鳩間方言音声語彙データベース

見出し語IPA品詞意味記述
[ʔa]語素{1}遠称の指示語を作る。
[ʔa]語素{2}話題の事実を指し示す指示語を作る。
アー [⸣ʔaː](植)粟。五穀の一つ。粘り気のある、ム⸢チアー[mu⸢ʧiʔaː](糯粟)と粘り気のない、サ⸢ク⸣アー[sḁ⸢ku⸣ʔaː](粳粟)があった。粟は水田耕作の出来ない島々でよく栽培された。
アー [⸢ʔaː]ああ。感動した時に発する声。
アー [⸢ʔaː]人が口を大きく開けた様子。ああん。
アーアー [⸢ʔaːʔaː]ああああ(嗚呼嗚呼)。嘆き悲しむさま。深く思い悩むさま。
アーイ [ʔaː⸢i]いいえ。いや。いや、そうではない。いや、ちがう。村落内では目上、同等、目下の人にも使える。特に待遇表現上留意すべき外来の村長や校長、巡査などに対しては、ウー⸢ウー⸣ウー ア⸢ラ⸣ヌ⸢ユー[ʔuː⸢ʔuː⸣ʔuː ʔa⸢ra⸣nu⸢juː](いいえ、ちがいます)のようにいう。
アーガイ [ʔaː⸣gai]魚の名前。和名、ヒブダイ。ブダイ科の魚。体長30~40センチの成魚がよく漁獲される。肉は柔らかい。刺身にして、肝臓の味噌和えにして食すると美味しい。
アーガチャー [⸢ʔaːga⸣ʧaː] (動)魚の名。和名、イロブダイ(雄)。その雌魚は⸣ミーハガー[⸣miːhagaː]という。ブダイ科の魚。体長60~80センチに成長するものがいる。普通は体長40~50センチのものが多く網にかかる。白身の魚肉は淡白な味であるが、刺身にして、その肝を味噌和えにしてミカン(九年母)の汁をかけて食すると美味である。また、蒲鉾の素材としても重宝されている。
アーガヤー [ʔaːga⸢jaː]ああ。ああ残念。ああ気の毒に。ああ、仕舞った。強調表現は、アーガ⸢ヤー[ʔaːga⸢jaː](ああ残念)という。
アーグル [⸢ʔaː⸣guru]{1}粟を脱穀した後の茎。
アーグル [⸢ʔaː⸣guru]{2}粟を収穫した後の畑。
アークン [⸢ʔaː⸣kuŋ]自動{PoS_1}いる(居る)。⸢ブンとも言う。あるく。ア⸢ラ⸣クン[ʔa⸢ra⸣kuŋ](歩く)の転訛した形。
アークン [⸢ʔaː⸣kuŋ]助動{PoS_2}~ている。
アークン [⸢ʔaː⸣kuŋ]自動{PoS_1}本動詞として用いられ、「ある状態で進行している」、「居る」、「存在する」、「働いている」、等の意味を表す。「歩く」の転訛したもの。
アークン [⸢ʔaː⸣kuŋ]補動{PoS_2}動詞の連用形に付いて、⸢~ている(現在進行形)」の意味を表す。本来は、ア⸢ラ⸣クン[ʔa⸢ra⸣kuŋ](歩く)であったのが、補助動詞として用いられるなかでアスペクト的意味表現を分担するようになって、r音が脱落したものと考えられる。
アークン [⸢ʔaː⸣kuŋ]補動{2}シ⸢グトー シー アー⸣クンカヤー[ʃi⸢gutoː ʃiː ʔaː⸣kuŋkajaː](仕事はしている<してあるく>かねえ。<仕事をして生活していることが継続進行している意を表す>)
アーサ [⸢ʔaː⸣sa](植)和名、あおさ(石蓴)。ヒトエグサ。緑藻類の海草の一種。海岸の珊瑚礁の岩に生える。干潮時に島の女性たちが採集し、天日乾燥して貯蔵する。日常の食事には、魚肉や豆腐のお汁に入れて食する。特に家造り共同作業の大量炊事には欠かせない食品で、豆腐や魚肉のお汁に入れて提供された。共同作業の際に提供される定番のスープの食材である。美味で忘れられない故郷の「味の素」である。⸣インアーサ[⸣ʔiŋʔaːsa]は形は似ているが食用に適さない。
アーザ [⸢ʔaː⸣ʣa]兄。総称。親族名称、呼称。「'u-ra sin-ca 'a-ri(汝兄あるか)」「語音翻訳」『海東諸国紀』と関係があるとする説『図説琉球語辞典』がある。
アーサヌ スー [⸢ʔaːsa⸣nu ⸣suː]アオサのお汁。アオサと豆腐のお汁は非常に美味で食も進むことから、家屋建築等の大勢の{賄}{マカナ}いには定番の賄い料理として調理された。
アーザマ [ʔaː⸢ʣa⸣ma]三兄。「小兄」の義。⸢アー⸣ザ[⸢ʔaː⸣ʣa](兄)に、-マ[-ma](小さいもの。指小辞)が付いて形成された語。親族名称、呼称。
アーサラカーサラ [⸢ʔaːsarakaː⸣sara]あれこれと。あれやこれやと。ヌー⸢サラクイサラ[nuː⸢sarakuisara](あれやこれやと)、⸢ヌー⸣ヤクイヤ[⸢nuː⸣jakuija](なんやかんや)もいう。
アーシ [⸢ʔaː⸣ʃi]制裁。罰。厳格な躾。
アーシ [ʔaː⸢ʃi]接尾たびに。ごとに(毎)。名詞や動詞の連体形、終止形に付いて、「そのたびに」の意味を表す。「~風に不令遇<アハセズ>つつみ無く~。万、1021」の、「合わす」の連用形「合わせて」が接尾語化したもの。
アーシキン [⸢ʔaːʃi⸣kiŋ]袷(あわせ)。「袷衣」の転訛したもの。
アーシジ [⸢ʔaː⸣ʃidʒi]粟粒。粟。
アーシ シキルン [ʔaː⸣ʃi ʃi̥⸢ki⸣ruŋ]指導や教育のため、体罰を与える。懲らしめる。いじめ(苛)る。
アーシックナー [⸢ʔaːʃik⸣kunaː]喧嘩をさせあうこと。「あわせくらべ」の義。
アーシパウル [⸢ʔaːʃipau⸣ru]袷羽織。⸢アーシハウ⸣リ[⸢ʔaːʃihau⸣ri]ともいう。羽織は、ごく限られた家にあるだけで、一般の家庭にはなかった。
アーシフチ [⸢ʔaːʃi⸣ɸu̥ʧi]合わせ目。二つ、またはそれ以上のものを接着するところ。「合わせ口」の義。⸢アーシ⸣ミー[⸢ʔaːʃi⸣miː](合わせ目)ともいう。
アーシムヌ [⸢ʔaːʃi⸣munu]酢の漬物、酢漬け。野菜や魚などを塩や味噌で混ぜる。「調和、塩安不<しほあふ>」『新撰字鏡』に「もの」がついて形成されたものか。
アーシラ [⸢ʔaː⸣ʃira]粟を刈り取って、保存のため穂がついたまま稲叢のように積み上げもの。
アースクブ [⸢ʔaːsuku⸣bu]粟殻。「あわすくも」の義。「粟・すくも(葦、茅の枯れたもの)」の転訛したもの。
アースクリジマ [⸢ʔaːsu̥kuri⸣dʒima]粟を生産する島。水田がなく、米作の出来ない粟作の島。⸢アー⸣ジマ[⸢ʔaː⸣dʒima](粟島)ともいう。
アースン [⸢ʔaːsuŋ]他動{1}木を揺すって実を落とす。「~置きて枯らしみ安由流<アユル>實波~。万、4111」の他動詞化したもの。「Aye,uru,eta(アユル)、シモの地方では、果実、穀粒、麦などが自然に落ちたり、汗血などがしたたり落ちる」『邦訳日葡辞書』の他動詞化したもの。
アースン [⸢ʔaːsuŋ]他動{2}乳を出す<流す>。
アースン [⸢ʔaːsuŋ]他動出来物や腫れ物の化膿したものを潰して膿を出す。
アースン [⸢ʔaːsuŋ]他動乳を搾り出す(搾乳する)。
アースン [⸢ʔaːsuŋ]他動脱穀する。
アースン [⸢ʔaː⸣suŋ]他動{1}合わせる。くっつける。一つにする。照合する。「~風に不令遇<アハセズ>~。万、1021」、沖縄古語「あはす」[オ・古・琉・組・混]。
アースン [⸢ʔaː⸣suŋ]他動{2}喧嘩させる。戦わせる。
アースン [⸢ʔaː⸣suŋ]他動{3}捏ね合わせる。混合させる。
アースン [⸢ʔaː⸣suŋ]他動{4}和える。酢や味噌で和える。
アースン [⸢ʔaː⸣suŋ]他動和える。混ぜ合わせる。
アーダニ [⸢ʔaː⸣dani]粟の種子。
アーダリー [ʔaːda⸢riː]まあ汚い。ああ嫌だ。ああつまらない。
アーッスン [⸢ʔaː⸣ssuŋ]粟包み。脱穀した粟を袋に入れて包装したもの。
アーツベー [⸢ʔaː⸣ʦubeː]泡。粟粒。⸢アー⸣ツメー[⸢ʔaː⸣ʦumeː](粟粒)ともいう。
アーツメー [⸢ʔaː⸣ʦumeː]泡。泡粒。⸢アー⸣ツベー[⸢ʔaː⸣ʦubeː](泡粒)ともいう。
アーティンポー [⸢ʔaːtim⸣poː]あわて者(慌て者)。そそっかしい人。粗忽もの。落ち着きが無く、物事を急ぎすぎて失敗しやすい人。
アートートゥ [⸢ʔaːtoːtu]あな尊と。ああ尊と。⸢アー[⸢ʔaː](ああ)は、「阿那於茂志呂<あなおもしろ>、古語事之甚切、皆阿那<あな>といふ」『古語拾遺』の転訛か。⸢トートゥ[⸢toːtu](尊い。畏敬すべきである。有り難い)の義。⸢アー⸣トートゥ ⸢ウー⸣トートゥ[⸢ʔaː⸣toːtu ⸢ʔuː⸣totu]のように重ねて用いられる。⸢ウー⸣トートゥ[⸢ʔuː⸣toːtu]も同じ意味。
アーニヤー [⸢ʔaː⸣nijaː]固有名詞。花城英行氏宅の名称。屋敷名。
アーヌイー [⸢ʔaːnu⸣ʔiː]粟飯。
アーヌ イバチ [⸢ʔaː⸣nu ʔi⸢ba⸣ʧi]糯粟で作ったイ⸢バ⸣チ[ʔi⸢ba⸣ʧi](飯初)。粟の新穀を煮て円錐形に握ったもの。
アーヌ カイ [⸢ʔaː⸣nu ⸢kai]粟粥。粟のお粥。
アーヌ シジ [⸢ʔaː⸣nu ⸣ʃiʤi]粟の粒。粟粒。
アーヌ パンビン [⸢ʔaː⸣nu ⸢pam⸣biŋ]粟の粉で作った芯のないてんぷら。「半片」の義か。
アーヌ ピサシイー [⸢ʔaː⸣nu pi̥⸢saʃi⸣ʔiː]粟と米のこわいい(強飯)。米に粟を混ぜて炊き上げた御飯。
アーヌ プー [⸢ʔaː⸣nu ⸣puː]粟の穂。粟穂。沖縄古語「あわほ」[琉]。
アーヌミース [⸢ʔaːnumiː⸣su]粟味噌。
アーヌムチ [⸢ʔaːnu⸣muʧi]粟餅。粟を碾いて粉にし、それを練って成形し、蒸籠で蒸して造った餅。鳩間島ではめったに作らなかった。
アーヌン [⸢ʔaː⸣nuŋ] (動)南京虫。
アーネー [⸢ʔaː⸣neː]東隣の家。
アーパ [⸢ʔaː⸣pa]老婆。待遇価値の落ちた、卑しめた表現。相手を多少見下した言い方。卑語に近い。
アーパ [⸢ʔaː⸣pa]⸢プーザン[⸢puːʣaŋ](帆桁)の最下段の桟の約四分の一上手に付けてある縄。サバニの帆桟やプーシンの帆桁を帆柱にしっかり結わえておくのに用いる縄。
アーパーマ [ʔaː⸢paː⸣ma]老婆。お婆さん。-マ[-ma]は指小辞。親愛の情を示す。親しみをこめた表現。
