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Nihongo tokuhon [Hawai Kyōikukai, 1936 edition]

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Volume 10

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日本語読本 巻十 [布哇教育会第3期]

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凡例
1.頁移りは、その頁の冒頭において、頁数を≪ ≫で囲んで示した。
2.行移りは原本にしたがった。
3.振り仮名は{ }で囲んで記載した。 〔例〕小豆{あずき}
4.振り仮名が付く本文中の漢字列の始まりには|を付けた。 〔例〕十五|仙{セント}
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≪p001≫
卷十 もくろく
第一 夜明け 二
第二 日本武尊 四
第三 草薙劔 九
第四 瀧 十五
第五 振子時計 二十
第六 製糖場 二十四
第七 さんばし 三十
第八 ホノルルから横濱まで 三十六
第九 春雄君へ 四十四
第十 袴垂 四十八
第十一 竹雄君へ 五十三
第十二 動物園 五十七
第十三 岩 六十五
第十四 勇ましい少女 六十九
第十五 ヌアヌパリ 七十六
第十六 短い槍と長い槍 八十一
第十七 コーヒー 九十
第十八 國歌の由來 九十五
課外
ひざくり毛 百二

≪p002≫
第一 夜明け
朝星の
またゝき消えて、
ほがらかに
明けて行く空。
山々の
すそにたなびく
うすもやは、

≪p003≫
まだ夢のうち。
教會の
尖塔{せんとう}一つ、
木立から
目ざめたように。
道行けば、
葉末のつゆが、
はら〳〵と

≪p004≫
こぼれかゝるよ。
名も知らぬ
草花なれど、
むらさきの
色なつかしく。
第二 日本武尊{やまとたけるのみこと}
くまその頭、川上たけるは、力の強いのを自まんに
して、人々をいじめ、天皇のお言いつけにもしたがい

≪p005≫
ませんでした。
「西の國で、自分より強い者はない。」と思うと、だんだ
んわがまゝな心がつのって來ました。ついに、「一つ
立派なごてんを建て、多くの兵たいに守らせていば
ってやろう。」と考えるようになりました。
いよ〳〵ごてんが出來上りましたので、或日、お祝
のさかもりをすることになりました。
其の日は朝から、手下の者はもちろん、大勢の人々
が集って來ました。其の中に、一人の美しい少女が
まじって働いていました。

≪p006≫
さかもりが始まると、少女
はたけるのそばにすわって、
おしゃくをしました。たけ
るは喜んで、しきりに飲んだ
り歌ったりしました。
だん〳〵と、夜がふけて來
ました。客は次第に歸って
行きました。手下の者は、あ
ちらこちらによいたおれて、
寢てしまいました。すっか

≪p007≫
りよったたけるも、もう寢ようとゆうのでよろ〳〵
しながら、おくの間へ行こうとしました。
此の時でした。今までやさしそうに見えていた
少女は、すっくと立上って、
「たける、待て。」
と言うが早いか、ふところにかくしていたけんを引
きぬいて、たけるの胸をつきさしました。
「あっ。」と叫んで、たけるはたおれましたが、
「お待ち下さい。これほどに強いあなたは、たゞの
人ではありますまい。一体どうゆうお方ですか。」

≪p008≫
と、苦しい息の下から尋ねました。
「われは女ではない。天皇の御子やまとおぐなだ。
なんじ、天皇の御命令にしたがわぬによって、せい
ばつに來たのだ。」
「なるほど、そうゆうお方でいらっしゃいましたか。
西の國では、私より強い者はないので、たけると申
して居りました。日本で一番お強いあなたは、こ
れから、日本武尊{やまとたけるのみこと}とおうせられますように。」
と言いおわって、たけるは息がたえました。
景行{けいこう}天皇の御子やまとおぐなの皇子{みこ}は御年わず

≪p009≫
か十六でしたが、こうして、たゞお一人で、くまそをお
ぼろぼしになりました。
これから後、やまとおぐなの皇子{みこ}を日本武尊{やまとたけるのみこと}と申
し上げることになりました。
第三 草薙劔{くさなぎのつるぎ}
くまそをほろぼして、都へお歸りになった日本武
尊{やまとたけるのみこと}は、其の後東の國の惡者をせいばつするようにと、
天皇の御命令をお受けになりました。それで尊{みこと}は、
わずかの家來を連れて、お出かけになりました。

≪p010≫
とちゅう、まず伊勢{いせ}の皇大神宮{こうだいじんぐう}におまいりになっ
て、御おばの倭姫命{やまとひめのみこと}におあいになりました。倭姫命{やまとひめのみこと}
は、尊{みこと}の勇ましくお出かけになるのをお喜びになり、
又、其の長い旅を御心配になったのでし
ょう。大切な天叢雲劒{あめのむらくものつるぎ}と、一つ
の小さい袋をお渡しに
なって、
「若しもの事があっ
たら、忘れずに此
の袋の口を

≪p011≫
おあけなさ
い。」
とおっしゃい
ました。
尊{みこと}は、東へ〳〵と進
んで、駿河{するが}の國にお着き
になりました。此
の國にいた惡者
の頭は、かねて、
尊{みこと}のお強い

≪p012≫
のを知っていましたので、たゞではとても勝てない、
だましうちにする外はないと思いました。
そこで、わざとていねいに尊{みこと}をおむかえして、いろ
いろごちそうなどをしました。そして、
「此の國の野原には、大きなしかが澤山居ります。
おなぐさみに、かりをなさっては、いかゞでござい
ますか。」
と申し上げました。尊{みこと}は、
「それは面白かろう。」
とおっしゃって、野原へお出でになりました。

≪p013≫
身のたけにもあまる枯草を分けて、おくへおくへ
とはいっていらっしゃいました。すると、かねてか
ら、此の野原をかこんで待ちかまえていた惡者ども
は、一度に、草に火をつけました。火はものすごい勢
で、もえ廣がって來ます。
「さては、だましたのか。」
と、尊{みこと}はしばらく考えていらっしゃいましたが、ふと
お心に浮かんだのは、御おば倭姫尊{やまとひめのみこと}のお言葉です。
急いで袋の口をおあけになると、中に火打石があり
ました。尊{みこと}は直ぐに、お氣ずきになりました。天叢

≪p014≫
雲劒{あめのむらくものつるぎ}をぬいて、手早くあたりの枯草をなぎはらい、火
打石で火をきって、其の草におつけになりました。
すると、ふしぎにも、今まで尊{みこと}の方へもえ廣がって來
た火は、急に方向をかえて、向こうへ向こうへと、もえ
うつって行きました。あわてたのは、惡者どもです。
火に追われて、逃げようとする間もなく、片はしから
やき殺されてしまいました。
あやうい御命をお助かりになった尊{みこと}は、生殘った
惡者どもをごせいばつになって、なお東へとお進み
になりました。

≪p015≫
此の時から、この天叢雲劒{あめのむらくものつるぎ}を草薙劒{くさなぎのつるぎ}と申し上げる
ことになりました。
第四 瀧
ヒロに近いホノムの町を、山手へ四哩ばかり登る
と、アカカ
の公園に
着く。こ
こに、布哇
第一とい

