鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
ツァン [⸣ʦaŋ]係助~だに、~だにも、~さえ。~さえも。~すら、~すらも、の義。可能性のある最小限のものを示し、他のものごとを暗示する意。係助詞の⸢-ン[⸢-ŋ](も)を介して体言や活用語の連用形に付く際、動詞や名詞の語尾が連母音の場合は、⸢ヤンツァン[⸢janʦaŋ]、その他の場合は⸢ンツァン[⸢nʦaŋ]となり、文末の打ち消し表現と呼応して用いられることが多い。
ツォー [⸢ʦoː]終助{1}~だってば。用言の終止形、体言について上昇音調を示す。念押し強調。
ツォー [⸢ʦoː]終助{2}~だそうだ。伝聞。⸢トゥ⸣ツォー[⸢tu⸣ʦoː](~というそうな。<丁寧表現>)の転訛した形。
ツォー [⸣ʦoː]終助~そうだ。~ってさ。文末にあって文を完結させ、伝聞の意を表す。体言および用言の終止形、連体形につく。低平調のアクセント。
ツォー [⸣ʦoː]終助{Exp_1}動詞の終止形につく。
ツォー [⸣ʦoː]終助{Exp_2}形容詞の終止形につく。
ツォー [⸣ʦoː]終助{Exp_3}体言につく。
ツォー [⸣ʦoː]終助{Exp_4}動詞の連体形につく。
ツォー [⸣ʦoː]終助{Exp_5}形容詞の連体形につく。
ツォー [⸣ʦoː]終助{Exp_6}動詞の已然形について、過去の事実の伝聞を表す。
ツォー [⸣ʦoː]終助{7}助動詞⸣タン[⸣-tan](~た。「たり」の転訛したもの)の終止形、連体形につく。
ツォー [⸢ʦoː]終助~だよ。~ってば。~ですよ。文末にあって文を完結させ、断定、念押し、確認の意を表す。体言および用言の終止形、連体形につく。
ツォー [⸢ʦoː]終助{Exp_1}(イ)、高平調アクセント動詞や形容詞の終止形につく際、文末アクセントは二分の一降下する(完全に降下すると「伝聞」の意味になる)が、(ロ)、低平調アクセント動詞や形容詞の終止形に付く際は、高平調のアクセントになる。
ツォー [⸢ʦoː]終助{Exp_2}形容詞の終止形につく。
ツォー [⸢ʦoː]終助{Exp_3}名詞につく。
ツォー [⸢ʦoː]終助{Exp_4}動詞の連体形につく。アクセントはやや降下する(降下型アクセントの約五割程度。完全に降下すると「伝聞」の意味になる)。
ツォー [⸢ʦoː]終助{Exp_5}形容詞の連体形につく。
ツォー [⸢ʦoː]終助{Exp_6}動詞の已然形に付いて、過去の事実の念押し、確認の意を表す。
ックビ [k⸣kubi]接尾ちゃく(着)。着物や洋服を数える単位。
ックビ [⸣kkubi]接尾着。衣服を数える語。
ッサ [⸣ssa]{1}草。雑草。「~我が見る小野の久佐な刈りそね。万、4457」の義。[kusa] → [fu̥sa] → [ssa] のように無声化による逆行同化によって音韻変化したもの。
ッサ [⸣ssa]{2}まぐさ。
ッサ [s⸢sa]接頭{1}しら(白)。形容詞「白い」の語幹。
ッサ [s⸢sa]接頭{2}語に冠して程度が小さい、薄い、小馬鹿にする、の意を表す。
ッサーウイ [s⸢saːʔui]逆さま。逆。「下は上」の義。サ⸢カバラーウイ[sa⸢kabaraːʔui](逆さま)ともいう。
ッサーウイ ナルン [s⸢saːʔui⸣ naruŋ]逆転する。ひっくり返る。「下は上になる」の義。
ッサーキルン [s⸢saːki⸣ruŋ]自動夜が白白とあける。夜が次第に明けて薄明るくなる<白む>。白白と明ける。「白明ける」の義か。
ッサーク [s⸢saː⸣ku]咳。
ッサーク [s⸢saːku]仕事。職業。職。
ッサーコー ナーン [s⸢saːkoː naː⸣ŋ]余計なこと。「仕事がない」が原義。やるべき仕事がないから「余計なこと」、「差し出がましい」、「でしゃばる」、「さしでる」の意。
ッサーッサー [s⸢saːssaː]{1}しらじら(白々)と。夜が次第に明けて白むさま。[ʃiraʃira](白々)→ [ssaːssaː](白々)/CV1rV2/のV1が狭母音の条件下で逆行同化したもの。
ッサーッサー [s⸢saːssaː]{2}薄ぼんやりと。あまりはっきりしないさま。
ッサーッサーシ [ssaːs⸢saː⸣ʃi]かすかに。ぼんやりと。{薄薄}{ウス|ウス}。
ッサーフ [s⸢saːɸu]仕事。職業。(老年層)。若年層は、ッ⸢サーク[s⸢saːku](仕事)ともいう。
ッサーラ [s⸢saːra]下の方。
ッサーラシパン [s⸢saːraʃi⸣paŋ]両足をぶら下げて縁側に座ること。「下げ足」の義。農民は余所の家を訪ねても普通は縁側に腰を掛けて話すのが良いとされていた。奥へ上がって話すのは老人か、怠け者がすることと教えられていた。
ッサーラスン [s⸢saːra⸣suŋ]他動垂らす。ぶら下げる。吊るす。
ッサーリカサーリ [s⸢saːrikasaːri]塞ぎ妨げているさま。立ち塞がるさま。
ッサール [s⸢saː⸣ru](動)シロアリ(白蟻)。シロアリ目の昆虫の総称。木材の中に巣食って家屋に大被害を与える。薪を竈にくべて煮炊きをしていた時はあまり発生しなかったが、石油コンロ、ガスコンロの時代に入って家屋の柱に発生するシロアリが増えたという。
ッサールン [s⸢saː⸣ruŋ]自動ぶら下がる。
ッサールン [s⸢saːruŋ]自動塞がる。閉じる。「閉、フサガル」『類聚名義抄』の転訛したもの。
ッサーン [s⸢saː⸣ŋ]{臭}{クサ}い。
ッサイ [⸣ssai]白髪。「しらげ(白毛)」の転訛したもの。バ⸢カ⸣ッサイ[ba⸢ka⸣ssai](⸢若白髪」)の義。
ッサイクサイ [⸣ssaikusai]米など穀物を精げて糠やあら<粗>を除去すること。精米すること。「精げ{拵}{コサ}え」の転訛。
ッサイマイ [⸣ssaimai]白米。精白米。精白した米。⸢精米、ジャウマイ、精、シラゲ、共ニ白米」『文明本節用集』の義。
ッサイルン [s⸢sai⸣ruŋ]他動精げる。精米する。
ッサイルン [s⸢sairuŋ]他動塞ぐ。「塞げる」の義。
ッサイルン [s⸢sai⸣ruŋ]自動血の気が失せて顔面蒼白になる。