アーパーレー [⸣ʔaːpaːreː]新室寿ぎ歌。正式の名称は、⸢ヤー⸣ヌ ⸢フンシキ⸣ アーパーレー[⸢jaː⸣nu ⸢ɸunʃi̥ki⸣ ʔaːpaːreː](新室の風水<基礎固め・鎮め>歌アーパーレー)という。歌は前半のナ⸢ガミ⸣ク[na⸢gami⸣ku](長め句)と後半のハ⸢ヤミ⸣ク[ha⸢jami⸣ku](早め句)からなる。ナ⸢ガミ⸣クでは新室の構造体を美辞麗句で歌い上げ(室誉めし)、後半のハヤミクでは新室の中の奇怪な形相の動物等を客観的に表現して「魔除け」とし、へんばい(反閇)して山の神、海の神、野の神々を鎮めて歌い終わる歌形構造を有する。新築の屋根が葺き上がる日没時になると、建築作業に従事した全員が作業着のまま新室の中に入って座り、儀式に参加した。先ず全員でアーパーレーの歌を歌う。鐘と銅鑼、太鼓に合わせて歌い終わる。そして村の道化役者をもって任ずる二人が出て家主の夫婦に扮し、新室が完成するまでの苦労話を面白おかしく語った後、抱いていた⸢ユイプス[⸢juipusu](藁人形)を家の中柱に結わえた後、⸢ワンヌン ビー⸣ティ ⸢バンヌン ビー⸣ティ シッ⸢トウイシットウイ(貴方も酔って、私も酔って、あな尊や)と叫んで神酒を棟桁に投げかけて終わる儀式
アーパーレー [⸣ʔaːpaːreː]新築家屋の室褒め儀礼。新築落成の夜、⸢ユイプスガナシ[⸢juipu̥suganaʃi](新築家屋の守護神、茅で作った人形)を迎え、アーパーレー歌謡を歌いながら祓い清める儀式。新室の当主とその妻に扮した男二人が新築に至るまでの苦労を話し、村人の協力に感謝の辞を述べ、神々へ新室守護の祈願をしたのち、参加者全員でアーパーレーを歌い、両足で強く床板や土間を踏み鳴らし、反閉(へんばい)をして邪気を祓う。
アーパーレーウタ [⸣ʔaːpaːreːʔuta]新室寿ぎの歌。新築家屋の邪気祓えの歌。ナ⸢ガミ⸣ク(長め声、第1連から第9連まで)とハ⸢ヤミ⸣ク(早め声、第10連から第37連まで)の二部構成になっている。アーパーレー(ナガミク){Sg_1}シルウチヌ メーヌウチニ ヤーバスクリ アンティス ウリユー ミユナーキャームイ{Sg_2}シルウチヌ メーヌウチニ ヤーバスクリ アンティス ウリユー ミユナーキャームイ{Sg_3}スブチダマ イシジバシ ヤーバスクリ アンティス ウリユー ミユナーキャームイ{Sg_4}カクガニバ パラーバシー ヤーバスクリ アンティス ウリユー ミユナーキャームイ{Sg_5}バンゾンガニバ ヌキギバシー ヤーバスクリ アンティスー ウリユー ミユナーキャームイ{Sg_6}クルキカニバ キタバシー ヤーバスクリ アンティスー ウリユー ミユナーキャームイ{Sg_7}ナンチャクガニ ウダティシー ヤーバスクリ アンティスー ウリユー ミユナーキャームイ{Sg_8}カクガニバ ミニバシー ヤーバスクリ アンティスー ウリユー ミユナーキャームイ{Sg_9}ヤーカラダキバ キチバシー ヤーバスクリ アンティスー ウリユー ミユナーキャームイ (ハヤミク){Sg_10}ヤー タマシダル ユチルバシー ヤーバスクリアンティスー{Sg_11}ヤー トゥルパニバ ガヤーバシー ヤーバスクリ アンティスー{Sg_12}ヤースルガニバ ティブクシー ヤーバスクリ アンティスー {Sg_13}ヤー イツピピルバ シミナーシー ヤーバスクリ アンティスー {Sg_14}ヤー ダディクダキバ アムヌバシー ヤーバスクリ アンティスー {Sg_15}ヤー ナンツァヨージバ マーリザシー ヤーバスクリ アンティスー {Sg_16}ヤー クンピピルバ カキナーシー ヤーバスクリ アンティスー {Sg_17}ヤー クヌヤーヌ ウチナカー テイダヌカタ アンティスー{Sg_18}ヤー ティダヌカタミリバ ティリユーナードゥシーユール {Sg_19}ヤー クヌヤーヌ ウチナカー シキヌカタ アンティス {Sg_20}ヤー シキヌカタミリバ ガリユーナードゥシーユール {Sg_21}ヤー クヌヤーヌ ウチナカー ピトゥヌカタアンティス {Sg_22}ヤー ピトゥヌカタミリバ バガウヤードゥシーユール {Sg_23}ヤー クヌヤーヌ ウチナカー ンーマヌカタ アンティス {Sg_24}ヤー ンーマヌカタミリバ キリユーナードゥ シーユール {Sg_25}ヤー クヌヤーヌウチナカー ウシヌカタ アンティス {Sg_26}ヤー ウシヌカタミリバ シキユーナードゥシーユール {Sg_27}ヤー クヌヤーヌウチナカー インヌカタ アンティス {Sg_28}ヤー インヌカタミリバ フイユナードゥシーユール {Sg_29}ヤー クヌヤーヌウチナカー マヤヌカタ アンテイス {Sg_30}ヤー マヤヌカタミリバ ガジユーナードゥシーユール {Sg_31}ウクダカエンヤー カニブーヤーヌ サイヤリ {Sg_32}ウクダカエンヤー ニヌブーヤーヌ サイヤリ {Sg_33}アーパレー キユーヌピーバ ムトゥバシ {Sg_34}アーパーレー クガニピーバ ニシキシ {Sg_35}アーパーレー イシカマーシ イワイス {Sg_36}アーパーレー ナンカマーシ イワイス {Sg_37}アーパーレー トゥズミヌ カイサヤ
アービ [⸢ʔaː⸣bi] (動)貝の名。あわび。ミミガイ科の巻貝の一種。和名、イボアナゴウ。殻長5~7センチ。殻の表面にイボまたはコブ状の突起ができる。穴が数個あり、イノーの浅い岩礁に生息する。煮たり,茹でたりして食する。
アーピキウシ [⸢ʔaːpiki⸣ʔuʃi]粟碾き臼。粟を精白する石臼。イ⸢ソーシ[ʔi⸢soːʃi](大豆を碾く石臼)に似た形をしているが、臼に歯がない。
アープール [⸢ʔaːpuː⸣ru]粟の豊作祈願祭。粟の豊年祭。対語は⸢マイプール[⸢maipuːru](稲の豊年祭)。鳩間島の豊年祭は稲の豊作祈願が主で、併せて五穀の豊作祈願もなされる。
アーフキカーフキ [⸢ʔaːɸukikaː⸣ɸu̥ki]荒い息づかいをして。激しく呼吸をして。喘ぎあえぎ。
アーブク [⸢ʔaːbu⸣ku]泡(あわ)。あぶく。気泡。豆腐を煮詰める際に沸きあがる泡。「沫蕩、此をば阿和那伎(アワなぎ)と云ふ」『日本書紀 神代上』。
アーフクン [⸢ʔaːɸukuŋ]自動あえぐ(喘ぐ)。激しく呼吸する。息切れする。「泡吹く」の転訛したものか。
アーミーボーサー [⸢ʔaːmiːboː⸣saː]雨宿り。
アーミキ [⸢ʔaː⸣miki]粟で造った神酒。
アームチ [⸢ʔaː⸣muʧi]粟餅。糯粟を石臼で挽いた粉でつくった餅。
アームル [⸢ʔaː⸣muru]泡盛。島酒。
アー メー [⸢ʔaː meː]ああ、もう。もう大変だ。始末に負えない。
アーヤ [⸢ʔaː⸣ja]父。父親。親族名称。呼称。明治生まれの古老が用いる。[ʔa](吾)・[uja](親) → [⸢ʔaː⸣ja](父)、「~よし名は告らせ父母<オヤ>はしるとも。万、363」の転訛したものか。多くの若年層では、⸣アチャー[⸣ʔaʧaː](父。父親。親族名称、呼称)ともいう。これは、⸢ア(吾)・ヂ「知(父『古事記中、應神謡49』)・ア(*a<指小辞>)」によって形成されたものであろう。また、⸣イーヤ[⸣ʔiːja](父。名称、呼称。?i:ja)という家もあり、⸢チャー⸣チャー[⸢ʧaː⸣ʧaː](父。名称。⸢ヨー⸣カヤーヌ ⸢チャー⸣チャー{SqBr}⸢joː⸣kajaːnu ⸢ʧaː⸣ʧaː{/SqBr}<西原家のお父さん>)という家もある。
アーヤブイ [⸢ʔaː⸣jabui]海底地名。⸢アー⸣ヤ(お父さん。「吾親」の転訛したもの。寄合三戸氏)が立てられた、ブイ(航路標識。英語のbuoy<浮標>の転訛)のある曽根の意。タ⸢カビ⸣ヌ フ⸢チ[tḁ⸢kabi⸣nu ɸu̥⸢ʧi](高干瀬の津口)を回って鳩間港へ向かう途中にある
アーラ [⸢ʔaːra]東。太陽の上がる方向。「上がる辺」の転訛したものか。⸢アーンタ[⸢ʔaːnta](東方、東の所)ともいう。⸢アーラキ[⸢ʔaːraki](東側、東の所)参照。
アーラー ッサーケーン [⸢ʔaːraː⸣ s⸢saː⸣keːŋ]東の空は白んできた(夜が白白と明けてきた)
アーラキ [⸢ʔaːraki]東側。東の所。
アーラシパク [⸢ʔaːraʃipaku]蒸し器。蒸し箱。板で作った箱状の蒸篭で、二段重ねで用いる蒸し器。甑とは形が異なる。
アーラスン [⸢ʔaːra⸣suŋ]他動配る。配分する。公平に分配する。沖縄古語「あらす(有らす)」[古・琉]。
アーラスン [⸢ʔaːrasuŋ]他動慌てさせる。騒がせる。急がせる。
アーラスン [⸢ʔaːrasuŋ]他動沸騰させて吹きこぼれさせる。吹きあげさせる。「上がらす」の転訛したもの。
アーラスン [⸢ʔaːrasuŋ]他動餅やカステラ等を蒸す。
アーラスン [⸢ʔaːrasuŋ]他動臼の歯をたてる。
アーラスン [⸢ʔaːrasuŋ]他動せき立てる。急がせる。慌てさせる。⸢アールン[⸢ʔaːruŋ](自動、急ぐ。暴れる)の他動詞。
アーラッパー [⸢ʔaːrappaː]動作が荒々しいこと。荒っぽい人。粗雑な人。手荒に扱う人。手荒いこと。粗略に扱う人。
アーラッパーシー [⸢ʔaːrappaːʃiː]粗雑にすること。荒っぽくすること。乱暴に扱うこと。
アーラニバル [⸢ʔaːra⸣nibaru] (動)魚の名。和名、マハタ。スズキ科の魚。体長1メートル以上に成長する。鳩間島の⸢マイ⸣ズニ[⸢mai⸣ʣuni](前曽根)で、ノコギリダイを生餌にして、体長70~90センチのアーラニバルを釣り上げることができた。
アーラバカ [⸢ʔaːrabaka](地)西表島北岸伊武田地区の地名。同地区のウ⸢ブ⸣ミジ[ʔu⸢bu⸣miʣi](大見謝川)の西側の⸢ケーダタバ⸣ル[⸢keːdataba⸣ru](ケーダ田原)とトゥ⸢マダタバル[tu⸢madatabaru](トゥマダ田原)の中間にある水田地帯の名。トゥ⸢マダ田原に属するが、その中の「東の⸣パカ[⸣pḁka](ハカ<区域>)」の義。ニ⸢シムレー[ni⸢ʃimureː](米盛家)、ア⸢マシェー[ʔa⸢maʃeː](小浜家)、イ⸢ラ⸣ブレー[ʔi⸢ra⸣bureː](西原家)、ア⸢ザテー[ʔa⸢ʣateː](東里家)、⸢ヨー⸣カヤー[⸢joːka⸣jaː](西原家)、ク⸢メー[ku⸢meː](小浜家)等の水田が広がっていた
アーラバカミナトゥ [⸢ʔaːrabakaminatu]地名。西表島伊武田地区トゥ⸢マダ[tu⸢mada]のアーラバカ(東区画)の小港。アーラバカ一帯の水田の⸢ター⸣ヌ シ⸢ビ[⸢taː⸣nu ʃi⸢bi](田の排水口<田尻>)が小さな港状になった舟の出入り口を形成していて、⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](サバニ,板舟)をそこから出入りさせて荷物の積み下ろしをしていた。