≪p016≫
われているアカカの瀧がある。
車を下りて公園に入る。しぜんの立木やしばふ
の間を、細い流がまがりくねっている。岸には、かお
りのよいジンジャや色の美しいカンナが咲きみだ
れ、小鳥もしきりにさえずっている。
幾つかの橋を渡って小道を行く。やがてだんが
いの上に出ると、前面にアカカの瀧があらわれる。
水は、四百二十フィートのだんがいをまい下りる。
幾百万すじの白糸のたばである。水はもう〳〵と
白雲のかたまりのように、次から次へと續いて落ち

≪p017≫
て行く。瀧つぼを打つ水のひゞきのものすごさ。
飛散るしぶきはあたり一面を煙らせる。
わきかえる瀧つぼの水は、だんがいの底を白くあ
わだって流れて行く。
布哇島には瀧が多い。ヒロのレンボーフォール
は、高さ百五十フィートしかないが、朝日を受けると、
虹があらわれるので名高い。
ワイピオ谷の瀧は、高さが千フィートもあろうが、
水が少いので、一本の白いつなを下げたほどにしか
見えない。

≪p018≫
布哇島の東海岸は、大部分幾百フィートのだんが
いである。汽船や飛行機で此のあたりを通ると、谷
川がこゝで瀧となって、岸をかむ白波の中に落ちこ
むのが、幾十すじとなく見られる。
マウイ島に
は、ハナのワイ
ルア瀧がある。
ククイやウル
の木のしげり
合った間に、ま

≪p019≫
るで青空の一角から白くもり上って、目の前に落ち
て來るように見える。青葉若葉のしげりと、落ちこ
む瀧のひゞきとで、夏でも暑さは消されてしまう。
カワイ島のハナペペ瀧は、高さ三百フィートもあ
ろう。美しさは、外の島の瀧におとらないが、山おく
にあるので、あまり知られていない。
オアフ島のコーラウ山中に、セイクレッドフォー
ルがある。昔、王樣がこゝで水をあびたとゆうこと
である。

≪p020≫
第五 振子時計
いたりやノぴさノ町ニタモヤガコメテ、日ガ靜カ
ニ落チテ行ク頃デシタ。
がりれおトユウ學生ガ、コ、ノ有名ナオ寺ヘオマ
イリヲシマシタ。オ寺ノ中ハ、モウウス暗クナッテ
イマシタ。チョウド今、番人ガらんぷニ火ヲツケタ
バカリノトコロデシタ。フトがりれおハ、天井カラ
ツルシテアル此ノ大キナらんぷニ、心ヲ引カレマシ
タ。

≪p021≫
「オヤ。」ト思イナガラ、がりれおハソコニ立止ッテ、ジ
ット見ツメマシタ。
らんぷハ靜カニ左右ニ動イテイマス。ソレハ、ツ
イ今シガタ、番人ガ火ヲツケルタメニ手ヲフレタカ
ラデス。がりれおガ不思議ニ思ッタノハ、其ノらん
ぷノ動キ方デシタ。左カラ右ヘ、右カラ左ヘト、行ッ
タリ來タリスルノニ、其ノ一回々々ノ時間ガ、ドウヤ
ラ同ジデアルヨウニ思ワレテナリマセン。
「何カデタメシテミル方法ハナカロウカ。」
シバラク考エテイタがりれおハ、ヤガテ自分ノミャ

≪p022≫
クヲ取ッテミマシタ。
ヤッパリソウデシタ。らんぷガ一回動クノニミ
ャクガ二ツ打ツト、次ノ動キニモミャクハ二ツ打チ
マス。驚イタコ
トニハ、らんぷノ
動キガ次第ニ小
サクナッテ、後ニ
ハカスカニユレ
ルダケデスガ、ソ
レデモ一回ノ動

≪p023≫
キニ、ヤハリミャクハ二ツ打ツトユウ工合デシタ。
がりれおハ、急イデウチヘ歸リマシタ。ソウシテ、
糸ニオモリヲツケ、ソレヲツルシテ、同ジヨウナコト
ヲ何ベンモヤッテミマシタ。
オモリヲ糸デツルシテ、ソレヲ動カスト、オモリハ
左右ヘ振リマス。其ノ糸ヲ短クスレバ振方ガ早ク、
長クスレバ振方ガオソクナリマス。シカシ、糸ノ長
サヲ一やーどナラ一やーどニキメテ置クト、オモリ
ハ重クテモ、輕クテモ、又大キク動カシテモ小サク動
カシテモ、振ル時間ハ同ジデス。

≪p024≫
十八歳ノ學生がりれおハ、此ノ事ヲ發見シタノデ
シタ。今カラ三百六十年バカリ昔ノ事デス。
ソレカラ七十年アマリ過ギテ、おらんだノほいへ
んすトユウ人ガ、今マデニナイセイカクナ時計ヲ發
明シマシタ。ソレハ、マッタクがりれおノ此ノ發見
ヲモトニシタモノデス。ツマリ、時計ノ機械ニ振子
ヲ仕組ンダモノデ、コレガ振子時計ノ始リデス。
第六 製 糖 場
始めてプウネネの製糖場に行って見ました。

≪p025≫
屋根もかべも、灰色のトタン板でおうわれた大き
な建物です。中にはいると、いろ〳〵な機械が動い
ていて、話も聞取りにくいほどです。ちょっけい二
十五フィートもありそうな大きなはずみ車が、いか
にも輕そうにまわっていました。
工場の外から中へレールがしいてあって、其の上
を貨車で運びこまれた生きびが、機械で少しずつか
き落されて、大きな鐵のローラーの間にかみこまれ
て行きます。かみつぶされて、汁をしぼり取られた
きびは、又、次のローラーへ行きます。ローラーの下

≪p026≫
は、長いみぞになっていて、茶
色のにごったきびの汁が、ま
るで川のように勢よく流れ
ています。此の汁をタンク
の中に入れてすませ、それか
ら、大きなかまの中に入れて
につめます。だん〳〵につ
めて、どろ〳〵の糖みつにな
ると、かまから流し出して、大
きなつぼのような物の中に

≪p027≫
落します。
此のつぼは、がわが二
重で、内側は細かなあみ
の目のように出來てい
ます。此のあみの目の
つぼだけが、目に見えな
いような速さで、ぐんぐ
んまわっているので、此
の中にはいって來る糖
みつは、遠心力で皆あみの目にくっつき、水分だけが

≪p028≫
外に出て、細かな砂糖つぶは内側にとまります。つ
ぼには底がないが、少しも下にこぼれません。
これで粗製糖が出來たわけです。
生きびをかき落すことから、砂糖を袋に入れて口
をぬうまで、皆機械の仕事です。人はたゞ機械をあ
つかいさえすればよいのです。
工場の中を、一まわりした後で、屋根の上の高い物
見台に登って見ました。工場の近くには、涼しそう
な木かげの間に、こざっぱりとした家が幾百となく
町のように並んでいます。何千エーカーか、はてし

≪p029≫
もなく續いている緑のきび畠
の所々に、はげたように茶色に
見えるのは、きびを切取ったあ
となのでしょう。
工場を出て少し行くと、ベー
スボールやフットボールの出
來る廣い美しい運動場があり
ました。テニスコートもあり
ました。立派な水泳プールも
ありました。

