鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
ホー [⸢hoː]方。方向。かた。
ボー [⸣boː]棒術。棒踊。老年層は⸣バウ[⸣bau](棒)という。「bŏ.バゥ(棒)~Bŏuo tçucŏ.(棒を使ふ).Bŏnote(棒の手)棒を使いこなす方法、あるいは、棒術」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。鳩間島では豊年祭に演舞される、サ⸢ク⸣ボー[sḁ⸢ku⸣boː](剣の舞い)、ル⸢クサク⸣ボー[ru⸢kusaku⸣boː](六尺棒)、ナ⸢ギナタ[na⸢ginata](長刀)、⸣カサボー[⸣kasaboː](笠棒)などの古典棒踊<棒術>に対していう。日常生活で用いる棒は、⸣バウ[⸣bau]、⸢アイ⸣ク[⸢ʔai⸣ku](担い棒。おうこ<朸>)という。
ホーイホーイ [⸢hoːihoːi]ほういほうい。火事の時に唱えることば。火災通知のための掛け声の機能と我が家への{類焼}{ルイ|ショウ}を防ぐ{呪}{マジナ}いの機能を有することば。
ボー ウトゥン [⸣boː ⸣ʔutuŋ]棒術を演舞する。
ボーウン [⸣boːʔuŋ](植)ヤマノイモ科のイモ。ダイジョ(大薯)。細長く紫色に赤味を帯びた美しい色と美味しい味が特徴『石垣方言辞典』。「Yamano imo.ヤマノイモ(山の芋・{薯蕷}{ショ|ヨ})山林に生ずる芋」『邦訳日葡辞書』。鳩間島には産しない。西表島の⸢フノー⸣ラ[ɸu⸢noː⸣ra](船浦)や、⸢ウイバル[⸢ʔuibaru](上原)で作っていた。
ホーガーサン [⸢hoːgaː⸣saŋ]不恰好である。ぶざま(無様)である。間抜けの様である。
ホーガーホーガー [hoː⸢gaːhoːgaː]{1}不恰好な様子。間の抜けた様子。
ホーガーホーガー [hoː⸢gaːhoːgaː]{2}{耄碌}{モウ|ロク}した様子。{惚}{ホ}けた様子。
ホーガーホーガーヌ プス [hoː⸢gaːhoːgaːnu⸣ pu̥⸢su]耄碌したような人。智恵遅れの人。
ポーキ [⸢poː⸣ki]ほうき(箒)。
ポーキダキ [⸢poː⸣kidaki]⸢箒竹」の義。箒を作る竹。西表島北岸一帯の水田地帯に自生している。これを伐ってきて4、5本束ねて箒を作った。
ポーキヌ ミー [⸢poːki⸣nu ⸣miː]{箒目}{ホウキ|メ}。⸢ポー⸣キミー[⸢poː⸣kimiː]ともいう。箒で地面を掃いた跡に残る模様。来客のある場合は特に⸢箒目」を残すよう親から躾けられたものである。
ポーキブシ [⸢poː⸣kibuʃi]ほうきぼし(箒星)。
ボーキラー [⸣boːkiraː]乱暴者。強情者。向こう見ずの暴れ者。⸢ボーキリ⸣ムヌ[⸢boːkiri⸣munu](乱暴者)と同じ。⸢ボーキリ[⸢boːkiri](乱暴)に接尾語⸣アー[⸣ʔaː](~する人)が下接して形成された語。
ボーキリムヌ [⸢boːkiri⸣munu]乱暴者。強情者。向こう見ずの暴れ者。⸣ボーキラー[⸣boːkiraː](乱暴者)ともいう。
ボーキルン [⸢boː⸣kiruŋ]自動乱暴を働く。暴れる。