アーラマイズニ [⸢ʔaːramaiʣuni](海底地名)。「東前曽根」の義。鳩間島の南面約500メートルの海中に発達した珊瑚礁の東側に分れて発達形成された曽根。この曽根は、ナ⸢カヌ⸣スニ[na⸢kanu⸣suni](中の曽根)へと続く。⸣スニ[⸣suni](曽根)とは、大潮の時にも珊瑚礁は海面に現れない所で、海底の珊瑚礁を言う。この曽根とタ⸢カ⸣ビー[tḁ⸢ka⸣biː](高干瀬)の間に約60メートルのフ⸢チ[ɸu̥⸢ʧi](津口)がある
アーランカー [⸢ʔaːraŋkaː]慌て者。粗忽者。⸢アーリムヌ[⸢ʔaːrimunu](慌て者)ともいう。
アーリバナ [⸢ʔaːribana]上がり始めのころ。「上がり端」の義。
アーリンーマ [⸢ʔaːrimːma]暴れ馬。気性の荒い馬。鳩間島には馬は育たないという伝承がある。神様が馬に跨って御嶽から御嶽へと回っておられるので、それに遭遇すると馬が暴れて⸢カンアタ⸣ル[⸢kanata⸣ru](神当り、神罰)するという。昔から現在に至るまで鳩間島で馬が飼われたことはないという
アール [⸢ʔaːru](動)蟻。
アールカジ [⸢ʔaːrukadʒi]東風。普通の東風はやわらかに、そよそよと吹く風である。⸢アンカジ[⸢ʔaŋkadʒi](東風)ともいう。
アールティダ [⸢ʔaːrutida]上がる太陽。⸢アーリティダ[⸢ʔaːritida](上がる太陽)ともいう。
アールバ ユミ [⸢ʔaːruba⸣ jumi]⸢蟻を数えるように」の義。転じて動作ののろい意。
アールピサ [⸢ʔaːrupisa]屋根の東側の斜面。「上がり(東)ひら」の義。⸢アンタヌピサ[⸢ʔantanupi̥sa](東のひら)ともいう。
アールビルティダ [⸢ʔaːrubirutida]東の方にある太陽。午前中の太陽。「東の方に居る太陽」の義。酷暑の夏には午前十一時ごろに仕事を終え、午後は三時以降日没まで野良仕事を続けた。
アールムティ [⸢ʔaːrumuti]東の側、東側。⸢アーラムティ[⸢ʔaːramuti](東側)ともいう。⸢イールムティ[⸢ʔiːrumuti](西側)の対義語。
アールン [ʔaː⸣ruŋ]自動配分されて全体に行き渡る。
アールン [⸢ʔaːruŋ]自動慌てる。急ぐ。騒ぐ。暴れる。
アールン [⸢ʔaːruŋ]自動{1}上がる。昇る。
アールン [⸢ʔaːruŋ]自動{2}蒸しあがる。
アールン [⸢ʔaːruŋ]自動{3}沸騰する。
アールン [⸢ʔaːruŋ]自動{1}荒れる。思うままにふるまう。
アールン [⸢ʔaːruŋ]自動{2}暴れる。
アールンカイ [ʔaːruŋkai]東向き。
アーレー [⸢ʔaːreː]あわて(慌て)者。はしゃぎったてる者。落着きのない者。⸢アールン[⸢ʔaːruŋ](慌てる)の連用形⸢アーリ[⸢ʔaːri]に、接尾辞-ア[-a](~者)が下接して連母音 [ia] → [eː] の音韻変化を起こしたもの。
アーレーキ [⸢ʔaːreːki]東側。
アイ [⸣ʔai]{PoS_1}そう(然う)。
アイ [⸣ʔai]{PoS_2}そう。あれ!相手の言葉に対する同意、肯定判断、感動を表す。
アイ [⸣ʔai]あわい(間)。あいま。あいだ。時間的、空間的あいだ(間)に用いる。
アイ [⸣ʔai]藍。
アイ [⸣ʔai]喧嘩。争い。動詞⸣アウン[⸣ʔauŋ](喧嘩する)の連用形から転成した名詞形。
アイ [⸢ʔai]口蓋。上歯の歯茎から硬口蓋にかけた部分。「腭、阿岐(あぎ)、口中上顎也」『和名抄』、「腭、アギ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
アイ [⸣ʔai]おや。まあ。あら。思いがけないことに驚いて発することば。
アイ [⸢ʔa⸣i]おや。まあ。あれっ。意外なとき、驚いたときに用いる語。
アイーイー [ʔaiː⸢jiː]そうか?その通りか?アイー⸢イー ワール⸣ カ⸢リン⸣ カ⸢ラシター[ʔaiː⸢jiː waːru⸣ ka⸢riŋ⸣ ka⸢raʃi̥taː](そうか?、君が彼に貸したのか?)
アイーイー アイル ヤッター [ʔaiː⸢jiː⸣ ʔauru ⸢jattaː]そうか?そうだったのか。
アイアイ [⸣ʔaiʔai]あれあれ。あれまあ。驚いた時、予想外の出来事に逢着した時に発する声。
アイイジカイイジ [ʔai⸢ʔiʤi⸣kaiʔiʤi]のらりくらり。あれこれと言い抜けるさま。「そう言い、ああ言い」の転訛したもの。
アイイズ [⸢ʔaiʔiʣu](動)魚の名。和名、アミアイゴ。体長約15センチ。背びれに毒針を有し、刺されると痛い。上げ潮の波に乗って、干瀬のヤ⸢トゥ[ja⸢tu](リーフの割れ目。「やと(谷)」の義か)からリーフの上に群れて上がってくるところを、石を投げて脅すと沢山のアミアイゴが珊瑚礁の岩陰や干瀬の窪みにぴたっとくっ付いて動かなくなる。そこで、干瀬を走りながら小さな銛でそれを突いて漁獲したものである。
アイカーフンカー [⸢ʔaikaːɸuŋ⸣kaː]喧嘩口論。
アイカイ [⸣ʔaikai]{PoS_1}ああこう。あれやこれや。
アイカイ [⸣ʔaikai]{PoS_2}そうこう。ああこう。あんなにこんなに。
アイカミ [⸢ʔai⸣kami]あいかめ(藍甕)。藍を入れて醗酵させるための甕。
アイカン [⸢ʔai⸣kaŋ]合鑑。あいふ(合符)。手荷物の預かり札。標準語からの借用語。運搬船で荷物を送る際に発行してもらい、石垣港や那覇港で合鑑と引き換えに荷物を受け取った。
アイク [⸢ʔai⸣ku]担ぎ棒。アフゴ(朸)。「朸、和名阿布古(あふこ)、杖名也」『和名抄』の転訛したもの。荷を担う棒。
アイサバン カイサバン [⸣ʔai⸢sabaŋ⸣ kai⸢sabaŋ]どんなにしても。いづれにしても。「ああしてもこうしても」の義。基本的にはABCDEFBCDE型の重言。
アイザムトゥ [⸢ʔai⸣ʣamutu]西村と東村の旗頭が出会う場所。小底家の東南(巳の方角)の十字路。「会い座元」の義か。西村と東村の境界線となる縦道と沿岸道路の横道が交差した所。そこは、ピ⸢ナイ⸣ウガン[pi⸢na⸣ʔiugaŋ](鬚川御嶽)と⸣サンシキ[⸣saŋʃi̥ki](桟敷)を画する縦道に通ずる所でもある。友利御嶽から、朝の祈願を終えたサ⸢カサ、ティ⸢ジリ⸣ビーの神職者たちがカンシバを頭に巻いて、道歌を歌いながら下りて来られるのを、⸣サンシキで待機していたヤ⸢ク⸣サ[ja⸢ku⸣sa](村役人)や⸢スー⸣ダイ[⸢suː⸣dai](総代。部落会長)らがアイザムトゥで恭しく出迎えて、⸣サンシキヌウタ[⸣saŋʃi̥kinuʔuta](桟敷の歌)を歌い終える。それを合図に、アイザムトゥではドゥ⸢ラーン[du⸢raːŋ](銅鑼)が一段と強く打ち鳴らされ、東西の旗頭が合流し、東の旗頭を先頭にして⸣サンシキ(桟敷)へ入場し、余興が開始される。⸢パー⸣レー[⸢paː⸣reː](爬竜船競漕)が済んで旗頭がトゥ⸢ニムトゥへ帰る際にも⸢アイ⸣ザムトゥで旗頭を揃え、⸢アイ⸣ザムトゥの歌を歌って来年の豊年豊作を予祝してそれぞれのトゥニムトゥへ帰る
アイザムトゥヌ ウタ [⸢ʔai⸣ʣamutunu ⸣ʔuta]「会い座元の歌」の義。神歌の一種。西村と東村の旗頭がトゥ⸢ニムトゥ[tu⸢nimutu](宗家)から出てきて出会う所、またトゥ⸢ニムトゥ(宗家)へと別れていく所の⸢アイ⸣ザムトゥ[⸢ʔai⸣ʣamutu](会い座元)で歌われる。⸢プール⸣ウタ[⸢puːru⸣ʔuta](豊年祭の歌)の項参照
アイシ [⸣ʔaiʃi]~の訳で。~の理由で。
アイジ [⸢ʔai⸣ʤi]合図。連絡。案内。
アイシー カイシー [ʔai⸢ʃiː⸣ kaiʃiː]そうこう(然う斯う)して。あれをしこれをして。あれこれと。何やかやと。「然うし斯うして」の転訛したもの。
アイシーカイシー [⸣ʔaiʃiːkaiʃiː]そうこうして。のらりくらりするさま。「ああし、こうし」の転訛したもの。
アイシーカイシー [ʔai⸢ʃiː⸣kaiʃiː]そうこうして(然う斯うして)。そうし、こうし。あれし、これをしして。
アイシチ [⸢ʔaiʃi̥ʧi]挨拶(あいさつ)。標準語の「挨拶」が転訛したもの。普通は、⸣グリー[⸣guriː](御礼。頭を下げること)という。
アイシチユー [⸢ʔaiʃi̥ʧijuː]挨拶用のもの。口実。形ばかりのもの。
アイシティ [ʔaiʃi̥⸢ti]そして(然して。而して)。そうして(丁寧な言い方)。
アイジョー [⸢ʔaiʤoː]愛情。情愛。友愛。標準語からの借用語。
アイシン カイシン [⸣ʔaiʃiŋ ⸣kaiʃiŋ]どのみち(何の道)。いずれにしても。どっちみち。「ああしても、こうしても」の義。
アイシンカイシン [⸣ʔaiʃiŋkaiʃiŋ]{1}いかようにしても~ない。「そうしても、こうしても~ない」の義。どうにもこうにも~ない。続く否定の条件句を誘導し、それと呼応して意味を強調する表現。「そうしても、ああしても」の転訛したもの。
アイシンカイシン [⸣ʔaiʃiŋkaiʃiŋ]{2}どのみち。どっちみち。いずれにしても。結局。
アイシンカイシン [⸣ʔai⸢ʃiŋ⸣kaiʃiŋ]ああもこうも。いづれにしても。どうにもこうにも。どのみち。「ああしてもこうしても」の義。基本的にはABCDEBCD型の重言。
アイシンカイシン [ʔai⸢ʃiŋ⸣kaiʃiŋ]どうでもこうでも。ああしてもこうしても。いづれにしても。
アイ スーカー [⸣ʔai ⸢suː⸣kaː]そう<然う>するのなら。そうしたら。丁寧な表現。前件の前提条件を受けて後件の判断が起きる意を表す。
アイ スヌ [⸣ʔai ⸢sunu]そうだが。だがしかし。だけれど。丁寧な言い方。普通は、ぞんざいに、ア⸢スヌ[ʔa⸢sunu](だが。だがしかし<接続詞>)という。前に述べたことと対立する事柄を逆説的に述べる際に用いる。
アイズミ [⸢ʔai⸣ʣumi]藍染め。
アイズミキン [⸢ʔai⸣ʣumikiŋ]藍染の着物。
アイズミヤー [⸢ʔai⸣ʣumijaː]藍染め屋。
アイスンケン [ʔai⸢suŋ⸣keŋ]それほど~ない。そんなに~ない(丁寧な表現)。ア⸢スン⸣ケン[ʔa⸢suŋ⸣keŋ](それほど~ない。そんなに~ない)(ぞんざいな表現)ともいう。打ち消しの表現と対応して用いられる陳述副詞。
アイダー [ʔai⸢daː]そうである。そうだ。その通りだ。副詞⸣アイ[⸣ʔai](そう。そのように)に終助詞⸢ダー[⸢daː](~だよ。~よ)の付いた形。
アイダチ [⸢ʔaida⸣ʧi]{1}木槌。大工作業などで用いる木槌。鑿を使って材木にほぞあな(枘穴)を開ける際に用いるのは、アイダ⸢チェー⸣マ[ʔaida⸢ʧeː⸣ma](小木槌)という。
