鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
アマークマー [ʔa⸢maː⸣kumaː]あちらこちら。あっちこっち。「あ(彼)・ま(間)・こ(此)・ま(間)」の転訛したもの。
アマーン [ʔa⸢maː⸣ŋ]{1}甘い<糖度が高い>。ア⸢ジマー⸣ン[ʔa⸢ʤimaː⸣n](甘い。味甘し)ともいう。
アマーン [ʔa⸢maː⸣ŋ]{2}塩気が少ない。みずっぽい。水分が多くて味が薄い。ク⸢ヌ スー⸣ヤ ア⸢マー⸣ヌ ヌ⸢マラ⸣ヌ。ン⸢メーマ マー⸣ス イ⸢リリ[ku⸢nu suː⸣ja ʔa⸢maː⸣nu nu⸢mara⸣nu。ʔm⸢meːma maː⸣su ʔi⸢riri](この汁は水っぽくて飲めない。少し塩を入れなさい)
アマアジ [ʔa⸢maʔaʤi]{1}甘味。
アマアジ [ʔa⸢maʔaʤi]{2}うす味。塩加減の薄い味。
アマイ [ʔa⸢mai]神遊び。神職者たちが神歌を歌って神遊びすること。/カムラーマヌ アマイヤー ヌーフサティル アマイル/(カムラーマの神遊びは何が欲しくて神遊びするのか)
アマイシミルン [ʔa⸢maiʃimiruŋ]他動甘えさせる。
アマイパダ [ʔa⸢maipada]赤ちゃんがンゴーンゴー[ʔŋ⸢goː⸣ŋ⸢goː]と微笑みながら甘える時期。「甘え時期」の儀。⸣パダ[⸣pada]は、「時期、頃、年頃」の意。
アマイビー [ʔa⸢maibiː]二つの火の玉が一つになったり分かれたりして、踊り楽しんでいるように見える火の玉。鬼火。「歓え火<あまえび>」の義。
アマイヨールン [ʔa⸢maijoː⸣ruŋ]自動神仏が喜び楽しむ。「あまえ<歓え>・おはる<御座す>」の転訛したもの。サ⸢カサ(司)やティ⸢ジリ⸣ビ(男性神職者)たちが祭祀の終了後に、神職者の家に持ちまわりで集まり、酒食を用意して神歌を歌い習ったという。昔から神職(サカサ・ティジリビー)を継ぐ際にも、司や男性神職者の家に集まって神歌の練習をしたという。⸢ユーニンガイ[⸢juːniŋgai](旧暦三月の世願いの祭祀)の後に、神職者の家を回って飲食しながら神歌の練習をする習慣は1965年頃まで続いていた。
アマイルン [ʔa⸢mairuŋ]自動嬉しがる。喜ぶ。踊り楽しむ。神遊びをする。神が喜び楽しむ。「あまえる(歓える)」。歌謡語。「あまへて」『混効験集』。/カムラマーヌ アマイヤ/(カムラーマの神遊びは)/ヌーフサティル アマイル/(何が欲しくて楽しむのか)/カムラマーヌ アマイヤ アカカラジ フサティル アマイル/(カムラーマの神遊びは民百姓が欲しくて神遊びするのだ)/カムラマーヌ アマイヤ /(カムラーマの神遊びは)/ウヤキユーバ タボラリ/(カムラーマの神遊びは豊年満作を賜ることです)『鳩間島古典民謡古謡集』。鳩間島の神職者たちは祈願の後に神々と共に踊り遊んだ。
アマイルン [ʔa⸢mairuŋ]自動甘える。人の好意にべったり頼る。やりたい放題にする。
アマウン [ʔa⸢mauŋ]自動嬉しがる。喜ぶ。踊り楽しむ。神遊びをする。歌謡語。「歓える<あまえる>」の義。「あまへて」(おもろ)、「あまへて」(『混効験集』)。特に神仏が喜び、楽しむことにいう。ア⸢マイルン[ʔa⸢mairuŋ](歓える)の項参照
アマカザ [ʔa⸢makaʣa]甘い匂い。甘く香ばしい匂い。
アマガサ [ʔa⸢maga⸣sa]かさ(暈)。日や月の回りをまるく取り巻いた輪。ひがさ(日暈)。
アマキー [⸣ʔamakiː]植物の一種。えぎ(餌木)を作るのに用いる木。
アマグ [ʔa⸢ma⸣gu]雨具。学校教育を通じて標準語から入った借用語。昭和三十年代まで、雨降りの日には南京袋を折り込んで被り、雨具代用に利用していた。
アマクマ [⸣ʔamakuma]あちこち。
アマクマシー [ʔa⸢makumaʃiː]生半可に仕事をすること。中途半端な仕事振り。なまなか仕事。「あちらこちら仕」の転訛したもの。
アマグム [ʔa⸢ma⸣gumu]雨雲。ヌ⸢リグム[nu⸢rigumu](積乱雲)ともいう。
アマグル [ʔa⸢ma⸣guru]にわか雨。しゅうう(驟雨)。
アマザキ [ʔa⸢maʣaki]酢。老年層は⸢パイル[⸢pairu](酢)という。古典民謡(お盆の「獅子舞の道歌」)にも⸢パイル[⸢pairu](酢)といっている。
アマザラシ [ʔa⸢maʣara⸣ʃi]雨ざらし。
アマシェー [ʔa⸢maʃeː]屋号。小浜真敏氏宅。東村のシ⸢ナカキ⸣ヤー[ʃi⸢nakaki⸣jaː](追い込み漁)の網元家であった。戦後はカツオ釣り漁船の初栄丸、眞福丸、晃徳丸によるカツオ節製造業を経営された。太平洋戦争中、鳩間島のような小さな島にも米軍戦闘機は爆撃を加えた。昭和20年2月16日の爆撃で、ア⸢マシェー[ʔa⸢maʃeː](小浜家)と寄合家は完全に破壊されたという『鳩間島追想』。
アマシェーヌ アカヤンマーテー [ʔa⸢maʃeːnu⸣ ʔa⸢ka⸣jammaːteː]屋号。小浜清氏宅。ア⸢カ⸣ヤンマー[ʔa⸢ka⸣jammaː](アカヤ姉さん。小浜清氏の母親)に接尾語⸣テー[⸣teː](~の家)が下接したもの
アマシェーヌ タローザーテー [ʔa⸢maʃeːnu⸣ taroːʣaːteː]屋号。小浜太郎氏宅。⸣タローザー[⸣taroːʣaː](太郎兄さん)は、名前の⸣タロー[⸣taroː](太郎)に、⸢アー⸣ザ[⸢ʔaː⸣ʣa](兄さん)が下接し、更に接尾語⸣テー[⸣teː](~の家)が付いて生成された合成語
アマシェーヌ フチマチル [ʔa⸢maʃeːnu⸣ ɸu̥⸢ʧimaʧiru]海底地名。ア⸢マシェー[ʔa⸢maʃeː](小浜家)の先祖がフ⸢チマチル[ɸu̥⸢ʧimaʧiru](漁法の一種。巻き取り漁法)をしたと伝える地点。⸢トン⸣グヮー[⸢toŋ⸣gwaː](⸢クー⸣シビー{SqBr}⸢kuː⸣ʃibiː{/SqBr}<干瀬の名>)の南側にある
アマシェーヌ ヤマザーテー [ʔa⸢maʃeːnu⸣ jamaʣaːteː]屋号。小浜屋真氏宅。⸣ヤマザー[⸣jamaʣaː](屋真兄さん)は、名前の⸣ヤマー[⸣jamaː](屋真)に、⸢アー⸣ザ[⸢ʔaː⸣ʣa](兄さん)が下接して生成された合成語
アマシムヌ [ʔa⸢maʃi⸣munu]不品行者。暴れ者。もてあまし者。
アマシュー [ʔa⸢ma⸣ʃuː]あめつゆ(雨露)。雨や露。
アマスー [ʔa⸢masuː]薄塩(うすじお)。魚や野菜などに塩を軽く振りかけ、薄い塩加減にすること。
アマスン [ʔa⸢masuŋ]他動浴びせる。水などを頭からかける。
アマスン [ʔa⸢ma⸣suŋ]他動{1}余す。余りあるところを残す。余力を残す。老年層の言葉。
アマスン [ʔa⸢ma⸣suŋ]他動{2}持て余す。手に負えなくなって困る。
アマダ [ʔa⸢ma⸣da]あぶりこ(炙り子)。炙り焼き用の金網。焼き魚や焼き肉用に鉄線で約5センチ四方の網目を作り、全体的に縦横約50センチ大の金網に作ったもの。生の竹や生のススキ、生木の小枝を竈の上に縦横に渡して金網代用にすることがあった。⸣タク[⸣taku](蛸)やイ⸢ズ[ʔi⸢ʣu](魚)をア⸢マ⸣ダに載せて焙乾し保存食にしたのが ガ⸢シ⸣タク[ga⸢ʃi⸣taku](焙乾したタコ)、ガ⸢シ⸣イズ[ga⸢ʃi⸣iʣu](焙乾した魚)である。ガシイズやガシタクは、焙乾することによってうま味が出るといわれている。
アマダラ [ʔa⸢ma⸣dara]軒。ひさし。「雨だれ」の義から転じて「軒、庇」の意となる。農耕や漁労の作業着を掛けておいたり、網や釣具などを掛けておいたりしたところ。ハ⸢ギバラー[ha⸢gibaraː](軒柱)とハ⸢ギバラーの間に約六尺の棒を渡してあり、これに作業着類を掛けておいた。
アマダラスン [ʔa⸢madara⸣suŋ]他動滴らせる。水切りする。
アマダラミジ [ʔa⸢madara⸣miʤi]雨垂れ水。雨垂れ。
アマダルカーダル [ʔa⸢madarukaː⸣daru]{1}濡れそぼつ。濡れてびしょびしょになる。衣類が濡れて垂れ下がっているさま。
アマダルカーダル [ʔa⸢madarukaː⸣daru]{2}肥えて皮膚が垂れ下がるさま。
アマダルン [ʔa⸢ma⸣daruŋ]自動滴る。水が垂れ落ちる。
アマダルン [ʔa⸢ma⸣daruŋ]自動{2}垂れ下がる。
アマチ [ʔa⸢ma⸣ʧi]樹木の下枝。庭木や畑の畦の樹木の下枝のこと。畑や庭に垂れ下がって、日光が遮られると作物に悪影響を及ぼす。また、庭木の枝が屋根に架かることは家運に悪いとして嫌われ、適当に枝打ちされた。
アマチ ウタシ [ʔa⸢ma⸣ʧi ʔu⸢ta⸣ʃi]下枝を枝打ちしなさい。
アマッタビーッタ [ʔa⸢mat⸣tabiːtta]贅沢に。ふんだんに。裕福に。豊かに。ユ⸢チ⸣クニ[ju⸢ʧi⸣kuni](裕福に)ともいう。
アマティンキ [ʔa⸢matiŋ⸣ki]雨天。「雨天気」の義。雨降りの天気。
アマドゥ [ʔa⸢madu] 「雨戸」の義。ヌ⸢キヤー[nu⸢kijaː](貫き木造りの家)の戸。板張りの外戸。巾三尺、長さ6尺に作るのが普通である。⸣ヤドゥ[⸣jadu](戸。家戸)ともいう。窓枠の外側に、シ⸢キー[ʃi̥⸢kiː](敷居)とカ⸢ムイ[ka⸢mui](鴨居)を設置して、それにア⸢マドゥ[ʔa⸢madu](雨戸)を立てて、ヤ⸢ドゥパシ⸣ル[ja⸢dupaʃi⸣ru](引き戸)に作り、窓を開けたり締めたりした。
