鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
-ニ [⸣-ni]格助{1}~に。場所を表す。/パトゥマナカムリ パリヌブリ クバヌシタニ パリヌブリ ハイヤヨーティバ カイダキ ティトゥルトゥ テンヨー マサティミグトゥ/(鳩間中岡を駆け上って、クバ<蒲葵>の下に駆け上って、南の方はと云えば、美しい古見岳が手に取るように、実に美しく見事である)(鳩間中岡<節>)。
-ニ [⸣-ni]格助{2}動作作用の結果の状態を表す。/~シマヌナガリユ ミワタシバ ルクヌ イチジニ チカクアリ~/(~島の流れ<島の形。傾斜>を見渡すと、禄の一字に字画がある<字画に意味がこめられている>)(鳩間口説)『新本家文書 家訓歌語並萬口説集』(咸豊九年<1859年>書)。
-ニ [⸣-ni]格助{3}動作・作用の相手を表す。ぞんざいに発音する時は、⸢-ン[⸢-ŋ](~に)となる。
-ニ [⸣-ni]格助{4}取立ての助詞⸢ヤ[⸢ja](は)が下接すると、[ni](に)・[ja](は)→ ネー[neː](には)となる。
ニー [⸣niː]二。
ニー [⸣niː]植物の根。ニ⸢バ⸣ル[ni⸢ba⸣ru](大木の根)ともいう。
ニー [⸣niː]荷。荷物。
ニー [⸣niː]{1}ね(子)。十二支の一つで、第一番目に位するもの。
ニー [⸣niː]{2}方角を示す、北。
ニー [⸣niː]{3}時<年>を表す。
ニーアーリ [⸢niːʔaː⸣ri]植物の根が地上に出ること。「根上がり」の義。
ニーアギ [⸢niː⸣ʔagi]二上がり。三線のナ⸢カ⸣ジル[na⸢ka⸣ʤiru](中弦)を本調子より高く音程を上げること。二の弦を上げること。
ニー ウスイ [⸣niː ʔu⸢sui]地上に出ている根を除草の際に土を被せて覆うこと。
ニー ウラスン [⸣niː ʔu⸢ra⸣suŋ]荷を降ろす。積荷を降ろす。
ニー ウラスン [⸣niː ʔu⸢ra⸣suŋ]根を下ろす。植物が根付く。
ニー ウリルン [⸣niː ʔu⸢ri⸣ruŋ]根が下りる。根付く。活着する。
ニーウレー [⸢niː⸣ʔureː]船着場。「荷下し所」の義。⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](サバニ)の荷を降ろしたり、積荷をしたりする浜。
ニーカタミ [⸢niːkata⸣mi]荷担ぎ。荷物を担ぐこと。荷物を担いで運ぶこと。
ニーカタミプス [⸢niːkatami⸣pu̥su]仲仕。土木人夫。荷物を担いで運ぶ人。
ニー カタムン [⸣niː kḁ⸢ta⸣muŋ]荷物を担いで運ぶ。荷を担ぐ。
ニーキシルン [⸢niːki̥ʃi⸣ruŋ]自動根絶やしになる。すっかりなくなる。絶滅する。「根切れる」の義。
ニーキスン [⸢niː⸣kisuŋ]自動絶滅する。すっかりなくなる。根絶やす。「根切る」の義。
ニークサイ [⸢niː⸣kusai]作物の根元の枯れ葉等を取り払って成長させること。野菜等の根元の古い皮を除去して調理すること。こしらえ(拵え)ること。「誘、古之良布(こしらふ)」『華厳音義私記』と関係ある語か。
ニークミルン [⸢niːkumiruŋ]他動煮込む。カツオ節製造工場で、四つ割りにしたカツオを円形の[g]{蒸籠}{セイロウ}に並べ、それを8~10段重ね、大釜に入れて煮込むこと。
ニーグルマ [⸢niːguru⸣ma]荷車。人や牛馬が荷物を運搬する車。
ニーザマ [⸢niːʣama]寝言。
ニーザラコーザラ [⸢niː⸣ʣarakoːʣara]根掘り葉掘りして。しつこく。残さず。「根浚え」の畳語化したもの。⸢ニー⸣ザコーザ[⸢niː⸣ʣakoːʣa](しつこく)ともいう。
ニーシーキー シー [niː⸢ʃiː⸣kiː ⸢ʃiː]もとにして。基礎にして。基盤にして。歌謡語。日常会話では、⸢ニー⸣シキ ⸢シー[⸢niː⸣ʃi̥ki ⸢ʃiː]という。「根付きにして」の義。
ニーシェー [⸢niː⸣ʃeː]若者。青年。「二才」の転訛したもの。沖縄首里方言からの借用語であろう。八重山舞踊勤王流の鼻祖といわれる比屋根安弼(ひやごんあんひつ)は尚泰王7年(1854年)に首里城納殿筆者となり、若里之子に叙されたが、尚泰王18年(1865年)、30歳の時にある罪で鳩間島へ配流となり、廃藩置県の年(明治12年)に流罪放免となるまでの14年間を鳩間島で過ごした「八重山舞踊勤王流伝承略譜」當山善堂『八重山舞踊勤王流関係論考・資料集』という。その間に比屋根安弼が琉球古典芸能を鳩間島の人に伝えたという伝承がある<米盛クヤ氏伝承>。また「鳩間口説」の第6連の囃子には、/イヤイヤー ユタカナルユヌ シルシサミエイー アミヤトゥカグシ カジヤシジカニ シクリムジクイ マンサクソーリバ イヒンカタトゥキ ユダンヤナランサ キットゥキバリヨ ニセタ ウムシルムヌサミ ナマヌパヤシニ クドゥキユミユミ/(いやいやー豊かなる御世の前兆だというものだ。雨は十日ごしに降り、風は静かに吹く。作物は豊年満作しているから、一時も片時も油断はできないよ。しっかり頑張れよ、若者達よ。ずばらしく楽しいものだ。今の囃子で口説きを歌えよ、歌えよ)とあるように、歌詞が沖縄方言で表出されていること、田代安定の「鳩間島巡検統計誌」(明治18年)によると、当時の鳩間島の人口は161人で、うち寄留者は5人おり、丸木舟の所有者も1人は糸満出身であったということから、鳩間島における沖縄方言の受容過程が推定される。鳩間方言の⸢ニー⸣シェー[⸢niː⸣ʃeː](青年。若者)は、以上の理由から首里方言の⸢ニー⸣セー[⸢niː⸣seː](二才。青年)の転訛したものであると考えるのが普通であろう
ニーシェーター [⸢niːʃeː⸣taː]若者たち。青年たち。首里方言より転訛したもの。歌謡語。「~キットゥ キバリヨ ニシェタ[⸢kittu kibarijo niʃeta](しっかり頑張れよ、若者たちよ)」(鳩間口説)
ニーシキイシ [⸢niːʃi̥ki⸣ʔiʃi]地中に深く根を下ろした石。地中の岩盤に繋がる石。「根付き石」の義。
ニーシキルン [⸢niːʃi̥ki⸣ruŋ]自動根付く。根を下ろす。作物の根がおりて成長する。⸢ニー⸣スクン[⸢niː⸣su̥kuŋ](根付く)ともいう。
