鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
[⸣mu]形式名~もの。~の。
ムー [⸢muː]喪。忌。親族に死者が出たときに、一定の期間、行動を慎むこと。ッ⸢ふ⸣ムー[f⸢fu⸣muː](黒喪)ともいう。
ムー [⸢muː](数)六。六つ。⸢ティー[⸢tiː](一つ)、⸢ター[⸢taː](二つ)、⸢ミー[⸢miː](三つ)、⸢ユー[⸢juː](四つ)、⸢イ⸣チ[⸢ʔi⸣ʦi](五つ)、⸢ムー[⸢muː](六つ)、⸢ナ⸣ナ[⸢na⸣na](七つ)、⸢ヤー[⸢jaː](八つ)、ク⸢ク⸣ヌ[ku̥⸢ku⸣nu](九つ)、⸢トゥー[⸢tuː](十)のように数える
ムーウチ [⸢muː⸣ʔuʦi]喪中。服喪中。親族の者が死んで四十九日忌が済むまで行動を慎む期間。
ムーカビムヌ [⸢muːkabi⸣munu]服喪中の者。
ムーガムーガ [⸢muːgamuːga]もぐもぐ。歯のない老人が口中のものを噛みきれなくて、いつまでも口を動かすさま。
ムージ [⸢muː⸣ʤi](植)サトイモ(里芋)の総称。ッ⸢サムー⸣ジ[s⸢samuː⸣ʤi](ハスイモ。「白里芋」の義)、ア⸢ガムージ[ʔa⸢gamuːʤi](トウノイモ(「赤里芋」の義)、⸢ター⸣ウン[⸢taː⸣ʔuŋ<田芋>])などがある。
ムージヌ ニー [⸢muːʣi⸣nu ⸣niː]サトイモ(里芋)。サトイモの根茎(実)。「里芋の根」の義。⸢ター⸣ウン[⸢taː⸣ʔuŋ](田芋)ともいう。澱粉が多く、魚肉や蛸などと煮付けにして食すると美味である。祝儀の料理に欠かせない食材である
ムーチ [⸢muːʧi](数)六つ。六歳。六個。
ムーティナティ [⸢muːtina⸣ti]六年前。
ムーナンカ [⸢muːnaŋka]六七日忌。死後六回目の法事。
ムームン [⸢muːmuŋ]他動{揉}{モ}む。両手で挟んで、物を{掴}{ツカ}み上げるように指で押したり{擦}{コス}ったりする。「~辛塩に ここと毛美<もみ>~。万、3880」の転訛したもの。
ムール [muː⸢ru]全部。全体。みんな。総て。
ムールバーキ [muː⸢rubaː⸣ki]総て。みな。ことごとく。「全部まで」の義。
ムーン [⸢muːŋ]自動燃える。「燃え、下二段」の四段活用化したもの。「~心は母延農<モエヌ>~。万、897」の転訛したもの。
ムーン [⸣muːŋ]自動生える。草木が芽をふく。「萌ゆ、下二段」の四段活用化したもの。「萌、キザス・モユ」『類聚名義抄』の転訛したもの。⸢ムイ⸣ルン[⸢mui⸣ruŋ](生える)ともいう。
ムイ [⸢mui]接尾人名に付く美称の接尾辞。「思い」の転訛したもの。大正期ごろまで、ヲナリ・ムイ、ニシ・ムイなどのように女性の名について愛称、美称の意味を添えて命名する風習があった。
ムイウン [⸢mui⸣ʔuŋ]ひこばえ(蘖)の芋。芋を収穫した後の芋畑に、掘り残した{芋屑}{イモ|クズ}から{蔓}{カズラ}が繁茂して稔った芋。「萌え芋」の転訛したものか。「萌え、キザス・モユ」『類聚名義抄』。
ムイカ [⸢muika]むいか(六日)。日数を数える際に用いる。⸣プスイ[⸣pu̥sui](一日)、⸢フシゥカ[⸢ɸusi̥ka](二日)、⸢ミーカ[⸢miːka](三日)、⸢ユッカ[⸢jukka](四日)、⸢イシゥ⸣カ[⸢ʔisi̥⸣ka](五日)、⸢ムイカ[⸢muika](六日)、ナ⸢ヌ⸣カ[na⸢nu⸣ka](七日)、⸢ヤウカ[⸢jauka](八日)、ク⸢クヌ⸣カ[ku̥⸢kunu⸣ka](九日)、⸢トゥッカ[⸢tukka](十日)のように数える。
ムイカバスン [⸢muikaba⸣suŋ]他動繁茂する。{覆}{オオ}い被さるように繁茂する。生い茂る。「萌え{被}{カブ}す」の義。
ムイカブン [⸢mui⸣kabuŋ]自動生い茂る。覆いかぶすように生える。「萌え被さる」の義。
ムイサン [⸢mui⸣saŋ]接尾~したがる。~したがりである。~{懐}{ナツカ}しがる。~懐っこい。~思いである。「~思いさあり」の融合変化したもの。感覚形容詞の語幹、名詞や感動詞について複合形容詞をつくる。
ムイフクン [⸢mui⸣ɸu̥kuŋ]稲が成長しすぎて葉に暗色の斑点を現し、実を付けないで枯れる病気。いもちびょう(稲熱病)の一種。
ムイフチ [⸢mui⸣ɸu̥ʧi]生え{際}{ギワ}。
ムイフチ [⸢muiɸu̥ʧi]燃え出し。燃え始め。「燃え口」の義。
ムイルン [⸢muiruŋ]自動燃える。「~心は母延農<モエヌ>~万、897」の転訛したものか。
ムイルン [⸢muiruŋ]自動{籾磨}{モミ|ス}り臼がよく{籾殻}{モミ|ガラ}を落とす(玄米にする)。
ムイルン [⸢muiruŋ]自動老眼になる。目がじらじらして焦点が定まらなくなる。
ムイルン [⸢mui⸣ruŋ]自動生える。⸣ムーン[⸣muːŋ](生える。萌える)ともいう。「萌、キザス・モユ」『類聚名義抄』。「春雨に毛延之<モエシ>柳か~。万、3903」の転訛したもの。
ムエー [mu⸢jeː]{頼母子講}{タノ|モ|シ|コウ}。{無尽講}{ム|ジン|コウ}。「Moyai.モヤイ(舫ひ)船と船とをつなぎ合わせること」『邦訳日葡辞書』の転訛、意味派生したもの。一定の人数(12、3名)の組で一定の掛け金を出して{纏}{マト}まった金額をつくり、一定の期日に{抽籤}{チュウ|セン}または入札によって所定の金額を落札させ、組員に金を{融通}{ユウ|ズウ}する組織。
-ムカーヤ [⸣-mukaːja]終助当然の意味をを表す。文末について、断定的な陳述を表す。~だよ。~というのだよ。「~と思えば」の{融合}{ユウ|ゴウ}変化した形。
ムカシ [mu⸢ka⸣ʃi]昔。過去のある時点。ウ⸢ブムカ⸣シ[ʔu⸢bumuka⸣ʃi](大昔。遠い過去)、⸢ウームカシ[⸢ʔuːmukaʃi]」ともいう。ナ⸢カムカ⸣シ[na⸢kamuka⸣ʃi](曽祖父母の時代のころ)などと使い分けられている。
ムカシウタ [mu⸢ka⸣ʃiʔuta]古謡。昔の歌。
ムカシクトゥ [mu⸢ka⸣ʃi̥kutu]昔の出来事。昔の事件。
ムカシクトゥバ [mu⸢ka⸣ʃi̥kutuba]ことわざ(諺)。「昔言葉」の義。昔から{教訓}{キョウ|クン}や{風刺}{フウ|シ}として言い伝えられたことば等。ム⸢カ⸣シムニ[mu⸢ka⸣ʃimuni](諺。「昔もの言い」の義)ともいう。
ムカシナライ [mu⸢ka⸣ʃinarai]旧慣。旧習。古い仕来り。「昔慣わし」の義。
ムカシパナシ [mu⸢ka⸣ʃipanaʃi]昔話。言い伝え。民話。
ムカシプス [mu⸢ka⸣ʃipu̥su]昔の世の人(先人)。昔気質の人。年老いた頑固な人。
ムカシムニ [mu⸢ka⸣simuni]諺。金言。「昔の言葉」の義。ム⸢カ⸣シクトゥバ[mu⸢ka⸣ʃiku̥tuba](昔言葉。諺)ともいう。
ムカシムヌ [mu⸢ka⸣ʃimunu]古いもの。古物。昔から伝わるもの。「昔の物」の義。
ムカシユー [mu⸢ka⸣ʃijuː]昔の世。
ムキジ [mu⸢kiʤi]{無傷}{ム|キズ}。{損傷}{ソン|ショウ}のないこと。
ムギワラ [mu⸢gi⸣wara]{麦藁}{ムギ|ワラ}。標準語からの借用語。鳩間島方言では、⸢ムング⸣ル[⸢muŋ⸣guru](麦藁。{麦殻}{ムギ|ガラ})というのが普通である。ム⸢ギワラボー⸣シ[mu⸢giwaraboː⸣ʃi](麦藁帽子)等が導入されるようになって使用された語であろう。しかし、島ではク⸢バガサ[ku⸢bagasa](クバ<蒲葵>の葉笠)が、農業、漁業の面で実用的であり、便利で多用された。
ムク [⸣muku]婿。娘の夫。「爾雅云、女子之夫、為\kaeriten{㆑}婿。和名無古(むこ)」『和名抄』の転訛したもの。「Muko.ムコ(婿).Mukouo toru(婿をとる)」『邦訳日葡辞書』。
ムクイ [mu⸢kui]{報}{ムク}い。悪業の仕返し。返報。「報、酬、校、ムクユ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
ムクイカビムヌ [mu⸢kuikabi⸣munu]{罰当}{バチ|アタ}り。悪行の{報}{ムク}いをかぶった者。
ムクイリ [⸣mukuʔiri]婿となって嫁の家に入籍すること。イ⸢リムク[ʔi⸢rimuku](入り婿。婿養子)ともいう。
ムクキョーダイ [⸣mukukjoːdai]婿兄弟。義兄弟。姉妹の夫。
ムクシザ [⸣mukuʃiʣa]年上の婿。兄婿。「婿兄者」の義。
ムクッふァ [⸣mukuffa]婿。「婿子」の義。婿を{慈}{イツク}しんでいう語。
ムクブザ [⸣mukubuʣa]婿殿。新郎。⸣ムク[⸣muku](婿)に接尾語⸣ブザ[⸣buʣa](百姓男子の尊称)が下接して形成された語。⸣ブサ[⸣buʣa]は、多くの場合、自身は働かず、命令や指図をする人に対していう。ム⸢ク⸣ブザ[mu⸢ku⸣buʣa]という時は、婿を大事に扱うことを意味する。⸣ムクシゥカナイ[⸣mukusi̥kanai](婿接待。<婿養い>)ともいわれる。
ムクミ [mu⸢ku⸣mi]木目。
ムクヨーシ [⸣mukujoːʃi]婿養子。娘の婿となった人で、娘の家の跡継ぎとなる人。
ムゲーラスン [mu⸢geːrasuŋ]他動{沸騰}{フッ|トウ}させる。煮えたぎらせる。
ムゲールン [mu⸢geːruŋ]自動沸騰する。煮えたぎる({滾}{タギ}る)。怒り狂う。
ムサ [mu⸢sa]荒波。三角波。台風が接近すると{波頭}{ナミ|ガシラ}が立ち、白波がたつようになる。波がぶつかり合って白波を生ずる波の峰。
