る数箇所の浅瀬に立てた杭。戦後は寄合三戸氏が運搬船の水路標識として松の枝を立てた。それを、ユ⸢レーヌ アー⸣ヤ ⸢ブイ[ju⸢reːnu ʔaː⸣ja ⸢bui](寄合家のお父さんの浮標)といっていた
クイイズ [⸣kuiʔiʣu](動)鯉。「鯉魚」の義。⸢カーング[⸢kaːŋgu](「川鯉」の義か)ともいう。鳩間島には鯉は棲息していなかった。西表島の川や田圃のシ⸢キム⸣トゥ[ʃi̥⸢kimu⸣tu](水源池にはカーングが棲息していた)。
クイガーリ [⸢kuigaː⸣ri]声変わり。変声。変声期。⸢クインガー⸣リ[⸢kuiŋgaː⸣ri](声変わり)ともいう。
クイガリ [⸢kui⸣gari]しわがれ声(嗄れ声)。しゃがれごえ。「声枯れ」の義。
クイガルン [⸢kui⸣garuŋ]自動しゃがれる。しわがれる(嗄れる)。声がかれ(嗄れる)る。「ガルン」は、「死、カル」『類聚名義抄』、「~朝毎にしぼみ可礼由苦<カレユク>~。万、4122」の転訛したものか。
クイ クーン [⸢kui⸣ kuːŋ]越えて来る。
クイ クーン [⸣kui ⸣kuːŋ]漕いで来る。「漕ぎ来る」の義。
クイクガリルン [⸢kuikugari⸣ruŋ]自動恋焦がれる。恋しさにもだえ苦しむ。耐え難いほど恋い慕う。
クイ グマーン [⸣kui gu⸢maː⸣ŋ]声が小さい。小声である。
クイダー [⸣kuidaː](固)。平民の女の子の名。
クイチ [⸢kui⸣ʧi]峠。「越地(こえち)」の転訛したもの。ウ⸢ハ⸣ラクイチィ[ʔu⸢ha⸣rakuiʦï]の峠は西表島の崎山村と鹿川村との間にある峠。歌謡語。/ウハラクイチミチィナガ ユサバサヌ ミチィナガ/(大原と称する峠道に、ユサバサと、となえる坂道に)「大原越地節<ウハラクイチィブシ>(西表)」『八重山民謡誌』。鳩間島ではウ⸢ハ⸣ラクイチブシ[ʔu⸢ha⸣rakuiʧibuʃi](大原越地節)という
クイックナー [⸢kuikkunaː]越え競争。子供の遊戯の一つ。高飛びのバー等を飛び越えるのを競う遊び。越え競(こえくらべ)の転訛したもの。
グイッティ [⸢guit⸢ti]ごくりと。ぐいと。残さず。
クイツバーオン [⸢kui⸣ʦubaːʔoŋ]石垣島にある御嶽の名。⸢クイ⸣ツバー[⸢kui⸣ʦubaː](人名。⸢ナー⸣タフージの妹)を祀ってあるという。
クイ パルン [⸣kui ⸣paruŋ]漕いで行く。舟を漕いで行く。
グイフ [⸢gui⸣ɸu]ごようふ(御用布)。平民女子の貢納布。苧麻布や芭蕉布。対語は⸣カナイヌヌ[⸣kanainunu](士族女子の貢納布。極細の⸣ブー{SqBr}⸣buː{/SqBr}<からむし。苧麻>の糸で織る最高の布)。
グイフゾーノー [⸢gui⸣ɸuʣoːnoː]御庸布。「御庸布上納」の義か。
グイフマイ [⸢gui⸣ɸumai]上納米。
クイブリ [⸢kui⸣buri]恋狂い。邪恋に身を持ち崩すこと。「恋惚れ」の義。
クイブリヨー [⸢kuiburi⸣joː]節回し。「声折り」の転訛したもの。
クイムク [⸢kuimu⸣ku]こいむこ(請婿)。入り婿。女性の方から所望してもらった婿。
グイユー [gui⸢juː]あらまあ。何とまあ。
グイル [⸢guiru]カツオ漁船の大漁旗の一つ。
クイルン [kuiruŋ]他動越える。またぐ(跨ぐ)。
クイン [⸣kuiŋ]暦。「暦 古与美<こよみ>『和名抄』」からの転訛。
クインガーリ [⸢kuiŋgaː⸣ri]声変わり。変声期。⸢クイガー⸣リ[⸢kuigaː⸣ri](声変わり。変声期)ともいう。
クガイズ [⸣kugaʔiʣu](動)魚の名。渚に群れて寄る小魚。稚魚は体長約5センチ。成魚の体長は約15センチ。頭のところに棘があって毒を含む。
クガニ [ku⸢gani]{1}こがね(黄金)。金。
クガニ [ku⸢gani]{2}接頭語。黄金のように貴重な。大切な。立派な。
クガニカニ [ku⸢ganikani]黄金。黄金の鋼材。「黄金の鉄」の義。歌謡語。ク⸢ガニカニバ⸣ キ⸢チ⸣バ ⸣シー~[ku⸢ganikaniba⸣ ki̥⸢ʧi⸣ba ⸣ʃiː~](黄金の鋼材を桁にして~)「アーパーレー(新室寿歌)」
クガニッふァ [ku⸢ganiffa]黄金のように大切な子。ク⸢ガナー[ku⸢ganaː](黄金のような大切な子)ともいう。
クガニピー [ku⸢ganipiː]吉日。佳日。最良の日。⸢黄金日」の義。⸢カイピュー⸣ル[⸢kaipjuː⸣ru](佳日)と同じ。祝詞や歌謡に用いられる。
クガニピュール [ku⸢ganipjuːru]黄金の日。吉日。佳日。「黄金の日和<日選り>」の義。物事を執り行うのに選りすぐった吉日。干支の組み合わせで定められた最高の吉日。
クガニマース [ku⸢ganimaːsu]黄金の塩。「黄金塩」の義。正月に床の間に盛り塩を供えて健康祈願をし、それを戴いて健康と長寿をあやかる(肖る)。⸢ナンツァマー⸣ス[⸢nanʦamaː⸣su](銀の塩)、シゥ⸢カラマース[si̥⸢karamaːsu](力塩。健康を付ける塩)ともいう。
クガラスン [ku⸢garasuŋ]他動こがす(焦がす)。心労する。心配する。
クガリルン [ku⸢gariruŋ]自動{1}焦がれる。深く思い慕う。
クガリルン [ku⸢gariruŋ]自動{2}焦げる。
クガルン [ku⸢garuŋ]自動焦がれる。「こがる(焦る)<下二段活用>」の四段活用化したもの。
クク [⸣ku̥ku]石。10斗。体積を表す単位。主として米穀を量るのに用いる。
グク [gu⸢ku]極み。最低、最高の状況、状態。最悪、最善の状況、状態。「極(ゴク)」の転訛したもの。善悪の両極端(得手・不得手)であることを表す。
クグサイナー [ku⸢gusai⸣naː]小型の魚を狙って釣るのに用いる釣り縄。ナ⸢カダン⸣グ[na⸢kadaŋ⸣gu](中道具)ともいう
グクシキルン [gu⸢kuʃiki⸣ruŋ]自動精根尽き果てる。疲労困憊する。窮する。グ⸢ク⸣スクン[gu⸢ku⸣su̥kuŋ]ともいう。
グク スクン [gu⸢ku⸣ su̥kuŋ]疲労困憊する。苦労や苦しみの極みに達する。
グクスクン [gu⸢ku⸣su̥kuŋ]自動精根尽き果てる。疲労困憊する。窮する。
ククダカ [ku̥⸢kudaka]こくだか(石高)。米など穀類の生産高。
ククチ [ku̥⸢ku⸣ʧi]心地。気分。
ククヌカ [ku̥⸢kunu⸣ka]九日。
ククヌク [ku̥⸢kunu⸣ku]九個。ク⸢ヌッ⸣ク[ku⸢nuk⸣ku]ともいう。「ここの・こ。大欲寸 九 児等哉<おほほしき ここの児らや>。万、3794」の義。
ククヌシチ [ku̥⸢kunu⸣ ʃi̥ʧi]穀雨の季節。二十四節気の一つ。清明の次の季節で春の季節の最後。四月廿日頃。春雨が降って百穀を潤す意味があるという。
ククヌチ [ku̥⸢kunu⸣ʧi]九つ。九歳。ク⸢ヌ⸣チ[ku⸢nu⸣ʧi](九つ)ともいう。
ククヌチン [ku̥⸢kunu⸣ʧiŋ]九つ。九個。ここの・つ(箇)。
ククヌトゥグンジュー [ku̥⸢kunu⸣tugunʤuː]四十九歳。厄年といわれて、厄払いと健康祈願が行われた。また人頭税時代には、成人としての納税の義務を果たす最後の年で人生の重要な境目であった。
ククムン [ku̥⸢kumuŋ]他動口に含む。口の中に含ませる。
グクラク [gu⸢kura⸣ku]{1}極楽。極楽浄土。全く苦患<くげん>のない安楽な世界で念仏行者は死後にそこに生まれるという。
グクラク [gu⸢kura⸣ku]{2}極楽往生すること。成仏すること。
ククル [ku⸢ku⸣ru]{1}心。「心、ココロ、五臓之一也」『色葉字類抄』。意思のはたらき。
ククル [ku⸢ku⸣ru]{2}望み。こころざし(志)。意向。「多麻可豆良 多延武能己許呂<玉蔓 絶えむの心>~」『万、3507』の義。「世の中の人これを例にてこころ高くなりぬべき頃なめり」『源氏物語 若菜下』。/イヤイーヤ ピトゥヌイヌチヤ サンアティナランサ ヌチヌアリワドゥ チムヌウムティン ククルヌアルティン ジュージューサマザマ カナワティイカリサ ナマヌパヤシニ クドゥキユミユミ/(いやいや<弥弥>、人の命は予測できる<計算して頼れる>ものではないよ。命があればこそ希望や望み、意志があるのも、いろいろとその形にに叶えていけるものだ。今の囃子に口説きを歌おうよ)<鳩間口説>『鳩間島古典民謡古謡集』
ククルアティ [ku⸢kuru⸣ʔati]心当て。心積もり。心中にあてにすること。心に思って頼みにすること。
ククルウチ [ku̥⸢kuru⸣ʔuʧi]心中。内心。心の中。胸中。石垣方言からの借用語か。老年層は、キ⸢ム⸣ウチ[ki⸢mu⸣ʔuʧi](心中。⸢肝内」の義)という。
ククルガーリ [ku̥⸢kurugaː⸣ri]心変わり。変心すること。愛情が他の人に移ること。老年層はキ⸢ムンガー⸣リ[ki⸢muŋgaː⸣ri](心変わり)という。
ククルガキ [ku̥⸢kuruga⸣ki]心掛け。心構え。標準語からの転訛。老年層は、キ⸢ム⸣ヌ ム⸢ティ⸣ヨー[ki⸢mu⸣nu mu⸢ti⸣joː](心掛け。「肝の持ち様」)という。
ククルガキルン [ku̥⸢kurugaki⸣ruŋ]他動心掛ける。標準語から転訛したもの。老年層は、キ⸢ム⸣バ ⸣ムトゥン[ki⸢mu⸣ba ⸣mutuŋ](心掛ける。「肝を持つ」)という。
ククルザシ [ku̥⸢kuru⸣ʣaʃi]{1}志。目標。標準語から転訛したもの。老年層は、ヌ⸢ズミ[nu⸢ʣumi](志。「望み」)という。
ククルザシ [ku̥⸢kuru⸣ʣaʃi]{2}厚意。気持ちばかり。寸志。
ククルミルン [ku̥⸢kurumi⸣ruŋ]他動試みる。ためしてみる。老年層は、タ⸢ミ⸣スン[ta⸢mi⸣suŋ](試す)を多用する。
ククルムチ [ku̥⸢kurumu⸣ʧi]{1}性格。性情。標準語から転訛したもの。老年層は、シ⸢ムチ[ʃi⸢muʧi](性格。「肝持ち」)という。
ククルムチ [ku̥⸢kurumu⸣ʧi]{2}ほんの少し。やや。標準語から転訛したもの。
クサ [⸣ku̥sa]フィラリア。象皮病。「Cusa.クサ(くさ)突然に起こる熱病のような病気.下の語.例Cusauo furu.(くさを震う) このような病気にかかる.Ximogusa.(下ぐさ)股根(ももね)とか睾丸とかにできる腫物のような病気.婦人の間でCamicusa(上くさ)と言うのは、頭痛のことである。」『邦訳日葡辞書』。
グサーク [gu⸢saː⸣ku]五勺。容積の単位。一合の半分。お米を計量するのに用いる。
グサークマイ [gu⸢saːku⸣mai]五勺米。{⸢プー⸣ル[⸢puː⸣ru](豊年祭)やキ⸢チゴン[ki̥⸢ʧigoŋ](結願祭)などの神行事に各家庭より十五歳以上の人数分供出するパ⸢ナン⸣グミ[pa⸢naŋ⸣gumi](花米)}
グサークマイ [gu⸢saːku⸣mai]五勺米。村の神行事のために各戸から、その家の八歳以上の家族の人数分徴収される米のこと。
クサーテー [ku̥⸢saːteː]右手を背中の後ろへ持っていき、その手を更に右方へ捻り回すようにして物品を霊界のものに手渡すこと。人間に対する行為としては禁じ手である。「腰手へ」の転訛したものか。幼児が無意識に、ふざけてク⸢サーテーを使うと、祖父母に厳しく咎められ、⸢ティーダラ⸣シ[⸢tiːdara⸣ʃi](手を叩くこと)された。
クサイルン [ku̥⸢sairuŋ]他動{1}道路や畦道の除草をして整備する。不要なものを除去して整える。こしらえる(拵える)。整える。「誘、古之良布(こしらふ)」『華厳経音義私記』の転訛したもの。
クサイルン [ku̥⸢sairuŋ]他動{2}砂糖黍などの葉や節の皮などを落としてきれいに整える。
クサウン [ku̥⸢sauŋ]他動拵える。魚を捌く。手を加えて仕上げる。「拵へ<下二段活用>」の四段活用化したもの。
クサクサー スン [⸣ku̥saku̥saː ⸢suŋ]くしゃくしゃする。思い通りにことが運ばず、不愉快になる。
クサティ [ku̥⸢sati]うしらだて(後ろ盾)。「腰当」の義。/クモマティル シマヤ カフヌシマ ヤリバ ウフダキバ クサティ シルパマ マイナシ/(小浜という島は果報の島であるから 大嶽を腰当にし、白浜を前面にして)「小浜節」『八重山民謡誌』 
クサティー [ku̥⸢satiː]うしろで(後ろ手)。両手を背にまわすこと。
クサマキカーマキ [ku̥⸢samakikaː⸣maki]ひねくれ(捻くれ)て憤慨するさま。ねじけ(拗け)て怒るさま。拗けて自暴自棄になるさま。
クサマキムニ [ku̥⸢samaki⸣muni]ひねくれた物言い。ねじけ(拗け)て、不平がましく、人の言う事を聞かない物言い。癪に障るような物言い。ク⸢サ⸣ムニ[ku̥⸢sa⸣muni]ともいう。
