鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
-シ [⸣-ʃi]格助{Exp_1}体言及び体言に準ずる形に付く。{Ref_1}、{Ref_2}、{Ref_3}、{Ref_4}参照。
-シ [⸣-ʃi]格助{Exp_2}格助詞⸢-トゥ[-tu](と<相手格>)につく。
-シ [⸣-ʃi]格助{Exp_3}副助詞カー⸢ニ[kaː⸢ni](だけ)、⸣-スク[⸣-suku](ほど)、⸣-ブカラ[⸣-bukara](ほど)、-ア⸢タ⸣ル[-ʔa⸢ta⸣ru](ぐらい)、⸣-ダキ[⸣-daki](だけ)につく。
-シ [⸣-ʃi]格助{Exp_4}係助詞⸣-ヤ[⸣-ja](は)、⸣-ル[⸣-ru](ぞ)、⸣-ン[⸣-m,n,ŋ](も)が付く。
-シ [⸣-ʃi]格助{Exp_4}の例、ク⸢リ⸣シェー ム⸢チェー⸣ ス⸢クララ⸣ヌ[ku⸢ri⸣ʃeː mu⸢ʧeː⸣ su̥⸢kurara⸣nu](これでは餅は作られない)。
-シ [⸣-ʃi]格助{Exp_5}副助詞⸣-ツァン[⸣-ʦaŋ](すら)、⸣サーギ[⸣saːgi](さえ)、カー⸢ニ[kaː⸢ni](だけ)、⸢-ナー⸣ト[⸢-naː⸣to](など)が付く。
-シ [⸣-ʃi]格助~で。{1}材料を表す。
-シ [⸣-ʃi]格助{2}手段、方法を表す。
-シ [⸣-ʃi]格助{3}数を表す語について、用言の表す動作を行う人数や数を表す。
-シ [⸣-ʃi]格助{4}原因、理由を表す。~のために、~の故に。
シー [⸣ʃiː]{1}巣。
シー [⸣ʃiː]{2}鞘。
シー [⸣ʃiː]{3}収納箱。
シー [⸢ʃiː]血。血液。
シー [⸢ʃiː]精霊。もののけ。「精」の義。
シー [⸣ʃiː]{1}乳房。「緑児の~乳飲哉君之<チノメヤキミガ>~。万、2925」の「乳<チ>」の転訛したもの。
シー [⸣ʃiː]{2}乳。乳汁。
シー [⸢ʃiː]釣り針。「其の故の鉤<ち>を責<はた>る『日本書紀 神代下』」の転訛したもの。
シー [⸢ʃiː]尿。小便。おしっこ(幼児語)。シ⸢バ⸣ル。
シー [⸢ʃiː]四。ガ行音の助数詞の前では長音脱落し、撥音化する。
ジー [⸢ʤiː]文字。漢字。仮名。
ジー [⸣ʤiː]地面。土地。田畑。
ジー [⸣ʤiː]{1}ずい(髄)。
ジー [⸣ʤiː]{2}植物の芯。
ジー [⸢ʤiː]痔。肛門の病気で、痛み、出血がある『医学沖縄語辞典』。
シー アースン [⸣ʃiː ⸢ʔaːsuŋ]乳を搾り出す。搾乳する。
シー アイルン [⸣ʃiː ⸢ʔairuŋ]乳が出る。
シー アウン [⸣ʃiː ⸢ʔauŋ]乳が出る。乳汁が滴り落ちる。「乳零ゆ」の義。「~香ぐはしみ 置きて枯らしみ 安由流実波 玉に貫きつつ『万葉集 4111』」の転訛したものか。
シーアカリ [⸢ʃiːʔaka⸣ri]乳離れ。離乳。牛や豚、山羊などの家畜の離乳にいう。特に子豚が離乳したものには、ア⸢カラー⸣オー[ʔa⸢karaː⸣ʔoː](離乳した子豚)といって売買された。一般家庭ではこのア⸢カラー⸣オーを購入して肥育し、石垣島へ輸出した。
ジーアバ [⸢ʤiː⸣ʔaba]動物の脳みそ。カツオの頭の脳みそ。
ジーイキ [⸢ʤiː⸣ʔiki]ちりょく(地力)。土地の生産力。「地息」の義か。
シーイラキムヌ [⸢ʃiːʔiraki⸣munu]豚の血を肝臓や肉、韮などの野菜と一緒に炒めた料理。「血炒り物」の義。
シー イルン [⸣ʃiː ʔi⸢ruŋ]すが立つ。大根や牛蒡などにすが立つ。「すが入る」の義。
シー ウクスン [⸢ʃiː⸣ ʔu⸢ku⸣suŋ]猪防除の石垣を造る<起こす。再建する>。
ジーウタ [⸢ʤiː⸣ʔuta]地謡。舞踊をする人のために三味線(三線)を演奏し、謡うこと。
シーウヤ [⸢ʃiː⸣ʔuja]「乳親」の義。母親が死んだり、母乳が出なかったりする場合、母親に代わって授乳する人。
シーカイシ [⸢ʃiːkaiʃi]仕返し。復讐。仇討ち。
ジーカキゾージ [⸢ʤiːkakiʣoːʤi]字書き上手。能書家。
ジーカキプス [⸢ʤiːkaki⸣pu̥su]字を書く人。字の上手な人。書家。
シーカザ [⸢ʃiː⸣kaʣa]乳の臭い。乳臭さ。
シーカタ [⸢ʃiːkata]仕方。方法。⸢シー⸣ヨー[⸢ʃiː⸣joː](仕方。方法)ともいう。
シーカラーン [⸢ʃiːkaraː⸣ŋ]「乳軽し」の義。乳の出が少ない。鳩間島では、産婦の乳の出を良くするために、⸢マンズイ⸣ヌナル[⸢manʣui⸣nu ⸣naru](パパイヤの実)を食べさせた。
シーカンティー [⸢ʃiːkantiː]し兼ねる。「為兼ねて」の義。なかなか~しにくい。なかなか~むずかしい。
シーキサ [⸢ʃiː⸣ki̥sa]帆柱の楔の一種。⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](板舟<サバニ>)の帆柱を立てるウ⸢シカキ[ʔu⸢ʃikaki](船首の梁)の穴に差し込んで帆柱の角度を調整する楔形の船具。穴の⸢オーラ[⸢ʔoːra](風上の側)には薄い⸢シー⸣キサを差し、ッ⸢ソーマ[s⸢soːma](風下の側)には厚くて大きな⸢シー⸣キサを差し込む。強風の際は、風下側にシー⸣キサを二枚重ねて差し込み、帆柱の角度を風上側に傾けて風力を減殺する。また、帆柱の前方にも二枚の⸢シー⸣キサを重ねて帆柱を艫側にも傾け、風力をさらに減殺することもある。これによって⸢プームティシゥカ⸣ラ[⸢puːmutisï̥ka⸣ra](風力。風圧。帆にかかる力)を⸢ピーヌール[piːnuːru](⸢舳乗り」の義か。ミ⸢ナー{SqBr}mi⸢naː{/SqBr}<帆を吊るし揚げる縄。「水縄」の義か>を手に巻いて風上の方へ身を乗り出し、帆柱を引っぱってサバニの安定を図る乗員)一人分の風圧の調整ができるという。
シーキスン [⸢ʃiːkisuŋ]他動し遂げる。成し遂げる。終了する。完了する。「為切る」の転訛したもの。
シー キスン [⸢ʃiː kisuŋ]全うする。し遂げる。成し遂げる。「し切る」の義。
シーキチ [⸢ʃiː⸣ki̥ʧi]まんなおし(間直し)。げん直し。「清潔」の転訛したものか。不漁の際、豊漁を祈願する行事。カツオ漁船の不漁が続くと、漁船を浜辺に寄せ、干潮時に船底に付着した海苔や小さな牡蠣などを、茅を燃やして焼き落とし、船を洗って船霊様に豊漁を祈願して酒宴を開いた。
シーグ [⸢ʃiː⸣gu]小刀。削りそぐ小刀。沖縄古語「みすへご」『混効験集』とある。「鉏<さひ>(鋭利な剣)・具」の転訛したものか。「太刀ならば呉(くれ)の真鉏」⸢日本書紀歌謡103」の転訛したものか。カ⸢タパーシー⸣グ[kḁ⸢tapaːʃiː⸣gu](片刃小刀。片刃)ともいう。
シー クーン [⸣ʃiː ⸣kuːŋ]貰い乳をする<乳を乞う>。「~緑児の知許布我其登久『万葉集 4122』」の義。
シークイ [⸢ʃiː⸣kui]もらいぢ(貰い乳)。「乳乞い」の義。他人の乳を貰って乳児を育てること。
シークサ [⸢ʃiː⸣kusa]フィラリア症。フイラリアの感染によって女性の乳房が腫れ、悪寒発熱、頭痛が続く疾病。
ジークサイ [⸢ʤiː⸣kusai]{1}整地。整地して種蒔きする準備をすること。地こしらえ(地拵え)。
ジークサイ [⸢ʤiː⸣kusai]{2}地面をならし固めること。⸣ヤッシェー[⸣jaʃʃeː](かけや<掛矢>。地搗き)で地固めをすること。
ジークシライ [⸢ʤiːkuʃi⸣rai]土ならし。畑の整地。畑などの地均し。「地拵え」の義。⸢ジー⸣クサイ[⸢ʤiː⸣kusai](土均し。整地)ともいう。
シーグリサン [⸢ʃiːguri⸣saŋ]しにくい(為難い)。しづらい。やりにくい。
シークヮーサー [⸢ʃiːkwaː⸣saː](植)蜜柑の一種。ヒラミレモン。酸味が強く、刺身に振りかけて食すると美味である。沖縄方言からの借用語か。鳩間島では、単にフ⸢ナ⸣ブ[ɸu⸢na⸣bu](九年母)ということが多い。
シーゴーダー [⸢ʃiːgoː⸣daː]血だらけ。血まみれ。血液がべったりと付くさま。
ジーサンシキル [⸢ʤiː⸣saŋʃi̥kiru](動)ナマコ(海鼠)の一種。鳩間島の後ろの干瀬の頂上部に多く棲息している。体長約15センチの小さなナマコ。これを足で踏みつけて汁を出し、潮溜まりに入れると魚が仮死状態になって浮いてくるので、簡単に漁獲することが出来た。
シーシ [⸢ʃiː⸣ʃi]すす(煤)。煙が塵や埃と一緒になって固まったもの。「~凝烟を訓みて州須(スス)と云ふ」『和名抄』の転訛したもの。
シーシ [⸢ʃiː⸣ʃi]肉。四つ足(獣)類の肉。稀に人間の肉についてもいう。ア⸢バッ⸣タラ[ʔa⸢bat⸣tara](脂肉)に対して赤肉などをいう。⸢オー⸣ヌ ⸢シー⸣シ[⸢ʔoː⸣nu ⸢ʃiː⸣ʃi](豚肉)、カ⸢マイ⸣ヌ ⸢シー⸣シ[ka⸢mai⸣nu ⸢ʃiː⸣ʃi](猪の肉)という。魚類の肉は⸢ミー[⸢miː](身)という。
シーシ [⸢ʃiː⸣ʃi]獅子頭。獅子舞の獅子。西村の獅子は雌で、東村の獅子は雄といわれている。西村の獅子元(獅子頭を保管する家)は大工家。東村の獅子元は小浜家である。盆のナ⸢カヌ⸣ピー[na⸢kanu⸣piː](中の日。旧暦7月14日)の夜からウ⸢クリ[ʔu⸢kuri](精霊送りの日。旧暦7月15日)の夜にかけて獅子舞とアンガマ踊り隊が各家を回って踊り、祖霊を慰める。
ジージー [⸢ʤiːʤiː]じとじと。じくじく。汗の流れるさま。
ジージー [⸢ʤiːʤiː]{1}ニイニイゼミの鳴き声。擬声語。
ジージー [⸢ʤiːʤiː]{2}豚肉や魚肉を油炒めにする音。
ジージーシ [⸢ʤiːʤiː⸣ʃi]汗がじくじく出るさま。脂汗が出るさま。
シーシェーン [⸢ʃiːʃeː⸣ŋ]自動出来る。可能である。することが出来る。しきれる。「し・きれる」の転訛したもの。丁寧な発音では、シーッシェーン[ʃiːʃʃeːŋ]という。
シーシェーンコーラシ [⸢ʃiːʃeː⸣ŋ ⸢koːra⸣ʃi]出来るふりをして。
シーシ カブン [⸢ʃiː⸣ʃi ⸣kabuŋ]{1}獅子舞をする(獅子頭を被る)。
シーシ カブン [⸢ʃiː⸣ʃi ⸣kabuŋ]{2}獅子頭のように頭髪が伸び放題になり、外見が甚だしく悪くなる。
ジーシキムヌ [⸢ʤiːʃi̥ki⸣munu]栄養物。滋養分。根気のつく食品。
シーシギルン [⸢ʃiːʃigiruŋ]他動し過ぎる。やりすぎる。
シーシダマ [⸢ʃiː⸣ʃidama](植)数珠玉。畑地に自生するイネ科の多年草植物。高さ約1メートル。硬い果実の珠をつける。子供はこれに糸を通し、数珠やネックレスに作って遊んだ。
