「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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18.潰瘍(かいよう)

(類型B-(1))正しい意味を明確に説明する

[関連] 炎症(えんしょう)(類型B) 糜爛(びらん)(類型A)

まずこれだけは

病気のため,からだの一部が深いところまで傷ついた状態
ただれ

少し詳しく

 「病気のために,粘膜や皮膚の表面が炎症(→16)を起こしてくずれ,できた傷が深くえぐれたようになった状態です」

時間をかけてじっくりと

 「『潰(かい)』は『くずれる』こと,『瘍(よう)』は『からだの傷やできもの』のことで,『潰瘍(かいよう)』は『からだの一部がくずれてできた傷』という意味です。同じようにしてできた傷でも浅い場合は『糜爛』(びらん)と言います」

こんな誤解がある
  1. 「胃潰瘍(かいよう)」「十二指腸潰瘍」などの言葉でなじみがあることもあり,「潰瘍」そのものを病気の名前だと誤解している人が非常に多い(46.4%)。状態を表す言葉であることが伝わるようにしたい。
  2. 「潰瘍型のがん」「潰瘍性の大腸炎」など,病名の診断に用いられる場合の「潰瘍」を,「胃潰瘍」などの「潰瘍」から類推して,軽く考えてしまう人もいる。この言葉を使う場合,患者が混同していないか,注意が必要である。
言葉遣いのポイント
  1. 「カイヨウ」という耳で聞く言葉にはなじみがある人が多いが,漢字は「潰(かい)」も「瘍(よう)」も義務教育では学ばないこともあり,なじみのない人が多い。そのため,言葉は知っていても(認知率97.4%),意味を正しく理解してもらえない可能性がある(理解率73.8%)。漢字を書いて,[時間をかけてじっくりと]のような説明を加え,きちんと理解してもらえるように工夫するのが,望ましい。
  2. 「潰瘍が起きる主な原因は,血液循環の悪さ,物理的あるいは化学的な刺激,ストレスなどです。俗に『ストレスで胃に穴が開いた』などと言いますが」と言ってから潰瘍の説明に入ると,患者の関心を高める効果が期待できる。
ここに注意

 図を描いて説明すると効果的である。例えば,胃の壁の断面図で,粘膜の表面から深くまでえぐれているところを示すとよい。正常な状態,糜爛(びらん),潰瘍(かいよう)の三段階が分かるように図示すると,さらに効果的である。

©2008 The National Institute for Japanese Language