クサマクン [ku̥⸢sama⸣kuŋ]自動ひねくれて憤慨する。癪にさわって、ねじけ(拗け)る。思うようにいかず、すね(拗ね)て怒る。
クサラー [ku̥⸢saraː](動)魚の名。和名、ニジョウサバ(体長約60センチ)
グザラー [gu⸢ʣaraː]小者。取るに足りない小さなもの。
グザラーブジェー クムル [gu⸢ʣarabuʤeː⸣ ku⸢mu⸣ru](海底地名)。グザラー祖父さんの漁場(礁池)。ニ⸢シムレー[ni⸢ʃimureː](米盛家)の祖父さんが漁をした所と伝えられている。魚が、グザラグザラと沢山漁獲できたので命名されたという。島中浜の⸣ピー[⸣piː](干瀬)よりやや東に寄った所にある大きなク⸢ム⸣ル[ku⸢mu⸣ru](礁池)
グザラグザラ [gu⸢ʣaraguʣara]沢山のものが群がるさま。うようよ。
クサン [⸣ku̥saŋ]漁法の名。この漁法を糸満の漁師は、⸢ヒータマラ⸣サ[⸢çiːtamara⸣sa]というという。鳩間島のタ⸢チ⸣バルパマ[tḁ⸢ʧi⸣barupama](立原浜)から⸢ピーヌ⸣クシ[⸢piːnu⸣ku̥ʃi](干瀬の頂上部)へ続く珊瑚礁(a coralreef)は左側の⸢フンシキ[⸢ɸunʃi̥ki]との間に約40センチ程の段差がある。そこは干潮時には、海水が滝のように流れ落ちる。満潮時にリーフの頂上部で海草を食べていた魚は引き潮に乗ってフンシキの方へと下がっていく。その自然の流れを利用し、魚網を入れて漁獲する漁法を⸣クサン[⸣ku̥saŋ]といい、袋網を入れる水深1~2メートルの礁池を⸣クサンクムル[⸣ku̥saŋkumuru](クサン礁池。「籠<コモリ>」の義)という
グサン [⸣gusaŋ]{1}杖。「くにごしやん(国を御する力のある杖)」『おもろ語辞典』。「みごしやん(乾・器材)」『混効験集』。「グサー⸢ニ」『沖縄今帰仁方言辞典』。「こさんちく(鼓山竹)の略」『石垣方言辞典』。
グサン [⸣gusaŋ]{2}⸢ソー⸣ラン[⸢soː⸣raŋ](盂蘭盆)の供物として供える砂糖黍の長い棒。お盆の供物を土産として担いで帰る際の天秤棒と言われている
クサンクムル [⸣kusaŋkumuru]⸣クサン漁で袋網を設置する礁池を⸣クサンクムル[⸣kusaŋkumuru]という。西村の⸣クサンクムルはタ⸢チ⸣バルパマ[tḁ⸢ʧi⸣barupama](立原浜)の⸢ズンズン[⸢ʣunʣuŋ]の西側にあり、東村のそれは、フ⸢カバ⸣カパマ[ɸu̥⸢kaba⸣kapama](外若浜)の⸢ズンズン[⸢ʣunʣuŋ]の南側にある。タ⸢チ⸣バルの⸢フンシキ[⸢ɸuŋʃi̥ki](礁内湖の枝サンゴ地帯)には、⸣ウブシケーヌ ⸢アー⸣ヤ ク⸢ム⸣ル[⸣ʔubuʃi̥keːnu ⸢ʔaː⸣ja ku⸢mu⸣ru](大城家のお父さんの籠もり池<礁池>)、又は⸢クシケーヌ⸣ アブジェー ク⸢ム⸣ル[⸢kuʃi̥keːnu⸣ ʔabuʤeː ku⸢mu⸣ru](小底家のお祖父さんの籠もり池<礁池>)と呼ばれている礁池があり、伝統的にその礁池に袋網を入れてクサン漁をした。シ⸢マナカヌ⸣ ピー[ʃi⸢manakanu⸣ piː](島仲の干瀬)にはグ⸢ザラブジェー⸣ ク⸢ム⸣ル[gu⸢ʣarabuʤeː⸣ ku⸢mu⸣ru](米盛家の先祖が袋網を入れて、グザラグザラするほど漁獲したと伝えられる所。ヤ⸢トゥ{SqBr}ja⸢tu{/SqBr}<干瀬の裂け目>へ繋がる籠もり池)がある
クサンダキ [⸣ku̥sandaki]鼓山竹。⸢ポー⸣キダキ[⸢poː⸣kidaki](箒竹)ともいう。竹箒に利用された。
クシ [ku̥⸢ʃi]{1}腰。背中。背中全体。「腰、許志爾多何祢提<腰にたがねて>~。『万葉集 804』」の転訛したもの。
クシ [ku̥⸢ʃi]{2}背後。背面。後ろ。
クジ [⸣kuʤi]{1}くじ(籤)。神意を占うこと。ウ⸢ク⸣ジ[ʔu⸢ku⸣ʤi](「御籤」の義。「ウ(御)」は接頭語。神前に祈願し、一掴みの米粒をお膳に置き、対になるよう並べて神意を占うもの)。
クジ [⸣kuʤi]{2}事柄を決定するために紙片や竹片に符号を付したものを引き当てること。
クジ [⸣kuʤi]くずこ(葛粉)。でんぷん(澱粉)。⸣シトゥ[⸣ʃi̥tu](澱粉)ともいう。
グシ [⸣guʃi]酒。特に神仏に供える酒(神酒)のこと。「御酒」の転訛か。サ⸢キ[sḁ⸢ki](酒)は酒一般の名称。⸣グシ カ⸢ミ⸣リ[⸣guʃi ka⸢mi⸣ri](神仏の前に供えた酒を恭しく頭の上まで持ち上げて頂きなさい)という。儀式や改まった場面では、⸣グシを用い、日常的場面では、サ⸢キを用いる。
グシ [gu⸢ʃi]接尾~おきにすること。~ごとに。「越すこと」の義。時間や日数等を表す数詞に下接して、その数量ずつ間隔を置いて動作、行為が行われ、現象が起きる意をあらわす。歌謡語。日常会話では、⸢ゴー⸣シ[⸢goː⸣ʃi](~おき)という。
グシ [gu⸢ʃi]くし(串)。竹串。箸のように先を尖らせた木や竹の切れ端。細長くて物を貫きさすのに用いる物。「堀串<ふくし>、~布久思毛與 美夫君志持 此岳爾~。『万葉集 1』」の転訛。
グジ [gu⸢ʤi]{1}{肉刺}{マ|メ}。
グジ [gu⸢ʤi]{2}たこ({胼胝}{タ|コ})。てのひら(掌)や足の裏などの表皮が激しい作業などの圧迫により角質化して厚くなったもの。
グジ [⸣guʤi](植)樹木の名。デイゴ。⸢ズグ[⸢ʣugu](デイゴ)<石垣方言>の頭子音[ʣ]と末尾音節の子音[g]が音位転倒(metathesis)を起こしたもの。⸣グジキー[⸣guʤikiː]ともいう。
クシアミ [ku̥⸢ʃiʔami]「腰浴び」の義。夏の暑い時に帯から上の衣服を脱ぎ、上半身水浴びすること。女性がはだぬぎ<肌脱ぎ>して前屈みになり、背中に水をかけてもらって水浴びすること。
クシェー [ku̥⸢ʃeː]後方。背面。ク⸢シ[ku̥⸢ʃi](背中、後ろ)に接尾辞⸢ヤー[jaː](もの、ところ)が下接して形成されたもの。
グシェーマ [gu⸢ʃeː⸣ma]小串。爪楊枝。
クシカキ [ku̥⸢ʃikaki]腰掛。標準語からの借用語。普通は、ビ⸢リダイ[bi⸢ridai](座り台)という。
グシ カミルン [⸣guʃi ka⸢mi⸣ruŋ]神前に供えた神酒を恭しく頂く。
クシキ [⸢kuʃi̥⸣ki]戸籍。
クシキ [⸢kuʃi̥⸣ki]{1}{甑}{コシキ}。[g]{蒸籠}{セイロ}。米などを蒸すのに用いる器具。旧来の甑はビロー樹(蒲葵樹)の芯を刳り抜いて筒形の蒸し器につくったものである。「許之伎爾波 久毛能須可伎て『万葉集 892』。甑、古之岐<こしき>炊飯器也『和名抄』」の転訛したもの。⸣グジクシキ[⸣guʤikuʃi̥ki](デイゴの幹を刳り抜いて作った蒸し器)やク⸢バクシキ[ku⸢bakuʃi̥ki](蒲葵の幹を刳り抜いて作った蒸し器)を⸢シンマイ⸣ナビ[⸢ʃimmai⸣nabi](大鍋。四枚鍋)にア⸢ジ⸣マー[ʔa⸢ʤi⸣maː](石臼を載せるに用いる十字形の木の枠)を架けて、その上に載せ、蒸気が漏れないように密閉して米や餅などを蒸し煮した。戦後になって四角い板製の上品な甑も使用された。
クシキ [⸢kuʃi̥⸣ki]{2}甑飯。こわいい(強飯)。
クシキ [⸢kuʃi̥⸣ki]戸籍。
グジキー [⸣guʤikiː]デイゴの木。
クシキルン [⸢kuʃi̥kiruŋ]他動{1}腰紐に差し込んで着る。したひも(下紐)に差し込む。⸣ウシンチ―[⸣ʔuʃinʧiː]ともいう。
クシキルン [⸢kuʃi̥kiruŋ]他動{2}腰に携える。腰に差して携帯する。引っ提げる。
クシクイ [ku̥⸢ʃikui]{1}田植えなどの「ゆい(結)」でする農作業の仕事納めに酒食をともにして互いの労苦をねぎらうこと。仕事納めの慰労会。「腰・憩い」の転訛したもの。
クシクイ [ku̥⸢ʃikui]{2}休憩。腰休め。中休み。
グジクシキ [⸣guʤikuʃi̥ki]デイゴの木で作った甑。
クジ クバーン [⸣kuʤi ku⸢baː⸣ŋ]籤運が悪い
グシクビン [⸣guʃikubiŋ]神仏に供える神酒や酒を入れる小瓶。「御酒小瓶」の転訛したもの。錫合金製のカ⸢ニクビン[ka⸢nikubiŋ](金属製の小瓶)、陶製のクビン[⸣kubiŋ](小瓶)、首の細長い、チ⸢ルビン[ʧi⸢rubiŋ](鶴瓶)、カ⸢ザリクビン[ka⸢ʣarikubiŋ](飾り小瓶)等があった。
クシケー [⸢kuʃi̥keː]屋号。小底太郎氏宅。鳩間島西村の網元の家。小底家を中心にして⸢シン⸣カ[⸢ʃiŋ⸣ka](組員。メンバー)を集め、シ⸢ナカキ⸣ヤー[ʃi⸢nakaki⸣jaː](追い込み漁)をされた。タ⸢チ⸣バル[tḁ⸢ʧi⸣baru](立ち原)の⸢フンシキ[⸢ɸuŋʃiki]に⸢クシケー アー⸣ヤ ク⸢ム⸣ル[⸢kuʃi̥keːnu ʔaː⸣ja ku⸢mu⸣ru](小底家のお祖父さんの籠もり池<礁池>)という漁場がある。ピ⸢ナイウガン[pi⸢naiʔugaŋ](鬚川御嶽)の北向かいにある。
クシケーヌ サンドーザーテー [⸢kuʃi̥keːnu san⸣doːʣaːteː]屋号。小底三戸氏宅。
クジ コーン [⸣kuʤi ⸢koː⸣ŋ]籤運が悪い。籤が当らない。「籤・硬い」の義。
クジ コーン [⸣kuʤi ⸢koː⸣ŋ]くじ<籤>運が悪い。籤がなかなか当らない。「籤・強し」の義。老年層は、⸣クジ ク⸢バー⸣ン[⸣kuʤi ku⸢baː⸣ŋ](籤運が強し)という。⸣クジ ⸢ヤー⸣ラーン[⸣kuʤi ⸢jaː⸣raːŋ](籤運が柔い。よく籤に当たる)、⸣クジ ヤ⸢バー⸣ン[⸣kuʤi ja⸢baː⸣ŋ](籤運が柔い)と同義語。
グシゾーグ [⸣guʃiʣoːgu]酒上戸。酒好き。「御酒上戸」の義。
クジ タルン [⸣kuʤi ⸣taruŋ]澱粉を溶かして煮る。
クシナカ [ku̥⸢ʃinaka]背中。背の中央。
クシ ヌバスン [ku̥⸢ʃi⸣ nu⸢ba⸣suŋ]腰を伸ばす。
クシパダカ [ku̥⸢ʃipadaka]もろはだぬぎ(諸肌脱ぎ)。上半身裸になること。
グシパナ [⸣guʃipana]神仏に供える酒と花米。「御酒花」の義か。神事や仏事の際に供えられる。酒は白磁製の⸢カン⸣ビン[⸢kam⸣biŋ](燗壜)にいれ、白紙を折って蓋をしたものを⸢イッチー[⸢ʔitʧiː](一対)、パ⸢ナン⸣グミ[pa⸢naŋ⸣gumi](花米)はジ⸢ブ⸣ク[ʤi⸢bu⸣ku](重箱)一枚に米一合、叉は三合、五合、九合のように入れたもの。他に、ウ⸢ブ⸣グシ[ʔu⸢bu⸣guʃi](祝儀用の神酒。大酒)、ウ⸢ブ⸣パナ[ʔu⸢bu⸣pana](正式のパナングミ<花米>。四つ重ねの重箱に花米を盛って二十八宿の{甲立}{コウ|ダテ}で囲ってあるもの)と中皿に盛ったものがある。
クジ バルン [⸣kuʤi ba⸢ruŋ]神意を占う。籤を引く。「籤を割る」の義。神前で祈願をして供物のパ⸢ナン⸣グミ[pa⸢naŋ⸣gumi](花米)を一掴み取ってお膳の上に並べて神意を占うこと。ウ⸢ク⸣ジ バ⸢リ⸣ マ⸢ラソー⸣ルン[ʔu⸢ku⸣ʤi ba⸢ri⸣ ma⸢rasoː⸣ruŋ](お籤を割って、神意を誕生させられる)という
クジビキ [ku⸢ʤibi⸣ki]くじ引き。抽籤。籤を引くこと。
クシブニ [ku̥⸢ʃibuni]背骨。脊椎。「腰骨」の義。
クシマキ [ku̥⸢ʃimaki]腰巻。女性が和服の下に腰から脚部にかけてまとう{布帛}{フ|ハク}。おこし。結願祭や豊年祭の舞踊の衣装として着用された。
クシミチ [ku̥⸢ʃimiʧi]裏通り。後ろの道。「腰<後>道」の義。
クジムチ [ku⸢ʤi⸣muʧi]くずもち(葛餅)。⸢ウンヌ⸣クジ[⸢ʔunnu⸣kuʤi](芋葛<澱粉>)や⸢キーウン⸣ヌ ⸣クジ[⸢kiːʔun⸣nu ⸣kuʤi](キャッサバの葛<澱粉>)を熱湯でこね<捏ね>て蒸したもの。キ⸢ザル[ki⸢ʣaru](祭祀行事)の時のお茶請けとして食した。
クジ ヤーラーン [⸣kuʤi ⸢jaː⸣raːŋ]籤運がいい。よく籤に当たる。「籤・柔らかい」の義。
クジヤバーン [ku⸢ʤijabaː⸣ŋ]くじ(籤)運が強い。籤に当たりやすい。ク⸢ジヤー⸣ラーン[ku⸢ʤijaː⸣raːŋ](籤運が強い。<籤柔らかい>)ともいう。
クシ ヤムン [ku̥⸢ʃi⸣ jamuŋ]腰が痛む(病む)。
クジラー [⸣kuʤiraː]成長が止まったもの。発育が止まった人や動物。背の低い人。矮小性のもの。
クシライルン [ku̥⸢ʃirairuŋ]他動こしらえる(拵える)。魚をさばく(捌く)。食べられるように仕上げる。手を加えて細工する。「誘、古之良布<こしらふ>『華厳経音義私記』」の意味派生したもの。
グジラフタイ [gu⸢ʤira⸣ɸu̥tai](動)ぶだいの仲間。背びれの付近は薄紫色の体色で、腹部は灰色に近い。体調1メートルに成長するものがいるという。鳩間島では体長50~60センチの成魚がよく網にかかった。頭の形が鯨の頭に似ることから命名されたものという。⸢アウピナカン[⸢ʔaupinakaŋ](なんようぶだい。体色は紺色に近い)に似るが体色が異なる。