≪p030≫
私は、こんな耕地に生活している人は、まことに幸
福だと思いました。
布哇には、三十四の製糖場があって、年々百万トン
くらいの砂糖が出るそうですが、其の中、此のプウネ
ネの製糖場から出るのは九万トンくらいとゆうこ
とです。
第七 さんばし
大急ぎで、さんばしの二かいにかけ上った。秩父
丸{ちゝぶまる}は、大きな船体をぴたりと横ずけにしている。甲

≪p031≫
板には、船客や見送人が、すき間のないほどいる。幾
十本のレイを首にかけて、耳までうずまっている人
も澤山いる。皆日本へ行く人たちだ。上の甲板か
ら、のんきそうにさんばしを眺めているのは、アメリ
カから乘って來た船客だろう。
間もなく、うなるような汽笛が鳴りひゞいた。甲
板の群集が急に動き出した。船からさんばしへか
け渡された橋の上に、多くの人がはき出されて來る。
たちまちさんばしは、人で一ぱいになった。皆、窓の
近くへ行こうとあせっている。

≪p032≫
僕は、姉と二人で窓ぎわに立って、船の上の兄を見
守っていた。兄はしきりに僕たちを探している樣
子だが、どうしても見つからないらしい。僕は、
「兄さん、こゝですよ。」
と叫んだ。わずか三十フィートたらずのきょりだ
が、聞えないらしい。一そう聲を張上げて、
「兄さん、兄さん。」
とくり返した。今度は聞えた。兄は僕たちの方へ
向いて、にこ〳〵しながら手を振った。僕も手を振
った。姉も手を振った。

≪p033≫
甲板には、幾百人の船客が、ずらりと並んでいる。
レイを投げる人、テープを投げる人、大聲に何か言っ
ている人。
見る間に、赤・青・黄・白と、いろ〳〵なテープが入りみ
だれて、船からさんばしへ張渡された。
大きな秩父丸{ちゝぶまる}は、さんばしにそって、靜かに動き始
める。
「さようなら。」
「お大事に。」
そんな聲が、あちらにもこちらにも聞える。船はだ

≪p034≫
んだん遠ざかって行く。テープはのばしきってし
まった。船は速力をまし
て來る。テープは次々に
切れて行く。船べりにた
れ下ったテープを引きな
がら、秩父丸{ちゝぶまる}はさんばしを
はなれてしまった。人々
は、たがいにハンケチやぼ
うしを高く振っている。
もう船の人の顔は見分

≪p035≫
けがつかない。ハンケチ
だけが白く動いている。
見送りの人々は、ぼつぼ
つ歸って行く。
僕たちは、まだ船を目あ
てに、いつまでもハンケチ
を振續けた。
「さあ、歸りましょう。」
と言う聲に、後を振向くと、
そこには、父と母が立っていた。

≪p036≫
ふと下を見ると、さっきまで秩父丸{ちゝぶまる}のあった場所
はすっかり海になって、よごれた油が一面に浮いて
いた。僕たちは、靜かにかいだんを下りて外へ出た。
アロハタワーをあおぐと、ちょうど五時半であった。
第八 ホノルルから横濱まで
ホノルルを出帆したのは、水曜日の午前十時でし
た。
沖から眺めたホノルルは、實に美しい町でした。
白波にふちどられたワイキキの濱べに、ピンク色に

≪p037≫
立っているのは、ローヤルハワイアンホテルです。
アロハタワーは、一目で分かりました。其のあたり
は、いかにも市街らしく、コンクリートの家が立並ん
でいますが、町の大部分は、木が多いので、林の中に、所
所家があるようにしか見えませんでした。
ダイヤモンドヘッドははっきり見えましたが、ヌ
アヌパリと思われるあたりは雲におうわれていま
した。
ホノルルも見えず、オアフ島も分からなくなって、
少し心細く思っている夕方、左の方にカワイ島が黒

≪p038≫
く見えました。強いあか
りが一つ見えたのは、燈台
でした。
次の朝、甲板に上って四
方を眺めましたが、たゞ青
い水と青い空ばかりで、島
かげ一つ見えません。時
時白い鳥が、水面をかすめ
て飛んでいました。
「あの鳥は、日が暮れたら

≪p039≫
どこで寢るのでしょう。」
と言ったら、私の隣に立っ
ていた人が、
「此のへんからあまりは
なれていない所に、無人
島があるのです。そこ
まで歸って寢るのです。」
と教えてくれました。
夕方、夕燒を見ました。
あんなに美しい夕燒は、今

≪p040≫
まで見たことがありません。
三日目になりました。やはり水と空ばかりです。
晝過ぎ頃、はるか向こうにまっ黒な雲が見えました。
しばらくして、船が其の下にはいると、大つぶの雨が
どっと降って來て、甲板を洗い流しました。夜にな
って、空はすっかり晴れました。月が美しい顔を見
せました。
四日目の朝、今日は土曜日なのに、日曜日だと聞い
て驚きました。一日飛んだのです。日本から來る
時は、これとはんたいに、同じ日が二度あるそうです。

≪p041≫
甲板で誰が
「あ、大きな魚が。」
と叫ぶ者がありました。見ると大きな魚が幾百と
なく並んで、水の上におどり出ては、又水にくゞりな
がら、船ときょうそうするように泳いでいました。
後で聞くと、あれは魚でなくているかだそうです。
五日目の夜、九時頃の事でした。船室でうつらう
つらしていると、
「船が見える。」
「龍田丸{たつたまる}が見える。」

≪p042≫
と言う聲が聞えました。船室にいた人たちは、皆、大
急ぎで甲板に出ました。
月に照らされた、青黒い海の上に、大きな船が見え
ました。へさきからともまで、全部あかりがついて
いて、小さな夜の町のように思われました。大きな
聲で、
「おうい。」
と叫びながら、手を高く上げて振りました。あちら
でもきっと、皆甲板に立って、こちらを眺めていたで
しょう。しばらく見ているうちに、遠くはなれてし

≪p043≫
まいました。
八日目、今日はいよ〳〵横濱に着くとゆうので、う
す暗いうちに目がさめました。八時頃に隣のへや
の人が、
「富士山が見えるそうです。甲板へ上ってみまし
ょう。」
と知らせてくれました。行ってみると、なるほど、雲
の上の青空に、雪に包まれた富士山が氣高く立って
いました。あれが山だろうかと思われるほど美し
い姿でした。

≪p044≫
長い航海を無事におえて、横濱に上陸したのは、午
後五時でした。
第九 春雄君へ
昨日、ふとキング街で、君のおじい樣におあいしま
した。其の時、君が自動車で大けがをせられたこ
とを聞いて、ほんとうに驚きました。其の後いか
がですか。長い間病院にはいっていられるそう
ですが、ずい分苦しいことでしょう。御兩親やお
姉樣も、さぞ心配していらっしゃることと思いま

≪p045≫
す。お体は、すっかり元通りになるのでしょうか。
おじい樣にお尋ねしましたが、くわしい樣子は、ご
ぞんじないようでした。早く知りたいのですが、
手の方のきずがひどいそうですから、とてもまだ
手紙は書けないのでしょう。しかし、小さい時か
ら、あんなに元氣だった君のことだから、今頃は、病
院でたいくつしているのではありませんか。こ
うしておみまいの手紙を書いていると、急におあ
いしたくなりました。
お別れしてから、もう四年になります。君の元い