アマドゥヌ サン [ʔa⸢madu⸣nu ⸣saŋ]雨戸の桟。雨戸の枠。三尺と六尺の枠の内側に三尺の桟を二段に渡したもの。
アマナシ クマナシ [ʔa⸢manaʃi⸣ ku⸢ma⸣naʃi]あちらになし<置い>たり、こちらになし<置い>たりすること。
アマナラーシ [ʔa⸢manaraːʃi]甘やかした育て方<躾>。主に祖父母が孫を育てる際の育て方にいう。「甘・習わせ」の義。
アマナライ [ʔa⸢manarai]我儘な性格。甘やかされて育てられた性格。「甘・習い」の義。
アマヌ [ʔa⸢ma⸣nu]余りにも~ので。あんまり~ので。過度に~ので、のように条件句を導き、原因、理由を述べる。
アマフチ [ʔa⸢maɸu̥ʧi]甘口。塩気の少ない味を好むこと。御汁の味付けで薄味を好むこと。
アマミー [ʔa⸢mamiː]甘味。
アマミー クマミー [ʔa⸢mamiː kuma⸣miː]あちらを見たり、こちらを見たりするさま。せわしくあたりを見回すさま。きょろきょろするさま。
アマミース [ʔa⸢mamiːsu]甘味噌。⸢マイヌミー⸣ス[⸢mainumiː⸣su](米味噌)ともいう。上質の米味噌で、黒糖で多少味付けされていた。⸢サー⸣フキ[⸢saː⸣ɸu̥ki](茶請け。茶の子)として来客に出された。
アマミジ [ʔa⸢mamiʤi]真水。雨水。「甘水」の転訛したものか。老年層は、⸢マーミジ[⸢maːmiʤi](真水)という。⸢スー⸣ミジ[⸢suː⸣miʤi](潮水)の対義語。
アマミジ [ʔa⸢ma⸣miʤi]雨水。⸢ティンシー[⸢tiŋʃiː](天水。「Tensui.テンスイ(天水)雨水」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの)ともいう。
アマミジカー [ʔa⸢mamiʤikaː]真水の出る井戸。「真水井戸」の義。
アマミン [ʔa⸢mamiŋ]健康な耳。乾いた、健康な耳。「甘耳」の義。ン⸢ガ⸣ミン[ʔŋ⸢ga⸣miŋ](苦耳、耳垂れの出る耳、耳漏)の対語。
アマムヌ [ʔa⸢mamunu]甘い物。甘味のあるもの。
アマムヨー [ʔa⸢ma⸣mujoː]雨模様。あまもよい。雨の降りそうな空模様。
アマムリ [ʔa⸢ma⸣muri]雨漏り。
アマユー [ʔa⸢majuː]豊年。ア⸢マ-[ʔa⸢ma]は、ア⸢マイオー⸣ルン[ʔa⸢maioː⸣ruŋ](神が喜び祝福される)の「喜び舞う」の意。⸢ユー[⸢juː]は、「世、代、年」の意。全体で「豊年」の意味。対語は、ン⸢ガ⸣ユー[ŋ⸢ga⸣juː](苦世、凶年、凶作の年)。「あまよ」『おもろさうし』。
アマヨーン [ʔa⸢majoːŋ]雨の降る夜の暗闇。雨夜の暗闇。
アマラスン [ʔa⸢mara⸣suŋ]他動余す。余るようにする。
アマリ [ʔa⸢ma⸣ri]余り。残り。余分。
アマリカジ [ʔa⸢mari⸣kaʤi]「余り風」の義。不要な風。御しがたい風。悪霊。成仏できないで暗闇の中をさ迷い、人に危害を加えるといわれる悪霊。目には見えないが、総身に鳥肌がたつことによって、それに遭遇したことがわかるという。ヤ⸢ナ⸣カジ ア⸢マリ⸣カジ[ja⸢na⸣kaʤi ʔa⸢mari⸣kaʤi](悪い風、余り風)と対句で用いることが多い
アマリプス [ʔa⸢mari⸣pusu]居候。いかず小母。昔は、出戻りなどで実家にいると、家族にとって余計な人とされていた。
アマリムニ [ʔa⸢mari⸣muni]余計なお喋り。余計な言葉。
アマリムヌ [ʔa⸢mari⸣munu]{1}余ったもの。余分の物。
アマリムヌ [ʔa⸢mari⸣munu]{2}「余り者」の義。世間から爪弾きされた者。死者の霊が成仏できないで、さ迷って人に危害を及ぼすもの。対語は、ス⸢バヌ⸣ムヌ[su⸢banu⸣munu](側のもの)ともいう。
アマルン [ʔa⸢ma⸣ruŋ]自動余る。分量などが必要とする数量を越えて残りが出る。
アマルン [ʔa⸢maruŋ]自動肉などが腐りかかる。食物などが腐敗にまでは至っていない状態。
アマンガサ [ʔa⸢maŋ⸣gasa]月にかかるかさ(暈<カサ>)。あまがさ。月の周囲に見える光の輪。
アマングイ [ʔa⸢maŋ⸣gui]雨乞い。旱魃が続くときア⸢マン⸣グイウタ[ʔa⸢maŋ⸣guiuta](雨乞い歌)を歌って降雨を神に祈願する祭祀。ム⸢トゥ⸣ウガン[mu⸢tu⸣ʔugaŋ](友利御嶽)、ニ⸢シ⸣ドーウガン[ni⸢ʃi⸣doːʔugaŋ](西堂御嶽)、ピ⸢ナイ⸣ウガン[pi⸢naiʔugaŋ](鬚川<ピナイ>御嶽)、ア⸢ラ⸣カーウガン[ʔa⸢ra⸣kaːʔugaŋ](新川御嶽)の神々と⸣マイパマ[⸣maipama](前浜)の神々に対する祈願の神歌を歌って雨乞いをした。
アマングイウタ [ʔa⸢maŋ⸣guiʔuta]雨乞いの神歌。○トゥムルウガン(ナガミ)/ウブシクヌ マブルシュ アミブシャヌ/ウブトゥムル カミガナシ アミブシャヌ/ウマンチュヌ ニガイヤ アミブシャヌ/アカカラジヌ ニガイヤ アミブシャヌ/タンディトートゥ マブルシュ アミブシャヌ/ガラクトートゥ カミガナシ アミブシャヌ/。○ハヤミク(雨乞い歌)/ウマンチュヌ ニガイヤヨー アカカラジヌ ニガイヤヨー ハーリ アミタボリリューガナシ/タンディトートゥ マブルシュヨー ガラクトートゥ カミガナシ ハーリ アミタボリリューガナシ/ユスヌカミガナシ キムピティチ ムスビョーリ ハーリアミタボリ リューガナシ/アジルカタ ネーナー オーリヨー ムディルカタ ネーナー オーリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/パトゥマティル シマヤヨー バケナーネーヌ シマヤヨ ハーリアミタボリ リューガナシ/ウティミジヌ ママヤリヨー カキミジヌ ママヤリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ウラダダイドーヌ ヤリヨーリ カンヤヌシ ヤリヨーリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ウフヤマトゥ ハズミヨーリヨー カンヤマトゥ ハズミヨーリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ヤーパニ ピキパラショーリヨー トゥパニピキ パラショーリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ウフウキナ クダリョーリヨー スイウキナー クダリョーリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ヤーパニ ピキパラショーリヨー トゥーパニ ピキパラショーリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ウフミヤク クダリョリヨー シマジリニ クダリョーリヨー ハーリアニタボリ リューガナシ/カンヤシキ フマルヌヨー ヌシヤシキ フマルヌヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ヤーパニピキ パラショーリヨー トゥ―パニピキ パラショーリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/タラマムラ オーラカラヨー ミンナムラ オーラカラヨー ハーリアミタタボリ リューガナシ/ヤイマシマ クダリヨーリヨー ウフイサナキ クダリヨーリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/カンヤシキ フマルヌヨー ヌシヤシキフマルヌヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ヤーパニ ピキパラショーリヨー トゥーパニ ピキパラショーリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/タキドゥンヌ オーラカラヨー ナカダキヌ オーラカラヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/クルシマニ クダリヨーリヨー ヌバンバマ フナシキヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/カンヤシキ フマルヌヨー ヌシヤシキフマルヌヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ヤーパニ ピキパラショーリ トゥーパニ ピキパラショーリ ハーリアミタボリ リューガナシ/バガパトゥマ クダリヨーリヨー フナバマニ フナシキヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/フナヤギサ イチヌマリ ギシャマシュヤ ハチヌマリ ハーリアミタボリ リューガナシ/カミヤシキ フミオーリヨー ヌシヤシキ フミオーリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ミジヌフキ サシヒョーラヨー カヤヌフキ サシヒョーラヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ヌバルティジ ヌキダキヨー ミジヌムトゥ ヤリオーリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/バガパトゥマ ピキユシオーリヨー クリトゥムリ トゥリユシヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/イチブプリ タボラリヨー ニヌブプリ タボラリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ウムルミジ タボラリヨー フダルミジ タボラリヨー ハーリアミタボリ リュガナシ/。