ボークン [⸢boːkuŋ]他動{濯}{スス}ぎ洗う。すすぐ(濯ぐ)。「濯・滌、ススグ」『類聚名義抄』の義。
ポークン [⸢poː⸣kuŋ]他動掃く。朝昼は屋内、屋外共に掃くことはできるが、夜は原則として箒は使わなかった。必要上掃く時は、形式的に内側へ3回掃いてから外側へ掃き出した。
ボーシ [⸢boːʃi]帽子。標準語からの借用語。
ボージ [⸢boː⸣ʤi]僧侶。寺の住職。坊主。鳩間島には僧侶はいなかった。
ボージマー [⸣boːʤimaː]太い縦縞模様。「ぼうじま(棒縞)」の義。
ボージャームン [⸢boːʤaː⸣muŋ]大麦の一種。殻のついたままの大麦。⸢ンーナ⸣ムン[⸢ʔnːna⸣muŋ](殻麦。殻のついたままの大麦)ともいう。明治生まれの老年層の使用語彙。若年層では死語。
ボースー [⸢boːsuː]ぼうしゅ(芒種)。二十四節気の一つ。陰暦五月のせつ(節)。太陽暦の6月6日頃に当たるという。この頃になると梅雨の季節に入り、長雨ガ続くので、それまでに稲刈りを終えるように努めた。
ボースーアミ [⸢boːsuːʔami]ぼうしゅ(芒種)の頃に降る雨。⸢ボースーヤブリ[⸢boːsuːjaburi](芒種の頃の荒天)に伴う大雨。1期作米の収穫時期に⸢ボースーアミが降って、籾を干すことが出来ず被害が起きることもあった。
ボースーヤブリ [⸢boːsuːjaburi]ぼうしゅ(芒種)の時期に天候が荒れること。「芒種破れ」の義。
ホースン [⸢hoː⸣suŋ]他動{1}釣る。
ホースン [⸢hoː⸣suŋ]他動{2}{挟}{ハサ}む。食わせる。間に入れて固定する。「Cuuaxe,suru,eta.クワセ、スル、セタ(食わせ、する、せた)」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ホースン [⸢hoː⸣suŋ]他動降らせる。⸣フーン[⸣ɸuːŋ](降る)の使役形。
ボー スン [⸣boː ⸢suŋ]乱暴を働く。他人を騙し、悪事を働く。
ボーダ [⸢boː⸣da](動)ブダイの仲間。キツネブダイ。体長約60センチに成長する。鳩間島では30~40センチの成魚が多く漁獲された。刺身にしたり、煮つけにしたりすると美味である。シークヮーサー(ヒラミレモン)の汁と味噌に肝を刻んで和え、それにブダイの刺身をつけて食すると特に美味である。
ボーダヤー [⸢boː⸣dajaː](海底地名)。⸢ボー⸣ダ[⸢boː⸣da](キツネブダイ)の巣<家>の義。{ピザキ[pi⸢ʣa⸣ki](島の北西部の干瀬)の東側の⸢ピーヌ⸣クシ[⸢piːnu⸣ku̥ʃi](干瀬の外洋部<干瀬の腰>)}。キツネブダイがよく釣れる所といわれている
ポーツァー [⸢poː⸣ʦaː]包丁人。結願祭の供物の料理人。「料ニ理魚鳥一者、謂ニ之包丁一」『和名抄』の転訛したもの。鳩間島の結願祭には、祭前夜の⸢ユードゥー⸣シ[⸢juːduː⸣ʃi](夜通しの祈願)から、⸣トーピン[⸣toːpiŋ](当日)の祈願に供える供物を、⸢ウイヌ⸣ウガン[⸢ʔuinu⸣ʔugaŋ](友利御嶽)の本殿<ウ⸢ブ⸣ヤー[ʔu⸢bu⸣jaː](母屋)>の側に仮の⸢ポー⸣ツァーヤー[⸢poː⸣ʦaːjaː](炊事小屋<包丁屋>)を建てて供物を準備した。餅類はバ⸢キサカ⸣サ等が準備し、ム⸢ラヤクサ[mu⸢rajakusa](村役人)達が漁獲した魚や蛸を村役人と調理担当の⸢ポー⸣ツァー[⸢poː⸣ʦaː](包丁人)が調理した。