ッサウン [⸣ssauŋ]他動米を搗く。精げる。精米する。「精、シラグ」『類聚名義抄』の転訛したもの。シ⸢キ⸣ウシ[ʃi⸢ki⸣ʔuʃi](搗き臼)に米を入れて、イ⸢ナシ⸣キ[ʔi⸢naʃi̥⸣ki](杵)で搗いて精米した。
ッサウン [⸣ssauŋ]自動血の気が失せて顔面蒼白になる。「白む」の義。
ッサウン [s⸢sauŋ]他動{塞}{フサ}ぐ。閉じる。
ッサカクチ [s⸢sakakuʧi]下顎。
ッサガリ [s⸢sa⸣gari]薄明るいさま。夜が明けて辺りが薄明るくなること。
ッサ カルン [⸣ssa ka⸢ruŋ]まぐさ(秣)を刈る。牛や山羊のかいば(飼葉)を刈る。
ッサクイ [s⸢sakui]しわがれ声。
ッサクサイ [s⸢sakusai]下ごしらえ(下拵え)。事前準備。料理や農作業などの下ごしらえ。
ッサザラスン [s⸢saʣara⸣suŋ]他動風雨に晒す。
ッサザリ [s⸢sa⸣ʣari]{1}真っ白。真っ白な歯を出して笑うこと。「白晒し」の転訛したものか。
ッサザリ [s⸢sa⸣ʣari]{2}衣類が風雨に晒されてくたびれ<草臥れ>ること。桶などが日に晒されてからからに乾くこと。
ッサシゥカイ [s⸢sasï̥kai]雑用に使う子供。手伝い人。走り使い。小間使い。「下使い」の義。
ッサシキ [s⸢saʃiki]下敷き。
ッサジナー [s⸢sa⸣ʤinaː]魚脅しの綱。「草綱」の義。藁綱にバ⸢ラフ⸣タ[ba⸢raɸu̥⸣ta](稲藁)や茅を結んで垂らし、海中で動かして魚を脅しながら袋網の方へ誘導する綱。⸣キタアン[⸣ki̥taʔaŋ](桁網)に繋いで片方は干瀬の頂の方へ張り、片方は海岸の浜の方へ張って、時々引き動かして魚を脅す。
ッサシバ [s⸢saʃiba]下唇。⸢オーシバ[⸢ʔoːʃiba](上唇)の対義語。
ッサスクリムヌ [s⸢sasukuri⸣munu]穀物類。米、麦、粟、豆等の穀類を収穫する作物。「草作物」の義か。
ッサスン [s⸢sasuŋ]他動知らせる。シゥ⸢カスン(聞かせる)とも言う。
ッサソーリ [s⸢sasoː⸣ri]除草。草掻き。「草さくり<{抉}{サク}り。{刳}{サク}り>」の転訛。[sakuri] → [saɸuri] → [sauri] → [soːri] の音韻変化を経て形成された語であろう。普通は、⸣ピラ[⸣pira]({箆}{ヘラ})やカ⸢ノーシ[ka⸢noːʃi](金串状の箆)で畑や庭の草を根こそぎに取ることにいう。
ッサ ソールン [⸣ssa ⸢soːruŋ]箆などで除草する。「草さくる({抉}{サク}る。{刳}{サク}る)」の転訛したもの。雑草などを箆で根こそぎにして除草すること。
ッサダン [s⸢sadaŋ]下の段。積み重ねたものの下のもの。⸢下段」の義。
ッサディー [s⸢sadiː]賄賂。袖の下。「下手」の義。
ッサディー ナールン [s⸢sa⸣diː ⸢naːruŋ]賄賂を請求する。「下手を伸ばす」の義。
ッサナーパダ [s⸢sa⸣naːpada]生後三、四ヶ月頃の赤ちゃんの赤い肌の色が白みを帯びた色に変わる頃。
ッサナチ [s⸢sa⸣naʧi]秋。「白夏」の義。ス⸢ムナチ[su⸢munaʧi](下夏)ともいう。
ッサナン [s⸢sa⸣naŋ]白波。しぶき<飛沫>を上げている波。
ッサニー [s⸢saniː]船の底に積む貨物。船底に積む荷。
ッサヌ ミー [s⸢sa⸣nu ⸣miː]草むら。雑草が生い茂るところ。
ッサヌレー [s⸢sanureː]知らないねえ。⸢知らぬ、それは」の義。目下の者に対する応答詞。ウ⸢ヌ ッふァー ヌー⸣シ ⸢ナッ⸣タユー ⸢ワー⸣ ッ⸢ソーレン?。ッ⸢サヌレー ヌー⸣シ ⸢ナッ⸣タカヤー[ʔu⸢nu ffaː nuː⸣ʃi ⸢nat⸣tajuː ⸢waː⸣ s⸢soːreŋʔ。s⸢sanureː nuː⸣ʃi ⸢nat⸣takajaː](その子はどうなったか、貴方はご存知ですか。さあ、知らないねえ。どうなっただろうか)
ッサバー [s⸢sa⸣baː]植物(稲)の葉。「草葉」の義。
ッサバー [s⸢sabaː]下葉。野菜類の古い葉。ッ⸢サパー[s⸢sapaː](下葉)ともいう。
ッサパー [s⸢sapaː]下葉。植物の下の枯葉。ッ⸢サバー[s⸢sabaː](下葉)ともいう。⸢オーパー[⸢ʔoːpaː](上の葉。植物の上の若い葉)の対義語。
ッサパー [s⸢sapaː]下歯。⸢オーパー[⸢ʔoːpaː](上歯)の対義語。
ッサバーヌ ソージ [s⸢sabaː⸣nu ⸢soː⸣ʤi]稲の下葉が枯れる病気に罹らないよう精進潔斎して祈願すること。ッ⸢サバー⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[s⸢sabaː⸣nu ⸢niŋ⸣gai](稲の下葉の祈願)ともいう
ッサバーヌ ニンガイ [s⸢sabaː⸣nu niŋ⸣gai]下葉の祈願。稲や麦の葉が枯れる病気に罹らないように祈願する祭祀。旧暦三月の⸢ユーニンガイ[⸢juːniŋgai](世願い。<{壬}{ミズノエ}>)の一連の祈願として、ム⸢シヌニン⸣ガイ[mu⸢ʃinuniŋ⸣gai](虫除けの祈願。<{丙}{ヒノエ}>)、⸢プーヌソー⸣ジ[⸢puːnusoː⸣ʤi](稲穂の祈願<精進>。<{庚}{カノエ}>)と共に祈願された。稲や麦が順調に生育して実をはらむよう、暴風や害虫に遭わぬように、と豊作を祈願する村の祭祀。
ッサバタ [s⸢sabata]下腹。下っ腹。
ッサパタラキ [s⸢sapataraki]{1}下働き。台所仕事。
ッサパタラキ [s⸢sapataraki]{2}下男、下女働き。
ッサバヤー [s⸢sa⸣bajaː]皮膚病の一つ。丸く白い粉をふいたような症状を呈する。顔面白癬(tinea of face)。俗にいう「はたけ」で、白癬により顔面にできる。小児に多く発生する『医学沖縄語辞典』。「白這い・もの」の義
ッサバライ [s⸢sa⸣barai]薄笑い。冷笑。{嗤}{ワラ}うこと({嘲}{アザケ}り笑う)。「白笑い」の義。口を開けて笑うのでなく、冷ややかに笑うこと。カ⸢タフチピケー⸣シ[kḁ⸢taɸuʧipikeː⸣ʃi](微笑。ほほえみ。「片口引き」の義。温かみのある薄ら笑い。にっこり笑うこと)の対義語。