シーシヌ キン [⸢ʃiːʃi⸣nu ⸣kiŋ]⸢獅子の衣」の義。獅子頭につけて獅子舞をするのに用いる衣装。サ⸢ミ[sa⸢mi](月桃)の幹を打ち裂いて乾燥し、これで縄を綯い、目の粗い網を編んで衣装の土台にした。芭蕉の皮を打ち裂いて乾燥させた繊維を土台の網に結んで獅子の衣装に作った。サミの代わりに⸢フー⸣カラ[⸢ɸuː⸣kara](クロツグ<桄榔>の繊維)で綯った縄を用いることもあった。これは、西村、東村の子供たちがお盆の月に入ると一定の場所に集まって、競争して作ったものである。
シーシ パースン [⸢ʃiː⸣ʃi ⸢paː⸣suŋ]獅子舞いを囃し立てる。獅子舞を先導しながら囃す。獅子舞をさせる。鞠を投げたり、棒を振ったりして囃す。
シーシバル [⸢ʃiːʃibaru]血尿。潜血尿。「血いばり」の義。腎炎、膀胱炎等にみられる『医学沖縄語辞典』。
シーシピカリ [⸢ʃiːʃipi̥ka⸣ri]痩せこけること。筋肉がこそげること。筋肉がそぎ落とされること。
シー シビルン [⸣ʃiː ʃi⸢biruŋ]母親の乳を強く吸う。しゃぶる。
シーシ フーン [⸢ʃiː⸣ʃi ⸣ɸuːŋ]煤ける。煤が付く。「煤喰らう」の義。「Susu.スス(煤)煙突の煤、または、煙突のない家の煤」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
シーシ フーン [⸢ʃiː⸣ʃi ⸣ɸuːŋ]身震いする。寒さで筋肉が震える。⸢シー⸣シ[⸢ʃiː⸣ʃi]は、「Xixi.シシ(肉)骨と区別して肉のことをいう」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。⸣フーン[⸣ɸuːŋ](震える)は、「Furui,ruˇ,uˇta.フルイ、ゥ、ゥタ(震・振ひ、ふ、うた)寒さや恐ろしさのためにふるえる」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
シーシ マーシ [⸢ʃiː⸣ʃi ⸢maːʃi]獅子舞をすること。「獅子まわし」の義。⸢シー⸣シ ⸢パー⸣シ[⸢ʃiː⸣ʃi ⸢paː⸣ʃi](獅子はやし)ともいう。普通は、獅子頭を持つ人と、尻尾を持つ人に二人一組で獅子舞をした。ビーロビ、ビーロビー、という笛の音に乗せて、百獣の王よろしく、ゆっくりと力強く舞うことによって悪霊を祓い、邪気を祓うものと信じられている舞い方と、モーヤーなどの三線歌曲に乗せて舞うことによって祖霊を慰める舞い方があるといわれている
シーシ マースン [⸢ʃiː⸣ʃi ⸢maːsuŋ]獅子舞をする。「獅子舞わす」の転訛したもの。獅子頭を持つ人と尻尾を動かす人が獅子の着物<衣装>を被って、呼吸を合わせて獅子舞をした
シーシマチリ [⸢ʃiːʃimaʧi⸣ri]「獅子頭祀り」の義。お盆の中日に、⸢ダイ⸣ケー[⸢dai⸣keː](大工家)とク⸢メー[ku⸢meː](小浜家)で執り行われる獅子頭供養の儀式。⸣グシパナ[⸣guʃipana](神酒と花米)を供え、香を焚いて行われる。お盆の中日の夕刻、化粧した獅子頭に衣装をつけ、当家の仏間の庭に安置して供物を供えて祈願する。それが済んでから獅子舞が行われる。獅子祀りの酒は集まった人々に振舞われた。
シーシムラシ [⸢ʃiːʃimura⸣ʃi]筋肉の塊。肉塊。
シージル [⸢ʃiːʤiru]血管。「血弦」の義か。
シージル [⸢ʃiːʤiru]血まみれになること。血みどろになること。血だらけになること。
シージル [⸢ʃiːʤiru]血管。血筋。
ジージルマースン [⸢ʤiːʤirumaː⸣suŋ]他動懲らしめる。叩いて厳しく仕付ける(躾ける)。泥まみれにして諌め懲らしめる。
ジーシンカ [⸣ʤiːʃiŋka]地謡衆。地謡人数。「地臣下」の義。地謡のメンバー。
シースー [⸢ʃiːsuː]師匠。先生。
シースギ [⸢ʃiːsugi]し過ぎること。やりすぎ。
シースクライ [⸢ʃiːsu̥ku⸣rai]巣ごしらえ。豚の出産準備に茅を豚小屋に敷き詰めること。
シー スクルン [⸣ʃiː su̥⸢ku⸣ruŋ]巣を造る。巣食う。
ジー スクン [⸢ʤiː⸣ su̥kuŋ]滋養がつく。栄養になる。
ジー スクン [⸢ʤiː sukuŋ]滋養がつく。栄養、薬用効能が効く。
シーソー [⸢ʃiː⸣soː](植)紫蘇。
シーゾー [⸢ʃiː⸣ʣoː]製造。
シーゾージ [⸢ʃiːʣoːʤi]上手である。上手。「為・上手」の義。
シーゾーニン [⸢ʃiːʣoː⸣niŋ]鰹節製造人。
シーゾーヤー [⸢ʃiːʣoː⸣jaː]鰹節製造工場。「製造屋」の転訛したもの。カツオ漁業の導入に伴って沖縄本島の本部方言から借用された語であろう。鰹節製造工場には、一棟に生魚を捌く所、ナ⸢カ⸣ワリ[na⸢ka⸣wari](三枚卸し)、ヨ⸢ツワリ[jo⸢ʦuwari](四つ割り。三枚卸したものを⸢ミー⸣ブシ{SqBr}⸢miː⸣buʃi{/SqBr}<女節>と⸢ウー⸣ブシ{SqBr}⸢ʔuː⸣buʃi{/SqBr}<雄節>の部分に卸すこと)にする、カ⸢ツバザイマニツァ[kḁ⸢ʦubaʣaimaniʦa](カツオを捌く俎板)のある場所、イ⸢ズネーシカマ[ʔi⸢ʣuneːʃikama](カツオを煮る大釜)の場所、シ⸢ル⸣ク ッ⸢ふァーシトン[ʃi⸢ru⸣ku f⸢faːʃitoŋ](大釜で煮たカツオを焙乾する前に整形補正する所)があり、別棟にナ⸢ヤ[na⸢ja](事務所、倉庫を兼ねた納屋)と、バイカンヤー[⸢baikaŋ⸣jaː](焙乾屋)があった。
ジーダイ [⸢ʤiː⸣dai]地代。田地や畑地の地代。
シーダニ [⸢ʃiː⸣dani]乳房のしこり。「乳種<ぐりぐり>」(リンパ腺)の義か。
シーダニ バリ [⸢ʃiː⸣dani ba⸢ri]産婦の乳房のしこりを揉みほぐすこと。「乳種割り」の義。しこりを取り除くことによって乳の出をよくしたり、乳の病気の予防にしたりした。
シー ダラダラ [⸢ʃiː⸣ daradara]血がタラタラ滴る。
シーッ [⸢ʃiːt]他の動作を制止するときの声。人差し指を口に当てて、⸢シーーッ[⸢ʃiːːt](静かに{EOS!})。乳幼児を抱いて便器に向かい、小用を催促する際に発する声。
シーッサリカザ [⸢ʃiːssari⸣kaʣa]母乳の発酵した臭い。「乳腐れ臭い」の義。
シー ッシー [⸢ʃiː⸣ ʃ⸢ʃiː]鶏など家畜類を追いやる際に発する語。
シーッス [⸢ʃiːssu]血便。血液の混じった便。「血糞」の義。
シーッパイ [⸢ʃiːp⸣pai]精一杯。一生懸命。
シーッふァイッふァ [⸢ʃiːffai⸣ffa]乳飲み子。「乳食い子」の義。
シーッふァイパー [⸢ʃiːffai⸣paː]乳歯。「乳食い歯」の義。生後6ヶ月頃から生え始めるが、7,8歳~11、12歳頃に永久歯に生えかわる。
シーティ [ʃiː⸢ti]強いて。無理に。敢てさからって。むやみに。
シーティー [⸢ʃiːtiː]名手。名人。やり手。「仕手」の義。
シートゥ [⸢ʃiː⸣tu]生徒。「明治29年6月16日、初めて当村においても学校を設立することとなり、当村事務所の西隣の僅か92坪の地に、幅が2間、長さ3間半、総坪数7坪の掘建て小屋を作り、就学児童23人を収営して大川尋常小学鳩間分校と称し、雇教員大濱安能氏当分校勤務を命ぜらる。此れ当村に於て教育の嚆矢なり」『波濤をこえて 鳩間小学校創立百周年記念誌』とある。昭和になって八重山に中等学校、女学校が設置されたから「生徒」という語彙も其の頃に借用されたものであろう。戦後の六・三・三・四制教育により、鳩間島に鳩間中学校が設置され、「生徒会」も設置された。
シートゥー [⸢ʃiːtuː]製糖。戦前には鳩間島にも製糖組合が結成され、製糖小屋を作り、圧搾機を牛に引かせて回し、砂糖黍を絞って製糖していたという。
シートゥーグルマ [⸢ʃiːtuːguruma]製糖用の鉄製の歯車。製糖用の圧搾機。⸣サタグルマー[⸣satagurumaː](砂糖車)ともいう。牛に引かせて回し、砂糖黍を圧搾して汁を搾り、鉄鍋に煮て黒糖に仕上げた。製品は樽に詰めて石垣島に出荷された。
シートゥーヤー [⸢ʃiːtuːjaː]製糖小屋。「製糖屋」の義。
シートゥズミルン [⸢ʃiːtuʣumi⸣ruŋ]他動終了させる。し終える。完了させる。完成する。⸢スン[⸢suŋ](する)の連用形⸢シー[⸢ʃiː]にトゥ⸢ズミ⸣ルン[tu⸢ʣumi⸣ruŋ](完了する。「とぢめ(閉ぢめ)下二」、源氏物語 空蝉、の転訛か)が下接してラ行四段活用化した複合動詞。
シートゥズムン [⸢ʃiːtuʣumuŋ]他動終了する。し終える。完了する。⸢シートゥズミルン[⸢ʃiːtuʣumiruŋ](し終える)と同じ複合動詞。マ行四段活用化したもの。
シーナライ [⸢ʃiːnarai]しなれること。熟練すること。常日頃やっていること。習慣的にしていること。「し慣れ」の義。
ジーナラシ [⸢ʤiːnara⸣ʃi]地ならし。家屋建築の際、柱を立てる地面を水平に搗き固めること。
シーニー [⸢ʃiː⸣niː]後ろの荷。
シーヌ アールン [⸢ʃiːnu ʔaːruŋ]血が騒ぐ。興奮する。⸢血が暴れる」の義。霊的なものによって胸がざわざわして上気<じょうき>し、血が頭に上って興奮し、取り乱す。
シーヌウチ [⸢ʃiːnuʔuʧi]「垣の内」の義。西表島北岸の伊武田崎にある地名。猪垣を廻らした跡が今も残っている。明治中期頃まで鳩間島の人が⸢シーヌウチ[⸢ʃiːnuʔuʧi](垣の内)に小屋がけして水田耕作をしたと伝えられるところ。乾隆18年(1753)の「参遣状」に同<人口>450人、同<耕作当>1人、現在の定員以外に一人、増員お願い申しあげます。但し、土地が狭いので、西表地域へ海を越えて渡り、仮屋を作り耕作しており、一人では指示できないため、」『参遣状抜書<下巻>』とある。
ジーヌ カザ カブン [⸢ʤiː⸣nu ka⸢ʣaː⸣ ka⸢buŋ]腰が曲がって歩くさま。年老いて腰が曲がって歩くさま。「地面の匂いを嗅ぐ」の義。
ジーヌギ [⸢ʤiːnugi]「地抜き」の義か。旅先や海上で死んだ人の霊魂は、落命(臨終)の地に落ちてさ迷い成仏できないと信じられている。従って、出来るだけ早く落命した地へ行き、地の神や竜宮の神に祈願をし、死者の霊を解放してもらい、成仏させるための祭事を執り行った。老婆やサ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司。女性神職者)に依頼して祈願してもらうか、ユ⸢タ[ju⸢ta](巫女。いちこ)に依頼して⸢ジーヌギ[⸢ʤiːnugi](地抜き)の祈願をしてもらった。この祈願は、仕方を誤ると霊界に通らないこともあり、難しいという。