ポーツァーカタナ [⸢poː⸣ʦaːkatana]料理用の包丁。特に神事の供物を料理する包丁人の用いる包丁をいう。
ポーツァー スン [⸢poː⸣ʦaː ⸢suŋ]包丁人として神事の供物を調理する。
ホートバレー [⸢hoːto⸣bareː]鳩離島。若年層の言葉。老年層は、パ⸢トゥ⸣マレー[pḁ⸢tu⸣mareː](鳩離島)という。
ホーヌ [⸢hoː⸣nu]自動{1}降らない(⸣フーン{SqBr}ɸuːŋ{/SqBr}<降る>の未然形)。
ホーヌ [⸢hoː⸣nu]自動{2}付かない、生じない(⸣フーン{SqBr}⸣ɸuːŋ{/SqBr}<喰う。{錆}{サビ}や{黴}{カビ}が生ずる。{垢}{アカ}がつく>の未然形)。
ホーヌ [⸢hoː⸣nu]自動{3}噛まない(⸣フーン{SqBr}⸣ɸuːŋ{/SqBr}<噛む>の未然形)。
ボーボー [⸢boː⸣boː]幼児語。男の赤ちゃん。
ボーボー [⸣boːboː]人名。⸣ボッパー[⸣boppaː]ともいう。
ポーポー [⸢poː⸣poː]料理名。小麦粉を水に{溶}{ト}いてフライパンで薄く延ばして焼き上げ、中に油味噌を{炒}{イタメ}たものをいれ、細長く巻いたもの。ッ⸢スポー⸣ポー[s⸢supoː⸣poː](味噌入りの白いポーポー)とッ⸢ふポー⸣ポー[f⸢fupoː⸣poː](黒砂糖を削って小麦粉に混ぜ、溶いて焼き上げたポーポー)があった。
ボーボーシ [⸢boːboː⸣ʃi]擬態語。{1}火の燃えるさま。
ボーボーシ [⸢boːboː⸣ʃi]{2}強風の吹くさま。
ポーポーシ [⸢poːpoː⸣ʃi]{1}ぷんぷんと。{馥郁}{フク|イク}たる香りが一面に漂うさま。
ポーポーシ [⸢poːpoː⸣ʃi]{2}ぷんぷんと悪臭がたちこめるさま。
ポーポーシ [⸢poːpoː⸣ʃi]ぽかぽかと。微熱が出るさま。発熱して体が熱くなるさま。
ポーポー パースン [⸢poː⸣poː ⸢paː⸣suŋ]ポーポーを焼く<{這}{ハ}わす>。メリケン粉や芋の澱粉を水で溶き、薄くのばして焼く。
ホーマ [⸢hoː⸣ma](地)大浜集落。若年層は、⸢オー⸣ハマ[⸢ʔoː⸣hama](大浜)ともいう。
ホーマアカハチ [⸢hoː⸣maʔakahaʧi]人名。歴史上の英雄的人物である「大浜アカハチ」の義。普通は、ウ⸢ヤ⸣キアカハチ[ʔu⸢ja⸣kiʔakahaʧi](16世紀初頭に首里王府に謀反した八重山の豪族)という。
ホーマプス [⸢hoː⸣mapu̥su]大浜の人。⸢オー⸣ハマプス[⸢ʔoː⸣hamapu̥su](大浜の人)ともいう。
ホーヤー [⸢hoː⸣jaː]たんどく(丹毒)。菌によって起こる皮膚病。高熱がでて、患部が真っ赤に腫れあがる。怖い病気とされていた『石垣方言辞典』。「胎毒(eczema)乳児が、妊娠中に感染した毒により、生後体に発疹ができること。体質的なものだが、昔は梅毒が原因と思われていた。丹毒にも使われている」『医学沖縄語辞典』。