≪p046≫
た家の前を通るたびに、小さかった時の事を思い
出します。マーブル遊びからけんかになり、後で、
マンゴを持って仲直りに行った事は、今でもはっ
きりおぼえています。あの頃は、朝から晩まで君
と一しょに暮していたのですね。
ぜひ一度あって、おけがの後の樣子を見たいし、思
い出話もしたいと思います。すっかりよくなら
れたら、久し振りで、こちらへ遊びに來ませんか。
おじい樣も、「まごは、あちらへ行ったきり、まだ一度
も歸って來ないが、あなたくらいには、大きくなっ

≪p047≫
ていることでしょう。」と、なつかしそうにおっしゃ
っていました。
妹も、君のけがの話を聞いて、「兄さんのお友だち、ほ
んとうにお氣の毒ね。」と言いました。兩親も、「早く
元のお体になって、學校へ出られるようになると
いゝ。」と申して居ります。
どうぞ、十分ようじょうして、早くよくなって下さ
い。今日はこれで失禮します。
年 月 日 竹 雄
春 雄 君

≪p048≫
第十 袴{はかま} 垂{だれ}
昔、袴垂{はかまだれ}とゆうぬす人の頭があった。
追々寒くなって來た秋の末の或夜の事である。
着物をはぎ取ろうと、町はずれに出て、人の通るのを
待ちかまえていた。すると、立派なさむらいが、暖か
そうな着物を着て、笛を吹きながらやって來る。
「よいものが來たぞ。」
と、直ぐさま飛びかゝろうと思ったが、あまり落着い
ているのにおじけずいて、どうも近寄れない。しば

≪p049≫
らくの間、そっと後からついて行った。さむらいは、
少しも氣にかけている樣子がない。
すみきった笛の音は、明かるい月夜の枯野にひゞ
いて行く。袴垂{はかまだれ}は思い切って、わざと足音を立てて
近寄って行った。
さむらいは、笛を吹きながら靜かに振返ったが、又
平氣で歩いて行く。
袴垂{はかまだれ}は、ます〳〵氣おくれがして、飛びかゝりも出
來ず、それでも、刀のつかをにぎりしめて、元の通りつ
いて行く。

≪p050≫
しばらく行った頃、いよ〳〵決心して、
「えいっ。」
と切りかゝった。すると、今度は笛を吹止めて、振返
りながら、
「誰だっ。」
とどなった。
其のするどい
一聲に、袴垂{はかまだれ}は
ちじみ上って、
思わず、べった

≪p051≫
り道の上に坐ってしまった。さむらいはふたゝび
聲をかけた。
「誰だ。」
袴垂{はかまだれ}はがた〳〵ふるえながら、
「ぬす人の大將|袴垂{はかまだれ}。」
と答えた。さむらいは、
「うん、聞いたことのあるような名だ。おれについ
て來い。」
と言ったまゝ、又ゆっくり笛を吹いて行く。
袴垂{はかまだれ}は逃げる勇氣もなく、恐る〳〵後からついて

≪p052≫
行くと、とう〳〵さむらいの家に來た。
「一体誰だろう。」と思ったら、其の頃、日本中に誰知ら
ぬ者もない、藤原保昌{ふじわらのやすまさ}とゆう大將であった。
保昌{やすまさ}は、家にはいり、綿入を一枚取出して來て、
「さあ、これを持って行け。惡い事をして、人を苦し
めるものではないぞ。」
と、やさしく言聞かせた。
其の後|袴垂{はかまだれ}、は此の時の事を、
「これほど恐しかった事はなかった。」
と、人に話したとゆうことである。

≪p053≫
第十一 竹雄君へ
先日は、御親切なお手紙を下さいまして、まことに
ありがとうございました。
思いがけないけがをして、ちょうど一ケ月半、耕地
病院に入院していました。さいわい、きずはほと
んどよくなったので、一週間前に退院して、久し振
りに、なつかしい家に歸って來ました。まだ右手
は十分に使うことが出來ません。學校も長く休
みましたが、明日から行こうと思っています。字

≪p054≫
を書くのに困るだろうと、家に歸ってからは、毎日、
不自由な手にえんぴつを持って、一心にれんしゅ
うしています。
入院中、父母や姉に親切にしてもらったことはも
ちろんですが、時々學校の先生やお友だちがみま
いに來て下さったのは、何よりもうれしいことで
した。母が、寢ている僕の顔をしばらく見つめて
いた後、ぽろ〳〵と涙をこぼして、「若しもお前が一
生がいのかたわになったら、どうしたらよかろう。」
と言われた時には、つくずく自分のふちゅういだ

≪p055≫
ったことがこうかいされて、自動車とゆうものが、
もう見るのもいやになりました。だが、此のくら
いのけがですんだのは、まだ仕合わせの方だと思
っています。
「すっかり元通りになるには、まだ一ケ月くらいは
かゝるだろうが、かたわになるような心配は決し
てない。」と、おいしゃ樣が言われます。どうぞ御安
心下さい。
君の言われるように、お別れしてからもう四年に
なります。こきょうのホノルルの事は、よくおぼ

≪p056≫
えています。住んでいた家の樣子や庭の樣子も、
はっきり頭に浮かんで來ます。僕が植えておい
た家の横のペアの木も、今は大分大きくなったこ
とでしょう。かわいがってもらった祖父母も住
んでいることですから、いつか一度、ぜひホノルル
へ歸ってみたいと思っています。「手がすっかり
よくなったら、今年の夏休には、おじいさんの所へ
行って、ゆっくり遊んで來るがいゝ。」と、父がじょう
だん半分のように言いますが、若しほんとうに行
かれたら、どんなにうれしいことでしょう。

≪p057≫
手が思うように動かないので、これだけ書いたら
すっかりつかれてしまいました。でも此のくら
い書けるようになったのです。喜んで下さい。
又近いうちにおたよりします。御兩親や妹さん
によろしく言って下さい。さようなら。
年 月 日 春 雄
竹 雄 君
第十二 動 物 園
カワイ島から來たいとこと一しょに、ワイキキの

≪p058≫
公園へ行った。
今日は日曜日なので、動物園のまわりには、大勢の
人が集っていた。ものすご
いうなり聲が聞えるので、行
ってみると、しゝが、おりの中
に立ってほえているのだっ
た。長いたてがみ、するどい
目、どっしりと落着いた樣子
は、さすがにけものの王だ。
面白いのは猿である。種

≪p059≫
類の違ったいろ〳〵な猿が、別々の金あみのかこい
にはいっている。こちらの灰色の猿は、何か氣にく
わぬ事でもあるようなむっつりとした顔をして、へ
やのすみに坐りこんでいる。其の隣の、黒いひょう
きんな顔をした小さな猿は、物ほしそうに金あみの
目から手を出している。次の廣いかこいの中には、
猿が、澤山きゃっきゃっとさわぎまわっている。一
匹の猿がぶらんこに飛びついて、のんきに、ぶらりぶ
らりとゆっていると、外の猿が、いきなり岩の上から
飛びついて來る。すると、初の猿はぶらんこをすて

≪p060≫
て、ひょいと金あみをつたって、中に立っている木に
かけ上った。そして、枝を
しっかりにぎって、しきり
にゆり動かす。誰かが、セ
メントの上に坐っている
猿に、らっかせいを一つ投
げてやった。張渡してあ
る太いつなの上に、長く腹
ばいになっていたのが、ぴ
ょんと飛下りて、すばやく

