鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
-ユ [⸢-ju]格助~を。歌謡語(文語)に多く用いられる。
ユー [⸢juː]終助〜ますよ。尊敬、丁寧の意味を表す。活用語の終止形、名詞及び準体助詞につく。
ユー [⸣juː]湯。
ユー [⸣juː]舟に溜まる水。⸣アカ[⸣ʔaka](淦)ともいう。
ユー [⸣juː]夜。「~さ寝し欲能<ヨの>いくだもあらねば~。万、804」の転訛したもの。⸢ユー⸣ル[⸢juː⸣ru](夜)ともいう。
ユー [⸢juː]世。「~うつせみの 余乃許等和利止<ヨの理と>~。万、4106」の転訛したもの。
ユー [⸢juː]豊年。豊作。
ユー [⸢juː]四。四つ。
ユー [⸣juː]よく(善く、良く、能く)。十分に。
ユー [⸣juː]副助~か。疑問を表す語、⸣ヌー[⸣nuː](何)、ヌンティ[nunti](どうして。何故)と呼応して不確かな意味を表す。
ユー [⸣juː]並立~か。~のか。~なのか。{1}名詞について、肯定・否定の関係にあるものを並べ、どれかを選ぶ意。AかBの形で選択を表す。いくつかの事物を列挙した中から一つを選択する意味を表す。
ユー [⸣juː]並立{2}活用語の肯定形と打消し形を並べたものの中から一つを選ぶ意味を表す。
ユー アカスン [⸣juː ʔa⸢kasuŋ]夜を明かす。徹夜する。
ユーアギジラマ [⸢juːʔagiʤirama]古謡の名。「世上げジラマ」(豊年迎えのジラマ)の義。豊年祭の⸢パー⸣レー[⸢paː⸣reː](爬竜船競争)の舟漕ぎ競争が済んで、爬竜舟を浜に陸揚げした後、漕ぎ手、神職者、応援した村人全員で舟を回りながら歌う古謡。竜宮から豊年を迎えるさまを、予祝儀礼として歌う祭祀歌謡である。/{Sg_1}インスクヌ ヨーホー マブルシュー マイバマヌ ヨーホー ウヤンガミ {Sg_2}バガパトゥマニ ヨーホー アガリョーリ クリトゥムルニ ヨーホー ウツリョーリ/({Sg_1}海の底<竜宮>のヨーホー<囃子>守護神様、前の浜のヨーホー親神<祖先神>様、{Sg_2}我が鳩間島にヨーホー上がってください。ここ友利<御嶽>に移りおはしませ)
ユーアキドゥーシ [⸢juːʔakiduː⸣ʃi]夜通し。一晩中。夜っぴて。夜もすがら。
ユーアサビ [⸢juːʔasa⸣bi]夜遊び。青年男女が夜集まって三味線を弾いて歌い遊ぶこと。
ユーアミ [⸢juː⸣ʔami]夜降る雨。「よあめ」の義。「よさめ(夜雨)」のこと。夜雨は農民にとって慈雨と考えられていた。/ミリクユーヌ シルシ トゥカグシヌ ユアミ カキブサイ ミショリ シマヌアルジ シマヌアルジ/(弥勒世の兆候<印>は十日越しに降る夜雨です。お恵みください島の主様、島の守り神様)「弥勒節3連」『鳩間島古典民謡古謡集』
ユーカ [⸢juːka]四日。若年層は、⸢ユッカ[⸢jukka](四日)ともいう。
ユーカジラ [⸢juːkaʤira]産後四日目の日に執り行われる行事。うぶや(産屋)の⸣ジル[⸣ʤiru](地炉)の祈願をした。産屋を清め祓い、⸢カウ[⸢kau](線香)をプ⸢ス⸣カー[pu̥⸢su⸣kaː](沖縄香一枚。線香六本)、シゥ⸢カン⸣パナ[si̥⸢kam⸣pana](白米<一掴みの花米>)、⸢カン⸣ビン[⸢kam⸣biŋ](燗壜。瓶)二本の⸣グシ[⸣guʃi](酒)を産屋に供えて母子の健康と嬰児の成長を祈願し、仏壇の祖先へ報告した
ユーカソージ [⸢juːkasoːʤi]産後四日目に執り行う清め祓いの祈願。「四日精進」の義。⸢ユーカジラ[⸢juːkaʤira]とおなじ。
ユーカタ [⸢juːkata]四方。東・西・南・北の四つの方角。周囲。
ユーカドゥ [⸢juːkadu]四隅。四つ角。⸢ユーシヌ[⸢juːʃinu](四つ角)ともいう。
ユーカナティ [⸢juːkana⸣ti]さきおととい(一昨昨日)。さきおとつい。
ユーガラサ [⸢juːgara⸣sa]夜烏。夜鳴く烏。「暁と夜烏雖鳴<ヨガラスなけど>~。万、1263」の転訛したもの。夜烏が鳴くと不吉なことが起きるといって、搗き臼を叩いて追い払った。
ユーキ [⸢juː⸣ki]夜更かし。夜遅くまで起きること。「夜起き」の転訛したもの。
ユーキカーキ [⸢juː⸣kikaːki]夜更かし。「夜起き」のABCDBC型の重言。「夜更かし」の強調表現。嫌な夜更かし。不要な夜更かし。
ユークーン [⸢juː⸣kuːŋ]自動休む。休息する。「憩う」の義。⸣ユクーン[⸣jukuːŋ](「休まれる」。丁寧語)ともいう。「息舌、伊己不(いこふ)」『新撰字鏡』、「息、休、イコフ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
ユークイ [⸢juː⸣kui]豊穣をこいねがう(希う)こと。豊年、豊作を祈願すること。⸢世を乞う」の義。豊年祭に歌われる古謡に、⸢ユークイジラ⸣マ[⸢juːkuiʤira⸣ma](豊年祈願のジラバ)がある。/1、パトゥマユーヌ(鳩間村が) 囃子<ヨーホ> トゥムルユーヌ ナウラバ(友利御嶽の神々が鎮座まします村が豊穣を迎えたら) 囃子<ヨーホ> スイナウレ(それ、稔れ)/2、タルトゥユドゥ(誰とぞ) 囃子<ヨーホ> ジリトゥユドゥ ティユマス(誰<何れ>と共に称えよう<響まそう>) 囃子<ヨーホ> スイナウレ(それ稔れ)/3、マブルシュドゥ(守り神を) 囃子<ヨーホ> ウヤガミドゥ ナトゥラス(おやがみ<祖神>を称えます<名を上げる>) 囃子<ヨーホ> スイナウレ(それ稔れ)/以下曲調変わる(早め句)。/パトゥマユーヌ ナウラバ(鳩間村が豊穣を迎えると) 囃子<ヨー サーユイユイ>/トゥムルユーヌ ミギラバ(友利御嶽の神々が守護されます村が稔ると) 囃子<ヨー ハイヨー シュラヨー(はれよ、真に麗しい)/『鳩間島古典民謡古謡集』
ユークイジラマ [⸢juːkuiʤira⸣ma]古謡の名。「世乞いジラマ」(豊年を祈願するジラマ)の義。⸢パーレー⸣フニ[⸢paːreː⸣ɸuni](爬竜船)がスタートラインに着くまでに歌う予祝儀礼の祭祀歌謡。/{Sg_1}パトゥマユーヌ ヨーホー トゥムルユーヌ ナウラバ ヨーホー スイナウレ {Sg_2}タルトゥユドゥ ヨーホー ジリトゥユドゥ ティユマス ヨーホー スイナウレ {Sg_3}マブルシュドゥ ヨーホー ウヤガミドゥ ナトゥラス ヨーホー スイナウレ {Sg_4}早め句。パトゥマユーヌ ナウラバ ヨー サーユイユイ/({Sg_1}鳩間世が ヨーホ<囃子>、友利御嶽の世が稔ると、ヨーホー スイナウレ<囃子> {Sg_2}誰と共に ヨーホー {SqBr}g{/SqBr}{何方}{ドナタ}と共に鳴響まそうか ヨーホースイナウレ<囃子> {Sg_3}守護神をぞ ヨーホー 祖先神ををぞ讃える<轟かせる>ヨーホースイナウレ {Sg_4}早め句。鳩間世が、稔ると、ヨー サーユイユイ<囃子>)。{Ref_Sg_4}の「早め句」を歌い終わるのがスタートの合図であったという。西村のユークイジラマは早め句の囃子「サーユイユイ」が欠落しているので、スタートが一瞬早くなり、祭祀として、西村が常勝する構造になっていたという。西村が勝利すると、ユ⸢ガフ[ju⸢gaɸu](豊年)になると信じられていたからである
ユーケーラ [⸢juːkeːra](数)四回。回数を表す。四往復。「ただひとかへり舞ひて入りぬるは~」『源氏物語 若菜下』の転訛したもの。⸢ユッケーラ[⸢jukkeːra](四回。四往復)ともいう。
ユーコースン [⸢juːkoː⸣suŋ]他動休ませる。
ユーザスン [⸢juːʣasuŋ]他動寄させる。寄せさせる。自動詞⸢ユーズン[⸢juːʣuŋ](寄る)の未然形に使役の助動詞⸣スン[⸣suŋ](せる。させる)が付いて形成された使役動詞。「~濱波はいやしくしくに高く与須礼騰<ヨスレド>。万、4411」の転訛したものか。
ユー サンカー [⸣juː ⸢saŋ⸣kaː]ひょっとしたら。もしかしたら。「よく(善く)せずは」の転訛か。
ユー サントー [⸣juː ⸢san⸣toː]ひょっとしたら。下手すると。「良くしないと」の義。ユー⸢サン⸣カー[juː⸢saŋ⸣kaː](ひょっとしたら)ともいう。「~風まもり好爲而<ヨクシテ>いませ~。万、381」の転訛したものか。
ユージェー [⸣juːʣeː]屋号。松竹三戸氏宅(現、松竹実氏宅)。
ユー シェーン [⸣juː ⸢ʃeː⸣ŋ]よくやった。でかしたぞ。よく出来た。ク⸢トゥシェー⸣ イ⸢チ⸣バン ⸣ナリ ⸢マイフナー⸠ドー。⸣ユー ⸢シェー⸣ン[ku̥⸢tuʃeː⸣ ʔi⸢ʧi⸣ban ⸣nari ⸢maiɸunaː⸠doː。⸣juː ⸢ʃeː⸣ŋ](今年は一番になって、お利口さん。でかしたぞ)
ユーシギロールン [⸢juːʃigi⸣roːruŋ]自動お亡くなりになる。「世・過ぎ・おわす<在す>」の義。「過ぎる」は原義から転じて、「死ぬ」の敬語として用いられる。高齢者や身分の高い人の{逝去}{セイ|キョ}に対していう。「~立つ霧の思ひ須疑米夜<スギメヤ>~。万、4000」の転訛したものか。
