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日本語読本NIHONGO TOKUHON[布哇教育会第3期]

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巻三

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日本語読本 巻三 [布哇教育会第3期]

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凡例
1.頁移りは、その頁の冒頭において、頁数を≪ ≫で囲んで示した。
2.行移りは原本にしたがった。
3.振り仮名は{ }で囲んで記載した。 〔例〕小豆{あずき}
4.振り仮名が付く本文中の漢字列の始まりには|を付けた。 〔例〕十五|仙{セント}
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≪p001≫
もくろく
一 子をとろう 二
二 なわとび 四
三 めだか 六
四 なみが來た 八
五 うさぎ 十
六 ことばつぎ 十二
七 わたしの にんぎょう 十五
八 にんぎょうのびょうき 十七
九 ジャコランテン 二十一
十 三 郎 三十四
十一 ねずみのよめいり 四十
十二 あしたはピクニック 五十三
十三 こぶとり 五十九
十四 お星さま 六十七
十五 モエモエ 七十
十六 まさちゃん 七十六
十七 花さかじじい 七十八

≪p002≫
一 子 を とろう
子 を とろう、
子 とろう。
あの 子 は
はやい。
この 子 は
のろい。

≪p003≫
子 を とろう、
子 とろう。
はやい 子 は
やめて、
のろい 子 を
とろう。

≪p004≫
二 なわとび
一だん、二だん、
なわ とんだ、とんだ。
三だん とんだ、
四だん も とんだ。

≪p005≫
五だん の なわ も、
つずいて とんだ。
六だん、七だん、
八だん とんだ。
九だん、十だん、
なわ とんだ、とんだ。

≪p006≫
三 めだか
つい つい
めだか が、
およいで
いる よ。
たくさん
めだか が、

≪p007≫
およいで
いる よ。
なか よく
そろって、
およいで
いる よ。
一日 おがわ を、
およいで いる よ。

≪p008≫
四 なみ が 來た
なみ が 來た、
ざんぶりこ。
おいけ に 水 が、
一ぱい だ。
なみ が 來た、
ざんぶりこ。

≪p009≫
なみ が 來た、
ざんぶりこ。
おいけ の
さかな が、
にげて
行った。
なみ が 來た、
ざんぶりこ。

≪p010≫
五 うさぎ
白い かわいい
うさぎさん。
おみみ が
ながい、
目 が
赤い。

≪p011≫
おにわ に
出す と
よろこんで、
ぴょん
ぴょん
はねます、
おどります。

≪p012≫
六 ことばつぎ
花子「たろうさん から、
はじめて 下さい。」
たろう「では、言います よ。
バナナ。」
とみ子「なべ。」
花 子「べんとう。」

≪p013≫
たろう「とう です ね。」
花 子「そう です。べんとう
です から。」
たろう「とうふ。」
とみ子「ふか。」
花 子「かま。」
たろう「マンゴ。」
とみ子「ござ。」

≪p014≫
花 子「ざくろ。」
たろう「ろうそく。」
とみ子「ククイ。」
花 子「いぬ。」
たろう「ぬ です か。」
花 子「そう です。」
たろう「ぬ は こまる なあ。」
とみ子「早く、早く。」

≪p015≫
花 子「早く、早く。早く つずけない と、
たろうさん の まけ です よ。」
七 わたし の にんぎょう
わたし の にんぎょう は、
かわいい にんぎょう。
わたし が うた を
うたって やる と、

≪p016≫
いつも、にこにこ
わらいます。
わたし の にんぎょう は、
かわいい にんぎょう。
わたし が どんな に
おこって いて も、
やっぱり、にこにこ
わらって います。

≪p017≫
八 にんぎょう の びょうき
花子さん は、にんぎょう が びょうき に
なった ので、おいしゃさま を よびまし=
た。
おいしゃさま は、まさおさん です。おとな
の ぼうし を かぶって、大きな かばん
を 持って、はいって 來ました。

≪p018≫
「ごびょうにん は、どちら です か。」
「あちら に ねて おります。」
花子さん は、まさお=
さん を おく へ
とうしました。
まさおさん は、にん=
ぎょう の そば に
すわりました。