ニージマルン [⸢niːʤima⸣ruŋ]自動その土地に定着する。定住する。根付く。根を下ろす。
ニー シムン [⸣niː ʃi⸢muŋ]荷を積む。荷を積み込む。
ニージル [⸢niːʤiru]おもゆ(重湯)。物を煮た汁。「煮汁」の義。
ニーズーワン [⸢niːʣuː⸣waŋ]荷が重い。「荷強し」の義。⸢ニーカロー⸣ン[⸢niːkaroː⸣ŋ](荷が軽い)、カ⸢ラ⸣ニー[ka⸢ra⸣niː](軽い荷)の対義語。
ニースクライ [⸢niːsu̥ku⸣rai]根ごしらえ。料理する際に野菜の根をきれいに整えること。「{根拵}{ネ|コシラエ}」の[k]と[s]のメタテーゼ(音位転換)。
ニースクン [⸢niː⸣su̥kuŋ]自動{1}根付く。根をおろす。
ニースクン [⸢niː⸣su̥kuŋ]自動{2}住みつく。定住する。
ニースラ [⸣niːsura]根と梢。根元と先端。根本と[g]{末梢}{コズエ}。
ニーターグー [⸢niːtaː⸣guː]似た者同士。似たもの同士の夫婦。程度の低い者に対する卑下の意味合いが加わる。
ニーディプス [⸢niː⸣dipu̥su]子年生まれの人。
ニーディマリ [⸢niː⸣dimari]ねどし(子年)生まれ。
ニーナル [⸣niːnaru]もとなり(本生り)。植物のつるや幹の元のほうに実がなるもの。⸣スラナル[⸣suranaru](うらなり)の対義語。ム⸢トゥ⸣ナル[mu⸢tu⸣naru](本生り)ともいう。
ニーニ [⸣niːni]ね(子)の日。
ニーヌ ジン [⸢niː⸣nu ⸣ʤiŋi]二の膳。大きな神事、祈願等に神前に供える供物で、二番目に出す供物の膳。ピ⸢カイ[pi̥⸢kai](控えの膳)ともいう。
ニーヌ スーリバル ユダパーン スール [⸢niː⸣nu ⸢suːriba⸣ru ju⸢dapaːn suː⸣ru](根<本家>が強くなって<繁昌して>こそ枝葉<分家>も強くなる<繁昌する>)<諺>
ニーヌパー [⸢niːnu⸣paː]北。ね(子)の方向。
ニーヌパーカジ [⸢niːnu⸣paːkaʤi]北風。強い北風。「子の方の風」の義。冬季の季節風。この北風が吹くと時化になるので、西表島への通耕は難儀を極めた。
ニーヌパーシヌ [⸢niːnu⸣paːʃinu]北。北の方角。「子の方角」の転訛したもの。
ニーヌパープシ [⸢niːnu⸣paːpuʃi]北極星。「子の方の星」の義。
ニーヌブル [⸢niːnuburu]居眠り。若年層は⸢ニーブル[⸢niːburu](居眠り)という。
ニーバキ [⸢niː⸣baki]根分け。株分け。「根分け」の転訛したもの。ニラ、ワケギ等の根を分けて移植すること。
ニーバパヤー [⸢niː⸣bapajaː]早晩。遅かれ早かれ。「遅い速い」の義。
ニーバル [⸣niːbaru](動)魚の名。ハタの仲間の総称。老年層は、⸣ニバル[⸣nibaru]という。和名、サラサハタ(体長約50センチ。薄灰色の体色に黒の斑点が体全体につく)。和名、ユカタハタの仲間(体長約35センチ、灰黒色)。和名、アオノメハタ(体長約35センチ、灰黒色)。和名、アズキハタ(体長約40センチ、薄茶色に茶色の斑点が筋状に並ぶ)。和名、カンモンハタ(体長約20センチ、薄い黄色に灰色の丸い斑点が体表全体、背びれ、尾びれに付く。島の子供たちが礒釣りでよく釣り上げた)。和名、ナミハタ(体長約30センチ、薄い灰色に黒色の斑点が体表全体に付く。⸢マイ⸣ズニ{SqBr}⸢mai⸣ʣuni{/SqBr}<前曽根>や⸢クー⸣シビー{SqBr}⸢kuː⸣ʃibiː{/SqBr}<島の西の干瀬>でタ⸢ティ⸣ナー{SqBr}tḁ⸢ti⸣naː{/SqBr}<一本釣り>でよく釣れた)。和名、セダカハタ(体長約40センチ。薄い黄色に淡い赤色がかった体色)。和名、オオモンハタ(体長約50センチ。薄い灰色に薄く青みがかった体色に灰色の斑点が体表全体にまばらに付く)。和名、シロブチハタ(体長約50センチ。薄い灰色に黒褐色の丸いはんてんが体表全体に付く)。和名、ホオキハタ(体長約80センチ、薄い灰色に黒い筋が斜めに、不規則に走る)、などの総称。などが釣れる
ニーバルイズ [⸣niːbaruʔiʣu](動)魚の名。ハタの仲間の総称。「ハタ魚」の義。
ニーバン [⸢niː⸣baŋ]遅い。
ニーバンウラザ [⸢niːbaŋʔura⸣ʣa]二番裏座。仏間(二番座)の裏座。通常は味噌瓶や{米櫃}{コメ|ビツ}、南瓜、冬瓜、炊事道具等が保管されている。主婦の出産に際しては床を切り落として地炉をつくり、{標縄}{シメ|ナワ}を張り巡らして{産屋}{ウブ|ヤ}を作った所。
ニーバンザー [⸢niːban⸣ʣaː]二番座。戸主夫婦のニ⸢ビシキニ[ni⸢biʃi̥kini](寝室、寝所)となる部屋。この部屋の北面にトゥ⸢クニ[tu̥⸢kuni](仏壇)が設置された。一番座や二番座とはナ⸢カ⸣ヤドゥ[na⸢ka⸣jadu](中戸)で仕切られている。仏事に関する行事はこの部屋から西の座敷が使用された。トゥ⸢クニ[tu̥⸢kuni](仏壇)の下の空間を利用した押入れを、⸢ダン⸣トゥク[⸢dan⸣tuku]という。
ニーバンシームヌ [⸢niːbaŋʃiː⸣munu]料理の名。二番吸い物。主として肉類の吸い物。法事に供える二番吸い物には、⸣サリ[⸣sari](白豆腐。巾約2センチ、厚さ約1センチ、長さ約10センチに切ったもの3本を1皿に入れたものの一対。「舎利」の義か)を添える。神前に供える二番吸い物は、特にフ⸢ク⸣サ[ɸu̥⸢ku⸣sa](⸢袱紗料理」の義か)という。
ニーバンドゥル [⸢niːban⸣duru]二番鶏。夜明けを告げて二番目に鳴く鶏。午前3~4時頃の鶏鳴。
ニービキ [⸣niːbiki]結婚。結婚式。
ニービキヨイ [⸣niːbikijoi]結婚祝い。
ニーブイカーブイ [⸢niːbuikaː⸣bui]こくりこくりと居眠りすること。ねぼける(寝惚ける)。ぼんやりする。ABCDEBCD型の重言。強調表現。
ニーフダ [⸢niː⸣ɸuda]荷札。