ムサットゥ [musat⸢tu]ちっとも。少しも。全く。全然。さっぱり。一向に。文末の打ち消し表現と呼応して「少しも<ちっとも、一向に>~ない」のように、陳述副詞的に用いられる。老年層が多用する。ムシ⸢トゥ[muʃi⸢tu](ちっとも。すこしも。さっぱり。いっこうに)に同じ。
ムサラカサラ [mu⸢sarakasa⸣ra]雑事。うぞうむぞう(有象無象)のこと。種々雑多な価値の低いもの。老年層は、ヌ⸢サラカサ⸣ラ[nu⸢sarakasa⸣ra](雑事。有象無象のこと)ともいう。
ムシ [mu⸢ʃi](動){1}虫。「虫、和名無之<むし>、鱗介惣名也」『和名抄』の転訛したもの。
ムシ [mu⸢ʃi]{2}回虫。寄生虫。
ムシ [mu⸢ʃi]{3}ある事に熱中する人。
ムシ [mu⸢ʃi]{4}強情者。
ムシ [mu⸢ʃi]もし。もしも。仮に。ある事態を仮定して述べる。老年層は、ム⸢シンガ[mu⸢ʃiŋga](もしも。仮に)、ム⸢シカ[mu⸢ʃika](もしか)、ム⸢シンドゥ[mu⸢ʃindu](もしも。仮に)ともいう。接続助詞⸣カー[⸣kaː](~たら、~なら)と呼応して用いられ、仮定条件を表す条件文をつくる。
ムシ [⸢mu⸣ʃi]助数回。一回り。度。回数を表す。
ムジアン [mu⸢ʤi⸣ʔaŋ]漁網の種類の一つ。目の細かい網。カツオ漁船の餌獲り用の網。約1、5ミリ四方の目の細かい網。
ムシカ [⸢muʃi̥ka]もしか。もしも。ひょっとすると。そうなる可能性を予想しながら物事を推測する意味を示す。接続助詞⸣カー[⸣kaː](~なら)と呼応して用いられ、仮定条件や前提条件を表す。「もしも~ならば」の意。
ムジクイ [mu⸢ʣi⸣kui]農作。農耕。耕作。「物作り」の義。歌謡語。日常の方言では、ム⸢ヌスク⸣ル[mu⸢nusu̥ku⸣ru](耕作。農耕。⸢物作り」の義)という。「Monotcucuri.モノツクリ(物作り)田畑を上手に耕作する農民」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。/イニヤ シサクヌ ユカディサミ シグヮチ ググヮチヌ ナレヌレヤ ヘイヤヘイヤトゥ カリウサミ(囃子)イヤイヤー ユタカナルユヌ シルシサミエー アミヤトゥカグシ カジヤシジカニ シクリ ムジクイ マンサクソーリバ イヒンカタトゥキ ユダンヤ ナランサ キットゥキバリヨ ニセタ ウムシルムヌサミ ナマヌパヤシニ クドゥキユミユミ/(稲は、荒打ち、二度うちの田仕事<農作業。試作>が良かったから、旧暦の4月5月になれば、実りの稲をヘイヤー、ヘイヤーと掛け声勇ましく刈り収める。<囃子>いよいよ<弥弥>豊かなる御世の兆候であることよ。降雨は十日越しに、風は静かにそよぎ、農耕作物は豊年満作をするので一時も片時も油断はできないものだ。きっと気張れよ若者たちよ、楽しいものだ、今の囃子に口説きを歌おう<読もう>)(鳩間口説)『鳩間島古典民謡古謡集』
ムシククチ [mu⸢ʃikukuʧi]むしけ(虫気)。回虫が腸に寄生して栄養不良状態になっているさま。「虫心地」の義。
ムシクダシ [mu⸢ʃikudaʃi]虫下し。駆虫剤。ナ⸢ツァー⸣ラ[na⸢ʦaː⸣ra](海人草。<マクリ>の別称)は回虫駆除剤として、昭和40年頃まで、煎じて子供に飲ませていた。鳩間島沿岸では、ナ⸢ツァー⸣ラがよく採取されたので、石垣島への輸出品とされた。
ムシトゥ [muʃi̥⸢tu]ちっとも(些とも)。少しも。全く。皆目。さっぱり。老年層の人が多く用いる。文末に打ち消しの語を伴い、陳述副詞「ちっとも<決して>~ない」の意味に用いられる。ムッ⸢トゥ[mut⸢tu](全く。決して。一向に)ともいう。
ムシヌ ニンガイ [mu⸢ʃinu niŋ⸣gai]害虫駆除の祈願。「虫の願い」の義。⸣カタ[⸣kata](いなご<蝗虫>)が異常発生して稲の葉を食荒らさぬよう、またウ⸢ヤ⸣ザ[ʔu⸢ja⸣ʣa](鼠)が異常繁殖して田畑の作物を荒らさぬよう、祈願する行事。旧暦三月の壬に執り行われる⸢ユーニガイ[⸢juːnigai](豊年・健康祈願<世願い>)の祭祀に祈願された (i) ⸢ユーニンガイ(世願い)、(ii) ム⸢シヌ ニン⸣ガイ(害虫駆除<虫祓い>の祈願)、(iii) ッ⸢サバー⸣ヌ ⸢ニン⸣ガイ(稲の下葉の祈願)、(iv) ⸢プーヌ ソー⸣ジ(稲の出穂祈願)、(v) パ⸢マウリソー⸣ジ(浜下り精進する祈願)の一つ。
ムシバタ [mu⸢ʃibata]むしばら(虫腹)。回虫等が寄生している腹。
ムシブシ [mu⸢ʃibuʃi]虫干し。
ムシフチル [mu⸢ʃiɸu̥ʧi⸣ru]虫薬。回虫駆除剤。ム⸢シングシ⸣ル[mu⸢ʃiŋguʃi⸣ru](虫薬)ともいう。
ムジョー [mu⸢ʤoː]無情。沖縄本島方言からの借用語。普通は、⸣キモー(⸣シロー) ⸢ナー⸣ヌ[⸣kimoː(⸣ʃiroː) ⸢naː⸣nu](愛情<肝・それに注ぐべき愛情>。汁。だし汁<愛情>がない)という。
ムシルン [mu⸢ʃiruŋ]自動千切れる。切れる。ム⸢スン[mu⸢suŋ](千切る。{毟}{ムシ}る)(他動)、キ⸢シ⸣ル[ki⸢ʃi⸣ru](切れる)ともいう。
ムジンクジン ッサヌ [mu⸢ʤiŋ⸣kuʤin s⸢sanu]何が何だか分からない。訳がわからない。学歴がなく、道理が分からない。「文字も故事も知らない」の転訛したもの。
ムシンドゥ [mu⸢ʃindu]もしも。仮に。接続助詞「⸣カー[kaː](~なら)、⸢デー⸣カー[⸢deː⸣kaː](~ならば)」と呼応して、事実に反する仮定や前提条件述べて条件文をつくる。
ムス [⸣musu]むしろ(筵)。筵の総称。「玉桙の~伊奈武侶(イナムシロ)~。万、2643」の転訛したもの。筵には、パ⸢ダ⸣ムス[pa⸢da⸣musu](ござ<茣蓙>。寝間に敷いて寝る上質の筵。「肌筵」の義)、⸣ビームス[⸣biːmusu](藺筵。藺草の茎で織った上質の筵)。⸢サーラ⸣ムス[⸢saːra⸣musu](三角藺草で織った簡単な筵)、ア⸢ダン⸣パームス[ʔa⸢dam⸣paːmusu](阿壇<タコノキ>の葉で編んだ筵)、タ⸢ラ⸣マムス[ta⸢ra⸣mamusu](宮古多良間島産の筵。長さが九尺もあった)などがある。
ムス [⸣musu](数)六十。歌謡語。日常会話では、ル⸢ク⸣ズー[ru⸢ku⸣ʣuː](六十)という。/ヘイヤー クンヌウラヌ ウチカラ ヘイヤー ミドゥガ ムユス クイトゥリ ヘイヤー ビフガ ヤース クイトゥリ/(へいや<囃子>古見の浦の中から、女を六十人乞い寄せ、ヘイヤー男を八十人乞い取って~)(鳩間本ジラマ)。
ムスシキニ [mu⸢suʃi̥ki⸣ni]敷物。筵や畳類。寝具類。
ムスビクブ [mu⸢subikubu]結び昆布。昆布を小さく結んだもの。多くは、イ⸢ツァムス⸣ビ[ʔi⸢ʦamusu⸣bi](板結び。水に浸けて洗い、ふやかした昆布を幅約3センチ、長さ約10センチに切り、中央部を昆布で引き締めて煮たもの。不祝儀の煮しめもの料理に多く出される)と⸢マームスビ[⸢maːmusubi](真結び。祝儀の煮しめもの料理に多く出される)として調理される。
ムスブン [mu⸢subuŋ]他動結ぶ。結わえる。「白玉のいほつ集いを手に牟須妣<ムスビ>~。万、4105」の転訛したもの。
ムスン [mu⸢suŋ]他動{PoS_1}{1}むしる({毟}{ムシ}る)。引きちぎる。「刮、摘、揃、ムシル」『類聚名義抄』の転訛したものか。
ムスン [mu⸢suŋ]自動{PoS_2}千切れる。
ムタイサカイ [⸣mutaisakai]{1}繁茂すること。繁り栄えること。
ムタイサカイ [⸣mutaisakai]{2}植物が生い茂るように子孫が繁盛すること。
ムタイスクイ [⸣utaisukui]手の平<掌>にのせて大事に取り扱うこと。
ムタイルン [mu⸢tai⸣ruŋ]他動持ち上げる。「もたげ(擡げ)、下二段。かしらもたげて~。」『竹取物語』の転訛したもの。
ムタウン [⸣mutauŋ]他動持ち上げる。もたげる(「{擡}{モタ}ぐ」。下二段)。「Motague,uru,eta.モタゲ、グル、ゲタ(擡げ、ぐる、げた)持ち上げる」『邦訳日葡辞書』の四段活用化したもの。
ムタスン [mu⸢ta⸣suŋ]他動持たせる。支えさせる。保たせる。
ムタブン [mu⸢ta⸣buŋ]他動いじる(弄る)。もてあそぶ(弄ぶ)。「Moteasobi,モテアソビ、ブ、ゥダ(翫び、ぶ、うだ)楽しみ興ずる、あるいは、気慰みをする」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ムタリン [mu⸢ta⸣riŋ]自動 持てる。持つことができる。⸣ムトゥン[⸣mutuŋ](持つ)の未然形に可能の助動⸣リン[⸣riŋ](れる)が下接して形成された可能動詞。
ムタルン [mu⸢ta⸣ruŋ]自動{1}もたれる。寄りかかる。「{凭}{モタレ}る、下二段」の四段活用化したもの。
ムタルン [mu⸢ta⸣ruŋ]自動{2}胃がもたれる。食物が消化されずに胃の中に残る。バ⸢タフク⸣ル ⸢スン[ba⸢taɸu̥ku⸣ru ⸢suŋ](胃がもたれ<{凭}{モタ}れ>る)の意味に用いられる。
ムチ [mu⸢ʧi]餅。
ムチ [mu⸢ʧi]{1}もち(黐)。「黐、毛知(もち)」『和名抄』の転訛したもの。ム⸢チンキー[mu⸢ʧiŋkiː](モチノキ)の皮を搗き砕き水で洗って{屑}{クズ}や繊維を除去した粘りつよいもの。細い竿の先に塗りつけて小鳥を捕獲するのに用いた。