ッサビ [s⸢sabi]楔。「轄、鍵也、久佐比(くさび)」『新撰字鏡』の転訛したもの。{枘}{ホゾ}穴に貫き材を貫いて、その間に枘穴の両側から楔を打ち込んで柱の骨格を固定し、強化するもの。鋭三角形の長さ約20センチ程の楔。建築用材の切れ端を利用して作った。[s⸢sabi]の促音は無声子音に挟まれた奥舌狭母音[u]が無声化し、[ku̥sabi] → [ɸu̥sabi] → [ssabi] のような逆行同化による融合変化によって形成された語。
ッサピニ [s⸢sapini]あごひげ(顎鬚)。したひげ(下鬚)の義。⸢オーピニ[⸢ʔoːpini](上髭)の対義語。
ッサブ [⸣ssabu]地名。白保村。siraho(白保)のように、CV1rV2~の音声環境でV1=狭母音i、uの場合、法則的に [r] → [s] の音韻変化を起こして、[ssa~] となる。
ッサブプス [⸣ssabupu̥su]白保人。白保の人。
ッサベー [⸣ssaeː](動)魚の名。和名、キュウセンの仲間(体長約6センチ)。和名、ゴイシベラ(体長約15センチ)。和名、セナスジベラ(体長約20センチ)。和名、シロタスキベラの仲間(体長約20センチ)。和名、キヌベラ(体長約20センチ)。和名、ギチベラ(体長約25センチ)。和名、クギベラ(体長約25センチ)などの総称。鳩間島では、キヌベラが⸣ッサベーの代表で、子供たちはキヌベラを磯釣りして楽しんだ。
ッサミー [s⸢sa⸣miː]睨むこと。下目に見ること。見下げた目つき。
ッサムージ [s⸢samuː⸣ʤi]はすいも(蓮芋、白芋)。サトイモ科の多年草。芋は小さく硬くて食用にならなかった。鳩間島では産しない。
ッサムニ [s⸢sa⸣muni]汚い言い草。他人の感情を害するような言葉。口汚い物言い。「腐れ物言い」の義。⸣バタッサリムニ[⸣batassarimuni](腹立たしいことば<もの言い>。⸢腹腐れもの言い」の義)ともいう。
ッサムラシ [s⸢samura⸣ʃi]草むら。雑草の群生しているもの。畑の中で塊をなして密生する雑草。
ッサムン [s⸢sa⸣muŋ]自動{1}白くなる。白む。
ッサムン [s⸢sa⸣muŋ]自動{2}夜が白々と明ける。
ッサヤク [s⸢sajaku]下役。∫i̥ta~がi母音の無声化に伴って進行同化の音韻変化を起こしたもの。
ッサユダ [s⸢sajuda]下枝。樹木の下枝。
ッサラスン [⸣ssarasuŋ]他動腐らせる。腐敗させる。
ッサリカーリ [⸣ssarikaːri]腐れること。腐敗しきっていること。
ッサリカザ [⸣ssarikaʣa]腐った匂い。腐臭。
ッサリムヌ [⸣ssarimunu]腐れたもの。腐敗物。饐えたもの。「腐り物」の義。
ッサリルン [⸣ssariruŋ]自動腐れる。腐敗する。下一段系の動詞「腐れる」が四段活用化したもの。[kusareru] → [ɸu̥sariruŋ] → [ssariruŋ] のように逆行同化して形成された語。⸣ッサルンとも言う。
ッサリルン [s⸢sariruŋ]他動申し上げる(謙譲語)。「知られる」の義。「おしられ 物を申上る事」『混効験集 乾・言語』の義。[sirare] → [ssaru] のように進行同化の音韻変化を起こしたもの。ッ⸢サルンとも言う。
ッサリン [s⸢sariŋ]自動知れる。知られる。
ッサルン [s⸢saruŋ]他動{1}(謙譲語)。申し上げる。「知られる」の転訛したもの。ッ⸢サリルンとも言う。
ッサルン [s⸢saruŋ]他動{2}補助動詞。申す、致す<知られる>(謙譲語)。⸢言う、読む、する」などの動詞の連用形に付いて用いられる。
ッサルン [⸣ssaruŋ]自動腐る。腐敗する。下二段系の動詞「腐る」が四段活用化したもの。⸣ッサリルンとも言う。
ッサレー [⸣ssareː]{1}知らせごと。申し上げごと。旧暦三月の{庚}{カノエ}の日の夜、ヤ⸢ク⸣サ[ja⸢ku⸣sa](村役人)によって執り行われる、明日の行事の際の各家庭の火の用心に関する注意喚起のための⸢知らせごと」を裏声を使って実施すること。
ッサレー [⸣ssareː]{2}もうしもうし(申し申し)。知らせごと。「申し上げます」の義。ふれごと<お触れ>。パ⸢マウリソー⸣ジ[pa⸢maʔurisoː⸣ʣi](浜下り精進)の前々日の夜、村のヤ⸢ク⸣サ[ja⸢ku⸣sa]が西村と東村に手分けして、各家を回り、声色を使って⸣ッサレー[⸣ssareː](知られごと。お触れ)をする。人々はそれを神の声と信じているが、声色の可笑しさに口を押さえて堪え、ッサレーの立ち去った後に爆笑した。
ッサン [⸣ssaŋ]アタマジラミ。頭髪のシラミ(虱)。「虱、志良彌」『新撰字鏡』の転訛。
ッサンコーラ [ssaŋ⸢koːra]知らぬふり。そ知らぬ顔。
ッサンコーラーン [s⸢saŋkoːraː⸣ŋ]知らぬふりをして冷たい。人間関係に冷淡である。人間関係にあっさりしすぎる。
ッサンス [⸣ssansu]秋の季節風。「しらにし(白北風)」の義。
ッサンタ [s⸢santa]下の方。下方。「下の所」の義。ッ⸢サーラー[s⸢saːraː](下の方)ともいう。
ッサンタールン [s⸢santaː⸣ruŋ]自動白む。白くなる。白白とと夜が明ける。
ッサン ッサルン [⸣ssan ssaruŋ]虱が湧く<虱がくされる>。
ッサンニビ [s⸢sannibi]うたたね(転寝)。寝るつもりはないのに、いつの間にか眠ってしまうこと。「知らぬ眠り」の義。
ッシェーマイ [⸣ʃʃeːmai]{1}うしろまえ(後ろ前)。前後の位置が反対になっていること。
ッシェーマイ [⸣ʃʃeːmai]{2}あとさき(後先)。前後。
ッシェーン [ʃ⸢ʃeː⸣ŋ]自動知っている。認識する。分かる。「知り・有り」の転訛したものか。
ッシクムン [ʃ⸢ʃi⸣kumuŋ]他動差し込む。ッ⸢シナ⸣クン[ʃ⸢ʃina⸣kuŋ](差し込む)ともいう。
ッシッツァースン [ʃ⸢ʃitʦaː⸣suŋ]他動すりつぶす(擂り潰す)。擦り散らす。むやみにすりつける。やたらに摩りこむ。
ッシットースン [ʃ⸢ʃittoː⸣suŋ]他動擦り込む。擦りとおす。
ッシナクン [ʃ⸢ʃina⸣kuŋ]他動差しこむ。強く差し込む。
ッシフカスン [ʃ⸢ʃiɸu̥kasuŋ]他動知り尽くす。知りつくして見通す。洞察する。
ッシムヌヤー [ʃ⸢ʃi⸣munujaː]指物屋。指物店。板を組み立てて家具や器具を作る家(店)。