アイダチ [⸢ʔaida⸣ʧi]{2}横杵。
アイダチェーマ [ʔaida⸢ʧeː⸣ma]小槌。木工用の小槌。
アイツァ [⸢ʔai⸣ʦa]斑点。色の混ざったもの。まだら。転じて、いろいろなものが混じって明確でないもの。
アイツァースン [⸢ʔaiʦaː⸣suŋ]自動喧嘩し合う。乱闘する。動詞⸣アウン[⸣ʔauŋ](喧嘩する)の連用形⸣アイ[⸣ʔai](喧嘩し)に、動作作用の程度の激しさを表す接尾語⸢ツァー⸣スン[⸢ʦaː⸣suŋ](~散らす。散々に~する)が付いて複合動詞を形成したもの。
アイツァウシ [⸢ʔai⸣ʦaʔuʃi]まだら模様の牛。白黒赤毛の混じった牛。⸣アガマラーウシ[⸣ʔagamaraːʔuʃi](赤毛の混じった牛)と同じ。
アイツァビーツァ [⸢ʔai⸣ʦabiːʦa]点々と汚れがついている様子。
アイツァムニ [⸢ʔai⸣ʦamuni]複数の言語が交じり合って、はっきり理解できない不完全な言葉。片言交じりの言葉。発音も不完全で、たどたどしい言葉。
アイツォー [ʔai⸢ʦoː]そうなんだよ。指示代名詞ウ⸢リ[ʔu⸢ri](それ)の副詞的用法(副詞)⸣アイ[⸣ʔai](そう)に、強意の終助詞⸠ツォー[⸠ʦoː](~<だ>よ)が付いた形。
アイツォー [⸣ʔaiʦoː]そうなんだそうだ。その通りだそうだ。指示代名詞ウ⸢リ[ʔu⸢ri](それ)の副詞的用法(副詞)⸣アイ[⸣ʔai](そう)に、伝聞の終助詞⸠ツォー[⸠ʦoː](~<だ>そうだ。)が付いた形。
アイツォーシェー [ʔai⸢ʦoː⸣ʃeː]そうなんですってば。アイ⸢ツォー[ʔai⸢ʦoː](そうなんだよ)に、相手に同意し再確認・反省の意を表す終助詞⸣シェー[⸣ʃeː](~ってば)の付いた形。
アイッツァースン [⸢ʔaiʦaː⸣suŋ]自動喧嘩いあう。
アイティー [⸢ʔai⸣tiː]相手。
アイナカ [⸢ʔaina⸣ka]あいだ。人と人の間。中間。時間的にも空間的にも用いる。
アイナリカイナリ [⸣ʔainarikainari]そうこうして(然う斯うして)。「然う成り斯う成り」の義。
アイニ [⸣ʔaini]{1}そんなに。そのように。
アイニ [⸣ʔaini]{2}あんなに。あのように。
アイニカイニ [⸣ʔainikaini]ああもこうも。そうもこうも。ABCDBC型の重言。
アイヌシェー [⸣ʔainuʃeː]そうだよ。なるほど、そうなんだよ。相手の判断に共鳴して相槌を打つ意。
アイヌシェー [⸢ʔainu⸣ʃeː]なるほど、そうなんだ。相手の意見に賛同する際に発する言葉。
アイヌパナ [⸢ʔai⸣nupana]打ち身。皮下出血して青黒くなっているもの。「藍の花」の義。
アイブ [⸣ʔaibu]連体あんな。あのような。単数を表す。
アイ ブー ムヌ [⸣ʔai ⸢buː munu]あんなだもの。そのようにしているもの。そんなだもの。
アイプス [⸢ʔai⸣pu̥su]喧嘩をする人。喧嘩売り。
アイブツァ [ʔai⸢bu⸣ʦa]連体あんな。あのような。複数を表す。ア⸢ブ⸣ツァ[ʔa⸢bu⸣ʦa](あんな。あのような)ともいう。
アイブ ムヌヌ [⸣ʔaibu ⸣mununu]あんな者<物>が。
アイベーティ [ʔai⸢beː⸣ti]それで。それ故に。前件を受けて、それを理由とする後件<帰結>を述べる際に用いる。順態接続を表す。
アイマ [⸢ʔai⸣ma]合間。連続した物事のとぎれた間。⸣マドゥ[⸣madu](間遠)ともいう。
アイマールン [⸢ʔaimaː⸣ruŋ]他動謝る。謝罪する。
アイマチ [⸢ʔaima⸣ʧi]{PoS_1}あやまち(過ち)。失敗。「誤錯、安夜末覩(あやまつ)」『華厳音義私記』の転訛したもの。
アイマチ [⸢ʔaima⸣ʧi]{PoS_2}ごめん。
アイマチ スン [⸢ʔaima⸣ʧi ⸢suŋ]謝る。「過ちする」の義。
アイマルン [⸢ʔai⸣maruŋ]他動謝る。詫びる。謝罪する。老年層は⸣ワキ ⸢スン[⸣waki ⸢suŋ](謝る。詫びる)を多用する。
アイミー [⸣ʔaimiː]そうだろう?そうだね。目下に対して確認する表現。⸣アイ ⸢ヤン⸣ミー[⸣ʔai ⸢jam⸣miː](そう・である・ね<確認のイ>?)の縮まった形。ク⸢レー ワー⸣ ムヌ。
アイヤー [⸣ʔaijaː]そんなには。
アイヤー アラヌ [⸣ʔaijaː ʔa⸢ra⸣nu]そうではない。ク⸢ヌ ジーヤ⸣ カイル ⸣カクミー。⸢アーイ⸣ アイヤー ア⸢ラ⸣ヌ ⸣アイニ ⸣カクカー マ⸢チガイ⸣ス[ku⸢nu ʤiːja⸣ kairu ⸣kḁkumiː。⸢ʔaːi⸣ ʔaijaː ʔa⸢ra⸣nu ⸣ʔaini ⸣kḁkukaː ma⸢ʧigai⸣su](この文字は、このように<ぞ>書くんでしょう?いや<否>、そうではない。そのように書くと間違えるよ)。アー⸢イ⸣ アイヤー ア⸢ラ⸣ヌ。
アイヤーカー [ʔai⸢jaː⸣kaː]それなら。仮にそうであれば。それであるなら。前件の仮定条件的表現を受けて後件を述べる際に用いる。⸣アイ ヤ⸢ル⸣カー[⸣ʔai ja⸢ru⸣kaː](そうであるなら)の縮まった形。
アイヤーティ [ʔai⸢jaː⸣ti]それだから。それ故に。それで。⸣アイ ヤ⸢レー⸣ティ[⸣ʔai ja⸢reː⸣ti](そうであるから)の縮まった形。順態接続を表す。
アイ ヤッタ [⸣ʔai ⸢jatta]そうだった。
アイ ヤラバン [⸣ʔai ja⸢rabaŋ](仮に)そうであっても。それでも。仮定的前提条件。⸣アイ ヤ⸢ルバン[⸣ʔai ja⸢rubaŋ](そうであっても。そうであるにしても<確定的前提条件>)ともいう。カ⸢ジヌ⸣ フキティル キ⸢ララン⸣シェンツォー。⸣アイ ヤ⸢ラバン⸣ キ⸢ム⸣ヌ ⸣アルカー キ⸢ラリ⸣シェール[ka⸢ʤinu⸣ ɸu̥kitiru ki⸢raraŋ⸣ʃenʦoː。⸣ʔai ja⸢rabaŋ⸣ ki⸢mu⸣nu ⸣ʔarukaː ki⸢rari⸣ʃeːru](風<台風>が吹いて<ぞ>来られなかったそうだ。それでも気持ち<肝・心・愛情>があれば来られた<来ることができた>ろうよ)
アイ ヤルカー [⸣ʔai ja⸢ru⸣kaː]それなら。そうであるなら。
アイ ヤルヌ [⸣ʔai ⸢jarunu]そうだが。そうではあるが。
アイ ヤルンダ [⸣ʔai ja⸢runda]それだから。それゆえに。だから。前に述べた事柄が、後に述べる事柄の原因・理由になることを表す。
アイ ヤレーティ [⸣ʔai ja⸢reː⸣ti]そうであるから。それ故に。
アイヤンダ [ʔai⸢janda]だから。そうだから。そういう訳だから。順態接続を表す。アイヤ⸢ルンダ[ʔaija⸢runda](そうであるから)の縮約形。
アイル [ʔairu]そのように。⸣アイニル[ʔainiru](そのようにぞ)の縮約形。
アイル ムヌ [⸣ʔairu ⸣munu]そうであるのに。そうだのに。⸣アイ ヤ⸢ル⸣ ムヌ[⸣ʔai ja⸢ru⸣ munu](そうであるのに)の縮まった形。
アイルン [⸢ʔairuŋ]自動木の実などが熟れて落ちる。あゆ(零ゆ)。「~置きて枯らしみ安由流<アユル>實は~。万、4111」の転訛したもの。
アイルン [⸢ʔairuŋ]自動{1}できものの膿がでる。
アイルン [⸢ʔairuŋ]自動{2}乳汁が流れ出る。「~置きて枯らしみ安由流<アユル>實波~。万、4111」の転訛したものか。
アイルン [⸢ʔairuŋ]自動{3}木の実が落ちる。
アイルン [⸢ʔairuŋ]他動上げる。
アインドゥ ヤルカー [⸣ʔaindu ja⸢ru⸣kaː]もしも<仮に>そうであるなら。
アウ [⸢ʔau]青い色。青(青。緑。紺)を含む色。
アウ [⸣ʔau]お供(御伴)。人に付き添うこと。
アウアウシ [⸢ʔauau⸣ʃi]青々と。強調すると、アウ⸢アウ⸣シ[ʔau⸢ʔau⸣ʃi](非常に青々と)のようにアクセントが変わる。
アウイラブチ [⸢ʔauirabuʧi] (動)魚の名。和名、ハゲブダイ。オオモンハゲブダイ。の総称。ブダイ科の仲間。体長25~30センチの成魚がよく漁獲される。刺身や煮付けにしても美味で、蒲鉾の原料として重宝される。
アウイル [⸢ʔauiru]青色。緑色、紺色などを含む。
アウカリ [⸢ʔaukari]青田刈り。⸢青刈り」の転訛。作物が十分に熟しないうちに刈り取ること。
アウガン [⸢ʔaugaŋ]顔色の青いこと。青ざめたもの。顔面蒼白のもの。
アウクー [⸢ʔaukuː]食用の青色の染料。「青粉(あおこ)」の義。戦前は蓬(よもぎ)の葉を搗いて青汁を作り、餅粉に捏ね混ぜて緑色の青餅を作った。
アウコージ [⸢ʔaukoːdʒi]米、麦、豆などを蒸して蓆などにねかせ、それに麹菌を繁殖させたもの。味噌や醤油、地酒を造る原料とした。
アウサビ [⸢ʔausabi]ろくしょう(緑青)。青い錆。銅の表面に生じる緑色のさび(錆)で有毒と言われていた。
アウザムン [⸢ʔauʣamuŋ]自動青ばむ。青みを帯びる。
アウシース [⸢ʔauʃiːsu](植)青紫蘇。
アウシジ [⸢ʔauʃiʤi]静脈が膨らみ、浮き出たもの。青筋。⸢アウシル[⸢ʔauʃiru](静脈)ともいう。
アウシタダリ [⸢ʔauʃitadari]瑞々しくたわわに。たわわな、滴るような瑞々しい緑色。
アウシタダル [⸢ʔauʃita⸣daru]生臭さを衣類や肌に染み込ませているさま。じめじめして汗臭く、鮮魚の生臭さが染み付いたさま。「青滴り」の転訛したものか。カツオ節製造工場の職人たちが持つ臭気。
アウジル [⸢ʔauʤiru]静脈。血管。青筋。「青弦」の義。
アウタ [⸢ʔau⸣ta](動)カエル(蛙)。濃緑の体色をもつ小型の蛙もいるが名称は不明。⸢アウタ⸣ヌ ナ⸢ク⸣カー ア⸢ミ⸣ヌ フーン[⸢ʔauta⸣nu na⸢ku⸣kaː ʔa⸢mi⸣nu ⸣ɸuːŋ](蛙が鳴いたら雨が降る)蛙を食べる習慣はなかったが、煎じ薬として食することはあった
アウダ [⸢ʔau⸣da]もっこ(畚)。藁縄を網状に編んで、その四隅に吊り紐をつけ、芋や大根、南瓜などの農産物 または肥料や土などを運搬するのに用いる農具。「あうだ(箯輿)」、「Auoda.アヲダ(箍).担架に似た一種の簡易寝台で~」『邦訳日葡辞書』の転訛したものか。⸢アイ⸣ク[⸢ʔai⸣ku](おふご。「朸、和名阿布古<あふこ>、杖名也」『和名抄』の転訛)の前方と後方に吊るして農産物を運ぶ農具。前後一対の畚に入れた荷を、プ⸢スカタ⸣ミ[pu̥⸢sukata⸣mi](一荷)という。一方だけでは、カ⸢タ⸣ティー[kḁ⸢ta⸣tiː](片手)といい、前方の荷が重いことを、⸢マイ⸣ニー[⸢mai⸣niː](前荷)という。
