概要
生活者としての定住外国人は、留学生と異なり、教育機関における日本語学習を経験していない人が多いにもかかわらず、日常生活のさまざまな場面で日本語のよみかきが求められています。こうした生活者の「字をよみかきする社会的実践」(=Literacy)は、これまで日本語教育の研究対象として注目されることは少なく、支援の取り組みも諸外国に比べ立ち遅れていることが指摘されています。
本研究では、生活者としての定住外国人の日常生活におけるよみかき社会的実践について調査を実施し、よみかき社会実践の類型化とともに、その特徴(新しいメディアや社会的ネットワークの活用等)を明らかにすることを試みます。
こうした基礎的なデータを収集し分析することにより、自治体等が提供する翻訳サービスや「やさしい日本語」をはじめとする既存の言語サービス等の有効性等を検討することやこれまで議論が及んでいなかった言語権やよみかきをめぐるイデオロギーや政治性の問題を考察することが可能となります。本研究の最終的な目的は、生活者のよみかきを文字の学習ではなく、文字を介したコミュニケーション(字をよみかきする社会的実践)と捉えなおし、その実態を明らかにすることを通して、よみかきに関する諸課題を議論し外国人支援の充実に資することです。