ッス [⸣ssu]糞。「~屎遠麻礼~『万葉集 3832』」、⸢送糞、倶蘇摩屢『日本書紀神代上』」の転訛したもの。[ku̥so] → [ku̥su] → [fu̥su] → [ssu] と音韻変化。
ッス [s⸢su]裾。着物の裾。「~一云 須蘓漬く河を『万葉集 2655』」の義。
ッス [s⸢su]接頭白。形容詞ッ⸢ソー⸣ン[s⸢soː⸣ŋ](白い)の語幹。名詞に上接して続く名詞を修飾し、名詞の指し示す内容が白いことを表す。
ッスイーパイ [s⸢suʔiː⸣pai]白位牌。四十九日忌が済むまで仏壇に安置する白い位牌。
ッスイカ [s⸢su⸣ʔika](動)あおりいか。「白烏賊」の義。白烏賊は昔から利尿剤としてよく食されている。鳩間島では餌木に約20メートルの縄をつけて海岸より海へ投げこみ、手繰り寄せながら漁獲した。若年層はシ⸢ル⸣イカ[ʃi⸢ru⸣ʔika]ともいう。
ッスイキー [s⸢suikiː](植)モンパノキ。海岸の砂地や岩石地に群落をなして産することが多い。材は軽く柔らかで水中眼鏡のフレーム(枠)を作るのに用いる。⸢スイキー[⸢suikiː]という人もいるが、明治生まれの人はッ⸢スイキー[s⸢suikiː]といっていた。
ッスイズ [s⸢su⸣ʔiʣu](動)魚の名。和名、ギンダイ(体長約35センチ)。和名、シロダイ(体長約50センチ)。和名、サザナミダイ(体長約60センチ)などのシロダイの仲間。白身魚の高級魚。
ッスイル [s⸢su⸣ʔiru]白色。
ッスウール [s⸢suʔuː⸣ru](植)シロウリ(白瓜)。
ッスカザ [⸣ssukaʣa]糞の臭い。
ッスカシ [⸣ssukaʃi]役に立たない者。無能な者。「くそかす(糞粕)」の義。
ッスカビ [s⸢su⸣kabi]白紙。
ッス クミルン [⸣ssu ku⸢mi⸣ruŋ]排便を我慢する。「糞をこめる」の義。
ッスゴーダー [⸣ssugoːdaː]糞まみれ<塗れ>。
ッスサー [s⸢su⸣saː]薄茶。出涸らしの茶。「白茶」の義。
ッスサタ [s⸢su⸣sata]白砂糖。
ッスジー [s⸢su⸣ʤiː]白地。麻布や芭蕉布、綿布などの生地。染色してない布。
ッスシーソー [s⸢suʃiː⸣soː](植)白紫蘇。⸢アウシーソー[⸢ʔauʃiːsoː](青紫蘇)ともいう。ア⸢カシーソー[ʔa⸢kaʃiːsoː](赤紫蘇)の対義語。刺身の⸢オンガキ[⸢ʔoŋgaki](薬味。「上かけ」の義)として利用される。
ッス シゥカムン [⸣ssu si̥⸢ka⸣muŋ]ひどい目に遭う。最悪の結果をもたらす。台無しにされる。「糞つかむ(掴む)」の義。
ッスシキル [s⸢suʃiki⸣ru](動)しろなまこ(白海鼠)。⸣イノー[⸣ʔinoː](礁内湖)の浅海の砂の上に多く棲息している。燻製・乾燥させて中華料理の食材として輸出されていた。
ッスジルカージル [s⸢suʤirukaː⸣ʤiru]うんこ塗れになっているさま。糞塗れ。
ッスタマ [s⸢su⸣tama]白目。眼球の白い部分。ッ⸢スミン⸣タマ[s⸢sumin⸣tama](白目玉)ともいう。「白珠」の義。
ッスッサーン [s⸢sussaː⸣ŋ]糞の臭いがする。「糞臭い」の義。
ッスッサラシムニ [s⸢sussaraʃi⸣muni]他人の感情を害するような汚いことば(物言い)。
ッスッふァイ [s⸢suf⸣fai]くそくらえ。ばか言え。「Cusocurai.クソクライ(糞飡ひ) 相手を侮辱する無礼な言葉」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。くしゃみ(嚏)をした時にいう呪文のク⸢スッ⸣クレー[ku̥⸢suk⸣kureː](糞食らえ)の再転訛したもの。
ッスッふァイヒャー [s⸢suf⸣faiçaː]{1}糞喰らえ。相手を卑しめ、{罵}{ノノシ}りかえして言う言葉。「Cusocurai.クソクライ(糞飡らい)相手を侮辱する無礼な言葉」『邦訳日葡辞書』。
ッスッふァイヒャー [s⸢suf⸣faiçaː]{2}くしゃみをした時に、魂が飛び出すのを防ぐという呪いの言葉。
ッスッふァイムヌ [s⸢suffai⸣munu]役に立たない者。無能の者。いぐい(居食い)の徒。座食の徒。「糞喰らい者」の義。
ッスティンアウティン [s⸢sutiŋʔau⸣tiŋ]青空、蒼天。ABCDEFCD型の重言。青空を強調した表現。「白天青天」の義。
ッストーフ [s⸢sutoː⸣ɸu]木綿豆腐。揚げ豆腐にたいする、揚げてない豆腐のこと。「白豆腐」の義。
ッスナミ [s⸢su⸣nami]白波。干瀬に砕け散る白波。ッ⸢ス⸣ナン[s⸢su⸣naŋ](白波)ともいう。
ッスバラー [s⸢subaraː]家屋の最も外周にある柱。「裾柱」の義。ハ⸢ギバラー[ha⸢gibaraː](庇柱。軒柱)ともいう。⸣ムヤーバラー[⸣mujaːbaraː](母屋柱。家屋本体の柱)の対語。
ッスパルン [s⸢su⸣paruŋ]カツオの白いすじこ。⸢キンパルン[⸢kimparuŋ](黄色いすじこ)とともに塩漬けにした。
ッスパン [s⸢su⸣paŋ]白い斑点。白斑。老化にともなって皮膚に現れる白い斑点。
ッスパンタリ [s⸢supan⸣tari]白太り。色白で丸々と太っていること。
ッスビー [s⸢subiː]いそべ(磯辺)。礒のほとり。いそばた(礒端)。海岸端。「潮早み礒廻<イソミ>に居れば~。万、1234」の転訛したものか。
ッスピー [⸣ssupiː]非常に臭いおなら<屁>。「糞屁」の義。
ッスピニ [s⸢su⸣pini]白い鬚。「しろひげ<白鬚>」の義。
ッスヒャー [⸣ssuçaː]くそ!聞くものか。嫌だ!⸣ッスヒャー ⸣ワンザヌ ムニ⸢ナー⸣ト シゥ⸢カヌ[⸣ssuçaː ⸣wanʣanu muni⸢naː⸣to sï̥⸢kanu](くそっ{EOS!}嫌だ。お前などの言うことなど聞くものか<聞かない>)
ッスフカー [⸣ssuɸu̥kaː]糞を漏らす者。うんこたれ。⸢糞垂れ」の義。
ッス フカスン [⸣ssu ɸu̥⸢kasuŋ]{1}糞を垂らす<糞放下す>。堪えきれずに脱糞する。
ッス フカスン [⸣ssu ɸu̥⸢kasuŋ]{2}ひどく苦労する。
ッスフム [s⸢su⸣ɸumu]しらくも(白雲)。ッ⸢ス⸣クム[s⸢su⸣kumu](白雲)ともいう。