ムチ [mu⸢ʧi]{2}漆喰。「黐、毛知(もち)、」『和名抄』の転訛したものか。海中の枝珊瑚やテーブル珊瑚を採取して焼いて⸢ウールパイ[⸢ʔuːrupai](粉末。「珊瑚の灰」)にし、稲藁を切って加え、水をかけて{捏}{コ}ね合わせたもの。⸢ウールパイ[⸢ʔuːrupai](石灰)は{漆喰}{シッ|クイ}にする前の粉末をいう。鳩間島で最初のム⸢チヌーリプス[mu⸢ʧinuːripu̥su](左官屋。「黐塗り人」の義)は小浜真栄氏と鳩間昇氏で、石垣島で営業していた。昔は島人自身で漆喰を作って瓦葺の家に塗っていた。
ムチームチーシ [mu⸢ʧiːmuʧiː⸣ʃi]{1}粘っこく。
ムチームチーシ [mu⸢ʧiːmuʧiː⸣ʃi]{2}むつまじく(睦まじく)。
ムチアー [mu⸢ʧiʔaː](植)もちあわ(糯粟)。粘り気のある粟。{粳米}{ウルチ|マイ}に混ぜて炊くと粘り気が出て美味しいご飯に炊き上がる。芋に{糯粟}{モチ|アワ}を混ぜてご飯に炊くと、芋の澱粉と粟の{糯}{モチ}みが溶け合い、適当に粘り気が出て美味しく炊き上がる。
ムチアーシ [mu⸢ʧiʔaː⸣ʃi]石灰に藁屑を加えて搗き{捏}{コ}ねること。漆喰を搗くこと。
ムチアーシプス [mu⸢ʧiʔaːʃi⸣pu̥su]左官。漆喰を作って屋根瓦に漆喰を塗る人。
ムチ アースン [mu⸢ʧi ʔaː⸣suŋ]漆喰を{搗}{ツ}く。石灰に稲藁を刻んで混ぜ合わせ、水を加えて搗き、漆喰にした。その漆喰を塗る。
ムチ アーラスン [mu⸢ʧi ʔaːrasuŋ]餅を蒸し煮する。餅や蒸し菓子などを{甑}{コシキ}で蒸し上げる。
ムチアギルン [mu⸢ʧiʔagi⸣ruŋ]他動{1}持ち上げる。標準語から転訛したもの。普通は、ム⸢タイ⸣ルン[mu⸢tai⸣ruŋ](持ち上げる)という。
ムチアギルン [mu⸢ʧiʔagi⸣ruŋ]他動{2}他人を誉めそやす。盛んに誉める。
ムチイズ [mu⸢ʧiʔiʣu](動)魚の名。和名、フエフキダイ科、のこぎりだい(体長20~25センチ)。「もち魚」の義。鳩間島の⸢マイ⸣ズニ[⸢mai⸣ʣuni](前曽根)や⸢クー⸣シビー[⸢kuː⸣ʃibiː](南西の干瀬)では、体長約20センチのムチイズがよく釣れた。ムチイズはテーブルサンゴの下などに集まっていて、潮の干満によって移動する。熟達した漁師は魚巣を探し当てて魚釣りをした。⸣アミツァ[⸣ʔamiʦa](やどかり)を餌にするとよく釣れた。⸣アミツァ[⸣ʔamiʦa]の爪や、パ⸢ロー⸣マ[pa⸢roː⸣ma](ツノメガニ。浜に棲息する蟹)を砂と混ぜて搗き{潰}{ツブ}し、{撒餌}{マキ|エ}にするとよく釣れた。
ムチカサン [mu⸢ʧika⸣saŋ]むずかしい(難しい)。困難である。若年層の言葉。老年層は、ム⸢チ⸣キサン[mu⸢ʧi⸣kisaŋ](難しい)という。
ムチカシー [mu⸢ʧikaʃiː]連体むずかしい(難しい)。ム⸢チカ⸣サンとも言う。
ムチキサン [mu⸢ʧi⸣kisaŋ]むつかしい(難しい)。困難である。扱いにくい。厄介である。老年層の言葉。
ムチ スクルン [mu⸢ʧi⸣ su̥⸢ku⸣ruŋ]餅を作る。
ムチゾーグ [mu⸢ʧiʣoːgu]{餅}{モチ}[g]{上戸}{ジョウゴ}。餅をたくさん食べる人。
ムチッふァーシプス [mu⸢ʧiffaːʃipusu]漆喰を塗る人。左官。「漆喰食わせる(塗る)人」の義。
ムチ ッふァースン [mu⸢ʧi⸣ f⸢faːsuŋ]漆喰を塗る<喰わせる>。
ムチナウスン [mu⸢ʧinau⸣suŋ]他動持ち直す。病状や状況が以前の状態に好転する。
ムチナウルン [mu⸢ʧinau⸣ruŋ]自動回復する。「持ち直る」の義。
ムチナスン [mu⸢ʧina⸣suŋ]他動移す。移転させる。場所を移す。移動する。
ムチナルン [mu⸢ʧi⸣naruŋ]自動移る。場所を移る。移転する。移動する。
ムチヌーリ [mu⸢ʧinuːri]漆喰塗り。
ムチヌーリピラ [mu⸢ʧinuːri⸣pira]漆喰を塗るこて({鏝}{コテ})。「漆喰塗り箆」の義。
ムチヌーリプス [mu⸢ʧinuːripu̥su]左官。「漆喰を塗る人」の義。
ムチ ヌールン [mu⸢ʧi nuːruŋ]漆喰を塗る。ム⸢チ⸣ ッ⸢ふァースン[mu⸢ʧi⸣ f⸢faːsuŋ](漆喰を塗る<喰わす>)ともいう。
ムチヌバ [mu⸢ʧinu⸣ba](動)魚の名。和名、ニセカエルウオ(雌)(体長約10センチ)。
ムチヌミース [mu⸢ʧinumiː⸣su]餅で作った味噌。餅味噌。豊年祭に作ったバ⸢サン⸣パームチ(芭蕉の葉餅)の食べ残りを集めて⸢コージ[⸢koːʤi](麹)を作り、それで作った美味しい味噌。⸢マイヌミー⸣ス[⸢mainumiː⸣su](米味噌)と同様、菓子代用の副食物となった。甕に詰めておき、時々酒を振りかけておくので酒の味がしみこんでおり、大人たちのお八つとして食されていた。
ムチノースン [mu⸢ʧinoː⸣suŋ]他動持ち直す。病状などの状況が以前の状態に好転する。標準語からの借用語。老年層はム⸢ティナウ⸣スン[mu⸢tinau⸣suŋ](持ち直す)という。
ムチマイ [mu⸢ʧimai](植)もちごめ(糯米)。もちいね(糯稲)からとれる粘り気の強い米。餅の素材となる米。サ⸢ク⸣マイ[sḁ⸢ku⸣mai](うるち<粳>米)の対義語。ム⸢チマイヌ⸣イー[mu⸢ʧimainu⸣ʔiː](糯米の御飯)は、⸢ソッ⸣コー[⸢sok⸣koː](法事・焼香)や⸢ソー⸣ラン[⸢soː⸣raŋ](お盆・精霊会)の時に炊飯され、お椀に二重盛りにして供えられた。
ムチマッサーン [mu⸢ʧimas⸣saːŋ]むつまじい(睦まじい)。仲が良い。
ムチマッサ スン [mu⸢ʧimas⸣sa ⸢suŋ]睦まじくする。親しくする。
ムチミー [mu⸢ʧimiː]{粘}{ネバ}り気。「もちみ(糯味)」の義。
ムチルン [muʧiruŋ]自動移動する。移る
ムチルン [mu⸢ʧi⸣ruŋ]自動睦まじくする。{睦}{ムツ}ぶ。親しく振舞う。まつわりつき、{戯}{タワム}れる。「Mutçubi. ムツビ(睦び) 親しい結びつき」『邦訳日葡辞書』、「~むつるるを~(睦れ)」『源氏物語<若菜下>』の転訛したもの。
ムチンキー [mu⸢ʧiŋkiː](植)モチノキ({黐}{モチ}の木)。樹皮からとりもち(鳥黐)を製する。
ムチンダールン [mu⸢ʧindaːruŋ]自動ねばつく(粘着く)。粘っこくなる。ねばねばする。べたつく。
ムツァームツァーシ [muʦaː⸢muʦaː⸣ʃi]ねばねば(粘々)して。粘っこいさま。粘り気があるさま。べた付くさま。
ムツァールン [mu⸢ʦaːruŋ]自動ねばる({粘}{ネバ}る)。べたついてからまる。「もつれる({縺}{モツ}れる)、Motçureru, uru, eta. モツレ、ルル、レタ(縺れ、るる、れた)物と物とが互いにからみつく、」『邦訳日葡辞書』の転訛したものか。
ムツァーン [mu⸢ʦaː⸣ŋ]粘っこい。粘着力がある。
ムッカー [⸣mukkaː]手足が欠損したもの。
ムッカー [⸣mukkaː]接尾~切れた者。限られた名詞に付いて、それが失われ<切れ>た人(又は動物)を卑しめて言う意を表す。
ムッコー [⸣mukkoː](動){藪蚊}{ヤブ|カ}。⸣ムッコーガザン[⸣mukkoːgaʣaŋ](藪蚊)ともいう。
ムッチン [⸢mutʧiŋ]六つ。六個。六粒。⸢ッチン[⸢tʧiŋ]は「小粒で丸いもの」を数える助数詞(粒)。
ムットゥ [mut⸢tu]陳述副詞。ちっとも。少しも。いささかも。全く。さっぱり。老年層は、ムシ⸢トゥ[muʃi̥⸢tu](ちっとも)ということが多い。下にくる打消しの助動詞と呼応して断定的意味「ちっとも<少しも>~ない」を表す。
ムティ [⸣muti]副助⸢AすればAする~ムティ」の形で用いられ、⸢~ほどますます~。~につれて。~に応じて」の意味を表す。「もちて<以て>」の転訛したものか。動詞の連体形に接続し、上につく動詞の仮定形と呼応して、「~すればするほど、益々~」の意味を表す。
ムティアシカイ [⸣mutiʔasi̥kai]取り扱い。手荒に扱われること。「持て扱い」の義。⸣トゥリアシゥカイ[⸣turiʔasi̥kai](取り扱い)ともいう。
ムディアヤ [mu⸢di⸣ʔaja]{縒}{ヨ}り合わせた糸の模様。二色の糸を縒り合わせて織った布。
ムティズク [mu⸢ti⸣ʣuku]結婚適齢期。所帯を持つ時期。動詞⸣ムトゥン[⸣mutuŋ](持つ)の連用形⸣ムティ[⸣muti](持ち)に接尾語⸣ズク[⸣ʣuku](~時期。~に適した頃)が下接して形成された語。
ムディッカールン [mu⸢dikkaː⸣ruŋ]自動ねじける({拗}{ネジ}ける)。ねじる({捻}{ネ}じる)。捻じ曲がる。曲がりくねる。{捩}{ヨジ}る。「捩り」の転訛したものか。
ムティットールン [mu⸢tittoː⸣ruŋ]自動重さに振り回され、ふらついて倒れる。重さに持ち堪えられなくて倒れる。能力以上のものごとをしようとして、責任の重さに{潰}{ツブ}される。
ムティナウスン [mu⸢tinau⸣suŋ]他動持ち替える。持ちなおす。持つ手を変える。
ムティナシ [mu⸢tina⸣ʃi]接待。饗応。待遇。「もてなし(持て成し)」の転訛したもの。ム⸢ティナ⸣スン[mu⸢tina⸣suŋ](接待する)の連用形からの転成名詞。
ムティナスン [mu⸢tina⸣suŋ]他動もてなす(持て成す)。接待する。歓待する。
ムティパンマイ [mu⸢tipam⸣mai]手弁当。自身で弁当を持参すること。若年層は、ム⸢ティビン⸣トー[mu⸢tibin⸣toː](持ち弁当)ともいう。
ムディマースン [mu⸢dimaː⸣suŋ]他動ねじる(捻じネジる)。「捻じ回す」。ひねる({捻}{ヒネ}る)。「捻り回す」の義。
ムディムチ [mu⸢di⸣muʧi]円筒形の餅の澱粉をひと{捻}{ヒネ}りして蒸しあげた餅。「{捻}{ネ}じり餅」の義。
