鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
アサ [⸣asa]朝。複合語の語基として用いられ、単独用法はない。普通は、シ⸢トゥム⸣ティ[ʃi̥⸢tumu⸣ti](つとめて。「暾、日初出時也、明也、豆止女天<つとめて>」『新鮮字鏡』)という。ア⸢サパナ[ʔa⸢sapana](早朝。「朝端」の義)、ア⸢サ⸣ボン[ʔa⸢sa⸣boŋ](朝ご飯)、ア⸢サカイ[ʔa⸢sakai](朝影)、ア⸢サ⸣カイ[ʔa⸢sa⸣kai](朝粥)、ア⸢サ⸣キ[ʔa⸢sa⸣ki](朝餉。「朝食、アサケ」『鰻頭屋本節用集』)、ア⸢サ⸣ドゥリ[ʔa⸢sa⸣duri](朝凪)、ア⸢サ⸣ニビ[ʔa⸢sa⸣nibi](朝寝坊)等、複合語の語基
アザ [⸣ʔaʣa]畦。畦道。側。畑を仕切った境界。この部分に豆を植えたり、砂糖きびを植えたりした。
アザ [ʔa⸢ʣa]字。町村内の下位の行政単位、区画。大字、小字がある。鳩間島は一つの字に属する。
アザ [ʔa⸢ʣa]ほくろ(黒子)。
アザーラスン [ʔa⸢ʣaːra⸣suŋ]他動もつれ(縺れ)させる。まつわりつかせる。からます。からみ(絡み)合わせる。ア⸢ザー⸣ルン[ʔa⸢ʣaː⸣ruŋ](縺れる)の未然形ア⸢ザーラ[ʔa⸢ʣaːra]に使役の助動詞⸣スン[⸣suŋ](~せる。~させる)が付いた形。
アザーリカザーリ [ʔa⸢ʣaː⸣rikaʣaːri]もつれ絡まるさま。
アザーリルン [ʔa⸢ʣaːri⸣ruŋ]自動もつれる(縺れる)。絡み合う。「糾、アザハレリ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
アザールン [ʔa⸢ʣaː⸣ruŋ]自動もつれる(縺れる)。絡み合う。「糾、アザハレリ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
アサーン [ʔa⸢saː⸣ŋ]{1}浅い。「~袖つくばかり淺乎也<アサキヲヤ>~。万、1381」の転訛か。
アサーン [ʔa⸢saː⸣ŋ]{2}色が薄い。
アサイミ [ʔa⸢sa⸣ʔimi]朝みる夢。明け方にみる夢。
アサウキ [ʔa⸢sa⸣ʔuki]早起き。「朝起き」の義。
アサカイ [ʔa⸢sakai]午前中。朝の涼しいうち。「~朝影尓<アサカゲニ>吾が身はなりぬ~。万、2664」の転訛したものか。
アサカイ [ʔa⸢sa⸣kai]朝粥(あさがゆ)。朝食べるお粥。老人が好んで食した。お盆の中日の朝食、⸢ナン⸣カ[⸢naŋ⸣ka](七日。七七忌の法事)、⸣シンズク[⸣ʃinʣuku](四十九日忌)、ユ⸢ノー⸣レー[ju⸢noː⸣reː](一周忌)、⸢サンニン⸣キ[⸢sanniŋ⸣ki](三年忌)、⸢ジュー⸣サンニンキ[⸢ʤuː⸣sanniŋki](十三年忌)、ニジューグ⸢ニンキ[niʤuːgu⸢niŋki](二十五年忌)、サンジュー⸢サンニン⸣キ[sanʤuː⸢sanniŋ⸣ki](三十三年忌)等の朝食には朝粥と味噌汁、ラッキョウの漬物を仏前に供えることが習慣である。
アザカイ [ʔa⸢ʣa⸣kai](動)シャコガイ科の二枚貝の貝殻。しゃこ貝の貝殻。貝殻は扇形で殻長20~30センチメートル。大きいものは、殻長90センチに達するものがあった。殻の縁は波形の鋭い歯状を形成し、殻表も波形をなす。身は、⸣ギラ[⸣gira]といい、美味である。サ⸢ギフチ⸣ル[sa⸢giɸuʧi⸣ru](のぼせに利く食材。利尿薬)として重宝されている。大型の貝は豚の飼葉桶に利用された。
アザカイヤーマ [ʔaʣakai⸢jaː⸣ma]小さなしゃこ貝。⸢ヤー⸣マ[⸢jaː⸣ma](小さいもの)は接尾指小辞。指小辞-マ[-ma](小さいもの)が連母音aiの末尾母音を有する語に付く場合、⸢-ヤー⸣マ[⸢-jaː⸣ma]となる
アザカザー [ʔa⸢ʣa⸣kaʣaː]畦のほう。片隅。隅っこ。
アサカジ [ʔa⸢sakaʤi]朝風。朝の風。
アサカンガイ [ʔa⸢sakaŋgai]浅い考え。浅慮。浅知恵。
アサカンナール [ʔa⸢sakannaː⸣ru]朝雷。朝方に鳴る雷。
アサキ [ʔa⸢sa⸣ki]朝飯。「朝餉」、「あさけ(朝食)」の義。「キ」は「食、クヒモノ・ケ」『類聚名義抄』の転訛したもの。「Asaqe.あさけ(朝食・朝開).卑語」『邦訳日葡辞書』。
アサキジ [ʔa⸢sakiʤi]浅い傷。「浅傷」の義。
アサクビン [ʔa⸢sakubiŋ]祭祀行事の際に酒を入れる錫製の瓶。口部は朝顔の形をしており、底はふかくない。瓶の裾が広がっていて台の部分に接着している。一対で用いられる。
アザケーン [ʔa⸢ʣa⸣keːŋ]清潔である。{清清}{スガ|スガ}しい。清らかである。衛生的である。
アササー [ʔa⸢sasaː]朝茶。朝起きて飲む茶。老人は朝茶を飲むのが習慣であった。シ⸢トゥムティ⸣サー[ʃi̥⸢tumuti⸣saː](朝茶)というのが普通。
アサシ [ʔa⸢sa⸣ʃi](植)樹木の名。和名、モチノキ(『琉球列島植物方言集』)。ア⸢サ⸣シキー[a⸢sa⸣ʃikiː](モチノキ)ともいう。子供は、ム⸢チンキー[mu⸢ʧiŋkiː]ともいう。
アサシガキ [ʔa⸢saʃiga⸣ki]早朝より畑仕事や出漁の準備をすること。先駆け(魁け)て仕事をすること。「朝仕掛け」の義か。夏季には早朝、薄暗いうちから畑に出て働くことを奨励したので、起床と同時に⸢ミーコー⸣ヤー[⸢miːkoː⸣jaː](お目覚め。昨夜のご飯の残り)を軽く食べて、朝露を踏んで野良仕事にでた。午前11時頃には帰宅して、⸣アシスコール[⸣ʔaʃisu̥koːru](昼食の準備)をした。
アサシュー [ʔa⸢sa⸣ʃuː]朝露。
アザッカイパラッカイ [ʔa⸢ʣakkaiparak⸣kai]いりみだれるさま。混雑するさま。雑踏するさま。
アザテー [ʔa⸢ʣateː]屋号。東里清光氏宅。⸢ヨー⸣カヤー[⸢joː⸣kajaː](西原松氏宅)の分家と言われている。鳩間島西村の旗頭を保管するトゥ⸢ニムトゥヤー[tu⸢nimutujaː](根家)といわれている。
アサティダ [ʔa⸢satida]朝の太陽。朝の陽光。
アサドーヤユンタ [ʔa⸢sadoː⸣jajunta]安里家(あさどや)ユンタ。竹富島の古謡。
アサトゥリ [ʔa⸢sa⸣turi]朝凪。若年層は、ア⸢サ⸣ドゥリ[ʔa⸢sa⸣duri](朝凪)ともいう。
アサトゥル [ʔa⸢sa⸣turu]早朝畑に出て朝食用の芋を掘ってくること。朝取り。ア⸢サ⸣ピキ[ʔa⸢sa⸣pi̥ki](朝引き)ともいう。嫁がアサトゥルすることを非常に嫌った。
アザナー [ʔa⸢ʣanaː]あだ名。あざな。
アザナーン [ʔa⸢ʣanaː⸣ŋ]物が絡み合っているさま。複雑に{縺}{モツ}れて歩きづらい。ものが絡み合って歩きづらい。「摎、アザナハレリ」『類聚名義抄』が転訛、形容詞化したものか。
アサニビ [ʔa⸢sa⸣nibi]朝寝坊。「朝寝」の義。農家は朝が早いので、嫁が朝寝坊をすると舅や姑に嫌われた。教訓歌の民謡⸢デンサー⸣ブシ[⸢densaː⸣buʃi](デンサー節)では/アサニビショール ミドゥム アサピキショール ミドゥム ウリカラドゥ キワミティ ムンドーヤ クヌミョール デンサー/(朝寝をされる女、朝畑から芋を掘られる女、これからが極めて喧嘩<問答>は始まる)と歌われている。
アサノーリ [ʔa⸢sanoː⸣ri]朝の晴天。朝晴れ。「朝直り」の義。
アサバー [ʔa⸢sabaː]遊び人。働かずに遊んでいる人。怠け者。若年層の言葉。ア⸢サベー[ʔa⸢sabeː](怠け者)と同じ。
アサバスン [ʔa⸢sabasuŋ]他動遊ばす。遊ばせる。遊ぶようにさせる。
アサパナ [ʔa⸢sa⸣pana]早朝。「朝端」の義。
アザバライ [ʔa⸢ʣabarai]嘲笑うこと。嘲笑い。
アザバライ [ʔa⸢ʣa⸣barai]あざ笑い。嘲笑すること。
アザパライ [ʔa⸢ʣa⸣parai]⸢畦払い」の義。畦道の草刈り。田畑の畦の雑草を刈り取ること。
アザバン ユーゾー ナーヌ [ʔa⸢ʣabaŋ juː⸣ʣoː ⸢naː⸣nu]言っても詮無い。言っても無益である。ア⸢ザバン[ʔa⸢ʣabaŋ](言っても)は、ア⸢ズン[ʔa⸢ʣuŋ](言う)の未然形、アザ[ʔaʣa]に仮定条件の接続助詞⸢-バン[⸢-baŋ](~ても)が付いた形。⸢ユー⸣ゾー ⸢ナー⸣ヌ[⸢juː⸣ʣoː ⸢naː⸣nu]は、⸢ユー⸣ゾー[⸢juː⸣ʣoː](養生。病気の手当て)に⸢ナー⸣ヌ[⸢naː⸣nu](無い)が付いた形で、「手の施しようがない。どうにもならない。せんない(詮無い)」の意味
アサビ [ʔa⸢sabi]遊び。
アサビカサビ [ʔa⸢sabikasa⸣bi]遊んでばかりいること。ABCDBC型の重言。カサビ[kasabi](重ね)は強意用法。
