社会言語学の確立と継続的な社会調査
創立当初から研究のキーワードだった「言語生活」ですが,その取り組みの成果は早くも研究報告の1冊目『八丈島の言語調査』(昭和25(1950)年),2冊目『言語生活の実態:白河市および付近の農村における』(昭和26(1951)年)として相次いで出されました。このような社会調査をベースに分析する方法は,後に社会言語学と呼ばれる研究分野として確立していきます。
国語研では様々な社会言語学の研究を行っていますが,研究所ならではの取り組みの一つに,山形県鶴岡市を調査地点にした継続調査が挙げられます。これは20年ごとに同じ地点で言語生活の実態を調査したものです。昭和25(1950)年に第1回目の調査を実施し,その後,約20年毎に平成23・24(2011・2012)年の第4回目まで実施されています。また,昭和27・28(1952・1953)年,昭和46・47(1971・1972)年,平成20・21(2008・2009)年には,愛知県岡崎市で敬語の使われ方を調査しました。
社会調査では,大勢の調査員が共通の調査票を用いて面接調査などを行い,データを集めます。一定の分析をするためには,多くの回答者からのデータが必要です。このように大規模でしかも長期にわたって繰り返すような調査は世界的にも珍しいものです。継続調査は,組織的に取り組むことで初めて可能な,国語研ならではの研究成果と言えます。
こうした研究により,時間の経過にともなう言葉の変化を科学的に分析することが可能になりました。