広域博物館連携 研究・活動の成果

機構連携研究「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」

連携研究第2回研究会(平成26年12月7、8日開催)
於:八戸市博物館、八戸市内沿岸部                           文責:加藤秀雄

1.発表
  古川実氏(青森県立郷土館)「東日本大震災への青森県内博物館等の対応について」
  小林力氏(八戸市博物館)「八戸市博物館の震災後の資料保存について」

  平成26年度の機構連携研究「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」第2回研究会は、12月7、8日に青森県八戸市で開催された。今回の研究会では、青森県立郷土館の古川実氏から青森県下の博物館が実施した文化財レスキュー活動の概要について説明を受けたあと、ゲストスピーカーの小林力氏(八戸市博物館)に、津波の被害が大きかった八戸市の状況と、その後の復旧活動、および文化財保全の現状と課題について解説を受けた。
  初日は八戸市博物館内で研究会を実施し、発表後の討議では、資料データの共有化、専門知識を持ったスタッフによる日常的、継続的な研究活動、および地域社会との連携の必要性などについて意見が交わされた。また特定の地域、生活圏における文化財保全において中心的な役割を担うことになる市立博物館が持つ可能性についても議論がなされた。


図1 八戸市博物館における研究会の様子


2.施設見学・解説
   研究会の2日目には、上記発表と関連して津波の被害を被った八戸市内の海浜地域で現地視察をおこなった。具体的には八戸港、蕪島、種差海岸、大久喜港等を訪れ、津波記念碑、大久喜地域の浜小屋などを見学したが、大久喜の浜小屋では建造物の見学とともに、国指定の重要有形民俗文化財として登録されている八戸市、および周辺地域の漁労用具のコレクションについても、その保存、活用について、現物を交えた上での解説を小林氏から受けた。

3.今後の予定
2月~3月に国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)で第3回研究会を実施する予定である。

機構連携研究「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」

連携研究第一回研究会(平成26年8月10、11日開催)
於:福島県文化財センター・白河館“まほろん”、福島県立博物館

1.発表
  本間宏氏(福島県文化財センター)「ふくしま史料ネットの経緯と課題」
  内山大介氏(福島県立博物館)「ふくしまの被災文化財と県立博物館の取り組み」

  平成26年度の機構連携研究「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」第1回研究会は、8月10、11日に福島県文化財センター・白河館“まほろん”と福島県立博物館で開催された。今回の研究会では、福島県文化財センターの本間宏氏にゲストスピーカーとして発表を依頼し、「ふくしま史料ネット」の活動について説明を受けた。また福島県立博物館の内山大介氏から福島県立博物館が実施したレスキュー活動の概要について救出された資料の活用という観点も踏まえての発表があった。
  初日は福島県文化財センターで研究会を実施し、本間氏から福島県下における震災、原発事故による被害とその後の資料救出について、ふくしま史料ネットの活動と絡めて発表がなされ、旧警戒区域内の資料の状態とその保全、避難指示区域再編による新たな課題などについての意見が交わされた。
  2日目は、福島県立博物館に会場を移し、同博物館の活動について内山大介氏から発表があった。いわき市の個人蔵資料、須賀川市歴史民俗資料館文化財収蔵庫、朝日稲荷神社の絵馬のレスキュー活動などについて紹介があり、警戒区域内の資料館所蔵資料の搬出の詳細についての解説があった。またこれらの資料を活用した公民館等における展示活動について説明がなされた。

2.施設見学・解説
  上記発表と関連して、福島県文化財センター、および福島県立博物館の施設・展示見学をおこなった。福島県文化財センターでは、双葉町、大熊町などの警戒区域内から搬出された資料の収蔵庫、クリーニング作業場内の施設見学をおこない、福島県立博物館では富岡町から救出された考古資料を活用したテーマ展、および南相馬市同慶寺所蔵、相馬市の婚礼用具の展示について、担当学芸員である荒木隆氏、小林めぐみ氏による解説をうけた。

3.今後の予定
12月上旬に青森県で第二回研究会を実施する予定である。



機構連携研究「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」

第4回研究会(平成25年2月10、11日開催)
於:大濱信泉記念館

1.発表
  川島秀一(東北大学災害科学国際研究所)「三陸沿岸と先島諸島の津波伝承」
  松田香代子(静岡県民俗学会)「地震・津波の伝承-静岡県の事例から-」
  島袋綾野(石垣市教育委員会)「津波の記録を検証する-記録と伝承と俗説-」