○<ニシドーウガン>/クニムトゥヌ マブルシュ アミブシャヌ/ウヤムトゥヌ カミガナシ アミブシャヌ/ウマンチュヌ ニガイ アミブシャヌ/アカカラジヌ ニガイ アミブシャヌ/タンディトートゥ マブルシュ アミブシャヌ/アラクトートゥ カミガナシ アミブシャヌ/。○<マイヌウガン、ピナイウガン>/ピナイバナ マブルシュ アミブシャヌ/カンバナヌ カミガナシ アミブシャヌ/ピナイサーラ ミジムトゥヌ アミブシャヌ/マイナショール マブルシュ アミブシャヌ/ウマンチュヌ ニガイ アミブシャヌ/タンディトートゥ カミガナシ アミブシャヌ/アラクトートゥ マブルシュ アミブシャヌ/。○<アラカワウガン>/ウフイラカ カミガナシ アミブシャヌ/カミイラカ タケバル アミブシャヌ/ミジムトゥヌ マブルシュ アミブシャヌ/ウブガーラヌ シキフチ アミブシャヌ/ウムルミジ タラショーリ アミブシャヌ/フダルミジバ タボラリヨー アミブシャヌ/。○<マイパマヌ ウタ>/マイパマヌマブルシュ アミブシャヌ/ シルパマヌ カミガナシ アミブシャヌ/インスクヌ リューガナシ アミブシャヌ/テンシンマディ アガリヨーリ アミブシャヌ/。○<パマザキパマウタ>/ユニサキヌ マブルシュ アミブシャヌ/シラパマヌ カミガナシ アミブシャヌ/ウフガーラ シキフチ アミブシャヌ/。○<ハヤミブシ>/インスクヌ リューガナシヨー テンシマディ アガリヨーリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/アンノーマヌ シマカラヨー クルミオール クルアミヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/シルクムバ アミナシヨー ヌリクムバ ミジナシヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/バガパトゥマ ピキユシオーリヨー/クリトゥムリ トゥリユシオーリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ニカヌユヌ ユナカニヨー/ユサヌユヌ ユナカニヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ドールドールシ タボラリヨー/ザールザールシ タボラリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ムリムリヌ タウナルケー タウタウヌ イキナルケー ハーリアミタボリ リューガナシ/パマカヤバ ウシウルシヨー イソスリバ ピキウルシヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/マイヌトゥーヌ ヤノールケヨー インヌトゥーヌ ヤノールケヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/ウマンチュヌ イヌチヤヨー ウンカザドゥ イヌチヤル ハーリアミタボリ リューガナシ/マミカザヌ イヌチヤヨー ウティミジドゥ イヌチヤル ハーリアミタボリ リューガナシ/ウティミジヌ ネーナブリヨー カキミジヌネーナヲリヨー ハーリアミタボリ リューガナシ/マミカザン ナイドゥシユル ウンカザン ナイドゥシユヨー ハーリアミタボリ リューガナシ
アマンベールン [ʔa⸢mambeːruŋ]自動甘くなる。甘ったるくなる。食物などが甘みをおびる。
アミ [⸣ʔami]雨。「吾には告げず との曇り安米能布流<アメノフル>日を~。万、4011」の転訛したもの。
アミ [ʔa⸢mi]あめ(飴)。飴玉。
アミオシキ [ʔa⸢mioʃi⸣ki]雨天。「雨・天気」の義。
アミガサ [ʔa⸢mi⸣gasa]あみがさ(編笠)。藺草で編んだ笠。芝居や舞踊の小道具として用いられるもの。
アミカジ [ʔa⸢mi⸣kaʤi]風雨。雨と風。雨につれて吹く風。「雨風(あめかぜ)」の義。
アミカビ [ʔa⸢mikabi]押し被さってくるさま。伸し掛かるさま。
アミカブン [ʔa⸢mikabuŋ]自動水を頭から浴びるように他人が怒鳴り込む。ひどい剣幕で襲い掛かるように怒鳴り込む。
アミグマリ [ʔa⸢miguma⸣ri]雨籠もり。長雨のために仕事が出来ない状態。ア⸢ミマー⸣チ[ʔa⸢mimaː⸣ʧi](雨が止むのを待つ。雨宿り)ともいう。
アミグル [ʔa⸢mi⸣guru]雨雲。
アミシジ [ʔa⸢mi⸣ʃiji]雨粒。
アミシジキ [ʔa⸢miʃiʤi⸣ki]雨続き。
アミシタフ [ʔa⸢miʃita⸣ɸu]雨支度。雨に濡れないための支度。
アミダプトゥキ [ʔa⸢midaputu⸣ki]阿弥陀仏。⸢ソー⸣ラン[⸢soː⸣raŋ](お盆)に歌って親に孝養を尽くす⸢ニンブ⸣ツァー[⸢nimbu⸣ʦaː](無蔵<無常>念仏歌)の中で歌われている仏。○シ⸢ザ⸣ヌ ⸣クイ(兄の声<歌>)/ナムアミダブチ ヨー アミダプトゥキ(南無阿弥陀仏 ヨー 阿弥陀仏)/イマジヨーヌ サンナル シキダイス(今十三歳になる年月です)/アヌヤマティラニ ヨー マイラシバ(あの山寺に ヨー 参ると)/アヌヤマティラニ ヨー マイラサヌ(あの山寺に ヨー 参詣できない)/フンヌヨー アワリヌミチヤリバ(誠に ヨー 哀れな<無常な>道であるから)/ニシカインカユティ キョーモンバユミ(西方へ向かって経文を読み)/ヒガシニンカユティ キョームンバカキ(東に向かって経文を書き<写経し>)/ユムタル キョームンヤ ウヤヌタミ(読んだ経文は父親のため)/カキタル キョームンヤ ハハヌタミ(書いた<写経した>経文は母のため)/ウキトゥリタマワリ ヨー チチヌウヤ(受け取ってください ヨー 父の親)/ウキサシタマワリ ヨー ハハヌウヤ(受け取ってください ヨー 母の親)/ナムアミダブチヨー ウクリンデームヌ(南無阿弥陀仏 ヨー 供養でありますから)。○ウシトゥヌクイ(弟の声<歌>)/ワリンダカ ユニンナル イヤシングヮヌ(頭数<兄弟>四人いる中で 貧乏な子が)/ムチュタルタカラヤ ネーナヤブリ(持てる宝<お金>は無くて)/ムチュタルタカラヤ アリバクリ(持てる宝があればこそ)/スリトゥム ヨー ウヤニヨー マイラサヌ(それでも親に参らさむ<親の仏前に参上しよう>)/ソーローユーヤ イチガユーティ タジナリバ(精霊会の夜はいつの日かと尋ねると)/ソーローユーヤ シチガチヌ ナカヌソロー(お盆の日は七月の中旬のお盆)/ナチカシ ナチングヮチヌ ナカヌソーロー(懐かしい夏の月の中<中旬>のお盆)/ナチカシ ナチングヮチヌ ナチヌヤマ(懐かしい夏の月の夏の山の)/キーヌナル パチパチバ トゥリカザリ(木の実の初生り物を取り供えて)/ナリキーヌ シナジナバ トゥリカザリ(実のなる木々<生り木>の種々を取り供えて)/ムスビティウヤニ ヨー マイラシバ(結んで親の仏前に参ると)/スリトゥムウヤヌ タミドゥナル(それだけでも親のためになる)/ウキトゥリタマワリ ヨー チチヌウヤ(受け取ってください ヨー 父の親)/ウキサシタマワリヨー ハハヌウヤ(受け取ってください ヨー 母の親)/ナムアミダブチ ヨー ウクリンデームヌ(南無阿弥陀仏 ヨー 孝養の饗饌でありますから)/ウーギヌスラ ウリナスビ キザンムヌ(甘蔗の茎、瓜、茄子を刻んだもの)/シースイヌ ウハンギヌ ミジスイティ(メドハギ<蓍萩・マヤーブー>で撥ねる水を添えて)/イキョーヌ ハナガレヌ ミジスイティ(易行の花殻の水を添えて)/ヌクタル サーミジヤ クバスユカ(残った茶水は零すより)/フカヤーヌ ソーロソーローヌ タミドゥナル(あの世<霊界・墓>の精霊のためになる)/ソーンソーン ユムタルキョームンヤ ウヤヌ タミドゥナル(そもそも読んだ経文は親のためになる)/
アミダマ [ʔa⸢midama]飴玉。砂糖を煮詰めて球形、菱形等に作った菓子。戦後は鳩間島にも小売店ができて、飴玉等の駄菓子類が売られるようになった。広口のガラス瓶に、赤、白、黄色などのカラフルな菓子が詰まっていて、それを買ってもらうのが子供にとって楽しみであった。
アミチヂキ [ʔa⸢miʧidʒi⸣ki]雨続き。雨天が続くこと。ア⸢ミシジ⸣キ[ʔa⸢miʃid Zi⸣ki]ともいう。
アミツァ [⸣ʔamiʦa](動)ヤドカリ。⸣アマンツァ[ʔamanʦa]ともいう。