ジーヌギ [⸢ʤiːnugi]不慮の事故で死んだ人の霊を落命の地より解放<抜き放>して故郷へ戻す祈願。「地抜き」の義か。
シー ヌギルン [⸢ʃiː⸣ nu⸢gi⸣ruŋ]血が抜ける。体力が極度に弱る。「血抜ける」の義。
シー ヌグン [⸢ʃiː⸣ nuguŋ]血が抜ける。体力が極度に弱る。「血抜く」の義。
ジーヌシ [⸢ʤiː⸣nuʃi]地主。
シーヌ タカーン [⸢ʃiːnu⸣ tḁ⸢kaː⸣ŋ]血圧が高い。
シーヌ タラーヌ [⸢ʃiːnu⸣ ta⸢raːnu]血圧が低い。貧血である。⸢血が足りない」の義。
シーヌ パラシキルン [⸢ʃiː⸣nu pa⸢raʃi̥kiruŋ]乳房に乳が溜まって張り詰める。
シーヌ フチ [⸢ʃiː⸣nu ɸu̥⸢ʧi]乳首。「乳の口」の義。
シーヌフチ [⸢ʃiːnu⸣ɸuʧi]乳首。
シーヌミキョーダイ [⸢ʃiːnumikjoː⸣dai]乳兄弟(乳飲み兄弟)。肉親ではないが、同じ人の乳で育てられたもの同士。
シーヌ ミチ [⸢ʃiːnu⸣ miʧi]血管。「血の道」の義。⸢シージル[⸢ʃiːʤiru](血管。<血弦>の義)、⸢アウジル[⸢ʔauʤiru](青筋。静脈。<青弦>の義)ともいう。
シーネー [⸢ʃiː⸣neː]後ろ隣。後ろの家。北隣。鳩間村は友利御嶽を腰当森にし、島の南海岸に面して立地しているので、原則として各家の門は南に向いている。従って、後ろの家は全て北側にあり、北隣の家となる。
シーノースン [⸢ʃiːnoːsuŋ]他動為直す。やり直す。
シーバイ [⸢ʃiːbai]残飯や饐えた食品にたか(集)る小さな蝿。小蝿。「饐え蝿」の転訛したものか。
シーバイ [⸢ʃiː⸣bai](動)昆虫の名。饐えたものにたかる小さな蝿。「饐え蝿」の義か『沖縄今帰仁方言辞典』。夏になると食物の饐えたものなどにこの小蝿がたかる。
シーパキ [⸢ʃiː⸣paki]よだれかけ(涎掛け)。「乳吐き」の義か。乳児が飲んだ母乳を口から涎と一緒に出すのを拭き取るために首に掛けるもの。
シーバク [⸢ʃiːbaku]釣り針箱。漁具を入れる箱。
シーパジミ [⸢ʃiːpaʤimi]開始。し始め。やり始め。物事のやり始め。
シーパジミルン [⸢ʃiːpaʤimiruŋ]他動開始する。し<為>始める。
ジーバタ [⸢ʤiːba⸣ta]じばた(地機)。脚の低い伝統的な織機。いざりばた(居座機)。後に改良されたタ⸢カバ⸣タ[tḁ⸢kaba⸣ta](たかばた<高機>)が普及した。昭和30年代までは年寄り達によって地機が使用されたいた。
シーパナリ [⸢ʃiːpana⸣ri]乳離れ。乳児の離乳についてのみいう。
シーバ フイ  [⸢ʃiː⸣ba ⸣ɸui]巣をくう。巣くう。巣を造る。
シー パヤーン [⸢ʃiː⸣ pa⸢jaː⸣ŋ]するのが早い。仕事が速い。やり遂げるのが早い。
シー パルン [⸢ʃiː⸣ paruŋ]血が流れる。血が出る。「血・走る」の義。
シーバン [⸢ʃiː⸣baŋ]巣の番。巣守。鶏卵を全部取らないで、産卵を促すために一個だけ巣に残す卵。
シーピキマイピキ [⸢ʃiː⸣pi̥kimaipi̥ki]前後に供の者を多数従えること。ABCDEFCD型の重言。
シー ピクン [⸢ʃiː⸣ pi̥⸢kuŋ]{1}血を流す。「血・引く」の義。
シー ピクン [⸢ʃiː⸣ pi̥⸢kuŋ]{2}血縁関係にある。血の繋がり<血を引く関係>がある。
シー ピクン [⸢ʃiː⸣ pi̥⸢kuŋ]血を引く。血筋を受け継ぐ。
シーピサ [⸢ʃiː⸣pi̥sa]屋根の後方の斜面。「背平<後ろ平>」の義。⸢マイ⸣ピサ[⸢mai⸣pi̥sa](前平。前の斜面)の対義語。
ジーピシ [⸢ʤiː⸣pi̥ʃi]地搗きすること。胴突きすること。「地へし」の義。家屋建築の際、柱を建てる礎石の地盤を固めるために人力を利用して搗き固める作業のこと。
ジーピシヤマ [⸢ʤiːpi̥ʃi⸣jama]地搗き櫓。胴突き。地盤を突き固めるために櫓を組んで、その中に丸太を立て、数本の綱をそれに結びつけ、多数の人がそれを引いては落とす仕掛けをしたもの。
ジービラ [⸢ʤiː⸣bira](植)野菜の名。ニラ(韮)。全体に強い臭気があり、葉は扁平で柔らかく、幅約8ミリ、長さ約25センチに成長する。魚のお汁に入れて臭みを消すのに用いられる。⸢ソーミンチャン⸣プルー[⸢soːminʧam⸣puruː](素麺の炒めもの)にいれると美味である。
シーブ [⸢ʃiːbu]お歳暮。お中元。歳末や御盆にする贈り物。1960年頃までは自家製の米や漁獲物の燻製品を親戚や姉妹の家に贈っていた。
ジー フカスン [⸣ʤiː ɸu̥⸢ka⸣suŋ]土地を肥やす。
シーフクル [⸢ʃiːɸu̥ku⸣ru]乳房。「乳袋」の義。
シー プサン [⸢ʃiː⸣ pu̥saŋ]したい。動詞⸢スン[⸢suŋ](する)の連用形に補助形容詞⸣プサン[⸣pu̥saŋ](~たい<欲しい>)が付いて形成された形。発話者自身の欲する気持ちを表す。
シープサン [⸢ʃiː⸣pu̥saŋ]したい。動詞⸢スン[⸢suŋ](する)の連用形に、形容詞⸣プサン[⸣pu̥saŋ](~欲しい。~たい)が下接して形成された連語。
シーフチ [⸢ʃiːɸu̥ʧi]{1}仕方。方法。やり方。「仕口」の転訛したもの。
シーフチ [⸢ʃiːɸu̥ʧi]{2}し初め。
ジーフナイ [⸢ʤiː⸣ɸunai]下船して陸に上がってもなお続く船酔い。「地船酔い」の義。
ジーブニ [⸢ʤiː⸣buni]「地船」の義。地元八重山で造られた船。
シーブン [⸢ʃiːbuŋ]おまけ(御負け)。品物を添えたり、値引きしたりすること。
ジーホー [⸢ʤiː⸣hoː]屋敷。屋敷の祈願の願文⸢カン⸣フチ ニ⸢ガイ⸣フチ[⸢kaŋ⸣ɸu̥ʧi](神口・願い口)の語。
シーマーキ [⸢ʃiːmaːki]~し兼ねて。することが出来ない。動詞の連用形ついて⸢~できない」状態を表す。
ジーマイ [⸢ʤiː⸣mai](植)おかぼ。陸稲。「地米」の義。
シーマザーリ シバル [⸢ʃiːmaʣaːri⸣ ʃi⸢ba⸣ru]潜血尿(occult blood in urine)。⸢血の混じった小便」の義。
ジーマシ [⸢ʤiːma⸣ʃi]土地財産。田や畑等の財産。
ジーマシ [⸢ʤiː⸣maʃi]土地。財産。地所。「じます(地枡)」の義か。
シーマチガイ [⸢ʃiːmaʧigai]しまちがい。し誤り。失敗。
ジーママ [⸢ʤiːmama]じまま(自儘)。わがまま(我儘)。きまま(気儘)。やりたい放題。標準語からの借用語か。
ジーマミ [⸢ʤiː⸣mami]落花生。南京豆。「地豆(地中に出来るまめ)」の義。ピーナツ。地下で繭形のきょうか<莢果>をむすぶ。
ジーマミトーフ [⸢ʤiːmamitoː⸣ɸu]落花生の豆腐。落花生を擂り潰して作った豆腐。
ジーマミドーフ [⸢ʤiːmamidoː⸣ɸu]落花生豆腐。落花生で造った豆腐。
ジーマン [⸢ʤiːmaŋ]自慢。うぬぼれる(自惚れる)こと。フ⸢チガール[ɸu̥⸢ʧigaːru](自慢すること。自惚れること。自負すること。思いあがること。威張ること)ともいう。
ジーマンサー [⸢ʤiːmansaː]自惚れる人。自惚れや。よく自慢する人。フ⸢チガール[ɸu̥⸢ʧigaːru](自慢すること)ともいう。
シーミーサー [⸣ʃiːmiːsaː]清明茶。中国茶の一つ。主に台湾から輸入されていた。
シーミチ [⸢ʃiːmiʧi]仕方。方法。しよう。「しみち(為道)」の転訛したもの。
シーミルン [⸢ʃiː⸣miruŋ]自動やってみる。してみる。試みる。試してみる。
シームヌ [⸢ʃiːmunu]吸い物。すまし汁に、⸢ソー⸣ミン[⸢soː⸣miŋ](素麺)、カ⸢マブク[ka⸢mabuku](蒲鉾)を賽の目に切ったもの、シ⸢ビラ[ʃi⸢bira](韮)等を入れた汁。
シームヌ [⸢ʃiː⸣munu]酸っぱいもの。酸味のあるもの。
シームヌ [⸢ʃiːmunu]すいもの(吸物)。野菜や魚肉などを入れた澄まし汁。神事や祝儀、法事の際に供されるお汁。
シームヌバン [⸢ʃiːmunubaŋ]吸い物椀。
シームヌバン [⸢ʃiːmunubaŋ]吸い物椀。
シームラシ [⸢ʃiːmuraʃi]血の固まり。血の凝固したもの。
ジームラシ [⸢ʤiːmura⸣ʃi]つちくれ(土塊)。開墾して大きく掘り返した土塊。
シーメーユクン [⸢ʃiː⸣meːjukuŋ]鉤のない鋭利な銛。銛の先端に返し鉤のないもの。魚を突いて漁獲する漁具。鳩間島の漁師が素潜り漁をする際には、この⸢シー⸣メーユクン[⸢ʃiː⸣meːjukuŋ](鉤のない銛)と⸣ガルユクン[⸣garujukuŋ](先端に鉤のある銛)を持参し、使い分けて漁をした。
シーヤッサン [⸢ʃiːjas⸣saŋ]いやすい(為易い)。⸢スン[⸢suŋ](する)の連用形に補助形容詞⸢ヤッ⸣サン[⸢jas⸣saŋ](~し易い)が下接した形。
シーヤビプス [⸢ʃiːjabi⸣pu̥su]ハンセン病患者。「血やぶれ人」の義。
シーヤン [⸢ʃiː⸣jaŋ]酸い。酸っぱい。⸢シー⸣ルン[⸢ʃiː⸣ruŋ](饐える)から派生した語か。「酢、スユル」『色葉字類抄』の転訛したもの。
シーヨー [⸢ʃiː⸣joː]仕方。要領。仕様。しぐさ(仕種)。
ジーヨー [⸢ʤiː⸣joː]甍を作るときに、甍に差し込む横木のこと
ジーヨー [⸢ʤiː⸣joː]前方へ張る⸢ティン⸣ナー[⸢tin⸣naː](手縄)。{フ⸢クル⸣プー[ɸu̥⸢kuru⸣puː](袋帆。和船の帆)の中間に一本と、更に下の⸢プーギタ[⸢puːgita](帆桁。その左半分を⸣カタ{SqBr}⸣kata{/SqBr}<肩>という)との中間部に一本張る⸢ティン⸣ナー[⸢tin⸣naː](手縄)}
シーヨーシザマ [⸢ʃiːjoːʃiʣama]仕様しざま。やり方や心がけ。要領や態度。
シーヨームイヨー [⸢ʃiːjoːmui⸣joː]仕方、模様。仕様、様子。方法。やり方。「仕様模様」の義。ABCDEFCD型の重言。
シーラ [⸢ʃiː⸣ra](動)魚の名。和名、ミナミキビナゴ(体長約6センチ)。バ⸢カザ⸣コー[ba⸢kaʣa⸣koː]ともいう。カツオ漁船の撒餌として漁獲された。ム⸢ジ⸣アン[mu⸢ʤi⸣aŋ](網目の細い網<約1、5ミリ四方の網目>)で掬い取って漁船のイ⸢キ⸣マ[ʔi⸢ki⸣ma](生け間。生簀)に生けてカツオを釣る際に撒餌にした。中級の撒餌といわれていた。