アサヒカマブク [ʔa⸢saçikama⸣buku]周囲を食紅で赤く染めた円形のかまぼこ。「朝日かまぼこ」の義。祝儀用のかまぼこ。石垣方言からの借用語。普通は、ア⸢ガカマブク[ʔa⸢gakamabuku](赤かまぼこ)という。法事用には、ッ⸢スカマ⸣ブク[s⸢sukama⸣buku](白かまぼこ)を用いた
アサピキ [ʔa⸢sa⸣pi̥ki]朝になって、朝食用の甘藷を取りに畑へ行くこと。「朝引き」の義。家庭の主婦としてあるまじき行為とされていた。ア⸢サ⸣ニビ[ʔa⸢sa⸣nibi](朝寝)とア⸢サ⸣ピキ[ʔa⸢sa⸣pi̥ki](朝引き、朝取り)は家庭騒動のもとといわれていた。鳩間島で伝承されている教訓歌の⸢デンサー節」の一節に/アサニビ ショール ミドゥム アサピキ ショール ミドゥム ウリカラドゥ キワミティ ムンドーヤ クヌミョール デンサー/(朝寝をする女、朝に朝食用の芋堀りをする女、それから<ぞ>家庭騒動は起きるものだ)とある。
アサビグトゥ [ʔsa⸢bigutu]遊びごと。
アサビシグトゥ [ʔa⸢sabiʃigutu]楽な仕事。簡単な仕事。「遊び仕事」の義。
アサビッサーク [ʔa⸢sabissaːku]遊び仕事。楽な仕事。遊び半分に出来る仕事。
アサビッふァ [ʔa⸢sabiffa]婚前に遊び相手に生ませた子供。「遊び子」の義。
アサビドゥシ [ʔa⸢sabiduʃi]遊び友達。遊び仲間。
アサビナライ [ʔa⸢sabinarai]遊び癖。⸢遊び習い」の義。
アサビパダ [ʔa⸢sabipada]夜遊びを楽しむ年頃。青年時代。青春時代。
アサビバナ [ʔa⸢sabibana]遊び盛り。遊び戯れる時期。
アサビブリ [ʔa⸢sabiburi]遊び惚けること。遊びに夢中になること。「遊び惚れ」の義。子供が日の暮れるのを忘れて遊びに耽っている時にいう。仕事を忘れて遊び耽る者にもいう。また、肉体から遊離したマ⸢ブ⸣ル[ma⸢bu⸣ru](魂)が浮遊している際にもいう。
アサビマーリ [ʔa⸢sabimaːri]遊びまわり。子供が友人の家を訪ねて遊びまわること。若い男女が仕事を疎かにして、異性の家に入り浸りになること。子供の魂は、叱られるのが怖くて肉体に戻ることができず、遊びまわるといわれている。それ故、マ⸢ブ⸣ルクミ[ma⸢bu⸣rukumi](魂籠め)の際は、マ⸢ブ⸣ル(魂)の好物である「水」、「大豆のお汁」を用意して、特に子供が空腹になる夕刻に、マ⸢ブ⸣ルクミ(魂籠め)の祈願をした。家人を始め、祈願する人も、特に優しい声で、マ⸢ブロー⸣マ マ⸢ブロー⸣マと呼んで、ミ⸢ジーン トー⸣フマミヌ ⸣スーン ア⸢リ⸣バ ⸢ダンティ⸣ キー ッ⸢ふァイ⸣ ッ⸢ふァイ[mi⸢ʣiːn toː⸣ɸumaminu suːŋ ʔa⸢ri⸣ba ⸢danti⸣ kiː f⸢fai⸣ f⸢fai](水も大豆のお汁もあるから、早く来てお食べ)と宥めすかすように呼ぶのである
アサビリ [ʔa⸢sa⸣biri]朝の排便。「朝座り」の義。
アサブン [ʔa⸢sabuŋ]自動{1}遊ぶ。「遊行女児、和名宇加礼女、又云阿曾比(あそび)」『和名抄』の転訛したもの。
アサブン [ʔa⸢sabuŋ]自動{2}器具の部分と部分が密着しないで隙間があって動く余裕が生じる。緩む。
アサベー [ʔa⸢sabeː]遊び人。遊蕩児。定職が無くぶらぶら遊び暮らしているもの。老年層の使用語。
アサベーカサベー [ʔa⸢sabeː⸣kasabeː]遊びに耽って。遊び惚けて。
アサボン [ʔa⸢sa⸣boŋ]朝御飯。朝食。御飯を「飯、'om・par(n)i」『海東諸国紀・「語音翻訳」』、「飯、翁班尼」『琉球館訳語』とある。
アサボンジブン [ʔa⸢sa⸣bondʒibuŋ]朝飯時。朝食時分。「朝・飯 翁班尼<ウバニ>」『琉球館訳語』、「おぼのがなし 食事の敬語」『混効験集』、⸢飯om-pa-r(n)i」『語音翻訳』・⸢時分」よりなる複合語。
アサマイリ [ʔa⸢samai⸣ri]朝参り。
アサマシー [ʔa⸢samaʃiː]連体浅ましい。惨めでいやしい。石垣方言からの借用語。
アサマッサン [ʔa⸢samas⸣saŋ]あまりの酷さに呆れかえる。興ざめである。見苦しい。あさましい。
アサマユーマ [ʔa⸢samajuː⸣ma]朝夕。「朝間夕間」の義。
アザミチ [ʔa⸢ʣa⸣miʧi]畦道。細道。
アザムクン [ʔa⸢ʣamu⸣kuŋ]他動騙す。欺く。嘲笑する。
アサムヌ [ʔa⸢sa⸣munu]朝食。
アサヤキ [ʔa⸢sa⸣jaki]朝焼け。標準語からの借用語。
アサユー [ʔa⸢sa⸣juː]朝夕。朝晩。いつも。朝な夕な。
アザライシ [ʔa⸢ʣaraiʃi]ごつごつした石。でこぼこの多い石。
アサラゴー [⸣ʔasaragoː]{1}(動)貝の名。イガイ科。和名、リュウキュウヒバリガイ、ムラサキガイの仲間。明治生まれの老年層は、⸣アサルゴー[⸣ʔasarugoː]ともいう。長さ約4センチ、巾約1,5センチの細長い貝。浅い海の岩礁の上に棲息している。殻は薄くてもろい。ムラサキガイは光沢のある黒紫色を呈している。煮て食する。
アサラゴー [⸣ʔasaragoː]{2}潮干狩り。
アザラスン [ʔa⸢ʣarasuŋ]他動米を搗いて少し糠の出た状態にする。表面をざらざらにする。臼で米搗きをする際に始めはゆっくり、力をいれずに搗く。四、五分経つと糠が出る。この状態になると力強く搗いても米粒は臼から飛び散らない。その状態にすることをいう。「肉習○、魚肉爛也、阿佐礼太利(あざれたり)」『新撰字鏡』、「鯘、アザル」『類聚名義抄』の転訛したものか。
アザラミチ [ʔa⸢ʣaramiʧi]石ころだらけの道。でこぼこの多い道。
アザラン ナカーラ [ʔa⸢ʣaraŋ⸣ nakaːra]言うにことかいて。言えないので。「~と言えないなかで」の義。
アザリルン [ʔa⸢ʣariruŋ]自動米の糠がでる。表面がざらざらになる。絡み合う。「糾、アザハレリ」『類聚名義抄』の転訛したものか。
アザリン [ʔa⸢ʣariŋ]自動言われる。動詞ア⸢ズン[ʔa⸢ʣuŋ](言う)の未然形、ア⸢ザ[ʔa⸢ʣa]に受身・可能の助動詞⸢リン[⸢riŋ](~れる)が付いて形成された派生動詞(受身・可能動詞)。
アサルゴー [⸣ʔasarugoː](動)貝の名。和名、リュウキュウヒバリガイ。ムラサキガイの仲間。若年層は、⸣アサラゴー[⸣ʔasaragoː]ともいう。
アサルン [ʔa⸢sa⸣ruŋ]他動あさる(漁る)。探しまわる。ほじくりまわす。「春の野に安佐留<アサル>{雉}{キジ}の~。万、1446」の転訛したものか。
アザルン [ʔa⸢ʣaruŋ]自動搗臼に米を入れて軽く搗くと糠が出て縺れ合うようになるさま。絡み合う。米と糠がもつれあって飛び散らないようになる。「魚委、魚肉爛也、阿佐礼太利(あざれたり)」『新撰字鏡』の転訛か。
アサングル [ʔa⸢saŋ⸣guru](植)樹木の名。和名、フカノキ。軽くて火力が弱いので薪炭用としては軽視された。下駄を作るのに重用された。
アサングルキー [ʔa⸢saŋ⸣gurukiː]ア⸢サン⸣グル[ʔa⸢saŋ⸣guru](フカノキ)に同じ
アザンタンティン [ʔa⸢ʣan⸣tantiŋ]言わなくても。もちろん。当然。
アサンユサン [⸣ʔasaɲjusaŋ]朝に夕に。朝も夕も。
アシ [⸣ʔaʃi]汗。
アシ [⸣ʔaʃi]昼食。「朝飯(あさ・いひ)」→ 「アシ」のように転訛したものか。⸣アシ[⸣ʔaʃi]は本来「朝食」の意であった。後に、⸢オ・ハン(お飯)」系統の沖縄方言「'om/-pa-r(n)i」(御飯)「語音翻訳」『海東諸国紀』、「飯、翁班尼」『琉球館訳語』、「みおばに おはに 美飯の事なり」『混効験集』が新しく導入されて、時を表す⸣アサ[⸣ʔasa](朝)と結びつき、ア⸢サ⸣ボン[ʔa⸢sa⸣boŋ](朝飯)となり、それが朝食の位置に定まると、古い「アシ」が「昼食」の意味を担うようになって、ア⸢サ⸣ボン(朝食)・アシ(昼食)・⸢ユー⸣ボン(夕食)の一日三食制度が確立したものと考えられる。
アシ [ʔaʃi]{1}足。足の意味での独立用法は限られた場合にのみ用いられる。
アシ [ʔaʃi]{2}背丈。
アシ [ʔaʃi]{3}山麓。
アシ [ʔaʃi]{4}喫水線。
アジ [⸣ʔaʤi]機織の道具。綜棒(あぜ竹ともいう)。経糸の中に入れて糸の乱れを調える道具。布幅より長く平たい竹、木で作った二本の棒
アジ [ʔa⸢ʤi]{1}味。感情。情味。
アジ [ʔa⸢ʤi]{2}含蓄。深い意味。おもしろみ。
アシ⸠ミー [ʔa⸢ʃi⸠miː]そうしてごらん。そうやってみろよ。⸠ミーのアクセントは中低「⸠」、半分だけ下がる。
アシー [⸣ʔaʃiː]嫌だ。とんでもない。誰が聞くものか。糞~ものか。卑語。相手をののしっ(罵っ)て、嫌だと言う時にもちいる(老年層)。
