「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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34.肝硬変(かんこうへん)

(類型B-(2))もう一歩踏み込んで明確に説明する

[関連] 肝炎(かんえん)(類型B) 腹水(ふくすい)(類型B) (おう)だん(類型B)
 食道静脈瘤破裂(しょくどうじょうみゃくりゅうはれつ)(類型B)

まずこれだけは

肝臓が硬くなり働きが悪くなる状態

少し詳しく

 「肝臓が硬くなり,縮んでコブだらけになって,本来の働きができなくなった状態です。ウイルスやアルコールなどによる肝炎(→[関連語])が原因で,肝臓の中の血液循環がうまくいかなくなります。長い間自覚症状がないこともありますが,肝臓の病気の中では比較的重い症状を見せます。また,肝硬変から肝がんに移行することがあります」

時間をかけてじっくりと

 「『肝硬変』の『肝』は『肝臓』,『硬変』は『硬く変わること』。『肝硬変』は『肝臓が硬くなる病気』です。肝臓の細胞が壊れることで,肝臓が硬くなり,縮んでゴツゴツとしたコブだらけになります。ウイルスやアルコールなどが原因で,肝臓の中の血液循環がうまくいかなくなります。自覚症状がないままゆっくりと進行する病気です。食欲不振,下痢などで始まり,腹水(ふくすい)(→[関連語])黄だん(→32),むくみ,出血,食道静脈瘤(りゅう)破裂(→[関連語]),意識障害などの症状が現れることがあります」

こんな誤解がある

 お酒を飲まなければ肝硬変にならないという誤解がある(19.7%)。ウイルスによる場合もあることを伝えたい。

言葉遣いのポイント
  1. 「肝硬変」という言葉の認知率は高く(97.1%),理解率も高い(87.3%)。しかし,原因や症状の進み方などを正確に理解してもらうことが必要な言葉であるので,分かりやすい説明が望まれる。
  2. 自覚症状がないため,重症であっても軽く見がちである。「肝臓は沈黙の臓器です」「肝臓は我慢強いあまり,自分がだめになっているのに気づかないのです」などのたとえを用いることも,効果的である。
ここに注意

 線維が増えて硬くなりゴツゴツとしたコブだらけになった肝臓を,正常の肝臓と対比させて図示すると分かりやすい。

関連語

肝炎(類型B)

[説 明]
 「肝臓に炎症(→16)が起こる病気です。ウイルスによるものと,アルコールによるものとがあります。ウイルスによるものは,A型,B型,C型など,感染の仕方や治療法に違いがあります。アルコールによるものはお酒の飲み過ぎで,肝臓に負担をかけ過ぎたことが原因です」
[注意点]
 ウイルスによるもののA型,B型,C型の違いについては,一般に理解が進んでおらず,説明の必要性が高い。

腹水(ふくすい)(類型B)

[説 明]
 「おなかの内臓と内臓のすきまにある液体のことで,その液体が増えてたまる症状のことも言います。この液体は本来,内臓の動きをなめらかにする働きをしているのですが,内臓の病気によってこの液体が増えすぎると,ぽっこりとおなかがふくらみます。例えば,肝硬変によって血液中に水分を保つ働きが弱くなることで,血管から水分が染み出し,腹水が増加します」

食道静脈瘤(りゅう)破裂(類型B)

[説 明]
 「食道の静脈がコブのようにふくらんで,破裂することです。これが起きると大量に血を吐き,救急治療が必要です。原因の多くが肝硬変で,肝臓で流れにくくなった血が食道の静脈にたまってコブのようになるのです」
©2008 The National Institute for Japanese Language