ッスマース [s⸢sumaː⸣su]白い塩。盛り塩。健康祈願の塩。カ⸢ニマース[ka⸢nimaːsu](黄金の塩)、シゥ⸢カラマース[si̥⸢karamaːsu](長寿延命の肖り塩)ともいう。
ッスマイ [s⸢su⸣mai]白米。精米。老年層は、⸣ッサイマイ[⸣ssaimai](精げ米。精米)という。⸣カーマイ[⸣kaːmai](玄米。⸢皮米」の義)の対義語。
ッスマスン [s⸢suma⸣suŋ]他動潜らせる。自動詞ッ⸢ス⸣ムン[s⸢su⸣muŋ](潜る)の未然形ッ⸢スマ[s⸢suma]に使役の助動詞⸣スン[⸣suŋ](~せる)が下接して合成された使役動詞。
ッスマミ [s⸢su⸣mami]白い豆。「隠元豆のこと」『沖縄語辞典』とある。
ッスマリコーマ [s⸢sumarikoː⸣ma]よく下痢をする人。よく糞をたらす子ども。
ッス マルン [s⸢su⸣ maruŋ]大便をする。糞をたれる。脱糞する。「送糞、此をば倶蘇摩婁<くそまる>といふ」『古事記<神代 上>』。
ッスミ [s⸢su⸣mi]包み。包んだもの。
ッスミー [s⸢su⸣miː]{1}白目。しろまなこ。しろめだま。
ッスミー [s⸢su⸣miː]{2}眼病の一種。強度の斜視で、瞳が隠れた状態の目。
ッスミー [s⸢su⸣miː]白身。魚などの白い肉。鶏卵などの卵白。
ッスミスーブ [s⸢sumisuː⸣bu]潜水競争。「潜り勝負」の義。
ッスミ マースン [s⸢sumi maː⸣suŋ]包みまわす。取り囲む。
ッスミムヌ [s⸢sumimu⸣nu]包むもの。包装紙。
ッスミンタマ [s⸢sumin⸣tama]目の白い部分。白目。
ッスムチ [s⸢su⸣muʧi]白餅。神事や法事に用いる餅は白餅で、中に餡を入れないのが一般である。⸢ヨイ⸣ヌ ム⸢チ[⸢joi⸣nu mu⸢ʧi](祝いの餅)は、多くはバ⸢タ⸣ムチ[ba⸢ta⸣muʧi](餡餅)で、ア⸢ガムチ[ʔa⸢gamuʧi](赤い餅)などが作られた。
ッスムン [s⸢su⸣muŋ]他動もぐる(潜る)。
ッスムン [s⸢su⸣muŋ]他動包む。取り巻く。くるむ。「白玉を都々美氐夜良婆~『万葉集 4102』」、「坡阪、以\kaeriten{㆑}土壅\kaeriten{㆑}水也。豆豆牟(つつむ)『新撰字鏡』」の転訛。
ッスリムヌ [s⸢surimunu]雑巾。拭き取るもの。足拭き。「こすり<擦り>」の転訛したもの。
ッスル [s⸢suru]ふきん(布巾)。ッ⸢スルン[s⸢suruŋ](拭く)の連用転成名詞。
ッスルン [s⸢suruŋ]他動拭く。ぬぐう。紙や布巾で汚れをとる。「こする(擦る)」の転訛したもの。[kosuru] → [ɸusuru] → [ssuruŋ] のように音韻変化したもの。布巾で軽く拭くのもッ⸢スルン[s⸢suruŋ]という。
ッスン [⸣ssuŋ]他動切る。絶つ。老年層の言葉。若年層は、⸣キスン[⸣ki̥suŋ](切る)という。
ッスン [⸣ssuŋ]他動{1}刺す。差す。⸢ピッ⸣クンとも言う。
ッスン [⸣ssuŋ]他動{2}{挿}{サ}す。
ッスン [⸣ssuŋ]他動{3}指す。指差す。
ッスン [⸣ssuŋ]他動つぐ(注ぐ)。そそぐ。「~から塩を灌知布<ソソクチフ>が如く~。万、897」の転訛したものか。⸢サウンとも言う。
ッスン [⸣ssuŋ]他動こする(擦る)。する。
ッスン [s⸢suŋ]他動知る。分かる。理解する。わきまえる。「~空しきものと志流等伎子~『万葉集 793』」の義。ワ⸢カ⸣ルンとも言う。
ッスン [s⸢suŋ]他動すする(啜る)。液状のものを少量ずつ口中に吸い込む。ユ⸢ブンとも言う。
ッスン [s⸢suŋ]包み。動詞ッ⸢ス⸣ムン[s⸢su⸣muŋ](包む)の連用形ッ⸢ス⸣ミ[s⸢su⸣mi]から転成した名詞。
ッスンクン [s⸢suŋ⸣kuŋ]自動すさる(退る)。しさる。前を向いたまま退く。神仏の前や役人の前から後ずさりする。
ッスンクン [s⸢suŋ⸣kuŋ]他動引きずる。引っ張り出す。そびく。
ッスンタールン [s⸢suntaː⸣ruŋ]自動白む。白ばむ。白く色あせ<色褪せ>る。白みを帯びる。ッ⸢サンター⸣ルン[s⸢santaː⸣ruŋ](白ばむ)ともいう。
ッスンナーマ [ssun⸢naː⸣ma]小さな包み。小包。⸢ナー⸣マ[⸢naː⸣ma]は接尾指小辞。ある語(名詞)に付加し、その語の示す意味概念よりも更に小さい概念を表す。あるいは親愛の情を示す接辞形態素マ[ma]の異形態。上接語の末尾子音がnの場合に起きる一種の連声現象
ッソーッソー [ssoːs⸢soː]しろじろ(白々)。真っ白。目だって白いさま。ABCABC型の重言。
ッソーマー [s⸢soːmaː]風下。⸢オーラー[⸢ʔoːraː](風上、⸢上はら」の義)の対義語。⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](板船、サバニ)を帆走させる際、大波を避けて風下へ操船する時などに用いる。
ッソーママール [s⸢soːmamaːru]風下回り。⸢オーラーマール[⸢ʔoːraːmaːru](風上に向かって帆船を転回すること<風上回り>)の対義語。⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](板舟。サバニ)を方向転換させる際に、風下側に向けて方向転換すること。
ッソーン [s⸢soː⸣ŋ]白い。
ッソーンツァー [s⸢soːnʦaː]粗末に扱うこと。粗略に扱うこと。粗相に扱うこと。
ッソーンツァー スン [s⸢soːnʦaː suŋ]粗略にする。粗略に扱う。ないがしろ(蔑ろ)にする。侮り軽んずる。
-ッツァースン [⸢-tʦaːsuŋ]接尾さんざんに~する。やたら~する。「~ちらす」の義。⸢~捲る」の義。これは、/cvrvcv/の音節構造の第一拍の/v/が狭母音/i、u/の場合、母音に挟まれたrが融合同化現象を起こして法則的にʦとなったもの。第一音節が破擦音(~ちらす)の場合は、[r] → [ʦ]、摩擦音sの場合(~しらす)は、[r] → [s] となる。⸢ッツァースン[⸢tʦaːsuŋ]は「ちらす。捲る」が動詞の連用形に下接して「やたら~するさま」(他動詞化)を表す接尾語となる際に融合同化を起こしたもの。