ニーブター [⸣niːbutaː]悪性の腫れ物(おでき)。⸢膿瘍(abscess)、細菌性または非細菌性でおこる化膿性の病気。小児に多い」『医学沖縄語辞典』。大腿部、臀部などの脂肪の多い部分に生ずる腫れ物。「Nebuto.ネブト(根太)癤瘍(せつよう)~」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ニーブター [⸣niːbutaː](動)魚の名。ヨコシマタマガシラ(体長約20センチ。糸満方言では、ヒシムチグヮ―)という。ム⸢チイズ[mu⸢ʧiiʣu]に似ている
ニーブター アースン [⸣niːbutaː ⸢ʔaːsuŋ]おでき<膿腫>を切開して膿を出す。悪性の腫物を切開して膿を出す
ニーブヤー [⸢niːbujaː]よく居眠りするひと。寝坊。
ニープリ パープリ [⸢niː⸣puri ⸣paːpuri]根掘り葉掘りして。
ニーブル [⸢niːburu]居眠り。若年層が多く用いる。老年層は⸢ニーヌブル[⸢niːnuburu](居眠り)という。
ニーブルカーブル [⸢niːburukaː⸣buru]しきりに居眠りすること。コクリコクリ居眠りすること。しきりに眠気がさすこと。⸢ニーブル[⸢niːburu](居眠り)を強調した、ABCDEBCD形の重言。若年層は⸢ニーブイカー⸣ブイ[⸢niːbuikaː⸣bui](しきりに居眠りすること)ともいうが、これは首里方言からの借用語。⸢カー⸣ブル[⸢kaː⸣buru]は「かぶり<頭>」の義とする説あり『石垣方言辞典』。
ニーブル スン [⸢niːburu suŋ]居眠りする。
ニーブルナキ [⸢niːburunaki]乳幼児が寝たがって泣くこと。「眠り泣き」の義。
ニーブルミー [⸢niːburumiː]眠たそうな目つき。「居眠り目」の義。眠気を催した目つき。今にも眠りそうな目付き。ダ⸢リ⸣ミー[da⸢ri⸣miː](だれ目。疲れた目つき)ともいう。
ニー プルン [⸣niː ⸣puruŋ]さらけだす({曝}{サラ}け出す)。「根を掘る」の義。よからぬ事をして、親や先祖の失敗や悪い事までも世間にさらけ出すこと。
ニームチ [⸢niːmu⸣ʧi]荷物。
ニームトゥ [⸢niː⸣mutu]{1}根本。根っこ。
ニームトゥ [⸢niː⸣mutu]{2}基本となるところ。血統関係における本家。
ニームトゥ [⸢niːmu⸣tu]根元。根源。
ニーヤーニーヤーシ [niː⸢jaːniːjaːʃi]どことなく似ているさま。⸢ワター⸣ ニー⸢ヤーニーヤー⸣シ ⸢ブーヌ⸣ ウ⸢トゥザ?。⸢クイ⸣ユン ニー⸢ヤーニーヤー⸣シル ⸢ブーバン[⸢wataː⸣ niː⸢jaːniːjaː⸣ʃi ⸢buːnu⸣ ʔu⸢tuʣa。kui⸣jun niː⸢jaːniːjaː⸣ʃiru ⸢buːbaŋ](君達はどことなく似ているが親戚か。声もどことなく似ているよ)
ニーヤーン [⸢niːjaː⸣ŋ]似ている。似ているさま。
ニーラ [⸣niːra]{1}根っから。もとから。全くの。生来の。
ニーラ [⸣niːra]{2}下に打消しの陳述を伴って、「決して~ない」。「一向に~ない」の意を表す。
ニーラコーラ [⸢niː⸣rakoːra]一生懸命。しつこく。隅々まで入念に。根掘り葉掘り。
ニーラスク [⸣niːrasu̥ku]幽界。根の国。地の底。「根の底」の義。⸢ニー⸣レースク[⸢niː⸣reːsu̥ku](根の底)ともいう。遙か彼方。地底に幽界があると考えられている。⸣シチ[⸣ʃi̥ʧi](節祭り)の夜、井戸の側で鍋蓋を被ってうずくまっていると、井戸の底からあの世の生活情報が聞こえてくるという。その音を聞いて、どの家にどんなことが起きるか判断できたという。
ニーラ スラー バーキ [⸣niːra ⸣suraː ⸢baː⸣ki]全部。総て。「根から梢まで」の義。
ニーラブチ [⸢niːrabu⸣ʧi](動)ガ⸢バ⸣ラ[ga⸢ba⸣ra](スズメダイ)の仲間。珊瑚礁の中に住む熱帯魚。
ニーリ [⸢niːri]右。「みぎり<右>」の転訛。「左みぎりに着座して」『謡曲・<草子洗>』。
ニーリッふァイ [⸢niːri⸣ffai]飽き飽きした食べ方。嫌嫌ながら食べること。
ニーリティー [⸢niːritiː]右手。ピ⸢ダリ⸣ティー[pi⸢dari⸣tiː](左手)の対義語。
ニールン [⸢niːruŋ]自動似る。「~猿二鴨似<ニム>」(万、344)の転訛したもの。
ニールン [⸢niːruŋ]自動煮える。
ニールン [⸢niː⸣ruŋ]他動握る。
ニールン [⸢niː⸣ruŋ]他動{1}こねる(捏ねる)。ひねる(捻る)。
ニールン [⸢niː⸣ruŋ]他動{2}つねる(抓る)。
ニールン [⸢niː⸣ruŋ]自動{飽}{アキ}る。うんざりする。ア⸢キルンとも言う。
ニーレーヌ コンチェンマ [⸣niːreːnu kon⸢ʧem⸣ma](動)昆虫の名。けら(螻)『八重山語彙』。湿った土の中から出てくるという。死語化しつつある。
ニーレンツー [⸢niː⸣renʦuː]みりん(味醂)。「味醂酒」の義。石垣方言からの転訛。滅多に作らなかった。
ニーレンツォー [⸢niː⸣renʦoː]地底の人。根の国の人。後生の人。あの世の人。
ニカ [⸣nika]今夜。今晩。
ニガイ [⸣nigai]{1}願い。願い事。歌謡語。/ウマンチュヌ ニガイヤヨー アカカラジヌ ニガイヤヨー ハーリ アミタバリ リューガナシ/(庶民の願いは、百姓の願いは、はーり、雨をお恵み下さい竜神さま)(アマングイウタ<雨乞い歌>)。神事に関する祈願は、日常会話では、⸢ニン⸣ガイ[⸢niŋ⸣gai](祈願)というのが普通である。「~なほし祢我比都千歳の命を。万、4470」の義。若年層はこれを⸣ニガイ[⸣nigai](祈願)というようになっている。⸢ウンキヌニン⸣ガイ[⸢ʔuŋkinu niŋ⸣gai](運気の祈願)、⸢ヤシキ⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[⸢jaʃi̥ki⸣nu ⸢niŋ⸣gai](屋敷の祈願)のようにいうのが普通。
ニガイ [⸣nigai]{2}⸣ニガイ[⸣nigai](願い)は、発話者の希望や願望を表す。/ウマンチュヌ ニガイヤヨー アカカラジヌ ニガイヤヨー ハーリ アミタボリ リューガナシ/(御万人<人民>の願いは、百姓の願いは、ああ雨を賜れ、竜神さま)(雨乞い歌。<ハヤミク>)『鳩間島古典民謡古謡集』
