方言と災害

方言をとおした災害時の地域社会支援と方言の保護・活用に関する研究

研究代表者

木部暢子(国立国語研究所)

研究の概要

本研究は、災害時における方言の役割や多言語社会に対応した言語支援のあり方について検討することにより、言語(方言)による地域社会支援の方法について、具体的なモデルを提示することを目的とします。そのために、災害緊急時に必要となる言語資料の整備、および地域社会に暮らす人々(移住者を含む)の連携の基盤となる、方言のデータの整備を行います。

1.医療活動や自治体活動に必要な言語情報の整備

方言研究では、これまでも患者と医療関係者とのディスコミュニケーションが問題とされてきましたが、東日本大震災時もこの問題が医療活動を妨げる原因となりました。本研究では、今後起こりうる災害に備え、平時においても利用価値の高い情報を整備することを目的として、東日本大震災の際に生じた問題点の調査収集を行い、災害時の医療活動や自治体活動に必要となる言語情報の整理と活用方法の提案を行います。

2.多言語社会における地域言語

現代の地域社会には、結婚移住外国人や経済連携協定(EPA)により看護師・介護福祉士をめざす外国人、研修生、留学生など、さまざまな言語を母語とする人が暮らしています。本研究では地域社会が多言語社会であることを前提として、災害時に必要とされる言語情報の整備を行います。それにより、多文化共生社会の実現に貢献します。

日本語非母語話者のための日本語資料

3.地域社会の基盤としての方言の保存

方言は、地域に暮らす人々の連携の基盤であると同時に、当該地域の文化財産でもあります。災害によって地元を離れる人が増加し、地域社会の崩壊が懸念されるなかで、方言の保存保護活動を行うことにより、方言によるコミュニティ保持の方法を検討します。

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