ッツァールン [⸢tʦaːruŋ]接尾粉々になる。散乱する。散々になる。ちりじりばらばらになる。「散れる」の融合同化した形。動詞の連用形に付いて自動詞化し、意味を強める。
ッツァーン [⸣tʦaːŋ]接尾~したい。よく~したがる。よく~しがち<仕勝ち>である。形容詞型活用。「たさ・あり」の[ta]が上接語の末尾母音[i]により口蓋化され、更に融合変化した形。排尿や排便の生理現象を表す語について、⸢生理現象を催す」の意味をあらわす。
ッツァーン [⸢tʦaː⸣ŋ]接尾~したい。「~したさ・あり」の融合変化したもの。
-ッツォールン [⸢-tʦoː⸣ruŋ]接尾~にっこりする。~莞爾とほほえむ。~にこやかに~する。
ツブ [⸣ʦubu]坪。土地、建物の面積を表す単位。一間(3、3)平方メートル。標準語からの借用語。
ツブ [ʦu⸢bu]助数土地面積の単位。坪。六尺四方の面積。助数詞として用いられる。
ッふァ [f⸢fa]子。子供。[kora] → [kura] → [fura] → [ffa] と音韻変化したもの。「~荒磯松 我を待つ兒等<こら>は~。万、2751」の転訛したもの。
ッふァ [⸣ffa]くら<鞍>。
ッふァースン [f⸢faːsuŋ]他動{1}食わせる。食べさせる。食らわせる。「Cuuaxe,suru,eta.*クワセル,スル,セタ(食わせ、する、せた)、また比喩.bouo cuuasuru(棒を食わする)殴りつける.~」『邦訳日葡辞書』。
ッふァースン [f⸢faːsuŋ]他動{2}塗りつける。まぶす<塗す>。塩漬けにする。食らわす。
ッふァーッふァーシ [f⸢faːffaː⸣ʃi]真っ暗に。暗く。「くらくら<暗暗>と」の転訛したもの。ABCABCD型の重言。
ッふァーマ [f⸢faː⸣ma]子供。幼児。乳幼児から七、八歳ごろまでの子供。名詞、ッ⸢ふァ[f⸢fa](子)に指小辞⸣マ[⸣ma](小さいもの、親愛の情を表す)が下接した形。
ッふァームン [f⸢faːmuŋ]自動{1}暗くなる。暗む。ッ⸢ふァムン[f⸢famuŋ]ともいう。
ッふァームン [f⸢faːmuŋ]自動{2}曇る。
ッふァーランふァイ [f⸢faːranffai]食べ飽きたような食べ方。いやいや(嫌嫌)食べること。「食えない食い」の義。ナ⸢マンダッふァイ[na⸢mandaffai](中途半端な食べ方)ともいう。
ッふァーリン [f⸢faːriŋ]自動{1}食われる。食べられる(可能)。
ッふァーリン [f⸢faːriŋ]自動{2}食べられる。食われる(受身)。毒蛇に咬まれることは、⸢ホー⸣リン[⸢hoː⸣riŋ](咬まれる)という。
ッふァーリン [f⸢faːriŋ]自動{3}負ける。~まぎれ(紛れ)に。
ッふァーリン [f⸢faːriŋ]自動{4}歯、刃が磨耗、摩滅する。
ッふアール [f⸢fuʔaː⸣ru](動)黒蟻。黒い蟻。
ッふァーン [f⸢faː⸣ŋ]暗い。
ッふァイアキリ [f⸢faiʔakiri]食べ飽きること。「食い飽きれ」の義。
ッふァイアキルン [f⸢faiʔakiruŋ]自動食い飽きる。
ッふァイアマスン [f⸢faiʔamasuŋ]他動食い残す。食い余す。ッ⸢ふァイヌカ⸣スンとも言う。
ッふァイアマラスン [f⸢faiʔamara⸣suŋ]他動食い残す。食い余す。食い余るようにする。ッ⸢ふァイヌカ⸣スンとも言う。
ッふァイ カイヤン [f⸢fai kai⸣jaŋ]食べることについて欲がない。自分の食べ物を気持ちよく他人に分け与える。「食べることが美しい」の義。ッ⸢ふァイ⸣ ヤ⸢ニ⸣ヤン[f⸢fai⸣ ja⸢ni⸣jaŋ](食い意地が汚い)の対義語表現。
ッふァイカタ [f⸢faikata]食べ方。食べる方法。ッ⸢ふァイミチ[f⸢faimiʧi](食べ方。食べる方法)ともいう。
ッふァイカタ [f⸢fai⸣kata]生活手段。生業。食べて生きていくための手だて、すべ。「食べ方」の義。
ッふァイキシルン [f⸢faiki̥ʃiruŋ]自動食べ尽くす(食べ切れる)。食べ尽きる。食料が底を突く。食糧が払底する。
ッふァイキスン [f⸢faiki̥suŋ]他動食い尽くす。「食い切る」の義。
ッふァイクラスン [f⸢faikurasuŋ]他動食い殺す。
ッふァイザイ [f⸢faiʣai]ただ食べまくること。食うことにかまける(感ける)。食べることに心を奪われる。転成名詞のッ⸢ふァイ[f⸢fai](食べること)に、接尾辞⸢-ザイ[⸢-ʣai](~に専念する。~に{感}{カマ}ける)が付いた形。
ッふァイザク [f⸢faiʣaku]食べごろ。食べるのに丁度適した状態。果物や野菜などが成熟して食べるのに良い状態。旬のもの。魚介類の一等美味な時期。
ッふァイジブン [f⸢faiʤibuŋ]{1}食べごろ。食べる時刻。
ッふァイジブン [f⸢faiʤibuŋ]{2}食べ盛り。よく食べる年頃。
ッふァイダマ [f⸢faidama]いやしんぼう<卑しん坊>。食いしん坊。食いしん坊の子は祖母や母にくっ付いて祝いや法事の家に行き、縁側から手を伸ばして祖母や母の着物を引っ張り、ご馳走をねだっていた。
ッふァイダマーン [f⸢faidamaː⸣ŋ]卑しいん坊である。食いしん坊である。
ッふァイックナー [f⸢faikkunaː]食い競漕。「食いくら<競>」の義。競漕して食べること。我先に、他人を押しのけて食べること。
ッふァイックル [f⸢faikkuru]{1}食べ殻。食べ滓。若年層は、ッ⸢ふァイグル[f⸢faiguru](食べ滓)ともいう。
ッふァイックル [f⸢faikkuru]{2}食べ残し。
ッふァイッツァースン [f⸢faiʦaːsuŋ]他動粗野に食べ荒らす。散々に食べまくる。「食い散らかす」の転訛。
ッふァイトースン [f⸢faitoːsuŋ]他動すっかり食べ尽くす。食いつぶす。「食い倒す」の義。
ッふァイドーリ [f⸢faidoːri]食い倒れ。
ッふァイナクン [f⸢fainakuŋ]他動かきこむ(掻き込む)。飯を大口で急いで食べる。カ⸢キナ⸣クン[kḁ⸢kina⸣kuŋ](掻き込む)、⸢ホイナ⸣クン[⸢hoina⸣kuŋ](かきこむ<掻き込む>)ということが多い。
ッふァイヌカシ [f⸢fainukaʃi]残飯。食べ残し。
ッふァイヌカスン [f⸢fainuka⸣suŋ]他動食い残す。ッ⸢ふァイアマラ⸣スンとも言う。