アミツァ [ʔamiʦa]{1}(動)和名、ヤドカリ(宿借り)。巻貝の空殻にはいっていて成長するに伴い空殻を取り替える。陸上に棲息するものと、海中に棲息するものがいるが、魚の餌に利用されるものとしては陸上のヤドカリの方が最適である。餌の食いつきがよい。若年層では、⸣アミンツァ[⸣ʔaminʦa](ヤドカリ)ともいう。
アミツァ [ʔamiʦa]{2}あちこち歩き回って、落ち着きのない者。
アミツァヌ グル [⸣ʔamiʦanu gu⸢ru]ヤドカリの殻。転じて「虎刈り」の意。鋏で頭髪刈り、散髪した髪の高低が揃わない形状を揶揄して言う場合に用いる。
アミツァ パーシ [⸣ʔamiʦa ⸢paː⸣ʃi]ヤドカリ這わせ遊び。
アミドゥシ [ʔa⸢mi⸣duʃi]雨の多い年。降雨の多い年。「雨年」の義。
アミニンガイ [ʔa⸢miniŋ⸣gai]雨願い。降雨の祈願。農作物の順調な育成に必要な十日越しの夜雨の降雨を祈願する祭祀。この祭祀は、⸢ニンガチニン⸣ガイ[⸢ningaʧiniŋ⸣gai](二月願い)で行われた。
アミヌ カタカ [ʔa⸢mi⸣nu ka⸢ta⸣ka]あまよけ。雨覆い。雨に濡れるのを防ぐための覆い。雨の防護壁。トゥ⸢マー[tu⸢maː](茅を編んで作った苫)などをかけて覆い、雨に濡れるのを防ぐもの。
アミパラシ [ʔa⸢mipara⸣ʃi]雨宿り。「雨晴らし」の義。
アミパリ [ʔa⸢mi⸣pari]雨上がり。雨晴れ。雨が止んで空が晴れること。
アミフイ [ʔa⸢mi⸣ɸui]雨降り。雨続き。
アミフイカザ [ʔa⸢miɸui⸣kaʣa](植)ノアサガオ。「雨降り蔓」の義。
アミフイシタフ [ʔa⸢miɸuiʃi̥ta⸣ɸu]あまじたく(雨支度)。外出の際に雨に濡れない用意をすること。雨具の用意をすること。⸢雨降り支度」の義。
アミボーサ [ʔa⸢miboː⸣sa]雨宿り。
アミマーチ [ʔa⸢mimaː⸣ʧi]雨宿り。雨が降り止むのを待つこと。
アミムヌ [ʔa⸢mi⸣munu]編み物。
アミムヨー [ʔa⸢mi⸣mujoː]雨模様。あまもよい。雨が降りそうな空の様子。
アミルン [ʔa⸢miruŋ]他動浴びる。湯や水などをかぶる。体にかける。
アミン シタッカリン [⸣ʔamiŋ ʃi̥⸢tak⸣kariŋ]大雨に濡れる。ずぶ濡れになる。びしょ濡れになる。「雨に打たれる」の義。
アムサムイサン [ʔa⸢mu⸣samuisaŋ]よく頭痛がする。よく気分が悪くなる。
アムサン [ʔa⸢mu⸣saŋ]{1}気分が悪い。頭が重く気分が優れない。
アムサン [ʔa⸢mu⸣saŋ]{2}頭が痛い。心痛である。
アムヌ [ʔa⸢mu⸣nu]茅葺家の甍を覆い被せる竹簾。「編み物」の義。歌謡語。茅の甍が飛散しないようにア⸢ム⸣ヌ(竹簾)を被せ、黒い棕櫚縄をマーリザ(竹矛)に掛けて引き締め、固定させた。
アムリバナ [ʔa⸢muri⸣bana]醸造した泡盛酒が泡を盛り上げる時。フ⸢カイ⸣バナ[ɸu̥⸢kai⸣bana](発酵する時)の対語として用いられる。古典民謡「鳩間中岡」に歌いこまれている
アムン [ʔa⸢muŋ]他動ア⸢ミルン[ʔa⸢miruŋ](浴びる)と同義。
アムン [⸣ʔamuŋ]他動編む。標準語からの借用語の転訛したもの。老年層は、⸣フムン[⸣ɸumuŋ](編む)という。
アメーマ [ʔa⸢meː⸣ma]小雨。⸢アーメーマー[⸢ʔaːmeːmaː](小雨)は幼児語。
アモーリ [ʔa⸢moː⸣ri]にわか雨。夕立。「あまぐれ」(『おもろさうし』)の [amagure] → [amaure](g音脱落)→ [amoːri]({SqBr}au{/SqBr} → {SqBr}oː{/SqBr}、{SqBr}e{/SqBr} → {SqBr}i{/SqBr} の母音融合変化)による音韻変化に基づくものと解釈される。
アモーリ ソールン [ʔa⸢moː⸣ri ⸢soː⸣ruŋ]神々が降臨される。天下りされる。
アモールン [ʔa⸢moː⸣ruŋ]他動湯を浴びなさる。湯浴みなさる。
アヤ [⸣ʔaja]綾。模様。紋様。「AYA.ア(非常に柔らかで手ざわりのよい、日本の布の一種.また絹織物などについている木の葉や花などの模様.~)」『邦訳日葡辞書』の義。「肉咼、掌内文理也、手乃阿也(てのあや)」『新撰字鏡』の「阿也」が転訛したもの。
アヤーマキン [ʔa⸢jaː⸣makiŋ]小柄模様の着物、老人用の着物。
アヤーン [ʔa⸢jaː⸣ŋ]ふくれやすい。気分を害しやすい。不機嫌になりやすい。
アヤカーリムヌ [ʔa⸢jakaːri⸣munu]肖りもの。長寿や健康に肖る印として頂いた物。
アヤカールン [ʔa⸢jakaː⸣ruŋ]他動肖る。ものに感じて、それに似て幸せになるように願う。⸢アイカー⸣ルン[⸢ʔaikaː⸣ruŋ](肖る)ともいう。
アヤキン [⸣ʔajakiŋ]縞模様のある着物。
アヤサピダラサーン [ʔa⸢ja⸣sapidarasaːŋ]ふくれやすい。機嫌ををそこねやすい。不機嫌になりやすい。「アヤサ」と「ピダラサ」の重言(畳語)が形容詞化したもの。「ピダラ」は「左・ア」の融合した形で、<頭の働きが少しおかしな人>の義。正常な人の性格と異なる「ふくれやすい性格」の意。
アヤッサーン [ʔa⸢jas⸣saːŋ]{1}怪しい。危うい。危ない。危なっかしい。
アヤッサーン [ʔa⸢jas⸣saːŋ]{2}疑わしい。
アヤトゥリ [ʔa⸢ja⸣turi]あやとり(綾取り)。輪にした糸を左右の手首や指にかけて取り合う女児の遊戯。
アヤナキ [ʔa⸢ja⸣naki]犬や猫などが不吉な鳴き方をすること。ヤ⸢ナナキ[ja⸢nanaki](悪いなき方、不正常な鳴き方)ともいう。犬や猫がア⸢ヤ⸣ナキ[ʔa⸢ja⸣naki]すると、その動物の向いて鳴く方角に不吉なことが起きるといわれて、忌み嫌われている。
アヤパニ [ʔa⸢ja⸣pani]美しい羽。綾なす羽。「綾羽」の義。「アヤ」は、『おもろさうし』では「霊妙である、ふしぎでる、の意を原義にし、美しい、りっぱな、の意の美称となる・・・」(『沖縄古語大辞典』)とあり、「あやざはね(綾差羽)」の項では「美しい差し羽」とある。八重山民謡の最高峰といわれる「バシゥヌトゥリゥ ブシゥ(鷲の鳥節)」では、「アヤバニバ マラシヨウリ ビゥルパニバ シゥダシヨウリ/ (綾羽バ生ラシヨウリ ビゥルパニバ産ダシヨウリ)」(『宮良当壮全集12』)とある。鳩間島で歌われている「鷲の鳥節」では、ア⸢ヤ⸣パニ[ʔa⸢ja⸣pani](綾羽、立派な羽)と歌われている
アヤマールン [ʔa⸢jamaː⸣ruŋ]自動すねる。機嫌悪くなる。
アヤマサ [ʔa⸢jama⸣sa](動)魚の名。和名、ユトヒキ。頭部から尾びれにかけて黒い横ストライプが4本走る。⸢アヤ(模様)のある魚」の義。えら(鰓)のところに棘があり、刺されると痛い。礒釣りでも釣れる。
アヤミルン [ʔa⸢jami⸣ruŋ]他動傷つける。損なう。殺す。
アヤムニ [ʔa⸢ja⸣muni]不機嫌なものいい。感情を害して不機嫌な表情で発することば。ふてくされた物言い。
アヤムン [ʔa⸢ja⸣muŋ]他動傷つける。「あやめる(下二段)」の四段活用化したもの。
アヤメー [⸣ʔajameː](人)女性の名前。
アヤンマー [ʔa⸢jam⸣maː]ふくれやすい人。ひねくれやすい人。子供や女性に多いといわれている。
アヤンマールン [ʔa⸢jammaː⸣ruŋ]自動すねる。不機嫌になる。捻くれる。
アヨー [⸣ʔajoː]八重山の古い神歌。呪詞カンフチゥ、ニガイフチゥの予祝機能を受け継ぐ叙事的歌謡。鳩間島ではタ⸢ナ⸣ドゥル ⸣アヨー[ta⸢na⸣duru ⸣ʔajoː](種取りのアヨー)が終戦直後まで伝承されていたが現在では伝承者はいない
アラ- [ʔa⸢ra-]接頭粗雑である。きつい。「粗い」の意。
アラ- [ʔa⸢ra-]接頭新-。名詞を修飾して「新しい~」の意を表す。
アラーシミルン [ʔa⸢raːʃimiruŋ]他動洗わさせる(使役)。洗濯させる(使役)。
アラースン [ʔa⸢raːsuŋ]他動洗わせる。洗濯させる。消毒させる。ア⸢ラウン[ʔa⸢rauŋ](洗う)の未然形、ア⸢ラー[ʔa⸢raː]に、使役の助動詞⸣スン[⸣suŋ](~せる。~させる)が付いて形成された動詞。
アラースン [ʔa⸢raː⸣suŋ]他動表す。現す。霊験を示す。
アラーリン [ʔa⸢raː⸣riŋ]自動現れる。
アラーリン [ʔa⸢raːriŋ]自動洗われる。洗うことができる。{ア⸢ラウン[ʔa⸢rauŋ](洗う)の未然形ア⸢ラー[ʔa⸢raː]に可能の助動詞⸢-リン[⸢-riŋ](~れる)が付いて形成された派生動詞(可能動詞)}。
アラーン [ʔa⸢raː⸣ŋ]{1}荒い。風雨が激しく海が荒い。
アラーン [ʔa⸢raː⸣ŋ]{2}言動が乱暴である。
アラーン [ʔa⸢raː⸣ŋ]{3}粗い(太い)。
アライガマジ [ʔa⸢raigamaʤi]洗い髪。女が髪を洗って解き下げたままの髪。
