49.インフォームドコンセント 〔納得診療,説明と同意〕 informed consent
患者中心の医療,患者が自ら選び取る医療において,最も根本にある概念です。診療においては,患者の納得が大切であることを理解してもらいましょう。
まずこれだけは
納得診療
説明と同意
納得できる医療を患者自身が選択すること
少し詳しく
「治療法などについて,医師から十分な説明を受けた上で,患者が正しく理解し納得して,同意することです」
時間をかけてじっくりと
「治療法などについて,医師から十分な説明を受けた上で,患者が正しく理解し納得して,同意することです。医師は平易な言葉で患者の理解を確かめながら説明します。患者は納得できる治療法を選択し,同意します。医師が治療法を決めるのではなく,かといって患者にすべてを決めてもらうのではなく,ともに考える医療です。医師の説明を理解し納得して,治療法に同意できる場合,同意書を出してもらうことになります」
概念の普及のための言葉遣い
- 患者中心の医療の根本にある理念を表す言葉を,一般に広く普及させることが,強く望まれる。普及のためには分かりやすい言葉を覚えてもらう必要がある。「インフォームドコンセント」は長くて覚えにくく,認知率70.8%,理解率64.7%にとどまっており,普及していない。[まずこれだけは]に示した「納得診療」「説明と同意」は,普及を図ることができる分かりやすい言い換え語である。普及のためには,医療者が言い換え語を積極的に使う必要がある。
- 「納得診療」という言い換え語が効果的であるのは,「診療」の場面で問題になることが示せることと,患者の「納得」が大事なことであることが示せることの二点である。患者の視点から,この理念の根本を分かってもらいたいときに使うと効果的である。
- 「説明と同意」という言い換え語は,この概念を最も端的に示しており,分かりやすい。医師の説明と患者の同意の双方の行為によって成り立っていることを分かってもらいたいときに使うと効果的である。
- 医療者はインフォームドコンセントと言うと,手続きとしてとらえがちだが,まず患者が主体的に選び取る医療だという理念を分かってもらった上での手続きであることを忘れないようにしたい。理念と手続きの両方が,患者にも定着するような言葉遣いを工夫したい。患者自らの語彙(ごい)の中にこの概念を定着させるには,まず「納得診療」という理念,そして「説明と同意」という手続きを覚えてもらうようにしたい。
ここに注意
- 「インフォームドコンセント」やその略称の「IC」は,医療者側では,治療などに際しての手続きを指す言葉として使われている。しかし,一般の人にとっては,分かりにくく,語形もなじめない。患者がその手続きの意義を理解することは,おおもとにある理念を正しく理解しなければ,不可能である。インフォームドコンセントの手続きに入る前に,その理念を分かりやすく伝える必要がある。
- インフォームドコンセントにおける一番の問題は,医師と患者の間の決定的な知識の格差である。この格差を埋める,患者の十分な「理解」と「納得」が重要である。理念を分かってもらうための説明の表現にも,このことを強調する言葉を用いるようにしたい。医師側が求める「同意」はあくまでもその結果であることを忘れないようにしたい。
- インフォームドコンセントにおける医師の説明は,患者や家族が,その内容を完全に理解したことを確認して,初めて完結する。難しい医療用語が並ぶ画一的・マニュアル的説明では,医師側にとっては完全であっても患者を納得に導くことは困難である。医師は,それぞれの患者の理解力を見極めた上で,できる限り易しい言葉や表現を選び,患者が分かっているかどうか一つ一つ確かめながら,ゆっくりと話を進めることが肝心である。また,いつでも何でも質問に応じる用意があることを口頭でも,態度でも示しておきたい。
- インフォームドコンセントの手続きについて,患者は一度判を押したらもう取り消せないというような印象を持つ場合もある。いつでも取り消しができることも伝えたい。