調査の詳細

*以下は,海外及び国内の調査のうち,海外に関するものについて紹介する。

本調査では,主に,各調査地域での学習環境・学習手段を全体的に把握するための量的調査としてアンケート調査を実施するとともに,アンケートでは捉えきれない学習者の個別的な側面を補完するためにインタビュー調査を実施した。さらに,各調査地域における日本語学習に影響を与えると考えられる現地社会的状況等を把握するための学習環境調査も実施した。各調査の詳細は以下の通りである。

2. 1. アンケート調査

アンケートは学習者用と教師用があり,それぞれ日本語版と各国語版を用意した。

学習者用では,学習者が日本語を学習する際には何らかの物,人,情報といった対象に接触すると考えられることから,学習者がどのような対象にどのように接触しているのかについて質問する項目が中心になっている。

教師用では,日本語の授業及び授業準備の際にどのような物,人,情報といった対象にどのように接触しているのかについて質問する項目が中心になっている。

また,それらの接触の対象や方法等に影響すると考えられる項目として,学習者については日本語学習歴,学習動機等,教師については日本語教育歴,日本語教育を始めた理由等の属性についてもあわせて尋ねている。

尚,オーストラリアは初等教育機関の学習者が多いが,児童がアンケートに回答するのは困難であることから,児童に対するグループインタビューを実施するとともに,保護者に対するアンケート調査を実施した。保護者用アンケートは,子どもの日本語や日本文化と接する機会の有無,日本語学習についての意識などについて尋ねている。

<学習者用アンケート質問項目>

【属性】

・性別,居住地域,年齢,母語,身分,日本語学習の開始学年,日本語学習の場所,訪日経験,日本語学習動機,4技能別日本語力自己評価等

【質問項目】

・日本語の使用状況(相手,頻度,手段,内容,理由等)

・日本語との接触状況(物,頻度,内容,理由等)

・日本語との接触状況(場,機会)

・授業で使用する日本語教材の授業以外での使用状況

・日本語学習のためのリソース

・日本語学習のために充実を希望するもの

<教師用アンケート質問項目>

【属性】

・性別,居住地域,年齢,母語,日本語学習歴,その他の外国語学習歴,訪日経験,日本語教育経験,日本語以外の教育経験,4技能別日本語力自己評価,日本語教育を始めた理由,学会・研究会への参加,日本語教育に関する研修等

【質問項目】

Ⅰ. 授業及び授業準備に関する質問

・授業での使用教材,使用生教材の種類,使用自作教材の種類

・授業での使用機材

・授業での日本語使用状況

・授業準備のためのリソース(物,人)

・日本語教師に必要な能力に関する意識

・資質,能力向上のためにしていること,役に立つと思うこと

・コンピュータ使用状況

・コンピュータ使用に関する意識

・資質,能力向上のために充実を希望するもの

Ⅱ. 日本語力向上のための環境に関する質問(日本人以外)

・日本語の使用状況(相手,頻度,手段,内容,理由等)

・日本語との接触状況(物,頻度,内容,理由等)

・日本語との接触状況(場,機会)

各国調査の実施年度及びアンケート回答者数は,以下の通りである。

平成13年度   タイ(バンコック)調査

平成14〜15年度 韓国調査

平成15〜16年度 オーストラリア調査

平成15年度   台湾調査

平成16年度   マレーシア調査

表1 学習者・教師アンケート回答者数と実施機関数の内訳 単位:人

    初等教育 中等教育 高等教育 学校教育以外 合計
タイ 学習者数
0
( 0.0)
2710
(45.8)
2559
(43.2)
650
(11.0)
5919
(100)
  教師数
0
( 0.0)
50
(24.5)
93
(45.6)
61
(29.9)
204
(100)
  機関数
0
( 0.0)
41
(53.2)
33
(42.9)
3
( 3.9)
77
(100)
韓国 学習者数
0
( 0.0)
3177
(47.1)
2456
(36.4)
1106
(16.4)
6739
(100)
  教師数
0
( 0.0)
236
(37.4)
282
(44.6)
113
(17.9)
631
(100)
  機関数
0
( 0.0)
45
(47.9)
38
(40.4)
11
(11.7)
94
(100)
オーストラリア 学習者数
0
( 0.0)
309
(87.8)
43
(12.2)
0
( 0.0)
352
(100)
  機関数
0
( 0.0)
16
(94.1)
1
( 5.9)
0
( 0.0)
17
(100)
  教師数
35
(33.7)
69
(66.3)
0
( 0.0)
0
( 0.0)
104
(100)
  機関数
33
(50.0)
33
(50.0)
0
( 0.0)
0
( 0.0)
66
(100)
台湾 学習者数
0
( 0.0)
926
(26.9)
2075
(60.2)
446
(12.9)
3447
(100)
  教師数
0
( 0.0)
42
(18.8)
133
(59.4)
49
(21.9)
224
(100)
  機関数
0
( 0.0)
35
(31.8)
58
(52.7)
17
(15.5)
110
(100)
マレーシア 学習者数
0
( 0.0)
2276
(42.5)
2245
(41.9)
839
(15.7)
5360
(100)
  教師数
0
( 0.0)
64
(26.7)
73
(30.4)
103
(42.9)
240
(100)
  機関数
0
( 0.0)
40
(44.0)
23
(25.3)
28
(30.8)
91
(100)