アライクサイ [ʔa⸢raikusai]洗骨。洗骨の法事。いったん土葬して葬った遺骸を三年以後に掘り出して洗骨し、火葬して骨壺に収め、本墓に納骨すること。⸢シン⸣クチ[⸢ʃiŋ⸣kuʧi](洗骨)ともいうが、沖縄方言からの借用語であろう。「あらいこしらえ(洗い拵え)」の義。ク⸢サイ[ku̥⸢sai]は、「Coxiraye,uru,eta.コシラエ、ユル、エタ(拵・刷・調へる、ゆる、へた)整える、または、用意する」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。鳩間島では、昭和60年ごろまでは火葬をしなかったので、人が死ぬと⸢フインチバカ[⸢ɸuinʧibaka](岩を掘り抜いた墓)での風葬や埋葬にするのが一般的であった。そして埋葬後三年以上経つと骨を洗い清めて甕に納める洗骨の法事を執り行った。
アライグリサン [ʔa⸢raiguri⸣saŋ]洗いづらい。洗いにくい。動詞ア⸢ラウン[ʔa⸢rauŋ](洗う)の連用形ア⸢ライ[ʔa⸢rai]に、形容詞型助動詞グ⸢リ⸣サン[gu⸢ri⸣saŋ](~づらい。~にくい)が付いて形成されたもの。
アライノン [ʔa⸢raʔinoŋ]新しい砂。新鮮な砂。人の足跡のない海岸の砂浜から運び上げた砂。正月の時には庭や門前に砂を敷きつめて祝った。これは子供らの仕事であった。
アライパナ [ʔa⸢raipana]神祈願の際の供物のひとつ。せんまい<洗米>。かしよね。あらいよね。「洗い花米」の義。神に供えるために洗い清めた米で、イ⸢ツァン⸣パイキー[ʔi⸢ʦam⸣paikiː](榊)の葉を三枚茶碗の内縁に立て、せんまいを盛って供える。
アライムヌ [ʔa⸢raimunu]洗濯物。「洗い物」の義。
アラウン [ʔa⸢rauŋ]他動洗う。
アラカー [ʔa⸢ra⸣kaː](地)新川。中森の西のパ⸢カヤマ[pa⸢kajama](墓山)に連続した森の東端部にある地名。ア⸢ラ⸣カーウガン[ʔa⸢ra⸣kaːʔugaŋ](新川御願)という拝所がある。直径約1メートルのヤ⸢ラブ[ja⸢rabu](テリハボク)の大木が鬱蒼と生い茂っている。
アラカー [ʔa⸢rakaː](地)石垣市の四箇字中西端にある新川集落。
アラカーウガン [ʔa⸢ra⸣kaːʔugaŋ]鳩間島の水の神を祀る拝所(御願、お嶽)。ミ⸢ジムトゥ[mi⸢ʤimutu](水源)といわれている。ウ⸢ブ⸣マイ[ʔu⸢bu⸣mai](大前)とパ⸢カヤマ[pḁ⸢kajama](墓山<林>)の境にある。ヤ⸢ラブ[ja⸢rabu](テリハボク)の巨木やフ⸢クン[ɸu̥⸢kuŋ](福木)の大木が鬱蒼と生い茂る中に瓦葺の拝殿がある。拝殿の奥には、⸣ウボー[⸣ʔuboː](威部。香炉のある聖域)がある。ア⸢ザテーは⸢ヨー⸣カヤーから養子入って継いだ家である。⸢ヨー⸣カヤーの屋敷の東庭は大変セジ高い所で、ビ⸢チ⸣ル[bi⸢ʧi⸣ru](神霊の高い霊石の庭)がある。昔は、⸢ウイヌ⸣ウガン(友利御嶽)で祈願があった後、サカサ(司。神女)やティ⸢ジリ⸣ビー(男性神職者)たちが、⸢カンヌ⸣ミチ[⸢kannu⸣miʧi](神の道)を通って⸢ヨー⸣カヤーの東庭のビ⸢チ⸣ルに集まり、⸢カンアサ⸣ビ[⸢kaŋʔasa⸣bi](神遊び)をして、ア⸢マイヨーッ⸣タ[ʔa⸢maijoːt⸣ta](歓え誇られた)と伝えられている。現在の東里家は西村のトゥ⸢ニムトゥ[tu⸢nimutu](根家。根元)で、豊年祭のカ⸢シ⸣ラ<旗頭。雌>を保管する家である。東里家から分与されたと伝えられるカシラ<旗頭>を東村のカシラ<旗頭。雄>として、東村のトゥ⸢ニムトゥ(根家。友利家)に保管されている。新川御願の最後のティ⸢ジリ⸣ビー[t⸢iʤiri⸣biː](手摩り部。男性神職者)は東里清光氏であった。/ウフイラカ カミガナシ アミブシャヌ/カミイラカ タケバル アミブシャヌ/ミジムトゥヌ マブルシュー アミブシャヌ/ウブガーラヌ シキフチ アミブシャヌ/ウムルミジ タラショーリ アミブシャヌ/フダルミジバ タボラリヨー アミブシャヌ/(ア⸢マン⸣グイ<雨乞い歌>)と歌われている。
アラキグリサン [ʔa⸢rakiguri⸣saŋ]歩きにくい。歩きづらい。
アラキザル [ʔa⸢rakiʣa⸣ru]死後にあたる季節の最初の先祖供養行事。旧暦1月16日のジ⸢ル⸣クニチ[ʤi⸢ru⸣kuniʧi](十六日祭)、旧暦月の7月の⸢ソー⸣ラン[⸢soː⸣raŋ](お盆<精霊祭り>)など。
アラキジ [ʔa⸢ra⸣kiʤi]荒削り。材木などを山で荒削りして牛などに引かせて山出しをした。
アラキ シェーン [ʔa⸢ra⸣ki ⸢ʃeː⸣ŋ]歩くことができる。「歩き・し得る」の義。「歩ききれる」の転訛したもの。「歩き・切れる」に対応する形。
アラキスーブ [ʔa⸢rakisuː⸣bu]歩き勝負。歩き競争。
アラキナライ [ʔa⸢raki⸣narai]伝い歩き。幼児が歩き出すこと。歩き習うこと。病後の歩行訓練をすること。
アラキニーバン [ʔa⸢rakiniː⸣baŋ]足が遅い。「歩き遅い」の義。ア⸢シフコー⸣ン[ʔa⸢ʃiɸu̥koː⸣ŋ](足が遅い)ともいう。
アラキパジミ [ʔa⸢rakipaʤi⸣mi]歩き始め。
アラキミチ [ʔa⸢raki⸣miʧi]通路。道路。「歩き道」の義。
アラキン [ʔa⸢rakiŋ]新しい着物。「新衣」の義。
アラクー [ʔa⸢rakuː]粗い粉。「粗粉」の義。米を一晩水に浸けたものを搗き臼に入れて杵で搗いて粉にした。餅を作る際に⸢ソー⸣キ[⸢soː⸣ki](箕)に広げ くっつかぬように塗(まぶ)して使用した。
アラグスク [ʔa⸢ragusu̥⸣ku](固有)。新城島。老年層は、⸣パナリ[pa⸢na⸣ri](新城島)という。
アラグスクテー [ʔa⸢ragusu̥ku⸣teː]屋号。新城ミダ氏宅。
アラクナシ [ʔa⸢rakunaʃi]芋などを煮て簡単に捏ねること。⸢荒ごなし」、「粗捏」の義。
アラクン [ʔa⸢ra⸣kuŋ]自動歩く。
アラザラン [ʔa⸢raʣara⸣ŋ]連体あるべくもない。でたらめな。とんでもない。
アラシ [ʔa⸢raʃi]新しく開墾した土地。掘り起こした大きな土塊が転がる開墾地。「畄、アラキハリ」『類聚名義抄』、「荒城田乃<アラキタノ>~。万、3848」の転訛したものか。「新仕明け地」の義。
アラシアキ [ʔa⸢raʃiʔaki]新しく開墾すること。「新仕開け地」の義か。
アラシゥカイ [ʔa⸢rasïkai]乱暴な使い方。「荒使い」の義。無鉄砲につかうこと。
アラシゥカシ [ʔa⸢rasi̥ka⸣ʃi]鋤を牛に曳かせて最初に田畑を鋤くこと。⸢粗鋤き」の義か。
アラシ カイスン [ʔa⸢raʃi kai⸣suŋ]開墾地を耕す。
アラシグトゥ [ʔa⸢raʃigutu]荒仕事。きつい肉体労働。
アラシコーシ [ʔa⸢raʃikoːʃi]蒸し餅菓子。「あがらし<蒸し>菓子」の転訛したもの。糯米と粳米を半々に混ぜ、五分搗きにして洗い、暫く水に浸ける。水切りをして半乾きになったところを臼に入れ、搗いて米粉にする。これを⸢クー⸣バリ[⸢kuː⸣bari](製粉。「粉割」の義)という。それに黒糖を削って混ぜ、よく揉んでア⸢ラシパク[ʔa⸢raʃipaku](蒸し箱。蒸し器)に入れて、カステラのように蒸し上げて作った菓子。四角い食パンの大きさに切って食した。米寿の祝いや三十三年忌の法事の際にもつくられた。
アラスーン [ʔa⸢ra⸣suːŋ]自動争う。相手を押しのけて勝とうとする。
アラスイ [ʔa⸢ra⸣sui]争い。競争。喧嘩。
アラスイ [ʔa⸢rasui]風が荒く激しく吹くこと。風が吹き荒れること。
アラスイグトゥ [ʔa⸢rasui⸣gutu]争いごと。喧嘩。
アラスクリ [ʔa⸢rasu̥kuri]{1}粗作り。粗削りのさま。粗削りで頑健なさま。
アラスクリ [ʔa⸢rasu̥kuri]{2}粗雑な作り方。粗末な作り方。ク⸢ヌ バー⸣ケー ア⸢ラスクリ サリティ ダーッ⸣サー ⸢ナー⸣ヌ。マー⸢ンベーマ⸣ ク⸢メーキ⸣ ス⸢ク⸣レー ⸣ミサムヌ[ku⸢nu baː⸣keː ʔa⸢rasukuri sariti daːs⸣saː ⸢naː⸣nu。maː⸢mbeːma⸣ ku⸢meːki⸣ su̥⸢ku⸣reː ⸣misamunu](この竹笊は粗雑な作り方で良くない<本来の笊らしくない>。もう少し細やかに、入念に作ればよいものを)
アラスン [ʔa⸢rasuŋ]他動荒らす。
アラスン [ʔa⸢ra⸣suŋ]他動有るようにする。作る。貯蓄する。儲ける。入手する。産む。
アラソーリ [ʔa⸢rasoːri]最初の畑の草取り。おおまかな畑の草取り。「粗・さくり<渫>」の転訛したものか。
アラダティ [ʔa⸢rada⸣ti]新所帯。新世帯。独立。分家して新しく所帯をかまえること。
アラダティルン [ʔa⸢radati⸣ruŋ]他動荒立てる。もつれ(縺れ)させて問題化する。面倒にする。
アラダトゥン [ʔa⸢rada⸣tuŋ]他動荒立てる。「あらだつ(下二段)」の四段活用化したもの。
アラタビ [ʔa⸢ra⸣tabi]新しい旅。初旅。⸢ウイ⸣タビ[⸢ʔui⸣tabi](初旅)、パ⸢チタビ[pḁ⸢ʧitabi](初旅)ともいう。
アラタマル トゥシ [ʔa⸢ratama⸣ru ⸣tuʃi]新年。「改まる年」の義。⸣クー トゥシ[⸣kuː tuʃi](来る年)、ン⸢カイル⸣ トゥシ[ŋ⸢kairu⸣ tuʃi](迎える年)ともいう。
アラタマルン [ʔa⸢ratama⸣ruŋ]自動改まる。新しくなる。
アラタミルン [ʔa⸢ratami⸣ruŋ]他動改める。改善する。直す。