アシゥカイ [⸢ʔasi̥kai]扱い。扱うこと。扱い方。介抱。動詞⸢アシゥカウン[⸢ʔasi̥kauŋ](扱う)の連用形の転成名詞。
アシゥカイグリサン [⸢ʔasi̥kaiguri⸣saŋ]扱いにくい。扱いづらい。操作しにくい。動詞⸢アシカウン[⸢ʔasi̥kauŋ](扱う)の連用形に形容詞グ⸢リ⸣サン[gu⸢ri⸣saŋ](辛い)が下接して形成された派生形容詞。
アシゥカイヤッサン [⸢ʔasi̥kaijas⸣saŋ]扱いやすい。操作しやすい。動詞⸢アシゥカウン[⸢ʔasi̥kauŋ](扱う)の連用形に形容詞⸢ヤッ⸣サン[⸢jas⸣saŋ](易い)が下接して形成された派生形容詞。
アシゥカウン [⸢ʔasï̥kauŋ]他動{1}扱う。操作する。あやつる。
アシゥカウン [⸢ʔasï̥kauŋ]他動{2}あしざまに使う。酷使する。扱き使う。いじめる。「あつかう」の転訛したもの。
アシゥカリムヌ [⸢ʔasï̥kari⸣munu]預かり物。頼まれて保管している物。
アシゥカルン [⸢ʔasï̥⸣karuŋ]他動預かる。
アシウトゥ [ʔa⸢ʃi⸣utu]足音。
アシェー [⸣ʔaʃeː]怒って、「否」と答える際にいうことば。相手を罵倒したり、答えるに値しないもの意をこめて「否」と発することば。
アシェーヒャー [⸣ʔaʃeːçaː]くそ野郎、とんでもない。アシェー[ʔaʃeː](野郎、嫌だ)を強めて言うことば。
アジェーン [ʔa⸢ʤeː⸣ŋ]他動<今>言った。既に言ってある。
アシカカー [⸣ʔaʃikakaː]あせかき(汗掻き)。多汗症。
アシカザ [ʔa⸢ʃi⸣kaʣa]汗のにおい(臭い)。
アジガナシ [ʔaʤiganaʃi]国王様。首里の王様。アジ[ʔaʤi]は「按司」と表記されている。ガナシ[ganaʃi]は接尾辞。文献資料では「加那志」と表記されているが、古辞書では「国王 倭王嗑吶尸<カナシ>」『音韻字海』(周鐘等、1572)とある。
アシカラーン [ʔa⸢ʃikaraː⸣ŋ]足が軽い。足どりが軽い。軽快な足どりである。嬉しいとき、楽しいときの足どりを表す。
アジキシムニ [ʔa⸢ʤikiʃi⸣muni]味も素っ気もない言葉。趣きや潤いのない、理詰めで話す言葉。
アシキルン [⸢ʔaʃi̥ki⸣ruŋ]他動預ける。荷物を預ける。金品を保管させる。
アシクシ [ʔa⸢ʃi⸣ku̥ʃi]足腰。
アシクバーン [ʔa⸢ʃikubaː⸣ŋ]歩くのが下手である。歩くのが頼りない。「足強し」の義。
アジシゥカスン [ʔa⸢ʤisi̥kasuŋ]他動言い聞かせる。理由を話して教え諭す。⸣バーラ シカイ⸢トゥ⸣ ア⸢ジシゥカスン。ワー⸣ ア⸢ジシゥカサンダル⸣ ウ⸢レー⸣ ワ⸢カラ⸣ヌ[⸣baːra si̥kai⸢tu⸣ ʔa⸢ʤisi̥kasuŋ。waː⸣ ʔa⸢ʤisi̥kasandaru⸣ ʔu⸢reː⸣ wa⸢kara⸣nu](私からしかと言い聞かせる<話して教え諭す>。君が言い聞かさない<教え諭さない>から、彼は分らないのだ)。
アジシキ [ʔa⸢ʤi⸣ʃi̥ki]味付け。調味。
アジシキムヌ [ʔa⸢ʤiʃiki⸣munu]調味料。塩、味噌、醤油、酢など。「味付け物」の義。
アジ シキルン [ʔa⸢ʤi⸣ ʃi̥⸢ki⸣ruŋ]言っておく。話しておく。
アシジブン [⸣ʔaʃiʤibuŋ]昼食の時分。昼食の頃合。
アシ スクン [⸣ʔaʃi su̥⸢ku]背が海中に届く。
アジスクン [ʔa⸢ʤisu̥kuŋ]{1}味がよく効く。
アジスクン [ʔa⸢ʤisu̥kuŋ]{2}薬が効く。効能がある。効き目がある。効果がある。
アジ スン [ʔa⸢ʤi suŋ]味わう。味を見る。味見する。「味をする」の義。
アシダイ [ʔa⸢ʃi⸣dai]足の力。
アシダヤー [ʔa⸢ʃi⸣dajaː]{1}足の力。⸢脚力」の義。⸣ダヤー[⸣dajaː]は、⸣タイ[⸣tai](体力。持ち堪える力)が⸣アシ[⸣ʔaʃi](足)に下接して複合語を形成する際に、その頭子音が濁音化したもので、それに、更に接尾語⸣ヤー[⸣jaː](~する者)が下接したもの。⸣タイ[⸣tai]の語源は、「~戀に不勝而<タヘズテ>~。万、738」の転訛したものか。
アシダヤー [ʔa⸢ʃi⸣dajaː]{2}足の力の衰えた者。
アシタンティン [ʔaʃi̥⸢taintiŋ]それでも。そうしても。⸣アイ シ⸢タンティン[⸣ʔai ʃi̥⸢tantiŋ](そう しても)の縮約形。⸢ワー⸣ ウ⸢ヌ⸣ プ⸢スヌ フー⸣コー マ⸢ナマー⸣キ ⸢シー⸣ケーンダ ⸣ウビシ ミ⸢サ⸣ルヨ。アシ⸢タンティン⸣ バー ウ⸢ヌ⸣ プ⸢スヌ ブン⸣ゲー ⸢カイシユーサ⸣ヌ[⸢waː⸣ ʔu⸢nu⸣ pu̥⸢sunu ɸuː⸣koː ma⸢namaː⸣ki ⸢ʃiː⸣keːnda ⸣ʔubiʃi mi⸢sa⸣rujoː。ʔaʃi̥⸢tantim⸣ baː ʔu⸢nu⸣ pu̥⸢sunu buŋ⸣geː ⸢kaiʃijuːsa⸣nu](君はその人への奉公は今までしてきたのだから、それで十分だ<いい>よ。それでも私はその人の恩義は返すことが出来ない)
アシツァ [ʔa⸢ʃi⸣ʦa]下駄。「屐、アシダ」『類聚名義抄』の転訛したもの。「みやしぢや」『混効験集』。
アジッカールン [ʔa⸢ʤikkaː⸣ruŋ]自動交差する。からまる。
アシッサーン [ʔa⸢ʃissaː⸣ŋ]汗臭い。
アシッスル [ʔa⸢ʃissu⸣ru]汗拭き。手ぬぐい。
アシティ [ʔaʃi̥⸢ti]そして。⸣アイ シ⸢ティ[⸣ʔai ʃi̥⸢ti](そうして。そうやって)の約言。
アシトゥ [⸢ʔaʃi⸣tu]あさって。明後日。
アジトゥースン [ʔa⸢ʤituːsuŋ]他動言い通す。どこまでも言い張る。最後まで言い続ける。
アシトゥヌ ユー [⸢ʔaʃitu⸣nu ⸣juː]あさっての夜。明後日の夜。
アシドゥミ [ʔa⸢ʃi⸣dumi]足止め。禁足。
アシヌ パダマールン [ʔa⸢ʃi⸣nu pa⸢damaː⸣ruŋ]汗ばむ。しっとりと汗が出る。汗が全身に滲み出る。パ⸢ダマー⸣ルンは「肌まわる」の義。
アシバ [ʔa⸢ʃi⸣ba]そうしなさいよ。⸣アイ ⸢シー⸣バ[⸣ʔai ⸢ʃiː⸣ba](そうしなさいよ)の縮まった形。ア⸢スン[ʔa⸢suŋ](そうする)参照。
アジパジミルン [ʔa⸢ʤipaʤimiruŋ]他動言い始める。意見を言い始める。ア⸢ジパジムン[ʔa⸢ʤipaʤimuŋ]ともいう。
アシパヤーン [ʔa⸢ʃipajaː⸣ŋ]歩くのが早い。「足早い」の義。ア⸢シフコー⸣ン[ʔa⸢ʃiɸu̥koːŋ](足が遅い)の対義語。
アシパヤミ [ʔa⸢ʃipaja⸣mi]早足で。足を早めて。急いで。
アシパリムヌ [ʔa⸢ʃipari⸣munu]汗かき。よく汗をかく人。「汗走り者」の義。目下の者に対していう。⸣アシパラー[⸣ʔaʃiparaː](汗かき)ともいう。
アシ パルン [⸣ʔaʃi paruŋ]汗が流れる。汗が出る。
アシブ [ʔa⸢ʃi⸣bu]おでき。できもの。腫れ物。「Axebo.アセボ(熱沸瘡・汗瘡)あせも、または、水疱」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。小さいのは、ナ⸢チアシブ[na⸢ʧiaʃibu](夏汗疹。夏皮膚にできる粟粒ほどの、赤色の小水疱性発疹で、小児に多くできる)という。
アジ フクマスン [ʔa⸢ʤi⸣ ɸu̥⸢kuma⸣suŋ]味を十分にしみ込ませる。
アジ フクムン [ʔa⸢ʤi⸣ ɸu̥⸢ku⸣muŋ]味が十分にしみ込む。味を含む。
アシフコーン [ʔa⸢ʃiɸu̥koː⸣ŋ]足が遅い。歩く動作がのろい。
アシフン [ʔa⸢ʃi⸣ɸuŋ]地団駄。「足踏み」の義。激怒して足を踏み鳴らすこと。
アシフンピサフン [ʔa⸢ʃiɸumpisa⸣ɸuŋ]足を踏み鳴らして激怒するさま。地団駄踏むこと。重言。
アジマー [ʔa⸢ʤi⸣maː]{1}桟を十文字に交差させたもの。豆腐や餅を作るための大豆や糯米を挽く際、桶の上に石臼を載せるのに用いる道具。縦横約5センチ、長さ約50センチ(桶の直径に合わせた長さ)の桟を、その中央の切込みに填め込んで交叉させて用いる道具。
アジマー [ʔa⸢ʤi⸣maː]{2}交差点。十字路。
アジマーン [ʔa⸢ʤimaː⸣ŋ]甘い。「味甘<うま>し」の義。
アジマキ [ʔa⸢ʤima⸣ki]たすき(襷)。着物の袖をたくし上げるために肩から脇にかけて結ぶひも。ス⸢ディン⸣ガラ[su⸢diŋ⸣gara](襷。袖からげ)ともいう。
アジミー [ʔa⸢ʤimiː]味見。味の加減をすること。
アシミジ [ʔa⸢ʃi⸣miʤi]汗。汗水。
アシムトゥ [ʔa⸢ʃimu⸣tu]足元。立っている足の下。身の回り。標準語から新しく借用された語。
アシユーチムヌ [ʔa⸢ʃijuː⸣ʧimunu]四つ足動物。「足四つもの」の義。牛、馬、豚、山羊などの動物。猪などの獣害を防ぐ呪文などで、直接に獣の名を言わずに間接的に表現するときに「アシユチャ」といって用いられる。