(括弧内は%。以下同様)

2. 2. インタビュー調査

アンケート調査で全体像は把握できても,各学習者が具体的にどのようなリソースにどのように接触しているのかについて知るには限界がある。そこで,アンケート調査を補完する質的調査として,より具体的,個別的な日本語との接触状況やそれに対する評価等について聞くインタビュー調査を実施した。

学習者に対するインタビューでの主な調査項目は,以下の通りである。この調査項目は,事前に各調査者に共通した項目として設定したものであるが,インタビューの展開によって内容は調査者の裁量に任された。

<学習者用インタビュー項目>

0. 身分,訪日経験,日本語学習動機

1. 現在,どこで日本語を学習しているか。勉強を始めて,何年くらいか。

・日本,日本人,日本語とのつながりはどうか(周囲の日本語環境:日本人をよく見るか等)

2. 日本語の学習は楽しいか。その理由は何か(他の外国語学習との違い等)。

日本語のイメージはどうか。

・現在受講中の日本語の授業についてどう思うか(内容,方法,教科書,頻度,時間,人数等)。

3. 授業の予習,復習,テスト勉強等,自分自身でどのように勉強しているか。

・(勉強方法として挙がってこないものについて)それをしないのはなぜか。

・授業で扱われること以外のことを勉強しているか。その方法は。

・自分で勉強していて,何かわからないことがある時はどうしているか。

・学習が大変な部分はどんなところか。

・どんな助けがあれば,その学習がたやすくなると思うか。

4. 今後,日本語学習をどう予定,あるいは計画しているか。

・日本語学習に対するやる気のもととなっているものは何か。

5. その他

表2 インタビュー調査対象学習者数と教師数の内訳 単位:人

    初等教育 中等教育 高等教育 学校教育以外 複数 合計
タイ 学習者数
0
( 0.0)
0
( 0.0)
74
(77.1)
22
(22.9)
0
( 0.0)
96
(100)
  教師数
0
( 0.0)
5
(16.7)
17
(56.7)
8
(26.7)
0
( 0.0)
30
(100)
韓国 学習者数
0
( 0.0)
0
( 0.0)
86
(83.5)
17
(16.5)
0
( 0.0)
103
(100)
  教師数
0
( 0.0)
6
(10.7)
25
(44.6)
21
(37.5)
4
( 7.1)
56
(100)
オーストラリア 学習者数
383
(98.5)
0
( 0.0)
6
( 1.5)
0
( 0.0)
0
( 0.0)
389
(100)
  教師数
41
(97.6)
1
( 2.4)
0
( 0.0)
0
( 0.0)
42
(100)
42
(100)
台湾 学習者数
0
( 0.0)
25
(22.3)
38
(33.9)
49
(43.8)
0
( 0.0)
112
(100)
  教師数
0
( 0.0)
8
(23.5)
13
(38.2)
8
(23.5)
5
(14.7)
34
(100)
マレーシア 学習者数
0
( 0.0)
0
( 0.0)
60
(45.5)
72
(54.5)
0
( 0.0)
132
(100)
  教師数
0
( 0.0)
0
( 0.0)
5
(100)
0
( 0.0)
0
( 0.0)
5
(100)

(括弧内は%。以下同様)

2. 3. 学習環境調査

アンケート調査とインタビュー調査の他に,学習者の日本語学習に影響を与える要因に関する学習環境調査を実施した。具体的には,教育制度,言語事情,外国語教育,日本語教育の教育段階別状況,日本語に関する試験,日本語の教科書,インターネット普及率,テレビ放送や出版状況,日本との外交政策や人的・経済交流,日本人・日本語教師コミュニティー等,現地の日本語教育にかかわるマクロレベルの情報について,国内外における文献収集,インターネットを通じた情報収集,行政や出版等の関係者を対象とした現地聞き取り調査を通じて実施した。

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