「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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21.腫瘍(しゅよう)

(類型B-(1))正しい意味を明確に説明する

[複合] 悪性腫瘍(あくせいしゅよう)(類型B) 脳腫瘍(のうしゅよう)(類型B)
[関連] 浸潤(しんじゅん)(類型A) 転移(てんい)(類型B)

まずこれだけは

細胞が異常に増えてかたまりになったもの

少し詳しく

 「細胞が異常に増えてかたまりになったものです。ある場所にとどまって大きくなるだけの良性の腫瘍と,治療が必要な悪性の腫瘍があります。悪性腫瘍(→29)はがんとも言います」

時間をかけてじっくりと

 「細胞が異常に増えてかたまりになったものです。悪性のものは,周囲を壊しながら広がったり浸潤 →6),離れたところに飛び移ったり転移 →6.浸潤)します。悪性の場合は治療が必要なので,まずは詳しく検査しましょう。良性ならその場所にとどまっているだけなので,放っておいても大丈夫です」

こんな誤解がある

 「腫瘍(しゅよう)」という言葉の受け止め方は,患者によって異なり,次のような過度な不安につながる誤解と,過度な楽観につながる誤解とがある。

  • 腫瘍はがんと同じものである(22.6%)。
  • 良性の腫瘍であっても,やがてはがんになる(20.5%)。
  • 良性腫瘍は絶対にがんにはならない(23.6%)。

患者の反応を見ながら,不安や楽観を解いていく工夫が必要である。



言葉遣いのポイント

 「腫瘍(しゅよう)」という言葉はよく知られている(認知率99.1%)が,言葉を知っている人のすべてが,その意味を正しく理解しているわけではない(理解率76.0%)。また,漢字の「腫」も「瘍」も,義務教育では学ばないので,なじみがなく,意味の類推がききにくい。漢字を書き,「腫」は「はれる」,「瘍」は「できもの」のことで,「腫瘍」は「はれたできもの」を意味することを伝えたい。

患者の不安の軽減を
  1. 良性か悪性かを見分けるために検査が必要なことを述べるときには,良性の場合は転移などの心配が要らないことを,あらかじめ伝えておくのが望ましい。検査を受ける前から必要以上に不安に陥らないよう,[時間をかけてじっくりと]などの表現を用いて,安心して検査を受けられるよう配慮したい。
  2. 検査の結果が良性であった場合,良性であることを伝えるだけでなく,腫瘍(しゅよう)が周囲を壊しながら広がったり(浸潤),離れたところに飛び移ったり(転移)する心配はないことを,明確に伝えるのが望ましい。検査結果が出るまで不安だった患者の気持ちを思いやり,よい検査結果をともに喜びたい。
  3. 検査の結果が悪性であった場合は,その伝え方にはより一層配慮が必要になる。「悪性腫瘍」(→29)の項を参照してほしい。
ここに注意
  1. 「がん」の告知において,「がん」と言わずに「腫瘍(しゅよう)」などの言葉で遠回しに話を始めた場合,患者は「では何という病気なんですか? がんではないのですか?」のように,質問を返してくる場合がある。そのときにはどのように答えるかをあらかじめ想定しておく必要がある。このように質問された時点で,いったん「がん」と認めて,次の説明に移った方がよい患者と,あくまであいまいさを残して,次のステップに入る方が良い患者とがいる。
  2. 脳にできる腫瘍(脳腫瘍)などの場合,良性であっても手術が必要なこともある。この場合は,説明の仕方を変える工夫が必要である。
©2008 The National Institute for Japanese Language