ユーシグトゥ [⸢juːʃigu⸣tu]夜なべ。夜業。夜の仕事。
ユーシッタイ [⸢juː⸣ʃittai]ざま見ろ。いい気味だ。それみたことか。相手に対し、注意をしたのに聞き入れないで失敗したときに{咎}{トガ}めていう。⸢ユー⸣シタイ[⸢juː⸣ʃi̥tai](ざま見ろ)、⸣シッタイヒャー[⸣ʃittaiçaː](ざま見ろ)ともいう。
ユーシヌ [⸢juːʃinu]四つ角。
ユーシバル [⸢juːʃiba⸣ru]寝小便。夜尿症。「⸢ユー[⸢juː](夜)」に「Ibari.イバリ(尿)、尿、あるいは、小便。例、Ibariuo suru(尿をする)」『邦訳日葡辞書』の付いた形の転訛したもの。シ⸢バ⸣ルカメー[ʃi⸢ba⸣rukameː](夜尿症の子供)ともいう。
ユーシミ [⸢juːʃimi]四隅。四つ角の内側。⸢ユーシヌ[⸢juːʃinu](四つ角。四隅の角の部分)ともいう。⸢ヤシキ⸣ヌ ⸢ユーシミ⸣ナー ⸢キャーンギキー⸣ イ⸢ビ⸣シケー[⸢jaʃi̥ki⸣nu ⸢juːʃimi⸣naː ⸢kjaːŋgikiː⸣ ʔi⸢bi⸣ʃi̥keː](屋敷の四隅に槙の木を植えてある)の
ユーシュー [⸢juː⸣ʃuː]夜露。夜間におりる露。
ユーシルン [⸢juːʃiruŋ]自動{PoS_1}打ち寄せる。近づく。
ユーシルン [⸢juːʃiruŋ]他動{PoS_2}寄せる。
ユーズ [⸢juː⸣ʣu]{1}用事。用件。用向き。所要。仕事。
ユーズ [⸢juː⸣ʣu]{2}祭祀。
ユーズキザル [⸢juː⸣ʣukiʣaru]祭祀。行事。年中行事。
ユーズピーズ [⸢juːʣupiː⸣ʣu]重要な祭祀行事。神事や法事。大事な用事。大きな行事。ABCDBC型の重言。
ユーズヤー [⸢juː⸣ʣujaː]祭祀や行事のある家。祝い事や法事が執り行われる家。特別な行事のある家。
ユースン [⸢juːsuŋ]他動寄せる。近づける。「~与西<ヨセ>綱延へて与須礼<ヨスレ>ども~。万、3411」の転訛したもの。
ユースン [⸢juː⸣suŋ]助動~しえる<得る>。~出来る。しきれる。おおせ<{果}{オオ}せ>る。はたす。可能の助動詞として動詞の連用形に付き、⸢~し得る」の意を表す。「~数え衣受<エズ>盡しもかねつ~。万、4094」の転訛したもの。
ユーズン [⸢juːʣuŋ]自動寄る。近寄る。接近する。「沖つ藻は辺には誉戻<ヨレ>ども~。紀、神代下 歌謡」、「~天地の依相<ヨリアヒ>の極み~。万、167」の転訛したもの。鳩間方言に中舌母音が残っていた頃の言語で、*[jori̥aɸi] → *[juʣi̥awi] → [juːʤeː] のように音韻変化したものと考えられる。これは松竹家の屋号を⸣ユージェー[⸣juːʤeː](寄合家の分家)ということからも証明される。
ユーゾー ナーヌ [⸢juː⸣ʣoː ⸢naː⸣nu]何の役にも立たない。無駄である。利用価値がない。手当てがつけられない。「養生・ない」から転訛したものか。
ユーチ [⸢juːʦi]{1}四つ。「~四舶<ヨツノフネ>々能倍奈良倍<フネノヘナラベ>~。万、4264」の転訛したもの。
ユーチ [⸢juːʦi]{2}四歳。
ユーチヌ ピーチ [⸢juːʧinu piː⸣ʧi]四分の一。「四つの一つ」の義。
ユーチバリ [⸢juːʧibari]四つ割り。四等分にすること。
ユーチミー [⸢juː⸣ʧimiː]眼鏡を掛けた人。「四つ目」の義。
ユーチング [⸢juːʧiŋgu]最高の料理。ご馳走。ふるまい。「世つ組」の義。四品の料理を組み合わせたお膳。米飯、魚肉(或いは、豚肉、鶏肉)と野菜のお汁、魚の刺身、香の物が基本。⸢ウー⸣ザラ[⸢ʔuː⸣ʣara](大皿)や、重箱詰めのてんぷら(天麩羅)やカマブク[ka⸢mabuku](蒲鉾)、ン⸢ブシ⸣ムヌ[ʔm⸢buʃi⸣munu](煮物、蒸し物)等も出された。
ユー ッスン [⸢juː⸣ ssuŋ]お湯を注ぐ。
ユーティ [⸢juːti]四年。
ユーティ [⸢juːti]{2}明明後年。再来年の次の年。
ユーティナティ [⸢juːtina⸣ti]一昨昨年。「四年なりて」の転訛したものか。
ユートーパーレー [⸢juːtoːpaː⸣reː]旧暦10月頃に執り行われる、シ⸢マッサ⸣ル[ʃi⸢massa⸣ru](島くさらし。流行病{祓}{ハラエ}の祈願)の夜に行われる行事。村役人が子供たちを引き連れて、{甕}{カメ}の破片や瓦の破片をカチカチ打ち鳴らし、{銅鑼}{ド|ラ}を{叩}{タタ}いて、⸢ユートーパー⸣レー ⸢ミー⸣ソー ッ⸢ふァー[⸢juːtoːpaː⸣reː ⸢miː⸣soː f⸢faː](夜の祓えだ、味噌を食おう)と唱えながら村中の家々を祓えまわった。各家からは子供たちに米味噌が与えられた
ユードーフ [⸢juːdoː⸣ɸu]おぼろ豆腐。豆腐の固まりかけのもの。にがり(苦汁)を加えて{鍋}{ナベ}や{椀}{ワン}に{汲}{ク}み取ったもの。「湯豆腐」の義。首里方言の⸢ユシドーフ[⸢juʃidoːɸu](おぼろ豆腐)のこと。
ユードゥ [⸢juː⸣du]よくぞ。ようこそ。よくまあ。
ユードゥーシ [⸢juːduː⸣si]{1}夜通し。一晩中。
ユードゥーシ [⸢juːduː⸣si]{2}豊年祭や結願祭の初日の夜に神職者たちが友利御嶽に{籠}{コ}もって夜通し祈願すること。
ユードゥマリ [⸢juːduma⸣ri]外泊すること。「夜泊まり」の義。
ユードゥリ [⸢juː⸣duri]{夕凪}{ユウ|ナギ}。夕方の無風状態。ア⸢サ⸣ドゥリ[ʔa⸢sa⸣duri]({朝凪}{アサ|ナギ})の対義語。
ユートゥル [⸢juː⸣turu]船のあか(淦)を{汲}{ク}み取る道具。船底に溜まった水を汲み出す道具。松の幹を半月形に{刳}{ク}り、取っ手を{削}{ケズ}り出して{掴}{ツカ}み、船底を傷めないように軽くスライドさせて淦を汲み取る船具。「戽、由土利」『和名抄』、「戽、ユトリ」『類聚名義抄』の転訛したもの。ア⸢カ⸣トゥル[ʔa⸢ka⸣turu](淦取り)ともいう。
ユーナキ [⸢juː⸣naki]{1}夜鳴き。子供が夜泣くこと。
ユーナキ [⸢juː⸣naki]{2}夜鳴き。鳥獣が夜鳴くこと。
ユーナンカ [⸢juːnaŋka]よなのか(四七日)。四七日忌。死後四週間目の法事。
ユーニンガイ [⸢juːniŋgai]「世願い」の義。若年層は⸢ユーニガイ[⸢juːnigai]ともいう。旧暦三月のミ⸢ジニー[mi⸢ʤiniː](壬)の日に執り行われる祭祀。友利御嶽で、サ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司。女性神職者)やティ⸢ジリ⸣ビー[ti⸢ʤiri⸣biː](手擦り部。男性神職者)が村の豊年豊作と村人の健康祈願をし、友利御願、西堂御願、新川御願、鬚川御願、前泊御願、ミ⸢ルクン⸣ヤー[mi⸢rukuŋ⸣jaː](弥勒家)へと順次移動しながら祈願した。祈願の内容は、⸢ニンガチニン⸣ガイ[⸢niŋgaʧiniŋ⸣gai](二月祈願)で祈願された (i) ⸢ゾーシキ⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[⸢ʣoːʃi̥ki⸣nu ⸢niŋ⸣gai](村役人の祈願。祭祀がスムースに執り行われるよう祈願する<⸢{雑色}{ゾウ|シキ}」の転訛か>)、(ii) ⸣アカカラジヌ ⸢ニン⸣ガイ[⸣ʔakakaraʤinu ⸢niŋ⸣gai](一般百姓たちのための健康祈願)、(iii) イ⸢ニアー⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[ʔi⸢niʔaː⸣nu ⸢niŋ⸣gai](稲粟の豊作祈願)、(iv) ア⸢ミニン⸣ガイ[ʔa⸢miniŋ⸣gai](十日、十五日ごとに夜雨の降雨を祈願する)、(v) マ⸢ミ⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[ma⸢mi⸣nu ⸢niŋ⸣gai](豆の豊年祈願)、(vi)⸢ミー⸣シキパナシキヌ ⸢ニン⸣ガイ[⸢miː⸣ʃi̥kipanaʃi̥kinu ⸢niŋ⸣gai](流行り病の祈願)、(vii) ⸢マイ ムン⸣ヌ ッ⸢サバー⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[⸢mai mun⸣nu s⸢sabaː⸣nu ⸢niŋ⸣gai](稲、麦の草<下>葉の祈願)の総括的な祈願であった。この⸢ニンガチニン⸣ガイは、祭祀祈願の数が重複していて数が多いとの理由で、昭和35年頃に廃止され、⸢ユーニンガイ[⸢juːniŋgai]の祭祀に統合された。それ以後は、ユーニンガイ(世願い)においては (i)~(vii) の総括的祈願と、(vii) ム⸢シヌニンガイ[mu⸢ʃinu niŋ⸣gai](虫払いの祈願)が行われた。そして、同じく旧暦三月の庚の日に、(ix) パ⸢マウリソー⸣ジ[pa⸢maʔurisoː⸣ʤi](浜下り精進)と (x) ⸢プーヌソー⸣ジ[⸢puːnusoː⸣ʤi](稲の{出穂}{シュッ|スイ}祈願の精進)が執り行われたが、最後まで稲作を続けられた友利三益氏の石垣島移住と人口激減に伴い、(ix)、(x) の祈願も廃止されている
