29.悪性腫瘍(あくせいしゅよう)
[関連] 腫瘍(しゅよう)(類型B) がん(類型B)
肉腫(にくしゅ)(類型B) 悪性(あくせい)(類型B)
まずこれだけは
細胞が異常に増えてかたまりになったもののうち,すぐに治療が必要なもの
少し詳しく
「腫瘍(しゅよう)(→21)のうち,大きくなってまわりに広がったり,違う臓器に移ったりして,命に危険が及ぶ可能性のあるもののことです」
時間をかけてじっくりと
「腫瘍(しゅよう)のうち,大きくなってまわりに広がったり,違う臓器に移ったりして,命に危険が及ぶ可能性のあるもののことです。皮膚や粘膜からできるものを『がん』,骨や筋肉,神経からできるものを『肉腫(にくしゅ)』と言います」
こんな誤解がある
- 「悪性腫瘍(しゅよう)」という言葉の誤解は,「がん」よりも危険が小さい,危険が大きい,双方がある。
- 悪性腫瘍は,がんよりも危険性が小さい(24.8%)。
- 悪性腫瘍は,がんよりも危険性が大きい(17.5%)。
- それほど多くはないが,患者によっては「悪性腫瘍」をがんではないと誤解する場合がある(4.3%)。この場合,治療を拒否したり放置したりする危険性があるので,危険をはっきり認識してもらうための言葉遣いの工夫が必要である。
言葉遣いのポイント
- 「悪性腫瘍(しゅよう)」という言葉の認知率は極めて高く(98.6%),理解率も高い(88.6%)。しかし,その差が10ポイントあるということは,十人に一人は,「悪性腫瘍」と言われても,聞いたことがあるけれど何のことか分からないということを示している。「悪性腫瘍」「悪性の腫瘍」という言葉を使って告知や病気の説明をする場合,この点への留意は必要である。
- 「悪性腫瘍」を,がんではないと誤解する人に対しては,「悪性腫瘍」はがんにほかならないことを理解してもらう必要がある。[まずこれだけは][少し詳しく]に示したような言い方では,「がん」の危険性が伝えられない患者に対しては,説明の早い段階で「がん」という言葉を使い,病気の危険性を,はっきりと伝えることが望ましい。
不安を和らげる
「悪性」という言葉には,かなり強い響きがあり,患者に大きな不安を与えるおそれがある。「悪性」という言葉をいきなり使わない配慮は,患者の不安を軽くし,医師の説明に耳を傾けさせ,治療への意欲をはぐくむ効果が期待できる場合もある。まず「腫瘍(しゅよう)」という言い方から始め,「悪性」という言葉を使わないでその内容を説き,必要に応じて,「悪性腫瘍」「がん」などと説明を加えていくことが考えられる。