ニガイグトゥ [ni⸢gai⸣gutu]願い事。
ニガイシキルン [ni⸢gaiʃi̥ki⸣ruŋ]他動深く祈る。深く祈願する。一所懸命に祈る。
ニガイスクン [ni⸢gai⸣su̥kuŋ]他動深く祈る。深く祈願する。一所懸命に祈る。
ニガイプス [ni⸢gai⸣pu̥su]祈願者。⸢ニンガイ⸣プス[⸢niŋgai⸣pu̥su](祈願する人)ともいう。普通はサ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司)が担当するが、司に準じて神仏に祈願することの出来る親戚縁者の老婆が担当することもある。神仏に祈願することを職能とする人。祈願する人。
ニガイブスク [ni⸢gaibusu̥⸣ku]祈願不足。老年層は、⸢ニンガイブス⸣ク[⸢niŋgaibusu̥⸣ku](祈願不足)という。
ニガイフチ [ni⸢gai⸣ɸu̥ʧi]のりと(祝詞)。⸢ニンガイ⸣フチ[⸢niŋgai⸣ɸu̥ʧi](祝詞)ともいう。
ニカイヤー [⸣nikaijaː]二階建。「二階家」の義。鳩間島に二階建の家はなかった。鰹節製造工場の⸢バイカン⸣ヤー[⸢baikaŋ⸣jaː](焙乾屋)は切妻屋根の構造で、中二階、屋根裏部屋の三段に仕切られていた。最上段まで上げて焙乾し、燻製にした鰹節を⸣ピギテイ[⸣pigiti](表面を削って<剥いで>)製品化して出荷した。
ニガイルン [ni⸢gai⸣ruŋ]他動願う。祈る。祈願する。
ニガウン [⸣nigauŋ]他動{1}祈願する。神仏に祈る。
ニガウン [⸣nigauŋ]他動{2}お願いする。
ニカヌ ユー [ni⸢ka⸣nu ⸣juː]今夜。「今夜の夜」の義。
ニキマイ [ni⸢ki⸣mai]二期作のお米。一期作の稲を収穫した後、田を耕し播種植え付けをして10月頃に稲刈り収穫する稲。蓬莱米が作付けされるようになって水稲の二期作が広まった。
ニク [⸣niku]{1}肉。豚や牛、猪、山羊の肉等にいう。
ニク [⸣niku]{2}人の筋肉や豚肉や牛肉、猪の肉には⸢シー⸣シ[⸢ʃiː⸣ʃi](肉)という。「肉、之之(しし)、肌膚之肉也」『和名抄』の転訛。
ニクシキヨー [ni⸢kuʃi̥ki⸣joː]肉付き。筋肉の付き方。
ニコミ [ni⸢komi]煮込み。標準語からの借用語か。カツオ漁業の導入によって借用された語であろう。伝統方言では、イ⸢ズネーシ[ʔi⸢ʣuneːʃi](魚煮)という。鰹節製造工場には直径約1、2メートル、深さ約1、5メートルの大釜が三基設置されており、そのイ⸢ズネーシガマ[ʔi⸢ʣuneːʃigama](魚を煮る釜)の中にナカワリ(三枚卸)やヨツワリ(四つ割。雄節<背肉部>、雌節<腹肉>に分けること)にしたカツオを、直径約90センチ、高さ約10センチの丸いカ⸢グ[ka⸢gu](煮籠)に詰め並べ、その上に新鮮な⸣ガヤー[⸣gajaː](茅)で薄く被い、その煮籠を12~13枚重ねて大きな板の蓋をし、重石を乗せて煮込むこと。煮込んだカツオは大釜の上の滑車にロープをかけて引き上げた
ニザマ [ni⸢ʣama]寝相。「寝様」の義。
ニシ [ni⸢ʃi]北。「子・し<風>の方」の義か。
ニジ [⸣niʤi]ねじ(螺子)。
ニジ [⸣niʤi]我慢。堪えること。⸣ニズン[⸣niʣuŋ](我慢する)の連用形から転成した名詞。
ニシェーキ [ni⸢ʃeːki]北側。北の方。基準となる地点から連続した北側の地点。
ニシェーパヤー [ni⸢ʃeːpajaː]南北。「北・南」の義。
ニシカジ [ni⸢ʃikaʤi]北風。
ニジカンティ [ni⸢ʤikan⸣ti]こらえ(堪え)兼ねること。動詞の連用形に⸢~カン⸣ティ[⸢~kan⸣ti](~出来ない<不可能>)が付いた形。「~流るる涙 等騰未可祢都母<とどみかねつも>。万、4160」の転訛。
ニシクビ [ni⸢ʃikubi]{1}北壁。家の北壁。
ニシクビ [ni⸢ʃikubi]{2}北の空。四周を取り巻く壁のような大空の北側。北壁。
ニジッピル [⸣niʤippiru]二十尋。⸣ピル[⸣piru]は、10未満の数に付く際は⸣ヒル[⸣çiru]といい、両手を左右に広げた時の両手先の間の距離を表して、プ⸢ス⸣ヒル[pu̥⸢su⸣çiru](一尋)、フ⸢タヒル[ɸu̥⸢taçiru](二尋)と数える。10以上を数える際、10、11、13、14、16、18、20の数に⸣ピルを用いる。縄の長さや水深などを計る際の単位として用いられる。
ニシドー [ni⸢ʃi⸣doː](地)西堂と表記されているが、語源は、ニ⸢シ[ni⸢ʃi](北)・⸢タウ[⸢tau](窪地、平地)であろう。「北窪地」の義である。ナ⸢カン⸣ブレ[na⸢kam⸣bure](中岡)の北部の麓から⸢ウイヌカー[⸢ʔuinukaː](上の井戸)に至る一帯の平坦な窪地を指す。
ニシドーウガン [ni⸢ʃi⸣doːʔugaŋ]西堂御嶽。{ナ⸢カン⸣ブレ[na⸢kam⸣bure](鳩間中岡)の西にあるパ⸢カヤマ[pḁ⸢kajama](墓山)の北東斜面に位置する⸣ウガン[⸣ʔugaŋ](御嶽)}。東北に向いた墓を御嶽にしたもの。伝承によると、宮古島の方に向けて作られているという。島の創建者となった人が宮古島から与那国のウニトゥラ征伐に行く途中、一旦鳩間島で休んで力をつけ、与那国征伐を成功させたという。その人が与那国から宮古島へ凱旋の途中鳩間島に残り、そこで一生を終えたという。その人を葬った墓が現在のニ⸢シ⸣ドーウガンであり、そこに⸣サヤンガタナ[⸣sajaŋgatana](鞘刀)と杯が副葬品として埋葬されていたという。明治期に入り、糸満から来島したイ⸢ガピキプス[ʔi⸢gapi̥kipusu](烏賊漁師)と妻の⸣ミサーバーチー[⸣misaːbaːʧiː](ミサー叔母さん)がキ⸢ダシケー[ki⸢daʃi̥keː](石嶺家)に宿っていた。そのミサーバーチーがスズー⸢コ⸣ フ⸢ダマリティ[suʣuː⸢ko⸣ ɸu⸢damariti](重篤な神懸り)をしてウ⸢ブナクラーローッ⸣タンツォー[ʔu⸢bunakuraːroːt⸣tanʦoː](大変怖かったそうだ)。