アウター [⸢ʔautaː]青田。稲が青々と生い茂っている田圃。
アウダキ [⸢ʔaudaki]青竹。ナ⸢マ⸣タキ[na⸢ma⸣taki](生竹)ともいう。
アウタヌ ッふァ [⸢ʔauta⸣nu f⸢fa](動)オタマジャクシ。「蛙の子」の義。
アウタムヌ [⸢ʔautamunu]青い薪。生木の薪。生木を約30センチの長さに切って斧で割った薪。「青炊き物」の転訛したものか。サ⸢リタムヌ[sa⸢ritamunu](枯れた薪。枯れ木を割って薪としたもの)の対義語。ナ⸢マタム⸣ヌ[na⸢matamu⸣nu](生木の薪)ともいう。
アウダン [⸢ʔaudaŋ]おうだん(黄疸)。皮膚や粘膜その他の組織が黄色になる症状。
アウッサーン [⸢ʔaussaː⸣ŋ]生臭い。「青臭い」の義。魚や豚などの肉の生臭さなどについていう。
アウッサリカザ [⸢ʔaussari⸣kaʣa]生臭い匂い。
アウッサリムヌ [⸢ʔaussari⸣munu]生臭いもの。魚などの生臭いもの。
アウティンゾー [⸢ʔautinʣoː]青空のみえる天井。「青天井」の転訛したもの。
アウトゥー [⸢ʔautuː]青い海。青海原。深海。外海。「青、緑、紺」を含む色合いの深海。
アウナキ [⸢ʔaunaki]猫が薄気味悪い声で鳴くこと。何か悪いことの起こる予兆として嫌われた。
アウナジ [⸢ʔauna⸣ʤi](動)サキシマアオヘビ。「青く長いもの」の義。青色をした体長約60センチの無毒の蛇。
アウナスン [⸢ʔaunasuŋ]他動容器を空にする。一つの容器から他の容器へ内容物を全部移してしまう。あける。
アウナル [⸢ʔaunaru]青い実。青い果実。未熟な実(果実)。
アウヌール [⸢ʔaunuːru](植){1}アオノリ(青海苔)。アオゴケ(青苔)。
アウヌール [⸢ʔaunuːru]{2}雨雲。
アウヌン [⸢ʔaunuŋ]自動容器が空になる。手がすく(空く)。他の容器へ内容物が全部移されてしまう。
アウヌン [⸢ʔaunuŋ]自動{1}手が空く。暇になる。
アウヌン [⸢ʔaunuŋ]自動{2}懐妊していない(⸢腹が空の状態である」の比喩的表現)。
アウパー [⸢ʔaupaː]青い葉。青葉。
アウパーオンギ [⸢ʔaupaːongi]「青葉扇」の義。ビロウ(蒲葵)の生の葉で作った団扇。死人が出たときにのみ作って用いた。死人が出るとすぐビロウの葉を切って小さな団扇を作り、蝿や蚊を追い払ったり弔問客の用に供した。それ以外では、ビロウの葉を切るのは朝(午前中)と決まっていた。
アウバイ [⸢ʔaubai](動)「青蝿」の義。糞便や腐敗物に発生する大型の蝿。青黒い体色で、腹部に金色の光沢を有する。
アウバサ [⸢ʔaubasa](植)「青芭蕉」の義。台湾原産芭蕉の一種で、樹高の高い品種。タ⸢カバ⸣サー[ta⸢kaba⸣saː](高芭蕉)ともいう。芭蕉布の繊維をとるのに用いる芭蕉。
アウバトゥ [⸢ʔaubatu](動)アオバト(青鳩)。体は緑色。体長は家鳩と同じ大きさ。体は緑色を帯びている。家鳩に比して数は少なく限られた数しか飛来しなかった。
アウパナダル [⸢ʔaupanadaru]青洟(あおばな)。子供が垂らす青みを帯びた鼻汁。
アウパナリ [⸣ʔaupanari](地)西表島の東北、野原崎浜に近い海中にある大きな岩。「奥武離れ島」の転訛したもの。
アウパン [⸢ʔaupaŋ]青斑(蒙古斑)。赤子の尻に青色の斑紋がついているものをいう。
アウパン [⸢ʔaupaŋ]蒙古斑。子供の尻の青いこと。
アウピー [⸢ʔaupiː]青い火。鬼火。「青火」の義。⸢ピー⸣ダマ[⸢piː⸣dama](火玉)ともいう。
アウピキ [⸢ʔaupiki] (動)魚の名。和名、ルリスズメ。観賞用熱帯魚。枝珊瑚の中に棲息している。ノコギリダイを釣るときに釣り針に掛けた餌に群がり、餌を食いちぎる厄介な小魚である。
アウピナカン [⸢ʔaupinakaŋ] (動)魚の名。和名、ナンヨウブダイ。⸢オーバ⸣チャー[⸢ʔoːba⸣ʧaː]という人もいるが、それは糸満方言だという。ブダイ科の魚。体型はグ⸢ジラ⸣フタイ[gu⸢ʣira⸣ɸu̥tai]に似るが、体長60~70センチと、グジラフタイより小型で、濃紺の上体部とスカイブルーの下腹部の体色を示す点は異なる。
アウフキ [⸢ʔauɸu̥ki]顔色が青白くなること。青白いこと。顔色が抜けて白くなること。
アウフクリ [⸢ʔauɸukuri]青膨れ。顔全体が青くむくんだ様子。体が青くむくんだ様子。
アウボーダ [⸢ʔauboːda](動)魚名。ブダイ科の魚。「青ぶだい」の義。和名、ナンヨウアオブダイ。
アウマミ [⸢ʔaumami](植)青大豆。
アウミー [⸢ʔaumiː]青みを帯びたもの。
アウミツァ [⸢ʔaumiʦa]青土。青い粘土。
アウムシ [⸢ʔaumuʃi](動)青虫。芋虫など。芋の葉や菜っ葉などに発生して食害を起こす。
アウムヌ [⸢ʔaumunu]青いもの。青物。生もの(未熟な物)。
アウムン [⸢ʔaumuŋ]自動青くなる。青む。
アウヤサイ [⸢ʔaujasai]青野菜。
アウリ [⸢ʔau⸣ri]{1}難儀苦労。
アウリ [⸢ʔau⸣ri]{2}気の毒なさま。かわいそうなさま。あわれな。/フンヌヨー アワリヌ ミチヤリバ ニシカイ ンカユティ キョーモンバ ユミ(誠に無常の道<あわれな人生>であるから 西に向かって経文を読み、)/「ニンブツァー(念仏歌)。シザヌクイ(兄の歌<声>)」
アウルン [⸢ʔau⸣ruŋ]他動あおる(煽る)。団扇で風を起こす。煽ぐ。⸢オン⸣グンとも言う。
アウン [⸢ʔauŋ]自動{1}実が完熟して落ちる。⸢アイルン[⸢ʔairuŋ](実が落ちる)の項参照。
アウン [⸢ʔauŋ]自動{2}乳が出る。
アウン [⸢ʔauŋ]自動{3}膿が出る。
アウン [⸢ʔauŋ]他動上げる。挙げる。揚げる。「上ぐ(下二段)」の転訛したもの。⸢アイルン[⸢ʔairuŋ](上げる)ともいう。
アウン [⸣ʔauŋ]自動喧嘩する。争う。「闘、タゝカフ・アフ」『類聚名義抄』の転訛したもの。
アウン [⸣ʔauŋ]自動{1}会う。二つのものが合致する。
アウン [⸣ʔauŋ]自動{2}似合う。調和する。釣り合う。
アウンタールン [⸢ʔauntaːruŋ]自動青む。青くなる。青ざめる。青ばむ。青みをおびる。
アオーン [⸢ʔaoː⸣ŋ]青い。緑色である。紺色である。
アカ [⸣ʔaka]淦(あか)。船底に溜まった水。
アカ [⸣ʔaka]髪。頭。
アガ [ʔa⸢ga]接頭まる~。素っ~。まったくの~。名詞に上接してそれを強調表現する。
アガ [ʔa⸢ga]接頭赤色。
アガー [ʔa⸢ga⸣ː]あいた。ああ痛い。痛い時、不意に発する声。
アガーアガーシ [ʔa⸢gaːʔagaː⸣ʃi]真っ赤に。赤々と。赤いことの強調表現。ABCABC型の畳語。
アガームイサン [ʔagaː⸢mui⸣saŋ]痛がりやである。痛がる。少しの傷みも大げさに痛がる。⸣アガー[⸣ʔagaː](痛い<感>)に接尾語⸢ムイ⸣サン[⸢mui⸣saŋ](~がる<「思いさ・アリ」で、話し手以外の人の状態を表す>)が付いて形成された派生形容詞。
アガーン [ʔa⸢gaː⸣ŋ]赤い。朱、だいだい、桃色、赤茶色も含めた色。形容詞の語幹ア⸢ガ[ʔa⸢ga](赤)に存在動詞⸣アン[⸣ʔaŋ](在る)が下接して形成された語。
アガアーガイ [ʔa⸢gaʔaːgai](動)魚の名。ひぶだいの一種。
アガアール [ʔa⸢gaʔaːru](動)アカアリ。
アガイー [ʔa⸢gaʔiː]赤飯。「あかいひ(赤飯)」の転訛したもの。昔はア⸢ガマミ[ʔa⸢gamami](小豆)を加えて米飯を炊き、赤飯にしたが、戦後は食紅を入れて赤飯を炊いた。祝儀や正月には赤飯を炊いて祝った。女の子が初潮をみると赤飯を炊いて祝ってやった。
アガイカ [ʔa⸢gaʔika](動)赤烏賊。
アガイズ [ʔa⸢gaʔiʣu](動)魚の名。和名、ウケグチイットウダイ(体長約25センチ)。和名、ホシエビス(体長約25センチ)にもいう。
アガイトゥ [ʔa⸢gaitu]赤糸。赤い糸。
アガイヤ [⸣ʔagaija]ああ残念。あらまあ。おやまあ。あれまあ。意外に感じた時に発する声。
アガイラブチ [ʔa⸢gairabuʧi] (動)魚の名。和名、イチモンジブダイ。体長25~30センチの成魚がよく漁獲された。刺身にしても、煮ても美味である。蒲鉾の原料として重宝された。別名、⸢ナー⸣ブイラブチ[⸢naː⸣buʔirabuʧi]ともいう。
アガイル [ʔa⸢gairu]赤色。
アガウムティ [ʔa⸢gaʔumuti]赤い顔。赤ら顔。「あかおもて」の義。日焼けや発熱などで顔面が赤くなること。
アカガーラ [ʔa⸢kagaːra]赤瓦。鳩間島の人は赤瓦を買うために、イ⸢ガガラス[ʔi⸢gagarasu](イカの塩辛<塩漬け>)やカ⸢ツヌ⸣ バ⸢タガラ⸣ス[kḁ⸢ʦunu⸣ ba⸢tagara⸣su](カツオの臓物の塩辛)などを沖縄本島へ輸出した。水産物を売って毎年少しずつ建材を購入した。
アカガーラヤー [ʔa⸢kagaːrajaː]赤瓦葺きの家。
アガカニ [ʔa⸢gakani]銅。「銅、アカガネ」『類聚名義抄』の転訛したもの。「あかがね(赤金)」の義。
アガカビ [ʔa⸢gakabi]赤紙。正月に鏡餅の下に敷く、祝いを表す紅白の紙。慶事の神酒を入れる瓶の栓やその他に用いる赤い紙。
アガガマジ [ʔa⸢gagamadʒi]赤い髪。頭髪の赤いもの。
アカカラジ [⸣ʔakakaraʤi]民百姓。一般百姓。一種の文語。日常会話では用いられず、祭祀の場で、⸢カン⸣フチ[⸢kaŋ⸣ɸu̥ʧi](祈願の文句。祈祷文。「神口」の義)やニ⸢ガイ⸣フチ[ni⸢gai⸣ɸu̥ʧi](祈願の言葉。唱え、がんもん<願文>)、歌謡語などで用いられる。/ウマンチュヌ ニガイヤヨー アカカラジヌ ニガイヤヨー ハーリ アミタボリ リューガナシ(万民の願いはヨー、民百姓の願いはヨー ハーリ 雨を賜り給え竜神さま)/(雨乞い歌。早め句)『鳩間誌』
アガキー [ʔa⸢gakiː]頭髪などの赤くなったもの。「赤毛」の義。
アガキン [ʔa⸢gakiŋ]赤い着物。
アガクン [ʔa⸢ga⸣kuŋ]自動懸命に働く。肉体労働をする。