アジルン [ʔa⸢ʤi⸣ruŋ]他動十字に交差させる。交差する。絡まる。
アジンカシン ナーヌ [ʔa⸢ʤiŋ⸣kaʃin ⸢naː⸣nu]味も素っ気もない。
アジングリサン [ʔa⸢ʤiŋguri⸣saŋ]意見を言いにくい。言いづらい。忠告しづらい。言うことが困難である。若年層は、ア⸢ジグリ⸣サン[ʔa⸢ʤiguri⸣saŋ](言いづらい)ともいう。
アスカー [ʔa⸢su⸣kaː]そしたら。すると。それなら。ぞんざいな表現。前件と後件を繋ぐ接続詞。
アスカー [ʔa⸢su⸣kaː]そうしたら。そうすると(順接)。⸣アイ ⸢スー⸣カー[⸣ʔai ⸢suː⸣kaː](そうしたら)の縮約形。
アズカー [ʔa⸢ʣu⸣kaː]いわば(言わば)。言うならば。例えば。ア⸢ズン[ʔa⸢ʣuŋ](言う)の連体形に仮定の接続助詞⸣-カー[⸣-kaː](~たら。~なら)の付いた形。
アズ クトゥ [ʔa⸢ʣu⸣ ku̥tu]言うこと。
アスクン [⸢ʔasu̥⸣kuŋ]他動預ける。「あづく(預く)下二段」の四段化したもの。「Azzuqe,uru,eta.アヅケ,クル,ケタ(預け,くる,けた)保管を人に委託する」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
アスコーアスコーシ [ʔasu̥⸢koːʔasu̥koː⸣ʃi]ほやほや熱々で。出来立ての湯気を立てたさまで。熱々と。ぬくぬく(温温)と。
アズシジンドゥ ヤルカー [ʔa⸢ʣu⸣ʃiʤindu ja⸢ru⸣kaː]言うならば。言うとおりなら。「言う筋(訳、道理)でもあれば」の義。
アズトゥール [ʔa⸢ʣutuː⸣ru]言う通りに。
アズニ [⸣ʔaʣuni]言うように。
アスヌ [ʔa⸢sunu]接続だが。しかし。けれども。そうではあるが。ア⸢スン[ʔa⸢suŋ](そうする)の連体形に逆接の接続助詞ヌ[nu](が、だが)が付いたもの。
アズムティ [ʔa⸢ʣu⸣muti]言うだけ。言う分。
アスン [ʔa⸢suŋ]自動そうする。⸣アイ ⸢スン[⸣ʔai ⸢suŋ](そうする)の縮まった形。副詞の⸣アイ[⸣ʔai](そう。そのように)に、⸢スン[⸢suŋ](する)が下接して、そ形成された動詞。「そのような行為を行う」の意味を表す。
アズン [ʔa⸢ʣuŋ]他動言う。話す。「叱る」の意味はない。
アスンケン [ʔa⸢suŋ⸣keŋ]すると。そうすると。そのとき。⸣キノー パ⸢マ⸣ナーティ パ⸢モー⸣ル カキ⸢ベー⸣タツォー。ア⸢スン⸣ケン イ⸢ノンヌ⸣ ミーラ ヤ⸢メーマヌ⸣ ンジケータツォー[⸣kinoː pa⸢ma⸣naːti pa⸢moː⸣ru kḁki⸢beː⸣taʦoː。ʔa⸢suŋkeŋ ʔi⸢nonnu⸣ miːra ja⸢meːmanu⸣ ʔnʤikeːtaʦoː](昨日、浜で蛤を掻いていたそうだ。すると砂の中から小さな亀が出てきたそうだ)
アスンドゥ [ʔa⸢sundu]だが。であるが。逆接の接続詞。⸣アイ・⸢スンドゥ[⸣ʔai-⸢sundu](そう・するが)の縮略形。カ⸢リンヌン⸣ シ⸢ミルン⸣ツォー。
アゾールン [ʔa⸢ʣoː⸣ruŋ]他動おっしゃる(仰る)。ア⸢ズン[ʔa⸢ʣuŋ](言う)の尊敬語。ア⸢ズン[ʔa⸢ʣuŋ](言う)の連用形、ア⸢ジ[ʔaʤi]に、「Vouaxi,su.ヲワシ,ス(おはし)~高貴な方が・・・にいらっしゃる」『邦訳日葡辞書』の転訛した⸢オー⸣ルン[⸢ʔoː⸣ruŋ](いらっしゃる)が付いて転訛した尊敬動詞。
アタ- [ʔa⸢ta-]接頭突然。にわか。急な。
アタ [ʔa⸢ta]接頭急な。だしぬけの。突然の。名詞や動詞の連用形に上接して予期しない急な動作や突然に起きる状態を表す接頭語。ア⸢タアミ[ʔa⸢taʔami](にわか雨)、ア⸢タカジ[ʔa⸢takaʤi](俄か台風)、ア⸢タナキ[ʔa⸢tanaki](突然に泣き出すこと)、ア⸢タバライ[ʔa⸢tabarai](突然に笑うこと)など、ア⸢タヤン[ʔa⸢tajaŋ](急病)など
アダ [ʔa⸢da]あだ(徒)。いたずら。無駄。徒労。「Adana.アダナ.または、アダノ(徒な,または,徒の)ちょうっとした、空しい、無益な」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
アダーシカダーシ [ʔa⸢daːʃikadaːʃi]怒鳴りつけること。ア⸢ダースン[ʔa⸢daːsuŋ](どやしつける、強く叱る)の重言。ABCDEBCD型。
アダースン [ʔa⸢daːsuŋ]他動どやす。怒鳴りつける。大声で叱りつける。
アターチマ [ʔa⸢taːʧima]暫時。しばらく。ちょっと。いっとき。
アタアミ [ʔa⸢taʔami]にわか雨。驟雨。
アタウダラキ [ʔa⸢taʔudaraki]急に驚くこと。びっくり仰天すること。
アダウチ [ʔa⸢dauʧi]仇討ち。村芝居などで演じられる仇討ちもの。
アタウヤキ [ʔa⸢taujaki]にわか分限者。成金。
アダカ [ʔa⸢da⸣ka]あれほどの高さ。
アタカジ [ʔa⸢takaʤi]急に吹きだす台風。
アタキシ [ʔa⸢takiʃi]断崖。絶壁。切岸。「急に切れているもの」の義。⸢キン⸣タ[⸢kin⸣ta](断崖)、キ⸢ダバナ[ki⸢dabana](断崖、絶壁の先端)ともいう。
アタシニ [ʔa⸢taʃini]急死。頓死。
アタジンブン [ʔa⸢taʤimbuŋ]気転。機知。とっさの場合の分別。「咄嗟の存分(気転)」の義。
アタスクリ [ʔa⸢tasu̥kuri]にわか作り。急ごしらえ。
アタタクマ [ʔa⸢tatakuma]急な才知。頓知。
アタナキ [ʔa⸢tanaki]突然に泣き出すこと。
アダナシ [ʔa⸢dana⸣ʃi]アダン(阿檀)の気根。「アザニヌ サーラ[ʔaʣaninu saːra](刺木の下がっているもの)の略転という説(『八重山語彙』)」がある。
アダナシジナ [ʔa⸢dana⸣ʃiʤina]アダンの気根の繊維で綯った縄<綱>。
アダナシユール [ʔa⸢dana⸣ʃijuːru]アダン(阿檀)の気根の繊維を細かく裂いて綯った細い縄。「アダナシ・{縒}{ヨ}り」の転訛したもの。これで⸢アン⸣スク[⸢ʔan⸣su̥ku](約20センチ立方に編んだ網袋。野外用手提げ。網びく<網魚籠>)。
アダニ [ʔa⸢da⸣ni]アダン(阿檀)の実。若年層はア⸢ダンブラ⸣ヌ ⸣ナル[ʔa⸢dambura⸣nu ⸣naru](アダンの実)ともいう。
アタニチ [ʔa⸢taniʧi]急な発熱。
アタバシキ [ʔa⸢tabaʃi̥ki]ど忘れ。うっかり忘れること。
アタバライ [ʔa⸢tabarai]突然に笑い出すこと。
アタパリ [ʔa⸢tapari]急に駆け出すこと。突然走り出すこと。
アタフイ [ʔa⸢taɸui]雨が急に降るさま。雨が俄かに降ること。にわかあめ<俄雨>。驟雨。
アタヤン [ʔa⸢tajaŋ]急病。
アダラー [ʔada⸢raː]ああ汚い。ああ汚らしい。
アタラサ スン [ʔa⸢tara⸣sa ⸢suŋ]{1}可愛がる。
アタラサ スン [ʔa⸢tara⸣sa ⸢suŋ]{2}大切にする。
アタラサマリ [ʔa⸢tarasamari]人に好かれ、可愛がられるように生まれついた人。
アタラサワレー [ʔa⸢tara⸣sawareː]何と可愛いことよ。
アタラサン [ʔa⸢tara⸣saŋ]{1}可愛い。可憐である。
アタラサン [ʔa⸢tara⸣saŋ]{2}惜しい。もったいない。「あたらし(可惜し)」の義から派生転訛したもの。
アタラシェーマ [ʔa⸢taraʃeː⸣ma]いとし子。かわいい子。愛児。⸢アッタラシェー⸣マ[⸢ʔattaraʃeː⸣ma](愛児)ともいう。
アタラマイ [ʔa⸢tara⸣mai]当たり前。当然、もちろん。
アタリ [ʔa⸢tari]当たること。正解であること。命中すること。正鵠を射ること。
アダリー [ʔada⸢riː]ああ汚い。汚いなあ。相手を軽蔑したり、嫌悪したりする感情を表す。アダ⸢ラー[ʔada⸢raː]に同じ。
アタリクジ [ʔa⸢tarikuʤi]当たり籤。当たった籤。
アタリドゥシ [ʔa⸢tariduʃi]当たり年。農作物の収穫や漁獲の多い年。縁起のよい年。良いことの多い年。
アタリマイ [ʔa⸢tari⸣mai]当たり前。もちろん。当然。若年層の言葉。老年層は、ア⸢タラ⸣マイ[ʔa⸢tara⸣mai](当たり前)という。
アタリョーヤー [ʔa⸢tarjoː⸣jaː]村を支配するお役人様。歌謡語。「目差主<めざししゅ>」の対語(『沖縄古語大辞典』)。担当の上司(歌謡語、琉球王国時代の言語)。「当たり親」の義(『石垣方言辞典』)
アタル [ʔa⸢taru]係り。担当。「当たり」の義。