ムディルン [mu⸢di⸣ruŋ]他動ねぢる(捻じる)。ひねる。棒状のものの両端を掴んで逆方向にまわす。
ムトゥ [⸣mutu]{PoS_1}{1}元。本。根元。本家。
ムトゥ [⸣mutu]{2}木の根や幹。根本。⸣スラ[⸣sura](梢)に対する根元の義。
ムトゥ [⸣mutu]{3}以前<元>。
ムトゥ [⸣mutu]助数{PoS_2}植物や柱、箸など、棒状の細長いものを数える単位。本。
ムトゥウガン [mu⸢tu⸣ʔugaŋ]友利御嶽。「本御願」の義。神職者のサ⸢カサ(司)やティジリビー(男性神職者)は⸣ムトゥ[⸣mutu](本御願)を多用されるが、一般の人は、⸢ウイヌ⸣ウガン[⸢ʔuinu⸣ʔugaŋ](上の御願)というのが普通。『琉球国由来記』(1713年。王府編)に「友利御嶽」と記録されており、神歌などでは「トゥムル」(友利御嶽)と歌われている
ムトゥガヤー [mu⸢tu⸣gajaː]茅葺屋根の下にある古い茅。「元茅」の義か。
ムトゥキン [mu⸢tu⸣kiŋ]{1}元金。資本金。起業の元手。
ムトゥキン [mu⸢tu⸣kiŋ]{2}金銭貸借時のがんきん(元金)。
ムトゥゴイ [mu⸢tu⸣goi]元肥。シ⸢ブル[ʃi⸢buru](冬瓜)やカ⸢ブッチ[ka⸢butʧi](かぼちゃ<南瓜>)を植える前に敷き詰める堆肥。シ⸢キゴイ[ʃi̥⸢kigoi](堆肥<敷き肥>)ともいう。
ムトゥサカサ [mu⸢tusaka⸣sa]友利御嶽の司(神女)。ム⸢トゥ⸣ウガン[mu⸢tu⸣ʔugaŋ](本お願。本御嶽)のサ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司。神女)の義。代々仲底家の血を引く女性の中から、神前で祈願してウ⸢ク⸣ジ[ʔu⸢ku⸣ʤi](「{御籤}{オ|クジ}」の義。神前に供えた米粒を組み合わせて神意を{占}{ウラナ}う儀式)をバ⸢リティ[ba⸢riti](割って。{卜占}{ボク|セン}して)決められたホ。1992年現在、加治工千代氏がム⸢トゥサカ⸣サ(本司)を勤めている。古老の記憶に残る大正期の本司は⸢ダイ⸣ケヌアッパー[⸢dai⸣kenu ⸣ʔappaː](大工家のお祖母さん。大工ヨボシ氏。加治工家の血を引く。子宝に恵まれなかったので、後に加治工家の三女を養女に入れた。この人が大工定市氏の妻、大工良氏である)である。昭和初期には、花城家の血を引く、シ⸢マフ⸣ケヌ ⸣アッパー[ʃi⸢maɸu⸣kenu ⸣ʔappaː](島袋家のお祖母さん。加治工家から仲底家へ嫁した女性と同じ血を引く女性が花城家に嫁した人の血を引くといわれている)が司を勤められた。昭和十年代から戦後の昭和三十年代の終わりごろまでは、仲底家の血を引く、フ⸢ク⸣マレーヌ ⸣アンマー[ɸu̥⸢ku⸣mareːnu ⸣ʔammaː](友利家のお母さん<友利米氏>)がその神職にあり、昭和四十年頃から昭和六十年頃までは加治工家の血を引く、加治工千代氏がその神職にあった。
ムトゥザリ [mu⸢tuʣari]根元から枯れる事。樹木などが根元から枯れること。
ムドゥシ [mu⸢du⸣ʃi]{PoS_1}つりせん(釣銭)。
ムドゥシ [mu⸢du⸣ʃi]助数{PoS_2}回。度。ム⸢ドゥ⸣シ[mu⸢du⸣ʃi](戻し。動作を元へ戻す<往復する>イメージを伴う)の転訛したもの。同じ行為を繰り返すことを表す単位。
ムトゥシゥカイ [mu⸢tu⸣si̥kai]本採用。本雇ホンヤトィ。
ムトゥシン [mu⸢tu⸣ʃiŋ]もとで(元手)。資本金。
ムドゥスン [mu⸢du⸣suŋ]他動{1}戻す。返す。
ムドゥスン [mu⸢du⸣suŋ]他動{2}へどを吐く。{嘔吐}{オウ|ト}する。
ムトゥダイ [mu⸢tu⸣dai]原価。「{元値}{モト|ネ}」の義。
ムトゥドーリ [mu⸢tudoːri]根絶すること。{根絶}{ネ|ダ}やしになること。「本倒れ」の義。
ムトゥドーリヤー [mu⸢tudoːrijaː]絶家。後継者の絶えた家。「本倒れ家」の義。
ムトゥドゥール [⸣mutuduːru]元通り。以前と同じ状態。
ムトゥナー [mu⸢tu⸣naː]本縄。鱶釣り用のカ⸢シ⸣ナー[kḁ⸢ʃi⸣naː]で、海底に沈める本縄。両端に50キロの石を結わえ、中心点が海面に届くように{撓}{タワ}め、更にウ⸢キナー(浮き縄)を結わえて約3メートルの孟宗竹の浮きに結び、ム⸢トゥ⸣ナーを海底に沈める。ムトゥナーの片側に2本の枝縄を結び、釣り針には亀の手足、イルカの肉、猫などを掛けておいた。
ムトゥナカンテー [mu⸢tunakan⸣teː]屋号。空屋敷だが、仲本家の本屋敷といわれている。「本仲本家」の義。[mu⸢tu・nakan⸣tujaː] → [mu⸢tunakan⸣teː] と音韻変化したもの
ムトゥナル [⸣mutunaru]もとなり(本生り)。植物の蔓や幹の、根に近いほうになる実。⸣スラナル[⸣suranaru](うらなり<{末生}{ウラ|ナ}り>)の対義語。
ムトゥニー [mu⸢tu⸣niː]主根。地中へ真っ直ぐに伸びた植物の根。「元根」の義。⸢パイ⸣ニー[⸢pai⸣niː](支根<{延根}{ハイ|ネ}>)の対義語。
ムトゥバキ [mu⸢tu⸣baki]株分け。根株を分けること。「元分け」の義。
ムトゥバ シー [mu⸢tu⸣ba ⸣ʃiː]基にして。基本にして。
ムトゥビライ [mu⸢tu⸣birai]古い付き合い。親しい交際。親密な交際。
ムトゥブ [mu⸢tu⸣bu]地名。沖縄本島北部の本部町字本部。
ムトゥミルン [mu⸢tumi⸣ruŋ]他動求める。手に入れようとして探す。欲しがる。「~さ山田の翁が其の日に母等米<モトメ>安波受家牟。万、4015」の転訛したものか。
ムトゥムトゥ [⸣mutumutu]{PoS_1}もともと(元元)。本来。元来。
ムトゥムトゥ [⸣mutumutu]{PoS_2}もとから。はじめから。
ムトゥムラ [mu⸢tu⸣mura]本村。昔からの村。
ムトゥムン [mu⸢tu⸣muŋ]求める。手に入れようとして探す。欲しがる。「求め。下二段活用」の四段活用化したもの。
ムトゥヤー [mu⸢tu⸣jaː]本家。おおもとになる家。⸢ヤーバカ⸣リ[⸢jaːbaka⸣ri](分家)の対義語。
ムドゥリティダ [mu⸢duri⸣tida]真夏の午後2時頃の厳しい暑さ。真昼時を過ぎて暑さが一段と増した{炎熱}{エン|ネツ}。「戻り太陽」の義。ナ⸢チヌ⸣ ム⸢ドゥリティダ⸣ヌ ⸣アツァー ⸢プーマキティ⸣ ン⸢ブサリンギサ⸣ル。ア⸢ツァ⸣ヌ フ⸢シガラ⸣ヌ[na⸢ʧinu⸣ mu⸢duritida⸣nu。⸣ʔaʦaː ⸢puːmakiti⸣ ʔm⸢busariŋgisa⸣ru ʔa⸢ʦa⸣nu ɸu̥⸢ʃigara⸣nu](真夏の午後2時頃の暑さの厳しさは、熱気をおびて<ほめいて・熱いて>、蒸されそうだ。暑くて{堪}{タマ}らない)
ムドゥリミチ [mu⸢duri⸣miʧi]帰途。帰り道。「戻り道」の義。
ムドゥル [mu⸢du⸣ru]帰り。「戻り」の義。「Modori.モドリ(戻り)帰り」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。ム⸢ドゥ⸣ルン[mu⸢du⸣ruŋ](戻る)の連用形、ム⸢ドゥ⸣リ[mu⸢du⸣ri](戻り)からの転成名詞。
ムドゥルン [mu⸢du⸣ruŋ]自動戻る。元のところへ帰る。回復する。
ムトゥン [⸣mutuŋ]他動{PoS_1}{1}持つ。所持する。「~み籠母乳<モチ>~万1。~手に巻き母知弖<モチテ>~万3993」の転訛したもの。
ムトゥン [⸣mutuŋ]他動{2}治める。支配する。
ムトゥン [⸣mutuŋ]他動{3}負担する。
ムトゥン [⸣mutuŋ]他動{4}妊娠する。
ムトゥン [⸣mutuŋ]自動{PoS_2}保つ。持続する。
ムドゥン [⸣muduŋ]他動{捻}{ネジ}る。ひねる。
ムナイ [⸣munai]妊婦が何かに感応して胎児に影響を与えること。「物{肖}{ア}え」の転訛か。「肖、似也、アユ・アエタリ」『色葉字類抄』の転訛したもの。
ムニ [⸣muni]{1}ことば(言葉)。「賢しみと物言従者<モノイフ>よりは~。万、341」の連用形、⸢モノイヒ(物言ひ)」より転訛したもの。
ムニ [⸣muni]{2}地名や国名に付いて、その国語、方言を表す。
ムニアギ [mu⸢niʔagi]棟上。「棟上、ムネアゲ、家の祝」『文明本節用集』の転訛。家屋建築の過程で、ナ⸢カ⸣バラー[na⸢ka⸣baraː](大黒柱<中柱>)を立て、⸣ムヤーバラー[⸣mujaːbaraː](母屋柱)を立てて、⸣キタ[⸣ki̥ta](桁材)を架けて棟木を上げる。ン⸢ニギー[ʔn⸢nigiː](棟木)には「天官賜福紫微鑾駕」と墨書し、ピ⸢ル[pi⸢ru](大蒜)と塩を包んでそれに吊るす。棟上式は、潮の満ち時に合わせて行う。中柱の上と四隅のムヤーバラーの上には紅白の餅を供えて棟梁と家主が祈願する。祈願が終わると家主と棟梁が屋根から餅撒きをする。子供たちや村人たちが餅を拾いに集まってくる。福招きの行事だと言われている。
ムニ アザケーン [⸣muni ʔa⸢ʣa⸣keːŋ]言葉遣いが美しい。言葉遣いが上品である。「言葉が清潔である」の義。
ムニ アラーン [⸣muni ʔa⸢raː⸣ŋ]言葉遣いが荒い。言葉が荒っぽい。
ムニ イジカンティ [⸣muni ʔi⸢ʤikanti]言いかねること。言いにくく感じること。言葉で表現しづらく感ずること。
ムニイジホール [mu⸢niʔiʤihoː⸣ru]話の要領。要領のいい表現。気配りのきいたものの言い方。