アラタムン [ʔa⸢ra⸣tamuŋ]他動改める。「改む」の義。「あらたむ(下二段)」の四段活用化したもの。
アラッサーク [ʔa⸢rassaːku]厳しい仕事。荒業。体力の要る力仕事。
アラッパー [ʔa⸢rappaː]行動の荒っぽい人。⸢アーラッパー[⸢ʔaːrappaː](行動の荒っぽい人)ともいう。
アラッパームニ [ʔa⸢rappaːmuni]荒っぽい言葉。荒々しい言葉遣い。暴言ではないが、聞いていてなんとなく喧嘩しているように思えるような口調の言葉。
アラテイー [ʔa⸢ra⸣tiː]{1}新しい手法。新しい方法。
アラテイー [ʔa⸢ra⸣tiː]{2}初めての作品。
アラトゥ [ʔa⸢ratu]粗い砥石(粗砥)。あらとぎに用いる質の粗い砥石。
アラトゥー [ʔa⸢ratuː]荒海。時化の荒海。波の高い荒海の海峡。
アラドゥー [ʔa⸢ra⸣duː]初婚(女性)。初めて結婚して新家庭を作ること。
アラトゥイ [ʔa⸢ratui]荒研ぎ。粗研ぎ。荒い砥石で刃物を研ぐこと。刃物を大まかに研ぐこと。
アラトゥシ [ʔa⸢ratuʃi]粗い砥石。粗めの砥石。ア⸢ラトゥ[ʔa⸢ratu](粗い砥石)ともいう。対語はク⸢マトゥ[ku⸢matu](細かいめの砥石)。大工道具を研ぐ際に用いる。先ずア⸢ラトゥで刃を研ぎ、次にクマトゥで研ぎあげる。農耕用の刃物はア⸢ラトゥで研ぎ、ク⸢マトゥは使わない。
アラナー [ʔa⸢ra⸣naː]~でなくて。指定の助動詞⸢ヤン[⸢jaŋ](である)の未然形に打ち消しの助動詞-ヌ[-nu](ない)の連用形⸣ナー[⸣naː](~ずに)が下接した形。「~でなくて、~でないのに、~でないにもかかわらず」の意味。
アラナン [ʔa⸢ranaŋ]荒波。若年層は、ア⸢ラナミ[ʔa⸢ranami](荒波)ともいう。
アラナンカ [ʔa⸢ranaŋ⸣ka]初七日忌。死後七日目に執り行われる法事。「新七日」の義。
アラニシ [ʔa⸢raniʃi]秋の終わり(十一月)ごろ吹き始める季節風の北風。「新北風」の義。⸣ミーニシ[⸣miːniʃi](初北風)ともいう。
アラヌ [ʔaranu]~でない。指定の助動詞⸢ヤン[⸢jaŋ](である)の未然形に打ち消しの助動詞ヌ[nu](ない)が下接した形。「否、アラズ・イナヤ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
アラヌーヌ [ʔa⸢ranuːnu]粗布(あらぬの。そふ)。太目の糸で織り目を粗く織った平織りの布。
アラヌール [ʔa⸢ranuː⸣ru]粗塗り。下塗り。壁や家具類の塗装で最初にざっと塗ること。
アラバー [ʔa⸢rabaː]風の吹き荒ぶ場所。吹き荒れる所。「荒場」の義。
アラパカ [ʔa⸢rapaka]新しく作った墓。新しく死者を葬った墓は⸢ミーパカ[⸢miːpaka]という。
アラパジミ [ʔa⸢rapaʤi⸣mi]最初。一等はじめ。「新初め」の義。
アラブシケー [ʔa⸢rabuʃi̥keː]屋号。⸣ウブシケー[⸣ʔubuʃi̥keː](大城博氏宅)の東隣の大工修氏宅(「東大城家」の儀)や大工新吉氏宅。⸢ダイ⸣ケー[⸢dai⸣keː](大工定市氏宅)の前隣。
アラフニ [ʔa⸢ra⸣ɸuni]新造船。若年層は⸢シンゾー⸣シン[⸢ʃinʣoː⸣ʃiŋ](新造船)ともいう。カツオ漁船を石垣島の造船場で新造した。ス⸢ラウラ⸣シ[su⸢raʔura⸣ʃi](進水式)には餅を撒いて祝う習慣があった。
アラフルマイ [ʔa⸢raɸuru⸣mai]元日の朝の料理。新しいご馳走。
アラマース [ʔa⸢ramaːsu]粗塩(あらしお)。精製してない結晶の粗い塩。塩焼きして取り出したばかりの粗塩。
アラマイ [ʔa⸢ramai]新米。新しく収穫した米。⸢ミーマイ[⸢miːmai](新米)ともいう。
アラミチ [ʔa⸢ra⸣miʧi]新しい道。「新道(あらみち)」の義。
アラムス [ʔa⸢ramusu]新しい筵。⸢ミームス[⸢miːmusu](新品の筵)ともいう。
アラムトゥ [ʔa⸢ramu⸣tu]玄米または精白した米の中に混じっている籾。あらもと(粡)。「粒 阿良本」『新撰字鏡』の転訛したもの。
アラムニ [ʔa⸢ra⸣muni]荒っぽい言葉遣い。暴言。喧嘩口論。
アラムヌ [ʔa⸢ramunu]新しいもの。新品。⸢ミームヌ[⸢miːmunu](新品)ともいう。
アラムヌ [ʔa⸢ra⸣munu]大きなもの。粗大なもの。粗くて大まかなもの。
アラモーキ [ʔa⸢ramoːki]荒儲け。荒稼ぎ。大儲け。
アラヤー [ʔa⸢rajaː]{1}新しい家。新築の家。⸢ミーヤー[⸢miːjaː](新築の家)ともいう。
アラヤー [ʔa⸢rajaː]{2}屋号。故吉川米三氏宅。
アラワリルン [ʔa⸢rawari⸣ruŋ]自動現われる。
アラン⸠ユー [ʔa⸢raŋ⸠juː]~ではありませんよ。ア⸢ラ⸣ヌ[ʔa⸢ra⸣nu](~でない)の丁寧な表現。助動詞⸢ヤン[⸢jaŋ](である)の未然形に打ち消しの助動詞ヌ[nu](~ない)の終止形が付き、丁寧の終助詞⸢ユー[juː]が下接した形
アランカー [ʔa⸢raŋ⸣kaː]でなかったら。助動詞⸢ヤン[⸢jaŋ](である)の未然形に打ち消しの助動詞ヌ[nu](~ない)の連体形が付き、更に接続助詞⸣カー[⸣kaː](もし~なら<~たら>)が付いて仮定条件を導く。
アリ [⸢ʔa⸣ri]ほら。そら。それ。あら。
アリー [⸣ʔariː]あらい(洗膾)。お汁の実となる魚肉や豚肉、野菜類など。[ʔarai] → [ʔareː] → [ʔariː] の音韻変化による。
アリアリ [⸣ʔariʔari]それそれ。ほらほら。⸣ウリウリ[⸣ʔuriuri](それそれ)ともいう。
アリガタイ クトゥ [ʔa⸢rigatai⸣ ku̥tu]有り難いこと。若年層の言葉で、標準語からの借用語。老年層は、フ⸢コーラサー⸣ル ⸣クトゥ[ɸu̥⸢koːrasaː⸣ru ⸣ku̥tu](有り難いこと<感謝したいこと、気持ち。身にしみて嬉しいこと>)という
アリズー [ʔa⸢ri⸣ʣuː]在り所。在り処。家、建物、田畑などのあるところ。存在する所。⸣アルントン[⸣ʔaruntoŋ](在り処)、⸣アントン[ʔantoŋ](在り処)ともいう。
アリ タボーリ [⸣ʔari ⸢taboː⸣ri]~であってください。~でいらっしゃって下さい。~でおわしませ。「あり賜われ」の転訛したもの。
アリッサルン [⸣ʔarissaruŋ]自動常に有り余るほど沢山ある。満ち溢れている。十二分にある。卑語。「有り・腐れる」の義。
アリドゥー [ʔa⸢riduː]荒海。灘。沖の荒海。
アリヒャー [⸣ʔariçaː]そら大変。それ大変。それ見ろ。他人を驚かす際に言うことば。⸣ヒャー[çaː](~野郎。~やつ)は人を罵り、悪しざまにいう意味の接尾語。⸣ウリヒャー[⸣ʔuriçaː](そら大変、それ見ろ)と同じ。
アリフクリ [ʔa⸢riɸu̥ku⸣ri]ものが有り余って、もののありがたさを知らないこと。
アリプサン [ʔa⸢ri⸣pusaŋ]ありたい。存在詞⸣アン[ʔaŋ](在る。有る)の連用形に形容詞型助動詞⸣プサン[pu̥saŋ](~たい。~欲しい)が下接した形。
アリヨーアリヨー [ʔa⸢rijoːʔarijoː]あれよあれよ。ああっ!助けてー!驚きうろたえて人を呼ぶときに発することば。乳児が縁側から落ちそうになったとき等、危機一髪のところを母親が見つけて絶叫することば。
アリヨークリヨー [ʔa⸢rijoːkuri⸣joː]あれこれと苦労すること。
アリルン [ʔa⸢riruŋ]自動荒れる。天候が悪化して海が荒れる。強風が吹いて大波が立つ。
アリン ナーン [⸣ʔarin ⸢naː⸣ŋ]あってもなくても。
アル [⸣ʔaru]連体或る。どれと具体的に示さず、漠然とその存在を示して叙述する時に使う語。
アル ウビ [⸣ʔaru ⸣ʔubi]あるだけ。
アルカカラー [ʔaru⸢kaka⸣raː]悉く。総て。あるものは総て。ありったけ。アルカ⸢カ⸣ジラー[ʔarukḁ⸢ka⸣ʤiraː](悉く。あるもの総て)ともいう。
アルクトゥ ナーンクトゥ [⸣ʔarukutu ⸢naːŋ⸣kutu]本当のことと嘘。実際にあることと実在しないこと。本当のことから嘘まで総て。「あること・ないこと」の義。
アルシゥカイ [⸣ʔarusï̥kai]金が有るからといって湯水のように使うこと。乱費すること。無駄遣い。
アルトゥール [⸣ʔaru ⸢tuː⸣ru]ありのまま。そのとおり。あるとおり。「在る・通り」の義。⸣ウヌ ⸣トゥール[⸣ʔunu ⸣tuːru](その通り、そのまま)ともいう。
アル ピン [⸣ʔaru ⸣piŋ]ある時。ある日。
アルムヌ ナーンムヌ [⸣ʔarumunu ⸢naːm⸣munu]ある物総て。ありったけ。「ある物・無い物」の義。
アレー クトゥ [⸣ʔareː ⸣ku̥tu]あったこと。動詞⸣アン[⸣ʔaŋ](在る)の已然形に動詞⸣アン[⸣ʔaŋ](有る)の連体形が付いて、[ari] + [aru] → [ariaru] → [areːru] が形成され、ru語尾が弱化して脱落した形。