アタル [ʔa⸢ta⸣ru]副助~ぐらい。~ほど。おおよその程度を表す。
アタル [ʔa⸢ta⸣ru]副助{Exp_1}さらに係助詞⸣-ル[⸣-ru](~ぞ)が下接して限定強意を表す。
アタル [ʔa⸢ta⸣ru]副助{Exp_2}さらに格助詞⸣-ヌ[⸣-nu](~の)が付いて体言化する。
アタル [ʔa⸢ta⸣ru]副助{Exp_3}さらに格助詞⸣-シ[⸣-ʃi](~で)が付いて手段格を表す。
アタル [ʔa⸢ta⸣ru]副助{Exp_4}さらに係助詞⸣-ツァン[⸣-ʦaŋ](~すら、~さえ。~だに)が付いて、最低程度の条件を表す。
アタル [ʔa⸢taru]接尾{1}~に対して。~当たり。
アタル [ʔa⸢taru]接尾{2}~担当。
アタルマカシ [ʔa⸢tarumakaʃi]手当たり次第に。あれこれかまわず。ところかまわず。
アタルン [ʔa⸢taruŋ]自動 {1}当たる。的中する(正鵠を射る)。他人にきつく当たる。
アタルン [ʔa⸢taruŋ]自動{2}照合して確認する。
アタルン [ʔa⸢taruŋ]自動{3}毒気を身に受ける。
アタルン [ʔa⸢taruŋ]自動{4}相応しい。似合う。
アタルン [ʔa⸢taruŋ]自動{5}配分を受ける。⸢ピーチ⸣ナー ア⸢タルン[⸢piːʧi⸣naː ʔa⸢taruŋ](一個ずつ当たる)  
アタルン [ʔa⸢taruŋ]自動他人の言葉が身に応える。他人の発言に内心忸怩たる<恥じ入る>ものを覚える。
アダンパー [ʔa⸢dam⸣paː]アダンの葉。
アダンパーサバ [ʔa⸢dam⸣paːsaba]アダン葉で作った草履。アダン葉の刺を取り除き、幅約一センチに裂いて陰干し乾燥して草履に編んで作る。若年層は、ア⸢ダン⸣パーゾーリ[ʔa⸢dam⸣paːʣoːri](阿檀葉草履)という。
アダンパームス [ʔa⸢dam⸣paːmusu]アダン葉で作った蓆。アダン葉の中央と両側の刺を取り除いて乾燥し、⸣ムス フ⸢ミ⸣ヤマ[⸣musu ɸu⸢mi⸣jama](蓆編み機)で編んだもの。編み目の粗い筵であるから座敷用には用いず、夏の暑い時期に庭先や縁側に敷いて、その上に寝たり座ったりするのに用いた。
アダンブラ [ʔa⸢dam⸣bura](植)和名、タコノキ(蛸の木)。アダン(阿檀)。「清人は阿坦尼と記したり。・・アンザ・ギ(刺木)の転。海浜瘠土にもよく成長繁茂し、(『八重山語彙』)」との説がある。海岸に自生していて防風林、防砂林の機能を果たしている。葉には鋭い刺があり、それを除去してア⸢ダン⸣パーサバ[ʔa⸢dam⸣paːsaba](アダン葉草履)、ア⸢ダン⸣パームス[ʔa⸢dam⸣paːmusu](アダン葉筵)を編んだ。
アダンブラヌ ナル [ʔa⸢dambura⸣nu ⸣naru]アダン(阿檀)の実。直径約15センチ、長さ約25センチの楕円形パインナップルの実に似た果実。実の中心部果肉の周り全体に約3センチ五角形の角果が付いている。8~9月に黄赤色に熟し芳香を発する。⸣マコヤ[⸣makoja](ヤシガニ)の好物。旧暦のお盆には、ム⸢ルムル[mu⸢rumuru](盛物供物)として仏壇に供えた。
アダンブラヌ フキ [ʔa⸢dambura⸣nu ⸣ɸu̥ki]あだん(阿檀)の茎。あだんの芽。石垣島では、阿檀の茎を⸣ユディティ[⸣juditi](茹でて)、精進料理の食材として利用されていたが、鳩間島では食しなかった。
アダンブラヤマ [ʔa⸢dam⸣burajama]阿檀の林。阿檀の群生しているところ。海岸にはアダン(阿檀)が密生して防風林、防潮林の機能を果たした。
アチーアチーシ [ʔa⸢ʧiːʔaʧiː⸣ʃi]熱く。熱々と。蒸かしたての熱いさま。ピー⸢リピーリ⸣シ[piː⸢ripiːri⸣ʃi](冷え冷えと。冷たく)の対義語。熱そうに。更に強調する際は、アチー⸢アチー⸣シ[ʔaʧiː⸢ʔaʧiː⸣ʃi]とアクセントを後方へずらす。
アチーアチーシ [ʔa⸢ʧiːʔaʧiː⸣ʃi]厚く。肉厚に。厚々と。ピ⸢シーピシー⸣シ[pi̥⸢ʃiːpiʃiː⸣ʃi](薄く)の対義語。
アチーアチーシ [ʔaʧiː⸢ʔaʧiː⸣ʃi]非常に親しく。非常に親しそうに。非常に仲睦まじく。ABCABCD型の重言。⸢篤し」の転訛したものか。「支離、アヅシ」『類聚名義抄』と関係ある語か。
アチイー [ʔa⸢ʧi⸣ʔiː]熱いご飯。
アチウン [ʔa⸢ʧi⸣uŋ]蒸かしたての熱いサツマイモ。
アチェーン [⸣ʔaʧeːŋ]熱くなった。温くなった。⸣アツン[⸣ʔaʦuŋ](熱くなる。温まる)の完了形。
アチカビ [ʔa⸢ʧikabi]厚紙。
アチキ [ʔa⸢ʧi⸣ki]湯気。
アチサー [ʔa⸢ʧi⸣saː]熱いお茶。茶をたてて湯気の立つ、ほやほやのお茶。心のこもった接待のお茶。
アチチ [ʔa⸢ʧiʧi]熱い!!熱いものに触れた時に発することば。熱いものに触れた際の痛さを表すことば。
アチッサールン [ʔa⸢ʧissaː⸣ruŋ]自動ほろ酔い加減になる。酒がまわって上機嫌になる。
アチッス [ʔa⸢ʧi⸣ssu]排泄されたばかりの熱い糞便。
アチバイ [ʔa⸢ʧi⸣bai]熱い灰。温灰(ぬくばい)。「あつばい」の転訛したもの。
アチビー [ʔa⸢ʧi⸣biː]ご飯とお粥の中間程度の柔らかさに炊いた粥。固めの粥。
アチビーカイ [ʔa⸢ʧi⸣biːkai]やや硬めのお粥。ア⸢チ⸣ビー[ʔa⸢ʧi⸣biː](硬めの粥)に同じ。歯のない老人達が好んで食した。病み上がりの人もア⸢チ⸣ビーカイを食べながら、徐々に⸢コー⸣イー[⸢koː⸣ʔiː](普通のご飯。「強飯」の転訛)へと移した。
アチビライ [ʔa⸢ʧibirai]親交。深交。
アチブッター [ʔa⸢ʧibuttaː]厚ぼったいもの。
アチミ [ʔa⸢ʧimi]厚み。厚さ<厚い薄いの程度>。
アチムヌ [ʔa⸢ʧi⸣munu]熱いもの。炊き立ての熱い御飯、食物。
アチャー [⸣ʔaʧaː]父。名称、呼称ともに用いる。
アチユー [ʔa⸢ʧi⸣juː]熱い湯。熱湯。
アチライ [ʔa⸢ʧi⸣rai]誂え。注文。
アチライルン [ʔa⸢ʧirai⸣ruŋ]他動誂える。発注する。「嘱・勧、アツラフ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
アチラウン [ʔa⸢ʧi⸣rauŋ]他動注文する。注文して作らせる。あつらえる(誂える)。「嘱・勧、アツラフ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
アチラスン [ʔa⸢ʧira⸣suŋ]他動温める。冷めたお汁などを温める。賑やかにする。お汁を温める場合はア⸢ツァ⸣スンとも言う。
アチルン [ʔa⸢ʧi⸣ruŋ]自動熱くなる。お汁等が温まる。
アッ [ʔaʔ]あッ!!突然の事態に応じて発する驚きの声。
アツァ [⸣ʔaʦa]明日。「~安志多<アシタ>には門に出で立ち~。万、4209」の転訛したもの。
アツァー [⸣ʔaʦaː]暑さ。熱気。
アツァーン [ʔa⸢ʦaː⸣ŋ]熱い。イ⸢ツァー⸣ン[ʔi⸢ʦaː⸣ŋ](熱い。痛い)ともいう。
アツァアシトゥ [ʔaʦa⸢ʔaʃi̥⸣tu]明日、明後日。この一両日。
アツァキクッツァーン [ʔa⸢ʦakikut⸣ʦaːŋ]暑苦しい。
アツァ シトゥムティ [⸣ʔaʦa ʃi̥⸢tumu⸣ti]明日の朝。明朝。
アツァスン [ʔa⸢ʦa⸣suŋ]他動{1}お汁を温める。熱くする。
アツァスン [ʔa⸢ʦa⸣suŋ]他動{2}賑やかにする。
アツァヌ ユー [ʔa⸢ʦa⸣nu ⸣juː]明日の夜。明晩。
アツァマルン [ʔa⸢ʦa⸣maruŋ]自動集まる。むらがる。
アツァミカツァミ [ʔa⸢ʦa⸣mikaʦami]掻き集めて。寄せ集めて。ABCDBC型の重言。
アツァミルン [ʔa⸢ʦami⸣ruŋ]他動集める。
アツァムイサン [⸣ʔaʦamuisaŋ]暑がりである。普通以上に暑さを感じがちである。「暑さ・思いさあり」の義で、その融合変化した形。⸢ムイ⸣サン[⸢mui⸣saŋ](~がり)は接尾語。
アツァムン [ʔa⸢ʦa⸣muŋ]他動集める。「あつむ(下二段)」の四段化したもの。ア⸢ツァミ⸣ルン[ʔa⸢ʦami⸣ruŋ]と同じ。
アツァユネン [⸣ʔaʦajuneŋ]明日の夕方。みょうせき(明夕)。「明日のゆうべ」の義。
アツァン [⸣ʔaʦaŋ]暑い。
アツァン [ʔa⸢ʦa⸣ŋ]{1}厚い。
アツァン [ʔa⸢ʦa⸣ŋ]{2}篤い。親しい。
アツァン ギサン [⸣ʔaʦaŋ ⸣gisaŋ]暑そうだ。
アック [⸣ʔakku]悪口。他人を悪し様にいうこと。
アックー [⸢ʔakkuː]悪口、悪罵。他人を罵り、あしざまにいうこと。沖縄本島糸満方言からの借用語か。普通は、ヤ⸢ナ⸣グチ ⸢ゴー⸣グチ[ja⸢na⸣guʧi ⸢goː⸣guʧi](悪口、罵詈雑言)という。
