52.クリニカルパス 〔退院までの道筋を示した表〕 clinical path
[関連] インフォームドコンセント(類型C)
医療者と患者が情報を共有し,信頼と安全の医療を実現するための大事な道具として,広く普及させましょう。登場したばかりですので,分かりやすい言葉を使って普及させる努力が特に必要です。
まずこれだけは
退院までの道筋を示した表
診療内容をスケジュール化し,分かりやすく記したもの
少し詳しく
「患者さんの,退院までの診療内容や治療の進み方を計画表の形にまとめたものです。(現物を渡して,見方を説明して)今後の予定や注意点などが書いてありますので,よく見ておいてください。私たちもこれと同じようなものを見ながら診療を進めていきますが,何か疑問があったり,ここに書かれているのと違うことがあれば,すぐに知らせてください」
時間をかけてじっくりと
「患者さんの,診療内容や治療の進み方を計画表の形にまとめたものです。入院から退院までの間,いつどんな検査や治療を行うかが,スケジュール表にまとめられています。また,食事や入浴,薬の飲み方の注意点なども記されています。私たち医療者のチームも,患者さん一人一人の病状や診療の予定について,これと同じようなものを見て情報を共有するようにしています。私たちがよい医療を行うために大事なものですし,患者さんもこれを見ることで,治療のゴールまでの段階が分かります」
概念の普及のための言葉遣い
- 「クリニカルパス」はごく最近登場した極めて新しい事物であり,言葉の認知率(8.9%)・理解率(5.1%)は非常に低い。初めての患者には,その内容や役割をよく説明して渡す必要がある。その際,「クリニカルパス」という語形は難解に感じる人も多いので,[まずこれだけは]に示したような簡潔な言い換えや言い添えを行うのが望ましい。患者と医療者が情報共有するために大事な道具になるので,患者にもこれを表す名前を覚えてもらうよう努めたい。
- 病院独自に「○○計画表」「○○カード」など,親しみやすい名前を付けて呼び,独自の情報を書き込むなどして,コミュニケーションの道具として,機能を高めたものにしていくのも,クリニカルパスの意義を理解してもらいながら定着させていく効果が期待できる。
- 入院患者など,クリニカルパスを渡された経験のある人に,その意味や意義を理解してもらうことは比較的容易である。しかし,「地域連携クリニカルパス」など,今後は広く社会に概念を認知させ,広範囲への普及を目指していくことも考えられる。その場合は,分かりやすい言い換え語が必要である。
ここに注意
- 現状ではクリニカルパスがどんなものであるか全く想像できない人が多い。まずは大体どういうものを指すかを広く知ってもらうため,[まずこれだけは]に示した言葉で言い換えたり言い添えたりすることが望まれる。「クリニカルパス」以外の呼び名としては「診療行程表」「診療進行表」などが考えられる。
- 検査や治療について,患者との間でインフォームドコンセント(説明と同意)(→49)を行った後で,現物を渡して説明すると,医療者と患者との情報共有を高める効果が大きくなることが期待できる。
- クリニカルパスの機能や目的のうち,患者の安心に結び付きやすい事柄を中心に説明するのがよい。医療の効率化,均質化,コスト削減などの機能は,必要に応じて患者に説明することで,クリニカルパスへの理解を深めてもらうようにするのがよい。
- 「クリティカルパス」の語形が本来であり,現在も「クリティカルパス」の語形を使う病院や医療者も少なくない。「クリティカル」(critical)は「ぎりぎりの」,「パス」(path)は「通り道」の意味で,工業製品などの製造過程において「最短の道」を意味する言葉であった。医療に取り入れられた際も,効率化を目指すものだったが,現在の「クリティカルパス」は,効率化だけでなく,もっと多様な目的を持っている。由来にこだわらず,病院での役割を中心に理解してもらえるように,説明することが大切である。