その方の⸢カンダー⸣リ[⸢kandaː⸣ri](神懸りして神のお告げをすること)に基づいて墓が御嶽に建立され、初代のサ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司)にはパ⸢トゥ⸣メーヌ ⸣アッパ[pḁ⸢tu⸣meːnu ⸣ʔappa](鳩間家のお祖母さん)が就任され、二代目の司にはニ⸢シムレーヌ⸣ アンマー[ni⸢ʃimureː⸣nu ⸣ʔamma](米盛クヤ氏)が後を継がれた。⸢カンダー⸣リ[⸢kandaː⸣ri](神懸り)に基き、その墓をニ⸢シ⸣ドーウガン[ni⸢ʃi⸣doːʔugaŋ](御嶽)として創建した際、仲底家、鳩間家の方々によって墓が開けられたが、その時には金の杯と刀剣が発掘されたという。そこで村人と共に、その杯で酒を酌み交わそうとしたが、その際に杯が音をたてて割れたので人々は神慮を感じ、それらをもとの場所に戻して墓を密閉し、神域として祭るようになったという。以後、同御嶽は代々仲底家と鳩間家の血統による神司によって司祭されてきたが、墓の宝物は盗掘にあって今は伝わらないという(鳩間真吉氏伝承)
ニシバネー [ni⸢ʃibaneː]屋号。鳩間村六班の、ナ⸢カン⸣テーヌ ⸢ヤシ⸣キ[na⸢kan⸣teːnu ⸢jaʃi̥⸣ki](仲本家の屋敷)の西隣の空き屋敷の名
ニシマッふァ [ni⸢ʃimaffa]北枕。
ニシミジ [ni⸢ʃi⸣miʤi](地)現在の中野集落と住吉集落の中間の水田地帯。ウ⸢ランザ⸣キ[ʔu⸢ranʣa⸣ki](宇奈利崎)の東部一帯の湿地帯を開拓して水田にした所。ッ⸢サンタヌ⸣ イ⸢ラ⸣ブレー[s⸢santanu⸣ ʔi⸢ra⸣bureː](下の西原家)、⸢ヨー⸣カヤー[⸢joː⸣kajaː](西原家)、トゥ⸢ムレー[tu⸢mureː](友利家。田代家)などの水田があった
ニシムレー [ni⸢ʃimureː]屋号。米盛松氏宅。若年層は、ユ⸢ニムレー[ju⸢nimureː](米盛家)ともいう。米盛松氏の妻、米盛クヤ氏は鳩間家の出身で、ニ⸢シ⸣ドーウガン[ni⸢ʃi⸣doːʔugaŋ](西堂御嶽)のサ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司。女性神職者)であった。クヤ氏は大工ヨボシ氏(大正12年8月現在、友利御嶽のサ⸢カサ{SqBr}sḁ⸢kasa{/SqBr}<神司>であった)から鳩間島の古謡や神歌、ニ⸢ガイ⸣フチ[ni⸢gai⸣ɸu̥ʧi](のりと<祝詞>)を習い覚えたと言う。米盛正雄氏は、戦後鳩間島から友利武雄氏と共に最初に竹富町役場に就職された。
ニシムレーヌ ギサザーテー [ni⸢ʃimureːnu⸣ gisazaːteː]屋号。米盛敏夫氏宅。ニ⸢シムレー[ni⸢ʃimureː](米盛家)の分家で、本家の西側の屋敷にあった
ニジュー [⸣niʤuː]二十。標準語からの借用語。老年層は、普通⸢ニン⸣ズ[⸢nin⸣ʣu](二十)という。
ニジューグニンキ [⸣niʤuːgu⸢niŋki]二十五年忌。法事で始めて赤い色を料理や仏具に用いることができる。祝いに準じる法事。
ニジルン [ni⸢ʤi⸣ruŋ]他動我慢する。堪える。「念ずる」の転訛したもの。⸣ニズン[⸣niʣuŋ](我慢する)のラ行四段化したもの。
ニシンタ [ni⸢ʃinta]北側。北の方。基準点と連続していなくてもよい北側。
ニス [⸣nisu]二升<数詞>。
ニスダキ [ni⸢su⸣daki]二升炊き用の釜。
ニズン [⸣niuŋ]自動我慢する。こらえる(堪える)。辛抱する。「~念じ過ぐし給ひつつ~」『源氏物語、幻』。
ニターニターシ [ni⸢taːnitaː⸣ʃi]ねたましい<妬ましい>そうに。憎らしいそうに。ニッ⸢ターニッター⸣シ[nit⸢taːnittaː⸣ʃi](妬ましいそうに)ともいう。
ニタカマ [ni⸢takama]似た者同士。同類。
ニタムヌ [ni⸢tamunu]似た者。似通った者。標準語から転訛。
ニタムン [ni⸢ta⸣muŋ]他動ねたむ(妬む)。恨む。標準語から転訛したもの。普通は、⸢ニッ⸣ター ⸢スン[⸢nit⸣taː ⸢suŋ](妬む。<妬さ・する>の義)という。
ニダン [ni⸢daŋ]値段。標準語の「値段」から転訛。普通は、⸢ダイ[⸢dai](値段。代価)という。
ニチ [⸣niʧi]{1}熱。暑さ。
ニチ [⸣niʧi]{2}体温。病気などによる発熱。
ニチ [⸣niʧi]助数日。日数を数える単位。
ニチーニチー [niʧiː⸢niʧiː]粘り強いさま。しつっこいさま。執念深いさま。「ねちねち」の訛言か。
ニチサマシ [ni⸢ʧisama⸣ʃi]解熱剤。熱冷まし。
ニチ サマルン [⸣niʧi sa⸢ma⸣ruŋ]解熱する。熱が冷める。熱が下がる。
ニチパンパン [⸣niʧipampaŋ]高熱が出てほめくさま。熱で火照るさま。
ニチ ポーポー [⸣niʧi ⸢poːpoː]熱が高いさま。発熱しているさま。「ねつほうほう(熱蓬蓬)」の義か。
ニチョールー [ni⸢ʧoː⸣ruː]似たもの同士。似たり寄ったり。大同小異の者同士。変りばえのしない者同士。ニ⸢タカマ[ni⸢takama](似た者同士)と同じ。沖縄方言からの借用語か。
ニッカ [nik⸢ka]{1}遅い時刻。夜更け。
ニッカ [nik⸢ka]{2}遅い時期。長期間経つこと。
ニッター スン [⸢nit⸣taː ⸢suŋ]妬ましく思う。ねたむ(妬む)。恨む。「妬ましさ・する」の義。
ニッターン [⸢nit⸣taːŋ]ねたましい(妬ましい)。恨めしい。憎らしい。
ニッタサガマラサ [⸢nitta⸣sagamarasa]恨めしく悲しく思うこと。「憎らしさ悲しさ」の義。
ニッタンツルギ [⸢nittanʦuru⸣gi]二反続きの反物。「二反繋ぎ」の転訛。一疋(布帛二反)。
ニットー [⸢nittoː]日当。日給。標準語から転訛。
ニッふァー スン [⸢nif⸣faː ⸢suŋ]憎む。「憎く・する」の義。
ニッふァーン [⸢nif⸣faːŋ]憎らしい。憎い。
ニッふァイジ [⸢niffaʔiʤi]憎らしげに叱ること。口汚く叱ること。憎さにまかせて叱ること。「憎さ・叱り」の義。