シーラ [⸢ʃiː⸣ra]冷え込みから生じる病気。女性の冷え性。
シーラ クマルン [⸢ʃiː⸣ra ku⸢ma⸣ruŋ]寒気の毒気が体内にこもって病気になる。
シーラスン [⸢ʃiːra⸣suŋ]他動饐えさせる。⸢シー⸣ルン[⸢ʃiː⸣ruŋ](饐える)の未然形に使役の助動詞⸢スン[⸢suŋ](する)が下接して形成された使役動詞。
シーラッサーク [⸢ʃiː⸣rassaːku]冷え込みがもとで発症する激しい咳の病気。「気管支炎の慢性炎症で、気管支粘膜からの分泌物が多く見られる病気。痰が長らくよく出る状態」『医学沖縄語辞典』。
シーリイー [⸢ʃiːri⸣ʔiː]饐えたご飯。「饐え飯」の義。
シーリウン [⸢ʃiːri⸣ʔuŋ]饐えた煮芋。
シーリカザ [⸢ʃiːri⸣kaʣa]饐えた臭い。
シールン [⸢ʃiː⸣ruŋ]自動饐える。食物が腐敗して酸っぱくなる。「酢、スユル」『色葉字類抄』の転訛したもの。
シールン [⸢ʃiː⸣ruŋ]自動ぐずつく。ぐずる。駄駄を捏ねる。
シーワザ [⸢ʃiːwaʣa]仕業。所業。標準語からの借用語が転訛したもの。卑しめた言い方。
シアガルン [ʃi⸢agaruŋ]自動仕上がる。完成する。出来上がる。
シアギルン [ʃi⸢agiruŋ]他動仕上げる。完成する。しおえる。
シアグン [ʃi⸢aguŋ]他動仕上げる。成し遂げる。完成する。「しあぐ<下二段>」の四段活用に転訛したもの。
シゥカ [⸣si̥ka]助数一束の半分。「つか<束>」の義か。片手で握った分。これを二つ合わせて、プ⸢スタブ⸣ル[pu̥⸢sutabu⸣ru](ひとたば<一束>)という。
シゥカーリムヌ [si̥⸢kaːrimunu]召使。小使。下男。用務員。下働き。「使われ者」の転訛した語。
シゥカーン [sï̥kaːŋ]近い。距離の隔たりが小さい。シ⸢カー⸣ンとも言う。
シゥカイ [si̥⸢kai]差し支え。支障。心配事。「つかえ<支え>」の義。
シゥカイ [si̥⸢kai]支柱。
シゥカイ アースン [si̥⸢kai ʔaː⸣suŋ]使い較べる。「使い合わせる」の義。二つのものを使い比べてみる。
シゥカイキー [si̥⸢kaikiː]支柱。「つかえぎ<支え木>」の義。老年層は、シゥ⸢カンギー[si̥⸢kaŋgiː](支柱)というのが普通。
シゥカイグトゥ [si̥⸢kaigutu]支障。差し支え。「支え事」の義。
シゥカイットー [si̥⸢kaittoː]使っての便利さ。使い勝手。利用価値。「使いとう<度う>」『石垣方言辞典』の義。
シゥカイトースン [si̥⸢kaitoːsuŋ]他動使い潰す。散々に使う。こぎ使う。「使い倒す」の義。シゥ⸢カイットースン[si̥⸢kaittoːsuŋ](使い潰す。こぎ使う)ともいう。
シゥカイバー [si̥⸢kai⸣baː]経費。入用の経費。出費。「使い方<ほう>」の義。
シゥカイバタ [si̥⸢kaibata]陣痛。差し込むように痛む腹痛。ッ⸢ふァナシ⸣バタ[f⸢fanaʃi⸣bata](子産み腹)ともいう。
シゥカイミジ [si̥⸢kaimiʤi]使い水。雑用水。飲料水に対する用水。
シゥカイミチ [si̥⸢kaimiʧi]用途。使い方。「使い道」の義。
シゥカイムヌ [si̥⸢kaimunu]{1}毎日使っているもの<物品>。
シゥカイムヌ [si̥⸢kaimunu]{2}使い者。使者。下僕。下男。召使い。
シゥカイルン [si̥⸢kairuŋ]自動{1}支える。
シゥカイルン [si̥⸢kairuŋ]自動{2}差し込まれるように痛む。陣痛や腹痛で痛む。
シゥカウン [si̥⸢kauŋ]他動{1}使う。使用する。シ⸢カウン[ʃi̥⸢kauŋ](使う)(若年層)ともいう。
シゥカウン [si̥⸢kauŋ]他動{2}雇って働かせる。使役する。
シゥカウン [si̥⸢kauŋ]他動{3}用にあてる。役立たせる。
シゥカウン [si̥⸢kauŋ]他動{4}操る。操作する。
シゥカウン [si̥⸢kauŋ]他動{5}費やす。消費する。
シゥカウン [si̥⸢kauŋ]自動支える。支柱で支える。
シゥカウン [si̥⸢kauŋ]自動{2}陣痛や腹痛で痛む。差しこまれるように痛む。
シゥカスン [sï̥⸢kasuŋ]他動鋤きで田畑を鋤く<鋤かせる>。
シゥカスン [si̥⸢ka⸣suŋ]他動置かす。置かせる。
シゥカスン [si̥⸢kasuŋ]他動聞かせる。若年層は、シ⸢カスン[ʃi̥⸢kasuŋ](聞かせる)という。
シゥカスン [si̥⸢kasuŋ]他動案内する。お連れする。招待する(老年層)。「使いする」の義。案内役を出して招待する意味。「みおむつかい 奉屈請事『混効験集』」、「請来 子蓋失『琉球館訳語』」とある『沖縄古語大辞典』。
シゥカソーラナーラ [si̥⸢kasoː⸣ranaː⸢ra]いらっしゃいませ。よくお出でくださいました。お上がりくださいませ。最上級の挨拶。校長先生や村長さんなど、石垣島から見えた役人に対して用いた。
シゥカソーリ [si̥⸢kasoː⸣ri]いらっしゃいませ。よくお出でくださいました。お上がりください。島の長老や年長者に対して用いた。
シゥカッティグトゥ [si̥⸢kattigutu]さわりごと。障害となること。差し支え。たたり。「~沖つ浪千重に立つとも佐波里安良米也母『万葉集 3583』」の義が派生変化したものか。シゥ⸢カッティグトゥ[si̥⸢kattigutu](さわりごと。たたり)ともいう。
シゥカットゥン [si̥⸢kattuŋ]自動さわる(触る)。触れる。老年層の用いることば。
シゥカナイ [si̥⸢ka⸣nai]養育。飼育。シカナイ[ʃi̥⸢ka⸣nai](養育)(若年層)ともいう。
シゥカナイウヤ [si̥⸢kani⸣ʔuja]養い親。養親。若年層は、ヤ⸢シナイウヤ[ja⸢ʃinaiʔuja](養い親)ともいう。
シゥカナイグリサン [sï̥⸢kanaiguri⸣saŋ]養いにくい。養育しにくい。動詞シゥ⸢カ⸣ナウン[sï̥⸢ka⸣nauŋ](養う)の連用形に形容詞型助動詞グ⸢リ⸣サン[gu⸢ri⸣saŋ](容易でない。むずかしい)が下接して、複合語を作り、その動作をすることが困難である意を表す。
シゥカナイッふァ [si̥⸢kanai⸣ffa]養子。「養い子」の義。シ⸢カナイ⸣ッふァ[ʃi̥⸢kanai⸣ffa](養子)(若年層)、ヤ⸢シナイッふァ[ja⸢ʃinaiffa](養い子)ともいう。
シゥカナイヌシ [si̥⸢kanai⸣nuʃi]飼い主。シ⸢カナイ⸣ヌシ[ʃi̥⸢kanai⸣nuʃi](飼い主)(若年層)ともいう。
シゥカナイバキ [sï̥⸢kanai⸣baki]こわけ(仔分け)。立て分け。
シゥカナイパンタ [si̥⸢kanaipan⸣ta]子育て真っ最中。多くの子供を育てるのに多忙な時期。⸢養育繁多」の義。シ⸢カナイパン⸣タ[ʃi̥⸢kanaipan⸣ta](子育て真っ最中)(若年層)ともいう。
シゥカナイムシ [si̥⸢kanai⸣muʃi]家畜。「養い虫」の義。イ⸢キム⸣シ[ʔi⸢kimu⸣ʃi](動物の総称。「生き虫」の義)『図説琉球語辞典』。「虫。動物の総称。羽虫は鳥類、毛虫は獣類、甲虫は亀類、鱗虫は魚類、裸虫は人類のこと」『学研漢和大字典』とある。
シゥカナウン [si̥⸢ka⸣nauŋ]他動養う。飼う。飼育する。
シゥカバ シキ [si̥⸢kaba⸣ ʃi̥⸢ki]聞こえよがしに。聞きたければ聞くがよい。わざと聞こえるように。「聞かば聞け」の義。
シゥカバラー [si̥⸢ka⸣baraː]束柱。短い柱。老年層の言葉。「欛、太知乃豆加<たちのつか>、剣柄也」『和名抄』の「豆加<つか>」が転訛したもの。若年層は、シ⸢カ⸣バラー[ʃi̥⸢ka⸣baraː](束柱)ともいう。桁柱の上に立てる30~40センチの短い柱。四寸角の角材を用いることが多い。これで屋根の勾配を作る。ウ⸢ダ⸣ティ[ʔu⸢da⸣ti](うだち<梲>。「宇太知<うだち>」⸢正倉院文書 天平宝字五・十二・二十八」)に似た柱。
シゥカマール [si̥⸢kamaː⸣ru]近回り。近道。近道を通って行くこと。
シゥカマブシ [si̥⸢kamabuʃi]金星。「仕事星」の義。野良仕事を終えて帰宅する頃に出る星の義という。⸢ユーボン⸣ブシ[⸢juːbom⸣buʃi](夕飯星)ともいう。
シゥカミ [sï̥⸢ka⸣mi]名・助数つまみ(摘み)。つかみ(掴み)。米粒や塩等を親指と中指、人差し指でつまんで取る時にいう。老年層は、⸣シゥカン[⸣sï̥kaŋ](つかみ<掴み>)という。
シゥカミ [sï̥⸢ka⸣mi]掴むこと。握ること。
シゥカミー [sï̥⸢ka⸣miː]近眼。
シゥカミー [sï̥⸢ka⸣miː]近視。「近目」の義。若年層は、シ⸢カ⸣ミー[ʃi̥⸢ka⸣miː](近視)ともいう。
シゥカミアライ [si̥⸢kami⸣ʔarai]揉み洗い。「掴み洗い」の義。両手で洗濯物を掴んで揉み洗うことからいう。部分洗い。シ⸢カミ⸣アライ[ʃi̥⸢kami⸣ʔarai](揉み洗い)(若年層)ともいう。
シゥカミチ [sï̥⸢ka⸣miʧi]近道。
シゥカミ ンザスン [si̥⸢kami ʔnʣa⸣suŋ]掴み出す。摘み出す。若年層は、「シ⸢カミンザ⸣スン[ʃi̥⸢kamiʔnʣa⸣suŋ](掴みだす)」ともいう。
シゥカミンザスン [si̥⸢kamiʔʣa⸣suŋ]他動掴み出す。つまみだす(撮み出す)。
シゥカムン [sï̥⸢ka⸣muŋ]他動{1}掴む。
シゥカムン [sï̥⸢ka⸣muŋ]他動{2}捕まえる。捕獲する。
シゥカムン [sï̥⸢ka⸣muŋ]他動掴む。捕まえる。捕縛する。シ⸢カ⸣ムン[ʃi̥⸢ka⸣muŋ](掴む)(若年層)ともいう。
シゥカラ [si̥⸢kara]力。体力。気力。能力。若年層は、シ⸢カラ[ʃi̥⸢kara](力)ともいう。「出で立たむ知加良乎<チカラヲ>無みと~『万葉集 3972』」の義。
シゥカラーサン [si̥⸢karaː⸣saŋ]寂しい。侘しい。うら寂しい。寂寞としている。若年層は、シ⸢カラー⸣サン[ʃi̥⸢karaː⸣saŋ]ともいう。
シゥカラ シキルン [si̥⸢kara⸣ ʃi̥⸢ki⸣ruŋ]励ます。応援する。元気付ける。「力をつける」の義。若年層は、シ⸢カラ⸣ シ⸢キ⸣ルン[ʃi̥⸢kara⸣ ʃi̥⸢ki⸣ruŋ](励ます)ともいう。
シゥカラシグトゥ [si̥⸢karaʃigutu]力仕事。肉体労働。シ⸢カラシグトゥ[ʃi̥⸢karaʃigutu](力仕事。肉体労働)(若年層)ともいう。
