お知らせ
第4期プロジェクトの目的
国立国語研究所という名前から考えて、国語教育の研究所と思われることが多いのですが、実際は、外国人(正確には日本語を母語としない方。以下、日本語非母語話者)に日本語を教える日本語教育研究で伝統のある研究所です。
日本語教育の両輪となるのは、日本語を教える教師と、日本語を学ぶ学習者です。日本語教師の研修や教育現場での教授法や教材開発など、教師に関わる研究は、国際交流基金の日本語国際センター(https://www.jpf.go.jp/j/urawa/)が有名です。
これにたいして、私たち国立国語研究所の日本語教育は、学習者がどのように日本語を習得し、社会のなかで日本語を使用しているのかという、学習者を対象にした研究が中心となっています。とくに、第3期中期目標・中期計画期間(2016~2021年度)において、学習者のコミュニケーションに関わる豊富なデータを蓄積し、その実態解明に力を注いできた点に特徴があり、その理念は、第4期中期目標・中期計画期間(2022~2027年度)に引き継がれています。
本プロジェクトはその一環として、日本語非母語話者(日本語学習者および定住外国人)の言語運用の縦断的調査によって多様な言語資源を構築して研究を行い、その研究成果を教育支援に生かすことを目的として設置されました。その目的を達成するために、プロジェクト全体は、次の五つの研究班から構成されています。私たちの日本語非母語話者のコミュニケーションに、第三期に引き続きどうぞご期待ください。
プロジェクトリーダー
石黒 圭 (国立国語研究所 教授)
研究班
A longitudinal Corpus Study of Written Japanese by L2 Learners (Learners' Written Japanese)
日本語学習者の作文の縦断コーパス研究(学習者作文)
中国、台湾、韓国、ベトナムの複数の大学と日本語学習者の作文の縦断コーパス調査のネットワークを形成し、学習者600名(開始時)を対象に、1年間に3回、4年間にわたる計12回の作文調査を行うプロジェクトです。収集したデータに基づき、学習者の作文執筆能力の縦断的な発達過程を明らかにすることを目指します。
A longitudinal Corpus Study of Spoken Japanese by L2 Learners (Learners' Spoken Japanese)
日本語学習者の談話の縦断コーパス研究(学習者談話)
中国、ベトナム、タイの大学の日本語学習者を対象に、大学入学から卒業までの4年、1年間に2回、計8回のI-JAS準拠のインタビュー調査と関連する作文調査を行い、縦断談話データベースを構築します。収集したデータを用いて、談話能力の縦断的な発達過程を作文能力との関係で総合的に明らかにすることを目指します。
A Study on Learning Support for Written Japanese (Learning Support for Written Japanese)
日本語学習者の作文教育支援研究(作文教育支援)
協同型の作文教育向けの作文・添削支援システムを開発し、授業への導入手法を検討します。また、システムを用いた授業実践の結果から作文・添削データベースを構築し、作文技能の習得過程とシステムの教授効果を明らかにすることを目指します。
A Longitudinal Study of Spoken Japanese by Language Learners Who Settled down in Japan (Spoken Japanese by Inhabitants)
定住外国人の談話の縦断研究(生活者談話)
2007年から継続してきた東北地方における外国人定住者の縦断インタビュー調査について、第四期も調査を継続します。それとともに、過去の収集データの整備を行い、それらのデータを公開、分析することで、長期間にわたる生活者の言語習得の実態を明らかにすることを目指します。
Research on the Literacy of Immigrants in Japan (Adult Literacy of Immigrants)
定住外国人のよみかき研究(生活者識字)
生活者としての定住外国人を対象に、日常生活における文字を介したコミュニケーション(よみかき実践)の種類、方略の使用、新しいメディアの活用等について、データ収集を行い、よみかき実践研究の発展とよみかきに関わる外国人支援の充実を目指します。