ホーラ [⸢hoːra]ふり。若年層は、⸢コーラ[⸢koːra](ふり)ともいう。
ホーライマイ [⸢hoːrai⸣mai](植)蓬莱米。戦前に台湾より導入された稲の品種。粘り気があって美味しく、多収量で、脱穀しやすい品種に改良されていた。
ホーラザー [⸢hoː⸣raʣaː]八重山の最高神女職。サ⸢カサ[sḁ⸢kasa](司。神女。石垣方言の、チゥ⸢カ⸣サ{SqBr}ʦï̥⸢ka⸣sa{/SqBr})の最高職。⸢ホー⸣ラザーマイ[⸢hoː⸣raʣaːmai](大阿母)のこと
ホーラザーマイ [⸢hoːra⸣ʣaːmai]八重山の最高神女職。「大阿母」と記されている。「おほあるじまえ(大主前)」の意か。各種の神女、チゥカサの総監督、指導にあたり、女性でただ一人俸禄をもらっていた『石垣方言辞典』という。
ホーラリン [⸢hoːra⸣riŋ]自動噛まれる。「Curai,ŏ,ŏta.クライ、ゥ、ゥタ(飡ひ、ふ、うた)食う.下賤の者とか獣とかについていう.また、かみつく.Inuni teuo curauaruru(犬に手を飡はるる)」『邦訳日葡辞書』。⸣フーン[⸣ɸuːŋ](喰らう。噛みつつく)の未然形⸢ホー[⸢hoː]に受身の助動詞⸢ラ⸣リン[⸢ra⸣riŋ](られる)が付いて転訛した受身動詞。
ホーリン [⸢hoː⸣riŋ]自動受身動詞。噛まれる。⸢ホーラ⸣リン[⸢hoːra⸣riŋ](噛まれる)と同じ。
ホーリン [⸢hoːriŋ]自動戸締りできる。他動詞⸢フーン[⸢ɸuːŋ](閉める。戸を閉める)の未然形に可能の助動詞⸣リン[⸣riŋ](~れる)が下接して形成された可能動詞。
ホール [⸢hoː⸣ru]思慮。分別。常識。
ホールーホールー [hoː⸢ruːhoːruː]間抜けなさま。思慮分別のないさま。薄ら{惚}{ボケ}したようなさま。
ホールキシムニ [⸢hoː⸣ruki̥ʃimuni]愚かな物言い。馬鹿げた話。辻褄の合わない話。
ホール キシムヌ [⸢hoː⸣ru ki̥⸢ʃi⸣munu]思慮分別のない者。{耄碌}{モウ|ロク}した者。常識のない者。間抜け。
ホール キシルン [⸢hoː⸣ru ki̥⸢ʃi⸣ruŋ]思慮分別がなくなる。耄碌する。間が抜ける。「思慮が切れる」の義。
ホール キスン [⸢hoː⸣ru ⸣ki̥suŋ]思慮分別がなくなる。{耄碌}{モウ|ロク}する。間が抜ける。「思慮が切れる」の義。
ボールボール [⸣boːruboːru]{1}ぐつぐつ煮えたぎる<{滾}{タギ}る>さま。
ボールボール [⸣boːruboːru]{2}擬態語。ぶつぶつ不平を言うさま。
ポールン [⸢poːruŋ]他動撒く。散らかす。ほうる「放る」からの転訛。
ボーレー [⸢boː⸣reː]{PoS_1}良い子。お利口さん。利口者。子供を{褒}{ホメ}る時にいう。
ボーレー [⸢boː⸣reː]{PoS_2}ボー⸢レー ボーレー⸣ ア⸢ターチマ⸣ ク⸢マー⸣ キー⸢ミリ[boː⸢reː boːreː⸣ ʔa⸢taːʧima⸣ ku⸢maː⸣ kiː⸢miri](お利口ちゃん、お利口ちゃん、ちょっとここへ来てごらん)
