文書資料の保全と活用 研究・活動の内容

1. 東日本大震災で被災している地域の人間文化資源の救助・保全の活動を実践

 被災地域の民間社会における人間文化資源(主に文書を念頭に置いていますが、それのみに限定して「抜き取り」を行なうことは人間文化資源のまとまりを破壊しかねることになるので状況に応じた対応を考えています)の救助・保全の活動を各地域の大学などの研究機関、自治体や民間諸団体(ボランティア・NPO法人)との連携を具現化し、社会的貢献を模索していきます。加えて、人間文化資源を如何に地域社会に還元していくか、あるいはその調査方法の検討などを進めて、日常の文書保全・調査活動の進展を目指します。

2. 民間所在文書の確認作業と所在情報のマッピング

 震災を含めて自然災害や人災などから人間文化資源を守り、伝えていくためには民間所在の人間文化資源の所在情報化が不可欠です。それらのマッピングが東日本大震災において次の人間文化資源保全のための戦略を立てるのに役立ったことは宮城歴史資料保全ネットワーク(http://www.miyagi-shiryounet.org/)の活動を見ても明らかです。また、三重県では30年間のうちに民間所在文書の17%以上が失われ、大分県では23%が失われているという驚くべき結果が出ています。このような状況を防ぐためにも特定地域における民間文書の所在状況を確認し、今後の対策を検討致します。

3. 宮城県・岩手県南部地域における文書の伝存状況について構造的な分析

 宮城歴史資料保全ネットワークは2011年に30件(200箱)という膨大な数の歴史資料を津波や地震から保全しました。これら一件ごとの概要を記述し、それを1950年前後に国家的事業として行なわれた「近世庶民資料所在調査」による民間古文書の概要把握と突き合わせることにより、半世紀にわたる当該地域の民間古文書の伝存状況を把握します。