クジリウン [ku⸢ʤiri⸣ʔuŋ]成長が止まった小さな芋。矮小性の芋。病気等による生育不良の芋。⸣クジラー[⸣kuʤiraː](生育不良のもの。発育不良のもの)ともいう。「崩れ芋」の転訛したものか。
クジリムヌ [ku⸢ʤiri⸣munu]発育不良のもの。成長が止まって萎縮したもの。人間をはじめ、他の動物、植物にもいう。「崩れる」の転訛したものか。
クジルン [ku⸢ʤi⸣ruŋ]自動発育停止する。成長が止まる。萎縮する。子供を生まなくなる。「崩れる」の転訛したものか。
グジンフー [gu⸢ʤiŋ⸣ɸuː]沖縄(首里)の古典芸能の名。「かぎやで風節」。一名「御前風」。古老は、グ⸢ジヌ⸣フー[gu⸢ʤinu⸣ɸuː](御前風)といった。
クズ [⸣kuʣu]こぞ(去年)。昨年。「許序能秋 安比見之末爾末~。『万葉集 4117』」。「去年・昔歳、コソ『類聚名義抄』」の転訛。
クスク [⸢kusu̥⸣ku](動)魚の名。和名、メガネクロハギ(体長約16センチ)、キイロハギの変種(体長約18センチ)、クログチニザ(体長約20センチ)の仲間の総称。和名、クログチニザは、ブ⸢ナー[bu⸢naː]ともいう。和名、クロモンツキは、⸢ビンクス⸣ク[⸢biŋkusu̥⸣ku]ともいう。鳩間島では島の西側にある干瀬の⸢クー⸣シビー[⸢kuː⸣ʃibiː]で、潮の満ち干を利用して⸢クス⸣ク[⸢kusu̥⸣ku]を網で巻いて漁獲した。干瀬の上の海草を食っている魚が引き潮と共に外洋へ下がるところを巻き獲る漁法である。
グスク [⸢gusu̥⸣ku]石垣。石を積み上げて屋敷を囲ってあるもの。屋敷の前方の、⸢マイグス⸣ク[⸢maigusu̥⸣ku](前石垣)は二重に積み、ナ⸢カフク⸣ル[na⸢kaɸu̥ku⸣ru](「中袋」の義。中間部)にはバ⸢タ⸣イシ[ba⸢ta⸣iʃi](腹石)という小石を詰めて崩れないように積み上げてあったが、後方及び両側の石垣にはバ⸢タ⸣イシを詰めないで二重積にしたものが多かった。キ⸢ザリグスク[ki⸢ʣarigusu̥ku](石を削って積み上げた美しい石垣。ア⸢ワ⸣イシ{SqBr}ʔa⸢wa⸣iʃi{/SqBr}<砂岩>を削って積み上げた美しい石垣。石垣島に多い)は鳩間島にはない。
グズグズ [gu⸢ʣuguʣu]くすぐる時の形容。こちょこちょ。乳幼児を抱き上げ、グ⸢ズグズティ⸣ グ⸢ズ⸣ルン[gu⸢ʣuguʣu⸣ti gu⸢ʣu⸣ruŋ](こちょこちょとくすぐる)といってあやす
クスクン [⸢kusu̥kuŋ]他動{1}腰紐に差し込んで着る。下紐に差し込む。
クスクン [⸢kusu̥kuŋ]他動{2}腰に差して携行する。腰に差し込んで持ち運ぶ。
クズズー [⸣kuʣuʣuː]去年中。昨年中。
クスックレー [ku̥⸢suk⸣kureː]くしゃみをする時に唱える{呪}{マジナイ}。くしゃみをすると、これを唱えて魔物を祓う。一説に「休息万命<くそくまんみょう>」、略して「休息命<くそくみょう>」とも。
グスミクン [gu⸢sumi⸣kuŋ]自動痰が絡まって激しく咳き込む。喉がジェージェーと鳴るように激しく咳き込む。
グスル ピクン [gu⸢suru⸣ pi̥⸢kuŋ]痰が気管に詰まって呼吸のたびにゼイゼイと異常音が聞こえる。
グズルン [gu⸢ʣu⸣ruŋ]他動くすぐる(擽る)。腋の下を刺激してむずがゆい感じを起こさせる。「擽、己曾久留(こそくる)」『新撰字鏡』の転訛したもの。
グスローッティ [gusu⸢roːtti]ごそっと。硬い物が一気に崩れてこすれるさま。
クスン [ku̥⸢suŋ]他動越す。引っ越す。移転する。
クスン [ku̥⸢suŋ]他動こす(漉す)。
グソー [⸣gusoː]後生。死後の世界。後の世。「後生」の転訛したもの。グ⸢ソーン⸣プス[gu⸢soːm⸣pu̥su](後生の人。死者。死出の旅)などという。
グソーシタフ [gu⸢soːʃita⸣ɸu]後生(あの世)へ行く支度。死者に着せる着物。しにしょうぞく(死装束)。
グソータビ [gu⸢soː⸣tabi]死出の旅。死ぬこと。亡くなる。
グソーヌ パナ [gu⸢soː⸣ nu⸣pana](植)ブッソウゲ(仏桑花)。ハイビスカス。戦前は多く墓地に植栽され、墓前に供えられる花であったのでそういう。屋敷内にはほとんど植栽されなかった。
グソーヌプス [gu⸢soːnu⸣pu̥su]後生の人。あの世の人。死者。マ⸢ジムヌ[ma⸢ʤimunu](マジモノ。魔物)は「死者が悪霊と化したもの」をさすのに対し、グ⸢ソーヌ⸣プスは、守護霊をさす場合が多く、先祖の霊に対して用いられる。
グターッティ [gutaːt⸢ti]ぐったり。ぐたっと。
グタイ [⸣gutai]五体。身体を構成する五つの部分。転じて身体。頑健な体格。
グタイ ヌギルン [⸣gutai nu⸢gi⸣ruŋ]ぐったり疲れる。全身の力が抜ける。体力が消耗する。疲労困憊する。
クタイルン [ku̥⸢tai⸣ruŋ]他動答える。返事をする。ピントースンとも言う。
クタイルン [ku̥⸢tai⸣ruŋ]自動身にしみる。骨身にしみる。体にこたえる。くたびれる。
クダキ [ku⸢da⸣ki]かけら。砕けた欠片。砕け米。クダ⸢ケー⸣マ[kuda⸢keː⸣ma](細かい欠片)ともいう。
クダキムヌ [ku⸢daki⸣munu]破片。砕片。「砕け物」の義。
クダキルン [ku⸢daki⸣ruŋ]自動砕ける。ス⸢クッチルン、⸢バッツァールンとも言う。
クダクン [ku⸢da⸣kuŋ]自動{PoS_1}砕ける。
クダクン [ku⸢da⸣kuŋ]他動{PoS_2}砕く。ス⸢クッツァスンとも言う。
クダケーマ [ku⸢dakeː⸣ma]小さな破片。細片。
クダシ [ku⸢daʃi]下痢。腹下し。「下し」の義。
クダシフチル [ku⸢daʃiɸu̥ʧiru]下し薬。下剤。
クダスン [ku⸢dasuŋ]自動下痢する。下す。
グダランケーリ [gu⸢daraŋkeː⸣ri]青々と。葉野菜などが青々と生い茂っているさま。瑞々しく。
クダルン [ku⸢da⸣ruŋ]自動{1}下る。「美豆保国乎 安麻久太利~<瑞穂の国を天下り>『万葉集 4094』」の義。⸣ウルン、ウ⸢リ⸣ルンとも言う。
クダルン [ku⸢da⸣ruŋ]自動{2}北(沖縄本島)から南(八重山・鳩間島)へ「下る」。「安麻射加流 比奈爾久太理伎<天離る鄙に下り来>『万葉集 3962』」の義。/ヤイマシマ クダリヨーリヨー ウフイサナキ クダリヨーリヨー ハーリ アミタボリ リューガナシ/(八重山島へ下って御出で下さい。大石垣へ下って御出でください。ハーリ、雨を降らせて下さい竜神さま)。/バガパトゥマ クダリヨーリヨー フナバマニ フナシキヨー ハーリ アミタボリ リューガナシ/(鳩間島に下られて、船原浜に船着きなされ、ハーリ雨を降らせてください竜神さま)「アマングイ<雨乞い神歌>」『鳩間島古典民謡古謡集』
クタンディ [ku̥⸢tan⸣di]疲れはて。疲れ果てること。疲労困憊。「くたびれ(草臥れ)」の義。「憔悴、クタハル」『類聚名義抄』の連用形から転成名詞化したもの。
クタンディノーシ [ku̥⸢tandinoː⸣ʃi]疲れ直し。くたびれなおし。田植えや稲刈りなど重労働で疲れ果てた体を休めるために酒食をとること。
クタンディルン [ku̥⸢tandi⸣ruŋ]自動疲れ果てる。くたびれる(草臥れる)。「憔悴、クタハル」『類聚名義抄』の転訛したもの。
クタンドゥン [ku̥⸢tan⸣duŋ]自動疲れ果てる。くたびれる(草臥れる)。ク⸢タンディ⸣ルンとも言う。
グタンブー [gu⸢tambuː]五反帆の帆船。長さ七尋(約12.6m)、幅二尋二尺五寸(約4.35m)の船。
クチ [⸣ku̥ʧi]骨。死者の骨。
グチ [⸣guʧi]文句。小言。ぐち(愚痴)。不平不満。言っても仕方の無いことを言って嘆くこと。
クチカミ [⸣ku̥ʧikami]骨壷。洗骨葬をした後に骨を納める甕。「骨甕」の義。
クチグヮー [ku̥⸢ʧi⸣gwaː](海底地名)。「小津口」の義。⸢ウーグ⸣チ[⸢ʔuːgu⸣ʧi](大津口)と⸢クー⸣シビー[⸢kuː⸣ʃibiː](クーシ干瀬)の間にある小さな干瀬の入り口。水深が浅いのでカツオ漁船は、平時は使用しない。大潮の満潮時に利用することがある
クチサ [ku̥⸢ʧi⸣sa]苦しさ。苦しみ。苦労。
クチサ スン [ku̥⸢ʧi⸣sa ⸢suŋ]苦しむ。「苦しさ・する」の転訛したもの。
クチサン [ku̥⸢ʧi⸣saŋ]苦しい。精神的にも肉体的に苦しいときにいう。
グチ スン [⸣guʧi ⸢suŋ]文句をいう。苦情を言う。不平不満をいって反抗する。強情になる。
クチタルン [⸣ku̥ʧitaruŋ]自動朽ちる。朽ち溶ける。
クチプサイ [⸣ku̥ʧi pu̥⸢sai]骨を拾うこと。骨拾い。洗骨した骨を拾って骨壺に納めること。
クチプニ [⸣ku̥ʧipuni]遺骨。死者の骨。「こつほね」の義。
グチホー [gu⸢ʧi⸣hoː]無鉄砲な者。むやみやたらにする人。強引な人。粗野な人。
グチホーニ [gu⸢ʧi⸣hoːni]無鉄砲に。力任せに。むやみに。強引に。無礼に。
クチャ [⸣ku̥ʧa]土壌の名。腐植土。
クチラクン [ku̥⸢ʧirakuŋ]自動打開する。切り開く。斡旋する。助言する。口添えする。世話する。「口開く」の転訛か。
クチルン [ku̥⸢ʧi⸣ruŋ]自動朽ちる。物が腐食して壊れる。⸢Cuchi,tçuru,itaクチ,ツル,チタ(朽ち,つる,ちちた)腐る.多くの場合樹木,竹,材木に関して言う.」『邦訳日葡辞書』の転訛か。
クツァスン [ku̥⸢ʦa⸣suŋ]他動腐らせる。くたす(腐す)。腐敗させる。木の葉や茅、ススキなどを積んで腐らせ、堆肥を作る。
グツァバ [gu⸢ʦa⸣ba]皮膚病の名。たむし<田虫。頑癬>。白癬菌の寄生によって生じる皮膚病。老年層は、ウ⸢ルプトゥ⸣キ[ʔu⸢ruputu⸣ki](たむし)ともいう。
グッカン [guk⸢kaŋ]極寒。非常に寒いこと。
クッチルン [⸢kutʧiruŋ]自動崩壊する。ばらばらに崩れる。⸣クツンとも言う。
クッツァー [⸢kut⸣ʦaː]これら。指示代名詞ク⸢リ[ku⸢ri](これ)の複数形。ク⸢リ⸣ター[ku⸢ri⸣taː]の転訛。
クッツァースン [⸢kutʦaː⸣suŋ]他動ばらばらに崩す。ばらばらに破壊する。めちゃくちゃにする。
クッツン [⸢kutʦuŋ]自動崩壊する。ばらばらに崩れる。「くづる<下二段活用>。勢多の橋みなくづれて」『更級日記』の転訛か。⸢クッツンとも言う。
グッふァグッふァシ [guf⸢faguffa⸣ʃi]重そうに。
グッふァン [⸢guf⸣faŋ]重い。
グッふァンギサン [⸢guf⸣faŋgisaŋ]重そうだ。
クツン [⸣ku̥ʦuŋ]自動朽ちる。「くつ<上ニ段活用>」の四段活用化したもの。「獨寝等 薦朽目八方<独り寝<ぬ>と薦朽ちめやも>『万葉集 2538』」の義。
クティ [⸣ku̥ti]異なること。別。別物。別個。
クティ ナスン [⸣ku̥ti ⸣nasuŋ]別にする。別物にする。「異(こと)になす」の転訛したもの。
クティナビ [ku̥⸢ti⸣nabi]別鍋。病人食や特別な他人を接待するために食事を作ること。特別炊飯。「ことなべ<異鍋>」の義。
クティバタ [ku̥⸢ti⸣bata]腹違い。異腹。「ことはら」の義。
クティムニ [ku̥⸢ti⸣muni]別の言葉。二枚舌。
クティムニ ユクムニ [ku̥⸢ti⸣muni ⸣jukumuni]事実と異なる言葉。別の言葉。うそ(虚言)。
クティムヌ [ku̥⸢ti⸣munu]別物。
クディン [⸣kudiŋ]要領。こつ<骨>。かんどころ。秘訣。「くでん<口伝>」のように、意味派生したものか。
クティンクティン [⸣kutiŋkutiŋ]別々。
クディン トゥルン [⸣kudin ⸣turuŋ]機嫌を取る。
クトゥ [⸣ku̥tu]{1}事。ことがら。様子。⸢イークトゥ[⸢ʔiːkutu](良いこと)、ヤ⸢ナクトゥ[ja⸢nakutu](悪いこと)のように形容詞の語幹について名詞をつくる。
クトゥ [⸣ku̥tu]{2}事件。異変。異様なことがら。
クトゥ [⸣ku̥tu]琴。
クトゥ [⸣ku̥tu]接助~したところで~ない。~しても~ない。活用語の過去形に下接して未来の動作、作用を逆態接続的に表す。後続の文や句が先行する文や句の予想や推論と異なる接続表現。
クトゥ [ku̥⸢tu]接頭別の。他の。「こと(異)」の義。
グトゥ [⸢gu⸣tu]接尾~たびに。~毎に。動詞の終止形に付いて、「その度に~」の意味を表す。