≪p019≫
まさおさん は、にん=
ぎょう の 手 を
とりました。それから、
ひたい に さわって
みました。おなか を、
上 から おさえて
みました。
まさおさん が あん=

≪p020≫
まり じょうず に、おいしゃさま の まね
を する ので、花子さん は、きゅう に
おかしく なりました。でも わらわない で、
じっと がまん して いました。
まさおさん は ていねい に みて から、
「たいして わるく は ない よう です。
たべすぎ です ね。」
と、まじめな かお を して 言いました。

≪p021≫
花子さん は、とうとう わらい出しました。
まさおさん も、わらい出しました。
九 ジャコランテン

たけお「君、ジャコランテン を こしらえよう。」
ゆきお「ああ、こしらえよう。なん で こしらえ=
よう か。」

≪p022≫
たけお「パパイヤ が いい よ。うち に、パパ=
イヤ が たくさん なって いる から、
あれ で こしらえよう。」
たけお と ゆきお は、パパイヤ の 木
の 下 に 行きました。
たけお「あの 大きい の を 取ろう。 ぼく が
おとす から、君、受けて くれ たまえ。
じめん に おとしたら、われて しまう

≪p023≫
よ。」
ゆきお「大じょうぶ。さあ、おとし、たまえ。」

≪p024≫
ゆきお は 上 を 見ながら、手 を ひろ=
げて、待って いました。
たけお は、長い さお を 持って、
「さあ、おとす よ。」
と 言いながら、一ばん 大きい の を つ=
つきました。
パパイヤ は おちました。けれども、下 の
石 に あたって、われて しまいました。

≪p025≫
たけお「君、どうした のだ。」
ゆきお「だって 重かった のだ もの。」
たけお「そんなら、こんど は 少し 小さい の
に しよう。」
たけお が、また さお で つつきました。
おちて 來る青い パパイヤ を、ゆきお
が 上手 に 受けました。
たけお「うまく いった ね。」

≪p026≫
ゆきお「重かった よ。」
たけお「これ は 君 の に しよう。」
ゆきお「ありがとう。こんど は ぼく が おと=
す から、君、受けて くれ たまえ。」
ゆきお が つつきおとした の を、たけお
が 受けました。
ゆきお「ちょうど、同じ くらい な 大きさ だ
ね。」

≪p027≫
たけお「さあ、ジャコランテン を こしらえよう。」
二人 は、パパイヤ を 持って、うち の
方 へ はしって 行きました。

二人 は ベランダ に あがりました。
たけお は ナイフ を 二本 持って 來ま=
した。
たけお「君、この ナイフ を つかい たまえ。」

≪p028≫
たけお は パパイヤ の 上 の 方 を
切りおとしました。ゆきお も 切りおとしま=
した。
たけお「たね が たくさん ある ね。」
二人 は、手 で 中 の たね を かき出=
しました。
ゆきお「目 は、まるい の が いい ね。」
たけお「さき に しるし を つけよう。」

≪p029≫
たけお は うち に はいって、のり と、
かみ と、インキ と、えんぴつ を 持って
來ました。
えんぴつ で、目 の しるし を つけまし=
た。
ナイフ の さき で、まるい 穴 を あけ=
ました。
ゆきお「はな は 三かく に しよう。」

≪p030≫
たけお「それ が いい。」
二人 は、また しるし
を つけて から、三=
かく の はな を
こしらえました。
ゆきお「こんど は、口 だ。
四かく に しよう。」
口 も 出來ました。

≪p031≫
こんど は、かみ に くろインキ で 目玉
を かきました。それ を うちがわ から、
目 の 所 に はりつけました。
ゆきお「ぼく の 目玉 は、小さすぎた。かきな=
おそう。」
ゆきお は もう 一ど かいて、はりつけま=
した。
たけお「はな は、赤 に しよう か。」