ホーロー ナーヌ [⸢hoː⸣roː ⸢naː⸣nu]思慮分別がない。間抜けだ。{耄碌}{モウ|ロク}した奴。うすのろ(薄鈍)奴。[hoːru](思慮・分別)+ [ja](は)→ [hoːroː] と変化したもの。
ボーンケールン [⸢boːŋkeː⸣ruŋ]自動{1}匂いが漂う。匂いがぷんぷん立ち上る。悪臭がぷんぷん漂う。
ボーンケールン [⸢boːŋkeː⸣ruŋ]自動{2}蝿などがたかる。
ボーンボーンシ [⸢boːmboːŋ⸣ʃi]擬声語。ぶうぶう不平不満をいうさま。ぶつぶつ文句をいうさま。⸢ボールボール⸣シ[⸢boːruboːru⸣ʃi](ぶつぶつと盛んに不平不満<文句>をいう)より多少弱い表現。
ホイダー [⸣hoidaː](動)スズメ目ヒタキ科の鳥の名。和名、シロハラ。ツグミほどの大きさ。翼と{尾羽}{オ|バネ}は黒褐色。冬期に渡ってきた。子供たちは林の中に⸣ヤマ[⸣jama](捕獲用の装置)を{拵}{コサエ}ておいて捕獲していた。
ホイナクン [⸢hoina⸣kuŋ]他動かっこむ。食物を掻き込む。急いで、大口で食う。
ホイル [⸢hoiru]焼玉エンジンのシリンダーの前面にある車輪。これを回してエンジンを起動させた。英語のホイール(Wheel<車輪>)が語源。焼玉式発動機船がカツオ漁船として導入された時に、ホイールが転訛して借用されたもの。同時期に借用された外来語に、⸢バー⸣ナー[⸢baː⸣naː](英語のburner<霧状石油燃料の燃焼装置>)、ク⸢ラッ⸣チ[ku⸢rat⸣ʧi](英語のclutch<連軸器>)、⸢ノーズル[⸢noːʣuru](英語のnozzle<ディーゼル機関で燃料を噴出する細孔>)、⸢ピス⸣トン[⸢pisu̥⸣toŋ](英語のpiston<シリンダーの中にあって往復運動できる栓状の部材>)、⸢シャフ⸣ト[⸢ʃaɸu̥⸣to](英語のshaft<動力伝達を目的とする棒状の回転軸>)、⸣ペラ[⸣pera](英語のpropeller<船舶の推進器>)などがある。
ホッカー [⸢hok⸣kaː]{手品}{テ|ジナ}。{奇術}{キ|ジュツ}。曲芸。「放下」、鎌倉時代末・南北朝の頃に現れた異端の芸能者。手に小切子<こきりこ>などを持って街頭で滑稽な歌舞、曲芸を演じた『岩波古語辞典』。「放家、ハウカ、シナダマトルモノ、術者」『運歩色葉集』、「Fŏca.ハゥカ(放家) 道化手品師.Fŏcauo suru.(放家をする)道化手品師の職をする、あるいは、巧みに人の目を欺いて手品師のわざをする」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
ホッカー シープス [⸢hok⸣kaː ⸢ʃiːpusu]奇術師。「奇術をする人」の義。
ポッチカッチ [⸢potʧikat⸣ʧi]まばらな状態。散らばるさま。散らかすさま。ABCDBC型の重言。ポッツァーシとも言う。
ポッチポッチ [⸢potʧipotʧi]点々と。まばらに。ちりじりに。とびとびに。ABCABC型の重言。
ポッチルン [⸢potʧiruŋ]自動散らばる。散乱する。散り散りになる。粒状のものが散らばる。