アガゲー [ʔa⸢gageː]和名(おきなわめぎす)、体長18~20センチに成長する。体表は赤みをおびる。島のイノー(礁内湖)の珊瑚礁内に棲息する。体の割りに口が大きく、食いつきがよいので子どもたちの釣りに好まれる。普通の⸣ゲーイズ[⸣geːiʣu](おきなわめぎす)は体長約16センチのものが多い。
アガコージ [ʔa⸢gakoːʤi]赤麹(あかこうじ)。
アガサナイ [ʔa⸢gasanai]赤い褌。
アガサビ [ʔa⸢gasabi]赤錆(あかさび)。
アガサリ [ʔa⸢gasari]赤枯れ。旱魃などで植物の葉や穂先が赤く枯れること。
アカシ [ʔa⸢ka⸣ʃi]あかし(灯)。松根の脂(やに)が多く含まれた部分を灯火に利用したもの。鉛筆の太さに割って利用した。または炊きつけにも利用した。
アガジー [ʔa⸢gaʤiː]{1}赤い血。鮮血。ア⸢ガシー[ʔa⸢gaʃiː](赤い血)ともいう。
アガジー [ʔa⸢gaʤiː]{2}赤地。織物の地色の赤いもの。
アガシーシ [ʔa⸢gaʃiːʃi]赤肉。赤身。「赤肉<あかしし>」の義。ア⸢ガニク[ʔa⸢ganiku](赤肉)、⸢マーニク[⸢maːniku](真肉)、⸢マーシーシ[⸢maːʃiːʃi](真肉<ましし>)ともいう。
アガシース [ʔa⸢gaʃiːsu](植)赤紫蘇。
アカシキン [ʔa⸢ka⸣ʃi̥kiŋ]暁。夜が明けようとして、まだ暗いうち。「阿加等伎乃<アカトキノ>かはたれ時に~。万、4384」の転訛したもの。
アカシキンブシ [ʔa⸢kaʃi̥kim⸣buʃi]明けの明星。明け方東の空に見える金星。
アガシタダル [ʔa⸢gaʃitadaru]赤くただれたさま。真っ赤なさま。果実などが真っ赤に熟れて、今にも落下しそうなさま。
アカジナー [ʔa⸢kaʤinaː](動)魚の名。和名、ニセスジハタ(体長約1メートル)。ハタの仲間(体長約45センチ)。ニセスジハタ(体長約70センチ。体色は薄い青黒色)などの総称。アカジナーの痩せたものは食中毒をおこすといわれている。
アガシヌマール [ʔa⸢gaʃinumaːru](動)魚の名。和名、みやこてんぐ。シ⸢ヌマー⸣ル(てんぐはぎ)の仲間で、尾びれの付け根部分に橙色の斑点がある。
アカシマー [⸣ʔakaʃimaː]赤縞布。赤褐色の絣(かすり)の入った布。染料の⸢クール[⸢kuːru](ソメモノイモ。黄櫨)を用いて赤褐色の絣を染め、赤縞模様に織り上げた布。
アカジュー [ʔa⸢kadjzuː](動)魚の名。和名、ウメイロモドキ(体長約27センチ)。古老はム⸢レー⸣ジ[mu⸢reː⸣ʤi](沖縄方言のグルクン)という。「群れ魚」の義であろう。若年層はグルクンというのが多い
アカジラー [ʔa⸢ka⸣ʤiraː]赤面。恥をかくこと。恥ずかしくて顔をあからめること。「赤面<あかつら>」の義。
アガジル [ʔa⸢gadʒiru]赤潮。⸣ユドゥン[⸣juduŋ](赤潮)ともいう。
アガジル [ʔa⸢gaʤiru]海底地名。タ⸢カ⸣ビー[ta⸢ka⸣biː](高干瀬)の鳩間津口から鳩間桟橋に向かって200メートルほど入港してくると右手(東北)方に現れる海草の生えた褐色の浅い海底。
アガジル [ʔa⸢gadʒiru]地渋(ちしぶ)。水田などの水に金気(かなけ)や灰汁(あく)が浮き出して光っているもの。赤汁。西表島の炭鉱に近い水田などでよくみられた。これが出ると稲の発育不良を起こした。
アガシルシ [ʔa⸢gaʃiruʃi]赤い痣(あざ)。「赤印」の義。
アガジン [ʔa⸢gaʤiŋ]銅貨。「赤銭」の義。
アガジン [ʔa⸢gaʣiŋ](動)魚の名。和名、バラハタ(体長約60センチ。薄いオレンジ色に白の斑点が鰓の部分から尾びれにかけて、点々と縞状に並んでいる)。痩せたア⸢ガジンは食中毒を起こすことがあるといわれている。
アガジンナーマ [ʔa⸢gaʤinnaː⸣ma]小額の赤銭。小額の銅貨。小銭。
アカズミキー [ʔa⸢ka⸣ʣumikiː](植)樹木の名。ヒルギ。マングローブ。ア⸢カ⸣ズミ[ʔa⸢ka⸣ʣumi]ともいう。西表島の河口の汽水域に密生している。満潮時には小魚が群れ寄る。ヒルギ林には、キ⸢ザ⸣ク[ki⸢ʣa⸣ku](殻の直径約10センチの二枚貝)も生息している。鳩間島の人はヒルギの皮を染料として用い、これを煎じて⸣イダフニ[⸣ʔidaɸuni](サバニ)の帆を染めた。
アカスリ [ʔa⸢ka⸣suri]垢(あか)すり。入浴の際に垢をすり落とすのに用いるもの。標準語からの借用語。完熟したナ⸢ベー⸣ラ[na⸢beː⸣ra](へちま)のスポンジ状の繊維を用いた
アカスン [ʔa⸢ka⸣suŋ]他動{1}離す。
アカスン [ʔa⸢ka⸣suŋ]他動{2}剥がす。
アカスン [ʔa⸢ka⸣suŋ]他動明らかにする。
アガダイクニ [ʔa⸢gadaikuni](植)大根の一種。和名、アカカブラ(赤蕪)。
アガダン [⸣ʔagadaŋ](動)赤だに。牛に寄生するダニ。牛のいる原野の茅や雑草などについていて、人がそこへ行くと人の体にくっつくようになる。
アガッスヒャー [ʔa⸢gassu⸣çaː]糞喰らえ。くそったれ。全然いやだ。「赤糞やろう」の義。接尾語の⸣ヒャー[⸣çaː](くそったれ)は卑語。聞き手を貶め、対立喧嘩し、叱りつける際に用いられる。
アガッふァーマ [ʔa⸢gaffaː⸣ma]赤子。赤ん坊。
アガッふァーマ [ʔa⸢gaffaː⸣ma]赤子(あかご)。
アガティダ [ʔa⸢gatida]強力な太陽の直射光線。強烈な太陽光線。「赤太陽」の義。ア⸢ガ[ʔa⸢ga](赤い、真っ赤な)は強意の接頭語。
アカトゥビ [ʔa⸢ka⸣tubi](植)樹木の名。オオバギ。
アカトゥル [ʔa⸢ka⸣turu]船の中の淦(あか)を汲み取る道具。淦取り。淦汲み。⸢ユー⸣トゥル[⸢juː⸣turu](淦取り)ともいう。
アカナー [ʔa⸢kanaː](動)魚の名。和名、バラフエダイ。⸢マイ⸣ズニ[⸢mai⸣ʣuni](前曽根)あたりで一本釣りをすると、体長60~70センチメートルのものが釣れた。この魚も痩せたもの食すると食中毒を起こすこともあった。
アガナーサキ [ʔa⸢ganaːsaki]海底地名。鳩間島の東南方、タ⸢カ⸣ビー[tḁ⸢ka⸣biː](高干瀬)の干瀬沿いに北へ延びる、ミ⸢ズヌ⸣カン[mi⸢ʣunu⸣kaŋ](澪の上)と呼ばれる水深約50メートルの澪がある。その側に⸢ウール[⸢ʔuːru](枝珊瑚)に被われた浅瀬で、魚がよく釣れるところをいう。
アガニーバル [ʔa⸢ga⸣niːbaru](動)魚の名。和名、アカハタ(体長約25センチ。鮮やかな橙色に丸く小さな褐色の斑点が頭部に付いており、腹部から尾びれにかけて白い斑点が付いている)。磯釣りでも釣れる。魚肉は白色で、味は淡白。蒲鉾の素材となる。和名、ニジハタ(体長約20センチ)。和名、アザハタ(体長約25センチ)にもいう。
アガニチ [ʔa⸢ganiʧi]風疹(ふうしん)。「赤熱」の義。
アガヌーヌ [ʔa⸢ganuːnu]赤い布。赤色だけの布。「赤布」の義。
アガヌール [ʔa⸢ganuːru]朱塗り。「赤塗り」の義。
アカバー [ʔa⸢kabaː]膿痂疹性湿疹。頭部の湿疹が黄色か皮膿汁を伴う細菌性感染にある状態。小児に多い(『医学沖縄語辞典』)。皮膚病の一種。頭から顔にかけて赤くただれ、化膿してかさぶた状になる皮膚病で、なかなか完治しにくい。
アガパー [ʔa⸢gapaː]赤い歯茎。歯が抜けて、歯茎だけで歯の代用をなしているもの。
アカバカ [ʔa⸢kabaka]おおばか(大馬鹿)。全くのふ<耄>れ者。石垣方言からの借用語。普通はア⸢ガプリムヌ[ʔa⸢gapurimunu](大馬鹿)という。
アガパギ [ʔa⸢gapagi]赤はげ。赤く擦りむいてあること。
アガバサ [ʔa⸢gabasa](植)小笠原種の芭蕉。「赤芭蕉」の義。地上茎の縁が赤いのでその名があるという。台湾種の⸢アウバサ[⸢ʔaubasa](青芭蕉)の対。
アガパジ [ʔa⸢gapaʤi]赤恥。
アガパジン [ʔa⸢gapaʤiŋ]昆虫。蜂の一種。茅の中に巣食っている赤い小さな蜂。⸣ガーパジン[⸣gaːpaʤiŋ](茅蜂)ともいう。
アカバタ [ʔa⸢kabata](動)魚の名。{1}和名、アマクチビ。体長約70センチ。白身魚の最高級魚。
アカバタ [ʔa⸢kabata]{2}和名、タマメイチ(体長約50センチ)。
アカバタ [ʔa⸢kabata]{3}和名、ナガメイチ(体長50センチ)。
アカバタ [ʔa⸢kabata]{4}和名、タマメイチ(体長約50センチ)にもいう。⸢クー⸣シビー[⸢kuːʃi⸣biː](島の西側の干瀬)の⸢ピーヌ⸣クシ[piːnu⸣ku̥ʃi](干瀬の外海)で、タ⸢ティ⸣ナー[tḁ⸢ti⸣naː](一本釣り<立て縄>)をして釣った
アガパタ [ʔa⸢gapata]大漁旗の一種。幅約30センチ、長さ約2メートルの真っ赤に染めた旗。カツオの漁獲高が200~300斤ほどある時に、漁船はこの旗を立てて寄港した。
アガパダカ [ʔa⸢gapadaka]赤裸。丸裸。
アカハチ [ʔa⸢kahaʧi]人名。歴史上実在した大浜の豪族。1500年、首里王府に謀反したことで征討されたという。
アガパナ [⸣ʔagapana]赤い花。赤花。仏桑華。
アガパナ [ʔa⸢gapana]赤い鼻。赤鼻。赤鼻の人。
アカバニカマサー [ʔa⸢kabanikamasaː] (動)魚の名。和名、オオメカマス(体長約50センチ)の細長い魚。
アカバニブラ [ʔa⸢kabanibura](動)魚の名。和名、フウライボラ(体長約60センチ。灰色がかった銀色の体色を有する)。別名、⸢キンバニ[kimbani]。群れを成して海岸に寄る。西表島の北岸一帯で、投網で漁獲した。肉質が柔らかく、あまり美味ではない。塩漬けにして保存食にした
アガパンタリ [ʔa⸢gapantari]丸々と肥えていること。接頭語ア⸢ガ[ʔa⸢ga](真っ赤な。真の)は、程度の甚だしいさまを表す。
アガピーカー [ʔa⸢gapiːkaː](動)魚の名。和名、ヒメアイゴ、マジリアイゴ、サンゴアイゴ、の総称。
アガピール [ʔa⸢gapiːru]真昼間。昼日中。
アガピキ [ʔa⸢gapiki](動)魚の名。和名、レモンスズメ。スズメダイ科の仲間。枝珊瑚の中に棲息している。観賞用の熱帯魚。食用に適さない。ノコギリダイを釣る時に集まってきて、よく餌を横取りする。
アガピタ [ʔa⸢gapita]全くの下手。へたくそ。
アガピッチン [ʔa⸢gapitʧiŋ]{PoS_1}たった一つ。