≪p032≫
ゆきお「そう しよう。」
赤インキ で ぬった かみ を、はな の
所 に はりつけました。
ゆきお「は は、どう しよう。」
たけお「赤く ぬった かみ を 口 に はって、
くろインキ で かこう。」
おしまい に、はりがね で つる を つけ=
ました。

≪p033≫
くぎ を さして、中 に ろうそく を 立=
てる よう に しました。
たけお「やあ、出來た、出來た。」
ゆきお「ぼく の も 出來た。りっぱな ジャコ=
ランテン だ。」
たけお「ゆきお君、ハローイン は あさって の
ばん だ ね。」
ゆきお「そう だ。ぼく、おばけ の めん が

≪p034≫
二つ ある から、一つ 君 に 上げる
よ。」
たけお「ありがとう。早く あさって に なれば
いい な。」
十 三郎
私 ノ ウチ デ、一バン カワイラシクテ、
イタズラナ ノ ハ 三郎 デス。

≪p035≫
私 ガ ネテ イル ト、カミ ヲ ヒッパッ=
タリ、ハナ ヲ ツマンダリ シマス。
私 ヤ、次子 ノ ウタウ ノ ヲ キイテ、
スグ ニ オボエマス。時=
時、マチガッタ ママ、ヘ=
イキ デ ウタイマス。
オカアサン ガ サイホウ
シテ イル ト、三郎 ハ

≪p036≫
ソバ ヘ 行ッテ、ソット、
「カアチャン キャンデー。」
ト 言イマス。
オカアサン ハ、
「サッキ 上ゲタ デショウ。モウ ダメ デス
ヨ。」
ト 言イマス。
私 ト 次子 ガ、ソバ カラ、

≪p037≫
「ヤア、オカシイ ナア。」
ト 言ッテ ヤリマス。
スルト 三郎 ハ、
「ニイチャン、ネエチャン、イヤ。」
ト 言ッテ オコリマス。
オトウサン ハ、毎日、アサ 早ク カラ、ウ=
チ ノ オミセ ヘ 行キマス。ウチ ニ イ=
ル 時、三郎 ハ ヨク、

≪p038≫
「トウチャン、オスモウ。」
ト 言ッテ ツカマリマス。
オトウサン ハ、
「三郎 ハ ツヨイ ネ。」
ト 言ッテ、ヨコ ニ タ=
オレマス。三郎 ハ、
「カッタ、カッタ。」
ト 大ヨロコビ デス。ソウシテ、

≪p039≫
「モット、モット。」
ト 言イマス。オトウサン ハ、ニコニコ シ=
ナガラ、又 マケテ ヤリマス。
オジイサン ト オバアサン ハ、今、日本
ヘ 行ッテ イマス。コノ間、私タチ ニ 來=
タ オテガミ ニ、
「タクサン、オミヤゲ ヲ 持ッテ カエル
カラ、ヨク ベンキョウ ナサイ。三郎 ニ=

≪p040≫
ハ、何 ガ ヨイ デショウ カ。」
ト カイテ アリマシタ ノデ、私 ハ、
「三郎 ニハ、コイノボリ ガ ヨイ デショ=
ウ。」
ト カイテ 出シマシタ。
十一 ねずみ の よめいり
ねずみ の 赤ちゃん が、生まれました。

≪p041≫
だんだん 大きく なって、よい むすめ に
なりました。
おとうさん も、おかあさん も 大よろこび
で、「ほんとう に よい 子 だ。こんな よ=
い 子 を、ねずみ の およめさん に す=
る の は おしい。せかいじゅう で 一ば=
ん えらい 人 の およめさん に したい。」
と かんがえました。

≪p042≫
おとうさん と おかあさん は、
そうだん して、お日さま の
所 へ およめ に 上げる こ=
と に しました。
おとうさん は、お日さま の 所 へ 行っ=
て、
「私 の うち に、たいへん よい むすめ
が あります。せかいじゅう で 一ばん

≪p043≫
えらい 人 の 所 へ 上げたい と 思=
います。一ばん えらい 人 は、
あなた です。どう=
か、私 の むすめ を
もらって 下さい。」
と たのみました。
お日さま は、
「ありがたい が、おことわり しましょう。

