研究班3
「日本語表記・音声の実験言語学的研究」



(関西学院大学文学部教授)

“野球”“やきゅう”“ヤキュウ”は3つとも意味は同じですが,“野球”がー番ぴったり と感じるのではないでしょうか。2人の外国人が十分意味の通じる日本語を喋っていますが ,一方の人のは日本語らしく聞こえるのに,もう1人はそれほどでない。
機械翻訳が実用化されつつあります。そのためには,日本語や外国語の自然な表記とか表現 をうまく捉えることが前提になると思うのですが,現状はどの程度まで進んでいるのでしょ う。
研究斑3は,例えば上のような,日本語の表記,音声,表現にまつわる諸問題をテーマとし て,これらを実験的に明らかにしていくことを,共通の目標としています。内外合計21人 の研究者がこれに参加して,言語学,国語学,心理言語学,認知心理学,音声学,計算機科 学等の手法を縦横に駆使して,いわゆる学際的に研究を進めています。斑は3つのチームに 分かれており,それぞれのテーマの研究をスタートしました。
第1は文字言語研究チームで,メンバーは賀集寛(関西学院大学)をリ-ダーとし,カナダ の研究者を含む9名です。テーマの一つは,日本語の表記形態の心理学的研究で,漢字,ひ らがな,カタカナ3表記の主観的表記頻度の標準的資料の作成と表記形態や表記頻度の違い が,心像性,音読,記憶等の認知過程に及ぼす効果を調ぺることです。今一つは,文字言語 の問題を含めた日本の心理言語学的研究の文献目録(抄録付き)を作成し,多様化している 研究成果の把握に努めます。
第2は音声言語研究チームで,メンバーは鮎澤孝子(国立国語研究所)をリーダーとし,フ ランスの研究者3名を含む9名で,テーマは韻律の実験的研究:Experimental  Studies on Prosody,これを略して,ESOPチームと呼びま す。目標の一つは,韻律の教育のため のマルチメディア・プログラムの開発です。まず,フランス人学習者の日本語学習用のブロ グラム作成に着手,このために,日本語とフランス語の韻律特徴や学習者の中間言語の韻律 特徴の研究等の比較研究を行います。次に,プログラムの他の言語への応用を目標にして, 諸言語の韻律に関する研究文献のデータベース作りにも着手します。
第3は計算機実験研究チームで,メンバーは中野洋(国立国語研究所)をリーダーとし,イ ギリスの研究者を含む3人です。コンピュータによって生成された日本語および英語を,よ り自然で標準的な表記,表現とするための試みを目標にしています。まず,各種のデータの 解析をしそれを生成する規則を構築して,機械辞書を作成します。次に,これを用いてプロ グラムを作成し,計算機上で実験して妥当性を検討します。


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