ユーヌ アールン [⸢juː⸣nu ⸢ʔaːruŋ]湯が沸いて吹き上がる。ム⸢チ[mu⸢ʧi](餅)やア⸢ラシコーシ[ʔa⸢raʃikoːʃi](蒸し菓子)等が蒸しあがることをいう。
ユーヌ アキルンケン [⸢juː⸣nu ʔa⸢kiruŋ⸣keŋ]夜が明けるまで。徹夜して。普通は、⸢ユー⸣ヌ ガ⸢ルン⸣ケン[⸢juː⸣nu ga⸢ruŋ⸣keŋ](夜が明けるまで)という。
ユーヌ カージ [⸢juː⸣nu kaː⸢ʤi]夜毎に。毎夜。⸢ユール⸣ヌ カー⸢ジ[⸢juːru⸣nu kaː⸢ʤi](夜毎に)ともいう。
ユーヌ スビ [⸢juːnu⸣ su⸢bi]旧暦12月に行われる、一年間のすべての祭祀祈願に対する感謝の祭祀祈願。普通は、ス⸢ビニンガイ[su⸢biniŋgai](神へ感謝する祈願。「首尾願い」の義)という。
ユーヌ ナマシキ [⸢juː⸣nu na⸢ma⸣ʃi̥ki]ゆあか(湯垢)。風呂や薬缶などに付く湯の垢。ア⸢ガサビ[ʔa⸢gasabi](赤錆)ともいう。
ユーバイ [⸢juː⸣bai]めかけ(妾)。愛人。若年層は⸢ユー⸣ベー[⸢juː⸣beː](妾)という。
ユーバイプシ [⸢juːbai⸣pu̥ʃi]流れ星。老年層の言葉。「よばいぼし(夜這星)」『枕草子254』の転訛したもの。⸢ユー⸣バイ[⸢juː⸣bai]は、「~長谷小国に夜延為<ヨバヒセス>~。万、3312」の転訛したもの。流星は不吉なことの前兆として{忌}{イ}み{嫌}{キラ}われた。
ユーパナシ [⸢juːpana⸣ʃi]夜話。夜話しをすること。
ユーピキ [⸢juː⸣pi̥ki]{湯掻}{ユ|ガ}くこと。ゆびく(湯引く)こと。「Yubiqi,ユビキ、ク、イタ(湯引き、く、いた)野菜や魚などを、湯の中に通してすぐに取り出す」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。野菜のあくを抜くために熱湯にしばらく浸した後に取り上げて絞り、水分を切って刺身の妻にしたり、お汁のあしらいにした。
ユーピサヤー [⸢juːpi̥sajaː]寄棟造の屋根。屋根が四つの斜面(平)からなる家。「四平家<よ・ひらや>」の義。カ⸢タピサ⸣ヤー[kḁ⸢tapi̥sa⸣jaː](片流れの屋根)、フ⸢タピサヤー[ɸu̥⸢tapi̥sajaː](切妻屋根)構造の屋根がある。
ユーフル [⸢juː⸣ɸuru]風呂。「湯風呂」の義。風呂のある家は二、三軒にすぎなかった。海水浴することが入浴であった。ス⸢ナ⸣カー ⸢クヮン⸣ヌ ⸢ユー⸣フル[su⸢na⸣kaː ⸢kwan⸣nu ⸢juː⸣ɸuru](海は官<公>の湯風呂だ<無料で入れる風呂だ>)<諺>
ユーフルチン [⸢juːɸuru⸣ʧiŋ]風呂賃。
ユーフルヤー [⸢juː⸣ɸurujaː]風呂屋。
ユーベー [⸢juː⸣beː]めかけ(妾)。愛人。若年層の言葉。老年層は⸢ユー⸣バイ[⸢juː⸣bai](妾)という。
ユーベーブシ [⸢juːbeː⸣buʃi]流れ星。「Yobaiboxi.ヨバイボシ(婚星・流星)空中で燃える閃光で、星が花火のように見えるもの」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。若年層は、ナ⸢ガリ⸣ブシ[na⸢gari⸣buʃi](流星)ともいう。
ユーボン [⸢juː⸣boŋ]夕食。「夕飯」の義。「夕」に、「飯、翁班尼」『琉球館訳語』、「飯 'om・par(n)i」『語音翻訳』、「みおばに おはに 美飯のことなり」『混効験集』の付いた形の転訛したもの。⸢ユー⸣キ[⸢juː⸣ki](夕飯。「{夕餉}{ユウ|ゲ}」の転訛したもの)ともいう。
ユーボンジブン [⸢juː⸣bonʤibuŋ]夕食時。夕食時分。
ユーボンプシ [⸢juː⸣bompu̥ʃi]宵の明星。夕方西方の空に見える金星。ゆうずつ(夕星)。「夕飯星」の義。⸢ダイ⸣ケーヌ ⸢アー⸣ヤプシ[⸢dai⸣keːnu ⸢ʔaː⸣japu̥ʃi](大工家のお父さん星)ともいう。
ユーマール [⸢juːmaː⸣ru]{1}夜回り。夜警。
ユーマール [⸢juːmaː⸣ru]{2}夜遊び。青年たちが夜外へ出て遊ぶこと。
ユーマーレー [⸢juːmaː⸣reː]夜遊びする者。「夜回り者」の義。
ユーマキ [⸢juːmaki]不作。特に稲、粟、麦等の穀類の不作に対していう。年によって収穫量が落ちること。年年の気象条件によって{作柄}{サク|ガラ}が悪くなること。「世負け」の義か。明治生まれの老年層の使用語彙。若年層では死語となっている。
ユーミジ [⸢juː⸣miʤi]湯。湯水。⸢ピーリ⸣ミジ[⸢piːri⸣miʤi](冷水)の対義語。
ユーミチ [⸢juː⸣miʧi]夜道。
ユームシ [⸢juːmuʃi](数)四回。四度。⸢ムシ[⸢muʃi](回数)は人間の行動を含めた固体資料の出現する頻度を表すのに対し、⸢ケー⸣ラ[⸢keː⸣ra](回数)は「人間が意図的に行う往復回数<試行>」のニュアンスが伴う。
ユームチ [⸢juːmuʧi]⸢世持ち」の義。⸢スー⸣ダイ[⸢suː⸣dai](総代。部落総代。部落会長。公民館長に相当)をシ⸢マム⸣チユームチ[ʃi⸢mamu⸣ʧijuːmuʧi](島持ち世持ち。島最高の村役人)という。⸢スー⸣ダイ[⸢suː⸣dai](総代)は一人。ヤ⸢ク⸣サ[ja⸢ku⸣sa](東村、西村より各一人(計二人)選出され、⸢スー⸣ダイの補佐役となる)、⸢ザーアタ⸣ル[⸢ʣaːʔata⸣ru](座当<座席係>は東村、西村より各一人(計二人)選出され、ヤクサの補佐役となる)、⸢ジンバイ[⸢ʤimbai](膳配り<配膳係り>も東村、西村より各一人(計二人)選出され、ヤクサの補佐役となる)らが村役人であった。豊年祭の「みちうた(道歌)」に/ヘイヤ ティジリキャーヌ ホー アトゥンヤ(ヘイヤー手擦り部たち<男性神職者>の後には)/ヘイヤー ユムチキャードゥ  ホー ティユマス(ヘイヤー総代以下の村役人たちを讃える<響ます>)/ヘイヤー シマムチャードゥ ホー ナトゥラス(ヘイヤー島持ち世持ちたちを讃える)/とある
ユーヤキ [⸢juː⸣jaki]夕焼け。標準語の転訛したもの。ア⸢サヤ⸣キ[ʔa⸢saja⸣ki](朝焼け)の対義語。
ユーリー [⸢juː⸣riː]幽霊。死者の魂。若年層は、⸢ユー⸣レー[⸢juː⸣reː](幽霊)ともいう。
ユーリキー [⸢juːrikiː]流木。「寄り木」の義。
ユーリシキ [⸢juːriʃi̥ki]うるうづき({閏月}{ウルウ|ヅキ})。太陰暦で同じ月が二度続いてある月。「寄り月」の義。「Yorizzuqi.ヨリヅキ(寄月) Vruzzuqi(閏月)という方がまさる.日本人が三年ごとに年に増し加える月」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ユーリッサ [⸢juːrissa]流れ草。「寄り草」の義。
ユーリトゥシ [⸢juːrituʃi]うるうどし({閏年}{ウルウ|ドシ})。閏のある年。「寄り年」の義。
ユーリムヌ [⸢juːrimunu]流れ物。漂流物。
ユール [⸢juː⸣ru]こより({紙縒}{コ|ヨリ})縄。アダナシの気根の繊維を細かく裂いて{綯}{ナ}い、細い縄にしたもの。凧の糸<縄>にしたり、⸢アン⸣スク[⸢ʔan⸣su̥ku](網袋。獲物入れ。弁当入れ)を編むのに用いた。「搓、与留<よる>」『新撰字鏡』、「~糸をぞ吾が搓<ヨル>~。万、1987」の転訛したものか。
ユール [⸢juː⸣ru]夜。⸢ピール[⸢piːru](昼。<比流>万、3732)の対義語。「茜草さす比流波<ヒルは>もの思ひ~欲流波<ヨルは>~。万、3732」の「欲流」が転訛したもの。
ユールピール [⸢juːrupiː⸣ru]昼夜。日夜。夜も昼も絶え間なく。ABCDBC型の重言。「夜<用流>万、807・昼<比流>万、4089」の義。「吾が恋は夜畫不別<ヨルヒルわかず>~。万、2902」の転訛したもの。
ユールユナカ [⸢juːrujuna⸣ka]夜の夜中。真夜中。
ユールン [⸢juːruŋ]自動{1}寄る。近寄る。
ユールン [⸢juːruŋ]自動{2}流れ寄る。漂流する。
ユーレー [⸢juː⸣reː]幽霊。死者の霊がある形をとって人間界に現れるもの。死者の魂。浮遊して歩くといわれている。⸢ユー⸣レーが出現するのは、それが成仏できずにさ迷っているためで、人に何かを頼むためだといわれている。
ユーロー ピール ナスン [⸢juː⸣roː ⸢piːru⸣ nasuŋ]夜を昼になす。よ(夜)を日に継ぐ。昼夜を分かたず働いて。
ユーン [⸢juːŋ]他動結う。むすぶ。束ねる。縛る。くくる。「~額髪結在<ユヘル>染木綿の~。万、2496」、「~見しし野邊には之米由布倍之母<標ユフ・べしも>。万、4509」の転訛したもの。
ユーンガール [⸢juːŋgaːru]世代わり。