アローナ [ʔa⸢roː⸣na]初耕。最初の田打ち。荒打ち。「荒熟し(あら・こなし)」の義。[ara・konaʃi] → [arakunaʃi] → [arafunaʃi] → [arauna] → [aroːna] と音韻変化したもの。初耕は田の水を落とし、犂を牛に引かせて犂の先で土を切り、箆状の部分で土塊を反転させて耕す。これによって稲の刈り株を土中に埋めた。耕牛を持たない人は⸢キー⸣パイ[⸢kiː⸣pai](木製の鍬)を使ってス⸢リ⸣バイ[su⸢ri⸣bai](刈り株)を反転させて土中に埋めるように耕した。
アロールン [ʔa⸢roː⸣ruŋ]自動おありになる。あられる。⸣アン[⸣ʔaŋ](ある)の敬語動詞。「有り・おわす<在す>」の転訛したもの。対象となる存在者、動作主に対する高い敬意を表す。
アワイシ [ʔa⸢wa⸣iʃi]堆積砂岩。砂が堆積して固まって形成されたといわれる岩石。石垣島の資産家ではこれを削り整形して石垣を積むのに利用したり、壁用に利用されたが鳩間島では、そのような家はない。
アワザキ [ʔa⸢waʣa⸣ki]粟酒。粟で醸造した酒。歌謡語。古典民謡パ⸢トゥ⸣マナカムリ[pḁ⸢tu⸣manakamuri](鳩間中岡)で歌われている
アワミサク [ʔa⸢wamisa⸣ku]粟で醸造した神酒。歌謡語。古典民謡パ⸢トゥ⸣マナカムリ[pḁ⸢tu⸣manakamuri](鳩間中岡)で歌われている。ウ⸢ミサ⸣ク[ʔu⸢misa⸣ku](お神酒)の項参照
アワリ [ʔa⸢wa⸣ri]難儀苦労。苦しみ。悲哀。「哀れ」の転訛したもの。歌謡語。/フンヌヨー アワリヌ ミチヤリバ/(誠に哀れ<悲哀・憐憫>な道だから~)『念仏歌・<兄の声>』。会話では、⸢アウ⸣リ[⸢ʔau⸣ri](難儀。苦労)というのが普通。
アワリクチサ [ʔa⸢wa⸣rikuʧisa]艱難辛苦。難儀苦労。
アワリヌ ゴーカジ [ʔa⸢wari⸣nu ⸢goːka⸣ʤi]哀れ(難儀苦労)の数々。あらゆる難儀苦労。厳しい難儀苦労。
アワリヨーリ [ʔa⸢wa⸣rijoːri]難儀苦労。体を悪くするほどの苦労。
アヲーン [ʔa⸢woː⸣ŋ]青い。
アン [⸣ʔaŋ]網。ム⸢ジ⸣アン[mu⸢ʤi⸣ʔaŋ](極細目の網)、ス⸢クアン[su⸢kuʔaŋ](底網)、⸣キタアン[⸣kitaʔaŋ](桁網)、パ⸢リアン[pa⸢riʔaŋ](張り網)などがある。
アン [ʔan]餡(あん)。ア⸢ガマミヌ⸣ アン[ʔa⸢gamaminu⸣ʔaŋ](小豆の餡)、ク⸢マミヌ⸣ アン[ku⸢maminu⸣ʔaŋ](緑豆、<ヤエナリ>の餡)、⸢ミー⸣スアン[⸢miː⸣suʔaŋ](味噌餡)などがある。
アン [ʔaŋ]自動{1}ある(有る、在る)。対義語は、⸢ナー⸣ヌ[⸢naː⸣nu](無い)。
アン [ʔaŋ]自動{2}形容詞語幹に接尾辞「サ」をつけて、それと結合して活用形をつくるが、この例は少ない。
アン [⸢ʔaŋ]東。
アン [⸣ʔaŋ]網。
アン [⸣ʔaŋ]餡。茹でた小豆などに砂糖を混ぜ、さらに煮て練ったもの。餅の中に包みいれるもの。
アンカー [⸢ʔaŋ⸣kaː]錨(いかり)。英語からの借用語。日露戦争で海軍に入隊した兵隊から広がったといわれている。鳩間島出身の海軍兵士が一年間の兵役を務めて除隊後島に帰り、「鳩間方言は忘れた」といって話題になったという伝説がある。同じ頃に英語から借用された語に、ゴーヘー[⸢goːheː](前進せよ)、ゴーシタン[⸢goːʃitaŋ](後退せよ)、ブ⸢リッ⸣ジ[bu⸢rid⸣ʤi](船室)、和語からの借用語に、⸢ヨー⸣ソロー[⸢joː⸣soroː](宜候、直進せよ)、ウ⸢ム⸣カージ[ʔu⸢mu⸣kaːʤi](面舵、右舷方向)、トゥ⸢リ⸣カージ[tu⸢ri⸣kaːʤi](取り舵、左舷方向)などがある。今では八十歳台の古老も、これらを伝統的な鳩間方言と信じて疑わない
アンカージナ [⸢ʔaŋ⸣kaːʤina]碇に繋ぐ綱。英語からの借用語⸢アン⸣カー(anchor)に、⸣シナ[⸣ʃina](綱)が下接して生成された合成語(複合語)。複合の際に、後接語の頭子音が濁音化したもの。⸢アン⸣カーは明治後期に帝国海軍を除隊した兵士が流行らせたという。今では老年層の人までがアンカーを伝統的方言と信じて疑わない。カ⸢ラグ[ka⸢ragu](碇。「金具」の転訛したものか)が伝統的鳩間方言であるという。アンカージナには (i) 普通の碇綱(アンカーロープ)の意味と、(ii) イカ釣り漁の際に、潮の流れに舟が流されるのを防ぐために40~50尋の藁縄に重石をつけて深海に投入するもの、の意味がある
アンカージナ [⸢ʔaŋ⸣kaːʤina]アンカーロープ。錨綱。アンカーは外来語。明治時代に帝国海軍から伝播したという
アンカジ [⸢ʔaŋkadʒi]東風。涼風。
アンガマ [⸢ʔaŋ⸣gama]お盆のナ⸢カヌ⸣ ピー[na⸢kanu⸣ piː](中日)とウ⸢クリ[ʔu⸢kuri](お送り、精霊送り)の夜に祖霊を慰めもてなすために獅子舞をするが、獅子舞の前に仏間の庭先で歌い舞われる念仏踊り(「姉さん踊り」の義)。クバの葉扇を片手に持った翁と媼が右へ左へと手を振りつつ現れると、木の葉で仮面を作って被り、タオルで頬被りしてクバ笠を目深くかぶり、変装した青年男女が踊る仮面仮装の入子型の舞踊集団。男女とも裏声をつかいながら曲目をリクエストしたり、問答を交わしたりする。ナ⸢カグス⸣ク[na⸢kagusu⸣ku](ヒンプン)と軒先の中庭で⸣ジーシンカ[⸣ʤiːsiŋka](地謡組)が三味線を弾き太鼓や銅鑼を打ち鳴らしてム⸢ヌン⸣グイウタ[mu⸢nuŋ⸣guiuta](物乞い歌)を歌う。それに合わせて筵を出して敷き、煙草盆を出し、煙管、酒、ウサイ(お菜)を出す。獅子舞いを出すようにと歌いだす頃から仮面仮装のアンガマ一団が裏声でアンガマ踊りを要求する。地謡がそれに応えて、⸢ニンブ⸣ツァー[⸢nimbu⸣ʦaː](念仏歌)を弾くとクバ扇を持った翁、おうなに続いてアンガマ踊りの一団が「ヒヤリクヨイサー、サーサー」と掛け声を出して躍り出す。これが済むと歌のテンポが急変し、様々な曲目が演奏され、アンガマーたちの飛び入りの踊りが始まる。これが済むと獅子舞の曲に変わって獅子舞が演舞される。獅子舞の途中にジーシンカ(地謡組)が「イーヨーイーヨー」という囃子をいれると、獅子舞が終了することになり、次の家へと移動する。道中でイ⸢リクヌ⸣ティー[ʔi⸢rikunu⸣tiː](入れ子の笛)の曲が二回吹奏され、「シーシェーマヌ オールンドー」(獅子舞いがいらっしゃるぞ)の合奏曲とミ⸢チウタ[mi⸢ʧiuta](道歌)が歌われると次の家では受け入れの準備が始まる。こうしてお盆の中の日は夜通しアンガマが踊られた
アンガマ カブン [⸢ʔaŋ⸣gama ⸣kabuŋ]{1}アンガマの面を被る。アンガマ踊りをする。
アンガマ カブン [⸢ʔaŋ⸣gama ⸣kabuŋ]{2}転じて、子供が拗ねたり、男が酒を飲んで常軌を逸した行動をとることにもいう。
アンガマクイ [⸢ʔaŋ⸣gamakui]裏声。不自然な甲高い声。
アンガマムニ [⸢ʔaŋ⸣gamamuni]アンガマことば。アンガマで使うような裏声のことば。通常は使わない裏声で話す言葉。奇妙な言葉遣い。酔っ払いの使う正常でない言葉遣い。
アンガラスン [⸢ʔaŋgarasuŋ]他動{1}あげる。上方へあげる。持ち上げる。
アンガラスン [⸢ʔaŋgarasuŋ]他動{2}座礁させる。船を浅瀬に乗り上げる。
アンガラスン [⸢ʔaŋgarasuŋ]他動{3}舞い上がらせる。有頂天にする。
アンガリピャーンガリ [⸢ʔaŋgaripjaːŋ⸣gari]跳ね上がること。飛んだり跳ねたりすること。
アンガルン [⸢ʔaŋgaruŋ]自動上がる。「~ひばり安我里~。万、4292」の転訛したもの。濁音の前の音節を表す万葉仮名に陽類韻尾を持つ「安」が用いられていることから、古代日本語のガ行音はガ行鼻濁音であったと推定される。ア⸢ガルン[ʔa⸢garuŋ](上がる)ともいう。
アンギルン [⸢ʔaŋgiruŋ]他動持ち上げる。陸揚げする。漁船やイダフニを陸揚げする。
アングン [⸢ʔaŋguŋ]他動{1}上げる。挙げる。揚げる。「~うなゐはなりに髪擧都良武<アゲツラム>か。万、3823」の「上ぐ(下二段)」の四段活用化したもの。⸢アンギルン[⸢ʔangiruŋ](上げる)と同じ。
アングン [⸢ʔaŋguŋ]他動{2}揚げる。掲げる。
アンサン [⸢ʔansaŋ]安産。
アンシキイトゥ [⸢ʔaŋʃi̥ki⸣ʔitu]網を繕う糸。「網突き糸」の義か。一度網を海に入れると珊瑚や海石に引っかけて網目を破損することがある。漁が終わると網を干した後に破れを繕うが、その際に用いる糸のこと。
アンシキパル [⸢ʔaŋʃiki⸣paru]網を繕う針。「網突き針」の義か。幅約3センチ、長さ約15センチの竹の板の中央に突起を作りその両側を刳り抜いて糸が巻けるようにした網を編む器具。
アンシン [⸢ʔaŋʃiŋ]安心。共通語からの借用語。伝統方言では、キ⸢ムユラ⸣スン[ki⸢mujura⸣suŋ](心を許す。安心する。)という。
アンスク [⸢ʔan⸣suku]網袋。ア⸢ダナ⸣シ[ʔa⸢dana⸣ʃi](アダンの気根)の繊維で綯った縄で箱型の網袋に編み、手提げ用の紐を付けた野外用手提げ網袋。弁当やマッチ、煙草、その他の小物類を入れたり、潮干狩りの獲物を入れたりして運ぶのに用いる小型の運搬用網袋。アダナシ縄製野外用ハンドバッグ。
