新「ことば」シリーズ20 『文字と社会』
私たちの暮らしや社会は「文字」に支えられています。
日本全国で,様々な文字が用いられています。その実態はどうなっているのでしょうか。
文字は人間の「脳」や「心」にも影響を及ぼしているようです。ゲーム機に搭載された漢字ドリルが高齢者の皆さんに歓迎されていることからも明らかなように,文字に対する世の中の関心は高いものがあります。
この号は,「文字と社会」のほかに「文字」と「人間」とのかかわりをめぐる話題も提供し,皆さんに心豊かな言語生活を楽しんでいただくために作られました。
目次
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巻頭エッセイ
阿刀田高 私の文字生活
本号のテーマについて
座談会 放送現場の文字、心に伝わる文字、強い言葉
養老孟司(解剖学者),桜井洋子(NHKアナウンサー),杉戸清樹(国立国語研究所長)
縦書きと横書き,読みやすいのはどっち?/1行は何文字が一番読みやすいのか/音読と黙読の違いは?/音訓読みは世界に誇れる発明/日本語のスピード/「心の声」を伝えた手書きの遺書/手書きの効用/生きた感覚と言葉
ことば事情
1 放送と漢字 柴田実(NHK放送文化研究所)
2 教科書の文字 小椋秀樹(国立国語研究所)
3 公共サービスの文字 高田智和(国立国語研究所)
ことばの質問BOX
問1 小学生の娘が作文で「きょうわたのしかったです。」と書いたところ,「わ」に×をつけられてしまいました。なぜ「わ」と書いてはいけないのでしょうか。
問2 漢字の使用は,以前と比較して減っているのでしょうか。
問3 「~するとき」と「~する時」では,意味が違う場合もあると聞きましたが,本当でしょうか。
問4 パソコン用のキーボードの配列にはどんな意味があるのでしょうか。
問5 「上」という漢字の筆順は,「|」と「―」どちらから始めるのが正しいのでしょうか。
問6 漢字の音読みに「呉音」と「漢音」があるそうですが,どう違うのでしょうか。普段私たちが使っていることばと何か関係がありますか。
問7 現在の「国」「円」に当たる漢字が,古い文献では「國」「圓」と書かれています。「国」「円」などは,戦後新しく作られたものですか。
問8 点字にも漢字はあるのでしょうか。
問9 「ヤマダハルオ」のローマ字表記は,「Haruo Yamada」がよいのでしょうか。「Yamada Haruo」がよいのでしょうか。
問10 「ふりがな」をルビと言うのはなぜでしょうか。
問11 「やなぎ」さんという名字の人で,「柳」ではなく「木」偏に「夘」と書く人がいます。なぜなのでしょうか。
問12 「魂」という漢字では「云」が偏ですか。「鬼」が旁ですか。
問14 熟語で「音+訓」の構成のものを「重箱読み」,逆の「訓+音」の構成のものを「湯桶読み」と言いますが,「重箱」はともかく「湯桶」などというほかで聞いたことがないような語をなぜここで使っているのでしょうか。
問15 このごろ,手書きでメモや日記を書いていて,知っているはずの漢字をど忘れして書けないということが多くなったような気がします。やはり普段パソコンを使っているのが原因でしょうか。
ことばと社会
公共文字と日本の多言語化――東京の言語景観を事例に P.バックハウス(ドイツ―日本研究所)
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あとがき
コラム
1 文字と失語症
2 「オーノ」氏の懊悩に満ちた選択