≪p061≫
拾って逃げて行ってしまった。おにごっこでもす
るように、逃げたり、追っかけ
たりしているのもあり、おと
なしく坐って、外の猿に、のみ
を取ってもらってい
るのもある。
猿のかこいの隣に、
ペンギンが一羽さび

≪p062≫
しそうに立っていたが、ふと何か思い出したように、
ひれのような羽を打振りながら、えっちらおっちら
歩いて、水ための方へ行く。後から見ると、鳥だかけ
ものだか分からない。ペンギンは、南極あたりの、雪
や氷の中に群をなして住んでいるそうだ。泳ぐこ
とは上手だが、少しも飛ぶことは出來ない。遠い南
のはてからこんな所へひとり來ているのは、どんな
にさびしいことだろう。
しばふに坐って、らっかせいの皮をむいていると、
まっ白な鳩が、幾十羽も集って來る。肩にも手にも、

≪p063≫
ひざの上にも、時には頭の上にも止まる。あまりか
わいゝので、一羽つかまえようとしたら、みんな一度
にばさ〳〵と飛上ってしまった。
金あみでかこった廣い鳥の小屋には、樣々な珍し
い鳥が澤山集っている。
三フィートもあるような、細長い赤い一本足で、体
をさゝえて立っている白い鳥がいた。「片足はどこ
にあるのだろう。」と、よく〳〵見ると、短い尾の間にた
たみこんでいる。そして、長い首をくるりと後にま
げて、羽の中に頭をつっこんでいるので、どっちが頭

≪p064≫
か尾か、けんとうがつ
かない。いつまでた
っても、身動きもしな
い。まるでセルロイ
ドのおもちゃのよう
だ。
ホーンビルとゆう
鳥がいる。すばらし
く大きな、角のような
くちばしだ。あんなくちばしでつゝかれたら、僕ら

≪p065≫
の頭くらい直ぐつゝきわられてしまうだろう。
一番きれいなのはくじゃくだ。あの長い美しい
羽を、自まんらしく、おうぎのように廣げて見せる。
木の枝をもれる日の光に、青い玉のようなもようの
ある羽が、きら〳〵と光るのは實に美しい。
日本のつるもいる。白い羽、細長い首と足、すらり
とした体のかっこう、すべてがいかにも上品だ。
第十三 岩
横たわるもの、

≪p066≫
つっ立つもの、
きりたつもの、
すべてが岩だ。
黒々と、ごつ〳〵と、
ものすごい岩の群だ。
はてしなき大洋から
しのび寄る波のうねり、
其の靜かな底力よ、
一たび此の岩につきあたると、

≪p067≫
ばくはつの音ものすごく、
しぶきを大空に吹上げる。
叫ぶもの、
わめくもの、
怒るもの、
すべての岩が、恐しく
こうふんするのが此の時だ。
だが、たちまちそこに、

≪p068≫
降りそゝぐ海水をおしのけて、
元の姿雄々しく、
岩とゆう岩が
海面にふるい立つ。
それから十秒、
波が又しのび寄る。
岩の群がこうふんする。
幾千年の昔から、
幾萬年の未來{みらい}まで、

≪p069≫
永遠{えいえん}のリズムが、
こうしてくり返えされるのだ。
第十四 勇ましい少女
イギリスの東海岸に、ロングストーンとゆう小さ
い島があります。其の一角にそびえている燈台に、
年取った燈台守が、妻と娘と三人でさびしく暮して
居りました。
或、あらしの夜の事でした。一そうの船がしけに
出あって、此の島の近くにある岩に乘上げてしまい

≪p070≫
ました。恐しいひゞきと共に、船は二つにくだけて、
半分は見る〳〵大波にのまれました。
岩の上の船体には、十人ばかりの船員がひしとす
がりついて、聲をかぎりに助けを呼んでいました。
けれども、誰一人助けに來てくれる者はありません
でした。
夜明け近くなって、東が少し白みかけた頃でした。
ふと目をさました娘は、波の音にまじって、悲しい叫
び聲が聞えて來るような氣がしました。
「お父さん、お父さん。なんぱ船のようです。早く

≪p071≫
起きて下さい。」
娘のはげしい聲に、
父も驚いてはね起き
ました。そうして二
人は急いで外に出ま
した。吹きまくる大
あらしは、燈台までも
たおすかと思われる
ほどの勢です。
うすやみを通して、

≪p072≫
沖の岩の角に乘上げている船体が、かすかに目に入
りました。助けを呼ぶ聲も、はっきり聞取れます。
二人は驚きました。
「お父さん、助けに行きましょう。ボートを出しま
しょう。」
父は答えもせずに、沖を見つめています。
「どうしたのです、お父さん。早く行きましょう。」
父は娘を振返って、
「あの大波をごらん。行かれるものか。あゝ、かわ
いそうなことだ。」

≪p073≫
「行かれます。お父さん。行かれますとも。いく
ら大波だからといって、私は人の死ぬのを見て、じ
っとしてはいられません。さあ、行きましょう。」
いつもはやさしい少女の口から、どうしてこんな勇
ましい言葉が出たのでしょう。
「よし、行こう。」
父は強くそう言って、岩山から濱へと、一さんにかけ
下りました。娘も後についてかけ下りました。吹
上げられる黒砂が、二人の顔にあたります。
二人はボートを押出しました。ボートが波に浮

≪p074≫
かぶと、二人はいきなり飛乘りました。大波にゆり
上げられ、ゆり下げられて、ボートは今にも岸へ打上
げられそうです。二人は、かいを取って一心にこぎ
ました。へさきにくだける波のしぶきが、雨のよう
に降りかゝります。ボートはついに岩の近くまで
來ました。
船員たちは、喜びの聲を上げました。
しかし、打寄せる大波で、ボートは岩にたゝきつけ
られそうです。
夜はすっかり明けました。空は曇っています。

≪p075≫
父は岩に飛びうつって、つかれはてて死人のように
なっている船員を、一人々々ボートに助け入れまし
た。此の間、一人ボートに居殘って、岩にもあてず、波
にも流されず、上手にボートを動かしていた少女の
働き振りは、とても人間わざとは思われませんでし
た。
船員は、全部ボートにうつされました。二人は、又、
死物ぐるいにボートをこぎました。
二日たつと、天氣もよくなり、波も靜まりました。
親子三人の親切なかんごのおかげで、すっかり元

≪p076≫
氣になった船員たちは、涙を流して親子をおがみま
した。
此の事があってから、グレース=ダーリングとゆう
少女の名は、國の外までも知れ渡りました。其の勇
ましい行は、歌に歌われ、其のしょうぞう畫は、いたる
所の店先にかざられました。
第十五 ヌアヌパリ
三十哩の速力で、自動車はヌアヌ街を上って行く。
かなりの坂である。上るにつれて涼しくなる。左

≪p077≫
に廣い墓地が見えた。此のあたりから、道の兩側は
ほとんど木のしげりで、其のおくに、立派な住宅がち
らほら見える。
住宅もつきて、大きな立木の間を通る頃にはすっ
かり涼しくなって、汗ばんだ体が冷々として來る。
立木をぬけると、間もなく廣場に車が止まった。
こゝが有名なヌアヌパリだ。
百何十年の昔、カメハメハ大王の大軍が、オアフ王
カラニクプレの軍と戰って、ついにこれを全めつさ
せた所である。

