「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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24.ステロイド  steroid

(類型B-(1))正しい意味を明確に説明する

[関連] 炎症(えんしょう)(類型B) 免疫(めんえき)(類型B) 副作用(ふくさよう)(類型B)
 QOL(キューオーエル)(類型C)

まずこれだけは

炎症を抑えたり,免疫の働きを弱めたりする薬で,もとは人間のからだの中で作られるホルモン

少し詳しく

 「炎症(→16)を抑えたり,免疫(→20.膠原病[関連語])の働きを弱めたりする薬です。腎臓(じんぞう)の上の方にある副腎皮質(ふくじんひしつ)というところでできるホルモンの成分をもとに作られています。適切に使わないとからだに影響が出ますので,必ず指示通りに使ってください。しかし,適切に使い,反応に注意していれば,心配はいりません」

時間をかけてじっくりと

 「炎症をしずめたり,免疫の働きを弱めたりする薬です。腎臓(じんぞう)の上の方にある副腎皮質(ふくじんひしつ)というところで作られたホルモンのうち,糖質コルチコイドという成分を合成した薬です。適切に使わないとからだに影響が出ますので,必ず指示通りに使ってください。ステロイドには,飲み薬,注射,塗り薬,吸入剤などがあります。飲み薬や注射は,専門の医師の処方によって使います。塗り薬は,塗り過ぎるとよくないので医師の指導に必ず従ってください。吸入剤は副作用が極めて少ないので安心です」

こんな誤解がある
  1. スポーツ選手が筋肉増強などのために使い,ドーピングだと問題視される「蛋白(たんぱく)同化ステロイド」の連想から,病院で使うステロイドも危険な薬だと誤解する人がいる(13.1%)。
  2. 塗り薬の場合,一度使うとやめられなくなるという誤解がある(13.8%)。
  3. ぜん息患者などが使う,吸入ステロイド薬のように副作用が極めて弱いものにも,ステロイド剤の注射や飲み薬のときと同程度の副作用があると,誤解される場合がある(18.3%)。
言葉遣いのポイント
  1. 「ステロイド」という言葉はよく知られているが(認知率93.8%),意味を理解している人はかなり少ない(理解率44.1%)。どんな薬であるか,その効き目や危険性を,使い方とともに明確に説明する必要性が高い。
  2. よく効くけれども副作用(→44)に注意しなければならないことを伝えるために,「もろ刃の剣(つるぎ)」という比喩(ひゆ)を用いるのも効果的である。また,強い効果が期待できる反面,危険性もあることを,「スーパーマンにもなるし,モンスターにもなる」などと説明することも考えられる。
不安を和らげる
  1. 強い副作用があり危険な薬だと思い込み,過度に不安を抱く人が多い。この誤解のために,患者の勝手な判断で,弱い薬を使う,使う量を少なくする,途中で使うのをやめる,などのことを行い,治療効果をなくし,反対に副作用の危険が大きくなってしまうことがある。適切な使い方を丁寧に説明し,過度な不安を取り除きたい。
  2. 患者が過度の不安を持つのは,医師の説明が不十分であることにも原因がある。例えば,「長期間使ってはいけない」と説明する場合には,なぜ長期間使うといけないのかについて,丁寧に説明する必要がある。また,「長期間」は人により受け止め方が違うので,具体的な数字で示すことが望ましい。使い方や副作用について正しい理解ができれば,過度な不安も解消すると考えられる。
ここに注意
  1. ステロイド剤は,上手に使えば,とてもよく効く薬である。患者の症状を和らげ,QOL(その人がこれでいいと思えるような生活の質)(→53)を改善するのに効果がある。ただし,適当量を適切な方法で使わないと副作用だけになってしまうことを理解してもらうことも大切である。
  2. ステロイドの適切な使用法は,病気の種類や症状の内容,治療後の経過等,個々の患者の条件によって多様である。専門医の判断が重要なことを患者に分かってもらう必要がある。
  3. 「ステロイド」という言葉は,患者にとっては,ホルモンの名称としてよりも,薬の名称として理解されている。正常な状態でも身体を維持するために重要な働きをしていることを知っておいてもらった方がよい。
©2008 The National Institute for Japanese Language