研究班4
「情報発信のための言語資源の整備に関する研究」


睦朗
(国立国語研究所日本語教育センター長)


研究班4は「情報発信のための言語資源の整備に関する研究」というテーマの下に4つのチ ームが集結しています。そのテーマが表現として少し難しいので,チームそれぞれの特徴を 述べながら,テーマについて説明したいと思います。
まず,テーマ前半の「情報発信のための」ですが,これは,日本の言語文化に関する何らか の情報を,国の内外に発信するという意味です。日本は世界各国の言語文化を受信する(受 け入れる)だけでなく,自らも独自の言語文化を発信しなければなりません。受信・発信と いう両方向の伝達の確立が望まれているわけです。4つのチームで言いますと,「日英およ ぴ英日の同時通訳における訳出過程に関する研究」「多国語を統―する情報交換用4バイト コードの研究」という2つのチームが直接にその問題に関係しています。前者は音声言語に よる同時通訳だけでなく,テレビの字幕による訳出過程も問題にしています。後者は,中国 ,韓国,日本の各漢字国のコンピュータ用符号を統一する方法を考案しようとしています。 これら2つのチームは,どちらも,受信・発信に関する手段を開発しようとしていると言う ことができます。
次に,テーマ後半の「言語資源の整備に関する研究」ですが,これは,無造作に蓄積されて いると言っても過言でない日本の数多くの言語資源を有効に活用するという意味です。それ は,まずは語藁・語法面で分析しながら基礎資料として整備するという意味です。4つのチ ームで言いますと,「日本語コーパスの作成とその活用」というチームが直接にその問題に 関係しています。これは,コンピュータで活用するために,大規模な文字言語の基礎データ を作成するという意味です。また,「日本人及び外国人に対する言語教育の統合的研究」と いうチームも,テーマの「整備」という用語に関係していると言うことができます。これは ,帰国子女,日系南米人子弟,外国人子弟などの増加といった問題に伴って,日本の国語教 育が質的な変革を迫られているわけですが,それをどのように考えたらいいのか,について 研究を行うことになります。言語教育の根本を洗い直すという意味の整備になります。
研究斑4は,以上に簡単に素描してきましたように,4つのチームがそれぞれに力を発揮す ることによって,「情報発信のための言語資源の整備に関する研究」を推進することになり ます。


学術振興会・特別研究員による研究
平成6年度、新プロ「日本語」の特別研究員・外国人特別研究員は以下のとおりです。
田谷紀彦 (東京大学医学部応用電子研究施設医用基礎工学部門)
研究課題:同時通訳における訳出状況分析
平野桂介 (名古屋大学文学部日本言語文化専攻)
研究課題:日本および諸外国における言語政策の記述的研究
妻木淳子 (大阪大学文学部日本学科)
研究課題:日本語の統語構造・情報構造・韻律構造に見られる相関性と他言語との対 照の研究
明哲 (総合研究大学院大学博士後期課程修了)
研究課題:在日留学生の言語行動に関する統計的研究



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