アックームックー [⸢ʔakkuːmukkuː]悪口。罵詈雑言。⸢アッコームッコー[⸢ʔakkoːmukkoː](悪口、罵詈雑言)ともいう。
アックームックー [⸣ʔakkuːmukkuː]悪口雑言。罵詈雑言。ABCDEBCD型の重言。
アッタ ターナ [⸢ʔat⸣ta ⸢taː⸣na]もとのままに。もとの通りに。もとあった通りに。ヨー⸢ヨー キー⸣ シ⸢キ⸣リ⸢ダー⸣ ク⸢レー アッ⸣タ ⸢ター⸣ナ シ⸢キ⸣リ。⸢ウーカ⸣シェー ナ⸢ラ⸣ヌ[joː⸢joː kiː⸣ ʃi̥⸢ki⸣ri ku⸢reː ⸢ʔat⸣ta ⸢taː⸣na ʃi̥⸢ki⸣ri。⸢ʔuːka⸣ʃeː na⸢ra⸣nu](よくよく気をつけろよ。これはもと在ったとおりにしておきなさい。動かしてはならないよ)
アッタニ [⸢ʔat⸣tani]急に。不意に。にわかに。だしぬけに。突然に。
アッタラ [⸢ʔat⸣tara]あたら。惜しくも。もったいないことに。
アッタラシェーマ [ʔattara⸢ʃeː⸣ma]可愛い子。いとし子。
アッタルムヌ [⸢ʔat⸣tarumunu]大切なもの。大事なもの。「可惜(あたら)もの」から転訛したもの。
アッパ [⸣ʔappa]祖母。お祖母さん。親族名称、呼称。他家の祖母に対してもアッパ[⸣ʔappa]という。
アッパンガナー [⸢ʔappaŋ⸣ganaː]わがままな女。したい放題に振舞う女。放埒な女。自暴自棄。
アッピャー [⸢ʔappjaː]あれっ。なんとまあ。意外なことに驚いて発することば。
アップアップ [⸢ʔappuʔap⸣pu]擬態語。溺れてもがき苦しむさま。水に溺れて両手両足をばたつかせて苦しむさま。
アツン [⸣ʔaʦuŋ]自動熱くなる。温くなる。ア⸢チ⸣ルン[ʔa⸢ʧi⸣ruŋ](熱くなる)ともいう。
アテー アン [ʔa⸢teː⸣ ʔaŋ]覚えている。意識はある。「当てはある」の転訛したもの。
アテー ナーヌ [ʔa⸢teː naː⸣nu]正気がない。無意識である。気付かない。意識がない。
アテーナーン [ʔa⸢teːnaː⸣ŋ]連・副気付かず。無意識に。覚えず。
アティ [ʔa⸢ti]{1}当て。頼りになるもの。心積もり。予定。
アティ [ʔa⸢ti]{2}消息。
アティ [ʔa⸢ti]{3}補強のためにあてがうもの。
アティ [ʔa⸢ti]{4}宛て。
アティ [ʔa⸢ti]当て木。薪割りの際に用いる当て木。一種の枕木。
アティカールン [ʔa⸢tikaːruŋ]自動予想が変わる。見込みや期待がはずれる。当てが外れる。
アティガキ [ʔa⸢tigaki]あてがき(宛書)。宛名書き。標準語からの借用語の転訛したもの。
アティサキ [ʔa⸢tisaki]あて先。標準語からの借用語の転訛したもの。
アティソー [ʔa⸢ti⸣soː]{1}意識。しょうき(正気)。正常な精神。
アティソー [ʔa⸢ti⸣soː]{2}思慮分別。
アティチガイ [ʔa⸢tiʧigai]見込み違い。当て外れ。「当て違い」の義。目論見が狂う。
アティックナー [ʔa⸢tikkunaː]子供の遊戯。隠されたものを推量して言い当て競争をする遊び。「当てくらべ」の義。
アティナーンムヌ [ʔa⸢tinaːm⸣munu]思慮分別のない者(幼児)。ア⸢ティナシ[ʔa⸢tinaʃi](思慮分別のない幼児)ともいう。
アティナシ [ʔa⸢tinaʃi]無分別なもの。幼稚なもの。善悪の判断のつかないもの。神口、祈願文のことば。「当て無し」の義。
アティ ナルン [ʔa⸢ti⸣ naruŋ]当てになる。頼りになる。信頼できる。
アティパジリ [ʔa⸢tipaʤiri]当て外れ。
アティハマルン [ʔa⸢tihamaraŋ]自動あてはまる(当て嵌まる)。適合する。合う。合致する。うまくはまる。
アティハミルン [ʔa⸢tihamiruŋ]他動あてはめる(当て嵌める)。合致させる。合わせる。老年層は、ア⸢ティパミルン[ʔa⸢tipamiruŋ](当て嵌める)という。
アティブチニ [ʔa⸢tibuʧini]咄嗟(とっさ)に。突然に、出し抜けに。急に。いきなり。
アティルン [ʔa⸢tiruŋ]他動当てる。的中させる。ア⸢トゥン[ʔa⸢tuŋ](当てる。「当つ」<下二>の転訛)ともいう。
アディンガー [ʔa⸢diŋ⸣gaː](植)和名、オキナワウラジロガシ(ヤエヤマガシ)。⸣カシンキー[⸣kaʃiŋkiː](椎の木)ともう。椎の木は西表島に産し、高木で20mに達する。材質は硬く、建築用材、船の櫓や櫂などを作るのに用いる。長さ3cm、径2.5cmの卵状球形の堅果は食用、豚の飼料に適する(『図鑑琉球列島有用樹木誌』)。
アティンガーリン [ʔa⸢tiŋgaːriŋ]自動考えられる。判断できる。見当がつく。
アティンガイ カティンガイ シララヌ [ʔa⸢tiŋgai⸣ ka⸢tiŋ⸣gai ʃi⸢raranu]考えられない。思慮判断が出来ない。見当がつかない。ア⸢ティンガイカティン⸣ガイはABCDEFBCDE型の重言。
アティンガウン [ʔa⸢tiŋgauŋ]他動あてがう(宛がう)。ぴったりと当てる。標準語からの借用語の転訛したものか。
アティングイン ナーヌ [ʔa⸢tiŋguin naː⸣nu]音沙汰がない。音信不通である。
アティンクティン ナーヌ [ʔa⸢tiŋ⸣kutin ⸢naː⸣nu]音沙汰なし。何の消息のない。無関心である。何とも思わない。言いっ放しで責任を取らない。
アティンソーン ナーヌ [ʔa⸢tin⸣soːn ⸢naː⸣nu]正気を失っている。記憶をすっかり失っている。物忘れしている。
アテンマテー [⸣ʔatemmateː]屋号。小浜源助氏宅。⸣アテンマー[⸣ʔatemmaː](源助氏の母親)は、⸣アティ・⸣アンマ[⸣ʔamma](姉さん)→ [ʔateːmmaː] → [⸣ʔatemmaː] と音韻変化したもの。
アトー [⸣ʔatoː]後は。最後には。⸣アトゥ[⸣ʔatu]に係助詞-ヤ[-ja](とりたて、強調)が下接して語末母音が融合変化を起こし、⸣アトー[⸣ʔatoː](後は)となったもの。
アドー [⸣ʔadoː]{1}あれほど遠くへ。あんなに遠くへ。副詞⸣アドゥ[⸣ʔadu](あんなに遠く)に方向の格助詞-へ[-ɸe](方向)が付いて語末母音が融合変化したもの。
アドー [⸣ʔadoː]{2}あれほどの長期間。
アトーキー [⸣ʔatoːkiː]終には。結局は。最後には。「後へきて」の義。
アドーナリ [⸣ʔadoːnari]そんなに長く。あれほどの長期間に。
アドーヌ [ʔa⸢doː⸣nu]連体あんなに遠いところ。
アトーラ [⸣ʔatoːra]後から。⸣アトゥ[ʔatu](後)・⸣カラ[kara](~から)→ [ʔatuhara] → [ʔatuara] → [ʔatoːra] のように音韻変化したもの。
アトゥ [⸣ʔatu]{PoS_1}{1}後。空間的な背後、後方。
アトゥ [⸣ʔatu]{2}後継者。
アトゥ [⸣ʔatu]接頭{PoS_2}後接要素を修飾し、それに「後」の意味を表す。
アトゥ [⸣ʔatu]跡。痕跡。跡形。⸢パン⸣ヌ ⸣ペー[⸢pan⸣nu ⸣peː](人間の足跡)ともいう。
アドゥ [⸣ʔadu]踵(かかと)。
アドゥ [⸣ʔadu]連体あんな(に)遠方。あんな(に)長時間。⸣アドゥ[⸣ʔadu]に格助詞⸣-ラ[⸣-ra](から。ra
アトゥアトゥ [ʔatuʔatu]後々。行く末。将来。
アトゥウイ [⸣ʔatuʔui]後追い。子供が母親の後を追うこと。シ⸢ビウイ[ʃi⸢biui](尻追い、後追い)ともいう。
アトゥウシ [⸣ʔatuʔuʃi]{1}後押し。荷車などを後から押すこと。⸢ウシゥカラシ[⸢ʔusï̥karaʃi](後押し)ともいう。
アトゥウシ [⸣ʔatuʔuʃi]{2}応援。後援。
アトゥカタ [⸣ʔatukḁta]跡形。痕跡。
アトゥカタジキ [⸣ʔatukataʤiki]後片付け。
アトゥサキ [⸣ʔatusaki]後先。前後。前後の事情。
アトゥザン [⸣ʔatuʣaŋ]後産(あとざん)。胎児分娩後、胎盤が出ること。胎盤のことをイ⸢ヤ[ʔi⸢ja](胎盤)という。
アトゥシキ [⸣ʔatuʃi̥ki]後の月。翌月。
アトゥシギ [⸣ʔatuʃigi]跡継ぎ。家督相続。
アトゥ シグン [⸣ʔatu ʃi⸢guŋ]跡を継ぐ。相続する。
アトゥシマチ [⸣ʔatuʃimaʧi]後始末。後片付け。後処理。
アトゥシンカー [⸣ʔatuʃiŋkaː]あとずさり(後退り)。
アトゥスクリムヌ [⸣ʔatusukurimunu]遅れて作付けする作物。「後作り物」の義。
アトゥトゥシ [⸣ʔatutu̥ʃi]翌年。後の年。「後年」の義。
アトゥトゥジ [⸣ʔatutuʤi]後妻。
アトゥドゥミ [⸣ʔatudumi]後妻。「後求め」の義か。先妻の死後に探し求めた妻の意。
