32.黄(おう)だん
[関連] 肝炎(かんえん)(類型B) 肝硬変(かんこうへん)(類型B) 赤血球(せっけっきゅう)(類型B)
まずこれだけは
肝臓や血液の異常でからだが黄色くなること
少し詳しく
「肝臓や血液の異常のために,皮膚や白目の部分が黄色くなることです。肝臓で作られる胆汁(たんじゅう)1が血管の中に流れ込んだり,血液が壊れたりすることによって起こります」
時間をかけてじっくりと
「肝臓や血液の異常のために,皮膚や白目の部分が黄色くなることです。肝臓の病気の場合と,血液の病気の場合があります。肝臓の場合,肝炎(→34.肝硬変[関連語])や肝硬変(→34)などの病気や,肝臓につながる管の異常で,通常は血管に入らない胆汁(たんじゅう)が,血液中に流れ込むことによって起こります。血液の場合,赤血球(→48.貧血[関連語])が一度にたくさん破壊されることによって起こります。どちらの場合も,血液の中のビリルビン2という物質が増加して,これが皮膚や粘膜にたまることで,黄色くなるのです」
こんな誤解がある
- からだが黄色くなること自体が病気であると誤解している人がいる。黄色くなるのは,血液の中での変化が現れたものであることを伝えたい。
- みかんやニンジンなどカロチンを多く含む食べ物を取りすぎたことによって皮膚が黄色くなる状態を,「黄だん」だと誤解する人がいる(9.3%)。この誤解に対しては,白目は黄色くならないので黄だんとは区別ができることや,ビリルビンが増加することが原因ではないので黄だんと区別できることなどを伝えるとよい。
言葉遣いのポイント
- ビリルビンが増加するメカニズムについて分かりやすく説明できると,病気の原因などについて,患者自身で考えることができるようになる効果がある。患者の症状に合わせて,次のような工夫を行いたい。
- 肝臓の異常の場合,胆汁(たんじゅう)が通常は入り込まない血管に入ってしまう理由を,肝臓,胆管,胆嚢(たんのう),胆汁などの関係が分かるように,図示を交えて説明したい。
- 血液の異常の場合,赤血球に寿命がくると,その中にあるヘモグロビンが分解されてビリルビンになることを,血液の仕組みの図示も交えて説明したい。
ここに注意
皮膚や白目が黄色くなる症状自体は患者にも分かりやすいが,症状が起こる仕組みは複雑で,患者に理解してもらうには,説明の仕方に工夫が必要である。[言葉遣いのポイント]に示したような工夫を行うことが望ましい。
(注)
1.胆汁 肝臓で作られ,胆嚢(たんのう)で蓄えられる。脂肪などの消化を助ける働きをしている。
2.ビリルビン 赤血球の中にあるヘモグロビンから作られる黄色い色素で,黄だんの原因になる物質。