  機構連携研究「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」第4回研究会は、平成26年2月10、11日に大濱信泉記念館における研究報告、石垣島島内の津波伝承にまつわる史跡の巡検などを主な内容として開催された。今回の研究会では、松田香代子氏と島袋綾野氏にゲストスピーカーを依頼し、本研究会からは川島秀一氏から発表があった。また石垣島島内の巡検では島袋氏からそれぞれの史跡について解説を受けた。
  初日は大濱信泉記念館を会場とし川島氏と松田氏から三陸沿岸、先島諸島、静岡県における津波や水害にまつわる伝承についての発表があり、その特徴や地域毎の違い、災害時における役割などが議論された。
  2日目は、石垣市教育委員会の島袋綾野氏から明和大津波にまつわる史跡と伝承について発表があり、伝承、文書資料、考古資料を総合的に活用した研究のありかたについての意見が交わされた。

2.見学・解説
  上記発表と関連して、石垣島島内の明和大津波に関連する史蹟(大浜の津波大石、フルスト原遺跡など)の見学を島袋氏の解説を交えておこなった。



機構連携研究「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」

合同研究会(平成25年11月24、25日開催)
於:山形県立博物館、東北芸術工科大学

1.発表
  山口博之(山形県立博物館)「山形県立博物館の概要」
  川上新一(山形県立博物館)「植物標本のレスキュー活動について」
  小林貴宏(山形文化遺産防災ネットワーク)
        「山形文化遺産防災ネットワークの3.11以後の文化財・歴史資料保全の取り組み」
  米村祥央(東北芸術工科大学)「文化財保存修復センターと被災文化遺産のレスキュー」

  平成25年度の機構連携研究「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」第3回研究会は、11月24、25日に山形県立博物館と東北芸術工科大学で開催された。今回の研究会では、山形県下の博物館、資料ネット、大学に所属する川上新一氏、小林貴宏氏、米村祥央氏の3名にゲストスピーカーとして参加を依頼した。
  初日は山口博之氏から山形県立博物館の概要と山形県内の博物館連携について説明があり、川上氏から山形県博が実施した植物標本(陸前高田市立博物館蔵・鳥羽源三コレクション)のレスキュー活動について発表がおこなわれた。また小林氏から、山形文化遺産防災ネットワークの取り組みについて発表があり、震災後の資料ネットの活動形態、地域文化遺産の保護継承に関する課題が議論された。
  2日目は、東北芸術工科大学に会場を移し、同大学の文化財保存修復研究センターの取り組みについて米村祥央准教授から発表があった。被災した美術工芸品、文書史料の修復について具体的な事例に則すかたちで説明があり、文化財修復の技術・施設を活用したレスキュー活動について議論がなされた。



図1 山形県立博物館における研究会の様子

2.施設見学・解説
  上記発表と関連して、東北芸術工科大学文化財保存修復研究センターの見学をおこなった。主にそれぞれの部門に配備されている機材と修復技術について同センターの藤原徹教授から説明があり、それらが文化財の保全にどのように活用されているのかということについて西洋絵画、保存科学、東洋絵画、立体作品修復部門の専門スタッフから解説を受けた。また震災時に利用された真空凍結乾燥機など同センターの施設見学もおこなった。



図2 東北芸術工科大学文化財保存修復センターで資料修復について説明を聞く



第2回広域博物館連携・ミュージアムの活用共同研究会(平成25年9月1日、2日開催)

  • 「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」
  • 「文化遺産の復興に向けたミュージアムの活用のための基礎的研究」
於:新潟県立歴史博物館、長岡市立中央図書館文書資料室、中越メモリアル回廊など
議事録作成:加藤 秀雄(国立歴史民俗博物館)