アトゥトゥリ [⸣ʔatuturi]跡取り。後継者。相続人。
アドゥナー [ʔa⸢du⸣naː]あれほど長く。あれほど遠く。
アトゥナイ [⸣ʔatunai]遅苗。後苗。遅植え用の苗。
アドゥナイ [ʔa⸢du⸣nai]あんなに長い間。ア⸢ドゥ⸣ヌ ⸣アイ[ʔa⸢du⸣nu ⸣ʔai](あんなに長い間。長期間)の縮約形。
アトゥナリ サキナリ [⸣ʔatunari sḁ⸢ki⸣nari]連・副{1}後になり、先になりして。
アトゥナリ サキナリ [⸣ʔatunari sḁ⸢ki⸣nari]連・副{2}遅かれ早かれ。結局。どのみち。
アトゥニー [ʔa⸢tu⸣niː]後の方に荷の重さがかかりすぎること。「後荷」の義。
アトゥバタ [⸣ʔatubata]{1}後腹(あとばら)。産後の腹痛(しりはら)。
アトゥバタ [⸣ʔatubata]{2}後妻の子。
アトゥバライ [⸣ʔatubarai]後払い。掛買いにすること。
アトゥパン [⸣ʔatupaŋ]後ろ足。
アトゥピュール [⸣ʔatupjuːru]後日和。祭祀・行事を行う日和が干支の上で後期に当たる日和。⸢マイピュー⸣ル[⸢maipjuː⸣ru](前日和。干支の前期に当たる日和)に支障がある場合に、祭祀・行事を後日和で執り行う。現在は学校の夏休みに合わせて後日和が多い。
アトゥフー [⸣ʔatuɸuː]後の幸運。幸運は最期に回ってくる。
アトゥフニ [⸣ʔatuɸuni]後船(あとふね)。後から出港する船。⸣アトゥフネー サ⸢キ⸣ナリ[⸣ʔatuɸuneː sḁ⸢ki⸣nari](後から出港した船が先になって)は「後の雁が先になる(油断するれば後から来るものに追い越される)」の意で用いられる。
アトゥマーシ [⸣ʔatumaːʃi]後回し。順番をかえて後の方に回すこと。
アトゥマイ [⸣ʔatumai]晩稲。晩生(おくて)。「後米」の義。
アトゥマサリ [⸣ʔatumasari]後になるにつれて良い結果がもたらされること。「後勝り」の義。
アトゥマリ [⸣ʔatumari]後に生まれること。遅く生まれること。
アトゥムティ [ʔatumuti]後になって。将来に。
アトゥムドゥル [⸣ʔatumuduru]後戻り。若年層は、⸣アトゥムドゥリ[⸣ʔatumuduri]ともいう。
アトゥヤフ [⸣ʔatujaɸu]あとやく(後厄)。厄年の翌年。パ⸢リ⸣ヤフ[pa⸢ri⸣jaɸu](晴れ厄)ともいう。対義語は、⸢マイ⸣ヤフ[⸢mai⸣jaɸu](前厄)。
アトゥン [ʔa⸢tuŋ]他動当てる。的中させる。ア⸢ティルン[ʔa⸢tiruŋ](当てる)と同じ。「あつ(当つ)」(下ニ段活用)の四段活用化したもの。
アトゥン サキン [⸣ʔatun sḁ⸢kiŋ]後も先も。総体的に考えて。
アナ [⸣ʔana]{1}穴。地面のくぼんだ所。山や物体の向こう側へ突き抜けた所。地下へほぼ垂直に出来た自然の穴はア⸢ブ[ʔa⸢bu]という。
アナ [⸣ʔana]{2}地面にほぼ垂直に掘ったところ。ア⸢ブ[ʔa⸢bu](自然に出来た竪穴)と意味的に対立する。
アナプリヤー [ʔa⸢na⸣purijaː]掘建て小屋。「穴堀屋」の義。地面に穴を掘り、柱を埋めて建てた粗末な家。イ⸢シジ[ʔi⸢ʃiʤi](礎石)を置かない家。
アナプレー [ʔa⸢na⸣pureː] (動)魚の名。和名、タレクチベラ。体長約30センチ。ベラ科の魚で、体表はぬるぬるしている。食用となるが、あまり美味ではない。
アナミルン [ʔa⸢nami⸣ruŋ]他動捜し求める。尋ね探す。
アナムン [ʔa⸢na⸣muŋ]他動訪ね探す。ア⸢ナミ⸣ルン[ʔa⸢nami⸣ruŋ]と同じ。
アナンドゥルン [ʔa⸢nanduruŋ]他動あなどる(侮る)。相手を軽く見てばかにする。見くびる。「Anadori,ru,otta.アナドリ,ル,ッタ(侮り,る,った)」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。ウ⸢ムイナ⸣スン[ʔu⸢muina⸣suŋ](馬鹿にする。貶める)ともいう。
アヌ [ʔa⸢nu]連体あの(彼の)。話し手、聞き手の双方から遠く離れたものを指す。歌謡語。話し言葉では、カ⸢ヌ[ka⸢nu](あの)という。アヌ ヤマティラニ ヨー マイラシバ(あの山寺に参らすと)「念仏歌」
アヌユー [ʔa⸢nujuː]来世。あの世。⸣グソー[⸣gusoː](後生)のこと。
アヌヨーヌ ムヌ [⸣ʔanujoːnu ⸣munu]あのような者。年端のいかない者。意に満たないもの。
アバ [ʔaba]油。脂。石油。油脂類の総称。
アハー [⸣ʔahaː]なるほど(成程)。なるほど、いかにも、と合点がいった時にいう。
アバーアバー [ʔa⸢baːʔabaː]あわわ。幼児語。乳幼児をあやす際に、開いた口に手をあてて軽く叩きながら、ア⸢バーアバーと声を出すこと
アバースン [ʔa⸢baːsuŋ]他動溢れさせる。
アバイカバイ [ʔa⸢bai⸣kabai]溢れるさま。溢れ零れるさま。ア⸢バッカイ⸣カバッカイ[ʔa⸢bakkai⸣kabakkai](溢れるさま)ともいう。
アバイシ [ʔa⸢ba⸣iʃi]けいがん(珪岩)。「脂石」の義。乳白色で、表面が滑らかな石。豚の脂に似ていることからの命名という。
アバイズ [⸣ʔabaiʣu](動)魚の名。和名、オニダルマオコゼ。全長約20cmの硬骨魚。形は鬼瓦に似て、珊瑚礁に擬態する。顔面は醜悪で背びれの刺に猛毒がある。刺されると激痛を伴い、腫れ上がる。時には死ぬこともある。海岸の岩礁に棲息している。美味といわれているが、鳩間島の人はこれを食しない。
アバイルン [ʔa⸢bairuŋ]自動溢れる。余ってこぼれる。いっぱいになって外に流失する。「Afure,ruru,eta.アフレ、ルル、レタ(溢れ、るる、れた)」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
アバウン [ʔa⸢bauŋ]自動溢れる。余ってこぼれる。「溢、アブル」『類聚名義抄』、「~すだく池水雖溢<アフルトモ>~。万、2833」の転訛したもの。
アバカシ [ʔa⸢ba⸣kaʃi]あぶらかす(油粕)。豚の脂身を煎じて搾油した残滓。これを保存してお汁の出汁にしたり、油粕を米味噌と和えて油味噌にした。
アバカビ [ʔa⸢ba⸣kabi]えのあぶら(荏油)やとうゆ(桐油)をひいた和紙。防水用に用いた。
アバカミ [ʔa⸢ba⸣kami]食油を保存する甕。「脂かめ」の義。豚の脂肉を空揚げして油を搾り出し、保存するために使用する甕。
アバキー [ʔa⸢ba⸣kiː]薄い柔らかい毛。産毛(うぶげ)。にこげ(和毛)。
アバゴーダー [ʔa⸢bagoː⸣daː]油まみれ。油脂類が体や衣服類にべっとりと付着すること。カ⸢ツシン[kḁ⸢ʦuʃiŋ](カツオ漁船)が発動汽船になって、キ⸢カン⸣バ[ki̥⸢kam⸣ba](機関室。「機関場」の義)で働く人は、いつもア⸢バゴー⸣ダー[ʔa⸢bagoː⸣daː](油まみれ)していた。
アバゴーダー [⸣ʔabagoːdaː]油まみれ。
アバサ [ʔa⸢ba⸣sa](動)魚の名。ハリセンボン科。{1}和名、イシガキフグ(体長約30センチ)、和名、ネズミフグ(体長約40センチ)。体表面は鋭く長い刺で覆われている。普段は刺を収めて泳ぐが、体に触れると風船のように膨らみ、刺を立て外敵からの防御体勢に入る。身は「のぼせに効く」といわれ、重宝されている。
アバサ [ʔa⸢ba⸣sa]{2}転じておしゃべり女。お転婆娘。お喋り。
アバサシ [ʔa⸢ba⸣saʃi]あぶらさし(油差し)。機械などに油を注す道具で、コーヒーポットのような形をしたもの。カツオ漁船の焼玉エンジンにオイルを注すのに用いた。
アバサックヤー [ʔa⸢basak⸣kujaː]お喋り女め。あばずれ女。卑称。
アバズーヤン [ʔa⸢baʣuː⸣jaŋ]脂っこい。
アバスブ [ʔa⸢ba⸣subu]油壺。豚の脂を保存する小型の壷で、壺の肩に四つの耳が付いていた。⸣ミンスブ[⸣minsubu](耳壺)ともいう。豚脂<ラード>を入れて保存し、調理の際に少量ずつ掬い取ってお汁に入れた。
アバダリムヌ [ʔa⸢badari⸣munu]だらしない者。しまりのない者。節度のない者。裸で外出する者。
アバッカースン [ʔabakkaːsuŋ]他動溢れさせる。
アバッカイルン [ʔa⸢bakkairuŋ]自動液体が容器から溢れる。液体が溢れかえる。液体が溢れ出る。
アバッカウン [ʔa⸢bakkauŋ]自動溢れる。「あふる(溢る)、下二」の転訛したもの。老年層は、ア⸢バウン[ʔa⸢bauŋ](溢る)ともいう。
アバッタラ [ʔa⸢bat⸣tara]脂身。脂肉。
