「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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14.インスリン  insulin

(類型B-(1))正しい意味を明確に説明する

[関連] 糖尿病(とうにょうびょう)(類型B) 血糖(けっとう)(類型B)
 自己注射(じこちゅうしゃ)(類型B)

まずこれだけは

膵臓(すいぞう)で作られ,血糖を低下させるホルモン

少し詳しく

 「膵臓(すいぞう)で作られるホルモンで,血液中のブドウ糖をエネルギーとして利用する際に必要です。この量が足りなくなったり,働きが低下したりすると,糖尿病(→40)になります」

時間をかけてじっくりと

 「胃の後ろ側にある膵臓(すいぞう)で作られるホルモンで,血液中のブドウ糖を細胞に取り入れ,エネルギーを生み出す働きを促進します。血糖値血糖 →40.糖尿病[関連語])を低下させるので,糖尿病の治療にも用いられます。治療に用いるインスリンは,飲むものではなく注射をします」

こんな誤解がある
  1. インスリンによる糖尿病治療を始めると一生続けなければならない,という誤解が非常に多い(60.5%)。インスリンによる治療を始めても,これを使用しないでインスリン以外の飲み薬に変えることもできることなどを伝えたい。
  2. インスリン治療を始めるようになったら糖尿病は重症で,もう先は短いといった誤解がある(12.0%)。インスリン治療を始めるかどうかは,重症かどうかということではなく,病気のタイプや患者の状態などを総合して判断すべきことを伝えたい。
  3. インスリン治療は,注射だけではなく,飲み薬によるものもあるという誤解がある(9.1%)。現状ではインスリンの内服薬はないこと,インスリンは注射でないと効果がないことなどを伝えたい。
言葉遣いのポイント

 「インスリン」という言葉は,認知率は高くよく知られているが(95.2%),理解率(78.3%)とはやや差があり,言葉は知っていても意味を正しく理解していない人がいる。正しい意味が伝わるように明確に説明したい。

不安を和らげる

 インスリンによる糖尿病治療を導入する患者は不安が大きく,インスリン治療に抵抗を感じる人も多い。一連の治療の経過や今後の見通しを詳しく説明し,現在がどの段階に位置しているのかを明確に伝えたい。そうすることで,インスリンに対する誤解や心配を軽減するのに効果がある。

ここに注意

 「インスリン」と「インシュリン」で語形のゆれがある。日本糖尿病学会などでは「インスリン」に統一しており,現在は「インスリン」を使うことが一般的である。一方,「インシュリン」は以前によく使われた語形であり,現在でも「インシュリン」の語形になじみのある人も多い。

関連語

自己注射(類型B)

[説 明]
 「患者が自分で注射を打つこと,または家族に打ってもらうことです。決められた時間に決められた量を注射するために,医師の指導のもと,自宅などでインスリンを注射します」
[注意点]
 自己注射には,医療機関で注射を受ける以上に抵抗感を持つ人が多いので,患者の不安を軽減するように説明方法を工夫したい。
©2008 The National Institute for Japanese Language