ユーングマル [⸢juːŋguma⸣ru]よごもり(夜籠もり)。豊年祭や結願祭に、祭り当日の前夜から夜を徹して友利御嶽の神々に祈願すること。⸢ユードゥー⸣シ[⸢juːduː⸣ʃi](夜通し)ともいう。
ユイ [⸢jui]え(柄)。「柄、器物茎柯也。衣(え)、一云賀良(から)」『和名抄』の義。
ユイ [jui]ゆい(結い)。共同作業に互いの労力を提供し合って助け合うこと。田植えや稲刈り等の共同作業に「結い」をした。⸢結い」で一定の労力の提供を受けたら、それを返す義務があった。農繁期などには、よく結いが行われた。
ユイ [⸣jui]理由。わけ(訳)。ゆえ(故)。「~淀めらば故霜<ユヱしも>あるごと~。万1379」の転訛したもの。
ユイ [⸣jui](数)束。線香などの束を数える単位。老年層の言葉。「~然れども由比氐之<ユヒテシ>紐を~。万、3948」の「由比」が転訛したものか。若年層はタ⸢ブ⸣ル[ta⸢bu⸣ru](束)という。
ユイカウ [⸢juikau]
ユイ カブン [⸢jui⸣ kabuŋ]結いの義務を負う。共同作業で他人から労力の提供を受けた場合、それを返す義務を負うこと。
ユイサー [⸢jui⸣saː]{1}民謡の囃子。よいさ。間<合い>の手。
ユイサー [⸢jui⸣saː]{2}掛け声。豊年祭の巻き踊りに、旗頭を持ち上げてながら、ヒーヤユイサ ヒーヤユイサと掛け声をかけて踊る。
ユイシンカ [⸢juiʃiŋka]結いの仲間。共同作業の仲間。
ユイプス [⸢juipu̥su]⸢結い人」の義。新築儀礼の⸣アーパーレー[⸣ʔaːpaːreː](新室寿ぎ歌)の際に、家の守護神として造られる、茅を結って作った人形。⸢ユイプスンガナシ[⸢juipu̥suŋganaʃi]ともいう。屋根葺きが終了して新築が完了した夜、新築に参加した人々と共に新室でアーパーレーを歌って厄払いの儀式を行う。その際に施主が「結い人」の人形を抱いて、⸢ワンヌン ビー⸣ティ ⸢バンヌン ビー⸣ティ シッ⸢トゥイ シットゥイ[⸢wannumbiː⸣ti ⸢bannumbiː⸣ti ʃi̥t⸢tui ʃittui](貴方も酔い、私も酔って、あな尊や)と叫んで酒を棟木に投げかけ、以後この家の守り神として御座しませといい、⸢結い人」を中柱に結わえておく
ユイマール [⸢juimaːru]
ユイラ [⸢juira]四枚。⸢イラ」は、*[pira] → [ɸira] → [wira] → [jira] → [ira](枚。片)と転訛したもの。薄くて平らなものを数える単位。「屏風のひとひら畳まれるより~」『源氏物語 東屋』。
ユガフ [ju⸢gaɸu]豊年。「世果報」と表記される。歌謡では⸢ユンガフ[juŋgaɸu](世果報)と歌われる。「世(~聖の御世<ミヨ>ゆ~。万、29)・果報(<幸運>『風姿花伝』)」の合成語で、⸢豊年満作の年」を意味する。⸢ナウリ⸣ユー[⸢nauri⸣juː]({稔}{ミノリ}の世)の対語として用いられる。
ユガフアミ [ju⸢gaɸuʔami]豊年満作をもたらす雨。⸢世果報雨」の義。十日おきに夜雨が降ると豊年の前兆と歌われている。/ミルクユーヌ シルシ トゥカグシヌ ユーアミ カキブサイミソリ シマヌアルジ シマヌアルジ(弥勒菩薩の御世の前兆は十日ごとに降る夜雨です。その夜雨を降らせかけてくださいませ、島の守護神様)弥勒歌/『鳩間島古典民謡古謡集』
ユガフドゥシ [ju⸢gaɸuduʃi]豊年。稔りの年。「世果報年」の義。
ユガマスン [ju⸢gamasuŋ]他動歪める。「歪ます」の義。普通は、ヤ⸢ゴーマスン[ja⸢goːmasuŋ](歪める)という。
ユガミルン [ju⸢gamiruŋ]他動歪める。ねじれまがらせる。悪くする。老年層は、ヤ⸢ゴーマスン[ja⸢goːmasuŋ]という。
ユカムチ [ju⸢kamu⸣ʧi]ねだ(根太)。床の敷板を支える横木。「床持ち」の義。イ⸢ツァフン⸣ツァ[ʔi⸢ʦaɸun⸣ʦa](板床)は、このユ⸢カム⸣チ[ju⸢kamu⸣ʧi](根太)に⸣サン[⸣saŋ](桟)をわたして釘を打ち込む。タ⸢キフンツァ[tḁ⸢kiɸunʦa](竹床)の場合は、ユカムチ(根太)にわたした桟に⸢ヌシ⸣トゥル[⸢nuʃi̥⸣turu](竹竿。ユカムチの下に掛ける竹竿)に締め縄を掛けて引き締めながら床竹を編み上げる。
ユガムン [ju⸢gamuŋ]自動歪む。捻じれ曲がる。「喎、ユガム」『類聚名義抄』の転訛したもの。老年層は、ヤ⸢ゴームン[ja⸢goːmuŋ](歪む。捻じれ曲がる)という。
ユカラスク [ju⸢karasu̥ku]十分に。たっぷりと。よほど。かなり。ずいぶん。相当。「よかる・しこ(四顧)<付近。あたり>」の転訛したものか。
ユカラプス [ju⸢kara⸣pu̥su]士族。「良かる人」の義。⸣ブザ[⸣buʣa](平民の指導者)、⸣アカカラジ[⸣ʔakakaraʣi](百姓)の対義語。
ユカラプスグンボー [ju⸢kara⸣pu̥sugumboː]石垣の士族の庶子。石垣の士族が鳩間島の役人として赴任し、その任期中の{賄}{マカナ}い女性との間に出来た庶子。
ユカル [ju⸢karu]良い。良かる。「良い」のカリ活用の連体形が慣用的用法として認められたもの。沖縄本島方言からの借用語が転訛したもの。
ユキー [ju⸢kiː]形動余計。余計に。標準語からの借用語が転訛したもの。普通は、⸢ワーバ⸣グトゥ[⸢waːba⸣gutu](余計なこと)という。
ユキーユキーシ [ju⸢kiːjukiː⸣ʃi]{1}ゆったりと。十分に余裕をもって。十分に。「余計・余計」の転訛したもの。
ユキーユキーシ [ju⸢kiːjukiː⸣ʃi]{2}裕福に。ゆとりのある。
ユク [⸣juku]欲。欲望。
ユク [ju⸢ku]横。「~彼にも与己佐母<ヨコサモ>~。万、4132」の転訛したもの。普通は、⸣ナイ[⸣nai](縦)、シ⸢マー[ʃi⸢maː](横)という。
ユク [ju⸢ku]別。別のもの。
ユクーン [⸣jukuːŋ]自動休まれる。⸢眠る」の敬語。「憩う」の義。「息舌、伊己不(いこふ)」『新撰字鏡』の転訛したもの。
ユクイ オールン [⸣jukui ⸢ʔoː⸣ruŋ]お休みになる。「休む。寝る」の敬意表現。「息、休、憩、活、慰、イコフ」『類聚名義抄』の連用形に「おはし」が付いて転訛したもの。
ユクカタ [ju⸢kukata]別のところ。他のところ。別所。ユ⸢クントン[ju⸢kuntoŋ](別所)ともいう。
ユクキム [ju⸢kukimu]わきごころ(脇心)。あだしごころ。他の男、または女に惹かれている心。「横肝」の義。ク⸢トゥ⸣キム[ku̥⸢tu⸣kimu](別心。脇心)ともいう。
ユクザキ [ju⸢kuʣa⸣ki]かぎ裂き。着物の布地などが横に引き裂かれること。
ユクシ [ju⸢ku⸣ʃi]{嘘}{ウソ}。虚言。「{讒}{ヨコス}、与己須<よこす>」『新撰字鏡』、「人言の讒乎聞而<ヨコスヲキキテ>~。万、2871」の転訛したもの。
ユクシキカーシキ [ju⸢kuʃi̥kikaː⸣ʃi̥ki]欲張って。欲張りついて。ABCDEFCD型の重言。
ユクジマー [ju⸢kuʣijmaː]横の方向。横向き。違った方向。よこしまなこと。「{横様}{ヨコ|ザマ}」の義。「{僻}{ヘキ}、ヨコサマ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
ユクジマカージマ [ju⸢kuʤimakaː⸣ʤima]違った方向に。横道に逸れて。曲解して。とんでもない方向。ABCDEFCD型の重言。
ユクシムニ [ju⸢kuʃi⸣muni]{嘘}{ウソ}。{虚言}{キョ|ゲン}。「{讒}{ヨコシ}・与己須<よこす>」『新撰字鏡』の転訛したもの。「よこし・ものいひ」の転訛か。
ユクシムニ シームヌ [ju⸢kuʃi⸣muni ⸢ʃiːmunu]{嘘吐}{ウソ|ツ}き。
ユクジン [ju⸢ku⸣ʤiŋ]欲張り。強欲な人。
ユク スクン [ju⸢ku⸣ su̥kuŋ]欲張る。欲を掻く。「欲付く」の義。
ユグスン [ju⸢gusuŋ]他動汚す。汚くする。けがす。
ユクターラスン [ju⸢kutaːrasuŋ]他動横たえる。「横、ヨコタフ<下二段>」『類聚名義抄』の転訛したもの。
ユクタールン [ju⸢kutaːruŋ]自動横たわる。横になる。横に臥す。「いたう気色ばみよこたはれる松のこたかき~」『源氏物語 藤裏葉』の転訛したもの。
ユクタイルン [ju⸢kutairuŋ]他動横たえる。横にする。横に伏せる。
ユクタウン [ju⸢kutauŋ]他動横たえる。横にする。横に伏せる。
ユクタニ [ju⸢kutani]種違い。父違い<妻の連れ子>。「別<ユク>種」の義か。
ユクトン [ju⸢kutoŋ]別所。別の所。ユ⸢クントン[ju⸢kuntoŋ](別の所)ともいう。
ユクニ [ju⸢kuni]{腿}{モモ}の付け根。よこね(横根)。そけい(鼠径)リンパ節の炎症によって起る腫物。「Yocone.ヨコネ(横根){鼠蹊部}{ソ|ケイ|ブ}にできるある{腫物}{ハレ|モノ}」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ユクニヌ タニ [ju⸢kuninu⸣ tani]{腿}{モモ}の付け根のぐりぐり。リンパ{腺腫脹}{セン|シュ|チョウ}などで出来るぐりぐり。
