鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
ヘ〜 [ɕːẽ]{1}ええ?なんだって?相手の話に対して婉曲に疑問ないし反感の意を表す。
ヘ〜 [ɕːẽ]{2}更に、あからさまに反感の意を表す際は、ハ~[hãː](何ですって?)と鼻音化する。
ヘー [çe⸢ː]へえ。ほう。相手が言ったことに対して感嘆した時に、肯定的に認めて発することば。
ヘー [⸣çeː]格助~へ。鳩間方言の方向を表す格助詞は、上接語の末尾母音の種類によって、以下のように変化する。
ヘー [⸣çeː]格助{Exp_1}-i+へ → Ce\ipa{ː}(C=子音)。
ヘー [⸣çeː]格助{Exp_2}-a+へ → Caː(C=子音)。
ヘー [⸣çeː]格助{Exp_3}-u+へ→Coː(C=子音)。
ベー [⸢beː]自称。複数。<聞き手を含む>私たち、われら。⸢ベーター[⸢beːtaː](私たち)ともいう。
ペー [⸣peː]{1}つまさき(爪先)。
ペー [⸣peː]{2}足跡。あしあと。
ペー [⸣peː]へ(綜)。そうこう(綜絖)。布を織る際に、よこいと(緯糸)を通すひ(杼)道を作るために、たていと(経糸)を上下させる道具
ベーカー [⸢beː⸣kaː]下痢と{嘔吐}{オウ|ト}を繰り返す病気。{霍乱}{カク|ラン}。赤痢の一種か?⸢ヌー⸣バ ッ⸢ふァイティ⸣ ア⸢タルタ⸣ユー ユ⸢ナカー⸣ラ ⸢ベー⸣カー ⸢シー ベー[⸢nuː⸣ba f⸢faiti⸣ ʔa⸢taruta⸣juː ju⸢nakaː⸣ra ⸢beː⸣kaː ⸢ʃiː beː](何を食べて当ったのか、夜中から下痢と嘔吐をいている)
ヘーガサ [⸢çeːga⸣sa]頭の皮膚病。頭にお出来ができて、じめじめと湿り、悪臭を放つ皮膚病。「はえかさ(這え瘡)。瘡、加佐<かさ>『和名抄』」の義か。⸢ペーガ⸣サ[⸢peːga⸣sa](頭の皮膚病)ともいう。
ベーカベー [⸢beː⸣kabeː](動)山鳩の一種。アオバト(青鳩)。子供が拗ねて泣きだすと親たちは、⸢ウリウリ ベー⸣カベーヌ ナ⸢クン⸣ドー[⸢ʔuriʔuri beː⸣kabeːnu na⸢kun⸣doː](ほらほらベーカベー<青鳩>が鳴くよ)といって、婉曲に子供をたしなめ<窘め>たり、一時的に子供の注意を引くようにしたものである
ペー キルン [⸣peː ⸣kiruŋ]つまづく(躓く)。けつまずく(蹴躓く)。⸢爪先を蹴る」の義。
ペーキン [⸢peː⸣kiŋ]琉球国時代、頭<カシラ>職に与えられた位階名と同じ『石垣方言辞典』。
ヘーシ [⸢çeː⸣ʃi]囃子。民謡や民俗芸能などの各種芸能で、あいのて(間の手)を入れたり、手拍子を打ったり、{情緒}{ジョウ|チョ}を出すために添える歌詞や文句。笛、太鼓、三線などの楽器が用いられる。⸢ヘー⸣シは沖縄方言からの借用語。伝統的鳩間方言では、⸢パー⸣シ[⸢paː⸣ʃi](囃子。傍らで鼓を打ったり、手拍子を打ったり、声を出したりして歌舞を活気付けること)という。「~七重花咲く 八重花咲くと白賞尼<マヲシハヤサネ>。万、3885」、「Fayaxi,u,aita.ハヤシ、ス、イタ(囃し、す、いた)楽器を鳴らし、声を上げて歌う」、「Fayaximono.ハヤシモノ(囃し物・拍子物)一緒に動き回る大勢の人々の、合唱を伴った踊.」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ベーシティ [beːʃi̥⸢ti]ぎくっと。ぎょっと。不意に驚くさま。
ベースン [⸢beː⸣suŋ]他動{1}酔わせる。
ベースン [⸢beː⸣suŋ]他動{2}中毒させる。麻痺させる。痺れさせる。
ベーター [⸢beːtaː]自称。複数。<聞き手を含む>私たち。われら。
ベーッサベーッサ [⸢beːssabeːssa]擬態語。牛馬、山羊などが力強くかいば<飼葉>を食べるさま。ぱくぱく。転じて人が美味しそうに食事をするさま。
ベーッサラベーッサラ [⸢beːssarabeːssara]ぺちゃくちゃ。賑やかに喋るさま。
ベーッタベーッタ [⸢beːttabeːtta]擬態語。ゆたゆた。ゆさゆさ。重い物が揺れ{撓}{タワ}むさま。⸢ビーッタビーッタ[⸢biːttabiːtta]ともいう。
