研究目的と計画[en]
研究目的
本プロジェクトは,接触方言学による「言語変容類型論」の構築を行うことを目的とする。例えば,提案者がこれまでの研究で対象となったフィールドの社会構成,言語変容の形は,次にまとめられる。
上に示したように,言語変容の形は,社会構成の特性によって異なると考える。方言接触によって観察される言語変容は一律ではないのである。一方,このような社会は,従来の方言学・都市方言学ではほとんど扱われることがなかった。本プロジェクトでは,方言接触によって生じる具体的な事象から,言語変容の類型を行い,多様化が進む現代社会の社会言語学的状況をより的確に捉えるアプローチを確立することが最終的な目的である。
その手掛かりとして,流動性,社会ネットワークなどによって,言語変容の分類が可能であるという,Peter Trudgillが提案している「言語変容類型論」が挙げられる。この他に言語類型論。接触言語学にも関連する知見がある。本プロジェクトでは,これらの知見を出発点とし,調査研究を通して,より普遍性の高い類型を構築したい。本プロジェクトは,言語変容の社会的側面を中・長期的にわたって調査研究をする必要があるものである。その出発点として本プロジェクトを位置づける。将来的には,時空間変異研究系の基幹研究プロジェクトの一つになるようにしたい。
研究計画・方法
本プロジェクトは三年度の研究期間を設定する。本プロジェクトは6つの班で構成する。それぞれの班の内容,メンバーは以下の通り。
総括班
プロジェクト全体の総括,研究計画の把握担当:朝日
ハワイ班
ハワイ大学所蔵のオーラルヒストリーデータを活用した言語変容の類型に関する調査研究担当:バンス,平本,ロング,朝日
北海道班
札幌,釧路,富良野における言語変容の類型に関する調査研究担当:高野,尾崎,朝日
地方都市班
地方都市(鹿児島市,,福岡,岡崎市)における言語変容の類型に関する調査研究担当:太田,二階堂,片岡
ニュータウン班
移民社会(西神ニュータウン,Milton Keynes)における言語変容の類型に関する調査研究担当:朝日, Kerswill
孤立社会班
孤立したコミュニティ(秋山郷,奈良田)における言語変容の類型に関する調査研究担当:朝日
理論構築班
社会言語学,接触言語学,言語類型論における研究動向から,関連する情報の収集を行った上で,理論構築の整備を行う。担当:朝日,Malchukov, Trudgill, Kerswill, Siegel
本プロジェクトの計画は以下の通り。
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平成23年度:
研究会,講演会の実施,フィールドワークの実施。国内外での学会での口頭発表,論文投稿
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平成24年度:
研究会,講演会の実施,フィールドワークの実施。国内外での学会での口頭発表,論文投稿,研究成果の公表(国内,または海外の出版社による)