ポッツァースン [⸢potʦaːsuŋ]他動撒き散らかす。散らかす。放り散らかす。
ポッツァールン [⸢potʦaːruŋ]自動散らかる。散らばる。散り散りになる。
ポッツン [⸢potʦuŋ]自動散らばる。散乱する。散る。散り散りになる。粒状のものが散らばる。⸢ポッチルン[⸢potʧiruŋ]と同じ。
ホッパルン [⸢hop⸣paruŋ]他動{頬張}{ホオ|バ}る。丸かじりする。「Foˆbare.ホゥバレ(頬腫れ)顔を腫れ上がらせる病気.上(Cami)ではFoˆfare(頬はれ)という」『邦訳日葡辞書』の転訛し、意味派生したものか。
ボッふァスン [⸢boffasuŋ]他動束ねてあるものをばらす。ばらばらにする。ほぐす。
ボッふァティ [bof⸢fati]ざぶんと。ものが水田や砂浜などへ柔らかい音を立てて落ち込んだり、めり込んだりするさま。
ボフティ [boɸu̥⸢ti]すぽっと。するりと。{締}{シメ}てあるものが抜けたり、ほどけたりするさま。
ボマー [⸣bomaː]伯母の親族呼称。父母の次姉、三姉に当たる伯母を呼ぶ際に用いた。父母の長姉に当たる伯母には⸢ウボーマー[⸢ʔuboːmaː](大母)と呼んだ。
ボンタン [⸢bontaŋ](植)果樹の名。ザボンの一品種。ブンタン(文旦)。戦前は、果皮を砂糖漬けにしたものを老人の咳薬として{珍重}{チン|チョウ}していた。多くの場合、台湾帰りの土産品として鳩間島に持ち込まれていた。
ボンティ [bon⸢ti]ぷくっと。体の打撲を受けた部分が{腫}{ハレ}出るさま。
ボンティ [bon⸢ti]{2}ウ⸢ジ⸣ロー ボン⸢ティ⸣ ブリティ ⸢モーシ⸣バ[ʔu⸢ʤi⸣roː bon⸢ti⸣ buriti ⸢moːʃi⸣ba](枯れた小枝はぽきっと折って燃やしなさいよ)
ホンマ [⸢hom⸣ma]長姉。最年長の姉。親族名称、親族呼称にも用いる。ウ⸢フ⸣・アンマ[ʔu⸢ɸu⸣・ʔamma](大姉)の融合変化した形。古老は、⸣ウボーマ[⸣ʔuboːma](長姉。大姉)ともいう。⸣ナカンマ[⸣nakamma](中姉)、アン⸢マー⸣マ[ʔam⸢maː⸣ma](小姉)のように、年齢によって区別する。
ホンマキ [⸢homma⸣ki]カツオの餌撒き(本撒き)。カツオ漁船がトゥ⸢ルマキ[tu⸢rumaki](カツオドリの群れ<鳥巻き>)を発見して追跡し、船を魚群に付ける際に「本撒き」が腕を振るう。餌の投げ入れの良し悪しによって魚群が船体に群れ寄るか、否かが決まるからである。熟練した「カツオの餌撒き」が船頭やイ⸢チバン⸣ジョー[ʔi⸢ʧiban⸣ʤoː](一番竿。一番釣り手)らの指示に従って餌を撒き入れた。カ⸢ツドゥル[kḁ⸢ʦuduru](カツオ鳥<ウミネコ>)の飛び方、潮の流れを見定めつつカツオの喰いつきを判定するタイミングを捉えなければならない。餌の撒き方の上手、下手はその日の漁獲を左右した。釣り始めは散水器の放水と同時であった。カツオの喰いつきが弱くなると「本撒き」は、イ⸢キ⸣マ[ʔi⸢ki⸣ma](生け間)からタ⸢ブ[ta⸢bu](たも網<攩網>)で⸣ザコー[⸣ʣakoː](餌<雑魚>)を掬い、撒き入れてカツオの喰いつきを誘った。