グトゥイ [⸣gutui](動)力の強い牡牛。こというし(特牛)。耕牛。「事負乃牛之 倉上之瘡<ことひの牛の鞍の上の瘡>」『万葉集 3838』。⸢特牛、俗語云、古度比<ことひ>」『和名抄』。「Cotoi、コトイ<特牛>『邦訳日葡辞書』」。「こてい『混効験集』」の転訛したもの。
クドゥキ [ku⸢du⸣ki]口説。ク⸢ドゥ⸣キンともいう。琉歌の一形態。長歌形式で七、五調の連続を基調にした一定の曲調の歌謡。/サティムユタカヌ パトゥマムラ フーキマンプク ウチチジク ユユムカワラヌ パトゥマムラ/<さても豊かな鳩間村富貴万福うち続く世々に変わらぬ鳩間村>「鳩間本口説」。/ギニヤユタカヌ パトゥマムラ シマヌナガリユ ミワタシバ ルクヌイチジニ チカクアリ。(囃子)イヤイーヤ ウスーメーデー ガルマキウラリティ ウヤクチョーデー トゥジックヮ ヤシナティ ムラトゥンワブクニ ワルビトゥシユリ カンカウドゥクヌ ムジキナムヌサミ ンゾサソーリバ ティンヌミグミヌ ウヤキパンジョー アラシミセユサ ナマヌパヤシニ クドゥキユミユミ/<誠に豊かな鳩間村、島の形(流れ)を見渡すと禄の一字に字画あり。囃子。いやいーや、御主みへていがらみち おらりて親と兄弟妻子を養て村とん和睦に、童年寄 {鰥寡孤独}{カン|カ|コ|ドク}のもちきなものまで無蔵さ志うり王、天の恵みのうやき繁盛阿らしみ志へよさ、今の囃子に口説きを歌おう>「鳩間口説」。/バンドゥパトゥマニ ナウタチュル インダシクドゥン クヌシマヌ トゥシヌシジャガタ バンドゥヤル/<私が鳩間に名だたる伊武田筑登之で、この島における年長者(長老)とはこの私である>「伊武田口説」『鳩間島古典民謡古謡集』などがある
クドゥキパヤシ [ku⸢dukipaja⸣ʃi]⸢口説」の中の「囃子」の部分。舞い方が舞いながら三味線に合わせて唱えるもの
クトゥキム [ku̥⸢tu⸣kimu]{脇心}{ワキ|ゴコロ}。別心。「異肝」の義。他の男や女に惹かれる心。あたしごころ。
グトゥク [gu⸢tu⸣ku]「五徳」の義。⸣シチリン[⸣ʃiʧiriŋ](七輪)やウ⸢ブピバ⸣チ[ʔu⸢bupiba⸣ʧi](大火鉢)の中に鉄瓶などをかける輪型の三脚。老人のいる家では、冬期になると五徳に⸣ヤコン[⸣jakoŋ](薬缶)をかけて炭火を起こし、湯を沸かして飲むのが楽しみといわれた。
クトゥケン [ku̥⸢tu⸣keŋ]日頃。平常。平生。普段。いつも。常日頃。「今回とは別の時」の意。「異時」の義『八重山語彙』。現在の異常な状態を取り上げて話す際に、現在が特異な状態であり、現在以外の時、つまり「異時」が正常であるという意で、「日頃、平常」の意味となる。
クトゥサラ [ku̥⸢tu⸣sara]わざわざ。わざと。故意に。特に。「殊更」の転訛したもの。
クトゥシ [ku̥⸢tuʃi]今年。「是歳、コトシ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
クトゥジキルン [ku̥⸢tuʤiki⸣ruŋ]他動人に頼んで言いやる。伝言する。「ことづける<言付ける>」の転訛。人に頼んで物を届ける。
クトゥバ [ku̥⸢tu⸣ba]言葉。標準語からの転訛。普通は、⸣ムニ[⸣muni](ことば<物言い>)という。宮古、八重山の諸方言に対しては、⸢メークムニ[⸢meːkumuni](宮古ことば<物言い>)。
クトゥバルン [ku̥⸢tu⸣baruŋ]他動断る。拒絶する。辞退する。
クトゥプス [ku̥⸢tu⸣pu̥su]別人。別の人。他人。「異人」の義。「ことひとと見なさむは『源氏物語 胡蝶』」の義。
クトゥムニ [ku̥⸢tu⸣muni]別のことば。別言。
クトゥムヌ [ku̥⸢tu⸣munu]別物。こともの(異物)。別の物。
クトゥムヌユクムヌ [ku̥⸢tu⸣munu ⸣jukumunu]異物・別物。別件の重言(畳語)。ABCDEFCD型の重言。
クトゥヤッサン [ku⸢tujas⸣saŋ]たやすい(容易い)。易しい。簡単である。容易である。「事易さ・あり」の融合変化したもの。
クトゥワキ [ku̥⸢tu⸣waki]謝罪。詫び。言い訳。弁解。「ことわけ(事訳)」の義。
クトゥワザ [ku̥⸢tu⸣waʣa]ほかのこと。別のこと。余事。他事。「異業(Vaza『邦訳日葡辞書』)」の義。
クトゥワリ [ku⸢tu⸣wari]{1}断り。拒絶すること。老年層はク⸢トゥ⸣バリ[ku̥⸢tu⸣bari](断り)という。
クトゥワリ [ku⸢tu⸣wari]{2}申し訳。言いわけ。事前に理由を告げること。
クナー [⸣kunaː]此処に。⸣クマナ[⸣kumana](ここ・に)の縮約転訛したもの。
クナー [⸣kunaː]接尾くらべ(競べ)。競争。「くら(競)」の転訛。動詞の連用形に下接して「競争する」意に用いる。
クナイルン [ku⸢nai⸣ruŋ]他動こらえる(堪える)。忍耐する。我慢する辛抱する。
クナシダー [ku⸢naʃidaː]よく耕した田。何度も耕し、土を砕いて柔らかくした田。「こなし<熟し>田」の義。「Conaxi<こなし>、Tçuchiuo conasu<土をこなす>『邦訳日葡辞書』」の義。
クナスン [ku⸢nasuŋ]他動{1}こなす(熟す)。土を砕いて細かくする。「Conaxi<こなし>、Tçuchiuo conasu<土をこなす>『邦訳日葡辞書』」の義。
クナスン [ku⸢nasuŋ]他動{2}煮た芋などを捏ねる。粉などに水分を加えて捏ねる。
クナフチル [ku⸢naɸu̥ʧi⸣ru]粉薬。散薬。ミ⸢ジフチ⸣ル[mi⸢ʤiɸu̥ʧi⸣ru](水薬)の対義語。
クナリルン [ku⸢nariruŋ]自動こなれる(熟れる)。細かくなる。砕かれて粉になる。
クナルン [ku⸢naruŋ]自動こなる(熟る)。こなれる。
グナン [gu⸢naŋ]五男。
クニ [ku⸢ni]{1}国。⸢フン[⸢ɸuŋ](国)ともいう。「須賣呂伎乃 之伎麻須久爾能<天皇の敷きます国の>『万葉集 4122』」の転訛。
クニ [ku⸢ni]{2}生まれた国、故郷。「鴈鳴者 本郷思都追(雁がねは本郷<くに>思ひつつ)『万葉集 4144』」の義。/クニムトゥヌ マブルシュー アミブシャヌ ウヤムトゥヌ カミガナシ アミブシャヌ/(国もと<鳩間島>の守り神様、雨が欲しいです。親元先祖代々の神様、雨が欲しいです)『鳩間島古典民謡古謡集』
クニチ [ku⸢niʧi]九日。老年層は、ク⸢クヌ⸣カ[ku̥⸢kunu⸣ka](九日)ともいう。
グニチ [gu⸢niʧi]五日。老年層は、⸢イシゥ⸣カ[⸢ʔisi̥⸣ka](いつか<五日>)ともいう。
クニチヨイ [ku⸢niʧijoi]九月九日の祝い。重陽の節句の日に村では酒に菊を浮かべて⸢ウン⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[⸢ʔun⸣nu ⸢niŋ⸣gai](甘藷の豊作祈願)とタ⸢ク⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[tḁ⸢ku⸣nu ⸢niŋ⸣gai](蛸の豊漁祈願)が行われる。各家庭でも芋の豊作と蛸の豊漁を祈願して菊酒が振舞われた。
クヌ [ku⸢nu]連体この。
クヌウイ [ku⸢nuʔui]{PoS_1}このうえ<これ以上>。
クヌウイ [ku⸢nuʔui]{PoS_2}さらに。この上。
クヌウチ [ku⸢nuʔu⸣ʧi]その内。間もなく。やがて。近日中に。
クヌグル [ku⸢nu⸣guru]このごろ。近頃。最近。「穂に出し君が見延奴己能許呂<見えぬ此の頃>。万、3506」の転訛。
クヌ シキ [ku⸢nu⸣ ʃi̥ki]この月。今月。
クヌシキ [ku⸢nu⸣ʃi̥ki]九ヶ月。
クヌシチ [ku⸢nuʃi̥ʧi]このたび。今回。このごろ。近頃。「此の節」の義。
クヌスク [ku⸢nu⸣su̥ku]これほど(是程)。これくらい。この程度。こんなにまで。
クヌック [ku⸢nuk⸣ku]九個。
クヌッコー [ku⸢nuk⸣koː]こんな(このざま)。このようなありさま。連体詞的に、下に省略された悪い意味内容の名詞を修飾する。
クヌッチ [ku⸢nut⸣ʧi]九つ。九歳。ク⸢クヌ⸣チ[ku̥⸢kunu⸣ʧi](九つ)の縮約形。
クヌティー カヌティー [ku⸢nutiː⸣ ka⸢nutiː⸣]あの手この手。「此の手・彼の手」の義。いろいろと手段を講じること。
クヌトゥール [ku⸢nutuː⸣ru]このとおり(此の通り)。同様。
クヌトン [ku⸢nu⸣toŋ]連体詞クヌ[kunu](この)に、場所を表すトン[toŋ](所)が付いた(この所。ここ。此の場所)。ウ⸢ヌ⸣トン[ʔu⸢nu⸣toŋ](その所。そこ)、カ⸢ヌ⸣トン[ka⸢nu⸣toŋ](あの所。あそこ)の対義語。
クヌマーマ [ku⸢nu maː⸣ma]このまま(此の儘)。今のまま。
クヌママ [ku⸢numa⸣ma]このまま。今のまま。
クヌムン [ku⸢nu⸣muŋ]他動{1}好む。好きである。
クヌムン [ku⸢nu⸣muŋ]他動{2}企てる。もくろむ。計画する。たくらむ。考え出す。
クヌ ユー [ku⸢nu juː]この世。現世。
クヌヨーナ [⸣kunujoːna]連体このような。
クヌヨーニ [⸣kununoːni]このように。
クヌヨーヌ [⸣kunujoːnu]連体このような。こういう。こんな。かかる。若年層は、⸣クヌヨーナ[⸣kunujoːna](このような)ともいう。
クノー スン [ku⸢noː suŋ]苦悩する。苦しみ悩む。標準語からの借用語。
クバ [ku⸢ba](植)ビロウ(蒲葵)。古名、あじまさ。ヤシ科の一属で亜熱帯性常緑高木。高さ約15メートルに達するという。びんろう(檳榔)樹とは別属。葉は円形で直径約1メートル。掌状に分裂して幹頂に叢生する。鳩間中岡<なかもり>には蒲葵の群落があったが、明治の中期に測量のため伐採されという。民謡パ⸢トゥ⸣マナカムリ[pa⸢tu⸣manakamuri](鳩間中岡)に歌われて有名である。また蒲葵は神木、神のよりしろ(依代。憑代)といわれており、友利御嶽の拝殿の側にも高さ十数メートルの蒲葵が一本自生している。口碑によると、この蒲葵の樹を伝って神が降臨されるという
クバークバーシ [kubaː⸢kubaː⸣ʃi]不器用で。危なっかしく。たどたどしく。
クバーン [ku⸢baː⸣ŋ]{1}仲が悪い。そり<剃り>が合わない。
クバーン [ku⸢baː⸣ŋ]{2}不器用である。のろい<鈍い>。動作、作業がおそい。不慣れである。未熟である。
クバイゾー [⸣kubaiʣoː]地名。クーラ川河口の右方、伊武田寄りの低丘陵地。ク⸢バシ⸣ター[ku⸢baʃi̥⸣taː]からクーラ川河口へ下りてきた所の右側。ク⸢バシ⸣ターから産出する稲の積み出し地(⸢ニー⸣ウレー{SqBr}⸢niː⸣ʔureː{/SqBr}<荷下ろし所>)。
クバイルン [ku⸢bai⸣ruŋ]他動加える。
グハイロー [⸣guhairoː]⸢ご拝領」の転訛した語。昭和五十年ごろから長寿者に対して官(町長)から贈られるようになった金杯。村をあげて長寿を祝い、村民が長寿を肖った。
クバオンギ [ku⸢baoŋgi]ビロウ(蒲葵)の葉で作ったうちわ(団扇)。ク⸢バ[ku⸢ba](蒲葵)の葉を切って2,3日陰干しにした後、水を打って押し板で押し拡げ、一枚の葉を二等分にし、半円形に成形して団扇に仕上げたもの。軽くて、よく風を送るので最高の団扇である。長持ちするし、母親がこの団扇で子供の背中や腹部を軽く撫でつつ扇いでやると誠に気持ちがいい。夏の夜など縁側で子供を寝かせながら、サーッ、サーッと扇いでくれる母親の側で、子供は平和で幸福な眠りにつくのが常であった。生の蒲葵の葉扇は死者の扇と言われている。
クバガサ [ku⸢bagasa]かさ(笠)。蒲葵の葉で作った笠。「クバ(蒲葵)笠」の義。農耕用の笠は肩幅を覆うほどに笠のつば<鍔>が広く、漁師用の笠は、つば<鍔>が狭いのでカツオ釣などの船上での作業に適していた。農業用の笠は、蒲葵の葉で作った⸣ミヌ[⸣minu](蓑)と一対をなすものであった。蒲葵笠は通風がよくて涼しく、炎天下での作業に適していた。ク⸢バガサは、意味が拡張して笠一般を示すようになり、⸢ムン⸣グルクバガサ[⸢muŋ⸣gurukubagasa](麦藁の笠。沖縄本島からの輸入製品)、タ⸢キヌ⸣カークバガサ[tḁ⸢kinu⸣kaːkubagasa](竹の皮笠。台湾や本土からの輸入製品)のように複合語を作って他の製品の⸢笠の名」に用いられた。輸入品は島で作るクバガサ(蒲葵笠)のように実用的でなかった。
クバクシキ [ku⸢bakuʃi̥ki]クバ甑。ク⸢バ[ku⸢ba](蒲葵)の幹を刳り抜いて作った、直径約30センチ、高さ約60センチの円筒状の甑。糯米を蒸して⸢カシ⸣キ[⸢kaʃi⸣ki](こわ飯)を作ったり、麦、粟、豆などを蒸すのに用いた。⸢ミー⸣ス[⸢miː⸣su](味噌)やシ⸢タ⸣ディ[ʃi̥⸢ta⸣di](醤油。下地。「助枝、之太知」『倭名類聚鈔』)の麹を作る際に穀類を蒸して煮るのにも用いた。