アガピッチン [ʔa⸢gapitʧiŋ]{PoS_2}ちっとも。少しも。全く。文末の打ち消し表現と呼応して陳述副詞として用いられる。
アガピニ [ʔa⸢gapini]赤髭。赤い髭。赤髭の人。漁師が日焼けすると鬚は赤くなった。
アガピンソー [ʔa⸢gapinsoː]赤貧。極貧。非常に貧しい状態。
アガブー [ʔa⸢gabuː]赤い紐(紐)。「赤緒」の義。
アガフキ [ʔa⸢gaɸu̥ki]植物の赤い芽。
アカブザ [⸣ʔakabuʣa]百姓。農民。平民。⸣アカ[⸣ʔaka]は強意の接頭語。
アカブザマイ [⸣ʔakabuʣamai](植)稲の品種名。
アガプスマ [ʔa⸢gapusuma]真昼間。正午。かんかんと照りつける正午。⸢マープスマ[⸢maːpusuma](真昼間)ともいう。
アガフダ [ʔa⸢gaɸuda]赤札。召集令状。納税の督促状。
アガフビ [ʔa⸢gaɸubi]赤襟。フ⸢ビ[ɸu⸢bi]は⸢首」の転訛したもので、着物の襟の意。古典舞踊の衣装などで赤い襟をつけるコスチュームは宮廷舞踊、儀式舞踊を表している。日常の着物には赤襟はつけなかった。
アガプリムヌ [ʔa⸢gapurimunu]おお馬鹿もの。大たわけ。全くの気違い。プ⸢リムヌ[pu⸢rimunu](「狂れ者」の義。馬鹿者)に強意の接頭語ア⸢ガ[ʔa⸢ga](全くの。真の)が上接したもの。
アガベール [ʔa⸢gabeː⸣ru]いやだ。全く嫌だ。あかんべ。拒絶する時の卑語。⸢ベー⸣ル[⸢beː⸣ru](嫌だ)に強意の接頭語ア⸢ガ[ʔa⸢ga]の付いた形。
アガボーダ [ʔa⸢gaboːda](動)魚の名。和名、キツネブダイの仲間。
アガマイ [ʔa⸢gamai](植)稲の品種名。赤米。ダ⸢ネー⸣ママイ[da⸢neː⸣mamai]ともいう。
アガマイヌ イー [ʔa⸢gamainu⸣ ʔiː]赤米の御飯。赤米の飯。
アガマスン [ʔa⸢gamasuŋ]他動赤くする。
アカマター [⸣ʔakamataː]古見村、小浜島、新城島、宮良村などで篤く信仰されている来訪神の名。毎年の豊年祭に出現して豊穣を予祝し、人々を寿いで帰る神。古見村では、このほかにクロマター、シロマターの二神が出現する。この祭祀は篤い信仰にもとずく秘密結社によって厳かに執行されている。
アカマチ [ʔa⸢kamaʧi](動)魚の名。和名、ハマダイ(体長約1メートル)。白身魚の最高級魚。
アガマミ [ʔa⸢gamami](植)和名、アズキ(小豆)。「赤豆」の義。餡の原料、味噌の原料としてたくさん作付けされた。
アガマミヌ アン [ʔa⸢gamaminu⸣ ʔaŋ]アズキの餡。
アガマミヌイー [ʔa⸢gamaminu⸣ʔiː]赤飯。「赤豆のご飯」の義。小豆と糯米を混ぜて炊いたご飯。食紅が出る以前は、小豆ご飯を赤飯といった。小豆を一晩<約15時間>水に浸けておいて、米と一緒に炊いた。赤褐色の小豆の色は奥行きのある色と味を演出し、糯米の粘性と小豆のさらさらした味が調和して美味であるが、子供はあまり好まなかった。
アガマラー [⸣ʔagamaraː](動)黄牛。黄褐色の毛を持つ牛。⸣アガマラーウシ[⸣ʔagamaraːʔusi](黄牛)ともいう。豊年の瑞兆とされ、古謡などに歌われる。「アカマワリ(赤味を帯びる)・ヤー(もの)」の転か。
アガマラーウシ [⸣ʔagamaraːʔuʃi]黄牛。黄褐色の毛を持つ牛。
アガミー [ʔa⸢gamiː]疲れや病気などで結膜が充血して赤くなった目。眼球が刺激によって赤くなること(『医学沖縄語辞典』)。
アガミー [ʔa⸢gamiː]赤身。肉の脂身を除いた赤い部分。若年層は、ア⸢ガニク[ʔa⸢ganiku](赤肉)ともいう。
アガミース [ʔa⸢gamiːsu]赤味噌。赤褐色に仕上げた味噌。原料として大豆や麦、小豆などの雑穀を用いる。米だけで作った⸢マイヌミー⸣ス[⸢mainumiː⸣su](米味噌)の上味噌に対して、中味噌、下味噌に属する。
アガミツァ [ʔa⸢gamiʦa]赤い粘土。赤土。
アガミツァジー [ʔa⸢gamiʦaʤiː]赤い粘土質の土地。赤粘土。
アガミルン [ʔa⸢gami⸣ruŋ]自動敬う。尊敬する。崇める。ア⸢ガ⸣ムン[ʔa⸢ga⸣muŋ](崇める)のラ行四段化したもの。
アガムージ [ʔa⸢gamuːʤi](植)里芋の一種。ア⸢ガムージェー⸣ ッ⸢ふァーリン⸣カヤー。マ⸢ダ⸣ ッ⸢ふァイミラン⸣サー[ʔa⸢gamuːdʒeː⸣ f⸢faːriŋ⸣kajaː。ma⸢da⸣ f⸢faimiran⸣saː](アガムージは食べられるかな。まだ食べたことない<食べてみない>さ)
アガムチ [ʔa⸢gamuʧi]赤餅。糯米を一晩水に浸け、桶の上で水をかけながら石臼で挽き、その溶液をメリケン袋に入れて一晩水切りをすると真っ白なデンプンが残る。これに食紅を混ぜて揉み、捏ね、拳の大きさに成形してム⸢チカグ[mu⸢ʧikagu](餅籠。蒸籠)に入れて蒸し上げる。蒸しあがった餅は、メリケン粉か、米粉を広げた⸢ソー⸣キ[⸢soː⸣ki](箕)に取り移して粉をまぶし、成形して仕上げる。その際に餡を入れて餡餅にする。
アガムチ [ʔa⸢gamuʧi](動)魚の名。和名、ロクセンフエダイ(体長約25センチ)。
アガムノーマ [ʔa⸢gamunoː⸣ma]火の隠語。「火」を⸣ピー[⸣piː]と直接に表現することは「火事」を連想するのでタブーとされ、忌み嫌って⸢赤い、小さなもの」と婉曲に表現した。パ⸢マウリソー⸣ジ[pa⸢maʔurisoː⸣ʤi](浜下り精進)の前夜、村役人が各家を回り、裏声を使って「火の用心」を触れ回った。
アガムン [ʔa⸢gamuŋ]自動赤くなる。赤みがつく。赤らむ。
アガムン [ʔa⸢ga⸣muŋ]他動敬う。崇める。尊いものとして敬う。「奉・寵、アガム」『類聚名義抄』の転訛したもの。
アガヤ [ʔaga⸢ja]仕舞った!!ああ残念。失敗、失望、意外など、半ば自棄気味で言う時に発する言葉。
アガヤー [ʔaga⸢jaː]ああしまった。ああ残念。ああ惜しい。ああ気の毒だ。しくじった時に発する語。強調する際は、アガヤ⸢ヘー[ʔagaja⸢heː](ああしまった{EOS!}至極残念)という。
アガヤー [⸣ʔagajaː]{1}ああ。あれっ。まあ。
アガヤー [⸣ʔagajaː]{2}ああ残念。ああ惜しい。
アガヤーアガヤシ [ʔa⸢gajaːʔagaja⸣ʃi]ああああと。悲嘆に暮れるさま。ああ、ああと悲痛な声を出して嘆くさま。
アガヤヘー [ʔagaja⸢heː]ああしまった!ああ残念だ!何と惜しいことよ。しくじった時に発する語。
アガヤラビ [ʔa⸢gajarabi]全くの子供。全くの未熟者。
アガユクシ [ʔa⸢gajukuʃi]真っ赤な嘘。全くの嘘。
アガヨー [ʔa⸢gajoː]ああ痛い。アガ⸢ユー[ʔaga⸢juː](ああ痛い)ともいう。ア⸢ガー[ʔa⸢gaː](痛い{EOS!})参照。
アガヨームイサン [ʔa⸢gajoːmui⸣saŋ]痛がりである。
アカラー [ʔa⸢ka⸣raː]親から離されたばかりの子豚。
アガラパタラ [ʔa⸢garapatara]光り輝くさま。明るいさま。{耿耿}{コウ|コウ}と。松明がパチパチ音をたてて燃え輝くさま。ABCDEC型の重言。
アガリサガリ [ʔa⸢garisaga⸣ri]上がり下がり。
アガリザトゥ [ʔa⸢gari⸣ʣatu](地)東里。竹富島にある集落の名。
アカリルン [ʔa⸢kari⸣ruŋ]自動{1}離れる。別れる。子豚が乳離れする。「分、アカル」『類聚名義抄』の転訛したものか。沖縄古語「あかれる」『混効験集』。
アカリルン [ʔa⸢kari⸣ruŋ]自動{2}剥がれる。
アカル [ʔakaru]明かり。灯火。
アカル [ʔa⸢karu]障子。老年層の使用語彙。明治生まれ以外の人は、ほとんど使用しない。
アガルン [ʔa⸢garuŋ]自動{1}上がる。上昇する。上方に向かう。「~ひばり安我里<アガリ> 情<こころ>悲しも~。万、4291」の転訛したもの。
アガルン [ʔa⸢garuŋ]自動{2}漁期が終了する。
アガローザ [ʔa⸢garoː⸣ʣa]歌謡の名。アガローザ節の節名。語源は「東里(あがりざと)」の義という説がある『石垣方言辞典』。ア⸢ザテー[ʔa⸢ʣateː](東里家)、イ⸢ザ⸣テー[ʔi⸢ʣa⸣teː](西花家<「西里家」の義>)参照。
アガロールン [ʔa⸢garoː⸣ruŋ]自動登られる。上がられる。ア⸢ガルン[ʔa⸢garuŋ](上がる)の尊敬語。
アカンキ [ʔa⸢kaŋki]赤木。和名、アカギ。高さ25メートルにも達する高木だが、建築用材には使用されない。豚の飼葉桶(⸢トー⸣ニ{SqBr}⸢toː⸣ni{/SqBr})を作るのに利用された。実は直径1~1.2センチで褐色の球形。お盆の供え物(ム⸢ルムル{SqBr}mu⸢rumuru{/SqBr})にさして先祖の供養に用いる。
アカンキー [ʔa⸢kaŋkiː](植)赤木。赤木の幹を刳り抜いて⸢トー⸣ニ[⸢toː⸣ni](田舟。水田の地均しに用いた農具)を作ったり、豚の飼い葉おけを作ったりした。
アガンタールン [ʔa⸢gantaːruŋ]自動赤くなる。赤らむ。赤む。赤みを帯びる。
アカンマーブシ [⸣ʔakammaːbuʃi]歌謡名。赤馬節。単に⸣アカンマー[⸣ʔakammaː]ともいう。首里王府に献上された名馬の赤馬を讃えた節歌で、石垣島では宴席の座開きの歌として演奏される目出度い歌謡。
アキ [⸣ʔaki]{1}秋。
アキ [⸣ʔaki]{2}稲の収穫。収穫期。
アキ [⸣ʔaki](動)魚の名。和名、クロカジキ(体長約3メートル)。終戦後まで鳩間島の突船は尖閣諸島の魚場へ行き、カジキを突いて漁獲していた
アキ [ʔa⸢ki]空き間。空席。
アギ [ʔa⸢gi]丘。陸。海に対していう。
アギアバ [ʔa⸢giaba]揚げ油。揚げ物用の油。菜種油と豚の脂が主に使用された。
アギウラシ [ʔa⸢giura⸣ʃi]上げ下ろし。積み下ろし。
アギカウ [ʔa⸢gikau]供えの香。「上げ香」の義。⸢アギ[ʔa⸢gi]は、「Ague,ru,eta.アゲ、グル、ゲタ(上げ、ぐる、げた)~身分の高い人にさし上げる、奉る。」『邦訳日葡辞書』の転訛したものか。仏前に供えたウ⸢ティン⸣ガビ[ʔu⸢tiŋ⸣gabi](打ち紙。紙銭)を焼く際に、長男家の分、分家からの分、嫁いだ娘達からの分のように順次線香を焚き、フ⸢チカザル[ɸu̥⸢ʧikaʣaru](口で唱える)をして焼き上げる。紙銭などの案内のために焚く香。