≪p078≫
右も左も、けずったようなけわしい岩山である。
どんなけものでも、こゝをよじ登ることは出來まい。
廣場の前には、高さ三フィートくらいのセメント
の丈夫なかきがある。かきの向こうはのぞいただ
けで、目のくらみそうなだんがいである。下は、山の
すそが遠く海までのびている。島のように小山が
見えるのは實は陸地續
きのみさきである。
廣場から右におれて、
裏オアフに下る急な坂

≪p079≫
道がある。此の下り口
のわずかな部分だけに、
不思議に強い風が吹く。
ためしに、かきの所から、
山へ向けて道を横切っ
てみた。なるほどはげ
しい風だ。立止まろう
とするが、どうしても吹
飛ばされて、走るより外
仕方がない。そうして、

≪p080≫
坂道をわずか三四十フィート下ると、もうほとんど
風はない。
車に乗って、坂道を下った。右はかぶさるような
岩山、左は幾百フィートの底知れぬ谷、其の間をまが
りくねったセメントの道が通じている。
自動車は、まがりまがって、最も急なまがり角にさ
しかゝった。こゝは、多くの人がヘヤピンと呼んで
いるきけんな場所である。下りきって、今來た方を
振りあおいだ。山の中腹を、白いセメントのかきが、
うね〳〵と下まで續いている。頂は、いつか雲にお

≪p081≫
うわれていた。
分かれ道を右にとった。ワイマナロを過ぎて、右
に山、左に海を眺めながら自動車はハナウマへと走
り續けた。
第十六 短い槍と長い槍

織田信長{おだのぶなが}の家來に上島主水{うえじまもんど}とゆう者がいた。槍
の名人とゆうので自まんしていた。
或日、信長{のぶなが}が家來を集めてさかもりをしていた時、

≪p082≫
槍の話が出た。信長{のぶなが}は主水{もんど}に尋ねた。
「一体、槍は長い方がよいか、それとも短い方がよい
か。」
主水{もんど}は答えた。
「短いのにかぎります。長いと振りまわしが不自
由で、其の上、突く力が弱くていけませぬ。」
信長{のぶなが}はだまっていた。信長{のぶなが}は長い槍がすきであ
る。ちょうど其の時、木下藤吉郎{きのしたどうきちろう}が來た。信長{のぶなが}は、藤
吉郎{とうきちろう}を見かけると、
「お前はどう思う。槍は長いのがよいか、短いのが

≪p083≫
よいか。」
藤吉郎{とうきちろう}は、
「それは私にお尋ねなくと
も、そこに槍の名人|上島{うえじま}が
居ります。あれにお尋ね
なさいませ。」
「まあ、よい。お前の考を聞
こう。」
「さようでございますか。私の考では、長い方がよ
いかとぞんじます。」

≪p084≫
主水{もんど}は、此の言葉を聞いて、かっとなった。
「木下氏{きのしたうじ}。長い槍がよいと言われるからには、槍の
ことはよくごぞんじであろう。槍をもって仕え
る此の私は、たゞ今、短いのにかぎると申し上げた
ところ。さあ、槍について、くわしくお考をうけた
まわりたい。」
「別に槍のことを深く知って申したのではない。
たゞ、とのがお前の考を言えとおうせられたから、
私の思う所を申し上げたのです。」
「して、長いのがよいと言われるわけは。」

≪p085≫
「さよう。刀は短いのより長い方がよろしい。槍
も同じことと思います。」
「はゝゝ、それでは、まるっきり槍のことがお分かり
になって居らぬ。」
「あなたは短いのにかぎると言われるが、日本中の
人が、皆そう考えるわけではありますまい。」
信長{のぶなが}は、二人の議ろんを聞いて、
「どちらも口だけでは分からぬ。どうだ、二人に五
十人ずつ家來を貸そう。三日の間けいこをして、
槍の仕合をさせてみては。」

≪p086≫
主水{もんど}は大喜びで引受けた。藤吉郎{とうきちろう}もお受けした。

翌日から上島主水{うえじまもんど}は一生けんめいであった。
「槍は突くだけの物ではない。敵は長い槍だ。長
い槍をはね上げて、すばやく手もとへ突入るのだ。」
五十人の家來に一人々々、「槍はこう突くものだ。」「こ
う拂うものだ。」と教えた。だが、二日や三日で、槍の使
い方がのみこめるものではない。はげしいけいこ
に、家來は、みんなへと〳〵になってしまった。
藤吉郎{とうきちろう}のけいこは、まるで違っていた。

≪p087≫
「五十人は三組になれ。中の組が十八人、左右の組
が十六人ずつ。槍のほ先を並べて一度に進むの
だ。わしがおうぎで合圖をする。先ず中の組は
正面から進め。次に合圖をする。左右の組は横
から進め。」
家來は組になって、前へ、後へ、左へ、右へ、合圖通りに
動いた。三日ほどたつと、三つの組は、糸で引かれる
ように、藤吉郎{とうきちろう}の思いのまゝに動くようになった。

いよ〳〵仕合の日が來た。信長{のぶなが}は正面のさじき

≪p088≫
に坐った。其の兩方に、大勢
の家來が並んで見物する。
やがて木下藤吉郎{きのしたとうきちろう}は、五十
人の家來に、めい〳〵十八尺{しゃく}
の竹槍を持たせ、たいを組ん
で進み出た。
上島主水{うえじまもんど}の方の家來は、八
尺{しゃく}の竹槍を持って、思い〳〵
に出て來た。
合圖のたいこが鳴った。

≪p089≫
藤吉郎{とうきちろう}は、おうぎを上げて、
「かゝれ。」
と命じた。木下{きのした}軍の中の組は、長い槍のほ先を並べ
て、一度に突進んだ。
上島{うえじま}軍は八|尺{しゃく}の槍で、敵の槍先をはね上げ、拂いの
けようとあせった。しかし、長い槍先をひたとそろ
えて突きかゝられては、はね上げるすき間も何もあ
ったものではない。たじ〳〵と引きめになった所
を、藤吉郎{とうきちろう}は、又おうぎを上げて左右の組に合圖した。
左右の組は、一度に横から突いて出た。上島{うえじま}軍は、

≪p090≫
もう引くより外はなかった。主水{もんど}は、
「それ、そこを突け。」「それ、そこを拂え。」
と大聲に叫ぶ。しかし、五十人はばら〳〵である。
「進め、進め。」
はげしい藤吉郎{とうきちろう}のごう令に、一せいに進む木下{きのした}軍に
追いつめられて、上島{うえじま}軍はさん〴〵に破れた。
合圖のたいこが鳴りひゞいた。
木下{きのした}軍は、勝どきをあげてしず〳〵と引上げた。
第十七 コーヒー

≪p091≫
コナでコーヒー畠のあるのは、主に、南の方ホオケ
ナから北の方ホノコハウまで、およそ二十五哩の間
で、マウナロア山とフアラライ山の山腹である。
コーヒーの木が始めてコナに植えられたのは、千
八百二十九年である。當時
の産出は、まことにわずかな
ものであったが、今では、年々
一千万ポンドも取れ、畠は五
千エーカーもあるとゆうこ
とである。此の畠は、ほとん