クバサンシン [ku⸢basaŋʃiŋ]クバ(蒲葵)の葉柄で作った三味線。蒲葵の柄三味線。子供の玩具として作った。
クバシター [ku⸢baʃi̥⸣taː](地)西表島北岸伊武田地区の山裾の原野にある水田地帯。タ⸢カ⸣スクの原野からクーラ川に台地が緩やかに傾斜していき、川岸で急に台地が落ち込んでいる。その原野の中間に谷状に窪んだ所がある。そこを開拓して水田にしたところをいう。幅約80メートル、長さ約1500メートルの谷間の上流部に、カ⸢ザケー[ka⸢ʣakeː](加治工家)と、イ⸢ラ⸣ブレー[ʔi⸢ra⸣bureː](西原家)の水田があった。
クバスン [ku⸢ba⸣suŋ]他動こぼす(零す)。
クバデーサー [ku⸢badeː⸣saː](植)樹木の名。モモタマナ(コバデイシ)。冬になると落葉する高木で、高さ20メートル以上に達する。建築材、家具材、造船材に利用される。墓地に植える木とされ、屋敷に植えることを嫌った。
クバヌ ウディ [ku⸢banu⸣ ʔudi]ビロウ(蒲葵)の葉柄。子供は枯れた蒲葵の葉柄を切って約20センチの舟を作り、竹ひごで帆柱を作って立て、フ⸢クン[ɸu̥⸢kuŋ](福木)の葉で帆を作って帆柱に貫き差し、竹を削って梶を作り船尾に挿して海に浮かべ、帆走させて遊んだ。
クバヌパーウムル [ku⸢banupaːʔumuru]ビロウ(蒲葵)の葉で作った、水を汲む容器、ひしゃく(柄杓)。下り井戸から湧水を汲み取るのに用いた柄杓。ク⸢バヌパーシル[ku⸢banupaːʃiru](蒲葵の葉釣瓶)に似た、小さな釣瓶の柄杓。
クバヌパーオンギ [ku⸢banupaːʔoŋ⸣gi]ビロウ(蒲葵)の葉で作った扇。うちわ(団扇)。ク⸢バンパーオンギ[ku⸢bampaːʔoŋgi](蒲葵の葉扇)ともいう。ク⸢バオンギ[ku⸢baʔoŋgi](蒲葵団扇)と同じ。
クバヌパーシル [ku⸢banupaːʃiru]ビロウ(蒲葵)の葉で作った釣瓶。ク⸢バンパーシル[ku⸢bampaːʃiru](蒲葵の葉釣瓶)ともいう。⸢蒲葵の葉釣瓶」の義。蒲葵の葉を葉柄(長さ約30センチ)ごと切って2、3日陰干しにした後、水を打って柔らかくし、両膝で押して葉の部分を丸く曲げて絞り込み、葉柄を曲げて絞り込んだ葉の部分に強く結びつけて釣瓶に仕上げたもの。その釣瓶に縄を結んで井戸から湧水を汲みあげた。釣瓶の絞込みの部分に小石を結わえておくと、釣瓶が一定の方向に傾くので水汲みに便利であった。
クバヌパームチ [ku⸢bampaːmuʧi]ビロウ(蒲葵)の葉で包んだ餅。⸢蒲葵の葉餅」の義。与那国島の特産の餅。鳩間島ではバ⸢サン⸣パームチ[ba⸢sam⸣paːmuʧi](芭蕉の葉で包んだ餅)、サ⸢ミンパームチ[sa⸢mimpaːmuʧi](月桃の葉餅)がよく作られた。
クバフニ [ku⸢baɸuni]玩具の名。クバ(蒲葵)の葉柄で作った舟。上部を削り、福木の葉を竹箸で通して差し、竹で梶を作って海に浮かべたり、水に浮けたりして遊んだ。
クバミルン [ku⸢bami⸣ruŋ]他動節約する。倹約する。少しずつ分けて出す。小まめに出す。ク[ku](小)に接尾語バム[bamu](そのような性質、状態を帯びる意)が付いてク⸢バ⸣ムン[ku⸢ba⸣muŋ](小さく分ける。節約する)が形成され、そのラ行四段化したものか。
クバムトゥ [ku⸢bamutu]ビロウ(蒲葵)の幹。⸢ウイヌ⸣ウガン[⸢ʔuinu⸣ʔugaŋ](友利御嶽)の⸢パイ⸣ディン[⸢pai⸣diŋ](拝殿)の側に一本のク⸢バ[ku⸢ba](蒲葵)が生えている。その蒲葵の、クバ⸢ムトーラ⸣ル ⸢カンヌマイ⸣ヤー ウリ⸢オー⸣ルツォー[ku⸢bamutoːra⸣ru ⸢kannumai⸣jaː ⸣ʔuri ⸢ʔoː⸣ruʦoː](蒲葵の幹を伝って<蒲葵本から>神様は降臨される<降りて来られる>そうだ)
クバムニ [ku⸢ba⸣muni]{1}たどたどしいィ話し方。片言。ろれつ(呂律)の回らない話し方。「こわ物言い」の義。
クバムニ [ku⸢ba⸣muni]{2}筋の通らない、おかしな話。
クバムン [ku⸢ba⸣muŋ]他動節約する。倹約する。少しずつ分けて蓄える。
クバメーカバメー スン [ku⸢ba⸣meːkabameː ⸢suŋ]倹約節約し、小出しにして使う。金銭や食品などを倹約して、少しずつ使うこと。ABCDEBCD型の畳語(重言)。
クバヤマクイチブシ [ku⸢bajamakuiʧi⸣buʃi]石垣島の古典民謡「久場山越地節」。
クバリピラク [ku⸢baripira⸣ku]凍えるような寒さ。厳しい寒さ。「こはばり(強張り)・冷え」の転訛したものか。ク⸢バリピラ⸣フ[ku⸢baripira⸣ɸu](凍えるような寒さ)ともいう。
クバリンガター ナリ ブー [ku⸢bariŋ⸣gataː na⸢ri⸣ buː]凍えそうになっている。
クバルン [ku⸢ba⸣ruŋ]自動{1}凍える。かじかむ。寒さで硬直する。「こわばる<強張る>」の転訛したもの。
クバルン [ku⸢ba⸣ruŋ]自動{2}吃る。
クバルン [ku⸢ba⸣ruŋ]自動こぼれる(零れる)。あふれおちる(溢れ落ちる)。
クバルン [ku⸢ba⸣ruŋ]他動{1}配る。手配する。手配りする。標準語からの転訛。
クバルン [ku⸢ba⸣ruŋ]他動{2}配布する。分配する。配る。老年層は⸢パウン[⸢pauŋ](配る)ともいう。
クバン [⸣kubaŋ]神饌の一つ。昔は牛肉の薫製を用いたというが、戦争直前ごろから魚の薫製を用いるようになったという。燻製の魚肉を約1センチ角で長さ約10センチに切ったもの。それを7本、または9本に束ねてクバン皿に入れ、塩とピ⸢ル[pi⸢ru](大蒜)三片を添えたもの。クバンを束ねたものを、ム⸢リクバン[mu⸢rikubaŋ](盛りクバン)という。
クバン [ku⸢baŋ]「小判」の義。カツオ(鰹)の大きさを示す語。4、5斤ほどのカツオ。それより小さいカツオをビ⸢リ⸣グヮー[bi⸢ri⸣gwaː](最小のカツオ)という。⸢ダイ⸣バン[⸢dai⸣baŋ](大判)は12、3斤のカツオ。トゥ⸢ビダイ[tu⸢bidai](超大判)は15、6斤以上のカツオをいう。
クバンパーッスン [ku⸢bampaːssuŋ]ビロウ(蒲葵)の葉包み。味噌や漬物、魚などの焙乾したものを蒲葵の葉で包んでお土産としたもの。
クバンパービー [ku⸢bampaːbiː]蒲葵の葉樋。蒲葵の葉を桑や福木の幹に巻きつけて、樹木に降った雨水を受けて水甕に導くようにしたもの。
クビ [ku⸢bi]壁。「壁、加閉<かべ>、室之屏蔽也」『和名抄』の転訛したもの。
クビ [⸣kubi]これだけ。これ位。これほど。体積や量の程度を表す。
クビダキ [⸣kubidaki]これだけ。これしき。量的少程度。
クビタンガ [kubi⸢taŋ⸣ga]これだけ。「これ一つ」の義。「これだけ」と限定・強調する表現。クビ⸢カーニル[kubi⸢kaːniru](これだけしか<これだけぞ>)ともいう。
クビッチン [ku⸢bit⸣ʧiŋ]これぼっち。
クビブカラ [⸣kubibukara]これ位。この程度。このくらい(両手で形を限定して指し示す)。⸣ウビブカラ[⸣ʔubibukara]<それくらい。やや漠然と示す>よりも明確に明示的に指示する表現。名詞⸣クビ[⸣kubi](これだけ)に副助詞⸣ブカラ[⸣bukara](くらい。体言、活用語の連体形、格助詞などについて、おおよその程度、分量、範囲を表す)の付いた形。
クビラナー [ku⸢bira⸣naː]イカを餌にしてカジキやヒラクサー、サバ(鱶)などを釣る際に用いる釣り縄。
クビン [⸣kubiŋ]瓶。「Quafinクヮヒン」『邦訳日葡辞書』の転訛したものか。
クビンヌ ザウ [ku⸢bin⸣nu ⸣ʣau]瓶の栓。
クビンヌ バリ [ku⸢bin⸣nu ba⸢ri]ガラス製瓶の破片。「瓶の割れ」の義。
クブ [⸣kubu](植)海草の昆布。干し昆布。本土から輸入された。クブは昔から祝儀、不祝儀の料理に欠く事の出来ない食材である。ク⸢ブ⸣マキ[ku⸢bu⸣maki](魚の昆布巻き)やム⸢スビクブ[mu⸢subikubu](大きな結び昆布)の料理にしたり、炒め物に入れたりして食した。また、正月には⸢ザー⸣トゥク[⸢ʣaː⸣tuku](床の神)に供える、こうだて(甲立て)したジ⸢ブ⸣ク[ʤi⸢bu⸣ku](重箱)のパ⸢ナン⸣グミ[pa⸢naŋ⸣gumi](花米)の上に立てて、その家に慶事が招来されることを祈願する。
クブ [⸣kubu]こぶ(瘤)。たんこぶ。筋肉が異常に固まって盛り上がったもの。
クブ [⸣kubu](動)くも(蜘蛛)。若年層は、⸣クム[⸣kumu](蜘蛛)ともいう。
グフーク [gu⸢ɸuː⸣ku]ご奉公。主家に対して奉仕すること。他家に住み込んで家事、家業に従事すること。
クブイラキ [ku⸢bu⸢ʔira⸣ki]昆布の炒め物。昆布を細かく下ろし、蒲鉾や魚、コブシメ、野菜などと一緒に炒めた料理。祝儀料理にも不祝儀料理にも調理された一般的な料理。「昆布煎り」の転訛したもの。イ⸢ラキ⸣ムヌ[ʔi⸢raki⸣munu](炒め物<煎り物>)ともいう。
グブグブ [gu⸢bugubu]互角。半分。確率五分。優劣のつけられないさま。「五分五分」の義。
グブトゥール [gu⸢butuːru]灯心が五分幅のランプ。「五分灯籠」の義。若年層はグ⸢ブ⸣ランプ[gu⸢bu⸣rampu](五分ランプ)と言っていた。
クブヌ シー [ku⸢bu⸣nu ⸣ʃiː]蜘蛛の巣。古老は⸣グブンダニヌ ⸣シー[⸣gubundaninu ⸣ʃiː](蜘蛛の巣)という。
クブマキ [ku⸢buma⸣ki]昆布巻き。魚肉や烏賊、蛸を芯にして昆布で巻き、味付けをして煮付けたもの。
クブミ [ku⸢bumi]くぼみ(窪み)。
グブリー [gu⸢bu⸣riː]ご無礼。失礼。
グブローッティ [guburoːt⸢ti]一気に水を流し込むさま。
グブンダニ [⸣gubundani](動)蜘蛛(古老のことば)、『八重山語彙』。⸣クブ[⸣kubu](蜘蛛)ともいう。
クマ [⸣kuma]こま(独楽)。子供の玩具。
クマ [⸣kuma]ここ(此処)。場所を表す。空間的に話し手のいる所、また、それにごく近い所を指す。近称の代名詞。⸣ウマ[⸣ʔuma](そこ<其処>。中称)、⸣カマ[⸣kama](あそこ。遠称)の対義語。「此・間<コ・マ>」の義。
グマ [⸣guma](植)。ごま(胡麻)。うごま(胡麻)。「胡麻、五万、訛云、宇古末(うごま)」『和名抄』の転訛したもの。餅の餡に用いられ、美味である。
グマ [gu⸢ma]接頭小さな。形容詞グ⸢マー⸣ン[gu⸢maː⸣ŋ](小さい)の語幹から転成したもの。
グマー [⸣gumaː]小さいもの。小物。
クマーカマー [ku⸢maː⸣kamaː]ここかしこ(此処彼処)。あちこち(彼方此方)。
クマークマ [ku⸢maːkuma]こまごまと(細細)。詳しく。詳細に。委細に。細かく。強調すると、クマー⸢クマ[kumaː⸢kuma]となる。
クマークマーシ [ku⸢maːkumaː⸣ʃi]細かく。詳細に。
グマーグマーシ [gu⸢maːgumaː⸣ʃi]小さく。
グマーグマーヌ [gu⸢maːgumaːnu]連体小さな。
クマークマシ [kumaː⸢kuma⸣ʃi]こまごま(細々)と。詳しく。細かく<微細に>。
グマームヌ [gu⸢maː⸣munu]小さいもの。小さな物。
クマーン [ku⸢maː⸣ŋ]{1}細かい。細い。
クマーン [ku⸢maː⸣ŋ]{2}つましい。倹約家である。
クマーン [ku⸢maː⸣ŋ]{3}細かい。緻密である。きめ細かい。入念である。
グマーン [gu⸢maː⸣ŋ]小さい。物の形や容積が小さい。音声など音量が小さい。度量が狭い。
グマーンギサン [gu⸢maːŋ⸣gisaŋ]小さそうだ。小さいようだ。見るからに小さそうだ。
グマアシ サイルン [gu⸢ma⸣ʔaʃi ⸢sai⸣ruŋ]こあし<小足>で歩く。小さな歩幅で歩く。足並みを細かく刻んで歩く。「Coaxini ayumu<小足に歩む>『邦訳日葡辞書』」の義。
クマアミ [ku⸢maʔami]糠雨。霧雨。こぬかあめ。
グマアン [⸣gumaʔaŋ]ごま餡。胡麻の餡。挽き胡麻に黒砂糖を削ったのを混ぜて作った餡。
グマアン [⸣gumaʔaŋ]ごまあん(胡麻餡)。
グマイシ [gu⸢ma⸣ʔiʃi]小さな石。小石。イ⸢シェー⸣マ[ʔi⸢ʃeː⸣ma](小石)ともいう。
グマウシ [gu⸢ma⸣ʔuʃi]小さな臼。魚肉を搗いて蒲鉾を作るのに用いる臼。ウ⸢シェー⸣マ[ʔu⸢ʃeː⸣ma](小臼)ともいう。
クマキ [ku⸢ma⸣ki]細かいかけら(欠片)。細かい断片。砕片。物の砕けた細片。
クマキ ナスン [ku⸢ma⸣ki ⸣nasuŋ]粉々にする。細かい断片にする。