1.発表

 田邊 幹(新潟県立歴史博物館)「新潟県における文化財レスキュー活動」

 平成25年度の機構連携研究「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」第2回研究会は、9月1、2日に「文化遺産の復興に向けたミュージアムの活用のための基礎的研究」との合同研究会として新潟県立歴史博物館で開催された。
 研究会では、田邊幹氏(新潟県立歴史博物館・主任研究員)による発表がおこなわれ、新潟県における文化財レスキュー活動の概要とその成果に関する説明があった。特に資料ネットなどの市民団体、大学組織との連携や、一般民家における民具・文書資料の救出活動について紹介がおこなわれ、大規模災害時における文化財レスキュー活動のモデル構築の必要性について意見が交わされた。


図1 新潟県立歴史博物館で開催された研究会の様子


2.施設見学・解説

 上記発表と関連して、中越大震災の記憶、記録の継承に関する具体的な取り組みについて視察をおこなった。研究会1日目の午後は、中越大震災時に避難所で用いられていたモノ、文書資料の保管、整理をおこなっている長岡市立中央図書館文書資料室の活動について、同館の田中洋史氏から説明を受けた。2日目は、中越防災安全推進機構が管理運営する「中越メモリアル回廊」を訪れ、震災遺構の地域社会における活用と被災地の復興状況について、同機構の筑波匡介氏に同行して頂き解説を受けた


図2 長岡市立中央図書館文書資料室で震災資料の保存活動について説明を聞く


3.今後の予定について

 「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」の次回研究会は、11月24日、25日に山形県で開催される予定であり、研究員との間で調整を進めることで合意がなされた。





第1回広域博物館連携・ミュージアムの活用共同研究会(平成25年5月26日、27日開催)

  • 「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」
  • 「文化遺産の復興に向けたミュージアムの活用のための基礎的研究」
於:国立歴史民俗博物館
議事録作成:加藤 秀雄(国立歴史民俗博物館)



1.発表

 小池 淳一 「博物館連携をどのように構築するか:2年目の課題」
 川村 清志 「生活文化の再構成と博物館型研究統合」

 平成25年度の機構連携研究「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」第1回研究会は、5月26、27日に「文化遺産の復興に向けたミュージアムの活用のための基礎的研究」、国立歴史民俗博物館・共同研究「東日本大震災被災地域における生活文化研究の復興と博物館型研究統合」との合同研究会として開催された。
 研究会では、国立歴史民俗博物館の小池淳一教授と川村清志准教授による発表がおこなわれ、昨年度の成果と今年度の課題の確認がおこなわれた。
 発表では、震災後に行われた文化財レスキュー事業における反省点の検証、各地の博物館の位置づけに関する情報の共有、県立博物館が果たす役割についての議論の深化などが博物館連携に関連する課題として挙げられた。また、国立歴史民俗博物館が実施してきたレスキュー活動によって救われた民具・生活用具を今後、どのように活用していくことが出来るかという点について、具体的な資料に即した議論がおこなわれた。


図1 国立歴史民俗博物館で開催された研究会の様子


2.展示見学・解説

 上記発表と関連して、国立歴史民俗博物館で開催中の人間文化研究機構連携展示「東日本大震災と気仙沼の生活文化」と、常設展示「民俗」で再現された尾形家住宅の見学がおこなわれた。また展示担当者による解説があり、展示の意図とそれぞれの資料について説明がなされた。


図2 特集展示「東日本大震災と気仙沼の生活文化」の解説の様子


3.今後の予定について

 今年度の研究会は、青森、山形、新潟等の地域で開催される予定であり、各県の博物館に所属する研究員との間で日程の調整を進めることで合意がなされた。





第4回研究会(平成25年2月18日開催)

1.発表

 大石 雅之氏「大災害と博物館~自然史科学からみた博物館救援と連携に関連する諸事情」
 赤沼 英男氏「被災文化財救援活動経過と課題」

 機構連携研究「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」第4回研究会は、平成25年2月18日に岩手県立博物館で開催された。研究会では、ゲストスピーカーの大石雅之氏(岩手県立博物館)と赤沼英男氏(岩手県立博物館)による発表がおこなわれ、大石氏からは自然史科学の立場から、植物・動物標本や化石類といった自然史資料の救出活動についての説明があり、赤沼氏からは震災後に岩手県立博物館が中心となっておこなった県内の文化財レスキュー活動について、その具体的な経過と課題が示された。
 質疑応答では、専門分野や地域によって救出活動にどのような違いがあったのかという点についての意見が交わされ、特に自然史科学と人文科学の資料救出をめぐる連携の必要性や組織、方法論の整備に関する議論が行われた。