≪p044≫
せかいじゅう には、私 より もっと え=
らい 人 が います から。」
と おっしゃいました。
ねずみ の おとうさん は、びっくり して、
「それ は だれ です か。」
と たずねました。
お日さま は、
「それ は 雲さん です。いくら 私 が

≪p045≫
てって いて も、雲さん が 來る と、
かくされて しまいます。雲さん には か=
ないません。」
と おっしゃいました。
ねずみ の おとうさん は、雲 の 所 へ
行って、
「せかいじゅう で 一ばん えらい あなた
に、むすめ を 上げたい と 思います。」

≪p046≫
と 言いました。
雲 も ことわりました。そうして、
「せかいじゅう には、私
より もっと えらい
人 が います から。」
と 言いました。
ねずみ の おとうさん は、びっくり して、
「それ は だれ です か。」

≪p047≫
と たずねました。
雲 は、
「それは風さんです。
いくら私が 空 で
いばって いて も、
風さん が 來る と、
すぐ 吹きとばされて
しまいます。風さん には かないません。」

≪p048≫
と 言いました。
ねずみ の おとうさん は、風 の 所 へ
行って、
「せかいじゅう で 一ばん えらい あなた
に、むすめ を 上げたい と 思います。」
と 言いました。
風 も ことわりました。そうして、
「せかいじゅう には、私 より もっと え=

≪p049≫
らい 人 が います から。」
と 言いました。
ねずみ の おとうさん は、
「それ は だれ です か。」
と たずねました。
風 は、
「それ は かべさん です。いくら 私 が
一しょうけんめい に 吹いて も、かべさ=

≪p050≫
ん は へいき で います。
かべさん には、
かないません。」
と 言いました。
ねずみ の お=
とうさん は、かべ の 所 へ 行って、
「せかいじゅう で 一ばん えらい あなた
に、むすめ を 上げたい と 思います。」

≪p051≫
と 言いました。
かべ も ことわりました。そうして、
「せかいじゅう には、私 より もっと え=
らい 人 が います から。」
と 言いました。
ねずみ の おとうさん は、
「それ は だれ です か。」
と たずねました。

≪p052≫
かべ は、
「それ は ねずみさん です。ねずみさん
に がりがり と かじられて は、たまり=
ません。」
と 言いました。
ねずみ の おとうさん は、「なるほど、せか=
いじゅう で 一ばん えらい の は ねず=
み だ。」と 思いました。そうして、むすめ

≪p053≫
を きんじょ の ねずみ の およめさん
に しました。
十二 あした は ピクニック
あした は、がっこう の ピクニック です。
今日 は、あさ から 空 が くもって い=
ました。ぼく は がっこう に 行って も、
天き が しんぱい で たまりません でし=

≪p054≫
た。うち へ かえって から も、たびたび
外 へ 出て、空 ばかり 見て いました。
「ねえさん、あした
雨 が ふる で=
しょう か。」
と ききました。
「ふる かも しれ=
ません ね。こん=

≪p055≫
な に くもって いる のです もの。」
ねえさん は、空 を 見ながら おっしゃい=
ました。
ぼく は、がっかり して、
「つまらない なあ。」
と 言いました。
夕方 おとうさん が、よそ から おかえり
に なりました。

≪p056≫
「おとうさん、あした 雨 が ふる でしょ=
う か。」
と ききました。
「風 が かわった から、ふらない だろう。」
と おっしゃいました。
ぼく は どうか、ふらなければ よい と
思いました。
夜 に なって、又 外 へ 出て 見ました。

≪p057≫
お星さま が 二つ 三つ 三って いました。
「おとうさん、おとうさん。お星さま が 光=
って います よ。」
ぼく は 大きな こえ で 言いました。
おとうさん が 出て いらっしゃいました。
「おう、お天き に なる ぞ。あした は
大じょうぶ だ。」
と おっしゃいました。