グマクイ [gu⸢ma⸣kui]小声。小さな声。
クマケーマ [ku⸢makeː⸣ma]ごく細かいかけら(欠片)。極細かい砕片。極細かい断片。
クマジー [ku⸢ma⸣ʤiː]細字。細かい文字。
グマジー [gu⸢ma⸣ʤiː]小さい土地。
グマシグトゥ [gu⸢maʃigu⸣tu]小さな仕事。手間のかからない仕事。
グマシジェーマ [gu⸢maʃiʤeː⸣ma]小粒。小さな粒。
グマシマ [gu⸢ma⸣ʃima]小島。シ⸢マー⸣マ[ʃi⸢maː⸣ma](小島。小さな島)ともいう。
グマジン [gu⸢ma⸣ʤiŋ]小さなお金。小額のお金。⸢クー⸣ジン[⸢kuː⸣ʤiŋ](小銭。少額の貨幣)とは異なる。
グマジンブン [gu⸢maʤim⸣buŋ]こさい(小才)。ちょっとした才知。
グマスクリ [gu⸢masuku⸣ri]こがら(小柄)。からだつきの小さいこと。「こづくり(小作り)」の転訛したもの。グ⸢マ⸣マリ[gu⸢ma⸣mari](小さな生まれ)ともいう。
グマッふァーマ [gu⸢maffaː⸣ma]小さな子供。幼児。
クマトゥ [ku⸢matu]質の細かい砥石。緻密な質の砥石。ア⸢ラトゥ[ʔa⸢ratu](粗砥石)の対義語。
グマドング [gu⸢madoŋ⸣gu]小道具。こまごまとした道具。鑿や鉋、小刀などの工具類や、鎌や箆などの小さな農具類。
グマヌシトゥル [gu⸢manuʃi̥⸣turu]こそ泥。⸢細盗人」の義。ウ⸢ブヌシ⸣トゥル[ʔu⸢bunuʃi̥⸣turu](大泥棒)の対義語。ヌシトゥ⸢ロー⸣マ[nuʃi̥tu⸢roː⸣ma](こそ泥)ともいう。
グマバタ [⸣gumabata]ごま餡(胡麻餡)。⸣バタ[⸣bata](腹)は餅の腹(中身)の義で、餡の意。餅の餡に胡麻を利用したもの。
グマバタ [gu⸢ma⸣bata]小さなお腹。バ⸢ター⸣マ[ba⸢taː⸣ma](小腹)とも言う。ウ⸢ブ⸣バタ[ʔu⸢bu⸣bata](たいこばら<太鼓腹>)の対義語。
グマフイ [gu⸢ma⸣ɸui]こぶり(小降り)。雨の降り方がわずかなこと。ウ⸢ブフイ[ʔu⸢buɸui](大降り。雨が激しく降ること)の対義語。
グマフイ [gu⸢maɸui]小降り。
グマプス [gu⸢ma⸣pu̥su]小さな人。
グマフディ [gu⸢ma⸣ɸudi]小筆。細字用の小さな筆。フ⸢デー⸣マ[ɸu⸢deː⸣ma](小筆)ともいう。
グマフニ [gu⸢ma⸣ɸuni]小舟。小さな舟。フ⸢ネー⸣マ[ɸu⸢neː⸣ma](小舟)ともいう。マ⸢ギ⸣フニ[ma⸢gi⸣ɸuni](大きな船)の対義語。
グママタ [gu⸢ma⸣mata]小股。歩幅のせまいこと。せかせかと気ぜわしく歩くさま。ウ⸢ブ⸣マタ[ʔu⸢bu⸣mata](大股)の対義語。
グママヤ [gu⸢ma⸣maja]子猫。小さな猫。マ⸢ヤー⸣マ[ma⸢jaː⸣ma](子猫)ともいう。
グママリ [gu⸢mamari]生来小さな体に生まれていること。体格の小さな生まれつき。
クマミ [ku⸢mami](植)緑豆。リョクズ。やえなり(八重生)。「細豆」の義。マ⸢ミ⸣ナー[ma⸢mi⸣naː](もやし)の原料として栽培された。
グマミチ [gu⸢ma⸣miʧi]小道。幅の狭い道。
クマミヌ カイ [ku⸢maminu kai]緑豆のお粥。お米に緑豆を混ぜて炊いたお粥。
グマムニ [gu⸢ma⸣muni]小声で話すことば。内緒ばなし。「小・物言い」の義。⸢ミシゥカムニ[⸢misi̥kamuni](みそか<密>物言い。ないしょ話)ともいう。
クマラスン [ku⸢mara⸣suŋ]他動困らせる。相手を苦しめる。処置に苦しめる。相手を責めたてる。
グマリクッチ [gu⸢marikutʧi]こさい(小才)。ちょっとしたずるい知恵。対義語は、ヤ⸢ナリクッチ[ja⸢narikutʧi](悪知恵。奸知)。
クマリコーイ [ku⸢marikoː⸣i]隠れん坊(『八重山語彙』)。
クマリックナー [ku⸢marikku⸣naː]かくれんぼう(隠れん坊)。ク⸢マリコー⸣イ[ku⸢marikoː⸣i](隠れん坊)ともいう『八重山語彙』。
クマリックナー [ku⸢marik⸣kunaː]隠れん坊。
クマルン [ku⸢ma⸣ruŋ]自動こもる(籠る)。隠れる。家にいて外出しない。中に充満する。「若草の妻もこもれり我もこもれり『古今和歌集17』」、「玉かぎる岩垣淵の隠庭<コモリニハ>『万葉集 2700』」の義。
クマルン [ku⸢ma⸣ruŋ]自動困る。処置に苦しむ。標準語からの転訛。若年層が用いる。普通は⸢ザー⸣パイ ⸢シーナー⸣ヌ[⸢ʣaː⸣pai ⸢ʃiːnaː⸣nu](困ったことになった。始末に負えなくなった。手に負えなくなった)、⸢ザーパイ⸣ユン[⸢ʣaːpai⸣juŋ](困ったことだ)という。
クマンタ [⸣kumanta]こちら。こちら側。このあたり。
クマントン [ku⸢man⸣toŋ]ここの所。この場所。
クミ [⸣kumi]{1}組。組合。
クミ [⸣kumi]{2}対。{足}{ソク}。揃い。複数のものを組み合わせたものを表す単位(助数詞)。
グミ [⸣gumi]ごみ。塵芥。標準語の「ごみ(塵・芥)」の転訛したもの。普通は、フ⸢ク⸣ジ[ɸu̥⸢ku⸣ʤi](塵)、フ⸢クイ[ɸu̥⸢kui](ほこり<埃>)という。
クミアイ [ku⸢mi⸣ai]組合。
クミカン [⸣kumikaŋ]こめかみ。「蟀谷、古米加美(こめかみ)」『和名抄』の転訛したもの。
クミカンコーヤク [⸣kumikaŋkoːjaku]頭痛薬の塗り薬。「こめかみ膏薬」の義。こめかみの辺りに塗布した。樟脳の芳香で頭痛の鎮痛効果があった。
クミジマ [ku⸢mi⸣ʤima]島の名。久米島。沖縄本島の西方約100キロメートルにある離島。古くは、御冠船や進貢船の中継基地であったという
クミタティルン [ku⸢mitati⸣ruŋ]他動組み立てる。
クミタトゥン [ku⸢mi⸣tḁtuŋ]他動組み立てる。
クミヌ ヤイダキ [ku⸢mi⸣nu ⸢jaidaki]古見の連山。歌謡語。「古見の八重岳」の義。/アレニ ミユルワ ウムトゥダキ ヤラブ タキドゥン クバマダキ クミヌ ヤイダキ パトゥバナリ/(あれ<彼方>に見えるは於茂登岳、屋良部、竹富、小浜岳、古見の八重岳、鳩離島)「鳩間口説」
クミルン [ku⸢mi⸣ruŋ]他動{1}こめる(籠める)。閉じ込める。隠す。
クミルン [ku⸢mi⸣ruŋ]他動{2}弾丸をこめる(つめる)。
クム [⸣kumu]雲。「み空由久 々母々使と~。万、4410」の義。「Cumo.クモ(雲).Cumoga faruru.(雲が晴るる)」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
クム [ku⸢mu]こも(菰)。藁やススキで編んだ木炭を入れる俵。「薦、コモ、ムシロ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
グム [⸣gumu]ゴム(gom<オランダ語>)。標準語からの借用語。
グムカン [⸣gumukaŋ]遊具の一種。ゴム鉄砲。Y字形の木の枝にゴム紐をつけて小石を挟み、強く引き飛ばして小鳥を撃つのに用いる遊具。
クムシ [ku⸢mu⸣ʃi](動)ゴキブリ。普通は、ヤ⸢マトゥクム⸣シ[ja⸢matukumu⸣ʃi](ゴキブリ)という。
クムチ [ku⸢muʧi]供物。⸢クームチ[⸢kuːmuʧi](供物)の項参照
クムヌ ニー [ku⸢mu⸣nu ⸣niː]雲の根。雲が湧き出てくる方向の根元にある雲。
グムマール [⸣gumumaːru]ゴムまり(鞠)。
クムリ [ku⸢mu⸣ri]曇り。曇天。標準語からの転訛。
クムル [ku⸢mu⸣ru]ふち(淵、潭)。川や環礁、干瀬などの深いところ。
クムル [ku⸢mu⸣ru]沼。池。水溜り。潮溜まり。礁内湖の深い所。
クムルン [ku⸢mu⸣ruŋ]自動曇る。標準語からの転訛。普通は、ッ⸢ふァムン[f⸢famuŋ](暗む)という。
クムローマ [ku⸢muroː⸣ma]海中の小さな礁池。
クムン [⸣kumuŋ]他動こめる(籠める)。閉じ込める。隠す。「こむ<下二段活用>」の四段活用化したもの。
クムン [⸣kumuŋ]自動組む。手足を絡み合わせる。仲間になる。
クメー [ku⸢meː]小浜家。小浜家一族。
クメーキルン [ku⸢meːkiruŋ]他動{1}細心にする。入念にする。丁寧にする。ク⸢メークンとも言う。
クメーキルン [ku⸢meːkiruŋ]他動{2}節約する。
クメークン [ku⸢meːkuŋ]他動念を入れる。入念に仕事をする。精密にする。委細にする。細かくする。丁寧にする。
クメーヌ クムル [ku⸢meːnu⸣ ku⸢mu⸣ru](海底地名)。小浜家の籠もり池(礁内湖)。{フ⸢カバ⸣カパマ[ɸu̥⸢kaba⸣kapama](外若浜)とフ⸢ナ⸣バルパマ[ɸu⸢na⸣barupama](舟原浜)の中間の海岸にあるク⸢ム⸣ル[ku⸢mu⸣ru](礁内湖)}。小浜家の人が網を入れて漁獲したところ
クメーヌ ノーザザーテー [ku⸢meːnu noː⸣ʣaʣaːteː]屋号。ク⸢モーヤー[ku⸢moːjaː](小浜真那氏宅。小浜家)、ク⸢メー[ku⸢meː](小浜家)ともいう。東村の⸢シー⸣シ[⸢ʃiː⸣ʃi](獅子頭)を保管している家。⸢ソー⸣ラン[⸢soː⸣raŋ](お盆)の中日の夜に⸢シーシマチ⸣リ[⸢ʃiːʃimaʧi⸣ri](獅子頭祭り。獅子頭の祈願)をして東村の家々を巡回して祖霊を慰め、悪霊祓えをした
クメーヌ マンダラッパーテー [ku⸢meːnu man⸣darappaːteː]屋号。小浜マンダル氏宅。名前の⸢マン⸣ダル[⸢man⸣daru](真・樽)に、⸣アッパー[⸣ʔappaː](お祖母さん)が下接し、接尾語⸣テー[⸣teː](~の家)が付いた合成語
クモーマ [ku⸢moːma](地)小浜島。西表島東部の古見村から古くに分村したといわれ、クン⸢マー⸣マ[kum⸢maː⸣ma](小さな古見)と称されていたのが転訛したものという。伝統的秘祭「アカマター・クロマターの祭り」も古見村から小浜島、新城島、宮良村へと伝播したといわれている。小浜島は地下水の豊富な島で海岸の砂浜を掘ると真水が湧出するほどで、昔から水田耕作も盛んである。古典民謡「小浜節」は島の見事な景観や稲作の豊穣を歌って名曲の誉れが高い。また瓦葺建築用のユ⸢チルダキ[ju⸢ʧirudaki](えつり<桟>竹)の産地として有名である。
クモーマダキ [ku⸢moːmadaki](植)カンザンチク。小浜島産の竹。細い竹は建築用材のエツリ(桟)に用い、太い竹はタ⸢キフンツァ[ta⸢kiɸunʦa](竹床)に使用した。⸢ダイ⸣マーダキ[⸢dai⸣maːdaki](大名竹、大明竹)ともいう。
クヤー [⸣kujaː](人)女子の名前。ク⸢ヤー⸣マ[ku⸢jaː⸣ma](クヤーの愛称)ともいう。
クヤミ [ku⸢ja⸣mi]お悔やみ。弔問。
クヤンマー [⸣kujammaː](人)女子の名前。
グユー [gu⸢juː]御用。
クユサ [ku⸢ju⸣sa]幼少。歌謡語。イ⸢ミ⸣サカラ ク⸢ユ⸣サカラ[ʔi⸢mi⸣sakara ku⸢ju⸣sakara](子供の頃から、幼少のころから)のように用いられる。/トゥバラマトゥ バントゥヤ カヌシャマトゥ クリトゥヤ イミシャカラ クユサカラ ムチリィトゥラ/(チィンダラ節)『八重山民謡誌』
クヨー [ku⸢joː]苦労。「苦労」の転訛したもの。
クヨー [ku⸢joː]供養。⸢ソッ⸣コー[⸢sok⸣koː](焼香)などをして死者の霊に供物を供え、供養を尽くすこと。
クヨーマナーラ [ku⸢joː⸣manaː⸢ra]こんにちは。「拝顔致します。お目にかかります」の義。校長や村長、学校の先生、郵便局長、巡査など島外から来られる地位の高い人、知名の士に対して使う挨拶ことば。
クヨームン [ku⸢joː⸣muŋ]他動拝顔する。お目にかかる。老年層の言葉。
クラ [⸣kura]米や穀物を入れる所。「新墾田の鹿猪田の稲を 倉にあげて~。万、3848」からの借用語か。裏座に約四尺四方、高さ約五尺の{填}{ハ}め込み式の板箱を作って籾米を保管したところ。モ⸢ミグラ[mo⸢miguru](米倉)ともいう。
クライ [ku⸢rai]位。標準語からの借用語。日常的にはほとんど使用しない。
グライ [⸣gurai]副助くらい(位)。⸣ブカラ[⸣bukara](ぐらい。程度)、ア⸢タ⸣ル[ʔa⸢ta⸣ru](ぐらい。程度)と同じ意味。体言や活用語の連体形、格助詞などに付いて大体の程度、分量、範囲を表す。
クライルン [ku⸢rai⸣ruŋ]他動堪える。我慢する。辛抱する。許す。勘弁する。ク⸢ナイ⸣ルン[ku⸢nai⸣ruŋ](堪える)の項参照。ニ⸢ジ⸣ルンとも言う。