≪p092≫
ど日本人の手で作られている。
コーヒーの木は、マンゴの木や
ウルの木のような大木にはなら
ないが、ほうって置けば二十
フィート以上にはなる。け
れども、十五六フィートより
高くなると、下で切って新芽
を出させる。そうすると、實
も多くなるし、それをもぎ取
るにも便利である。

≪p093≫
一月から四月頃ま
での間に、白い小さな
花が咲く。間もなく
緑の小さい實がなっ
て、八月頃から赤くじ
ゆくし始める。これ
からが、いよ〳〵コナ
の忙しい時である。
女も、子供も、年寄も、一
家そう出でコーヒー

≪p094≫
もぎをする。もぎおくれると、うれた實は皆落ちて
しまって、それを拾うのに、たいへん手數がかゝるか
らである。
緑の葉の間に、赤い實がすゞなりになったのは、美
しいものだ。其のすゞなりの小枝を引寄せて、すば
やくもぎ取る。もいだ實は、胸の下にさげているか
ごの中へしぜんに落ちこむ。其のなれた手つきは
見ていても面白い。
もぎ取った實は、機械にかけて赤い皮をはぐ。す
ると、白いうすい皮をかぶった豆のような物になる。

≪p095≫
それをよく乾かして、さらに別の機械にかけて皮を
はぐ。次に、オーブンに入れて、こげ茶色にいると、こ
うばしいかおりが出る。ふだん使うコーヒーは、こ
れを粉にしたものである。
第十八 國歌の由來
千八百十二年に、アメリカはイギリスと戰爭をし
ました。
イギリスは、澤山の軍かんを送って、アメリカを攻
めました。けれども、アメリカの兵士は勇ましく戰

≪p096≫
って、よくこれ
をふせぎまし
た。
千八百十四
年九月十三日、
イギリスの軍
かんは、バルチ
モアを攻取ろ
うとして、其の
近くのマックヘンリー砲台を目がけて、さかんに大

≪p097≫
砲を打ちかけました。
其の二三日前の事です。兵士でない二人のアメ
リカ人が、とらえられて、イギリスの軍かんに連れて
行かれました。すると、フランシス=スコット=キー
とゆうべんごしは、「そんな不法なことはない。どう
しても、あの二人を連歸らなければならない。」と言っ
て、たゞ一人、イギリスの軍かんへ押しかけて行きま
した。
イギリスのしれい官は、
「連れて歸るのはよいが、今はきけんだから、戰爭が

≪p098≫
すむまで、あの船に待っているがよい。」
と言って、少しはなれた所にあるイギリスの船へ、三
人を乗りうつらせました。
船の甲板からは、マックヘンリーの砲台がよく見
えます。三人は、またゝきもせず、砲台を見つめてい
ました。
敵味方の打出す大砲のたまは、ものすごくばくれ
つします。
砲台の星條旗は、煙のうすれる度に、勇ましくひる
がえって見えます。

≪p099≫
「あの旗が立っている間は大丈夫だ。」
心配の中にも、三人はそれを見て心強く思っていま
した。
やがて、日が暮れかゝりました。星條旗は、もやに
包まれて見えなくなってしまいました。
夜になっても、戰爭は止みません。
三人は、まんじりともせず、砲台の方ばかり見つめ
ていました。
夜が明けました。
あたりを包んでいたきりがはれて、先ず目につい

≪p100≫
たのは、砲台の上にひるがえっ
ている星條旗でした。
「あ、見える、見える。星條旗は
まだ立っている。」
あまりのうれし
さに、三人はだき合って泣きました。
鏡のような川の面には、今出た
ばかりの日の光を受けながら、
朝風にひらめく星條旗が、
あざやかにうつって

≪p101≫
います。其のとうとさ。
其の勇ましさ。
キーは、急い
でポケット
から、古い手紙を取出しました。
そうして、其の紙の裏に、今の
とうとい氣持を歌にして書きつけました。
これが私たちの歌っている國歌です。

≪p102≫
課外 ひざくり毛
一 小田原{をだはら}のやど
彌次郎{やじらう}と北八は、江戸{えど}を立って、東海道を歩いたり、
かごに乗ったり、馬に乗ったりしながら、二日目の夕
暮に、小田原{をだはら}に着きました。
やどを取ってわらぢをぬぎ、足を洗ってざしきへ
通りました。間もなく女中が來て、ふろのあんない
をしました。
「北八、お前先にはいれ。」

≪p103≫
と、彌次郎{やじろう}が言ひました。よし來たとばかり、北八が
手ぬぐひを下げてふろ場へ行ってみると、今まで見
たこともないめうなふろです。湯の上にまるい板
が浮いてゐます。そ
れをふみ沈めてはい
るのですが、北八は、ふ
ただらうと思って取
りのけました。さう
して、ふろへ片足を入
れて、びっくりしました。底は鐵のかまです。

≪p104≫
「あつゝゝゝ。これはとんでもないふろだ。」
しかし、聞くのもめんだうだと思って、あたりを見ま
はすと、庭にげたが一そく置いてあります。これさ
いはひと、其のげたをはいてふろにはいりました。
北八は、氣持よささうに歌を歌ひ出しました。
だが、長くつかってゐると、底の方があつくなって
來ました。立ったり、坐ったり、げたばきのまゝで、が
たがたふんでゐますと、とつぜん底がぬけて、湯はす
っかり流れ出てしまひました。
「やあ、助け船。たいへん、たいへん。」

≪p105≫
此の聲を聞きつけて、彌次郎{やじらう}もやどの主人も、飛ん
で出て來ました。
「どうした、どうした。」
「どうなさいました。」
「いや、命だけは無事だが、ふろの底がぬけて。」
主人はびっくりして、
「どうして又底がぬけました。」
「ついげたでがた〳〵やったので。」
「いや、此の人はとんでもないお方だ。げたばきで
ふろへはいる人があるものですか。」

≪p106≫
二 大井川
二人は、駿河{するが}の大井川まで來ました。今日は水が
多いので、れんだいでなくては越せないといふこと
です。
彌次郎{やじらう}は人夫に聞きました。
「一体、幾らで渡す。」
「お二人で八百もん下さい。」
「高い〳〵。もうお前たちのせわにならぬ。」
と、足早に通り過ぎて、彌次郎{やじらう}は北八に言ひました。
「お前のわきざしを貸してくれ。」

≪p107≫
「何にするのだ。」
「かうして武士{ぶし}になるのだ。」
北八のわきざしを取ってさし、
自分のわきざしは、さや袋をず
らして長い刀のやうに見せか
けました。
「どうだ、これで大小{だいせう}をさした
立派な武士{ぶし}に見えるだらう。
お前はお供だ。ついて來い。」
彌次郎{やじらう}は人夫の親方の所へ行って、武士{ぶし}らしい言

≪p108≫
葉で言ひました。
「身どもは主用で通る者だ。川越し人夫を頼むぞ。」
「かしこまりました。御同勢はお幾人で。」
「なに同勢か。武士{ぶし}が十二人、槍持、ざうり取、其の外
つがふ三十人。」
「して其の方々はどこにおいででございます。」
「いや、江戸{えど}を出立する時は三十人であったが、道中
で追々病氣をいたし、とまりとまりに殘し置いた。
それで、今同勢といふのは、上下合はせてたった二
人だ。」