ニッふァマリ [⸢niffamari]憎まれっ子。皆から嫌われる、可愛げのない子。人に好かれない性格。
ニッふァムー [⸢niffamuː]憎まれもの。嫌われ者。憎らしく思う者。憎い者。憎く思う対象。⸢ニッふァムヌ[⸢niffamunu](嫌われ者)のぞんざいな発音。
ニッふァムニ [⸢niffamuni]憎まれ口。憎憎しい物言い。
ニッふァムヌ [⸢niffamunu]憎まれもの。憎らしく思う者。憎らしく思われている者。嫌われている者。
ニニチ [ni⸢ni⸣ʧi]二日。標準語からの借用語。
ニヌブーヤー [ni⸢nubuːjaː]鋼材で造った家。歌謡語。カ⸢ニブーヤー[ka⸢nibuːjaː](鋼材で造った家)の対語。
ニバスン [ni⸢basuŋ]他動{1}寝かせる。
ニバスン [ni⸢basuŋ]他動{2}米、麦、粟などを蒸して、むろ<室>に入れ、麹になるようにする。
ニバル [ni⸢ba⸣ru]{1}木の根っこ。木の根元。
ニバル [ni⸢ba⸣ru]{2}根が地表に這っている部分。「根張り」の義か。
ニバル [⸣nibaru](動)魚の名。ハタの仲間の総称。若年層では、⸣ニーバル[⸣niːbaru](ハタの仲間)ともいう。⸢イーリマイズニ[⸢ʔiːrimaiʣuni](西前曽根)辺りでは、サラサハタがよく釣れた。ミーグチグヮー[⸢miːguʧi⸣gwaː](「新小津口」の義)では、ユ⸢ダヤー⸣ニバル[ju⸢dajaː⸣nibaru](マダラハタ)や⸢アーラ⸣ニバル[⸢ʔaːra⸣nibaru](マハタ)などが、ム⸢チイズ[mu⸢ʧiʔiʣu](のこぎりだい)を生餌にするとよく釣れた。
ニバル [⸣nibaru](動)魚の名。和名、サラサハタ。明治生まれの老年層のことば。若年層は⸣ニーバル[⸣niːbaru](サラサハタの仲間)という。⸣ニーバル[⸣niːbaru]の項参照
ニバルブッター [ni⸢ba⸣rubuttaː]根っこが膨らんでいるもの。
ニビアウ [ni⸢biʔau]添い寝をする人。そいぶし(添い臥し)する友。花嫁と一緒に添い寝をする友。ニ⸢ビアグ[ni⸢biʔagu](寝仲間)の転訛したものか。古くは結婚式の夜、花嫁が寂しがらないようにと、友達が一緒に寝てやる習慣があったという。
ニビアシ [ni⸢biaʃi]寝汗。
ニビウイ [ni⸢biʔui]背泳。「寝泳ぎ」の義。
ニビカイヤン [ni⸢bikai⸣jaŋ]{寝相}{ネ|ゾウ}がよい<美しい>。
ニビキン [ni⸢bikiŋ]寝間着。
ニビククチ [ni⸢bikukuʧi]寝心地。
ニビザマ [ni⸢biʣama]{寝相}{ネ|ゾウ}。ねざま。寝ている時の格好。
ニビシガーシ [ni⸢biʃigaːʃi]寝違え。筋違いスジチ ガィ。寝方が悪かったため、首などが筋ちがいをして痛むこと。
ニビシキニ [ni⸢biʃi̥kini]寝床。寝室。座敷。「寝・敷き寝」の義か。シ⸢キ⸣ニ[ʃi̥⸢ki⸣ni](寝床。座る場所。敷き寝)ともいう。
ニビシギルン [ni⸢biʃigiruŋ]自動寝過ごす。度を超して寝る。若年層は、ニ⸢ビスギルン[ni⸢bisugiruŋ](寝過ごす)という。
ニビスーブ [ni⸢bisuːbu]眠り競争。寝付きの早いのを競うこと。
ニビズク [ni⸢biʣuku]寝る頃合い。寝るのに丁度良い時刻。
ニビスグシ [ni⸢bisuguʃi]寝過ごし。朝寝坊。若年層の言葉。老年層は、ア⸢サ⸣ニビ[ʔa⸢sa⸣nibi](朝寝)という。
ニビスクライ [ni⸢bisu̥kurai]寝たふり。「寝繕い」の義か。若年層は、ニ⸢ビマービ[ni⸢bimaːbi](眠り真似)ともいう。
ニビスコール [ni⸢bisu̥koːru]寝る準備。寝支度。
ニビタールン [ni⸢bittaruŋ]自動寝入る。眠りふける。熟睡する。ぐっすり寝る。「ね・たはれ(寝・戯れ)」の転訛したものか。「戯れ」は「~容<かほ>よきによりてぞ妹は多波礼弖<タハレテ>ありける。万葉、1783」の転訛したものか。
ニビッタル ウキッタル [ni⸢bittaru⸣ ʔu⸢kit⸣taru]寝たり起きたり。起き伏しすること。不元気な状態でいること。
ニビバナ [ni⸢bibana]寝入りばな。熟睡した頃。深く寝入ったころ。「ねばな(寝端)」の義。「Neiribana,ネイリバナ(寝入り端) 人が眠りについた初めの深い眠り」『邦訳日葡辞書』の転訛か。
ニビパナシ [ni⸢bipanaʃi]寝物語。夫婦、兄弟、友人等が寝ながら話をすること。
ニビパンツァスン [ni⸢bipanʦasuŋ]自動寝そびれる。眠り損ねる。ねはぐれる。「眠り外す」の義。
ニビフカスン [ni⸢biɸukasuŋ]自動寝過ごす。深く寝入る。
ニビブガリ [ni⸢bibugari]寝疲れ。寝過ぎたためにかえってだるく感じること。
ニビブスク [ni⸢bibusuku]寝不足。睡眠不足。ニ⸢ビタラーヌ[ni⸢bitaraːnu](眠り足りない。寝不足)ともいう。
ニビフチ [ni⸢biɸuʧi]ねいりばな(寝入り端)。どうやって、いつ寝たかということ。ねむること。睡眠の仕方。
ニビフチル [ni⸢biɸu̥ʧiru]眠り薬。
ニビマービ [ni⸢bimaːbi]寝たふり。寝る真似。
ニビヤッサン [ni⸢bijas⸣saŋ]寝やすい。寝入りやすい。寝つきやすい。
ニビヤニヤン [ni⸢bijani⸣jaŋ]寝相が悪い。
ニビングリサン [ni⸢biŋguri⸣saŋ]寝苦しい。
ニビントン [ni⸢bintoŋ]寝る所。寝所。
ニブク [ni⸢bu⸣ku]いなばきむしろ(稲掃筵)。藁で{絨毯}{ジュー|タン}のように精巧に編み上げた筵。縦横六尺と九尺の大きさに編んだ二種類のニ⸢ブ⸣ク[ni⸢bu⸣ku]があった。石垣ではニ⸢カフク[ni⸢kaɸuku]という。その上に籾を干したり、ピ⸢キウシ[pi̥⸢kiʔuʃi](碾き臼。磨臼)を据え置いてイ⸢ニ⸣ピキ[ʔi⸢ni⸣pi̥ki](籾擂り。籾殻を取り去る)の作業をしたり、シ⸢キ⸣ウシ[ʃi̥⸢ki⸣ʔuʃi](搗き臼)を据えて米搗きをしたりした。畳が導入される前は、これをタ⸢キフン⸣ツァ[tḁ⸢kiɸun⸣ʦa](竹床)の上に敷き、更にその上にアダンバ筵を敷いて寝たという。