クラガーウン [ku⸢ragaː⸣ʔuŋ](植)サツマイモの品種名。中身は白く、外皮は赤い。甘味があり美味である。読谷村クラガー(暗川)地区から広まったのでその名があるという。ハ⸢ナクラ⸣ガー[ha⸢nakura⸣gaː](甘藷の名)ともいう。
グラグラ タギルン [⸣guragura ta⸢giruŋ]ぐつぐつ沸騰する。
クラシ [ku⸢raʃi]生活。生計。「暮らし」の義。
クラシガタ [ku⸢raʃigata]暮らし。生活の仕方。生計。くちすぎ。すぎわい(生業)。
クラスン [ku⸢rasuŋ]自動生活する。暮らす。「長春日乎 念晩久<長き春日を思ひ暮さく>『万葉集 1936』」の義。
クラスン [ku⸢rasuŋ]他動{1}殺す。
クラスン [ku⸢rasuŋ]他動{2}打つ。殴る。「懲、コロス『類聚名義抄』」の転訛したもの。
クラビルン [ku⸢rabiruŋ]他動比べる。比較する。老年層はフ⸢ラビルン[ɸu⸢rabiruŋ](比べる)という。「くらべ来し振り分け髪も『伊勢物語』」の転訛したもの。
クラブン [ku⸢rabuŋ]他動比べる。比較する。照合する。老年層の人は、フ⸢ラブン[ɸu⸢rabuŋ](比べる)という。「くらぶ<下二段活用>」の四段活用化したもの。
クラムトゥ [ku⸢ra⸣mutu]琉球国時代の宮古・八重山に設置された行政官庁。⸣ウラ[⸣ʔura](蔵元)ということがおおい。
クリ [ku⸢ri]指示代名詞。これ(単数)。
グリ [gu⸢ri]リンパ腺の腫れたもの。ぐりぐり。腋下部や腿のつけね(鼠径部)にできる大豆の大きさに腫れたリンパ腺。手足に外傷のある時にできた。
グリー [⸣guriː]礼。お辞儀。「御礼」の義。
クリカイスン [ku⸢rikai⸣suŋ]他動繰り返す。「手染之糸乎 絡反<手染の糸をくりかへし>『万葉集 1316』」の義。
クリカリ [ku⸢ri⸣kari]これかれ(此彼)。あれこれ。これやあれや。ク⸢リン⸣カリン[ku⸢riŋ⸣kariŋ](あれも此れも)ともいう。
グリグリ [⸣guriguri]腋の下に出来る丸い塊。手足に傷があると腿の付け根や腋の下に丸い塊が出来た。これが出来るとピ⸢ル[pi⸢ru](にんにく<大蒜>)を擂り潰して塩と混ぜ、傷口に塗って治療した。
グリサン [⸢guri⸣saŋ]助動~づらい。~(し)づらい、~にくい。形容詞型活用。⸢ングリ⸣サン[⸢ŋguri⸣saŋ](~づらい)の項参照
クリタ [ku⸢ri⸣ta]樽や桶、水担桶を組み立てる板。
クリフドゥ [⸣kuriɸudu]{PoS_1}これぐらい。歌謡語。
クリフドゥ [⸣kuriɸudu]{PoS_2}歌謡語。これほどに。この程度(特に程度が高いこと)。/クリフドゥ ウヤニ ウムワリティ/(是程親に思われて)「無蔵念仏節」『八重山民謡誌』
クリマーシ シゥカイマーシ [ku⸢rimaː⸣ʃi sï̥⸢kaimaːʃi]やりくりする(遣り繰り)すること。「繰り回し、使い回し」の義。少ない物を融通しあうこと。
クリルン [ku⸢riruŋ]自動狂う。色欲に溺れる。情欲に狂う。獣類のように発情する。
グリン [gu⸢riŋ]五厘銭。グ⸢リンミー[gu⸢rimmiː](五厘目)ともいう。
クリン カリン [ku⸢riŋ⸣ kariŋ]あれもこれも。
クル [⸣kuru]色の黒い人のあだ名。黒い人。新しく沖縄方言から借用された語。鳩間方言の[kuro](黒)の狭母音[i、u]と広母音[a]や半広母音[o]が[r]を挟むと、法則的にkurV → ffVのように音韻変化を起こす。従って、⸣クルスー[⸣kurusuː](色の黒い男)は、非鳩間方言の特徴で、沖縄方言からの借用語といえる。
グル [gu⸢ru]容器の底に溜まった汚れた液体。汚れた残り水。泥混じりの残り水。飲み残し。残り滓。
グル [⸣guru]ころ(頃)。時分。時間や季節のある時点を漠然と指す語。「我念君之 不所見比者鴨<我が思ふ君が見えぬ頃かも>『万葉集 2972』」の義。
グル [gu⸢ru]{1}から(殻)。あきがら。抜け殻。
グル [gu⸢ru]{2}食べ残し。飲み残し。おり(澱)。容器の底に沈んでいる滓。
グルイシ [gu⸢ru⸣ʔiʃi]小石。こぶし(拳)ほどの大きさの石。二重積みの石垣を積む際に、バ⸢タ⸣イシ[ba⸢ta⸣ʔiʃi](腹石。中間に詰める小石)として使用する小石。
クルキ [ku⸢ru⸣ki](植)樹木の名。リュウキュウコクタン。黒檀の一種。鳩間方言では、普通は、キ⸢ダ[ki⸢da](リュウキュウコクタン)という。キ⸢ダヌ⸣ナル[ki⸢danu⸣naru](リュウキュウコクタンの実)は旧暦7月~8月ごろに熟する。8ミリ~14ミリの大きさで、未熟な実の色は黄色を呈し、味は渋い。実が完熟すると暗紫色になり、甘味が増して柿の実のように美味になる。お盆の供物(ムルムルの砂糖きびの束)に挿して飾り供える。芯材は黒光りするので三味線の棹材として珍重され、床柱、家具用材としても重宝されている。
グルグル [⸣guruguru]ぐるぐる。幾重にも巻きつけるさま。何度も回転するさま。
グルグルシ [gu⸢ruguru⸣ʃi]目を大きく見開いて見回すさま。
グルクン [gu⸢ru⸣kuŋ](動)魚名。タカサゴの仲間。沖縄本島糸満方言からの借用語。『原色沖縄の魚』の写真番号91⸢くまささはなむろ」は、ウ⸢クー[ʔukuː](グルクンの一種)。写真番号92⸢たかさご」は、⸢コー⸣サー[⸢koː⸣saː](グルクンの一種)。写真番号93「うめいろもどき」は、ム⸢レー⸣ジ[mu⸢reː⸣ʤi](グルクンの一種)という。写真番号94「ささむろ」は、ヒ⸢ラー[çi⸢raː](平たい体でやや大きい。グルクンの一種)。写真番号95「はなたかさご」、写真番号96「ゆめうめいろ」には、ヒ⸢ラー[çi⸢raː](グルクンの一種)という(加治工伊佐氏談)。グルクンは沖縄県の県魚に指定されており、油で揚げると美味である。煮魚、蒲鉾の原料にも利用される。
クルシマ [ku⸢ru⸣ʃima](地)黒島。古老は、フ⸢シ⸣マ[ɸu̥⸢ʃi⸣ma](黒島)ともいう。保里、宮里、仲本、東筋、伊古の集落があった。現在は牧畜が盛んである。
クルシマクドゥキ [ku⸢ru⸣ʃimakuduki]黒島口説。黒島を代表する民謡と民俗舞踊の一つ。7・5・7・5の口説き形式の歌詞と7・7調の囃子があり、軽快な民俗舞踊と対をなして形成されている。囃子の部分には島の生活様式がリアルに描写されていて、豊年を寿ぐものになっている。
クルスメー [ku⸢ru⸣sumeː](動)コブシメ。胴長約40センチ。背中に船形の固い甲を持つ。肉は厚く美味である。刺身、和え物、煮物にして食す。腕は太く短い。2本の長い蝕腕は柔らかく先端が太い。
グルッカ [guruk⸢ka]ころりと。ころっと。ぐるっと。丸みのあるものが一回転する様子。
グルッカイスン [gu⸢rukkai⸣suŋ]他動ひっくり返す。裏返す。覆す。転覆させる。
グルッカイルン [gu⸢rukkai⸣ruŋ]自動ひっくり返る。寝返る。転覆する。くつがえる(覆る)。若年層は、グ⸢ルッケー⸣ルン[gu⸢rukkeː⸣ruŋ]ともいう。
グルッカグルッカ [gu⸢rukkagurukka]ぐらぐら。ぐらりぐらり揺れるさま。ゆらゆら。ゆらりゆらり揺れるさま。ABCDABCD型の重言(畳語)。
グルッケールン [gu⸢rukkeːruŋ]自動ひっくり返る。若年層の言葉。グ⸢ルッカイ⸣ルン[gu⸢rukkai⸣ruŋ](ひっくり返る)と同じ。
グルッティ [gurut⸢ti]{1}ぐるっと。くるっと。一回りするさま。丸くなるさま。
グルッティ [gurut⸢ti]{2}ころりと。ころっと。物が転がるさま。
クルバサー [ku⸢ruba⸣saː]水田の土をこなすのに用いる農具。直径約一尺。長さ約4尺ほどの硬質の大木(普通は、ドゥ⸢ス⸣ヌ{SqBr}du⸢su⸣nu{/SqBr}<オガタマノキ>や⸣マチ{SqBr}⸣maʧi{/SqBr}<松>の幹を使用した)に歯車状の深い歯を作り、木枠に心棒を固定し、牛に引かせて回転させ、田の土を砕くのに用いる農具。
クルバシカーバシ [ku⸢rubaʃikaː⸣baʃi]転ばすさま。ごろごろ転ばして。ABCDEFCD型の重言。
クルバスン [ku⸢rubasuŋ]他動転ばす。転がす。
クルパン [ku⸢ru⸣paŋ]菓子の名。黒褐色の平たい丸い菓子。黒いパン。ミ⸢リキン⸣グ[mi⸢rikiŋ⸣gu](メリケン粉)に黒糖を混ぜて焼き上げた菓子。⸢マイボー⸣ル[⸢maiboː⸣ru]と同じ。
クルビニブン [ku⸢rubinibuŋ]自動ごろ寝する。ごろりと横になる。寝じたくをしないで寝転ぶ。
クルブン [ku⸢rubuŋ]自動転ぶ。転がる。転倒する。
クルベーマラベー [ku⸢rubeː⸣marabeː]倒れ転ぶさま。滑ったり転んだり。「転轉<コイマロビ>恋は死ぬとも~。万、2274」、「地に宛<まろ>び転<かへ>ること~」『金光明最勝王経 平安初期点』の転訛したものか。
クルマ [ku⸢ru⸣ma]車。荷車。
クルマイール [ku⸢rumaʔiː⸣ru]まいぎり(舞錐)。まわしぎり。軸の上部に穴をあけて、紐を通し、その両端を腕木の両端に結び、腕木を上下させて軸を回転させる錐。
グルミャーウ [guru⸢mjaː⸣u](幼)猫。ごろごろ喉を鳴らす猫。
クルムン [ku⸢ru⸣muŋ]他動包み巻き込む。くるむ。つつむ。
クルン [⸣kuruŋ]他動刳りぬく。えぐる(抉る)。形を写して刳りぬく。
クルン [⸣kuruŋ]他動両替する。紙幣を小銭に替える。
クルン [⸣kuruŋ]他動{1}繰る。糸を巻き取る。
クルン [⸣kuruŋ]他動{2}暦の日をめくる。順々に日を数えて佳日を選ぶ。
クレー [ku⸢reː]これは。指示代名詞ク⸢リ[ku⸢ri](此れ)に係助詞ヤ[ja]<とりたて>が付いて融合変化した形。
クレーラ [ku⸢reːra]これより。これから。[kuri] + [kara] → [kurihara] → [kuriara] → [kureːra] のように融合変化したもの。
クレクレ [ku⸢re⸣kure]これこれ。おいおい(呼びかけ)。目下の者に対していう。老年層の言葉。
クロー [ku⸢roː]苦労。標準語からの借用語。ア⸢ワ⸣リクチサ[ʔa⸢wa⸣ri ⸣ku̥ʧisa](難儀苦労)ともいう。
グローン [gu⸢roː⸣ŋ]{1}船の横揺れが激しい。横揺れして不安定である。座りが悪い。船がローリングする。
グローン [gu⸢roː⸣ŋ]{2}すばしこい。敏捷である。
クロマター [⸣kuromataː]古見村の豊年祭に出現する草装神。秘祭のアカマラター祭に、⸣アカマター[⸣ʔakamataː](赤い面の草装神)、⸣シロマター[⸣ʃiromataː](白面の草装神)と共に来訪され、各氏子の家々を回って村人を祝福し、豊年を予祝して夕刻頃に名残を惜しまれつつ村人に見送られて山へ帰る神。
クヮー [⸣kwaː](植)桑。沖縄本島方言の借用語か。⸢ゴーナ⸣キー[⸢goːna⸣kiː](桑の木)<若年層>、⸢コーン⸣ギ[⸢koːŋ⸣gi](桑の木)<老年層>ともいう。地震避けの呪文として、⸢クヮー⸣ヌ シチャ ⸢クヮー⸣ヌ シチャ[⸢kwaː⸣nu ⸣ʃi̥ʧa ⸢kwaː⸣nu ⸣ʃi̥ʧa](桑の下、桑の下)と唱えた。葉は養蚕用に、材は固く老木になるに従い黒褐色となり、光沢を有するので装飾的高級用材に利用される。芯材は三味線の竿にも利用される。実は熟すると赤褐色を呈し甘味をますので、子供の好物となった
-クヮースン [⸢-kwaː⸣suŋ]接尾「~過ぎる」の意。沖縄本島方言からの借用語か。特定の動詞の連用形に下接して「~過ぎる」の意味を表す。
グヮイ [⸣gwai]具合。状態。調子。都合。標準語からの借用語。
クヮイシキ [⸢kwai⸣ʃi̥ki]会席膳の料理。一の膳、二の膳を略して一つの膳に盛るようにした簡略化した料理。八重山では大正三年頃「結婚式の料理始めて会席料理に改まる」『八重山生活誌』というから、鳩間島へは昭和期に導入されたのであろう。
クヮイシキジン [⸢kwaiʃi̥ki⸣ʤiŋ]会席膳。会席料理を盛り付ける膳。脚がなく、赤(祝儀用膳)、黒(不祝儀用膳)の塗り物と木地にニス塗りの膳があったが、日常はニス塗りの膳を多用した。石垣方言からの借用語か。若年層は、⸢カイシキ⸣ジン[⸢kaiʃi̥ki⸣ʤiŋ](会席膳)という。
クヮイシャ [⸢kwai⸣ʃa]会社。標準語からの借用語。老年層は⸢クヮイ⸣サ[⸢kwai⸣sa]という。
クワイルン [ku⸢wai⸣ruŋ]他動加える。加入させる。添加する。重ね添える。標準語からの借用語の転訛したもの。物の場合は⸢スイルン(イ⸢リルン)[⸢suiruŋ(ʔi⸢rirun)](加える。添える<入れる>)を多用し、仲間に入れる場合は、⸣グー ⸣ナスン(⸢ペーラ⸣スン)[⸣guː ⸣ナスン(⸢peːra⸣suŋ)](仲間にする<組に入れる>)を多用する。