シゥカラジナ [si̥⸢karaʤina]力綱。産婦が出産の時に力を入れるために強く引き、握り締める綱。屋根の梁に綱を掛て力綱とした。若年層は、シ⸢カラジナ[ʃi̥⸢karaʤina](力綱)ともいう。
シゥカラ スクン [si̥⸢kara⸣ su̥kuŋ]励ます。応援する。元気付ける。元気が出る<元気付く>。「力つける」の義。若年層は、シ⸢カラ⸣ シ⸢キ⸣ルン[ʃi̥⸢kara⸣ ʃi̥⸢ki⸣ruŋ](励ます。元気付ける)ともいう。
シゥカラマース [si̥⸢karamaːsu]神前の供物。飾り塩。盛り塩。「力塩」の義。正月に茶碗で半球形に成形した塩を皿に盛って神前に供えた供物。家族や来客に少量ずつ箸で摘んで与え、健康と長寿を祈願し嘉例を予祝する習慣がある。若年層は、シ⸢カラマース[ʃi̥⸢karamaːsu](盛り塩・力塩)ともいう。
シゥカラムチ [si̥⸢karamuʧi]力持ち。強力。若年層は、シ⸢カラムチ[ʃi̥⸢karamuʧi](力持ち)ともいう。
シゥカラムチ [si̥⸢kara⸣muʧi]力持ち。
シゥカラワザ [si̥⸢karawaʣa]力仕事。体力を要する仕事。「力業」の義。若年層は、シ⸢カラワザ[ʃi̥⸢karawaʣa](力業)ともいう。
シゥカラ ンジ [si̥⸢kara⸣ ʔnʤi]力を出して。努力して。頑張って。若年層は、シ⸢カラ⸣ ンジ[ʃi̥⸢kara⸣ ʔnʤi](頑張って。力をだして)ともいう。
シゥカラ ンズン [si̥⸢kara⸣ ʔnʣuŋ]力を出す。努力する。頑張る。若年層は、シ⸢カラ⸣ ンズン[ʃi̥⸢kara⸣ ʔnʣuŋ](力を出す。頑張る)ともいう。
シゥカリルン [si̥⸢kari⸣ruŋ]好かれる。好まれる。動詞⸣スクン[⸣su̥kuŋ](好く。好む)の未然形に受身の助動詞⸢リ⸣ルン[⸢ri⸣ruŋ](~れる)が下接して形成された受身動詞。
シゥカリルン [si̥⸢kariruŋ]自動突かれる。他動詞、ス⸢クン[su̥⸢kuŋ](突く)の未然形に受身の助動詞⸢リルン[⸢riruŋ](れる)が付いた形(受身動詞)。
シゥカリン [sï̥⸢kariŋ]自動{1}突かれる。⸣ウナー ⸢ベー⸣ルカー ウ⸢シン⸣ シゥ⸢カリン⸣ダー[⸣ʔunaː ⸢beː⸣rukaː ʔu⸢ʃin⸣ sï̥⸢karin⸣daː](此処にいると牛に突かれるぞ)受身動詞。ス⸢クン[su̥⸢kuŋ](突く)の受身表現。ス⸢クン[su̥⸢kuŋ](突く)の未然形、シゥ⸢カ[sï̥⸢ka]に受身・可能の助動詞リン[riŋ](れる)が付いた形。
シゥカリン [sï̥⸢kariŋ]自動{2}突くことができる。ス⸢クン[su̥kuŋ](突く)の可能表現。
シゥカリン [si̥⸢kariŋ]自動漬かる。漬かれる。漬物が十分に成熟される。他動詞、ス⸢クン[su̥⸢kuŋ](漬ける)の未然形に受身、可能の助動詞⸣リン[⸣riŋ](れる)が付いた形(受身動詞。可能動詞)。シ⸢カリン[ʃi̥⸢kariŋ](漬かる)(若年層)ともいう。
シゥカリン [sï̥⸢kariŋ]自動聞こえる。聞かれる。
シゥカリン [sï̥⸢kariŋ]自動{2}可能表現。聞くことができる。ス⸢クン[su̥⸢kuŋ](聞く)の未然形に可能の助動詞⸢リン[riŋ](れる)の付いた可能表現。
シゥカリン [si̥⸢kariŋ]膳を供せられる。供えられる。{1}ス⸢クンン[su̥⸢kuŋ](供える)の受身表現。
シゥカリン [si̥⸢kariŋ]{2}供えることが出来る。ス⸢クン[su̥⸢kuŋ](供える)の可能表現。
シゥカリン [si̥⸢ka⸣riŋ]置かれる。{1}⸣スクン[⸣su̥kuŋ](置く)の受身動詞。
シゥカリン [si̥⸢ka⸣riŋ]{2}置くことが出来る。置ける。⸣スクン[⸣su̥kuŋ](置く)の可能動詞。
シゥカル [si̥⸢karu]水瓶などの保護網。水瓶や酒瓶、味噌瓶などを保護するために外側に棕櫚縄で作った網をかけたもの。
シゥカルン [si̥⸢karuŋ]自動つかる。つかる(浸かる)。ひたる(浸る)。水につかってぬれる。
シゥカン [⸣si̥kaŋ]名・助数つかみ(掴み)。片手で握れるだけの量。数詞に下接して物の数量を表す。⸣シカン[⸣ʃi̥kaŋ](掴み)(若年層)ともいう。
シゥカン- [si̥⸢kan-]接頭ぶち~。動詞に上接して意味を強め、修飾する語の語義に粗野で下品な強い意味を加味する。シ⸢カン-[ʃi̥⸢kan-](ぶち~)(若年層)ともいう。
シゥカンカースン [si̥⸢kaŋkaː⸣suŋ]他動売り飛ばす。
シゥカンギ [sï̥⸢kaŋgi]支柱。支え柱。
シゥカンギー [si̥⸢kaŋgiː]支柱。「つかえぎ<支え木>」の義。「Tçucaye.ツカエ(支へ)支え,または,支柱.Tçucayeuo suru.(支へをする)倒れかかった塀その他の物に支柱を立てる」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
シゥカン シキ [sï̥⸢kaŋ⸣ ʃi̥ki]聞きやがれ。耳を穿って聞け。よく聞け。シゥ⸢カン[sï̥⸢kaŋ](掴み)は強意の接頭語。
シゥカン シキ [si̥⸢kaŋ ʃi̥ki]上の空で聞くこと。他のことに心が奪われてしっかりと聞かないこと。「聞かぬ聞き」の義。
シゥカンツァールン [sï̥kanʦaː⸣ruŋ]自動ごちゃごちゃに{縺}{モツ}れる。{絡}{カラ}まりつく。散乱する。混乱する。めちゃくちゃになる。
シゥカンッふァースン [si̥⸢kaŋffaː⸣suŋ]他動打ち食らわす。打ち食らわせる。動詞ッ⸢ふァースン[f⸢faːsuŋ](食わせる)に強意の接頭語シゥ⸢カン-[si̥⸢kaŋ-](うち<掴み>~)が上接して形成された使役動詞。表現上は、喧嘩口調で、捨て鉢で、粗野で、下品な感じが伴う。
シゥカンッふン [si̥⸢kaŋ⸣ffuŋ]他動打ち食らう。他動詞ッ⸢ふン[f⸢fuŋ](食う。食らう)に強意の接頭語シゥ⸢カン-[si̥⸢kaŋ-](うち。<掴み~>)が付いて形成された他動詞。喧嘩口調の、粗野で、捨て鉢で下品な感じが伴う。
シゥカンッふン [si̥⸢kaŋ⸣ffuŋ]他動打ち食らう。「掴み食らう」の義。「食う」の粗野で卑下した表現。
シゥカントールン [sï̥⸢kantoː⸣ruŋ]自動打っ倒れる。
シゥカンバナ [si̥⸢kam⸣bana]占いに用いる、選ばれた米粒。「掴み花米」の義。シ⸢カン⸣バナ[ʃi̥⸢kam⸣bana](掴み花米)(若年層)ともいう。ウ⸢ク⸣ジ[ʔu⸢ku⸣ʤi](御籤)をバ⸢ルン[ba⸢ruŋ](割る。占う)際に神前に供える粒選びした専用の白米。供物のパ⸢ナン⸣グミ[pa⸢naŋ⸣gumi](花米)とは別に供える。
シゥカンプスン [si̥⸢kam⸣pu̥suŋ]他動放屁しやがる。「掴み・放る」の義。「シゥカン[si̥kam](掴み)」は、強意の接頭語。「放屁する」の下品な表現。
-シェー [⸣-ʃeː]助詞連語。{1}~では。~をもってしては。格助詞⸣-シ[⸣-ʃi](で<手段格>)に係助詞⸣-ヤ[⸣-ja](は<取立て>)が付いて融合変化した形。
-シェー [⸣-ʃeː]{2}~には。~<まで>には。
-シェー [⸣-ʃeː]終助~よ。~<なんだ>よ。相手の意見を認めて、それを確認、追認する時に用いる。
シェー [⸣ʃeː]助詞連語。~では。各助詞⸣シ[⸣ʃi](~で)に取立ての助詞⸣ヤ[ja](~は)が下接して形成された助詞連語。[ʃi] + [ja] → [ʃeː]と音韻変化したもの。
シェーガートゥリ [⸢ʃeːgaː⸣turi]カツオの背びれとそれに付いている背の皮の鱗の部分を除去すること。⸢背皮取り」の義。鰹節製造過程で、頭を切ったカツオを納屋の大きな俎板に載せ、ナ⸢カ⸣ワリ[na⸢ka⸣wari](三枚卸)にする際に⸢シェーガー[⸢ʃeːgaː](背皮)を取ることをいう。先ず、カ⸢ツバザイカタナ[kḁ⸢ʦubaʣaikatana](カツオ捌き包丁)の先を、背びれの左右にある小さな鱗の部分に軽く差し込んで背皮をおこし、次に⸢ズーブニ[⸢ʣuːbuni](尾びれ。<尾骨>)の付け根から背びれの方へ包丁で背皮を薄く切り剥いでいき、その背皮を手に持ち替えて一気に引き抜くとシェーガーが除去できる。
ジェージェー [⸢ʤeːʤeː]擬態泥酔したさま。泥酔して涎を垂らしているさま。
シェー ミサムヌ [⸢ʃeː⸣ misamunu]すれば良いのに。動詞⸢スン[⸢suŋ](する<為る>)の已然形に形容詞⸣ミサン[⸣misaŋ](良い)の連体形が付いて形成された形。
シェーラー [⸢ʃeː⸣raː]~したら。~したからには。動詞⸢スン[⸢suŋ](する)の已然形に、接続助詞⸣ラー[⸣raː](からには。ra:と音韻変化したもの)の付いた形。
シェーン [⸢ʃeː⸣ŋ]他動した。動詞⸢スン[⸢suŋ](する)の活用形(確認過去形<してある>)。過去におこなった結果が残っているときにも用いる。
シェーン [⸢ʃeː⸣ŋ]助動~できる。~し得る。「きれる」が音韻変化した形。可能を表す助動詞。動詞の連用形に付いて、「完全に~することができる」の意味を表す。
シェイキツァザーテー [⸢ʃeikiʦaʣaːteː]屋号。西花誠吉氏宅。⸣ナラシケーヌ ⸣ボッパーテー[⸣naraʃi̥keːnu ⸣boppaːteː](成底家のボッパー姉宅)ともいう。
シェメンガーラ [⸣ʃemeŋgaːra]セメント瓦。セメントで作った屋根瓦。鳩間島にはなかった。終戦後石垣島で利用されるようになった。
シェンスル [⸢ʃen⸣suru]{1}⸢扇子」の転訛したもの。竹や木で骨格部を作り、末広になるように要を固定し、紙を貼って折り畳めるように作った扇。古典舞踊や儀式の際に用いられた。舞踊に用いる扇子を特にブ⸢ドゥルオンギ[bu⸢duruʔoŋgi](踊り扇)という。
シェンスル [⸢ʃen⸣suru]{2}魚名。カワハギ(皮剥ぎ)の仲間。
シェンスル [⸢ʃen⸣suru](動)魚の名。和名、ウスバハギ。体長約70センチ。和名、ソウシハギ(体長約70センチ)の総称。鳩間島では漁獲数も少ないし、あまり好まれない魚である
シカ [⸣ʃi̥ka](地)旧石垣市内。「四箇」の義。字登野城、字大川、字石垣、字新川の四箇字のこと。「四箇村」の意。八重山の中心都市で、⸣シカプス[⸣ʃi̥kapu̥su](四箇村人)は都会人を意味した。普通はイ⸢サナキ[ʔi⸢sanaki](石垣)、イ⸢サンケー[ʔi⸢saŋkeː](石垣)という。
