国立国語研究所プロジェクト「対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法」の動詞意味構造班では、以下の研究会を開きます。
日時:2020年2月17日(月)
場所: 神戸大学人文学研究科C棟5F 大会議室
- 参加申込 事前の申し込みが必要です。申込フォーム(<–クリック)よりお申し込みください。
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- 内容的には、2/6に東京で行われる研究会の内容と重なります。
スケジュール
13:00 挨拶
13:10-14:20 松本曜(国立国語研究所)状態変化表現の通言語的研究
14:40-15:20 諸隈夕子(東京大学):ケチュア語アヤクーチョ方言における状態変化表現:移動表現との比較
15:30-16:10 山本恭祐(JSPS, 国立国語研究所)イロカノ語の状態変化事象の表現
状態変化表現の通言語的研究 松本曜(国立国語研究所)
状態変化事象の言語表現は移動事象の言語表現とどのぐらい類似性があるのだろうか。また、前者には後者にみられるような類型論的な対立 (Talmy 2000, 松本 2017)が見られるのだろうか。本発表ではこの問題に関する今までの研究を概観すると同時に、状態変化表現の類型論的な性質を調査するための方法について議論する。
ケチュア語アヤクーチョ方言における状態変化表現:移動表現との比較
諸隈夕子(東京大学)
本発表では、ケチュア語アヤクーチョ方言 (Ayacucho Quechua、以下「アヤクーチョ方言」) における状態変化表現の概観を提示し、移動表現との並行性 (Talmy 2000など) を考察する。共事象が存在しない場合、アヤクーチョ方言の状態変化表現は主に動詞語根、一部は出名動詞、出形容詞動詞によって表される。共事象が存在する場合も状態変化はほぼ一貫して主節の本動詞で表され、共事象は副詞従属節によって表される。一方、アヤクーチョ方言の移動表現における経路は動詞語根 (つまり主要部) 、動詞接尾辞や名詞格接尾辞 (つまり主要部外要素) のどちらで表すかにバラエティが見られる。このように、アヤクーチョ方言では状態変化表現と移動表現に明確な平行性は見られないことを報告する。
イロカノ語の状態変化事象の表現
山本恭裕 (NINJAL/JSPS)
本発表では、イロカノ語において状態変化事象がどのように言語的に表現されるかを検討する。具体的には、状態変化要素が文のどの位置にマッピングされるか、またその実現が移動事象における経路要素と同様の位置であるかという並行性について検証する。加えてイロカノ語において状態変化表現の類型を考える上で問題となるケースについても議論する。