ムニイジマーシ [mu⸢niʔiʤimaː⸣ʃi]ことばの表現。ものの言いよう。ものの言い表し方。「もの言い回し」の義。
ムニ イズン [⸣muni ʔi⸢ʣuŋ]物を言う。話す。しゃべる。
ムニ ウムッサン [⸣muni ʔu⸢mus⸣saŋ]話が面白い。「物言いが面白い」の義。
ムニ カイヤン [⸣muni ⸢kai⸣jaŋ]話が上品である。言語表現が{熟}{コナ}れて美しい。言い回しが上品である。
ムニクトゥバ [⸣muniku̥tuba]言葉。発言。⸢言葉」の強調表現。⸣ムニ[⸣muni](言葉。⸢物言い」の義)とク⸢トゥ⸣バ[ku̥⸢tu⸣ba](言葉。沖縄方言からの借用語)を重ねた強調表現。
ムニ コーン [⸣muni ⸢koː⸣ŋ]言葉遣いがきつい。言葉が厳しい。⸢言葉が硬い」の義。⸢コー⸣ムニ[⸢koː⸣muni](厳しい言葉。喧嘩腰の物言い。「{強}{コワ}・物言い」の義)はその名詞形。
ムニダーラ マラクン [mu⸢nidaː⸣ra ma⸢rakuŋ]おしゃべりをする。しゃべりまくる。「おしゃべりの詰まった俵を丸く」の義。
ムニッカー [mu⸢nik⸣kaː]口論。言い争い。くちげんか(口喧嘩)。
ムニナサキ [⸣muninasaki]愛情のこもったことば。思い遣りのある言葉。「言葉の情け」の義。
ムニヌ イジヨー [mu⸢ni⸣nu ʔi⸢ʤijoː]言葉の言い回し。言葉の綾。言葉の巧みな表現。「もの言いの言い様」の義。
ムニヌ ゴーラーン [mu⸢ni⸣nu ⸢goː⸣raːŋ]多弁である。口数が多い。言葉が多い。
ムニヌ サール [mu⸢ni⸣nu ⸢saːru]くちぐせ({口癖}{クチ|グセ})。話すときに、決まって言い添えることば(口癖)。「言葉の連れ」の義。
ムニ バカヤン [⸣muni ba⸢ka⸣jaŋ]言うことが可笑しい。しゃべり方が滑稽である。
ムニパヤーン [mu⸢nipajaː⸣ŋ]早口である。話すことが早い。「言葉<物言い>早い」の義。フ⸢チパヤー⸣ン[ɸu̥⸢ʧipajaː⸣ŋ](口が早い。早口である)ともいう。
ムニ パヤーン [⸣muni pa⸢jaː⸣ŋ]幼児が早く話せるようになる。幼児の言語獲得が早い。「物言いが早い」の義。⸣ムニ サ⸢ラー⸣ン[⸣muni sa⸢raː⸣ŋ](物言いが早い<言語獲得が早く、上手に話せる>)ともいう。
ムニ フキルン [⸣muni ɸu̥⸢kiruŋ]歯が抜けていて言語音がきちんと調音できない。「言葉<物言い>が抜ける」の義。
ムニ ヤーラーン [⸣muni ⸢jaː⸣raːŋ]言葉遣いが上品である。言葉が穏やか<しなやか>である。「物言いが柔らかい」の義。
ムニ ヤニヤン [⸣muni ja⸢ni⸣jaŋ]言葉遣いが下品である。言葉遣いが{粗暴}{ソ|ボウ}である。⸢言葉が汚い」の義。若年層は、⸣ムニ ⸢ヤン⸣ヤン[⸣muni ja⸢ɲ⸣jaŋ](言葉が汚い)という。
ムニユマー [⸣munijumaː]おしゃべり。口数の多い者。他人の噂話を言いふらしたり、陰口をたたく者。他人の悪口をいう者。
ムニユミックナー [mu⸢nijumik⸣kunaː]口論。{口喧嘩}{クチ|ゲン|カ}。言い争い。「物言いくら<競>」の義。
ムニユミムヌ [mu⸢nijumi⸣munu]おしゃべり。口数の多い者。{駄弁}{ダ|ベン}を{弄}{ロウ}する者。悪い感情の語感をもつ語。⸣ムニユマー[⸣munijumaː](おしゃべりな奴)は{卑下}{ヒ|ゲ}した表現。
ムニ ユムン [⸣muni ⸣jumuŋ]{1}しゃべる。不平不満をいう。文句をいう。
ムニ ユムン [⸣muni ⸣jumuŋ]{2}喧嘩する。
ムニン イザラヌ パナン プサラヌ [⸣muniŋ ʔi⸢ʣaranu⸣ pa⸢nam⸣ pu̥⸢sara⸣nu]うっかりものが言えない。相手の機嫌をとりつつ周囲にも気配りしないとものが言えない。「ものも言えない、くしゃみもできない」の義。
ムニンビーン ナーヌ [⸣munimbiːn ⸢naː⸣nu]うんともすんともない。何の反論も反抗もない。穏やかである。⸣ムニン[⸣muniŋ]は(物言い。意見。反論)の<物言い>の略語で、反論の「厭だ」の表現。⸢ビー[⸢biː]は、「厭だ」の意味をを含む強い反抗表現⸢ベー⸣ル[⸢beː⸣ru](嫌だ)の略語で、並列助詞ン[ŋ](も)によって重ねられて強調表現となる。下に打ち消しの語を伴って用いられる。
ムヌ [⸣munu]{1}物。物体。
ムヌ [⸣munu]{2}者。人。卑下した表現。
ムヌ [⸣munu]{3}{妖怪}{ヨウ|カイ}。お化け。
ムヌ [⸣munu]{4}ちゃんとしたもの。完成品。
ムヌ [⸣munu]{5}抽象的な事物や事柄。
ムヌ [⸣munu]{6}人の踏み行うべき道。道義。
-ムヌ [⸣-munu]接助~のに。~ものを。理由を表す。活用語の連体形に付く。予期されることとは反対の事柄が起こることを表す、逆接の機能を果たす。
ムヌ [⸣munu]魔物。{悪霊}{アク|リョウ}。成仏できずに迷っている霊。異常な死に方をしたり、⸢ソッ⸣コー[⸢sok⸣koː](法事。焼香)をしてくれる人のいない死霊。生きている人に憑依して害を加えたり、頼みごとをするといわれている。
ムヌアティ [mu⸢nu⸣ʔati]{思慮}{シ|リョ}。{分別}{フン|ベツ}。判断力。しっかりした考え。十分な判断力。
ムヌイリ [mu⸢nu⸣ʔiri]物入り。入費。出費。
ムヌイリムヌ [mu⸢nuʔiri⸣munu]物を入れる容器。入れ物。「物入れ物」の転訛したもの。
ムヌウトゥ [mu⸢nu⸣ʔutu]物音。何かの音。
ムヌウバイ [mu⸢nu⸣ʔubai]ものおじ({物怖}{モノ|オ}じ)。{怖}{コワ}がり。おびえ({怯}{オビ}え)ること。「もの怯え」の義。「~諸人の協流麻低尓<オビユルまでに>~。万199」、「Vobiye,uru,eta.ヲビエ、ユル、エタ(喝え、ゆる、えた)驚いて我を忘れたようになる」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ムヌウブイ [mu⸢nu⸣ʔubui]物覚え。記憶。
ムヌ ウムーン [⸣munu ⸣ʔumuːŋ]{1}心配する。「物を思う」の義。
ムヌ ウムーン [⸣munu ⸣ʔumuːŋ]{2}深く考える。熟考する。
ムヌウムイ [mu⸢nu⸣ʔumui]思いわずらう(煩う)こと。思い悩むこと。心配すること。憂いごと。⸢物思い」の義。「~我にまさりて物念哉<ものオモハメヤ>。万、1892」の転訛したもの。
ムヌウムイパダ [mu⸢nuʔumui⸣pada]思春期。「物思い肌<年頃>」の義。
ムヌウムイヤン [mu⸢nuʔumui⸣jaŋ]恋の病。{恋煩}{コイ|ワズライ}。物思いから生ずる病気。物思い病み。ノイローゼ。
ムヌ ウモーラヌ [⸣munu ʔu⸢moːra⸣nu]心配でどうしてよいか分からない。恐怖で状況判断ができない。「物思われない」の義。
ムヌ ウモーリン [⸣munu ʔu⸢moː⸣riŋ]安堵する。一安心する。ほっとする。「物思われる」の義。⸣ムヌ ウ⸢モーリ⸣ルン[⸣munu ʔu⸢moːri⸣ruŋ]({安堵}{アン|ド}する。ほっとする)ともいう。
ムヌカンガイ [mu⸢nukaŋ⸣gai]いろいろと検討すること。考えること。熟慮すること。計画すること。「物考え」の義。
ムヌクーヤー [mu⸢nukuː⸣jaː]物乞い。乞食。沖縄方言からの借用語。
ムヌクイムヌ [mu⸢nukui⸣munu]物乞い。[g]{乞食}{コジキ}。「物乞い者」の義。
ムヌグトゥ [mu⸢nu⸣gutu]物事。あらゆる事柄。
ムヌ クマーン [mu⸢nu⸣ ku⸢maː⸣ŋ]{1}{綿密}{メン|ミツ}である。{緻密}{チ|ミツ}である。入念で手抜かりが無い。
ムヌ クマーン [mu⸢nu⸣ ku⸢maː⸣ŋ]{2}つましい(約しい)。倹約である。「物細かい」の義。
ムヌサシ [mu⸢nu⸣sasi]物差し。長さの単位の目盛りを刻んだ竹製の道具(スケール)。標準語からの借用語。
ムヌサバキ [mu⸢nusaba⸣ki]先祖供養や神事についての過不足をユ⸢タ[ju⸢ta](巫女)に判定してもらうこと。「ものさばき({物捌}{モノ|サバキ})」の義。
ムヌ シナースン [⸣munu ʃi⸢naː⸣suŋ]品物を取り揃える。取り合わせる。一対になるように組み合わせる。「品合わせる」の義か。
ムヌシラシ [mu⸢nuʃira⸣ʃi]神仏のお告げ。託宣。「物知らせ」の義。神仏が鶏や犬猫などに異常な鳴き声、または異常行動を起こさせることによって神仏の意思を人間に知らせること。音韻が融合変化して、ム⸢ヌッサ⸣シ[mu⸢nussa⸣ʃi](物知らせ)ともいう。
ムヌシリ [mu⸢nu⸣ʃiri]{1}博識。
ムヌシリ [mu⸢nu⸣ʃiri]{2}物知り。占い師。ふげき(巫覡)。{ユ⸢タ[ju⸢ta](巫女)や⸣サンギンソー[⸣saŋginsoː](三世相。易者)}。
ムヌスクリパンタ [mu⸢nusu̥kuripan⸣ta]農繁期。農耕の繁多な時期。{⸢マイイビパンタ[⸢maiʔibipanta](田植えの農繁期)や⸢マイカリパンタ[⸢maikaripanta](稲刈りの農繁期)}。
ムヌスクル [mu⸢nusu̥ku⸣ru]耕作。農耕。稲、粟、麦、豆などの穀物や大根などの野菜類を作付けすること。「物作り」の義。⸢タースク⸣リ[⸢taːsu̥ku⸣ri](田作り)、パ⸢タ⸣キスクリ[pḁ⸢ta⸣kisu̥kuri](畑作り)、⸣ヤサイスクリ[⸣jasaisu̥kuri](野菜作り)等がある。
ムヌスコール [mu⸢nusu̥koː⸣ru]食べ物を作ること。調理。「もの造り」の義。