ユクニビ [ju⸢kunibi]{横臥}{オウ|ガ}。横に寝ること。「Yokone.ヨコネ(横寝)横向きになって寝ること」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの
ユクヌドゥ [ju⸢kunudu]気管。「横<別>喉」の義。⸢食道とは別の喉」のこと。
ユクヌ マタサカ [ju⸢ku⸣nu ⸣matasaka]欲を張りすぎて損をする。「欲の熊鷹<くまたか>股を裂く」の転訛したもの。
ユクバタ [ju⸢kubata]脇腹。よこばら。「横腹」の義。
ユクミチ [ju⸢kumiʧi] {1}別の道。違った道。脇道。
ユクミチ [ju⸢kumiʧi]{2}横道。
ユクムニ [ju⸢kumuni]別の言葉。関係のない言葉。話題を逸らした言葉。
ユクムニクティムニ [ju⸢kumuni⸣ku̥timuni]別の言葉。関係のない言葉。
ユクムヌ [ju⸢kumunu]別の物。他の物。
ユクヤン [ju⸢kujaŋ]余病。別の病気。
ユグリ [ju⸢guri]{1}汚れ。汚れること。ユ⸢グルン[ju⸢guruŋ](汚れる)の転成名詞。
ユグリ [ju⸢guri]{2}{不浄}{フ|ジョウ}。{穢}{ケガ}れ。
ユグリティーパン [ju⸢guritiː⸣paŋ]汚れた手足。
ユグリハイカラー [ju⸢gurihaikaraː]下品なおしゃれ。厚化粧や派手な服装をすること。「汚れ・highcollar」の義。過度な化粧や服飾をすることを皮肉ったことば。
ユグリムヌ [ju⸢gurimunu]汚れ物。
ユグリルン [ju⸢guriruŋ]自動汚れる。「よごれる<下一段>」の転訛したもの。
ユグルン [ju⸢guruŋ]自動汚れる。「よごる<下二段>」の転訛したもの。
ユクン [ju⸢kuŋ]余計に。さらに。いっそう。もっと。条件文をうけて、⸢<ある状態が>ますます、もっと、かえって、余計~になる」の意を表す。
ユクン [⸣jukuŋ]もり(銛)。やす(簎)。魚や蛸を刺して漁獲する漁具。⸣ガルユクン[⸣garujukuŋ](先端部に鉤のあるやす<簎>。蛸を漁獲するのに用いる漁具)と⸢シー⸣メーユクン[⸢ʃiː⸣meːjukuŋ](先端部が尖って、鉤のない銛。魚を突き刺すのに用いる銛)がある。女性が潮干狩りに持参するのは、⸣ガルユクン[⸣garujukuŋ](鉤のある簎)である。
ユクンツァミー [ju⸢kunʦa⸣miː]床下。床下の空間。「床下穴」の義。若年層は、ユ⸢クンツァ⸣メー[ju⸢kunʦa⸣meː](床下)ともいう。
ユコー [ju⸢koː]裏座。奥座敷の総称。イ⸢チバンウラ⸣ザ[ʔi⸢ʧibaŋʔura⸣ʣa](一番裏座)、⸢ニーバンウラ⸣ザ[⸢niːbaŋʔura⸣ʣa](二番裏座)の総称。
ユコーマ [ju⸢koː⸣ma]押入れ。小部屋。老年層の言葉。
ユコーン [ju⸢koː⸣ŋ]欲深い。強欲である。
ユサ [⸣jusa]夜。普通は、⸣アサンユサン[⸣ʔasaŋjusaŋ](朝も夜も)と畳語的に用いられる。単独用法はない。
ユシアシ [ju⸢ʃiʔaʃi]善し悪し。良い悪い。善悪。
ユシキ [⸢juʃi̥⸣ki](植)すすき(薄・芒)。「めひ<婦負>の野の須々吉<ススキ>押し靡べ~。万、4016」、「薄、ススキ」『類聚名義抄』の転訛したものか。⸢ユシ⸣キキー[⸢juʃi̥⸣kikiː](すすき)ともいう。
ユシキシダル [⸢juʃi̥⸣kiʃidaru]ススキを{編}{ア}んで作った{簾}{スダレ}。長さ約2メートルのススキを、葉を除去して{藁縄}{ワラ|ナワ}で編み、庭先に広げて烏賊を干すのに用いる。イ⸢ガヤマで干した半乾燥の烏賊をこれで2、3日干して完成品に仕上げた。
ユシキシンザ [⸢juʃi̥⸣kiʃinʣa](植)砂糖きびの一種。⸢{薄甘蔗}{ススキ|カン|ショ}」の義。糖度が比較的に低く、幹の太さも比較的に小さい。⸢コー⸣シシンザ[⸢koː⸣ʃiʃinʣa](菓子砂糖きび。糖度が高く、大きな砂糖きび。「菓子甘蔗」の義)の対義語。
ユシキダー [⸢juʃi̥⸣kidaː](地)古文書では、ミナミヨシキダとある。昔から美田地帯といわれていたが、西表北部一周道路建設のために、突然何の予告もなしにブルトーザーで埋め立てられて問題化した。工事を一時中断して沖縄県土木課八重山支所と交渉した結果、沖縄県が補償金を支払って解決した。⸣ウブシケヌ ⸣ター[⸣ʔubuʃi̥kenu ⸣taː](大城家の田)、カ⸢ザケヌ⸣ ター[ka⸢ʣakenu⸣ taː](加治工家の田)、ニ⸢シムレーヌ⸣ ター[ni⸢ʃimureːnu⸣ taː](米盛家の田)、キ⸢ダシケーヌ⸣ ター[ki⸢daʃi̥keːnu⸣ taː](石嶺家の田)、⸢メークヤーヌ⸣ ター[⸢meːkujaːnu⸣ taː](宮良家の田)、⸢メー⸣ケーヌ ⸣ター[⸢meː⸣keːnu ⸣taː](大城家の田)、カ⸢ナ⸣ケーヌ ⸣ター[ka⸢na⸣kaːnu ⸣taː](兼久家の田)、ク⸢メーヌ⸣ ター[ku⸢meːnu⸣ taː](小浜家の田)、⸢クシケーヌ⸣ ター[⸢kuʃi̥keː⸣nu ⸣taː](小底家の田)等がある
ユシキダミナトゥ [⸢juʃi̥⸣kidaminatu]地名。ユシキダ湊。⸢ユシ⸣キダタバル[⸢juʃi̥⸣kidatabaru](ミナミヨシキダ田袋)の小底家の水田とウ⸢ブ⸣ミジ[ʔu⸢bu⸣miʤi](大見謝川)の間を流れる川の川口。川口付近は浜砂が堆積して浅くなり、干潮時には歩いて渡れる。
ユシキパシ [⸢juʃi̥⸣kipḁʃi]ススキで作った箸。法事の際に紙銭を焼くのに用いる箸。生のススキで作るのが慣わしであった。
ユシグトゥ [ju⸢ʃigutu]教訓。忠告。沖縄本島方言からの借用語。「諭し・言」の転訛か。
ユシザン [ju⸢ʃi⸣ʣaŋ]足し算。「寄せ算」の義。標準語からの借用語。明治29年6月16日に学校教育が開始された後に借用されたものであろう。
ユシドーフ [ju⸢ʃidoːɸu]おぼろ豆腐。汲み豆腐。豆腐製造の過程で、固まりかけのもの。沖縄本島方言からの借用語。
ユジルン [ju⸢ʤiruŋ]他動{譲}{ユズ}る。自分のものを他に与える。
ユシン [⸣juʃiŋ](植)イスノキ。蚊母樹。高木。西表島の山中に自生する。重硬で建築用材、器具材、楽器材として重用される。薪炭材としても重宝される。⸣ユシンキー[⸣juʃiŋkiː]ともいう。芯材は紅褐色、{堅硬}{ケン|コウ}で{耐朽}{タイ|キュウ}保存性が高い『図鑑琉球列島有用樹木誌』。
ユスグン [ju⸢suguŋ]他動ゆすぐ(濯ぐ)。揉み洗いをした後、盥に水を入れ、衣類を動かしてざっと汚れを落とす。ざっと洗う。「濯・滌、ススグ」『類聚名義抄』の転訛したものか。
ユタ [ju⸢ta]口寄せをする巫女。かんなぎ(巫・覡)。生まれつきセジ<霊力>高く、神仏の霊意を感得できる能力を持つという巫女。稀に男のユタもいる。沖縄本島方言からの借用語。鳩間島では、巫女がフ⸢ダマルン[ɸu⸢damaruŋ](神がかりする)ことによって神意を託宣(神託)されていた。
ユダ [ju⸢da]{1}枝。「肢、衣太<えだ>」『和名抄』の転訛したもの。
ユダ [ju⸢da]{2}分家。本から分かれたもの。
ユダーリムヌ [ju⸢daːrimunu]仕事が無く、ぶらぶらして遊び暮らす者。{無為徒食}{ム|イ|ト|ショク}の{輩}{ヤカラ}。いぐい。
ユダパー [ju⸢dapaː]枝葉。枝と葉。
ユダムチ [ju⸢damu⸣ʧi]枝振り。えださし。枝の出ぐあい。「枝持ち」の義。
ユタムニ [ju⸢tamuni]ユタ(口寄せする巫女)のことば。信用できないことば(物言い)。
ユダヤー [ju⸢dajaː]よく{涎}{ヨダレ}を{垂}{タ}らす人。よだれくり({涎繰}{ヨダレ|ク}り)。涎垂らし。
ユダヤーニーバル [ju⸢dajaː⸣niːbaru](動)魚の名。和名、マダラハタ(体長約60センチ。濃い灰色を基調とし、{鰓}{エラ}から背部、背びれ尾びれにかけて白の斑点がまだら模様に付いている)
ユダリン [ju⸢da⸣riŋ]自動{1}(可能動詞){茹}{ユ}でられる。他動詞⸣ユドゥン[⸣juduŋ](茹でる)の未然形に、受身・可能の助動詞⸣リン[⸣riŋ](~れる)が下接して形成されたもの。
ユダリン [ju⸢da⸣riŋ]自動{2}(受身動詞)茹でられる。
ユダル [ju⸢daru]よだれ(涎)。「涎、ヨダリ」『類聚名義抄』、「Yodare.ヨダレ(涎)口から出る涎」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ユダルッス [ju⸢darussu]{粘液便}{ネン|エキ|ベン}。「{涎糞}{ヨダレ|クソ}」の義。