アバッツァー [ʔa⸢bat⸣ʦaː]下品で多弁な人。他人の噂話や悪口をあちらこちらで言いふらす女。ア⸢バ⸣フチ[ʔa⸢ba⸣ɸu̥ʧi](お喋り)に、接尾辞⸣ヤー[jaː](~する人)が付いて、[ʔa⸢ba⸣ɸu̥ʧi+jaː] → [ʔa⸢baɸu̥⸣ʧaː] → [ʔa⸢bat⸣ʦaː] と転訛したもの。
アバッティムヌ [ʔa⸢battimunu]慌てもの。粗忽もの。
アバティー [ʔa⸢ba⸣tiː]料理上手な女の手。豚を飼育するのが上手な女。⸢脂手」の義。
アバティカーティ [ʔa⸢batikaː⸣ti]慌てふためいて。急いで。うろたえて。
アバティカバティ [ʔa⸢batikaba⸣ti]あわてふためいて。ABCDBC型の重言。老年層の言葉。
アバティカバティ スン [ʔa⸢batikaba⸣ti ⸢suŋ]大慌てする。慌てふためいてする。「慌てふためき・する」の義。
アバティルン [ʔa⸢batiruŋ]自動慌てる。うろたえて急ぐ。ア⸢バティラン⸣タンティン ミサン⸢ダー⸣。ヨー⸢ンナー サン⸣ミン ⸢シーバル⸣ マ⸢チガー⸣ヌ[ʔa⸢batiran⸣tantim misan⸢daː⸣。 joː⸢nnaː sam⸣miŋ ⸢ʃiːbaru⸣ ma⸢ʧigaː⸣nu](急がなくてもいいよ。ゆっくり計算したほうが間違わない)。
アバトゥン [ʔa⸢batuŋ]自動慌てる。急ぐ。うろたえる。「あわつ(慌てる、下二段)」の四段へ転訛したもの。
アバナキニビ [ʔa⸢banakinibi]仰向けに寝ること。仰臥すること。大の字になって寝ること。
アバナクン [ʔa⸢banakuŋ]自動仰向けに寝やがる。仰臥しやがる。寝腐る。寝転がる。「寝る」を罵っていう語。
アバナビ [ʔa⸢ba⸣nabi]揚げ物をする鍋。「揚げ物鍋」の義。油鍋。揚げ物、炒め物の用いる浅い鍋。フライパン。
アバヌ カシ [ʔa⸢ba⸣nu ⸣kaʃi]豚の脂肉を油鍋で炒って油を抽出したあとの滓。炒り滓。塩を振りかけて食したり、お汁に入れて出汁にするのに用いた。
アバヌ シジグル [ʔa⸢ba⸣nu ʃi⸢ʤi⸣guru]豚の脂身を油鍋で炒って油を抽出した後の滓。炒り滓。「脂の煎じ殻」の義。
アハハー [ʔa⸢hahaː]あはは。声高に笑う声。
アババー [ʔa⸢babaː⸣]唖者。口のきけない人。
アバパク [ʔa⸢ba⸣pḁku]油を入れる箱。なたねあぶら(菜種油)を入れるブリキ缶。「油箱」の義。
アバピカリ [ʔa⸢bapika⸣ri]脂ぎって顔がテカテカ光っているさま。
アバ ピキマールン [⸣ʔaba pi̥⸢kimaːruŋ]脂ぎる。油が一面に拡散する。全体的に油がひろがる。油がお汁の表面一様に浮く。
アバフチ [ʔa⸢ba⸣ɸu̥ʧi]おべっか。ごますり。へつらい。お喋り。「油口」の義。
アバフツァー [ʔa⸢baɸu̥⸣ʦaː]よくおべっかを言う人。へつらいもの。
アバマチ [⸣ʔabamaʧi]松の油分の多い根株や幹の部分。ア⸢カ⸣シ[ʔa⸢ka⸣ʃi](灯)に用いた。
アバムシ [ʔa⸢ba⸣muʃi](動)アブラムシ。泡粒のように小さく野菜の葉について樹液をすう害虫。
アバムヌ [ʔa⸢ba⸣munu]油気の多い食べ物。
アバラブニ [ʔa⸢bara⸣buni]あばらぼね(肋骨)。若年層の言葉。「客亭、無壁之屋也、客人屋。阿波良(あはら)」『新撰字鏡』、「骼、アバラホネ」『天正十八年本節用集』の転訛したもの。老年層は、⸢ソーキ⸣ブニ[⸢soːki⸣buni](主に豚や牛等の家畜の肋骨を指す。稀に人間の肋骨にもいう)、ヤ⸢カタ⸣ブニ[ja⸢kata⸣buni](人間の肋骨)という
アバリマリ [ʔa⸢barimari]生まれつきの美人。天性の美人。
アバリムヌ [ʔa⸢barimunu]暴れ者。乱暴者。
アバリルン [ʔa⸢bariruŋ]自動暴れる。標準語からの借用語。老年層は、大人が暴れる場合は⸢ヤー⸣バリ ⸢スン[⸢jaː⸣bari ⸢suŋ](家具をぶち壊す。暴れる)、子供の場合は、⸢アールン[⸢ʔaːruŋ](暴れる)、⸢キン⸣ダン ⸢スン[⸢kin⸣dan ⸢suŋ](地団駄踏んで暴れる)と表現する。
アバレー プス [ʔa⸢ba⸣reː pu⸢su]美しい人。美人。
アバレー ミドゥム [ʔa⸢ba⸣reː mi⸢du⸣mu]美しい女。
アバレーワレー [ʔa⸢ba⸣reːwa⸢reː]何と美しいことよ。
アバレーン [ʔa⸢ba⸣reːŋ]美しい。きれいである。特に女性の美しさを表す。平安時代語の「あはれ」と同系統の言葉。日本諸方言の「あっぱい」(美しい)島根県、徳島県、高知市、福岡県、(『日本方言大辞典』)と同系統の語。美人である。女性の美しさに対していう。「~門ささず あはれ吾妹子~。万2594」の転訛したものか。
アビャー [⸣ʔabjaː]あれあれ。あらまあ。驚いたり、意外な時に発する言葉。老年層の言葉。
アヒャーオー [⸣ʔaçaːʔoː]母豚。繁殖用母豚。⸣アヒャー[⸣ʔaçaː](母豚)ともいう。
アヒャーヌギ [⸣ʔaçaːnugi]繁殖用の雌豚を仕立てるために多くの子豚の中から母豚に適するものを選び出すこと。
アピラ [ʔa⸢pi⸣ra](動)家鴨(アヒル)。
アフ [ʔa⸢ɸu]あく(灰汁)。「灰汁、阿久(あく)」『和名抄』の転訛したもの。[ku] → [fu] → [ɸu]の音韻変の化法則によって形成された語。木灰に水を入れて汲み取った上澄みの水。洗濯や髪洗い、染色等に用いた。
アブ [⸣ʔabu]お母さん。母。「母」の名称。「あむ」(百姓の妻)『混効験集』。呼称は、ア⸢ボー[ʔa⸢boː](母、お母さん。{SqBr}abu・ja{/SqBr}<は>の融合変化したもの)という。
アブ [ʔa⸢bu]穴。自然の竪穴。縦穴洞穴。特に地下へ落ち込むように出来た天然の竪穴洞穴をいう。
アブアブ スン [ʔa⸢buʔabu suŋ]あっぷあっぷする。溺れそうになってあっぷあっぷする。
アファリルン [ʔa⸢ɸariruŋ]自動酒や酢などの気が抜ける。酒や酢などが水っぽくなる。
アファルン [ʔa⸢ɸaruŋ]自動酒や酢などの気が抜ける。酒や酢が水っぽくなる。
アフカミ [ʔa⸢ɸukami]灰汁(あく)を入れた甕。「灰汁・甕」の義。
アブシ [ʔa⸢bu⸣ʃi]田の畦。田と田を仕切った境界の、土を盛り上げた部分。
アブジ [ʔa⸢bu⸣ʤi]おじいさん。祖父の名称。[ʔabuʤi] + [ja](は)→ [ʔabuʤeː](お祖父さんは)。
アブジェーマ [ʔa⸢buʤeː⸣ma]小さな御祖父さん。高齢の御祖父さん。貧相なおじいさん。男の老人を親しみを込めていう語。
アブシガサミ [ʔa⸢buʃigasa⸣mi](動)アシハラガニ。「アブシ・ガサミ」(畦蟹)の義。田の畦や沼沢などに棲息して穴を作り、田の水を流出させて稲の生育に害を及ぼす蟹。
アブシバライ [ʔa⸢buʃi⸣barai]田の畦の草を刈り払うこと。「畦・払い」の義。
アブシマッふァ [ʔa⸢buʃimaf⸣fa]⸢畦枕」の義。⸢畦枕」は稲がよく稔って稲穂が畦に垂れかかっているさま。「穂花咲き出ればちりひぢもつかぬ白ちやねやなびきあぶしまくら」(『琉歌全集』149)のように豊年を予祝したもので、歌謡語として用いられることが多い。
アブタテー [⸣ʔabutateː]屋号。吉川喜屋氏宅。喜屋氏の奥さんが与那国出身だったことから、与那国方言の⸣アブター[⸣ʔabutaː](お母さん)を屋号としたもの
アブツァ [ʔa⸢bu⸣ʦa]連体あんな。
アブナーッサン [ʔa⸢bunaːs⸣saŋ]危なっかしい。危ない。頼り無くて不安である。ア⸢ヤッ⸣サーンとも言う。
アブネーム [ʔa⸢buneːmu]{PoS_1}危険。大変。危ないこと。「アブネー・ムヌ」[ʔabuneː-munu](危ないもの)の縮まった形。
アブネーム [ʔa⸢buneːmu]{PoS_2}ああ怖い。ああ大変。
アブバタ [ʔa⸢bubata]大食い。「穴腹」の義。「底なしの腹」の意味で、いくら食べても満足しないことから命名さらたもの。ア⸢ブ[ʔa⸢bu](洞穴。竪穴)は竪穴の自然洞穴で、雨水はそこへ流入して溢れることはない。
アブル [ʔa⸢buru](動)魚の名。和名、ヨコシマフエフキ(体長約70センチ)。白身魚の最高級魚。⸢クー⸣シビー[⸢kuː⸣ʃibiː](島の西側の干瀬)の⸢ピーヌ⸣クシ[⸢piːnu⸣ku̥ʃi](干瀬の外海<腰>)で、タ⸢ティ⸣ナー[tḁ⸢ti⸣naː](一本釣り)をして釣った
アブン [⸣ʔabuŋ]他動{1}炙る(あぶる)。火に当たって温める。
アブン [⸣ʔabuŋ]他動{2}焼網等で焼く。網焼きする。炙り焼きする。ローストする。
アボー [⸣ʔaboː]{1}母。母親(親族名称)。老年層は、⸣アブ[⸣ʔabu](母。母親<親族名称>)という。若年層において、[ʔabu](母)+ [ja](は)→ [ʔaboː](母。<名称。呼称>)と変化したもの。
アボー [⸣ʔaboː]{2}親族呼称。