2.安定化処理設備等見学・展示解説

 上記発表と関連して岩手県立博物館における被災資料の安定化処理設備)と、現在、開催中の特別展示「2011.3.11平成の大津波被害と博物館」を見学し、赤沼氏から展示解説を受けた。
 主に被災した資料の劣化を防ぐために必要な設備と技術についての説明があり、処理が施された資料の保管状況と現在の課題が示された。
 特別展では、岩手県指定文化財「吉田家文書」(陸前高田市)、液浸標本、押し葉標本など、岩手県内の文化財レスキュー活動によって救出された資料が展示されており、映像による文化財レスキュー活動の記録、情報発信などについての解説がなされた。


図1. 岩手県立博物館で安定化処理がなされた資料

3.今後の予定について

 平成25年度の第1回研究会は国立歴史民俗博物館で5~6月に開催される予定である。また人間文化研究機構の主催で3月21日、24日に開催される予定のシンポジウム「大規模災害と人間文化研究」への参加の呼びかけがなされた。





長崎雲仙普賢岳・巡検

日時 2013年1月21日~23日
場所 雲仙岳災害記念館、長崎県雲仙市木花開耶姫神社





第3回研究会(平成25年1月13、14日開催)

1.発表

 日高 真吾氏「東日本大震災における文化財レスキューと連携展示」
 前川さおり氏「文化財レスキューと被災を伝える展示」

 機構連携研究「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」第3回研究会は、平成25年1月13日、14日の日程で国立民族学博物館、人と防災未来センターにおいて、国立歴史民俗博物館・共同研究「東日本大震災被災地域における生活文化研究の復興と博物館型研究統合」との合同研究会として開催された。13日の研究会では、日高真吾氏(国立民族学博物館)と前川さおり氏(遠野文化研究センター)による発表が行われ、文化財レスキュー活動によって救出された資料の保全、整理、活用ついての議論がおこなわれた。
特に文化財レスキュー活動と関連する博物館展示について、具体的な展示の事例に則した紹介があり、今後の情報発信や、資料の保管、返却といった課題が議論された。


図1. 国立民族学博物館で開催された研究会の様子

2.展示解説

 前川さおり氏「震災からよみがえった東北の文化財展」

 研究会の2日目(1月14日)には、阪神淡路大震災記念・人と防災未来センターで開催中の「震災からよみがえった東北の文化財展」を見学し、展示を企画した前川さおり氏(遠野文化研究センター)による展示解説があった。東日本大震災以降に実施された文化財レスキュー活動に関連する情報発信と、救出された各種資料の活用例として、その効果と課題についての説明があり、展示の方法、情報の更新、会場の調整といった具体的な問題が話し合われた。

3.今後の予定について

 本連携研究の今後の打ち合わせと、次回研究会に関する予定の調整がおこなわれた。次回研究会は、岩手県立博物館で2月18日、19日に開催される予定である。また1月22日、23日に実施される長崎県雲仙岳災害記念館、噴火災害資料館の巡検についても予定の確認がなされた。





第2回研究会(平成24年10月28、29日開催)

1.佐藤憲幸氏「震災時における東北歴史博物館の被災状況と県立博物館としての活動」

 機構連携研究「大規模災害と広域博物館連携に関する総合的研究」第2回研究会は、平成24年10月28~29日の日程で東北歴史博物館(宮城県多賀城市)において開催された。研究会では、東北歴史博物館主任研究員・佐藤憲幸氏による発表が行われ、東日本大震災発生時における東北歴史博物館の被害状況とその後の対応、および宮城県内における被災文化財の救出支援活動について報告がなされた。また今後の課題として、被災資料の返却、被災文化財の修理・保全・整理といったレスキュー活動全般への一般に対する理解の呼びかけなどの問題が確認された。

2.震災後に再開された多賀城政庁跡発掘調査現場の見学

 上記発表の後に、東日本大震災によって被災した多賀城政庁跡を訪れ、宮城県多賀城跡調査研究所が現在、実施している発掘調査の見学を実施した。多賀城政庁跡では、東日本大震災によって政庁跡の舗装、および周辺施設への被害が生じたが、現在は復旧し、発掘調査が再開されている。この発掘における新たな調査成果について発掘現場では、説明をうけた。