シカーグヮー [ʃi̥⸢kaː⸣gwaː]臆病者。小心者。怖がりや。糸満方言からの転訛。
シカーシカーシ [ʃi̥kaːʃi̥⸢kaː⸣ʃi]びくびく。こわごわ。恐る恐る。
シカーシカーシ [ʃi̥kaːʃi⸢kaː⸣ʃi]まのあたり(目の当り)に。目の前に。間近に。「近々に」の義か。
シカーシカーシ [ʃi̥kaː⸢ʃikaː⸣ʃi]びくびくして。恐る恐る。気弱そうに。寂しそうに。
シガースン [ʃi⸢gaːsuŋ]他動脱臼する。関節をくじく。捻挫する。
シカーン [ʃi̥⸢kaː⸣ŋ]{1}近い。シゥ⸢カー⸣ンとも言う。
シカーン [ʃi̥⸢kaː⸣ŋ]{2}近しい。親戚である。親密である。睦まじい。
シカーン [ʃi̥⸢kaː⸣ŋ]臆病である。怯えやすい。小心である。気が小さい。怖がりである。びくびくするさま。
シカーン [ʃi̥⸢kaː⸣ŋ]気が弱い。臆病である。
シカイ [⸣ʃi̥kai]世界。標準語からの借用語。
シカイズー [⸣ʃi̥kaiʣuː]世界中。標準語からの借用語が転訛したもの。
シカイトゥ [ʃi̥kai⸢tu]しかと。しっかりと。確かに。十分に。「志可登阿良農 比宜<しかとあらぬ鬚>『万葉集 892』」の義。
シカキ [ʃi̥⸢kaki]仕掛け。装置。仕組み。からくり。
シカキルン [ʃi̥⸢kakiruŋ]他動仕掛ける。挑む。
シガキルン [ʃi⸢gakiruŋ]他動早起きして仕事をする。他人に先んじて仕事を手がける。他人に先んじて仕事をし、他人に負けぬよう努力する。
シカク [ʃi̥⸢ka⸣ku]四角。四角形。
シカク [ʃi̥⸢kaku]資格。
シカクン [ʃi̥⸢kakuŋ]他動{1}仕掛ける。挑む。相手に働きかける。装置する。「しかく<仕掛く>下二段活用、『知らぬことよ』とて、猿楽<さるがう>しかくるに」『枕草子143』の義。
シカクン [ʃi̥⸢kakuŋ]他動{2}事をしはじめる。「Xigotouo xicaquru<仕事を仕掛くる>」『邦訳日葡辞書』の義。
シガクン [ʃi⸢gakuŋ]他動早起きして仕事をする。他人に先んじて仕事を仕掛ける。シ⸢ガキルン[ʃi⸢gakiruŋ]と同じ。
シカサ [ʃi̥⸢ka⸣sa]近さ。近い所。
シカサ スン [ʃi̥⸢ka⸣sa ⸢suŋ]親しくする。懇意にする。
シカスン [ʃi̥⸢kasuŋ]他動鋤かせる。
シカスン [ʃi̥⸢kasuŋ]他動案内する。お連れする。招待する(若年層)。老年層は、シゥ⸢カスン[si̥⸢kasuŋ](案内する。招待する。お連れする)という。若年層は、[ʦu] → [ʦi̥] → [si̥] → [ʃi] のように、中舌母音[i̥]が弱化して[i]に変化し、それに伴って[s]が口蓋化したもの。
シカスン [ʃi̥⸢kasuŋ]他動聞かせる。老年層は、シゥ⸢カスン[si̥⸢kasuŋ](聞かせる)ともいう。
シガスン [ʃi⸢gasuŋ]他動継がせる。
ジカタ [ʤi⸢ka⸣ta]地方。首里方言からの借用語。舞踊で、三線、笛、太鼓等を演奏する人々。普通は、⸣ジーシンカ[⸣ʤiːʃiŋka](地謡仲間<臣下>。地謡担当)という。
シカター ナーヌ [ʃi̥⸢kataː naː⸣nu]仕方がない。
シカッティカーティ [ʃi̥⸢kattikaː⸣ti]あちらへぶつかり、こちらへぶつかり。体が触れ合って邪魔になること。うろちょろするさま(若年層)。老年層は、シゥ⸢カッティカー⸣ティ[si̥⸢kattikaː⸣ti](あちらへぶつかり、こちらへぶつかり)という。
シカッティルン [ʃi̥⸢kattiruŋ]自動さわる(触る)。触れる。(若年層)。老年層は、シゥ⸢カッティルン[si̥⸢kattiruŋ](触る)(老年層)という。
シカットゥン [ʃi̥⸢kattuŋ]自動さわる(触る)。触れる(若年層)。老年層は、シゥ⸢カットゥン[si̥⸢kattuŋ](触る)という。
シカボー [ʃi̥⸢ka⸣boː]臆病者。小心者。
シカマブル [ʃi̥⸢kamaburu](動)魚名。
シカミルン [ʃi̥⸢kamiruŋ]他動しかめる(顰)。不機嫌、苦痛などで眉間に皺をよせる。「Xicame、uru、eta・シカメ、ムル、メタ(顰め、むる、めた)」『邦訳日葡辞書』。
シカムニ [ʃi̥⸢ka⸣muni]臆病な物言い。小心者の言い方。こわごわ言うこと。恐る恐る言うこと。
シカムヌ [ʃi̥⸢ka⸣munu]臆病者。
シカムン [ʃi̥⸢kamuŋ]他動しかめる(顰める)。不機嫌、苦痛などで眉間に皺を寄せる。「しかむ<顰む>下二段活用、cauouo xikamuru<顔を顰むる>『邦訳日葡辞書』」の四段活用化したもの。
シカムン [ʃi̥⸢kamuŋ]自動びくつく。びくびくする。怖がる。怯える。ひるむ(怯む)。
シカユールン [ʃi̥⸢kajuː⸣ruŋ]自動近づく。「近寄る」の義。
シカラーサン [ʃi̥⸢karaː⸣saŋ]寂しい。侘しい。
シガルン [ʃi⸢garuŋ]自動痩せ衰える。衰弱する。衰える。
ジカン [ʤi⸢kaŋ]時間。標準語からの借用語。伝統方言では⸣トゥキ[⸣tu̥ki](時、時刻)といい、トゥ⸢ロー⸣ トゥキ ⸣トゥル ス⸢クブン[tu⸢roː⸣ tu̥ki ⸣turu su̥⸢kubuŋ](鶏は時刻を測るのが職分だ)のように用いられる。
シキ [ʃi̥⸢ki]土地柄。地相。場所。「敷」の義か。風水の一種。
シキ [⸣ʃiki]好き。好み。嗜好。標準語からの借用語。
シキ [⸣ʃi̥ki]式。儀式。結婚式。標準語からの借用語。
シキ [⸣ʃiki]せき(堰)。田に水を引くために谷間の水源より水路を作ったもの。西表島の北部一帯に開けた水田は、山間、谷間に大小のシ⸢キム⸣トゥ[ʃi̥⸢kimu⸣tu](水源池)をもっており、そこから各自の田圃へ水路を作って水を導き、水田耕作をする。夏の旱魃が続くと、堰を切ったり切られたりの水争いがおこることもあった。
シキ [⸣ʃi̥ki]{PoS_1}{1}月。「~長濱の浦に都奇照りにけり『万葉集 4029』」の義。
シキ [⸣ʃi̥ki]{PoS_2}(助数)プ⸢ス⸣シキ[pu̥⸢su⸣ʃi̥ki]({一月}{ヒト|ツキ})。
シギ [ʃi⸢gi](植物)杉。杉の木。
シギ [ʃi⸢gi]次。
シギ [ʃi⸢gi]補い。補充。継ぎ足し。続き具合。跡継ぎ。「~巻向山は 継之宜霜『万葉集 1093』」、「継ぎ」の義。
シキー [ʃi̥⸢kiː]敷居。カ⸢ムイ[ka⸢mui](鴨居)の対語。引き戸や障子、襖などを立てるために、その下に、溝を掘った横木を渡して滑らせて開閉できるようにしたもの。「閾、門限也、之岐美<しきみ>」『華厳経音義私記』、『和名抄』の転訛したもの。
シギアースン [ʃi⸢giʔaːsuŋ]他動継ぎ合わせる。木材や板等を継ぎ合わせる。
シキアキルン [ʃi̥⸢kiakiruŋ]他動突き開ける。標準語からの借用語。
シキアギルン [ʃi̥⸢kiagiruŋ]他動突き上げる。
シキアタルン [ʃi̥⸢kiataruŋ]自動突き当たる。標準語からの借用語。
シキアバ [ʃi̥⸢ki⸣ʔaba]頭髪用の油。「つけあぶら(付け油)」の義。年頃の女性は、祝祭日に髪の毛に香ばしい梅香油などをつけて人前に出る習慣があった。戦後になって、成年男子もポマードなどをつけてハイカラ気分を出すようになった。男女とも日常生活では農作業に追われて髪油をつける余裕はなかった。
シキアンガラスン [ʃi̥⸢kiʔaŋgarasuŋ]他動船を暗礁に突き上げてしまう。船を暗礁に乗り上げてしまう。標準語からの借用語。⸢ハーガラ⸣スン[⸢haːgara⸣suŋ](座礁させる)より酷い状態。
シキアンガルン [ʃi̥⸢kiʔaŋ⸣garuŋ]自動付け上がる。いい気になる。増長する。標準語からの借用語。
シキイシ [ʃi̥⸢kiʔiʃi]敷石。庭に飛びとびに敷いた石。
シキイツァ [ʃi̥⸢kiʔiʦaː]敷板。鉋をかける際に用いる土台。
シギイツァ [ʃi⸢giʔiʦa]杉板。
シキイリルン [ʃi̥⸢kiʔiriruŋ]他動聞き入れる。承諾する。
シキウキ トゥリウキ [ʃi̥⸢kiʔuki⸣ tu⸢ri⸣ʔuki]願いをお聞き届け<お聞き受け>、お受け取りください。神仏に懇願する際に用いることば。
シキウキルン [ʃi̥⸢kiʔuki⸣ruŋ]他動聞き受ける。聞き届ける。承知する。
シキウシ [ʃi̥⸢ki⸣ʔuʃi]搗き臼。木製の稲搗き臼。大きな松の幹を約90センチの高さに切り、上端部を深さ約20センチ、直径約25センチ半球形の凹部に刳りぬいて作った臼。その中に玄米1升~2升を入れてイ⸢ナシ⸣キ[ʔi⸢na⸣ʃi̥ki](杵)で搗いて精米した。臼の口縁部の内側に藁で作った⸣シケー[⸣ʃi̥keː](揺輪)を嵌めて米が飛散しないようにし、最初は弱く、糠が出るまで搗き(これをアザラスン{SqBr}ʔa⸢ʣarasuŋ{/SqBr}という)、次に力をこめて搗く。また在来種の芒の長い赤米は挽き臼にかける前に、大きな搗き臼に入れて杵で搗き、芒を落とす(これを⸣カトゥン{SqBr}⸣kḁtuŋ{/SqBr}という)。
シキウズ [ʃi̥⸢kiʔuʣu]敷布団。鳩間島では、一部の家以外には敷布団はなかった。冬期においても敷布団を必要とするほどの寒さはあまり無かったし、それを作る余裕も無かった。
シキウブイ [ʃi̥⸢kiubui]聞き覚え。記憶。
シキカイスン [ʃi̥⸢kikaisuŋ]他動突き返す。押し返す。標準語からの転訛。
シキカイスン [ʃi̥⸢kikaisuŋ]他動聞き返す。一度聞いたことを繰り返したずねる。反問する。
シキカウ [ʃi̥⸢kikau]供物を供える際に焚く線香。対語は、ピキカウ[pi̥⸢kikau]。普通は、香三本を焚いて香炉に立て、供物の贈り主の名前を唱え、健康祈願を唱えて合掌する。
シキガクムン [ʃi̥⸢kigakumuŋ]耳学問。聞きかじり。
シキカタナ [ʃi̥⸢kikatana]カ⸢ツピギシー⸣グ[kḁ⸢ʦupigiʃiː⸣gu](鰹節削り小刀)の一種。⸢突き刀」の義。押し切ったり、前方へ突き押すようにして削るのに用いる小刀。
シギキー [ʃi⸢gikiː](植)杉の木。杉材。
シキグトゥ [ʃi̥⸢kigutu]聞き事。聞くだけの値うちのあること。聞いて感動する素晴らしい話や素晴らしい歌(音楽)。「これは近頃一興ある聞き事にて~」『文明本節用集』の義。⸢ミー⸣グトゥ シ⸢キグトゥ[⸢miː⸣gutu ʃi̥⸢kigutu](見て感動する、聞いて感激する素晴らしい芸術や講演談話だ)のように使われる。