≪p109≫
「お二人なら、れんだいで四百八十もんでございま
す。」
「いや、それは高い。少し負けろ。」
親方は急に言葉をかへました。
「高けりゃ止めてさっさと行くがいゝ。」
「これ、武士{ぶし}に向かって何たる無禮な言葉だ。」
「お前、それで武士{ぶし}か。其の刀を見るがいゝ。」
振返って見ると、かはのさや袋がはしらにつかへて、
くの字なりにまがってゐます。
「はゝゝゝ、大笑ひだ。彌次{やじ}さんさあ行かう。」

≪p110≫
と、北八にさそはれて、彌次郎{やじらう}はそこ〳〵に逃出しま
した。
三 大原女{おはらめ}
とう〳〵京都に來ました。四條通を歩いてゐる
と、大原女{おはらめ}たちが、しばや、すりこ木や、つちや、はしごや、
其の外何でも頭にのせて賣歩いてゐます。彌次郎{やじらう}
も北八も、珍しさうに眺めてゐました。すると一人
の大原女{おはらめ}が彌次郎{やじらう}のそばへ寄って來て、
「此のれん木を買って下さい。」
と言ひます。彌次郎{やじらう}、

≪p111≫
「何だ、すりこ木か。そんな物はいらないよ。」
「何なりと買って下さい。」
彌次郎{やじらう}は、じょうだん半
分に言ひました。
「はしごなら買ってや
らう。幾らだ。」
「安くして置きます。
七百もん下さい。」
彌次郎{やじらう}は、どうせ買ふ氣
ではありませんが、

≪p112≫
「高い〳〵。二百なら買ってやらう。」
と、言ひました。
「だんな、あんまりです。五百にして置きませう。」
「いや〳〵、二百でなくては買はないよ。」
「ようございます。まけて置きませう。」
「や、まけるのか。なさけない事を言ふ。」
「さあ、持って行って下さい。」
「いや、おれは旅の者だ。はしごをもらっても仕方
がない。あやまる、あやまる。」
しかし、かうなると女は何と言っても聞入れませ

≪p113≫
ん。とう〳〵彌次郎{やじらう}は、はしごを買はされてしまひ
ました。
「これ、北八、お前これをかついでくれ。」
「とんでもない。一体、何だって京のまん中ではし
ごを買ふのだ。ばか〳〵しい。」
「仕方がない。さし合ひでかつがう。お前もつき
合ってくれ。」
二人は長いはしごをかつぎながら、京都の町を見物
して歩きまはりました。
(おわり)

≪p114≫
卷十 新出漢字
皇4 守5 客6 令8 袋10 瀧15 振20 議21 法21 輕23 歳24 械24 貨25 粗28 群31 油36 無39 燒39 過40 昨44
院44 久46 毒47 失47 寒48 暖48 決50 坐51 將51 退53 由54 祖56 猿58 極62 氷62 怒67 秒68 娘69 員70 押73
墓77 宅77 槍81 突82 貸85 拂86 圖87 當91 産91 便92 利92 砲97 味98 條98 旗98
卷十 讀替漢字
御{おん}8 都{みやこ}9 向{こう}14 消{け}す19 井{じょう}20 左{さ}21 右{ゆう}21 思{し}21 明{めい}24 生{なま}25 重{じゅう}27 速{はや}さ27 遠{えん}27 集{しゅう}31 出{しゅつ}36 帆{はん}36 島{とう}39 無{ぶ}44 姉樣{ねえさま}44
入{にゅう}53 父{ふ}54 母{ぼ}54 種{しゅ}58 角{つの}64 群{むれ}66 守{もり}69 行{おこない}76 冷{ひえ}77 最{もっとも}80 腹{ふく}80 頂{いたゞき}80 主{おも}91 數{すう}94 歌{か}95 由{ゆ}95 星{せい}98 旗{はた}99 暮{く}れ99
漢字表
卷一 子 中 大 立 一 二 三 四 五 行 外 六 七 八 九 十 目
卷二 赤 小 白 青 今 木 下 持 上 切 入 言 見 畠 泣 出 月

≪p115≫
日 光 山 虫 玉 拾 早 來 手 自 分 思 水 戸 方 首 私 前 先 生
休 貝 少 待 門 犬 川 時 男 名 向 刀 人 車
卷三 花 君 取 受 長 石 重 同 本 穴 口 所 郎 次 毎 又 間
何 雲 風 空 吹 天 雨 夕 夜 星 右 面 左 朝 田 枝 考 僕 急 走
音 昔 土 金 話 聞 松 米 火 枯 咲 歩 集
卷四 動 學 校 氣 笑 寸 神 指 高 舟 供 遠 通 忘 買 匹 島
作 沖 引 海 太 紙 顔 耳 茶 色 細 合 助 皿 黄 始 草 度 美 糸
困 年 逃 夏 町 友 喜 着 物 近 足 道 母 知 起 元 妹 枚 書 牛
答 用 千 百 強 落 羽 使 店 種 呼 渡 黒 兩
卷五 電 竹 谷 岸 流 食 晩 苦 樣 洗 賣 家 箱 村 住 死 仕

≪p116≫
病 体 皮 皆 息 父 新 多 止 雄 讀 半 泳 砂 池 打 親 並 地 暗
力 飲 明 鳥 番 廣 弱 越 岩 西 東 眺 仲 負 毛 痛 申 國 主 弟
兄 深 後 銀 雪 綿 葉 追 文 字 横 女 森 井 古 形 北
卷六 事 聲 消 鐵 正 直 若 鳩 屋 根 頭 週 鳴 育 春 者 別
兵 弓 乘 遊 勉 開 叱 丸 攻 敵 矢 連 勝 歸 歌 心 會 平 命 去
苗 植 實 樂 魚 或 煙 殘 數 安 澤 教 固 肉 窓 机 腹 探 靜 尾
恐 破 短 庭 尋 置 勇 波 飯 午 肩 底 曜 乾 沈 惡 居 勢 誰 悲
涙 湯 暮 配 耕 送 涼
卷七 港 船 達 實 馬 汽 針 進 頃 世 界 身 汗 晴 布 哇 寢
運 働 王 組 角 深 掘 飛 野 笛 意 眠 血 刃 旅 商 御 片 荷 甲

≪p117≫
乙 役 淺 雀 降 其 台 糖 不 以 坂 計 士 戰 爭 軍 負 殺 内 類
元 姉 原 晝 送 工 場 寺 習 板 主 幾 裏 共
卷八 活 登 冬 末 南 鼻 曇 此 秋 陸 官 許 畫 建 返 叫 散
隣 頂 室 噴 初 汁 背 卷 側 珍 有 感 積 包 哩 浮 照 冷 卵 貧
灰 頼 禮 宮 祭 派 城 全 部 張 續 機 林 低 記 回 願 芽 緑 最
鉢 寄 景 發 驚 胸 柱 忙 暑 舌
卷九 快 速 代 具 老 丈 夫 濱 借 吸 銅 粉 姿 暴 幸 福 浴
帆 線 圓 岡 乳 投 燈 万 必 虹 豆 祝 京 公 園 橋 都 相 談 夢
妻 違 翌 製 語 徒 英 修 綴 品 孝 成 功 洋 航 民 農 業 漁 市



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底本:ハワイ大学マノア校図書館ハワイ日本語学校教科書文庫蔵本(T628)
底本の出版年:1938年12月1日発行
入力校正担当者:高田智和
更新履歴:
2021年11月27日公開

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