図1. 多賀城政庁跡で説明を受ける

3.今後の予定について

 本連携研究についての今後の打ち合わせと、次回研究会に関する予定の調整が行われた。次回研究会は、岩手県立博物館で2月17、18日に開催される予定で合意がなされた。また国立民族学博物館で1月12~14日に開催予定の歴博共同研究「東日本大震災被災地域における生活文化研究の復興と博物館型統合」への参加の呼びかけも行われた。





第1回研究会(平成24年8月4、5日開催)

開催場所:国立歴史民俗博物館第一会議室

8月4日(土)プログラム

1 代表からの挨拶 13:30~13:40
2 発表「本研究の目的と課題」(小池)13:40~14:40
3 自己紹介と質疑応答 14:50~15:40
4 発表「災害時における文化財保護と博物館、研究機関、市民の役割」(加藤)15:50~16:50
5 質疑応答16:50~17:30

  • 内容
  • 1.代表からの挨拶
    2.発表:小池淳一「本研究の目的と課題」
     本連携研究の枠組みと趣旨説明を当館研究部の小池淳一が行い、その目的と課題について説明をおこなった。ここでは東日本大震災における文化財レスキュー活動の反省点を踏まえ、今後、大規模な災害が発生した場合に博物館および関連施設が果たし得る機能についての総合的な調査、研究を行うための提言がなされた。歴博の気仙沼市における文化財レスキュー活動についても映像を交えた説明がおこなわれ、活動の記録化や課題の登録を目指した報告書の刊行、展示や市民フォーラムなどによる情報発信、連携展示に向けた準備などの目標が掲げられた。
    3.自己紹介と質疑応答
     参加者による自己紹介と文化財レスキューについての情報交換をおこなった。特に各参加者が所属する機関が東日本大震災の際に行った対応や、現状について説明がなされた。また現在、全国に散在している被災資料のデータベース化事業や、被災地のニーズに合わせた活動の必要性、福島第一原発の事故による文化財レスキューに対する影響、今後の資料の保管、活用をどのように行っていけばよいのかといった問題が提起された。
    4.発表:加藤秀雄「災害時における文化財保護と博物館、研究機関、市民の役割」
    5.質疑応答
     気仙沼市における文化財レスキューについて現地活動をおこなった当館研究部の加藤秀雄から報告があり、その経験を踏まえて、今後どのような支援の体制を構築していけばよいのかという点について発表がなされた。
     質疑応答では、東北歴史博物館における文化財レスキューの取組みに関する説明や、救援委員会(東北地方太平洋沖地震文化財等救援委員会)と歴博の連携、地域住民と救援活動を行う側の交流などに関する質問がなされた。

    8月5日(日)プログラム

    1.総合討議「東日本大震災における博物館の取り組みと課題について」 10:00~11:30
    2.今後の予定の確認と打ち合わせ 11:30~12:00

    • 内容

    1.総合討議「東日本大震災における博物館の取り組みと課題について」
     1日目に行われた発表と質疑応答の内容を踏まえ、新たな問題の登録と情報の共有を図るべく総合的な討議がおこなわれた。ここでは民家におけるレスキュー活動と博物館資料・登録文化財をレスキューすることの差異を意識しながら比較検証を行う必要性について提言がなされ、各々の現場における資料選択の基準、救出のスタンスをどのように確定していくべきかという点が議論の焦点となった。これと関連して田邊氏から中越地震の際の新潟県における文化財レスキュー活動の取組みに関する説明がなされ、集落の復興と文化資源がどのように関わるのか、地元に対する情報提供をどのように行うべきなのかを、今後、検討していく必要性が提起された。
     佐藤氏からは、救援委員会および宮城県被災文化財等連絡会議の協力関係のなかでなされた展示活動、および今後の宮城県における文化財レスキュー活動に関わる展示活動について情報提供がなされた。
    2.今後の予定の確認と打ち合わせ
     本連携研究についての今後の打ち合わせと、第2回研究会に関する予定の調整が行われた。第2回研究会については、東北歴史博物館で行う方向で調整がなされ、前日の宿泊を含め、10月29日(月)に1泊2日で行うことで合意がなされた。