アキカツ [ʔa⸢ki⸣kḁʦu]秋かつお。秋に釣れるかつお。
アギサギ [ʔa⸢gi⸣sagi]上げ下げ。上げ下ろし。
アキザマルン [ʔa⸢kiʣama⸣ruŋ]自動飽きる。飽き果てる。飽き飽きする。
アギザミヨー [⸣ʔagiʣamijoː]{1}ああ、しまった!ああ、大変だ。⸣アキサミヨー[⸣ʔakisamijoː]ともいう。沖縄本島方言からの借用語。
アギザミヨー [⸣ʔagiʣamijoː]{2}ああああ(嗚呼嗚呼)。何だこれぽっち。なにくそ(何糞)!⸣アギザミヨー ウ⸢ヌ⸣ ア⸢タ⸣ルンツァン カ⸢タマラヌー[⸣ʔagiʣamijoː ʔu⸢nu⸣ ʔa⸢ta⸣runʦaŋ kḁ⸢tamaranuː](何だこれぽっち、それぐらいさえも担げないのか)
アギジェー [ʔa⸢giʤeː]こんちくしょう。ええ、くそ。沖縄本島糸満方言からの借用語か。明治生まれの老年層は、ア⸢ガヤー[ʔa⸢gajaː](こんちくしょう)というのが普通である。事が成就困難なときに自暴自棄的に発する言葉。
アギジマー [ʔa⸢giʤimaː]陸の人。漁師でない、陸上で働く人。特に農夫。漁の出来ない人や泳げない人を嘲っていう語。
アギゾー [ʔa⸢giʣoː]「上げゾー」の義か。包み紙のこと。「上げる」とは、祈願などが「終了」することの意である。祈願が終わるごとに供物のお初を、神の苞として別に取っておくものの意味であろう。祈願が済んで、ウ⸢ツァナ⸣ク[ʔu⸢ʦana⸣ku](団子の供物)の上の⸢カンヌ⸣ク、ム⸢リクバンの上の⸣クバンとア⸢ライパナを一つまみずつ包んでおく紙のこと。大きさは約10センチ正方形の紙である。
アギソッコー [ʔa⸢gisokkoː]三十三年忌の法事。「上げ焼香(終わり焼香)」の義か。ウ⸢ブソッ⸣コー[ʔu⸢busok⸣koː](三十三年忌の法事、「大焼香」の義)ともいう。
アキタロー [ʔa⸢ki⸣taroː](動)魚の名。和名、マカジキ(体長約2、5メートル)。終戦後、尖閣列島の漁場で体長約2,5メートルの大物カジキ(ア⸢キ⸣タロー)を鳩間島のツ⸢キシェン[ʦu̥⸢kiʃeŋ](突船)が漁獲していた。イカ釣り漁の時期にイカの生餌で漁獲されることもあった。
アキティン クリティン [ʔa⸢kitiŋ⸣ ku⸢ri⸣tiŋ]明けても暮れても。
アキティンクリティン [ʔa⸢kitiŋkuri⸣tiŋ]明けても暮れても。年中。
アギドーフ [ʔa⸢gidoːɸu]揚げ豆腐。油で揚げた豆腐。厚さ約1センチに切った豆腐を油で揚げたもの。
アキナイ [ʔa⸢ki⸣nai]商い。商売。「估、商也、交易也、阿支奈不<あきなふ>」『新撰字鏡』の転訛したもの。
アキナイ スン [ʔa⸢ki⸣nai ⸢suŋ]商売する。売買する。
アキナイプス [ʔa⸢kinai⸣pu̥su]商売人。商人。あきんど。
アキナイムヌ [ʔa⸢kinai⸣munu]商品。商いもの。
アギナビ [ʔa⸢ginabi]油で揚げ物をする鍋。揚げ物用の鍋。「揚げ鍋」の義。
アギニー [ʔa⸢giniː]陸揚げする船荷。シ⸢ミニー[ʃi⸢miniː](積み荷)の対義語。
アギヌ プス [ʔa⸢ginu⸣ pu̥⸢su]おか(陸)の人。陸上で働く人。農夫。
アキパタックン [ʔa⸢kipatakkuŋ]他動すっかり開け広げる。家の戸を開け放つ。着物の裾を開け広げる。「あけはだけ<開け>る」の義。「開、ハダクル」『運歩色葉集』の転訛したもの。
アキパタティルン [ʔa⸢kipatiruŋ]自動すっかり飽きてしまう。まったく嫌になる。
アキパティッサーク [ʔa⸢kipatissaːku]難儀で厭き果てる仕事。
アキパティムニ [ʔa⸢kipatimuni]聞くに堪えないような嫌な言葉。罵詈雑言。
アキパティルン [ʔa⸢kipatiruŋ]自動呆れはてる。呆れる。
アキパティワザ [ʔa⸢kipatiwaʣa]すっかり厭きてしまう仕事。うんざりする仕事。全く嫌になる仕事。
アギパニ [ʔa⸢gipani]衣服に飛び散った泥。雨の日に下駄を履いて歩くと着物の後ろや裾に泥水が飛び跳ねて付着する。その泥。「Fane.ハネ(跳ね)日本の靴<下駄>や草履から着物の後ろの方に跳ねてついた泥」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
アキパヤーン [ʔa⸢kipajaː⸣ŋ]飽きっぽい。飽きやすい。「飽き早い」の義。
アギフー [ʔa⸢giɸuː]揚げ麩(あげふ)。石垣方言からの借用語。終戦後から食品として導入されるようになった。
アキフイ [ʔa⸢kiɸui]開け閉め。開閉。
アギマーサリン [ʔa⸢gimaːsariŋ]自動{急}{セ}き立てられる。ア⸢ギマースン[ʔa⸢gimaːsuŋ](急き立てる。責め立てる)の未然形に受身・可能の助動詞⸢リン[⸢riŋ](れる)が下接して形成された受身・可能動詞。
アギマースン [ʔa⸢gimaːsuŋ]他動急き立てる。催促して急がせる。
アキミー [ʔa⸢kimiː]隙間。「空き目」の義。⸢アーキ⸣ミー[⸢ʔaːki⸣miː](隙間。物と物の間の少し開いている所。⸢空き間」の義)、⸢ピッキ⸣ミー[⸢pikki⸣miː](穴、小孔)ともいう。
アキミックヮー [ʔa⸢kimikkwaː]文盲。「明き盲」の義。
アギムスビ [ʔa⸢gimusubi]手拭の結び方の名。手拭などの両端を頭の後ろから額の前に廻して結び、その両端を立てる結び方。「上げ結び」の義。
アギムチ [ʔa⸢gimuʧi]餅を油で揚げたもの。「揚げ餅」の義。
アギムヌ [ʔa⸢gimunu]揚げ物。てんぷら類。
アギムヌパシ [ʔa⸢gimunupaʃi]揚げ物用の箸。さいばし(菜箸)。
アキヤー [ʔa⸢kijaː]空き屋。人の住んでいない家。若年層の言葉で、石垣方言からの借用語か。老年層は、⸢ンーナヤー[⸢ʔnːnajaː](空屋)というのが普通である。
アギヤー [ʔa⸢gi⸣jaː]追い込み漁。シ⸢ナカキ⸣ヤー[ʃi⸢nakaki⸣jaː](追い込み漁)と同じ。糸満方言イ⸢ツォーン⸣プスンケーヤ ア⸢ギ⸣ヤー ⸢シール⸣ イ⸢ゾー⸣ トゥ⸢ローッ⸣タ[ʔi⸢ʦoːm⸣pu̥suŋkeːja ʔa⸢gi⸣jaː ⸢ʃiːru⸣ ʔi⸢ʣoː⸣ tu⸢roːt⸣ta](糸満漁師たちは追い込み漁をして漁獲された)
アキヤシキ [ʔa⸢kijaʃiki]空き屋敷。無人の屋敷。石垣方言からの借用語か。明治生まれの老年層は、⸢ンーナカク[⸢nːnakaku](空き屋敷)。⸢ンーナヤシキ[⸢nːnajaʃiki](空き屋敷)というのが普通。
アギヤドゥ [ʔa⸢gijadu]はね上げて開ける戸。釣戸。「上げ戸」の義。
アキラミルン [ʔa⸢kirami⸣ruŋ]自動諦める。断念する。思い切る。新しい借用語。老年層は、ウ⸢ムイ⸣キスン[ʔu⸢mui⸣kisunŋ](思い切る)という。
アキラムン [ʔa⸢kira⸣muŋ]自動諦む。下一段、下二段系活用の四段活用化したもの。
アキルトゥアーシ [ʔa⸢kirutuʔaː⸣ʃi]明けるや否や。夜明けとともに。「明けると合わせて」の義。普通は、ガ⸢ルトゥアー⸣シ[ga⸢rutuʔaː⸣ʃi](明けるとともに)という。
アキルン [ʔa⸢kiruŋ]自動{1}飽きる。飽食する。
アキルン [ʔa⸢kiruŋ]自動{2}呆れる。あまりのひどさに驚く。
アキルン [ʔa⸢kiruŋ]自動呆れる。あまりの酷さに驚く。あっけにとられる。
アキルン [ʔa⸢kiruŋ]他動開ける。ア⸢クン[ʔa⸢kuŋ](開く)ともいう。
アギルン [ʔa⸢giruŋ]他動{1}上げる。高くする。「Ague,ru,eta.アゲ、グル、エタ(上げ、ぐる、げた)上へ持ち上げる~。」『邦訳日葡辞書』の転訛したもの。
アギルン [ʔa⸢giruŋ]他動{2}値段を高くする。
アギルン [ʔa⸢giruŋ]他動供物を供える。神前や仏前に供物を供える。
アク [ʔa⸢ku]植物に含まれる渋み、えぐみなどのある有毒成分。蘇鉄の実やキャッサバの芋などはあく抜きをし、その澱粉を加工して食品に利用した。
アク [⸣ʔaku]{1}悪。悪人。悪事。悪魔。
アク [⸣ʔaku]{2}悪口。ヤ⸢ナグ⸣チ[ja⸢nagu⸣ʧi](悪口)ともいう。
アクイン [ʔa⸢ku⸣iŋ]悪縁。前世からの悪い因縁。沖縄方言からの借用語。
アクザカリ [ʔa⸢kuʣaka⸣ri]悪事をはたらいて栄えること。悪栄え。
アク スン [⸣ʔaku ⸢suŋ]呪う。激しく恨み、悪く言う。人を悪しざまに言う。
アグダーマ [ʔagu⸢daː⸣ma]駄々をこねること。わがままっ子。「あくだう(悪童)・マ(指小辞)」の転訛したものか。
アクニン [ʔa⸢ku⸣niŋ]悪人。悪事をはたらく人。
アクヌ カン [ʔa⸢ku⸣nu ⸣kaŋ]悪神。悪い神。
アクヌキ [ʔa⸢kunuki]植物の灰汁<毒気・渋み>を抜くこと。
アクビ [ʔa⸢kubi]欠伸(あくび)。若年層が多く用いる。標準語からの借用語か。老年層は、⸣ヌビ[⸣nubi](欠伸)という。⸣ヌビ[⸣nubi]参照。
アクマ [ʔa⸢ku⸣ma]悪魔。邪悪なもの。
アクユク [⸣ʔakujuku]悪欲。悪心と欲心。
アクリルン [ʔa⸢kuri⸣ruŋ]自動剥がれる。
アクン [ʔa⸢kuŋ]他動開ける。開く。
アクン [ʔa⸢kuŋ]自動あく。ひらく。
アグン [ʔa⸢guŋ]他動上げる。
アグン [ʔa⸢guŋ]他動{2}吐く。嘔吐する。
アグン [ʔa⸢guŋ]他動油で揚げる。豆腐はア⸢グン[ʔa⸢guŋ](揚げる)というのに対し、テンプラなどはヤ⸢クン[ja⸢kuŋ](焼く)というのが普通である。
アコーキー [ʔa⸢koːkiː](植)樹木の名。和名、アコウ(赤秀)。オオバアコウ。⸣ウシキー[⸣ʔuʃikiː](あこう)ともいう。
アゴチキー [ʔa⸢go⸣ʧikiː](植)樹木の名。西表島の北岸一帯に自生していた。伊武田地区に自生していたアゴチの葉には、白黒のグロテスクな毛を有する毛虫が付いていた。伐採して燃料用の薪にした。
アゴッチェーマ [ʔa⸢gotʧeː⸣ma](動)トンボ。古語「あきつ」に親愛の情を表す指小辞(diminutive)-マ[-ma]がついて転訛したもの。
アゴヤ [⸣ʔagoja](動)蟹の一種。海岸の岩陰に生息し、人が来るとすばやく穴や岩陰に逃げ隠れる。風土病マラリアの解熱用の煎じ薬として利用されたという。