ベーフ [⸢beː⸣ɸu]びょうぶ(屏風)。「Biŏbu.ビャゥブ(屏風)Cajeuo fuxegu.(風を屏ぐ)それ自体で立つ一種の大きな飾り板のようなもので、日本人が家の飾りとして、または、風を防ぐためなどに用いるもの.」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ペーブク [⸢peːbuku](地)平久保。石垣島最北端の集落。
ペーブクウシ [⸢peːbukuʔuʃi]{1}平久保牛。平久保の牛は人をじろじろ見て、ものを言わない。
ペーブクウシ [⸢peːbukuʔuʃi]{2}ものを言わずに押し黙っている人を卑しめていう。
ベーベー [⸢beː⸣beː]小山羊。幼児語。沖縄方言からの借用語。
ペーラ [⸢peː⸣ra]完熟したひょうたん(瓢箪)を縦に真っ二つに切り割って作った{柄杓}{ヒ|シャク}。穀類を{掬}{スク}ったり、飲み水を{汲}{ク}むのに用いた。
ペーラフチ [⸢peːra⸣ɸu̥ʧi]門。家の入り口。「はいりぐり({這入}{ハ|イリ}口)」の義。「Fairu,u,itta.ハイリ、ル、ッタ(這入り、る、った)」『邦訳日葡辞書』に「Cuchi.クチ(口)」『邦訳日葡辞書』が下接して形成された語。門の両側の石積みは、大きな石を削って整形したものを使用した。また、葬列が門前を通過する際は、ペーラフチに竹竿をX字に交差させて立て、死者の霊の侵入を防ぐ習慣が昭和30年ごろまであった。
ペーリフチ [⸢peːri⸣ɸu̥ʧi]這入り方。入り方。這入る方法。
ペーリマイ [⸢peːri⸣mai]収入。這入る分(金額)。「這入り前」の義。
ベールヒャー [⸢beː⸣ruçaː]いやだ(卑語)。強く拒絶する意思を表す。同等以下の者に対して嫌悪の意味を籠めていう。
ペールン [⸢peː⸣ruŋ]自動這入る。入る。「Fairi,u,itta.ハイリ、ル、ッタ(這入り、る、った)入る」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ペーレー [⸢peːreː]かんばつ(旱魃)。ひでり(日照り)。「Fideri,canbat.ヒデリ.またはカンバツ(日照り.または、旱魃)」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。夏の日照りが続くと島の人々は、三つある村井戸で順番に並んで水汲みをした。⸢インヌカー[⸢ʔinnukaː](西村の井戸)、⸢アンヌカー[⸢ʔannukaː](東村井戸)には、村の娘たちが集まって、井戸水が{湧出}{ユウ|シュツ}するまでの時間を語り合いながら、夜を徹して水汲みをした。
ペーレー スン [⸢peːreː suŋ]旱魃がする。旱魃になる。
ヘイキ [⸢heiki]ひいき(贔屓)。老年層は⸢ピーキ[⸢piːki](贔屓)という
ヘイヤー [⸣heijaː]田圃を耕す時の男の掛け声。⸢エイヤー[⸢jeijaː](掛け声)という人もいる。
ペンガー [⸣peŋgaː]女子の名。固有名詞。
ペンガンガザミ [⸣peŋgaŋgasami](動)蟹の一種。西表島の船浦港対岸の⸢マーレーガーラ[⸢maːreːgaːra](マーレー川)、ニ⸢シダガーラ[ni⸢ʃidagaːra](ニシダ川)、ナ⸢ダラガーラ[na⸢daragaːra](ナダラ川)、ピ⸢ナイガーラ[pi⸢naigaːra](ピナイ<鬚川>川)の川口のア⸢カ⸣ズミキー[ʔa⸢ka⸣ʣumikiː](マングローブ)林で捕獲されていた。
ペンシキビリ [⸢peŋʃi̥kibiri]ひざまずき(跪き)。正座。{両膝}{リョウ|ヒザ}と爪先を地につけて身を支え、{踵}{カカト}の上に{臀部}{デン|ブ}を乗せて座り、深い敬意を表す座り方。「Fagui.(脛)『邦訳日葡辞書』付け座り」の義か。
ペンスクムン [⸢pensu̥kumuŋ]自動しびれる(痺)。体の一部が感覚をうしなう。
ペンツァイ [⸢penʦai]爪先で立って歩くこと。爪先立ち歩き。
ペンツァウン [⸢penʦauŋ]自動爪先で立って歩く。爪立てて歩く。