ニフターン [⸢niɸu̥⸣taːŋ]眠たい。「ねぶたし(眠たし)」『源氏・若紫』の転訛したもの。
ニフターンギサン [⸢niɸu̥taːŋ⸣gisaŋ]眠たげ。眠たそうである。
ニフターンギサン [⸢niɸu̥taːŋ⸣gisaŋ]{2}形容詞、形容詞型助動詞の語幹に接尾語「⸢-ン⸣ギサン[⸢-ŋ⸣gisan](~気。~そうだ)」が下接して、⸣プサンギサシ[⸣pu̥saŋgisaʃi](欲しそうに<欲しげに。欲しそうに>)、カ⸢キ⸣プサンギサシ ミリ⸢ベー[kḁ⸢ki⸣pu̥saŋgisaʃi miri⸢beː](書きた気に<そうに>見ている)のように用いられる}
ニブタターナ [ni⸢butataː⸣na]寝たまま。寝たっきり。
ニブマドゥ [ni⸢bu⸣madu]寝る暇。寝るべき時間。睡眠時間。
ニブミーン ニバヌ [ni⸢bu⸣miːn ni⸢banu]眠る目も眠らないで。寝るべき時間にも寝ずに。休む暇もなく。
ニブン [ni⸢buŋ]自動眠る。寝る。「Nemuri、u、utta.ネムリ、ル、ッタ(眠り、る、った)」『邦訳日葡辞書』の転訛。
ニボシ [ni⸢boʃi]煮干し。標準語からの借用語。⸢シー⸣ラ[⸢ʃiː⸣ra](カツオの餌となる小魚)、ガ⸢サガ⸣サー[gasagasaː](カツオの餌となる小魚)、サ⸢ネー⸣ラ[sa⸢neː⸣ra](カツオの餌となる小魚)、⸣ザコー[⸣ʣakoː](雑魚。カツオの餌となる小魚)、バ⸢カザ⸣コー[ba⸢kaʣa⸣koː](カツオの餌になる小魚)などを煮て天日乾燥したもの。出汁用に売っていた。
ニヤー [⸣nijaː]琉球国時代の新参士族。先島の士族が元服後最初に付ける称号。役職に付いた百姓も称するという。「仁屋」と書く。『石垣方言辞典』。
ニューカン [ɲuːkan]入棺。最後の別れをしてから、死者を棺に納めること。標準語からの借用語。
ニヨープトゥキ [nioːpu̥tuki]仁王仏。石垣島の桃林寺の山門に安置されている「仁王仏像」。鳩間島では、幼児期に病弱な子供は、この仁王仏像を拝ませると健康になると信じられていた。病弱な子供は年に一度仁王仏像を拝ませに桃林寺へ連れて行った。仁王像の法力によって幼児に取り憑いている病気の神が祓われると信じられていたからである。
ニン [⸣niŋ]{1}念。入念。心をこめること。
ニン [⸣niŋ]{2}熱意。執念。
ニン [⸣niŋ]助数人。人数を数える単位。1から4までの数にはル[ru](人)が付き、それ以上はニン[niŋ](人)が付く。標準語からの借用語。
ニン [⸣nin]助数ねん(年)。年を数える単位。
ニンイラー [⸣niŋʔiraː]入念な人。熱心な人。念を入れて仕事をする人。
ニンイリ [⸢niŋ⸣ʔiri]念入りに。注意深く丁寧に。熱心に。几帳面に。
ニン イルン [⸣niŋ ʔi⸢ruŋ]思いを籠める。念を入れる。入念にする。一所懸命にする。
ニンガイ [⸢niŋ⸣gai]祈願。願いごと。⸢ヤシキ⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[⸢jaʃi̥ki⸣nu ⸢niŋ⸣gai](屋敷の祈願)、⸢ウンキヌ ニン⸣ガイ[⸢ʔuŋkinu niŋ⸣gai](運気の祈願。健康祈願)等がある。
ニンガイグトゥ [⸢niŋgai⸣gutu]神事祈願。仏事祈願。
ニンガイプス [⸢niŋgai⸣pu̥su]祈願する人。サ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司。女性神職者)やティ⸢ジリ⸣ビー[ti⸢ʤiri⸣biː](男性神職者。手擦り部)などの神職者。
ニンガイフチ [⸢niŋgai⸣ɸu̥ʧi]祝詞。祈りの詞。「願い口」の義。
ニンガイムヌ [⸢niŋgai⸣munu]神への供え物。供物。神仏への供物のお下がりのご馳走は、⸣ウサンダイ[⸣ʔusandai](供物のお下がり)という。
ニンガイルン [⸢niŋgai⸣ruŋ]他動祈る。祈願する<老年層>。ニ⸢ガイ⸣ルン[ni⸢gai⸣ruŋ](願う。祈る。祈願する)<若年層>ともいう。
ニンガウン [⸢niŋ⸣gauŋ]自動願う。祈願する。祈る。⸣ニガウン[⸣nigauŋ](祈願する。願う)ともいう。
ニンガチ [⸢niŋga⸣ʧi]二月。若年層のことば。
ニンガラニンズー [⸢niŋgaraninʣuː]年から年中。一年中。⸢ニンガニンズー[niŋganinʣuː](年中)ともいう。
ニンキソッコー [⸢niŋkisok⸣koː]年忌の法事。命日に行う法事。「年忌焼香」の義。ユ⸢ノー⸣レー[ju⸢noː⸣reː](一年忌)、⸢サンニン⸣キ[sanniŋ⸣ki](三年忌)、シ⸢チニン⸣キ[ʃi̥⸢ʧiniŋ⸣ki](七年忌)、⸢ジュー⸣サンニンキ[⸢ʤuː⸣sanniŋki](十三年忌)、⸣ニジューグ⸢ニンキ[⸣niʤuːgu⸢niŋki](二十五年忌)、⸣サンジュー⸢サンニン⸣キ[⸣sanʤuː⸢sanniŋ⸣ki](三十三年忌)、ウ⸢サンギソッコー[ʔu⸢saŋgisokkoː](押し上げ焼香。三十三年忌)ともいう。
ニンキフークー [⸢niŋkiɸuː⸣kuː]ねんきぼうこう(年季奉公)。
ニンギョー [⸢niŋ⸣gjoː]人形。標準語からの借用語。
ニンギン [⸢niŋ⸣giŋ]人間。プ⸢スニンギン[pu̥⸢suniŋgiŋ](人間。ひと人間)ともいう。
ニング [⸢niŋgu]年貢。
ニングゾーノー [⸢niŋguʣoːnoː]年貢上納。
ニングマイ [⸢niŋgumai]年貢米。⸢ゾーノー⸣マイ[⸢ʣoːnoː⸣mai](上納米)ともいう。
ニングヮチ [⸢niŋgwa⸣ʧi]二月。若年層は⸢ニンガ⸣チ[⸢niŋga⸣ʧi]という。
ニングヮチウーアミ [⸢niŋgwaʧiʔuː⸣ʔami]旧暦二月に降る大雨。⸢ニンガチウー⸣アミ[⸢niŋgaʧiʔuː⸣ʔami]ともいう。⸢ニングヮチカジマー⸣ル[⸢niŋgwaʧikaʤimaː⸣ru](旧暦二月に急に吹く強い北風。台湾坊主。東シナ海に発生する低気圧)とともにやってくる。