ユダルパキ [ju⸢darupaki]{涎掛}{ヨダレ|カケ}。幼児の{頤}{オトガイ}の下に掛けて涎を取る布。「Yodarecaqe.ヨダレカケ(涎掛)、{鎧}{ヨロイ}の{頸}{クビ}のところにつける{喉輪}{ノド|ワ}.また幼児につける{涎受}{ヨダレ|ウケ}」『邦訳日葡辞書』の転訛。
ユダルムシ [ju⸢darumuʃi](動)ナメクジ。「蛞蝓」の義。
ユダン [ju⸢daŋ]油断。不注意。「油断、ユダン、又作ニ油断-」『文明本節用集』の転訛したもの。
ユダンカダン [ju⸢daŋ⸣kadaŋ]油断。油断を強めた言い方。ABCDBC型の重言。
ユダンサーン [ju⸢dan⸣saːŋ]油断しがちである。よく油断する。
ユチアシ [ju⸢ʧiʔaʃi]四つ足。{獣類}{ジュウ|ルイ}。「Yotçuaxi.ヨツアシ(四足)四足の獣」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ユチク [ju⸢ʧi⸣ku]富んで生活が豊かなこと。裕福。富裕。
ユチクニ [ju⸢ʧi⸣kuni]豊かに。裕福に。
ユチダキ [ju⸢ʧidaki]{四竹}{ヨツ|ダケ}。舞踊の小道具の名。パ⸢トゥ⸣マナカムリ[pḁ⸢tu⸣manakamuri](鳩間中岡節)のような古典舞踊の際に用いられる小道具。直径約5センチの孟宗竹を割って、長さ約10センチに切り、赤く染め、二枚一組で両手に挟んで打ち鳴らすようにした小道具。
ユチラー ナーヌ [ju⸢ʧi⸣raː ⸢naː⸣nu]役に立たない。無益である。頼り甲斐がない。
ユチル [ju⸢ʧiru]えつり(桟)。{茅葺}{カヤ|ブ}き屋根や{瓦葺}{カワラ|ブ}き屋根の{垂木}{タル|キ}の上に竹を横に並べて編み、ふきしたじ(葺下地)とした建築用材。「枌、屋乃衣豆利」『新撰字鏡』の転訛したもの。ユ⸢チルダキを⸢ニー[⸢niː](根)と⸣スラ[⸣sura]({梢}{コズエ})を交互にヤ⸢ラザイティ[ja⸢raʣaiti](交差させて)⸢クー⸣ジ[⸢kuː⸣ʤi](トウヅルモドキ)で編み上げる。瓦葺の場合は1ミリ間隔に密に編み、茅葺の場合は1センチ間隔に粗に編み上げる。
ユチルダキ [ju⸢ʧirudaki]えつりだけ。「枌、屋乃衣豆利<やのえつり>」『新撰字鏡』、「蘆雚、哀都利<えつり>」『日本書紀 顕宗即位前』、の「えつり」に用いる竹の転訛したもの。
ユチン [⸣juʧiŋ]地名。よちん(由珍)と表記される。西表島東北岸、高那の東にあった村。雍正10(1732)年に小浜島からの寄せ百姓によって村建てされたという。
ユチンガーラ [⸣juʧiŋgaːra]ユチン湾に注ぐ川。
ユチンワン [⸣juʧiŋwaŋ]地名。よちん(由珍)湾。⸣ユチンワン[⸣juʧiŋwaŋ]は良港で、琉球国時代の大型帆船の系留地であったという
ユッカ [⸢jukka]舟の床板。サバニの床板。⸢マイユッ⸣カ[⸢maijuk⸣ka](前床板)、ナ⸢カユッ⸣カ[na⸢kajuk⸣ka](中床板)、トゥ⸢ムユッ⸣カ[tu⸢mujuk⸣ka](艫床板)、トゥ⸢ムユッカー⸣マ[tu⸢mujukkaː⸣ma](小さい艫床板。船頭の座る艫床板)等がある。
ユッキ [⸢jukki]よき。小型の斧。「斧、与岐」『倭名類聚鈔』の転訛したもの。石工が石材を削ったりする際に用いる工具。
ユディコーマ [ju⸢dikoː⸣ma]{茹}{ユ}で卵。鶏卵を殻のまま茹でたもの。
ユディタク [ju⸢di⸣tḁku]{1}{茹蛸}{ユデ|タコ}。
ユディタク [ju⸢di⸣tḁku]{2}酔って顔を真っ赤にし、だらりとした様子。
ユディルン [ju⸢di⸣ruŋ]他動茹でる。⸣ユドゥン[⸣juduŋ](茹でる)ともいう。「煠、以菜入涌湯曰煠煮也 奈由豆」『新撰字鏡』の転訛したもの。
ユドゥマナー [ju⸢duma⸣naː]ほどなく。やがて。すぐに。間もなく。時を移さず。「淀まずに」から転訛したもの。「淀、ヨドム」『類聚名義抄』の未然形に打ち消しの助動詞⸣ヌ[⸣nu](~ない)の連用形⸣ナー[naː](~ずに)が付いた形。トゥ⸢キユドゥマ⸣ナー[tu̥⸢kijuduma⸣naː](時をうつさず。間もなく)ともいう。
ユドゥムン [ju⸢du⸣muŋ]自動淀む。流水が止まる。止まって動かない。とどこおる。「殿、ヨドム・ヨドミ・ヨド」『類聚名義抄』。「~磐に觸れ与杼賣類与杼尓<ヨドメルヨドニ>~。万、1714」の転訛したもの。
ユドゥン [⸣juduŋ]他動{茹}{ユ}でる。「{茹}{ユ}で。<由豆>下二段」の四段活用化したもの。
ユドゥン [⸣juduŋ]赤潮。初夏、⸢スー⸣マン ⸣ボースー[⸢suː⸣mam ⸣boːsuː](小満、{芒種}{ボウ|シュ})の頃、赤潮が発生して海岸の海水が真っ赤に染まる現象。生臭い臭いが海辺に漂う。
ユナ [⸣juna](植)木の名。オオハマボウ。⸣ユナキー[⸣junakiː]ともいう。島の海岸に自生する小高木。防風林、防潮林として植樹された。黄色の{清楚}{セイ|ソ}な花を咲かせる。葉は円心形でお皿の代用に利用されたり、トイレットペーパー代用に利用された。樹皮の繊維質は縄の代用に利用され、乾燥した木質部は⸣ピナー[⸣pinaː](火縄)の{芯}{シン}に利用された。灰は{藍汁}{アイ|ジル}に使われ、日常生活に重宝された。
ユナーミナ [ju⸢naːmina](動)貝の名。イモガイ科の仲間。{殻}{カラ}は厚く、殻の長さは約6センチ。表面は茶色がかった色を呈する。鳩間島の西海岸、屋良の海岸の海底砂地などに生息している。煮て中身を抜き取り汁に入れて食すると美味である。
ユナカ [ju⸢na⸣ka]夜中。夜半。
ユナカイー [ju⸢naka⸣ʔiː]夜食。「夜中・飯」の義。夕食後に一仕事ある時は、午後11時頃に夜食を取った。カツオ漁船が大漁して夕方に帰港すると、鰹節製造工場では、ニ⸢コミ[ni⸢komi](煮込み)、バ⸢ラ⸣ヌギ[ba⸢ra⸣nugi](刺を抜く作業。「ばら<{荊棘}{バ|ラ}>・抜き」の義)、⸢バイ⸣カン[⸢bai⸣kaŋ](焙乾)の夜業が続いたので、夜食が必要であった。
ユナカサナカ [ju⸢nakasana⸣ka]真夜中。「夜中最中」の義。ABCDBC型の重言。
ユナカソッコー [ju⸢nakasok⸣koː]夜中焼香。迎えの焼香。大きな法事の前夜、午後十時ごろに供養すべき霊をお迎えして行われる焼香。ン⸢カイソッコー[ʔŋ⸢kaisokkoː](迎え焼香)ともいう。仏教語の「しゅくき(宿忌)」のこと。ウ⸢クリソッコー[ʔu⸢kurisokkoː](送り焼香)の対義語。
ユナカッサーク [ju⸢nakassaː⸣ku]夜中に発作的に起きる咳。
ユナカヌ パイ [ju⸢naka⸣nu ⸣pai]夜中の祈願。「夜中の拝」の義。
ユナク [ju⸢na⸣ku]むぎこがし(麦焦がし)。はったいこ。大麦を炒りこがし、石臼で碾いて粉にしたもの。黒砂糖を削って混ぜ、⸢サー⸣フキ[⸢saː⸣ɸu̥ki](茶請け)にしたり、湯で練って食したりした。美味である。⸢カイ⸣キ[⸢kai⸣ki](皿)に盛ったものや、⸣サバン[⸣sabaŋ](茶碗)に盛ったものを、ガ⸢ジ⸣マル[ga⸢ʤi⸣maru](榕樹)の葉をスプーンの代わりに使用して食した。老人は水に溶かして食することもあった。若年層でユ⸢ヌ⸣ク[ju⸢nu⸣ku](麦焦がし)ともいう人もいる<一種の母音調和か>。
ユナグ [ju⸢na⸣gu]女。女性。「嬢、婦人美也、美女也、良女也、肥大也、乎美奈<をみな>」『新撰字鏡』、⸢~老人も女童兒毛<ヲミナワラハモ>~。万、4094」の転訛したもの。沖縄本島方言からの借用語。歌謡語。話し言葉では、ミ⸢ドゥ⸣ム[mi⸢du⸣mu](女)という。/アサニシヨル ユナグ アサピキ シヨル ミドゥン ウリカラドゥ キハミティ ブトゥヤユダン シミユル(朝寝坊の女性と朝食用の芋堀に行く婦人の家庭では夫は常に油断がちで家運は衰退する)/(デンサ節)『八重山民謡誌』
ユナデー [ju⸢na⸣deː]与那田家。鳩間島で始めて郵便局が設置された家という。当家の男子が早世したので与那田家は大正初期に絶家した。女子の一人(与那田マイツ。明治16年8月10生)が加治工津久利へ嫁し、一人は大工家へ、もう一人は吉川家へ嫁した。イ⸢ラ⸣カマイ[ʔi⸢ra⸣kamai](ウ⸢ブ⸣マイ{SqBr}ʔu⸢bu⸣mai{/SqBr}の農道の南側の林)の西側に、同家のフ⸢ジマレーパカ[ɸu⸢ʤimareːpaka](カ⸢ソーライシ{SqBr}kḁ⸢soːraʔiʃi{/SqBr}<テーブルサンゴ>で石槨を作り、周囲を石を円く積み上げて作った古い墓)が残っている
ユナデヌ イズヌヤー [ju⸢na⸣denu ʔi⸢ʣunu⸣jaː](海底地名)。⸢与那田家の魚の家」の義。{フ⸢ナ⸣バルパマ[ɸu⸢na⸣barupama](舟原浜)とナ⸢ラ⸣リパマ[na⸢ra⸣ripama](ナラリ浜)の中間にある礁内湖(魚の巣<家>)}。与那田家の人が網を入れて漁獲したところという
ユナバル [ju⸢nabaru]与那原家。