シキグリサン [ʃi̥⸢kiguri⸣saŋ]聞きづらい。聞きにくい。シ⸢キングリ⸣サン[ʃi̥⸢kiŋguri⸣saŋ]ともいう。
シキクルバスン [ʃi̥⸢kikurubasuŋ]他動突き転ばす。
シキゴイ [ʃi̥⸢kigoi]元肥。「敷き肥」の義。作付けする前に堆肥や落ち葉、茅、ススキなどを鋤きこんで入れる肥料。畑に畝を上げ、畝の底に堆肥を敷いて土を被せ、その上に苗を植えて元肥にした。堆肥は豚舎の側に積み上げて作った。ススキや茅を刈り込んで数日間豚に踏ませた後、ガ⸢キ⸣ザー[ga⸢ki⸣ʣaː](熊手)で集めて積み上げ、更に木の葉や茅を積み重ね、水肥をかけて発酵させて作った。
シキザースン [ʃi̥⸢kiʣaːsuŋ]他動かき乱す。蹴散らす。発散させる。撹乱する。体内の熱を突き出す。
シギザイ [ʃi⸢giʣai]杉材
シキシー [ʃi̥⸢ki⸣ʃiː]月末。標準語からの借用語。
シキシーグ [ʃi̥⸢kiʃiːgu]鰹節削り専用の小刀の一種。「ツキサイグ(突き・鉏具)」の転訛したもの。鰹節の筋に逆らわないように、親指で小刀の背を前方へと押し、小指で小刀の柄を支えながら削ったり、押し切ったりするのに用いる小刀。
シキシキ [⸣ʃi̥kiʃi̥ki]月々。毎月。
シキジキ [⸣ʃi̥kiʤiki]月々。毎月。
シギシュー [ʃi⸢giʃuː]次のお方。「次主」の義。歌謡語。{⸣インダヌ マ⸢キ[⸣ʔindanu ma⸢ki](伊武田牧場)のウ⸢シヌ⸣ヨイ[ʔu⸢ʃinu⸣joi](牛の祝い。牛の耳に⸢ヤー⸣バン{SqBr}⸢jaː⸣baŋ{/SqBr}<家の判。印>を付ける祭)の際にミ⸢キバタ⸣シ[mi⸢kibata⸣ʃi](酒器)を左上~右上に振って歌われる歌のミキバタシ(酒器)を次の二番手へと手渡しする相手(次主)}。「次のお方」の意味。
シキゾージ [ʃi̥⸢kiʣoːʤi]聞き上手。相手の話を上手に聞き出すこと。
シキダ [ʃi̥⸢ki⸣da]織機の部品名。「敷き板」の義。機を織る際に織り子(織工)が腰掛ける板。
シキダースン [ʃi̥⸢kidaːsuŋ]自動どっかと座る。どっかりと座って動かない。怠け者の座り方で、農家の人に嫌われる座り方。
シキダーリ スン [ʃi̥⸢kidaːri suŋ]聞いていて聞かぬ振りをする。聞き流す。聞き捨てにする。
シキダイ [ʃi̥⸢kidai]突き台。カツオ漁船の舳先に突き出した釣り台。餌撒きが立って⸣ザコー[⸣ʣakoː](雑魚<餌>)を撒き、カ⸢ザル[ka⸢ʣaru](釣手<飾り>)、イ⸢チバン⸣ジョー[ʔi⸢ʧiban⸣ʤoː](一番竿<釣手>)、⸢ニーバン⸣ジョー[⸢niːban⸣ʤoː](二番竿<釣手>)が座ってカツオを釣る台。
シキダイビリ [ʃi̥⸢kidaibiri]あぐら(胡坐)。両足を正面で組んで座る座り方。男性の座り方。姿勢が堂々とした座り方になるので、目上の人の前では横柄な態度として注意された。また、女性が胡坐をかくことは、下品な座り方だと戒められた。
シキダキ [ʃi̥⸢kida⸣ki]マッチ。「つけだけ<付竹>」の義。⸢竹の先端に硫黄などを塗って付け木としたもの。ほくち<火口>」『日本国語大辞典』。「付木・・・昔は竹を薄くへぎて今の付木の如く用いたり『物類称呼四』」。鳩間島でマッチが導入されたのは、日露戦争に出征して帰島した通事家の先祖がもたらしたのが最初だという。竹串の先から火が出る不思議なものとして、部落中の者がそれを見に集まったという(加治工伊佐談)。
シキダチ [ʃi̥⸢kida⸣ʧi]ついたち(朔日)。毎月の第一日。「つきたち(月立)」の義。⸢Tçuitachi.ツイタチ(朔)月の最初の日」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
シキ タラーンッふァ [⸣ʃi̥ki ta⸢raːŋffa]月足らずの子。未熟児。
シキタン [ʃi̥⸢ki⸣taŋ]石炭。ウ⸢タ⸣ラタンコー[ʔu⸢ta⸣rataŋkoː](宇多良炭鉱)は西表の浦内に本拠を置く炭鉱で野田小一郎が経営していた。村には小学校、劇場、病院が完備され、坑夫の宿泊する納屋が十数棟もあり、昭和十年代には坑夫千数百人を有する炭鉱だったという。石炭は浦内湾に木製桟橋を作って団平船に積み、白浜港へ運んだ。そこで台湾航路の大型定期船、貨物船に積み込まれて輸出された。炭坑は現在の中野地区、住吉地区に開けていた。鳩間方言では、そこをウ⸢ボー⸣ダ[ʔu⸢boː⸣da](中野地区)、ニ⸢シ⸣ミジ[ni⸢ʃi⸣miʤi](住吉地区)という。戦争中は炭坑脱出者が後を絶たず、山中に逃亡した坑夫が山を越えて西表東部地区のトゥ⸢マダ[tu⸢mada]の避難小屋の所に下りてきて食料を乞うことがあった。島人は握り飯と芋を与えて逃がした。その後を警察犬と官憲が追いかけて行った。浦内村のレンガ造りの社屋の前では、軒に吊るされた逃亡者が精神注入棒で殴られているのが見られ、その光景は子供達に恐れられていた。宇多良炭坑の前には井上炭坑が⸣シザバナリ[⸣ʃiʣabanari](下離)にあったが炭層が薄くて採算が採れず廃坑になったという。
シキタンユー [ʃi̥⸢kitaŋ⸣juː]石油。「石炭油」の義。昭和初期頃まで使用されていた語『八重山語彙』参照。老年層は、シ⸢キタン⸣アバ[ʃi̥⸢kitaŋ⸣ʔaba](石炭油)ともいう。現在ではほとんど死語化しており、明治生まれの人の理解語彙であるに過ぎない。大正生まれ以後の人は、シ⸢キ⸣ユー[ʃi̥⸢ki⸣juː](石油)というのが普通である。
シキックナー [ʃi̥⸢kikkunaː]突き合い。押し合いへし<圧し>合い。
シキックムン [ʃi̥⸢kik⸣kumuŋ]自動つんのめる。前方へ突っ込む。突き入る。
シキッケーラスン [ʃi̥⸢kikkeːrasuŋ]他動押し倒す。突き飛ばす。突き押して転倒させる。突き転ばす。突きひっくり返す。
シキッコースン [ʃi̥⸢kikkoːsuŋ]他動突き崩す。突き壊す。ぶっ壊す。
シキッコースン [ʃi̥⸢kikkoːsuŋ]他動鋤き起こす。鋤きや鍬で畑を掘り起こす。
シキッツァースン [ʃi̥⸢kitʦaːsuŋ]他動つつく<突付く>。「突き散らす」の義。突きまくる。散々に突く。
シキットー [ʃi̥⸢kittoː]聞き様。聞き方。礼儀に叶った聞き方。失礼にならない聞き方。聞こえ。イ⸢ジットー[ʔi⸢ʤittoː](言い方。礼儀に適った言い方)の対義語。
シキットースン [ʃi̥⸢kittoːsuŋ]他動{1}突き倒す。
シキットースン [ʃi̥⸢kittoːsuŋ]他動{2}敷き均す。
シキットー ナーヌ [ʃi̥⸢kittoː naː⸣nu]聞くに堪えない。外聞が悪い。体裁が悪くて聞いておれない。「聞きたくはない」の転訛したものか。
シキットゥバスン [ʃi̥⸢kittuba⸣suŋ]他動突き飛ばす。跳ね飛ばす。
シキットゥルン [ʃi̥⸢kitturuŋ]他動しっかりと聞き取る。聞いて受け取る。師の芸を伝受する。奥義を伝授される。「聞き取る」の義。若年層は、シ⸢キ⸣トゥルン[ʃi̥⸢ki⸣turuŋ]ともいう。
シキッパナスン [ʃi̥⸢kippanasuŋ]他動突き放す。標準語からの転訛。
シキトゥースン [ʃi̥⸢kituːsuŋ]他動聞きとおす。聞き続ける。初めから最後まで聞く。
シキトゥバスン [ʃi̥⸢kitubasuŋ]他動聞きたくないところは上の空で聞く。必要のないところは飛ばして聞く。「聞き飛ばす」の義。
シキトゥルン [ʃi̥⸢kituruŋ]他動聞き取る。理解する。
シキナー [ʃi̥⸢kinaː]漬け菜。菜っ葉を塩漬けにしたもの。
シキナカ [ʃi̥⸢kina⸣ka]中旬。月の半ば。
シキナクン [ʃi̥⸢kina⸣kuŋ]他動{1}突っ込む。打ち込む。
シキナクン [ʃi̥⸢kina⸣kuŋ]他動{2}突き刺す。「突き貫く」の義。
シキニ [ʃi̥⸢ki⸣ni]座席。居場所。「しきね(敷き寝)」の義か。特に、寝る所は、ニ⸢ビシキニ[ni⸢biʃikini](寝所。寝室)という。
シキヌ カタ [ʃi̥⸢ki⸣nu kḁ⸢ta]月の絵。月の形。
シキヌキルン [ʃi̥⸢kinukiruŋ]他動突き抜ける。くぐり(潜り)抜ける。
シキヌクン [ʃi̥⸢kinukuŋ]他動突き通す。突き刺す。「突き抜く(貫く)」の転訛したもの。
シキヌ シュー [ʃi̥⸢ki⸣nu ⸢ʃuː]月末。月の末。
シキヌバスン [ʃi̥⸢kinubasuŋ]他動聞くだけで、問題を引きずる。のらりくらりと聞いて解決を遅らせる。「聞き延ばす」の義。
シキヌ マープスマ [ʃi̥⸢ki⸣nu ⸢maːpusuma]月の明かりで昼間のように明るくなること。月が真上にくる時刻。月の真昼間。
シキヌムヌ [ʃi̥⸢kinu⸣munu]月のもの。月経。
シキヌムヌ [ʃi̥⸢ki⸣numunu]月経。「月のもの」の義。
シキヌ ヤフ [ʃi̥⸢ki⸣nu ⸣jaɸu]月食。「月の厄」の義。
シキヌヤフ [ʃi̥⸢ki⸣nujaɸu]月食<月蝕>。
シキヌ ユー [ʃi̥⸢kinu⸣ juː]月夜。月の夜。シ⸢キン⸣ユー[ʃi̥⸢kiɲ⸣juː](月夜)ともいう。
シキヌン [ʃi̥⸢kinuŋ]突き鑿。前方へ突き押して穴を開けたり、表面を平らに削るのに用いる鑿。
シキノースン [ʃi̥⸢kinoːsuŋ]他動聞き直す。聞いて誤解を解く。問い直す。
シキ バカーン [⸣ʃi̥ki ba⸢kaː⸣ŋ]月が若い。一日~三日の月
シキバカスン [ʃi̥⸢kibakasuŋ]他動聞き分ける。聞いて是非を区別、理解する。判断する。得心する。
シキバッパイ [ʃi̥⸢kibappai]聞き誤り。
シキバン [ʃi̥⸢ki⸣baŋ]石盤。標準語からの転訛。明治時代に用いられた文房具(筆記用具)の一つ。粘板岩などの薄い板に木の枠を付けて、石筆で文字や絵を書くのに用いた文房具。
シキヒツ [ʃi̥⸢ki⸣çi̥ʦu]石筆。標準語からの転訛。明治時代に用いられた文房具(筆記用具)。蝋石などを筆形に造り、石盤に文字や図画などを書くのに用いた文房具。
シキピックン [ʃi̥⸢kipik⸣kuŋ]他動銛で突き刺す。
シキピニチ [ʃi̥⸢kipini⸣ʧi]月日。「月日にち」の義。
シキフジ [ʃi̥⸢kiɸuʤir]聞かぬ素振り。「ききこじれ(聞き拗れ)」の義。シ⸢キフジル[ʃi̥⸢kiɸuʤiru](聞かぬ素振り)ともいう。