ニングヮチカジマール [⸢niŋgwaʧikaʤimaː⸣ru]二月風回り。若年層は⸢ニンガチカジマー⸣ル[⸢niŋgaʧikaʤimaː⸣ru]ともいう。旧暦二月に急に吹く強風。台湾坊主<東シナ海低気圧>の一種。東シナ海に発生する低気圧。
ニングヮチタカビ [⸢niŋgwaʧitaka⸣bi]⸢ニンガチタカ⸣ビ[⸢niŋgaʧitaka⸣bi]ともいう。この祭祀において、⸢ニングヮチニン⸣ガイ[⸢niŋgwaʧiniŋ⸣gai](二月願い)とヤ⸢マタカビ⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[ja⸢matakabi⸣nu ⸢niŋŋ⸣gai](山崇べの祈願。虫払いの祈願)が行われた。
ニングヮチニンガイ [⸢niŋgwaʧiniŋ⸣gai]「二月願い」の義。⸢ニンガチニン⸣ガイ[⸢niŋgaʧiniŋ⸣gai]ともいう。旧暦二月のミ⸢ジニー[mi⸢ʤiniː](壬)の日に執り行われる祭祀。この祭祀には (i) ⸢ゾーシキ⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ[⸢ʣoːʃi̥ki⸣nu ⸢niŋ⸣gai](雑色<村役人>の健康と、村の祭祀がスムースに執り行えるように祈願するもの)、(ii) ⸣アカカラジヌ ⸣ニガイ[⸣ʔakakaraʤinu ⸣nigai](一般百姓のための健康祈願)、(iii) イ⸢ニアー⸣ヌ ⸣ニガイ[ʔi⸢niʔaː⸣nu ⸣nigai](⸢稲粟の祈願」。豊作祈願)、(iv) ア⸢ミニン⸣ガイ[ʔa⸢miniŋ⸣gai](「雨願い」の義。農作物のために、十日超し、十五日超しの夜雨の降ることを祈願すること)、(v) マ⸢ミ⸣ヌ ⸣ニガイ[ma⸢mi⸣nu ⸣nigai](豆の豊作祈願)、(vi) ⸢ミー⸣シキパナシキヌ ⸣ニガイ[⸢miː⸣ʃi̥kipanaʃi̥kinu ⸣nigai](流行病<風邪>予防の祈願)、(vii) ⸢マイムン⸣ヌ ッ⸢サバー⸣ヌ ⸣ニガイ[⸢maimun⸣nu s⸢sabaː⸣nu ⸣nigai](稲、麦の下葉の願い<稲、麦の成長祈願>)、(viii) ム⸢シヌ ニン⸣ガイ[mu⸢ʃinu niŋ⸣gai](害虫駆除の祈願)などが執り行われていたが、大部分の祈願が省略された。
ニングヮチピラク [⸢niŋgwaʧipira⸣ku]旧暦二月頃の厳しい寒さ。若年層は、⸢ニンガチピラ⸣ク[⸢niŋgaʧipira⸣ku]ともいう。その時期は田植え仕事と重なるので、鳩間島の人は西表島北岸の田圃小屋で一週間ずつ寝泊りしながら、厳しい寒さの中で田仕事をした。そんな時にピ⸢ラ⸣クイズ[pi⸢ra⸣kuʔiʣu](凍死寸前の魚。沿岸に浮いている)を拾って食したものである。
ニングヮン [⸢niŋgwaŋ]念願。心にかけて願うこと。
ニンゴー [⸢niŋ⸣goː]酒、醤油や米、麦、粟、豆などを計量する単位。二合。
ニンゴーイー [⸢niŋgoː⸣ʔiː]白米二合を炊いたもの。
ニンゴーパナ [⸢niŋgoː]二合のパ⸢ナン⸣グミ[pa⸢naŋ⸣gumi](花米。神仏に供える米)。1960年ごろまでは、親戚の家に法事があると、香典は包まず、小さな重箱に二合の米を入れ、イ⸢ツァ⸣カウ[ʔi⸢ʦa⸣kau](板線香)三枚を入れて届けた。緊急に神仏へ祈願する必要がある場合は、⸢ニンゴー⸣パナ[⸢niŋgoː⸣pana](二合花米)と⸣グシ[⸣guʃi](酒)を用意して祈願した。
ニンゴービン [⸢niŋgoː⸣biŋ]二合瓶。二合入りの酒瓶。⸢ニンゴー⸣クビン[⸢niŋgoː⸣kubiŋ](二合瓶)ともいう。
ニンジュー [⸢nin⸣ʤuː]二十。二十歳。
ニンジョー [⸢ninʤoː]人情。標準語からの借用語。なさけ(情け)。普通は、キ⸢ムアツァー⸣ン[ki⸢muʔaʦaː⸣ŋ](肝<人情>が篤い)という。
ニンジョームチ [⸢ninʤoːmuʧi]人情に篤い人。愛情深い人。愛情のこまやかな人。「人情持ち」の義。⸢ジョームチ[⸢ʤoːmuʧi](人情持ち<人情に厚い>)ともいう。
ニンジンキョー [⸢nin⸣ʤiŋkjoː](植)薬草の名。ウイキョウ(茴香)。全体的に芳香がある。山羊汁や鶏汁、魚汁に入れ、健胃薬として食された。
ニンズ [⸢nin⸣ʣu]数詞。二十。若年層は⸢ニン⸣ジュ[⸢nin⸣ʤu](二十)ともいう。
ニンスー [⸢ninsuː]年数。
ニンズー [⸢ninʣuː]年中。一年の間。
ニンズー [⸢nin⸣ʣuː]{1}仲間。
ニンズー [⸢nin⸣ʣuː]{2}人数。
ニンズダー [⸢ninʣu⸣daː]約二百坪の田。20⸢マラ⸣キ[⸢mara⸣ki](丸ぎ)の稲を収穫できる田の意。
ニンソー [⸢ninsoː]人相。人の顔つき。
ニントゥー [⸢nintuː]年頭の挨拶。「年頭」の義。年賀。年始。
ニントゥマール [⸢nintumaːru]年頭の回礼。年始回り。「年頭回り」の義。
ニンニン [⸢nin⸣niŋ]年年。毎年。
ニンヌ シー [⸢ninnu⸣ ʃiː]年末。「年の末」の義。
ニンヌ タミシ [⸢nin⸣nu ta⸢mi⸣ʃi]念のため。確認のため。用心して。
ニンプ [⸢nimpu]にんぷ(人夫)。標準語からの借用語。
ニンブツァー [⸢nimbu⸣ʦaː]「念仏歌」の義。⸢ソー⸣ラン[⸢soː⸣raŋ](お盆)に先祖供養の歌として仏前で歌われる歌。沖縄本島の「念仏歌」が八重山地方へ流布してきたものといわれている。「念仏者」が原義で、「念仏者が歌う歌」の意に転訛し、今日のように「念仏歌」そのものをさすようになったと考えられる。鳩間島では、(i) ム⸢ヌン⸣グイウタ[mu⸢nuŋ⸣guiʔuta](物乞い歌)、(ii) シ⸢ザ⸣ヌクイ[ʃi⸢ʣa⸣nukui](兄の声)、(iii) ⸢ウシトゥ⸣ヌクイ[⸢ʔuʃi̥tu⸣nukui](弟の声)などは鳩間島の特徴的な念仏歌であるが、(iv) ン⸢ゾーニンブツァー[ʔn⸢ʣoːnimbuʦaː](無蔵念仏歌。「無常念仏歌」の義)は八重山地方一円に流布伝承されている(『沖縄文化』36・37参照)。
ニンマイナビ [⸢nimmai⸣nabi]三升炊きの鍋。ウ⸢ブ⸣ナビ[ʔu⸢bu⸣nabi](大鍋)の中で最も小さい鍋。⸢サンス⸣ダキ[⸢sansu⸣daki](三升炊き)ともいう。