アンスクライ [⸢ʔansu̥ku⸣rai]網の破れを繕うこと。⸢網繕い」の義。
アンタ [⸢ʔanta]東の方。
アンタヌ ズンズンヌ フチ [⸢ʔantanu ʣunʣunnu⸣ ɸu̥⸢ʧi]海底地名。鳩間島の東北東の海岸にある、⸢ズンズン[⸢ʣunʣuŋ](干瀬の珊瑚礁が一段高く、引き潮に差し掛かると干瀬の海水が澪(ミズヌカン)の方へと勢いよく流れ落る。また満ち潮になると、海水は外洋部から干瀬の礁池の方へ流れ込む所)と澪の部分へと続く所
アンタハンタグヮーテー [⸢ʔantahantagwaː⸣teː]屋号。旧姓通事太郎氏(現小泉太郎氏)宅。鳩間村二班、フ⸢ク⸣マレー[ɸu̥⸢ku⸣mareː](友利家)の東にあった。長男の小泉勝氏は鳩間島出身の、最初の沖縄県行政書士会会長を勤め、那覇在鳩間郷友会会長として活躍した。
アンダミース [⸢ʔandamiː⸣su]油味噌(あぶらみそ)。伝統的な保存食。豚三枚肉を約1センチ程度の角切りにして油で炒め、脂を抽出した油粕に味噌、砂糖を入れて混ぜ、焦げないように炒め合わせたもの。茶請け等に供される。石垣方言からの借用語。旧盆や旧正月用に豚を{屠}{ホフ}り、その三枚肉を利用して脂味噌を作った。
アンツォー [⸢ʔanʦoː]ソーダ(曹達)。ふくらし粉用に用いる重曹のこと。テンプラを揚げる際に用いていた。
アンデーカー [ʔan⸢deː⸣kaː]それなら。それでは。⸢アン⸣ドゥ ヤ⸢ルッ⸣カー[⸢ʔan⸣du ja⸢ruk⸣kaː](それであるならば)の縮約形。
アントゥル [⸢ʔan⸣turu]地名。西表島西部にあった村落名。網取湾に面した所に開けた小さな農村。現在は廃村となっている。
アンドゥル [⸢ʔan⸣duru]ぼろぼろの状態。網の目のようにあちこちに穴が開いている状態。
アン トン [⸣ʔan ⸣toŋ]ある所。⸣アルン ⸣トン[⸣ʔarun ⸣toŋ](ある<在る>所)の縮まった形。
アンナーマ [ʔan⸢naː⸣ma]花嫁。「姉・ガマ」の転訛。「アニ」に指小辞「ガマ」の「ガ」が融合脱落して形成されたもの。
アンナーマ クーン [ʔan⸢naː⸣ma ⸣kuːŋ]花嫁を娶る。花嫁をもらう。「花嫁を乞う」の義。
アンナーマ サーリヨイ [ʔan⸢naː⸣ma ⸢saːri⸣joi]結婚祝い。⸣ニービキヨイ[⸣niːbikijoi](結婚祝い)ともいう。
アンナーマ サールン [ʔan⸢naː⸣ma ⸢saːruŋ]花嫁を娶る。結婚する。「花嫁を連れる」の義。ユ⸢ミ サールン[ju⸢mi saːruŋ](<嫁を連れる>結婚する)、トゥ⸢ジ サールン[tu⸢dʒi saːruŋ](結婚する<妻を連れる>)ともいう。
アンナーマ ナルン [ʔan⸢naː⸣ma naruŋ]花嫁になる。嫁ぐ。
アンナーマヌ アウ [ʔan⸢naːma⸣nu ⸣ʔau]花嫁の供。八、九歳頃の少女が二人花嫁のそばに付き添っていて走り使いの用に供した。
アンナーマヨイ [ʔan⸢naː⸣majoi]結婚祝い。「花嫁祝い」の義。⸣ニービキヨイ[⸣niːbikijoi](結婚祝い)ともいう。
アン ナーン ッサヌ [⸣ʔan ⸢naː⸣n s⸢sanu]金銭や食料の貯えがどれほどあるか知らないで浪費する。「有る無しも知らぬ」の義。
アンナイヌ カウ [⸢ʔannai⸣nu ⸢kau]「案内の香」の義。祈願の始めに神様にお取次ぎを願うための線香。先ず3本、12本の線香を焚いて、神様へお取次ぎの⸢カン⸣フチ ニ⸢ガイ⸣フチ[⸢kaŋ⸣ɸu̥ʧini⸢gai⸣ɸu̥ʧi](神口、願い口)を唱える際に焚く線香。
アンヌカー [⸢ʔannukaː]東村のムラ井戸。東村の東北方の村はずれに位置する、鍾乳洞のウ⸢リ⸣カー[ʔu⸢ri⸣kaː](降り井戸)。入り口は高さ約3メートル、幅約5メートルの自然鍾乳洞が斜め下方に地下約20メートル掘り下げられ、石畳で階段が作られている。底部に湧水が溜まる池がある。湧水をウ⸢ム⸣ル[ʔu⸢mu⸣ru](クバの葉で作った柄杓)やフ⸢ダ⸣ル[ɸu⸢da⸣ru](熟した瓢箪を二つに切り割り、のなかご<中子>を刳りぬいて作った柄杓)で汲み、水桶に入れて地上へ運び上げ、家へ運んで飲料用水として利用した。水質は西村の村井戸の水よりも甘く、水量も多いといわれている。
アンヌムラ [⸢ʔannumura]東村。⸢インヌムラ[⸢ʔinnumura](西村)の対語。鳩間村は伝統的な祭政の単位として、西村と東村から成立している。一年間の祭祀を執行するために西、東のムラよりム⸢ラヤクサ[mu⸢rajakusa](ムラの役人)を選出し、それを統括する⸢スー⸣ダイ[⸢suː⸣dai](総代)がサ⸢カサ[sa⸢kasa](司、神女、巫女)の助言を得て祭祀を執行していた。豊年祭のカ⸢シ⸣ラ[kḁ⸢ʃi⸣ra](旗頭)、シ⸢ナ⸣ピキ[ʃi⸢na⸣pi̥ki](綱引き)の綱、⸢パー⸣レー[⸢paː⸣reː](爬竜船競漕)の船、⸢ソー⸣ラン[⸢soː⸣raŋ](お盆、精霊祭り)の⸢シー⸣シ[⸢ʃiː⸣ʃi](獅子舞の獅子頭)も西村(雌)、東村(雄)のような双分法に基づいて対立している。
アンバイ [⸢ʔambai]{1}塩梅。味加減。標準語からの借用語。
アンバイ [⸢ʔambai]{2}具合。都合。
アンパカスン [⸢ʔampakasuŋ]他動すっかり任せる。おっかぶせる。全責任を負わせる。
アンパクン [⸢ʔampakuŋ]他動ひっかぶる。全責任を負う。
アンバタ [⸣ʔambata]餅の中に入れる餡。
アンパル [⸣ʔamparu]地名。名蔵湾に流入する名蔵川海域の干潟地帯。古謡「アンパルヌミダガーマユンタ」に詠われた地名。
アンピター [⸣ʔampitaː](動)貝の名。和名、クロカラマツ(『原色沖縄海中動物生態図鑑』)、潮間帯の岩礁に付着している。直径約1cmの六角~八角状円錐形の貝。
アンブシ [⸢ʔambu⸣ʃi]漁法の一つ。糸満漁師から伝えられた漁法という。西表島のカ⸢タバル[kḁ⸢tabaru](干潟。「潟原」の義)に竹や木串を河口や魚道の砂浜に差し込んでおき、満潮時にその竹や木串に網を吊るして張り巡らし、漁獲する漁法。
アンポーティンポー [⸢ʔampoːtim⸣poː]何の心配もしないで呑気に行動する人。思慮分別のないことをする人。ABCDEFCD型の重言。
アンマ [⸣ʔamma]{1}姉。名称、呼称とも同じ。この語彙には、⸣ウボンマー[⸣ʔubommaː](一番上の姉)、⸢ホン⸣マ[⸢hom⸣ma](長姉)、⸣ナカンマー[⸣nakammaː](中の姉)、アン⸢マー⸣マ[ʔam⸢maː⸣ma](一番下の姉)などのような部分体系がある。「'u-ra 'a-r(n)ai 'ari<汝姉あるか>」「語音翻訳」『海東諸国紀』と関係があるとの説『図説琉球語辞典』がある。
アンマ [⸣ʔamma]{2}お母さん。名称、呼称(若年層の言葉)。本来は兄嫁に対して弟妹が⸣アンマ[⸣ʔamma](姉さん)と呼ぶのを聞いて、兄嫁の子供(甥、姪)達が自分の「母」を⸣アンマ[⸣ʔamma](母)と誤認するようになり、今では若年層において「母」のことを⸣アンマ[⸣ʔamma]と思って、そう呼ぶ人が相当数いる。
アンマ [⸣ʔamma]{3}固有名詞に下接して用いられる。
アンマ [⸢ʔam⸣ma]あんま(按摩)。もみりょうじ。
アンマーイカ [⸢ʔammaː⸣ʔika]烏賊の中で特大級のスルメイカ。「母烏賊」の義。糸満方言からの借用語か。
アンマーマ [ʔam⸢maː⸣ma]三番目の姉。語尾の「-マ[-ma](ちゃん)」は美称、愛称の接尾指小辞。
アンマカー [⸢ʔamma⸣kaː]歌謡の名(天川節)。また、天川節の舞踊。石垣の芝居小屋から伝播してきたといわれている。テンポの速い曲調で歌い踊られる。
アンマヌ [⸢ʔamma⸣nu]あまりに。あまりの。あまりにも。法外に。ア⸢マ⸣ヌ[ʔa⸢ma⸣nu](あまりの)ともいう。強調すると、アン⸢マ⸣ヌ[ʔam⸢ma⸣nu]という。
アンムチ [⸢ʔam⸣muʧi]餡餅(あんもち)。⸣バタムチ[⸣batamuʧi](餡餅、「腸餅」の義か)ともいう。餅の中に餡を入れたもの。⸣アン[ʔaŋ](餡)には、小豆を煮て潰し、黒砂糖を混ぜたものや、ユ⸢ナ⸣ク[ju⸢na⸣ku](はったいこ、麦焦がし)、⸣グマ[⸣guma](煎り胡麻に黒砂糖を混ぜたもの)などが使われた。ア⸢ガマミヌ⸣バタ ⸣アンムチ[ʔa⸢gamaminu⸣bata ⸣ʔammuʧi](小豆餡の餡餅)、グ⸢マ⸣ヌバタ アンムチ[gu⸢ma⸣nubata ⸣ʔammuʧi](胡麻餡の餡餅)、ユ⸢ナ⸣クバタ ⸣アンムチ[ju⸢na⸣kubata ⸣ʔammuʧi](はったいこ餡の餡餅)などがある。
アンムトゥ [⸢ʔammu⸣tu]網元。
アンムヌ [⸢ʔam⸣munu]竹で編んだもの。竹でえつり(桟)のように編んだもの。「編み物」の義。茅葺屋根の甍を押さえるのに用いる。
アンユーティ [⸣ʔaŋjuːti]有るだろうかと。有るかと。
アンユー ナーンユー [⸣ʔaŋjuː ⸢naːŋ⸣juː]有るか、無いか。
アンラク [⸢ʔanraku]安楽。標準語からの借用語。