ユナラミズ [ju⸢naramiʣu](海底地名)西表島東部の野原崎、由布島と小浜島の間の海峡。「ユナラ澪」の義。ユ⸢ノーラミズ[ju⸢noːramiʣu]ともいう。干満の差による海流が早く、海の難所の一つであった。大型の⸣カマンタ[⸣kamanta](マンタ。オニイトマキエイ)や⸣ザン[⸣ʣaŋ](ジュゴン<儒艮>)が遊泳することで有名である。
ユナルン [ju⸢na⸣ruŋ]自動日が暮れる。夜になる。「ゆふ<由布佐礼婆~。万3666>」の「ゆふ」に「なり<~由布幣尓奈礼婆~。夕べにナレバ~。>万、904」の「なり」が付いた形。
ユナン [ju⸢naŋ]四男。四番目の男子。⸢サン⸣ナン カ⸢キマカラー⸣ ユ⸢ナン⸣ラー ⸣ザイサンマー ⸢ナー⸣ヌ[⸢san⸣naŋ kḁ⸢kimakaraː⸣ ju⸢nan⸣raː ⸣ʣaisammaː ⸢naː⸣nu](三男は欠けたお碗しか貰えず、四男からは財産はない)といわれている
ユニ [ju⸢ni]す(洲)。海流や水流により土砂や砂利が堆積して水面に出来た砂洲、または砂利の島。最近は略地図に⸢バラス島」と記されているが、伝統的な正式名称は「ユニ」である。終戦後は、鳩間島に来た糸満漁師の方言の影響で、ユ⸢ニ⸣グヮー[ju⸢ni⸣gwaː](小洲)と言う人もいた。鳩間島と西表島上原の中間、鳩離島の西の海上に浮かぶ珊瑚の砂利で出来た島。この海域は潮の干満による潮の流れが大きい。
ユニチ [ju⸢niʦi]{1}(数詞)四日。四つの日数。日を表す単位。
ユニチ [ju⸢niʦi]{2}月の第四日。
ユニドゥシ [ju⸢niduʃi]米寿。「よねどし(米年)」の義。八十八歳。「よね(米)歳」から類推派生したものであろう。普通は、⸢トー⸣カキ[⸢toː⸣kaki](米寿の祝い)という。
ユヌ [ju⸢nu]連体同じ。同程度。
ユヌク [ju⸢nu⸣ku]麦焦がし。老年層は、ユ⸢ナ⸣ク[ju⸢na⸣ku](麦焦がし)という。「湯の子」(底鍋に焦げ付いた飯を用いて作る{湯漬}{ユ|ヅケ})の転訛したものか。
ユヌクバタ [ju⸢nu⸣kubata]餡として餅に入れる黒糖を混ぜた麦焦がし。麦焦がし餡。はったいこ餡。ユ⸢ナ⸣クバタ[ju⸢na⸣kubata](はったいこ餡)ともいう。
ユヌザー [ju⸢nu⸣ʣaː]同じ座敷。同室。同席。
ユヌシリ [ju⸢nu⸣ʃiri]同年輩。同輩。同年生。同じ年の子供。同じ年頃の友人。同級生。ユ⸢ヌ[ju⸢nu](同じ)に、⸣シリ[⸣ʃiri](連れ、同伴者)が付いて形成された語。
ユヌスク [ju⸢nu⸣su̥ku]{1}同じ程度。同程度。同レベル。
ユヌスク [ju⸢nu⸣su̥ku]{2}同じ分量。
ユヌタキ [ju⸢nu⸣taki]{1}同じ高さ。
ユヌタキ [ju⸢nu⸣taki]{2}同じ程度。同等。
ユヌトゥシ [ju⸢nu⸣tu̥ʃi]同年。同じ年。
ユヌナイ [ju⸢nu⸣nai]同じ長さ。
ユヌナカ [ju⸢nunaka]世の中。世間。
ユヌナダカ [ju⸢nunada⸣ka]同じ高さ。同程度。同じ背丈。
ユヌ ナッチン [ju⸢nu nat⸣ʧiŋ]同じ大きさの小粒のもの。
ユヌ ナドゥ [ju⸢nu⸣ nadu]同じ長さ。
ユヌ パンシ [ju⸢nu⸣ paŋʃi]途中で休まないで。同じ歩調で。そのまま。「同じ足で」の義。
ユヌプス [ju⸢nu⸣pu̥su]同じ人。同一人物。
ユヌムヌ [ju⸢nu⸣munu]同じもの。同一物。同様なもの。
ユヌレー [ju⸢nu⸣reː]一周忌。一年忌。⸢タンカーソッコー[⸢taŋkaːsokkoː](一周忌)ともいう。
ユヌングトゥ [ju⸢nuŋgu⸣tu]同じこと。マ⸢ナ⸣マ ⸢サンタンティン⸣ ミサン。⸣アトーラン ⸢サン⸣カー ナ⸢ラン⸣ユンダー ユヌングトゥ[ma⸢na⸣ma ⸢santantim⸣ misaŋ。⸣ʔatoːran ⸢saŋ⸣kaː na⸢raŋ⸣jundaː ju⸢nuŋgu⸣tu](今しなくても良い。後からもしなくてはならないのだから、同じことだ)
ユヌングトゥ [ju⸢nuŋgu⸣tu]同じように。同様に。結局。
ユヌンゴーラスン [ju⸢nuŋgoːra⸣suŋ]他動濁らす。濁す。
ユヌンゴーリミジ [ju⸢nuŋgoːri⸣miʤi]{濁}{ニゴ}り水。
ユヌンゴールン [ju⸢nuŋgoː⸣ruŋ]自動濁る。ヤ⸢ナンゴー⸣ルン[ja⸢naŋgoː⸣ruŋ](濁る)ともいう。
ユネン [⸣juneŋ]夕方<暗くなって>から夜の8時頃まで。日暮れより8時ごろまで。「由布佐礼婆<ユフサレバ>秋風寒し~。万、3666」の転訛したもの。
ユネンガタ [⸣juneŋgata]夕方。日没頃。
ユネン シキティ [⸣juneŋ ʃi̥⸢ki⸣ti]夕暮れになって。夕方にかけて。宵の刻まで。
ユネンティダ [⸣junentida]夕方の太陽。暑気の緩んだ西日。⸢イーリティダ[⸢ʔiːritida](西日)、ム⸢ドゥリ⸣ティダ[mu⸢duri⸣tida](戻り太陽)ともいう。
ユネンヌ カージ [ju⸢nen⸣nu kaː⸢ʤi]夕方のたんびに。夕方毎に。毎夕。
ユネンヌ サー [ju⸢nen⸣nu ⸣saː]夕方のお茶。夜のお茶。夜に飲む茶。
ユネンヌパイ [ju⸢nen⸣nupai]宵の頃(午後8時ごろ)の祈願(拝)。⸢ユードゥー⸣シ[⸢juːduː⸣ʃi](夜通しの祈願<拝>)が行われる豊年祭や結願祭には、ユ⸢ネン⸣ヌパイ[ju⸢nen⸣nupai](宵の祈願<拝>)、ユ⸢ナカ⸣ヌパイ[ju⸢naka⸣nupai](夜中の祈願<拝>)、シ⸢トゥムティ⸣ヌパイ[ʃi̥⸢tumuti⸣nupai](朝<つとめて>の祈願<拝>)が行われる。サ⸢カサ(司)、ティ⸢ジリ⸣ビー[ti⸢ʤiri⸣biː](手摺り部。男性神職者)、バ⸢キサカ⸣サ(脇司。司の補佐役)、村役人、及び有志の方々が集まって、祈願の合間合間に三線を弾き、歌を歌って神殿<ウブヤー>を{賑}{ニギ}やかにし、夜を徹して祈願をする
ユネンノーリ [ju⸢nennoː⸣ri]夕晴れ。夕方に天候が回復すること。「夕・直り」の義。
ユネンヤキ [ju⸢neŋ⸣jaki]夕焼け。
ユノーラミズ [ju⸢noːramiʣu]地名。海峡の名。小浜島と西表島東部の由布島の間に位置する海峡(水脈・澪)。干潮から満潮に、満潮から干潮に至る間の潮の流れが早く、操船する者に恐れられている海峡である。
ユノーレー [ju⸢noː⸣reː]一年忌。一周忌。⸢タンカーソッコー[⸢taŋkaːsokkoː](一周忌)ともいう。
ユノン [ju⸢noŋ](地)与那国島。
ユノンアブター [ju⸢noŋ⸣ʔabutaː]与那国のおっかあ。与那国から嫁入りしてきた人。与那国方言では、母親のことをアブ⸢た[abu⸢t'a]というので、その難しい発音を{揶揄}{ヤ|ユ}して「与那国人のアブた」という。
ユビ [⸣jubi]ゆうべ。昨夜。
ユビザスン [ju⸢biʣasuŋ]他動吸い出す。「呼び出す」の義。「詔、奈豆久<なづく>又 与不<よぶ>」『新撰字鏡』の「与不」の連用形に「出す」が付いて転訛したもの。
ユビター [ju⸢bitaː]深い田圃。「吸い込む田」の義。膝から腿のところまで泥の中に沈む田。ガ⸢タダー[ga⸢tadaː](浅い田圃。「潟田」の義)の対義語。
ユビダシコーヤク [ju⸢bidaʃikoːjaku]吸出し{膏薬}{コウ|ヤク}。腫れ物の膿を吸い出す膏薬。民間療法として、シ⸢ダフ⸣カ[ʃi⸢daɸu̥⸣ka](ハマユウ<浜木綿>)の生葉を火にあぶり、{腫}{ハレ}物に{貼}{ハ}って吸出し膏薬代用に利用していた。
ユブ [⸣jubu](地)由布島。西表東部にある小島の名。干潮時には美原海岸から歩いて渡れる。牛車で渡る観光スポットとして賑わっている。戦後の一時期は小学校も設置される人口を擁していたが、西表島のマラリア撲滅に伴い、住民は農耕に便利な対岸の美原に移住して集落を形成した。
ユフードゥ [ju⸢ɸuːdu]よほど(余程)。かなり。ずいぶん。相当。よっぽど。標準語からの借用語。
ユファスン [ju⸢ɸasuŋ]他動余す。余らす。余裕をもたせる。ア⸢マ⸣スンとも言う。
ユファラスン [ju⸢ɸarasuŋ]他動あます(余す)。余裕をもたせる。
ユファラムヌ [ju⸢ɸaramunu]余計なもの。余ったもの。不要のもの。
ユファルン [ju⸢ɸaruŋ]自動余裕が出る。ゆとりが出来る。金銭や物質面で余りができる。
ユブサ [ju⸢bu⸣sa](固)女子の名。「ヨボシ」と表記されている。
ユブサンマー [ju⸢bu⸣sammaː](固)女子の名。大工良氏の名前。⸢ユブサ姉さん」の義。加治工家に生まれた女児を、子供のなかった大工家のヨボシお祖母さんが養子として貰い、自分の名前を付けて養育したという。
ユブシ [ju⸢bu⸣ʃi](植)蔓性植物の実。お盆のム⸢ルムル[mu⸢rumuru](約5寸の長さに切った{甘蔗}{カン|ショ}を束ねて木の実をさして飾り、果物を{三方}{サン|ボウ}に{載}{ノ}せ添えた供物)に添える植物の実。