ムヌソーダン [mu⸢nusoː⸣daŋ]相談。相談事。「もの相談」の義。⸣ウチソーダン[⸣ʔuʧisoːdaŋ](話し合い。うち相談)ともいう。
ムヌタクミ [mu⸢nutaku⸣mi]悪企み。陰謀。「物企み」の義。
ムヌダニ [mu⸢nu⸣dani]作物の種子。稲、麦、豆、粟などの穀類や、野菜類の種子。「ものたね(物種)」の義。稲の場合は、タ⸢ニ⸣ムミ[ta⸢ni⸣mumi](種籾)、⸣サニマイ[⸣sanimai](種米)というのが普通。
ムヌタルガキ [mu⸢nutaruga⸣ki]人に頼ること。人をあてにすること。依頼心。
ムヌッサシ [mu⸢nussa⸣ʃi]神仏のお告げ。託宣。物知らせ。ム⸢ヌシラ⸣シ[mu⸢nuʃira⸣ʃi](神仏のお告げ)の音韻が進行同化して変化した形。ム⸢ヌシラ⸣シ[mu⸢nuʃira⸣ʃi]の項参照
ムヌッふァイ カダンサーン [mu⸢nuffai⸣ ka⸢dan⸣saːŋ]偏食が激しくて食べるのが少ない。ム⸢ヌッふァイ[mu⸢nuffai](ものを食うこと)に、カ⸢ダン⸣サーン[ka⸢dan⸣saːŋ](少ない。「かだむ<{姧}{カダ}む>。惜しむ。怠ける。控え目にする」、cada カダ(かだ)無精や怠慢のために、しなければならない事を果さないこと『邦訳日葡辞書』の義の転訛したもの)が付いて形成された語。老年層が使用する。若年層には死語。石垣方言からの借用語であろう。
ムヌッふァイザク [mu⸢nuffai⸣ʣaku]生活を維持するための仕事。職業。生業。「物食い仕事」の義。
ムヌッふァイダーラ [mu⸢nuffaitaː⸣ra]大食漢。大食い。青年期の、よく食べる子。⸢イーッふァイダー⸣ラ[⸢ʔiːffaidaː⸣ra](大食い。飯食い俵)、ム⸢ヌッふァイターラ⸣グ[mu⸢nuffaitaːra⸣gu](大食い。「物食い俵」の義)ともいう。
ムヌッふァイプス [mu⸢nuffai⸣pu̥su]下宿人。客人。「物食い人」の義。ム⸢ヌンキ⸣プス[mu⸢nuŋki⸣pu̥su](客人。「物を召し上がるひと」の義)ともいう。宿屋や民宿の無かった頃、石垣島や沖縄本島からの客は、島の区長や郵便局長などの有力者の家に宿泊するのが常であった。
ムヌッふァイムシ [mu⸢nuffai⸣musi]家畜。「物食い虫」の義。このム⸢シ[mu⸢si](虫)はイ⸢キム⸣シ[ʔi⸢kimu⸣ʃi](動物)の意。「虫、動物の総称。羽虫は鳥類、毛虫は獣類、甲虫は亀類、鱗虫は魚類、裸虫は人類のこと。」『学研 漢和大辞典』。
ムヌッふァイムヌ [mu⸢nuffai⸣munu]人。人間。食事をする人。「物食い者」の義。卑称の語感を伴う。自分の子供に対して言う場合は、⸢謙遜」の意味合いが強い。
ムヌナシキ [mu⸢nunaʃi̥⸣ki]物事にかこつけること。言寄せること。口実にすること。~のふりをすること。
ムヌナラーシ [mu⸢nunaraː⸣ʃi]教育。ものを教えること。「物習わせ」の義。「教える」ことを鳩間方言では、ナ⸢ラー⸣スン[na⸢raː⸣suŋ](習わせる)という。相手を直接に教え導くのでなく、相手に働きかけて⸢習うようにさせる」の意である。
ムヌナライ [mu⸢nu⸣narai]{1}学習。学ぶこと。学問すること。⸢物習ひ」の義。「学、モノナラフ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
ムヌナライ [mu⸢nu⸣narai]{2}宗教儀礼を学ぶこと。⸣サンギンソー[⸣saŋginsoː](易者)やユ⸢タ[ju⸢ta](かんなぎ<巫女>)から託宣を下ろしてもらい、先祖供養の不足や神事の執り行い方を習うこと。
ムヌヌキムヌ [mu⸢nunuki⸣munu]まよけ(魔除け)。護符。死霊や生霊などの災厄を祓うもの。⸣ムヌ[⸣munu](魔物。悪霊)に、ヌ⸢キ⸣ムヌ[nu⸢ki⸣munu](祓え。魔除け、猪害、鳥害などを防ぐ案山子など。「退け物」の義)が付いて形成された複合語。
ムヌヌ ンマーン [mu⸢nu⸣nu ʔm⸢maː⸣ŋ]食事が美味しい。食が進む。
-ムヌバ [-mu⸢nu⸣ba]接助接続助詞。~のに。~ものを。強い不満の意を表す条件文について逆接を表す。活用語の連体形に付く。
ムヌ パクン [mu⸢nu⸣ pḁkuŋ]他動口の中のものを吐く。吐き出す。嘔吐する。「物を吐く」の義。
ムヌバシキ [mu⸢nubaʃi̥⸣ki]物忘れ。失念すること。
ムヌパナシ [mu⸢nupana⸣ʃi]話すこと。話し合い。世間話。話。物語。「物話」の義。
ムヌバライ [mu⸢nu⸣barai]物笑い。笑いもの。
ムヌピルマサン [mu⸢nupiruma⸣sanŋ]物珍しい。不思議である。怪しい。いぶかしい。
ムヌミーザン [mu⸢numiː⸣ʣaŋ]食べ物が不味い。病後に食事が不味いと感じること。
ムヌミジラサン [mu⸢numiʤira⸣saŋ]物珍しい。
ムヌミリプス [mu⸢numiri⸣pu̥su]幽霊や化け物などの妖怪を見ることのできる人。{霊能者}{レイ|ノウ|シャ}。{霊媒}{レイ|バイ}。「物見る人」の義。
ムヌ ミルン [mu⸢nu⸣ miruŋ]妖怪を見ることができる。妖怪を見ることの出来る特殊な霊力がある。
ムヌムチ [mu⸢nu⸣muʧi]財産家。資産家。金持ち。⸢物持ち」の義。
ムヌヤブリ [mu⸢nujabu⸣ri]物事が失敗すること。ぶち壊し。破談。「物破れ」の義。ム⸢ヌ⸣ヤビ[mu⸢nu⸣jabi](失敗。物破れ)ともいう。
ムヌン [⸣munuŋ]物{忌}{イ}み。{斎戒}{サイ|カイ}。一定期間、飲食や行為を{慎}{ツツシ}んで身を{浄}{キヨ}め、{不浄}{フ|ジョウ}を避けて祈ること。
ムヌングイウタ [mu⸢nuŋ⸣guiʔuta]物乞い歌。⸢ソー⸣ラン[⸢soː⸣raŋ](お盆。「精霊会」の義)の⸢アン⸣ガマ[⸢ʔaŋ⸣gama](念仏踊りの「入れ子舞」。頬かぶりや仮面をかぶってする「姉御踊り」の義か)が仏間の庭先で踊られる前段に、念仏踊り隊の{地方}{ジ|カタ}({地謡}{ジ|ウタイ})が三線を弾きながら必要な品物を出すよう要求して歌う盆踊り歌の一組。/{Sg_1}ムシルヌ ンジラバ ヨーホーハリ ウマチ ンダショーリ ハリ ウマチ ンダショーリ({筵}{ムシロ}が出たら、<囃子>火をお出しなさい<囃子>)、{Sg_2}ウマチヌ ンジラバ ヨーホーハリ キシル ンダショーリ ハリ キシル ンダシ(火が出たら<囃子>{SqBr}g{/SqBr}{煙管}{キセル}をお出しなさい<囃子>)、{Sg_3}キシルヌ ンジラバ ヨーホーハリ タバク ンダショーリ ハリ タバク ンダシ(煙管が出たら<囃子>煙草をお出しなさい<囃子>)、{Sg_4}タバクヌ ンジラバ ヨーホーハリ ウミキ ンダショーリ ハリ ウミキ ンダシ(煙草が出たら<囃子>お神酒をお出しなさい<囃子>)、{Sg_5}ウミキヌ ンジラバ ヨーホーハリ ウサイ ンダショーリ ハリ ウサイ ンダシ(お神酒が出たら<囃子>料理(お菜)をお出しなさい<囃子>)、{Sg_6}ウサイヌ ンジラバ ヨーホー ハリ スナイ ンダショーリ ハリ スナイ ンダシ(お料理が出たら<囃子>{蔬菜}{ソ|サイ}をお出しなさい<囃子>)、{Sg_7}スナイヌ ンジラバ ヨーホー ハリ ブドゥル ンダショーリ ハリ ブドゥル ンダシ(蔬菜が出たら<囃子>踊りを出しなさい<囃子>)。『鳩間島誌』
ムヌンマーン [mu⸢nuʔmmaː⸣ŋ]食事が美味しいと感じること。
ムノー [⸣munoː]物は。ものは。⸣ムヌ[⸣munu](もの)に取りたての係助詞⸣ヤ[ja](は)が付いて、[-u] + [ja] → [-oː] の融合変化をおこしたもの。
ムノー アラヌ [⸣munoː ʔa⸢ra⸣nu]{1}問題ではない。物ではない。取り立てていうほどのものでない。
ムノー アラヌ [⸣munoː ʔa⸢ra⸣nu]{2}何とも処置できない。とんでもないことになった。台無しになった。
ムノー ッふァイヤーティル ノーン ナル [⸣munoː f⸢faijaː⸣tiru noː⸢n⸣naru]生活が第一、生活できなければ何事も無意味だ。「物を食べてこそ何事もできるのだ」の義。<諺>
ムバ [⸣muba]接助格助詞連語。~ものを。~のを。準体助詞⸣ム[⸣mu](もの、の)に格助詞⸣バ[⸣ba](~を)が付いた助詞連語。活用語の連体形に付く。
ムフン [mu⸢ɸuŋ]謀反。石垣方言からの借用語か。主君に背くこと。
ムミ [mu⸢mi]籾。もみごめ(籾米)。穂から{扱}{コ}き落としたままの米。「糙、毛美与禰(もみよね)」『和名抄』の転訛したもの。
ムミガラ [mu⸢migara]籾殻。{籾米}{モミ|ゴメ}の外皮。{籾殻}{モミ|ガラ}。籾糠。
ムミガラマッふァ [mu⸢migaramaffa]{籾殻}{モミ|ガラ}枕。籾殻を洗って乾燥し、布袋いいれて枕に仕上げたもの。涼しくて熟睡できるといわれ、女性に愛用されていた。
ムミパク [mu⸢mipaku]籾箱。{籾}{モミ}を入れて保管する箱。若年層は、モ⸢ミバク[mo⸢mibaku](籾箱)ともう。幅約3尺、長さ約6尺、高さ約5尺の木箱。取り外し式の板で作られ、籾の減少につれて上段の板を取り外すようになっていた。普通は裏座に設置された。この籾箱から必要に応じて籾を取り出し、{籾摺}{モミ|ス}りをして玄米にし、更に{搗}{ツ}き臼で精米して食した。
ムミン [⸣mumiŋ]木綿。ワタの種子に付いている白い綿毛。きわた(生綿)。木綿糸。標準語からの借用語。老年層は、⸣パナ[⸣pana](綿)という。
