目次

4-2.さまざまな研究成果

社会言語学の確立と継続的な社会調査

創立当初から研究のキーワードだった「言語生活」ですが,その取り組みの成果は早くも研究報告の1冊目『八丈島の言語調査』(昭和25(1950)年),2冊目『言語生活の実態:白河市および付近の農村における』(昭和26(1951)年)として相次いで出されました。このような社会調査をベースに分析する方法は,後に社会言語学と呼ばれる研究分野として確立していきます。

白河市講演会告知
八丈島での調査

八丈島での調査

白河での調査

白河での調査

国語研では様々な社会言語学の研究を行っていますが,研究所ならではの取り組みの一つに,山形県鶴岡市を調査地点にした継続調査が挙げられます。これは20年ごとに同じ地点で言語生活の実態を調査したものです。昭和25(1950)年に第1回目の調査を実施し,その後,約20年毎に平成23・24(2011・2012)年の第4回目まで実施されています。また,昭和27・28(1952・1953)年,昭和46・47(1971・1972)年,平成20・21(2008・2009)年には,愛知県岡崎市で敬語の使われ方を調査しました。

地域社会の言語生活
鶴岡での調査表

鶴岡調査で使った調査票
右から昭和25年,昭和46年,平成3年の各調査のもの

敬語と敬語意識

岡崎調査の報告書

社会調査では,大勢の調査員が共通の調査票を用いて面接調査などを行い,データを集めます。一定の分析をするためには,多くの回答者からのデータが必要です。このように大規模でしかも長期にわたって繰り返すような調査は世界的にも珍しいものです。継続調査は,組織的に取り組むことで初めて可能な,国語研ならではの研究成果と言えます。
こうした研究により,時間の経過にともなう言葉の変化を科学的に分析することが可能になりました。

言語地図

国語研では,昭和32(1957)年から始めた調査を踏まえて,昭和41(1966)年から昭和49(1974)年にかけて『日本言語地図』全6集を刊行しました。言語地理学という分野では,言葉の地理的な広がりを調べることで,言葉の変化や体系を分析します。この『日本言語地図』は,厳密な言語地理学の手法に基づいて調査・作成した日本最初の全国的な方言地図です。全国からくまなく調査地点を選び,特定の単語の土地毎の言い方や発音のしかたなどを調べ,地図上にその分布の様子を示しました。

日本言語地図
情報収集カード

情報収集にはカードを使用

日本言語地図の作成

日本言語地図を作成している様子

語形を表すスタンプ

日本言語地図作成に使用した語形を表すスタンプ

平成元年(1989年)からは,文法に焦点をあてた『方言文法全国地図』全6集が作成されています。第5集からは地図作成にコンピュータを導入し,データをウェブ上で公開することで,研究成果が広く活用されることを目指しました。

こうした言語地図作成のための調査研究が始まりとなって,日本における言語地理学研究が大きく発展しました。

方言文法全国地図

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