ユブン [ju⸢buŋ]他動吸う。吸い込む。「~不召尓<ヨハナクニ>門に至りぬ~。万、1738」の「呼ぶ」の転訛したものか。
ユミ [⸣jumi](数)織物の縦糸の数を表す単位。縦糸八十本を、プ⸢ス⸣ユミ[pu̥⸢su⸣jumi](ひとよみ<一読み>)とする。ナ⸢ナ⸣ユミ[na⸢na⸣jumi](七読み。縦糸560本)、ハ⸢タユミ[hḁ⸢tajumi](二十読み。縦糸1600本)などと織物の{粗密}{ソ|ミツ}を表現する
ユミ [ju⸢mi]嫁。「婦、子之妻為\kaeriten{㆑}婦、和名与女<よめ>」『和名抄』の転訛したもの。ユ⸢ミッふァ[ju⸢miffa](嫁子)ともいう。
ユミザーン [ju⸢miʣaːŋ]嫁同士。
ユミシトゥ [ju⸢miʃi̥tu]嫁姑。嫁と姑。
ユミッふァ [ju⸢miffa]嫁。嫁子。嫁をいとおしんで言うことば。
ユミンザ [ju⸢minʣa]嫁の{奴}{ヤッコ}。嫁を卑しめていうことば。⸣ンザ[⸣nʣa]は、「{奴婢}{ヌ|ヒ}。{下僕}{ゲ|ボク}。召使」の意味であるから、嫁を奴婢と同じようにこき使う者と表現されている。昔は嫁の地位は極めて低く、{姑}{シュウトメ}や{舅}{シュウト}に{酷使}{コク|シ}されたという。
ユム [ju⸢mu]接頭{悪罵}{アク|バ}、嫌悪の意を表す。{口汚}{クチ|キタナ}く{罵}{ノノシ}ること。{1}形容詞を修飾して{悪罵}{アク|バ}、{嫌悪}{ケン|オ}の意を強調する。「{嫌}{イヤ}な~。憎い~。憎たらしい。」の意。
ユム [ju⸢mu]接頭{2}名詞を修飾して、最悪のものを表す。
ユムカサマサーン [ju⸢mukasama⸣saːŋ]糞うるさい。{酷}{ヒド}くやかまし<喧し>い。
ユムカタチ [ju⸢mukata⸣ʧi]憎たらしい姿。嫌な姿格好。
ユムクンゾー [ju⸢mukun⸣ʣoː]腹立ち紛れに怒ること、またその人。見さかいなく立腹すること、またその人。ヤ⸢ナクンゾー[ja⸢nakunʣoː](怒り狂うこと。腹立ち紛れに怒ること)と同じ。
ユムジラー [ju⸢mu⸣ʤiraː]憎たらしい{面}{ツラ}。見たくない嫌な顔。
ユムニッターン [ju⸢munit⸣taːŋ]憎たらしい。{糞憎}{クソ|ニク}らしい。あまりにも憎らしい。
ユムユムトゥ [ju⸢mujumu⸣tu]{1}すごすごと。
ユムユムトゥ [ju⸢mujumu⸣tu]{2}むざむざと。目前に確認していながら、どうにもならない、もどかしいさま。みすみす(見す見す)。
ユムン [⸣jumuŋ]他動{1}読む。「~右近に言葉読ませて~」『源氏物語 東屋』。「Yomi,u,ôda.ヨミ、ム、ゥダ(読み、む、うだ)。また、数える」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ユムン [⸣jumuŋ]他動{2}数える。「~幾夜經と余美都追<ヨミツツ>妹は~。万、4072」の転訛したもの。
ユムン [⸣jumuŋ]他動{3}しゃべる。口論する。
ユライ [⸣jurai]集まり。会合。集会。村の集会。「寄り合い」の転訛したもの。
ユライ オールン [⸣jurai ⸢ʔoː⸣ruŋ]お集まりになる。
ユライズ [ju⸢raiʣu]集会所。「寄合所」
ユライズ [ju⸢rai⸣ʣu]集会所。
ユラシ [ju⸢raʃi]ふるい(篩)。直径約40センチ、深さ約4センチの竹製の荒目の篩。ピ⸢キウシ[pi̥⸢kiʔuʃi]({碾}{ヒ}き臼。{籾摺}{モミ|ス}り臼)で籾摺りをして玄米にするが、{籾}{モミ}と玄米を{篩}{フル}い分けるのに用いる農具。小麦粉や米粉を篩うのに用いるのは、⸣シノー[⸣ʃinoː](篩)という。
ユラシヌ ミー [ju⸢raʃinu⸣ miː]篩いの目(穴)。篩いの格子状の目。
ユラスン [ju⸢ra⸣suŋ]他動許す。罪科を{赦免}{シャ|メン}する。許可する。若年層はユ⸢ル⸣スン[ju⸢ru⸣suŋ](許す)という。
ユラスン [ju⸢rasuŋ]他動{1}ふるう(篩う)。
ユラスン [ju⸢rasuŋ]他動{2}ゆすぶる。揺さぶる。
ユリー [⸣juriː]{1}許可。許し。
ユリー [⸣juriː]{2}休暇をとること。
ユリーユリー [juriː⸢juriː]ゆっくり。急がずに。ゆるゆる。ゆるりと。くつろいで。ABCABC型の重言。「Yururito.ユルリト(ゆるりと)副詞 ゆったりと、または、気ままに.例、Yururito gozare.(ゆるりとござれ)気楽にして居なさい」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ユリットゥ [ju⸢rittu]ゆるりと。ゆっくりと。ゆったりと。
ユルーユルーシ [ju⸢ruːjuruː⸣ʃi]ゆるく(緩く)。緩めて。緩くして。弱めて。締め方が足りず、ゆるゆるして。「釈、トク、ユルス、クツロク、ユルケタリ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
ユルクビ [ju⸢ru⸣kubi]喜び。嬉しく思うこと。慶事。
ユルクブン [ju⸢ru⸣kubuŋ]自動喜ぶ。「{蟋蟀}{シツ|シュツ}の待歓<マチヨロコブル>~。万、2264」『国語音韻史の研究』の転訛したもの。
ユルシ [ju⸢ru⸣ʃi]許可。許し。恕し。
ユルスン [ju⸢ru⸣suŋ]他動許す。罪科を赦免する。許可する。老年層は、ユ⸢ラ⸣スン[ju⸢ra⸣suŋ](許す)という。
ユルミルン [ju⸢rumi⸣ruŋ]他動緩める。引き締めた力をゆるやかにする。
ユルムン [ju⸢ru⸣muŋ]自動緩む。しまる力が弱くなる。「慢、由流比弖<ゆるひて>」『類聚名義抄』、「~恋すれば吾が帯緩<ユルブ>~。万、3262」の転訛したもの。
ユレー [ju⸢reː]屋号。寄合三戸氏宅。
ユレーヌ スクレザーテー [ju⸢reːnu⸣ su̥⸢ku⸣reʣaːteː]屋号。寄合博氏宅。
ユレーヌ ハツォーザーテー [ju⸢reːnu⸣ hḁ⸢ʦoːʣaːteː]屋号。寄合初男氏宅。
ユレーヌ マーサザーテー [ju⸢reːnu maː⸣saʣaːteː]屋号。寄合常夫氏宅。
ユン [⸣juŋ]弓。
ユン [⸣juŋ](植)ユリ(百合)。テッポーユリ。
ユン [⸢juŋ]助動~であります(丁寧表現<目上に>)。⸢ヤン[⸢jaŋ](~である<同輩、目下に>)と同じ意味の第二終止形。待遇表現に差異がある。⸢ヤン[⸢jaŋ](である)の連用形ヤリ[ja⸢ri]に⸢ウン[uŋ](をり)が下接して [jari] + [uŋ] → [jarjuŋ] → [jajuŋ] → [juŋ] と変化したものであろう。
ユン [⸣juŋ]係助~をも。~も。本来格助詞である⸢ユ[⸢ju](を)が係助詞⸢ン[ŋ](も)に上接することによって強調表現となり、格助詞の意味機能が希薄になって失われ、係助詞化したもの。
ユングトゥ [⸢juŋgutu]古歌謡の形態の一つ。豊年予祝の物語歌謡である「伊武田ユングトゥ」、機織の苦しい作業過程を歌いこんだ労働歌謡である⸢シナンナギヌユングトゥ」などがある。⸢ユングトゥ[⸢juŋgutu]は、よごと(寿詞・吉言)、「巨勢大臣をして賀<ヨコト>奉らしめて曰く」『日本書紀 白雉元年二月』の転訛したもの。
ユンタ [⸢jun⸣ta]八重山民謡の形態の一つ。三線楽器による無伴奏の労働歌。農業生活を中心とした叙事的歌謡。「パトゥマブナピトゥユンタ」が伝わっている。
ユンダ [⸣junda]接助~ので。~だから。~故に。丁寧表現。老年層の言葉。若年層は⸣ンダ[⸣nda](~ので。<ぞんざいな表現>)ともいう。活用語の連体形に下接して、原因、理由を表す。
ユンタク [⸢jun⸣taku]おしゃべり(お喋り)。喋りまくること。
ユンタクカンタク [⸢jun⸣takukantaku]{酷}{ヒド}くしゃべること。喋り{捲}{マク}ること。ABCDEBCD型の重言。
ユンチュ [⸢junʧu]ユンチュ(与人)。琉球国時代の宮古、八重山の政庁の役職名。カシラ(頭)織の下の役職。⸢シュリウフヤク[⸢ʃuriʔuɸujaku](首里大屋子)の次の位。各座(⸣ザー{SqBr}⸣ʣaː{/SqBr})の主任で、その担当事務の責任者。村番所の主任で行政事務の責任者。
ユンツァースン [⸢junʦaː⸣suŋ]他動喋り捲る。喋り散らかす。苦情を言いまくる。「読み散らす」の義。
ユンナーリ [⸢junnaː⸣ri]弓なり(弓形)。弦を張った弓のような形。ゆみがた。⸢ユンナー⸣ル[⸢junnaː⸣ru](弓なり)ともいう。
ユンマールン [⸢jummaː⸣ruŋ]他動いろいろと理由をつけて断る。{婉曲}{エン|キョク}に断る。「読み<弁解し>回る」の義。{直截}{チョク|セツ}に断るのでなく、いろいろと理由付けをして遠回しに断る意。
ユンマールン [⸢jummaː⸣ruŋ]自動弓なりに曲がる。弓なりに<弓形に>そる<反る>。
ユンマカスン [⸢jummaka⸣suŋ]他動言い負かす。説き伏せる。{折伏}{セツ|フク}する。「読み負かす」の融合変化したもの。