ムミンイトゥ [⸣mumiŋʔitu]木綿糸。
ムミンカシ [⸣mumiŋkaʃi]木綿糸。「木綿綛<かせ>」の義。
ムミンパナ [⸣mumimpana]木綿の花。
ムム [mu⸢mu]桃。「桃、毛毛<もも>」『和名抄』、「桃、モモ・モモノキ」『類聚名義抄』の転訛したもの。鳩間島で植栽されていた桃の木は小粒の実をつけていた。
ムム [mu⸢mu](数)百。「百・佰、モモ・モモチ」『類聚名義抄』の転訛したもの。文語的な表現。普通は⸢ピャー⸣ク[⸢pjaː⸣ku](百)という。
ムム [⸣mumu]{腿}{モモ}。脚の{膝}{ヒザ}から上、股までの部分。「股、~毛毛」『和名抄』、「~毛毛那賀<股長>~」『古事記上謡・6』の転訛したもの。
ムムッケーラ [mu⸢mukkeːra]百回。百度。「百返り」の義。
ムムッタラ [mu⸢mut⸣tara]太股。臀部の筋肉。
ムムヌキ [mu⸢mu⸣nuki]足が{遠退}{トオ|ノ}くこと。{疎遠}{ソ|エン}になること。
ムムヤライ [mu⸢mu⸣jarai]足や股を交差させること。「ももやらい(股矢来)」の義か。「Yarai.ヤライ(矢来)ある場所を通らせないために作る垣.または、それに類した物.」『邦訳日葡辞書』。⸣ムム[⸣mumu](股)に、ヤ⸢ラウン[ja⸢rauŋ](X型に竹や木を交差させる)、ヤ⸢ラザウン[ja⸢raʣauŋ](物をX型に交差させる)の連用形が付いて形成された合成語。古謡にも見られる。
ムヤー [⸣mujaː]母屋。もや。「身屋、モヤ、俗用母屋」『伊呂波字類抄』の転訛したもの。ハ⸢ギ[ha⸢gi](軒<接ぎ>)の対義語
ムヤージゥカ [⸣mujaːʣi̥ka]{梁}{ハリ}の上に立てて{桁}{ケタ}を支える短い支柱({束柱}{ツカ|バシラ})。普通は単にシゥ⸢カ⸣バラー[si̥⸢ka⸣baraː](束柱)という。
ムヤージカ [⸣mujaːʤika]{梁}{ハリ}の上に立てて{桁}{ケタ}を支える短い支柱。{束柱}{ツカ|バシラ}。「母屋束」の義。単に、シゥ⸢カ⸣バラー[si̥⸢ka⸣baraː](束柱)ともいう。「Tçukabasira. ツカバシラ(束柱)床板などの下に、それを支えるために立てる小さな柱、すなわち、支柱」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ムヤーバラー [⸣mujaːbaraː]母屋柱。家屋の主要部分の柱。ハ⸢ギバラー[ha⸢gibaraː](庇の柱。「脛柱」の義か)の内側にある主要な構造体の柱。この柱は、ヌ⸢キヤー[nu⸢kijaː](貫き家)建築構造の家の柱に対して言う。ア⸢ナ⸣プリヤー[ʔa⸢na⸣purijaː](穴掘り建て。掘っ立て小屋)の柱には言わない。普通は、フ⸢クンキー[ɸu̥⸢kuŋkiː](福木)を四寸角、五寸角の柱にして用いた。
ムヨー [mu⸢joː]{1}模様。
ムヨー [mu⸢joː]{2}様子。
ムヨースン [mu⸢joːsuŋ]自動もよおす(催す)。ある気持ちや生理的現象が起こる。兆候があらわれる。標準語からの借用語か。
ムラ [mu⸢ra]村。集落。「村、和名無良(むら)、野外聚居也」『和名抄』の転訛。
ムライルン [mu⸢rairuŋ]他動大盛りにする。山盛りにする。
ムラウイ [mu⸢raʔui]村払い。村八分。「村追い」の義。
ムラウチ [mu⸢raʔuʧi]村内。集落の内。
ムラギンミ [mu⸢ragimmi]村吟味。部落会議。部落集会
ムラグトゥ [mu⸢ragutu]村行事。
ムラザライ [mu⸢raʣarai]村の疫病神祓い。村の厄払い。「{村浚}{ムラ|サラ}え」の義。⸣シチ[⸣ʃi̥ʧi](節祭り)の際に、村中から疫病神や悪霊を追い払うこと。西村、東村のヤ⸢ク⸣サ[ja⸢ku⸣sa](村役人)たちが子供たちを集めて{甕}{カメ}の破片や瓦の破片を打ち鳴らし、⸣イソー パー⸢レ⸣パー⸢レと唱えながら家々を回って疫病神を追い払い、最後は村井戸を回って海岸に下り、芭蕉の{葉柄}{ヨウ|ヘイ}で作った小舟に鶏肉を載せ、これで疫病神を{賺}{スカ}し{宥}{ナダ}めて島から追い払うよう神に祈り、村の入り口の道路に[g]{大蒜}{ニンニク}と塩を{吊}{ツ}るした{注連縄}{シ|メ|ナワ}を張る儀式。各家の門にも注連縄を張り巡らした。夜は昼間と同じく、⸢ユートーパー⸣レー ⸢ミー⸣ソー ッ⸢ふァーと唱えながら疫病神祓えを行った。
ムラシ [mu⸢raʃi]{塊}{クレ}。{土塊}{ツチ|クレ}。ム⸢ルシ[mu⸢ruʃi](塊。土塊)ともいう。
ムラシェーマ [mu⸢raʃeː⸣ma]小さな塊。
ムラシ スクルン [mu⸢raʃi⸣ su̥⸢ku⸣ruŋ]{塊}{カタマリ}を作る。
ムラズー [mura⸢ʣuː]むらじゅう(村中)。
ムラズリー [mu⸢raʣuriː]村民集会。「村揃い」の義。⸢ジョーカイ[⸢ʤoːkai](常会。標準語からの借用語)ともいう。
ムラズルイ [mu⸢raʣurui]村人の集会。「村揃い」の義。ム⸢ラズリー[mu⸢raʣuriː]({村揃}{ムラ|ソロ}い)ともいう。
ムラスン [mu⸢ra⸣suŋ]他動{漏}{モ}らす。{洩}{モ}らす。液体や気体を隙間や穴から外や内側に出す。フ⸢カスン[ɸu̥⸢kasuŋ](我慢していた尿や便を洩らす。{失禁}{シッ|キン}する)とは区別して用いられる。
ムラスン [mu⸢rasuŋ]他動盛らせる。盛り上げさせる。
ムラナカ [mu⸢ranaka]村中。村の中。鳩間村は縦道に従って、東より1~7班に分かれており、1~4班が東村、5~7班が西村を構成していた。
ムラヌ ペーラフチ [mu⸢ranu peːri⸣ɸu̥ʧi]⸢村の入り口」の義。桟橋から{中岡}{ナカ|モリ}に通ずる縦道。村の奥から海岸に通ずる六本の縦道。東から四本目の縦道より東部を東村、西部を西村という。旧鳩間小学校校門に通じる沿岸道路と四本目の縦道の交差点を⸢アイ⸣ザムトゥ[⸢ʔai⸣ʣamutu](出会いの座元)という。
ムラバカリ [mu⸢rabakari]分村。「村別れ」の義。鳩間村は黒島や古見からの村別れといわれている。
ムラバキ [mu⸢rabaki]村分け。分村。
ムラバンズ [mu⸢rabanʣu]村番所。村の役所(現在の公民館に相当する所)。⸢オー⸣シ[ʔoːʃi]ともいう。⸢ユンチュ[⸢junʧu](与人)一人、ミ⸢ザ⸣シ[mi⸢ʣa⸣ʃi](目差)一人、ヤ⸢マピ⸣シャ[ja⸢mapi⸣ʃa](杣山筆者)一人、⸢コーサクピ⸣シャ[⸢koːsakupi⸣ʃa](耕作筆者)一人が配置されていたという。
ムラプール [mu⸢rapuːru]村豊年祭(豊年祭当日、村民総出で行われるゾーラキ<奉納入子踊り・常楽祈願踊り>や西村と東村の⸢パー⸣レー<爬竜舟競争>による豊年祈願<世乞い>の祭祀、及び翌日のシ⸢ナ⸣ピキ<綱引き>によって豊年を祈願し予祝する祭祀)。村中の人が出て祝う豊年感謝の祭り。⸣オンプール[⸣ʔompuːru](豊年祭当日の前夜、神職者と村役人が御嶽に籠もって夜を徹して本年の豊年感謝の祈願と、来年の豊年<世乞い>の祈願をする行事。⸢ユーングム⸣ル{SqBr}⸢juːŋgumu⸣ru{/SqBr}<夜籠もり祈願>ともいう)の対義語。
ムラブザ [mu⸢rabuʣa]村役人。「村夫作」と表記される。琉球国時代に貢納布を監督して織らせたり、寄贈品を集めて役場に納入する下級役人『石垣方言辞典』というが、鳩間島では田畑を監督督励して耕作させ、貢納品を役場に納入する下級役人にもいう。ム⸢ラブザ[mu⸢rabuʣa]は、転じて、自らは働かなず、人に命令や指示だけする人をいう。怠け者の代名詞。⸣ブザ[⸣buʣa]ともいう。
ムラマール [mu⸢ramaːru]役人の{巡検}{ジュン|ケン}。役人が村を巡視すること。「村回り」の義。
ムラヤクサ [mu⸢rajakusa]村役人。村の祭祀を執り行うために選出された人たち。ム⸢ラヤクニン[mu⸢rajakuniŋ](村役人)ともいう。⸢スー⸣ダイ[⸢suː⸣dai](総代)一人。部落会長に相当する最高責任者。
ムラングトゥ [mu⸢raŋgutu]村の神行事。村の公務。村の行事。村の年中行事。ム⸢ラグトゥ[mu⸢ragutu]ともいう。
ムリイー [mu⸢riʔiː]握り飯。⸢盛りご飯」の義。バ⸢コーシン⸣カ[ba⸢koːsiŋ⸣ka](共同作業の人員)などに対して食器を使わずに、米飯や⸢ウンヌ⸣イー[⸢ʔunnu⸣ʔiː](芋を炊いて捏ねて握った飯)を大きく握って配る飯。
ムリカブシ [mu⸢rikabuʃi]すばるぼし(昴星)。石垣方言からの借用語。ブ⸢リブシ[bu⸢ribusi](群星)ともいう。
ムリクバナ [mu⸢rikubana](植)マツリカ(茉莉花)。石垣方言からの借用語。
ムリコーシ [mu⸢rikoːsi]盛り菓子。菓子皿に菓子や餅類を盛り合わせた供物。⸢ソー⸣ラン[⸢soː⸣raŋ](お盆。精霊会)やウ⸢ブソッ⸣コー[ʔu⸢busok⸣koː](大きな法事。「大焼香」の義)の供物。
ムリッふァ [mu⸢ri⸣ffa]お守りをして育てた子。「守り子」の義。かつては七、八歳の女の子が他家の乳児が歩けるようになるまでお守りをして手伝う習慣があり、その乳児との姉弟関係は生涯続いた。
ムリブシ [mu⸢ribuʃi]すばる(昴)。「群れ星」の義。多くの場合、歌謡の中で現れる語。話し言葉では、ブ⸢リブシ[bu⸢ribusi](すばる<昴>)というのが普通。その項参照
ムリマース [mu⸢rimaːsu]盛り塩。茶碗に盛って綺麗に成形した塩を大皿の中央に反転して移し、健康祈願の{縁起物}{エン|ギ|モノ}とした。正月や祝儀に盛り塩をして床の間に供え、家族や来客に与えた。普通は、シゥ⸢カラマース[sï̥karamaːsu](力塩)という。