ッふァイヌカル [f⸢fainukaru]食べ残り。食べ残したもの。
ッふァイパザキルン [f⸢faipaʣakiruŋ]他動食い損ねる。食い外す。食べる機会を逃す。
ッふァイパザクン [f⸢faipaʣakuŋ]他動食い損ねる。食い外す。食べる機会を逃す。
ッふァイパジ ナーヌ [f⸢faipaʤi naː⸣nu]食い意地が汚い。食うことに恥ずかしいことを感じない。食いしん坊である。「食い恥がない」の義。
ッふァイバナ [f⸢faibana]食べ盛り。食欲旺盛の年頃(時期)。
ッふァイパンツァスン [f⸢faipanʦasuŋ]他動食い外す。食い損ねる。
ッふァイふー [f⸢faiɸuː]食べる幸運。食にありつく幸運。「食い果報」の義。
ッふァイフクリ [f⸢faiɸu̥kuri]飽食。食い飽きること。口が肥えること。食物に対する嗜好が贅沢になること。「くちおごり(口奢り)」の義。
ッふァイフチ [f⸢faiɸu̥ʧi]{1}食費。くいしろ(食い代)。「くいぶち(食扶持)」の義。
ッふァイフチ [f⸢faiɸu̥ʧi]{2}食べ方。ッ⸢ふァイミチ[f⸢faimiʧi](食べ方)ともいう。
ッふァイミチ [f⸢faimiʧi]食べ方。食べる方法。「食い道」の義。
ッふァイムヌ [f⸢faimunu]飲食物。食べ物。主食となるもの。「食い物」の義。⸢マイ[⸢mai](米)、⸣ウン[⸣ʔuŋ](芋)等。ヌ⸢ミ⸣ムヌ[nu⸢mi⸣munu](水や酒類の飲み物)、カ⸢ティ⸣ムヌ[kḁ⸢ti⸣munu](おかず。かてもの<糅物>の義)の対義語。
-ッふァイムヌ [-f⸢fai⸣munu]接尾~よく手間のかかるもの。~よく~を必要とするもの。「~食い物」の義。
ッふァイヤニヤン [f⸢faijani⸣jaŋ]食い意地が汚い。食い意地が張って見苦しい。意地汚い。
ッふァイヤビ [f⸢faijabi]同じものを食べ過ぎて嫌になること。食傷気味。「食い破れ」の義。
ッふァイヤン [f⸢faijaŋ]いくら食べても満腹しない病気。「食い病み」の義。糖尿病。
ッふァイユー [f⸢faijuː]食べる分。食用。食用に充当するもの。
ッふァイユク [f⸢faijuku]食欲。食い意地。「食い欲」の義。
ッふァイユコーン [f⸢faijukoː⸣ŋ]いじきたない(意地汚い)。飲食物に対する欲が強い。「食い欲張りである」の義。
ッふァイヨーガリ [f⸢faijoːgari]食べ過ぎて痩せること。「食い痩せ」の義。
ッふァインザリ [f⸢fainʣari]食い散らし。食いちぎり。
ッふァインザルン [f⸢fainʣaruŋ]他動食い散らかす。乱雑に食べる。
ッふァウヤキ [f⸢faʔujaki]子宝に恵まれること。また、その人。「子富貴」の義。
ッふァ ウラスン [f⸢fa⸣ ʔu⸢ra⸣suŋ]堕胎する。「子を下ろす<堕ろす>」の義。
ッふァオーン [f⸢faʔoːŋ]親御嶽(親お願)から分かれた子格の御嶽。「末社」に相当する。「子御嶽」の義。
ッふァカサナイキン [f⸢fakasanai⸣kiŋ]子守用の着物。「子負い衣」の義。袖なしの短い着物。これを着て子供を背負い、着物の左前裾の先を腰に回して左手で握り、子供がずれ落ちないように負ぶった。ッ⸢ふァ⸣ムレーキン[f⸢fa⸣mureːkiŋ](子守着)ともいう。
ッふァガマラスン [f⸢fagamarasuŋ]他動暗ます。暗くする。
ッふァガマリ [f⸢fagamari]暗がり。陰。
ッふァガマルン [f⸢fagamaruŋ]自動暗くなる。暗がる。
ッふァ クバーン [f⸢fa⸣ ku⸢baː⸣ŋ]子供に縁がない。流産したり、生まれた子供が早死にしたりして母親と子供の縁が薄いこと。ク⸢バー⸣ン[ku⸢baː⸣ŋ](仲が悪い)の原義は、「強し」の義で、「なかなか~できない」の意を表す。「磽、己波志<こはし>」『新撰字鏡』の転訛したもの。ヤ⸢バー⸣ン[ja⸢baː⸣ŋ](やはし<和>の義で、「よく~する」の意。「和、ヤハシヌ」『類聚名義抄』)の対義語。
ッふァシゥカナイ [f⸢fasï̥ka⸣nai]子育て。「子養い」の義。
ッふァジマ [f⸢faʤima]主島から分かれた島。「子島」の義。
ッふァスダティ [f⸢fasudati]子育て。ッ⸢ふァシゥカ⸣ナイ[f⸢fasï̥ka⸣nai](子養い)ともいう。
ッふァダニ [f⸢fadani]精子。「子種」の義。
ッふアタル [f⸢fuʔata⸣ru]不浄負け。死者の死毒にあたること。「黒当り」の義。
ッふァチクショー [f⸢faʧikuʃoː]親心を理解し得ない子供。親心を理解できない子供は畜生と同じの意味。「子畜生」の義。
ッふァッツァーン [f⸢fat⸣ʦaːŋ]子煩悩である。並外れて子供を愛し慈しむさま。ッ⸢ふァ[f⸢fa](子。子等)に接尾語⸣ッツァーン[⸣tʦaːŋ](生理的に~たがる。<~したさ・あり>の転訛したもの)が下接して形成された語。
ッふァドゥル [⸣ffaduru](動)鳥の名。和名、オオクイナ。うずら(鶉)に似るが、鶉より少し大きい。クイナの一種といわれている。⸣ッふァドゥル[⸣ffaduru]は、非常にッ⸢ふァッツァー⸣ン[f⸢fatʦaː⸣ŋ](子煩悩である)といわれている。夜、コーイコーイと鳴くが、それは親鳥が雛鳥を呼ぶ鳴き声だといわれ、その名も「子を思う鳥」から命名されたといわれている。転じて、母親が子供のことを心配して、よく子供の名を呼んで探し回る人に対しても⸣ッふァドゥル[⸣ffaduru]と卑しめていう。昔、⸣ッふァドゥルの雛を捕獲したある人が雛を家に持ち帰り、籠に入れて飼育しようと考えた。ところが、その晩遅く、その人が寝ている家へ、ッふァドゥルの母鳥が訪ねてきてトントンと戸を叩いて家の主を起こしたと言う。子を思う親鳥の心に打たれた家主は、以後ッふァドゥルを捕獲してはならないと家人に伝えたという昔話が伝承されている。
ッふァナサー [f⸢fana⸣saː]子供をよく産む人。多産の人。子だくさんの人。多少卑下した表現。
ッふァナサシプス [f⸢fanasaʃi⸣pu̥su]子供を産ませる人。とりあげばば(取上げ婆)。カ⸢ティ[kḁ⸢ti](経験。ものごとの様子。具合)ともいう。「Catte.カッテ(勝手)、格好、あるいは形態.Iyeno cattega yoi」(家の勝手がよい)『邦訳日葡辞書』の転訛したものか。