クヮッチ [⸢kwat⸣ʧi]ご馳走。老年層のことば。首里方言からの借用語。若年層は、⸢コッ⸣チ[⸢kot⸣ʧi](ご馳走)ともいう。「活計(歓楽。奢侈。贅沢)に対応する語か」『沖縄語辞典』という。
クヮン [⸣kwaŋ]官。役所。政府。
クヮン [⸣kwaŋ]助数重さの単位。貫。千もんめ(匁)。3、75キログラム。
グヮン [⸣gwaŋ]願。祈願。若年層は、⸣ガン[⸣gaŋ](願。祈願)という。
グヮンクー [⸢gwaŋ⸣kuː]頑固。若年層は、⸢ガン⸣クー[⸢gaŋ⸣kuː](頑固)という。
グヮンス [⸢gwan⸣su]祖先。先祖。先祖の位牌。「元祖」の義。
グヮンスパカ [⸢gwansu⸣paka]元祖墓。ム⸢トゥ⸣パカ[mu⸢tu⸣paka](本墓)というのが普通。旧暦一月十六日のジ⸢ル⸣クニチ[ʤi⸢ru⸣kuniʧi](十六日祭)には親族が墓前に集まって先祖を祭る墓。
グヮンタティ [⸢gwan⸣tati]立願。発願。「願立て」の義。神仏に願をかけること。
グヮンタン [⸢gwan⸣taŋ]元旦。元日。
グヮンニチ [⸢gwan⸣niʧi]元日。元旦。歌謡語。石垣方言からの転訛。「ションガジゥヌ シゥトゥムティ グヮンニチゥヌ アサパナ~」(正月の早朝、元日の朝まだき)「鷲の鳥節」
クヮンニン [⸢kwan⸣niŋ]官人。役人。
クヮンヌ ユーフル [⸢kwan⸣nu ⸢juː⸣ɸuru]海水浴。「官の湯風呂」の義。誰でも無料で入浴できることから公共の風呂と考えたことに基づく命名であろう。
クヮンバク [⸢kwambaku]棺。棺桶。「棺箱」の義。
グヮンプトゥキ [⸢gwampu̥tu⸣ki]がんほどき(願解き)。老年層の言葉。若年層は⸢ガンプトゥ⸣キ[⸢gampu̥tu⸣ki]という。{1}一月から六月までの間に友利御嶽で祈願したことによって豊年満作と健康繁盛を迎えたことに対する神への感謝の祈願をすること。
グヮンプトゥキ [⸢gwampu̥tu⸣ki]{2}願ほどき<解き>。死者が生前において神仏に祈願したことが成就していたのに、神仏へのお礼の祈願がなされていないときなどに、近親の者が代わってお礼の祈願をすること。⸢ガンプトゥ⸣キ[⸢gamputu⸣ki](願解き)と同じ
クン [⸢kuŋ]紺。紺色。
クン [⸢kuŋ]こん(根)。根気。精根。元気。⸣ガー[⸣gaː](意志力。我慢強さ。「我」の義)ともいうのが普通。
クン [⸣kuŋ]古見村。西表島東部に開けた最も古い村。「慶長検地記録」(1610年)によると、「高 九拾八石三斗壱升三合九勺三才 鳩間村」は当時古見間切りに属していた」『八重山の御嶽』という。⸢クンノー⸣ラブシ[⸢kunnoː⸣rabuʃi](古見の浦節)は有名。
クンイル [⸢kuŋʔiru]紺色。
クンガチ [⸢kuŋga⸣ʧi]九月。老年層は、⸢クングヮ⸣チ[⸢kuŋgwa⸣ʧi](九月)ともいう。
グンガチ [⸢guŋga⸣ʧi]五月。旧暦五月十五日頃には稲の初穂祭りのス⸢ク⸣マ[su̥⸢ku⸣ma](稲の初穂祭り)が執り行われた。若年層は、グ⸢カ⸣チ[gu⸢ga⸣ʧi](五月)ともいう。
グンガチイビ [⸢guŋgaʧi⸣ʔibi]五月植え。芋を五月に植え付けたもの。老年層は、⸢グングヮチ⸣イビ[⸢guŋgwaʧi⸣ʔibi](五月植え)ともいう。
クンガチクニチ [⸢kuŋga⸣ʧikuniʧi]旧暦九月九日。重陽の節句。老年層は、クングヮチクニチ[⸢kuŋgwa⸣ʧikuniʧi](重陽の節句)ともいう。
グンガチグニチ [⸢guŋga⸣ʧiguniʧi]旧暦五月五日。学校教育(明治29年以降)を通して導入された端午の節句。紙で鯉幟を作って立てた。
グンガチャー [⸢guŋga⸣ʧaː]五月植えの芋。老年層は、⸢グングヮ⸣チャー[⸢guŋgwa⸣ʧaː](五月植えの芋)ともいう。
グンガチユッカ [⸢guŋga⸣ʧijukka]旧暦五月四日。糸満の人たちが石垣島でハーレー(爬龍船競漕)をして豊漁祈願と健康祈願を行った。
クンガニ [⸢kuŋgani]黄金。黄金のように大切な子。ク⸢ガニ[ku⸢gani](黄金)ともいう。
クンキ [⸢kuŋki]根気。精力。気力。スタミナ。
クンキシキムヌ [⸢kuŋkiʃi̥ki⸣munu]滋養食品。滋養物。スタミナ食品。「根気付け物」の義。鶏肉や鶏卵、豚肉や魚肉など。鶏肉や鶏卵、魚肉などは手っ取り早い滋養食品として病み上がりの人に供された。
クンキ シキルン [⸢kuŋki⸣ ʃi̥⸢ki⸣ruŋ]栄養を取って元気<精力>をつける。
クンキ スクン [⸢kuŋki⸣ su̥kuŋ]栄養をとって精力<元気>がつく。
クンキダーリ [⸢kuŋkidaːri]栄養不良。元気のないこと。根気不足。「根気倒れ」の義。
クンキバー [⸢kuŋkibaː]バイラス<ウイルス>に罹って、芋の葉や野菜の葉がちぢれ<縮れ>たもの。⸢クンキャー⸣バー[⸢kuŋkjaː⸣baː]の転訛したもの。終戦後の一時期バイラスが蔓延して芋の蔓を焼却処分したことがある。「ハンセン病の葉」の義『石垣方言辞典』。
クンキブスク [⸢kuŋkibusu̥ku]精力不足。栄養不良。「根気不足」の義。
クンキブラーリ [⸢kuŋkiburaːri]不元気なこと。「根気折られ」の義か。貧血気味で根気がなく、気だるく、ふらふらするさま。ふらつく様子。めまい(眩暈)症状をおこすこと。
クンキマキ [⸢kuŋkimaki]根気負け。根負け。
クンキャー [⸢kuŋ⸣kjaː]{1}ハンセン病患者。
クンキャー [⸢kuŋ⸣kjaː]{2}他人を罵るときに使う卑語。
グンギンドー [⸢guŋgin⸣doː]権現堂。石垣市字石垣にある桃林寺。ティ⸢ラ[ti⸢ra](寺)ともいう。1614年に創建されたという。子供が病弱の場合、桃林寺の仁王佛を拝ませると健康になるといわれていた。
グングルマーシェー [⸢guŋgurumaː⸣ʃeː]輪回し遊び。グ⸢ルグルマー⸣シェー[gu⸢rugurumaː⸣ʃeː](輪回し)ともいう。「ぐるぐる回すもの」の義。桶や樽の竹製または金属製のたが(箍)を鉤の付いた棒で押して回す遊び。
グングルマースン [⸢guŋgurumaː⸣suŋ]他動{1}掻き回す。かき乱す。攪乱する。「ぐるぐる回す」の義。
グングルマースン [⸢guŋgurumaː⸣suŋ]他動{2}牛耳る。操る。
グンクローマ [guŋ⸢kuroː⸣ma]こもづち(薦槌)。こも(菰)を編む縄を巻きつけたおもり(錘)。直径約4センチ、長さ約10センチの円筒状木片を中央部の直径が約2センチになるように、両端から斜めに削って作った縄巻きの錘。菰編み機の桁の約10センチ間隔に刻み込んだ所に吊るし、内側、外側へと交互に送り越して編むのに用いる。
クングヮチ [⸢kuŋgwa⸣ʧi]九月。⸢クンガ⸣チ[⸢kuŋga⸣ʧi](九月。<若年層>)ともいう。若年層はク⸢ガ⸣チ[ku⸢ga⸣ʧi](九月)ともいう。
クングヮチクニチ [⸢kuŋgwa⸣ʧi ⸣kuniʧi]旧暦の九月九日。⸢ウン⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[⸢ʔun⸣nu ⸢niŋ⸣gai](甘藷の豊作祈願)とタ⸢ク⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[tḁ⸢ku⸣nu ⸢niŋ⸣gai](蛸の豊漁祈願)が行われる。
クンクンシ [⸢kuŋkuŋ⸣ʃi]琉球音楽の三線演奏用の楽譜。曲譜。伝統的に「工工四」の字を当てる。
グンゴー [⸢guŋ⸣goː]五合。一升の半分。
グンゴーナカムル [⸢guŋgoːnaka⸣muru]五合枡。一升枡は、⸢イッス⸣サー[⸢ʔissu⸣saː]という。五合枡がない時は立方体の一升枡の底の角を中心にして45度に傾けて量った。
グンゴーパナ [⸢guŋgoː⸣pana]五合の花米。⸣パナ[⸣pana]は、パ⸢ナン⸣グミ[pa⸢naŋ⸣gumi](花米)の略。精米五合を一つの重箱に入れ、⸢カン⸣ビン[⸢kam⸣biŋ](燗瓶)一対の神酒と共に神前に供えるもの。
クンザ [⸢kunʣa]こいつ。こやつ(此奴)。近称卑称の代名詞。<単数>ク⸢ヌ⸣ ンザ[ku⸢nu⸣ ʔnʣa](この下郎<奴>)の縮約融合したもの。人を軽侮したり、相手を罵倒していう語。
グンザンマヤー [⸢gunʣammajaː](幼)恐ろしい山猫。恐ろしい西表山猫。子供が拗ねて聞き分けない時、脅かすのに用いる語。幼児は凶悪な山猫を想像し、その想像上の山猫に連れ去られるのが怖くて親の言う事を聞き分けるようになったものである。
クンザンメー [⸢kunʣammeː]こいつらめ。卑称(複数)。
クンジ [⸢kunʤi]紺地。紺染め。
クンジキン [⸢kunʤikiŋ]紺地の着物。「紺地衣」の義。
グンジュ [⸢gun⸣ʤu]五十。五十歳。
グンジュー フダユリ [⸢gun⸣ʤuː ⸣ɸudajuri]五十歳免税。五十歳から人頭税が免除になること。「五十札許り」の義。四十九歳が人頭税や夫役のなどの納税義務の年限で、五十歳からは「頭迦(ずはずれ)」となって納税の義務を免除されたという。
クンジン [⸢kun⸣ʤiŋ]根神。娘が成人したら床の間に香炉を据えて拝み、嫁したらそれを婚家へ移した。
クンスーブ [⸢kunsuːbu]根競べ。根気強さ競争。忍耐勝負。我慢勝負。「根勝負」の義。根気の強さを競うこと。
クンズミ [⸢kunʣumi]紺染め。
クンゾー [⸢kun⸣ʣoː]怒り。立腹すること。怒りっぽい人。「根性」の義。
クンゾー ウクルン [⸢kun⸣ʣoː ʔu⸢ku⸣ruŋ]立腹する。怒る。「根性起こる」の義。⸣サク ウ⸢ク⸣ルン[⸣sḁku ʔu⸢ku⸣ruŋ](立腹する。「癪起こる」)ともいう。
クンゾーバタ [⸢kunʣoː⸣bata]かんしゃくもち(癇癪持ち)。怒りっぽい人。「根性腹」の義か。
クンゾームチ [⸢kun⸣ʣoːmuʧi]癇癪持ち。怒りっぽい人。「根性持ち」の義。
クンゾー ワッサン [⸢kun⸣ʣoː ⸢was⸣saŋ]怒りっぽい。性格が悪い。「根性悪い」の義。
クンゾー ンザスン [⸢kun⸣ʣoː ʔn⸢ʣa⸣suŋ]怒る。怒らせる。癇癪を起こす。「根性を出す」の義。
クンゾー ンジルン [⸢kun⸣ʣoː ʔn⸢ʤi⸣ruŋ]怒る。腹を立てる。怒りが出る。立腹する。癇癪がでる。「根性いでる<出でる>」の義。ウ⸢ク⸣ルンとも言う。⸢クン⸣ゾー ⸣ンズン[⸢kun⸣ʣoː ⸣ʔuʣuŋ](怒る。腹を立てる)ともいう。
クンゾー ンズン [⸢kun⸣ʣoː ⸣ʔuʣuŋ]怒る。「根性出づ」の義。
クンダ [⸢kun⸣da]こむら(腓)。こぶら。ふくらはぎ。脛の後の膨れたところ。「腓、古無良<こむら>、脚腓也『和名抄』」の義。
クンダアガリ [⸢kundaʔaga⸣ri]こむら返り。ふくらはぎ(脹脛)の痙攣。
クンダキ [⸣kundaki]山岳の名。古見岳。西表島東部にある、島で最も高い山。標高469、5メートル。
クンダヌ ガラサマール [⸢kunda⸣nu ga⸢ra⸣samaːru]こむら(腓)の痙攣。ふくらはぎ(脹脛)の痙攣。
グンダン タギラスン [⸢gundan⸣ ta⸢girasuŋ]酒に酔ってくどくどという。くだを巻く。
グンダンマーレー [⸢gundammaːreː]転びまわること。寝返りしながら転がること。
クンデー [⸢kun⸣deː]この前。先日。数日前。この間。以前。
クンドゥ [⸢kun⸣du]今度。今回。このたび。
クンナ [⸢kun⸣na]連体こんな。このような。
クンニャク [⸢kunɲa⸣ku]こんにゃく(蒟蒻)。標準語からの借用語。
クンノーラ [⸢kunnoː⸣ra]古典民謡の「古見の裏節」。古典民謡の名曲⸢クンノー⸣ラブシ[⸢kunnoː⸣rabuʃi](古見の浦節)には古典舞踊の「古見の浦舞踊」が対を成していて、{雅}{ミヤビ}やかな宮廷舞踊の様式美が認められる。
クンピピル [⸣kumpipiru]黒のヒヒル(黒絹糸。「蛾、比比流」『和名抄』の転訛)。
グンボー [⸢gum⸣boː](植)ゴボウ(牛蒡)。石垣方言からの借用語か。鳩間島には産しない。フ⸢ノー⸣ラ[ɸu⸢noː⸣ra](船浦)や⸢ウイバル[⸢ʔuibaru](上原)あたりで栽培されていた。あまり食べなかった。
グンボーッふァ [⸢gumboː⸣ffa]混血児。妾腹の子。士族の役人と任地の平民女性<賄い女>との間に生まれた子。⸢グン⸣ボー[⸢gum⸣boː]ともいう。
クンムラ [⸣kummura]古見村。
クンリーヨイ [⸣kunriːjoi]婚礼祝い。石垣方言からの借用語か。普通は⸣ニービキヨイ[⸣niːbikijoi](結婚祝い)という。