12.COPD(シーオーピーディー) Chronic Obstructive Pulmonary Disease
[関連] 肺気腫(はいきしゅ)(類型B) 慢性気管支炎(まんせいきかんしえん)(類型B)
まずこれだけは
慢性の呼吸困難症
少し詳しく
「肺の空気の通り道が狭くなって,うまく呼吸できなくなってしまう病気です。長年にわたる喫煙などにより,肺や気管支の空気の通り道が狭くなった状態です」
時間をかけてじっくりと
「専門的な日本語訳は『慢性閉塞(へいそく)性肺疾患』です。慢性は,症状はあまりひどくないけれど,治りにくく長引いていること,閉塞性というのは,肺の空気の通り道が狭くなっているということです。長年にわたる喫煙などで,肺や気管支が詰まった状態になり,空気の出し入れがうまくいかず,普通に呼吸ができなくなり,息切れなどが起こります」
こんな誤解がある
- 気管支ぜん息と混同される場合がある。気管支ぜん息との違いを伝えるために,「気管支ぜん息は治療によって症状が改善することがありますが,COPDは改善せずにひたすら進行するおそれのある怖い病気です」などのように伝えたい。
- 肺気腫(はいきしゅ)(→[関連語])や慢性気管支炎(→[関連語])などは,COPDとは別のものだという誤解がある。肺気腫や慢性気管支炎を含む病気を,「COPD」と呼ぶことを,必要に応じて伝えたい。ただし,聞き慣れない病名が三つも出てくると患者は混乱することも考えられるので,誤解のありそうな場合にだけ説明する方がよい。
言葉遣いのポイント
- 「COPD」というアルファベット略語は,なじみがなく極めて覚えにくい(認知率10.2%)。できるだけ使わないようにしたいが,診断名を伝える場合など使う必要がある場合も想定される。この場合もいきなりCOPDという言葉を出すと,患者はとまどうので注意したい。まず,この病気について丁寧な説明をし,慢性の呼吸困難症について理解が得られたと判断できたら,「病名は,COPD,日本語では慢性閉塞(へいそく)性肺疾患と言います」などと言い添えるのがよい。特に高齢者にはアルファベット略語が分かりにくい場合があるので,いきなりこの言葉を持ち出すのは避けたい。
- 診断結果として病名を伝える場合,日本語訳を漢字で書いて示し,[時間をかけてじっくりと ]に示すような説明をすると,名称と症状とを結び付けることができ,理解の助けになる場合がある。
- 喫煙が原因であることが多いので,喫煙習慣を持たないように誘導する言葉遣いが望まれる。例えば,「肺の生活習慣病」という言い方をして,ふだんの健康管理によって防げる病気であることを伝えたい。
関連語
肺気腫(はいきしゅ)(類型B)
- [説 明]
- 「肺にあって空気の出し入れをしている,ぶどうの房のようにたくさん重なっている肺胞の病気です。その肺胞と肺胞の境目がなくなってつながってしまうことで,空気の出し入れがうまくできなくなる病気を『肺気腫』と言います」
- [注意点]
- 「COPD」よりも認知度は高いかもしれないが,正確に理解している人は多くないと考えられるので,必ず説明を添えたい。
慢性気管支炎(類型B)
- [説 明]
- 「のどの炎症(→16)がひどくなり,気管支の粘膜にまで炎症が広がった状態が,長期間続く病気です。呼吸困難やせき,痰(たん)などの症状が,三か月以上続く場合を『慢性気管支炎』と言います」
- [注意点]
- 「慢性」や「気管支炎」については正確な知識を持っている人は少ないと思われるが,比較的なじみのある言葉であるため,患者は医師に向かって改めて説明を求めにくい面がある。正しく理解してもらえるよう,丁寧に説明したい。