ッふァナシパダ [f⸢fanaʃi⸣pada]子供を産める時期。出産可能な時期。
ッふァナシプス [f⸢fanaʃi⸣pu̥su]産婦。出産した人。「子産み人」の義。
ッふァフクル [f⸢faɸukuru]胎児や胎盤を包む器官。羊膜。「子袋」の義。
ッふァマー [f⸢fa⸣maː]こまご(子孫)。子孫。
ッふァムイサン [f⸢famui⸣saŋ]子煩悩であるさま。子供を可愛がるさま。名詞に形容詞型活用の接尾語⸢-ムイ⸣サン[⸢-mui⸣saŋ](~煩悩である。よく~を思う。<~思いさあり>の転訛)の付いた形容詞型接尾語。
ッふァムチ [f⸢famuʧi]子だくさん。子福者。「子持ち」の義。
ッふァムレー [f⸢fa⸣mureː]子守。
ッふァムレーウタ [f⸢fa⸣mureːʔuta]子守唄。
ッふァムレーキン [f⸢fa⸣mureːkiŋ]子守用の着物。普通は、ッ⸢ふァカサナイ⸣キン[f⸢fakasanai⸣kiŋ](子供負ぶい衣)という。
ッふァムン [f⸢famuŋ]自動暗くなる。暗む。ッ⸢ふァームン[f⸢faːmuŋ](暗む)と同じ。
ッふァヨーン [f⸢fajoːŋ]真っ暗闇。暗闇の夜。
ッふイ [⸣ffui]陰毛。「黒毛」の義。腋毛。[kuroke](黒毛)→ [hurukiː] → [ffuçiː] → [ffui] のように音韻変化したもの。
ッふィールン [f⸢fiːruŋ]他動{1}くれる(呉れる)。やる。くれてやる。「~みな人童(わらは)までに呉れたれば~」『土佐日記』の転訛したもの。[kure] → [ɸuri] → [ffi] の様に音韻変化したもの。
ッふィールン [f⸢fiːruŋ]他動{2}補助動詞。動詞の連用形に下接して⸢~てやる」の意味を表す。
ッふイラブチ [f⸢fuʔira⸣buʧi](動)魚の名。ブダイの仲間。体長20~25センチの成魚がよく漁獲された。蒲鉾の材料として重宝された
ッふイル [f⸢fu⸣ʔiru]黒色。
ッふェー [⸣ffeː]{烏賊墨}{イ|カ|スミ}。イカや蛸の墨。「涅、唐韻云、水中黒土也・・・久利<くり>」『和名抄』の転訛したもの。[kuri] → [ɸuri] → [ffi] → [ffeː] の音韻変化による。
ッふォーッふォーシ [f⸢foːffoː⸣ʃi]黒々と。真っ黒に。
ッふォーッふォーヌ [f⸢foːffoːnu]真っ黒の。「黒々の」の義。
ッふォーン [f⸢foː⸣ŋ]黒い。「~黒有之<クロカリシ>髪も白けぬ~。万、1740」の転訛したもの。「Curoi.クロイ(黒い)黒いもの」『邦訳日葡辞書』の転訛。
ッふォーン [f⸢foː⸣ŋ]黒い。「黒・有り」の融合変化したもの。
ッふカー [f⸢fu⸣kaː]非常に古い着物。着古して破れた着物。つづれ。⸣カー[⸣kaː](皮)は、⸣キンカー[⸣kiŋkaː](着物類。衣類)の⸣カー[⸣kaː]のこと。「皮、賀波(かは)、被v体也」『和名抄』の義。
ッふカビ [f⸢fu⸣kabi]黒い紙。[kuro](黒)→ [kuru] → [ffu] と音韻変化したものに、カ⸢ビ[ka⸢bi](紙)が下接して形成された合成語。
ッふカビムヌ [f⸢fukabi⸣munu]服喪中の人。⸢不浄を被っている人(黒被り者)」の義。
ッふキジ [f⸢fu⸣kiʤi]古傷。
ッふキン [f⸢fu⸣kiŋ]古着。
ッふコージ [f⸢fukoː⸣ʤi]黒かび。黒麹。
ッふサタ [f⸢fu⸣sata]黒砂糖。砂糖黍を搾って汁液を煮詰め、石灰を少量加えて凝固させた砂糖。戦前には鳩間島でも黒糖を製造していた。
ッふシー [f⸢fu⸣ʃiː]梅毒。「黒血<腐って黒みをおびた血>」の義。
ッふシキル [f⸢fuʃi̥ki⸣ru](動)クロナマコ(黒海鼠)。体長約30センチ。乾燥して中華料理の食材として沖縄に輸出したが、よく売れた。
ッふシタダル [f⸢fuʃi̥ta⸣daru]黒ずんで不潔なさま。黒々と汚れて不潔なさま。薄汚れして不潔なさま。
ッふジルカージル [f⸢fuʤirukaː⸣ʤiru]黒色をおびているさま。黒ずんで汚れたもの。薄汚れしているさま。ABCDEFCD型の重言。
ッふシル カビ [f⸢fu⸣ʃiru ⸣kabi]喪に服して。「黒っぽいものを被って」の義。
ッふタリキン [f⸢fu⸣tarikiŋ]古着。襤褸。
ッふタリルン [f⸢futari⸣ruŋ]自動古びる。襤褸になる。古くなって朽ち果てる。
ッふドーング [f⸢fudoːŋ⸣gu]古道具。フ⸢ルドーン⸣グ[ɸu⸢rudoːŋ⸣gu]とも。
ッふトゥジ [f⸢fu⸣tuʤi]先妻。古女房。「ふるとじ(古刀自)」の転訛。トゥ⸢ジ[tu⸢ʤi](妻)は「~吾が子の刀自を~。万723」の「刀自」の義。サ⸢キトゥジ[sḁ⸢kituʤi](先妻)より語感が落ちる。
ッふヌール [f⸢funuː⸣ru]黒雲。雨雲。入道雲。「黒塗り」の義。
ッふパカ [f⸢fu⸣pḁka]古墓。昔の墓。鳩間島の古墓の様式は、原野にカ⸢ソーライシ[ka⸢soːraʔiʃi](テーブル珊瑚)で四角の石室を作り、周囲に石垣を積んで円墳形に仕上げたものであったという。
ッふパジン [⸣ffupaʤiŋ](動)蜂の一種。「黒蜂」の義。「ユスルバチ(土蜂)」『八重山語彙』とある。
ッふピジル [f⸢fupiʤi⸣ru]やけぼっくい(焼け棒杭)。
ッふプー [f⸢fu⸣puː]{1}黒い穂。
ッふプー [f⸢fu⸣puː]{2}黒穂。イモチ病にかかった稲穂。
ッふプス [f⸢fu⸣pu̥su]梅毒患者。
ッふムー [f⸢fu⸣muː]喪に服すること。「黒喪」の義。
ッふムヌ [f⸢fu⸣munu]古物。
ッふムン [f⸢fu⸣muŋ]自動黒ずむ。黒くなる。「黒む」の義。
ッふヤー [f⸢fu⸣jaː]古い家。「古屋」の義。
ッふン [f⸢fuŋ]他動食う。食べる。「食らひ」『土佐日記』、「Curai,ŏ,ŏta.クライ、ゥ、ゥタ(飡ひ、ふ、うた)食う、下賤の者とか獣とかについていう」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ッふンタールン [f⸢funtaː⸣ruŋ]自動黒ずむ。黒ばむ。黒味を帯びる。