文書資料の保全と活用

大震災後における文書資料の保全と活用に関する研究

研究代表者

西村慎太郎(国文学研究資料館)

研究の概要

2011年3月に起きた東日本大震災によって、文書や図書、歴史的な建造物、標本資料、考古遺物など様々な人間文化資源が被害を受けました。とりわけ、文書や図書などの紙媒体の資源は地震に伴う津波と火災によるダメージが甚大であり、今後、被災した資源を救うべき体制が求められています。

地域再生に人文科学は何を果たしうるのか、より良い再生にはなにが必要か。これらは、今回の災害も含めて語り継がれるべきものです。もちろん、それが災害の記憶のみでよいはずはありません。歴史文化の構築が必要であり、そのための情報基盤整備が必要です。さらに、100年~150年周期で起こると予測されている東海地震や異常気象による災害に対して、人間文化資源を如何に守っていき、活用に供するかという視角も早急の課題です。この点、阪神淡路大震災以来、「歴史資料保全論」という学際的な研究テーマが提案されていますが、災害経験の蓄積とそれに立脚する防災方法の構築を目指す「災害文化論」的な視座が不可欠です。

したがって、文書や図書といった人間文化資源を大規模災害から守るため、歴史学・文学・アーカイブズ学・博物館学・図書館学・情報学・保存科学などの研究分野を結集し、被災資料の救援とその活用、ならびに防災システムの具現化を目指す研究を提案したいと思います。人間文化資源の保存とは、人間文化研究の根幹であり、「人間文化研究総合推進事業」にとって不可欠な要素です。このような研究を通して、社会的貢献にも寄与します。加えて、国文学資料観は活断層の上に立地しており、現実的な課題でもあります。