シキフジル [ʃi̥⸢kiɸuʤiru]聞き流してそ知らぬふりをすること。「聞きくじる<抉る>」の転訛したものか。反抗して聞かぬ素振りをすること。シ⸢キフジ[ʃi̥⸢kiɸuʤi](聞かぬ素振り)ともいう。
シキフジル スン [ʃi̥⸢kiɸuʤiru suŋ]聞かぬ素振りをする。反抗してわざと聞かぬ素振りをする。「聞きくじる<抉る>」の転訛か。
シキフズン [ʃi̥⸢kiɸuʣuŋ]他動聞かぬ素振りをする。反抗して聞かないようにする。「聞き・くじる(抉る)」の転訛か。
シギフチ [ʃi⸢giɸuʧi]継ぎ目。「継ぎ口」の義。
シキフチル [ʃi̥⸢kiɸuʧi⸣ru]付け薬。塗り薬。皮膚につける薬剤。軟膏。ヌ⸢ミフチ⸣ル[nu⸢miɸuʧi⸣ru](飲み薬)の対義語。
シキプリ スン [ʃi̥⸢kipuri suŋ]聞き惚れる。夢中で聞き入る。「聞き惚れする」の義。
シキマーシ [ʃi̥⸢kimaːʃi]漁法の一つ。「突き回し」の義か。⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](板舟。サバニ)に乗って、干瀬や⸣イノー[⸣ʔinoː](礁内湖)を、竿を差しながら操船し、片手でタ⸢マウー⸣キ[ta⸢maʔuː⸣ki](「玉桶」の義。桶の底にガラス<玉>を張って海底を覗き見る漁具)を使って海底を覗き、タコや魚を突いて漁獲する漁法。⸣ギラ[⸣gira](シャコ貝)や⸣ミナ[⸣mina](「蜷」の義。タカセ貝やヒロセ貝、サザエなど)も漁獲した
シキマチガイ [ʃi̥⸢kimaʧigai]聞き誤り。「聞き間違い」の義。
シキミー [ʃi̥⸢ki⸣miː]月見。旧暦八月十五日の十五夜に、ススキの生花、神酒、フ⸢チャ⸣ギ[ɸu̥⸢ʧa⸣gi](小豆餅)、フ⸢カン⸣ガイ[ɸu̥⸢kaŋ⸣gai](「吹き上げ餅」の義。溶かした餅)を供えて家族の健康を祈願する年中行事。
シキミー [ʃi̥⸢kimiː]効き目。功能。効能。効果。
シキムチ [ʃi̥⸢ki⸣muʧi]搗き餅。正月の鏡餅。ピ⸢キムチ[pi̥⸢kimuʧi](挽き餅。石臼で挽いて作った餅)の対語。蒸かした糯米を臼で搗いて作った餅。島ではピ⸢キムチ[pi̥⸢kimuʧi]が普通に作られた。
シキムトゥ [ʃi̥⸢kimu⸣tu]水源池。「せきもと(堰本)」の義。
シキムヌ [ʃi̥⸢kimunu]漬物。大根や木瓜<胡瓜>などを塩漬けにして、カ⸢ティ⸣ムヌ[ka⸢ti⸣munu](おかず)にしていた。
シキムヌ [ʃi̥⸢kimunu]敷物。蓆や畳。
シキムヌ [ʃi̥⸢kimunu]供物。供え物。
シキユー [ʃi̥⸢ki⸣juː]石油。明治生まれの人は、シ⸢キタン⸣ユー[ʃi̥⸢kitaɲ⸣juː](石油)『八重山語彙』という。
シキユーナー [ʃi̥⸢kijuːnaː]突き合い。牛が角を突き合わせること。歌謡語。
シキユーランプ [ʃi̥⸢kijuː⸣rampu]石油ランプ。石油で灯すランプ。明生まれの古老は、⸢トゥー⸣ル[⸢tuː⸣ru](灯篭)という。ア⸢バ⸣スブ[ʔa⸢ba⸣subu](油壷)、フ⸢チガニ[ɸu̥⸢ʧigani](芯を出す口金)、フ⸢ヤ[ɸu⸢ja](火屋)、⸣カサ[⸣kḁsa](笠)などから成る。
シキヨーリ [ʃi̥⸢kijoː⸣ri]毎月体力が弱くなっていくこと。月ごとの衰弱。
シギリ [ʃi⸢gi⸣ri]度合いを過ぎたもの。適度を超したもの。熟し過ぎて、す(鬆)が入ること。
シギリムヌ [ʃi⸢giri⸣munu]熟しすぎて、す(鬆)が入ったもの。
シキル [ʃi̥⸢kiru](動)ナマコの名。和名、クロナマコ(体長約30センチ)、白色や黒色のナマコがいる。捕獲すると噴門より白いねばねばした糸を出し、手や足にくっ付く。戦前から戦後にかけて、漁獲したナマコを乾燥して中国料理の素材として輸出していたが、島では食べなかった。
シキルカマサー [ʃi̥⸢kirukamasaː](動)魚の名。和名、オニカマス(体長約1、5メートル)。カツオ漁船のピ⸢キナー[pi̥⸢kinaː](引き縄釣り)で釣れることがあった
シキルン [ʃi̥ki⸣ruŋ]他動{1}付ける。命名する。付与する。
シキルン [ʃi̥ki⸣ruŋ]他動{2}備える。
シキルン [ʃi̥ki⸣ruŋ]他動{3}気をつける。
シキルン [ʃi̥ki⸣ruŋ]他動{4}点灯する。
シキルン [ʃi̥ki⸣ruŋ]他動{5}色を染める。色を塗る。
シキルン [ʃi̥ki⸣ruŋ]他動{6}交尾させる。交配させる。種付けする。
シキルン [ʃi̥⸢ki⸣ruŋ]他動着ける。行きつく。到着する。接岸する。寄港する。
シキルン [ʃi̥⸢kiruŋ]他動{1}漬ける。ス⸢クン[su̥⸢kuŋ](漬く)ともいう。
シキルン [ʃi̥⸢kiruŋ]他動{2}浸す。
シキルン [ʃi̥⸢kiruŋ]他動供える。供物を祀る。
シキルン [ʃi̥⸢kiruŋ]他動鍋を竈に据える<掛ける>。ス⸢クン[su̥ku⸢ŋ](鍋を竈に据える)ともいう。
シキルン [ʃi̥⸢ki⸣ruŋ]他動置く。⸣スクン[⸣su̥kuŋ](置く)ともいう。
シギルン [ʃi⸢gi⸣ruŋ]自動{PoS_1}{1}過ぎる。時間が経過する。⸣シグン[⸣ʃiguŋ](過ぎる)ともいう。
シギルン [ʃi⸢gi⸣ruŋ]自動{2}程度を超える。仮死状態になる。
シギルン [ʃi⸢gi⸣ruŋ]自動{3}芋や大根、果実類が熟し過ぎて食べられない状態になる。痩せてす(鬆)が入る。「~吾聞き継がず花は須疑都追<スギツツ>。万、4194」、⸢~立つ霧の思ひ須疑米夜<スギメヤ>~。万、4000」の義か。
シギルン [ʃi⸢gi⸣ruŋ]補動{PoS_2}動詞について複合語をつくり、動作が普通の状態より度を越してひどくなる意を表す。
シギロールン [ʃi⸢gi⸣roːruŋ]自動お亡くなりになる。高齢の人が亡くなることに対して言う敬語。「~吾聞き継がず 花は須疑都追<スギツツ>。万、4194」の義。
シキン [⸣ʃi̥kiŋ]試験。標準語からの転訛。「鳩間小学校沿革」によると、明治三十三年四月にはじめて三名の卒業生を出したというから、⸣シキン[⸣ʃikiŋ](試験)という語もその頃に借用され、転訛したものであろう。
シキン [⸣ʃi̥kiŋ]世間。世の中。社会。
シキンガナシ [ʃi̥⸢kiŋgana⸣ʃi]お月様。「月加那志」の義。「加那志(かなし)」は「愛し(いとしい。敬愛する。優れた)」から転じた敬称の接尾語。/アールカラ アーリオール ウブシキンガナシ ウキナーン ヤイマーン ティラショーリ ホーーイチョーーガ/(東から上がってこられる大きなお月様。沖縄も八重山もお照らしください<囃子>)「月ヌマピロウマ節」。
シキンガマラサン [ʃi̥⸢kiŋgamara⸣saŋ]聞くに堪えない。身内に対する悪口を聞いて頼りなく侘しい。「聞くにもの悲しい」の義。
シキングリサン [ʃi̥⸢kiŋguri⸣saŋ]{1}聞きづらい。聞き取りにくい。聞き苦しい。ス⸢クン[su̥⸢kuŋ](聞く)の連用形に形容詞型助動詞⸢ングリ⸣サン[⸢ŋguri⸣saŋ](~づらい)が下接して形成された派生形容詞。
シキングリサン [ʃi̥⸢kiŋguri⸣saŋ]{2}聞くに堪えないさま。
シキンコースン [ʃi̥⸢kiŋkoː⸣suŋ]他動{1}引っ剥がす(突き剥がす)。ひん剥く。
シキンコースン [ʃi̥⸢kiŋkoː⸣suŋ]他動{2}田地や畑地などを鋤き起す。掘り起こす。
シキンザスン [ʃi̥⸢kiʔnʣa⸣suŋ]他動突き出す。
シキンナミ [⸣ʃi̥kinnami]世間並み。
シキンナリー [⸣ʃikinnariː]世間馴れ。風俗習慣に馴れ親しむこと。
シキンヌ [ʃi̥⸢kin⸣nu]接助~ので。~から。過去及び完了の助動詞-タ[-ta](た)に下接する。原因、理由を示し、前に述べたことを受けて後の叙述へ繋ぐ順接の機能を果たす。
シキンバナシ [ʃi̥⸢kimbana⸣ʃi]世間話。
シキンマー ドゥーウイ [ʃi̥⸢kim⸣maː ⸣duː ʔui]世間は先生である(世間は自分より上である<尊敬せよ>)。⸢世間を尊敬して世間から多く学べ」の義。<諺>
シキンユー [ʃi̥⸢kiŋ⸣juː]月夜。月の夜。
シグ [ʃi⸢gu]直ぐに。直ちに。若年層は、ス⸢グ[su⸢gu](直ぐ)ともいう。
ジク [⸣ʤiku]{1}軸。標準語からの転訛。老年層は、⸣シン[⸣ʃiŋ](芯。心棒)という。
ジク [⸣ʤiku]{2}軸物。
ジグク [ʤi⸢guku]地獄。
シクジルン [ʃi̥⸢kuʤiruŋ]自動しくじる。失敗する。
シクチ [ʃi̥⸢kuʧi]職業。定職。生業。日常業務。仕事。石垣方言からの借用語。普通はシ⸢グトゥ[ʃi⸢gutu](仕事)という。
シグトゥ [ʃi⸢gutu]仕事。働くこと。作業。職業。業務。「仕事」の転訛したもの。
シグトゥキン [ʃi⸢gutukiŋ]作業着。農作業や漁撈の際に着用する衣服。昭和40年頃までは婦人の衣類は、⸣バサキン[⸣basakiŋ](芭蕉着)や⸣ブーキン[buːkiŋ](麻の着物)が一般的であった。以後漸次洋服(ワンピース、ツーピース)が普及した。
シグトゥブラーリ [ʃi⸢gutuburaːri]仕事に夢中になること。仕事に熱中すること。
シグトゥブリ [ʃi⸢gutuburi]仕事三昧。仕事に夢中になること。仕事に専念すること。
シグトゥマチブリ [ʃi⸢gutumaʧiburi]仕事に夢中になる。仕事に心をうばわれる。
シクミ [ʃi̥⸢kumi]仕掛け。構造。「仕組み」の転訛したもの。明治生まれの老年層は、ス⸢クミ[su̥⸢kumi](仕組み。仕掛け。構造。リハーサル)という。
シクン [ʃi̥⸢kuŋ]他動敷く。若年層の言葉。
シグン [ʃi⸢guŋ]他動{1}継ぐ。つなぎ合わせる。繋ぐ。
シグン [ʃi⸢guŋ]他動{2}継承する。相続する。
シケー [⸣ʃi̥keː]ゆりわ(揺輪)。頭上に物を載せて運搬する際、頭と物の間に置くクッション。稲藁を直径約3センチの太さに束ねて巻き、それで直径約10センチの輪に作ったもの。
シケースン [ʃi̥⸢keːsuŋ]他動刃物を他の刃物の背に斜めに擦りつけて刃を研ぐ。
シゴー [ʃi⸢goː]{1}都合。やりくり。具合の良いこと。
シゴー [ʃi⸢goː]{2}万障繰り合わせること。
ジコー [ʤi⸢koː]ひどく。大変に。どん底に。グ⸢クー⸣とも言う。
シコールン [ʃi̥⸢koːruŋ]他動拵える。準備する。(若年層の言葉)。老年層は、ス⸢コールン[su̥⸢koːruŋ](拵える。準備する)と言う。