ムリルン [mu⸢ri⸣ruŋ]自動洩れる。水や光などが自然に隙間から抜け出る。⸣ムルンとも言う。
ムル [mu⸢ru]岡。盛り上がった所。ナ⸢カン⸣ブレ[na⸢kam⸣bure](中岡<森>)の下の、シ⸢マナカー[ʃi⸢manakaː](島中の畑地)に通じる道の斜面にある砂岩の盛り上がった所。/ムルムルヌ タウ ナルケ タウタウヌ イキ ナルケ ハーリ アミ タボリ リューガナシ/(岡岡が平坦地になるまで、平地平地が池になるまで、ハーリ<囃子>雨を賜れ、竜神さま<加那志>)(雨乞い歌、ハヤミク7連)『鳩間島古典民謡古謡集』
ムルー [⸣muruː](動)魚名。和名、イトフエフキ(体長約20センチ。糸満方言のイノームルー)やホオアカクチビ(体長約30センチ。糸満方言のオームルー)のこと。⸣ムルーイズ[⸣muruːʔiʣu](フエフキダイの仲間)ともいう。
ムルウクジ [mu⸢ruʔukuʤi]占ったコメの籤が対の組をなすもの。神意基づく「吉」の意味。その反対は「凶」
ムルク [mu⸢ruku]{1}植物が小さく群生している所。
ムルク [mu⸢ruku]{2}小さな岡。石積みの所。ム⸢ルック[mu⸢rukku](小さな岡。石積みの所)ともいう。
ムルシン [mu⸢ruʃiŋ]小粒。小さな塊。ム⸢ラシン[mu⸢rasiŋ](小さな塊)ともいう。
ムルスメー [mu⸢rusumeː]屋号。「盛島屋」の義。ム⸢スメーヌ カー⸣メザーテー[mu⸢rusumeːnu kaː⸣meʣaːteː](盛島カメ氏宅)ともいう。「本年、八重山島鳩間村の盛島仁屋等の善行を褒嘉し烟草を賞賜す(大清道光拾五年乙未)」『球陽 読み下し編』とあり、昔は栄えた家であった。子孫は戦後石垣島へ移住した。
ムルスン [mu⸢rusuŋ]丸損。利益が全くなく、全部損すること。マ⸢ルスン[ma⸢rusuŋ](丸損)ともいう。
ムルック [mu⸢rukku]小さな岡。盛り上がっている所。石積みの所。ム⸢ルッコー⸣マ[mu⸢rukkoː⸣ma](小さく盛り上がった所。小さな岡)ともいう。
ムルッコーマ [mu⸢rukkoː⸣ma]石を小高く積み上げた所。非常に小さな岡。小さく盛り上がった岡。ム⸢ルク[mu⸢ruku](石積みの所。小岡)の強調表現。ム⸢ルック[mu⸢rukku]に指小辞-マ[-ma]の付いた形
ムルプー [mu⸢rupuː]二つの帆。「もろほ(諸帆)」の義『石垣方言辞典』。マ⸢シ⸣ビカジ[ma⸢ʃi⸣bikaʤi](真艫吹く風)を受けて帆走する帆。カ⸢タ⸣プー[kḁ⸢ta⸣puː](片帆。横風を受けて帆走する帆)の対義語。
ムルムル [mu⸢rumuru]供物の一種。お盆やウ⸢ブソッ⸣コー[ʔu⸢busok⸣koː](大きな法事)の際に供える。「盛り物」の転訛したもの。⸢シン⸣ザ[⸢ʃin⸣ʣa](砂糖きび)を6、7寸程の長さに切ったものを7~9本ずつ束ね、その上下にマ⸢キカビ[ma⸢kikabi](巻き紙。約一寸幅の白紙に8分程の赤紙を貼ったもの)を巻き、それにフ⸢ナ⸣ブ[Fu⸢na⸣bu](九年母。シークヮーサー)、キ⸢ダヌ⸣ナル[ki⸢danu⸣naru](黒檀<黒木>の実)、⸢バン⸣スル[⸢ban⸣suru](蕃石榴<クワバ>の実)などを枝付きのまま挿して飾り、それを⸣サンボー[⸣samboː](三方)に載せ、シ⸢トゥッチ⸣ヌナル[ʃi̥⸢tutʧi⸣nunaru](蘇鉄の実)や⸣カニン[⸣kaniŋ](野葡萄の実)、⸢イー⸣シ[⸢ʔiː⸣ʃi](角又。海草)、バ⸢サン⸣ナル[ba⸢san⸣naru](芭蕉の実。バナナ)、ユ⸢ブ⸣シ[ju⸢bu⸣ʃi](ユ⸢ブ⸣シの木の実)などを⸣サンボーに盛って飾ったもの。トゥ⸢クニ[tu̥⸢kuni](仏壇)の左右に一対供えておく。それに、⸣グサン[⸣gusaŋ](杖)と称する、長さ約3尺の砂糖きびを一対添えた。これは一本はグサン(杖)にし、他の一本は⸢アイ⸣ク[⸢ʔai⸣ku](天秤棒。担い棒。おうご<朸>の転訛)の代用になるもので、祖霊たちが供物を⸣シトゥ[⸣ʃi̥tu](お土産)としてこの世からあの世へ担いで持ち帰る際に利用すると伝えられている
ムルムルムチ [mu⸢rumurumuʦi]ム⸢ルムルと一緒に仏壇に供える円錐形の餅と円盤状の餅。仏壇に向かって左側に供えるのは、ピンポン玉ほどの餅を約20個盛って円錐形に成形したもの。右側に供えるものは、丸みをおびた円盤状に成形したものである。
ムルン [mu⸢ruŋ]他動盛る。「家にあれば笥に盛<モル>る飯を~。万、142」の転訛したもの。
ムルン [⸣muruŋ]もろみ(諸味)。醸造して、まだ粕を{濾}{コ}さない酒や醤油。「{醪}{モロミ}、毛呂美<もろみ>」『和名抄』の転訛したもの。
ムルン [⸣muruŋ]自動{漏}{モ}れる。水や光などが隙間を通りぬけて出る。
ムルン [⸣muruŋ]他動もる(守る)。子守をする。古老の使用する語。「~母之守為裳<ははしモラスモ>。万、3000」の義。
ムレー [⸣mureː]子守。おもり(御守)。ッ⸢ふァ⸣ムレー[f⸢fa⸣mureː](子守)の略語。七、八歳の女の子が弟妹を負ぶって母親をたすけた。
ムレージ [mu⸢reː⸣ʤi](動)魚の名。和名、グルクマ(体長約30センチ)。沖縄県の県魚、グルクンをいう。「群れ魚」からの転訛。初夏の頃に近海に群れて寄ってきた。その稚魚は、サ⸢ネー⸣ラ[sa⸢neː⸣ra]といい、海底の魚巣にいるのをム⸢ジ⸣アン[mu⸢ʤi⸣aŋ](約3ミリ四方の細目の網)で掬って漁獲した。カツオ漁船では最高の撒き餌として重宝された。
ムレー スン [⸣mureː ⸢suŋ]子守をする。
ムレーマ [mu⸢reːma]屋号。通事家。通事栄氏宅。旧鳩間国民学校の裏にあった。初めて上級学校(沖縄工芸学校)に進学し、最初の鳩間島出身女性教師(田代豊氏<旧姓通事>)を出した家。ム⸢レーマ[mu⸢reːma]の語源は、⸢モリヤマ・ヤー」(盛山・家)が[murijamajaː] → [murjaːmaː] → [mureːma] のように音韻変化したものであろう。
ムン [⸢muŋ]門。普通は、⸢ムングチ[⸢muŋguʧi](門口)、⸢ペーラ⸣フチ[⸢peːra⸣Fu̥ʦi](門。入り口)という。⸣ゾーンタヤー[⸣ʣoːntajaː](屋根葺き門構えとして設けられた木造の建造物。「門の屋根」の義)は士族の家の門に設けられた。
ムン [⸢muŋ](植)山桃。
ムン [⸣muŋ](植)麦。「麦、牟岐(むぎ)、今案、大小麦之惣名也、五穀之長也」『和名抄』の転訛したもの。
ムン [⸣muŋ]もの(物)。⸣ムヌ[⸣munu](もの)の転化したもの。
ムングル [⸢muŋ⸣guru]{1}麦わら。「むぎから(麦稈)」の義。「~(音涓牟枝加良)麦茎也」『和名抄』の転訛したもの。
ムングル [⸢muŋ⸣guru]{2}麦を刈り取った後の畑。
ムングルクバガサ [⸢muŋ⸣gurukubagasa]麦藁を編んで作った笠。
ムンジュル [⸢mun⸣ʤuru]古典舞踊の名。沖縄本島の⸢ムン⸣ジュルガサ[⸢mun⸣ʤurugasa](麦藁製の花笠)を被って演舞する伝統古典舞踊が伝えられたもの。
ムンダニ [⸢mun⸣dani]餌。魚を釣る餌。
ムンタルン [⸢muntaruŋ]他動強く揉む。{揉}{モ}み{潰}{ツブ}して溶かす。「揉み垂る」の義か。
ムンツァークンツァー [⸢munʦaːkun⸣ʦaː]もみくちゃ。両手でくしゃくしゃになるほどに揉み散らすこと。
ムンツァースン [⸢munʦaːsuŋ]他動丸めて揉みくちゃにする。「揉み散らす」の義。「揉み散らす」の音韻変化したもの。「Momitate,uru,eta.モミタテ、ツル、テタ(揉み立て、つる、てた)刺激する。~」『邦訳日葡辞書』系統からの転訛も考えられる。
ムンッシイシ [⸢muŋʃʃi⸣ʔiʃi]麦擦り石。キクメイシ。半球形の珊瑚石で表面には多数の凹凸があり、それに麦を擦り合わせて脱穀するのに用いたのでいう。
ムンドー [⸢mun⸣doː]口論。くちげんか(口喧嘩)。「Mondo'.モンダウ(問答) 議論をする」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ムンドーカンドー [⸢mundoːkan⸣doː]喧嘩口論。喧嘩の強調表現。ABCDEBCD型の重言。
ムントースン [⸢muntoːsuŋ]他動強く揉む。もみほぐす(揉み{解}{ホグ}す)。「揉み倒す」の義。
ムンヌイー [⸢munnu⸣ʔiː]麦ご飯。「麦の飯」の義。⸣イー[⸣ʔiː]は、「家にあれば笥尓盛飯乎<ケニモルイヒヲ>~。万、142」の転訛したもの。
ムンヌクー [⸢munnu⸣kuː]麦焦がし。はったい粉。「麦の粉」の義。大麦を炒りこがし、{煎}{イ}った麦を石臼で{碾}{ヒ}いて粉にしたもの。黒糖を削って混ぜて、お八つとして食したり、水や湯で練って食したりした。
ムンヌクーバタ [⸢munnu⸣kuːbata]麦焦がし{餡}{アン}。餡餅の餡として入れる麦焦がし。
ムンヌダーキ [⸢munnudaː⸣ki]煮た芋に、大麦を挽いた粉を混ぜて柔らかい粥状に炊いたもの。麦粉と芋ご飯の粥。
-ムンバ [⸣-munba]接助~のに。~ものを。⸣ムヌバ[munuba](ものを)の変化形。活用語の連体形に接続し、逆接に用いられる。相手に対する不平、不満や{反駁}{ハン|バク}の意味を表す前件を示し、それに反する後件に結びつける。
ムンミ [⸢mum⸣mi](数)もんめ(匁)。重さを量る尺貫法の単位の一つ。一貫の千分の一。3、75グラム。