≪p058≫
おかあさん が、
「まあ、よかっ=
た ね。おい=
しい おべん=
とう を つ=
くって 上げ=
ましょう。」
と おっしゃいました。

≪p059≫
十三 こぶとり
右 の ほう に、大きな こぶ の ある
おじいさん が あり=
ました。
ある日、山 で 木
を 切って いる と、
雨 が ざあざあ ふっ=

≪p060≫
て 來ました。
おじいさん は、木 の 穴 に はいって、
雨 の やむ の を 待って いました。
おじいさん は、いつ の ま にか ねむっ=
て しまいました。目 が さめた 時 は、
もう 夜 で、雨 は すっかり やんで い=
ました。
見る と、おじいさん の はいって いる

≪p061≫
木 の 前 に、たくさん の おに が あ=
つまって いました。
青い おに や、赤い おに が、たきび の
まわり で おどり を おどって いました。
どの おに も、大しょう の おに に お=
じぎ を して は、かわるがわる 立って=
おどって いました。
おじいさん は、たいそう おどり が すき

≪p062≫
でした。見て いる うち に、自分 も お=
どりたく なりました。おそろしい こと も
わすれて、木 の 穴 から とび出しました。
おに は びっくり しました。
「あれ は なん だ。」
「あれ は なん だ。」
と 言いながら、わいわい さわぎました。
おじいさん は、それ には かまわず、うた

≪p063≫
を うたいながら、一=
しょうけんめい に
おどりました。
おに は、
「これ は 面白い。」
「これ は 面白い。」
と 言って、手 を
たたいて ほめました。

≪p064≫
おに の 大しょう は、おじいさん に、
「これ から も、時時 來て おどって 下=
さい。」
と 言いました。
おじいさん は、
「よろしい。この 次 には、もっと 上手
に おどって 見せましょう。」
と 言いました。

≪p065≫
おに の 大しょう は、たいそう よろこび=
ました。でも おじいさん が ほんとう に
又 來て くれる か どう か、わからない
と 思いました。みんな で そうだん して、
「こんど 來て 下さる 時 まで、おじいさ=
ん の 右 の ほう に ある こぶ を、
あずかって おきましょう。」
と 言いました。

≪p066≫
夜 が あけました。
おに は、どこ にも
いません でした。
おじいさん は、ゆめ
を 見て いた ので は ない か と思=
いました。
右 の ほう を なでて みました。右 の
ほう に、こぶ は ありません でした。

≪p067≫
左 の ほう を なでて みました。左 の
ほう にも、こぶ は ありません でした。
十四 お星さま
「ふみちゃん、ちょっと 出て ごらん。お星=
さま が 出た よ。」
「にいさん、どこ に。」
「そら、あの やし の 木 の 上 にも、

≪p068≫
向こう の ククイ の 木 の 上 にも、
見える だろう。」
「まあ、かわいらしい お星さま。目 を ぱ=
ちぱち させて いらっしゃる。」
「あ、あの マンゴ の 木 の 上 にも。」

≪p069≫
「まあ、たくさん 出て いらっしゃった の
ね。お星さま は、いつ
まで おきて、いらっしゃ=
る の でしょう。」
「朝 まで、おきて いら=
っしゃる の だ。」
「朝 まで おきて いて、
ねむく は ない の で=

≪p070≫
しょう か。」
「ねむく は ない さ。お星さま は、ひる=
じゅう ぐっすり ねむって いらっしゃる
のだ から。」
十五 モエモエ
モエモエ ハ、タイソウ ナマケモノ デ、イ=
ツモ ネテ バカリ イマシタ。

≪p071≫
オカアサン ガ タロ ノ 田 デ シゴト
ヲ シテ イテ モ、オ手ツダイ ヲ シマセ=
ン。オトウサン ガ、サカナツリ ニ 行ッテ
モ、一ショ ニ 行キマセン。
アル日、オカアサン ニ 言イツケラレテ、山
ヘ ククイ ノ ミ ヲ 拾イ ニ 行キマシ=
タ。アクビ ヲ シナガラ、二ツ 三ツ 拾イ=
マシタ。モウ イヤ ニ ナッテ、ソコ ニ

≪p072≫
スワリマシタ。又 アクビ ヲ シテ、ネコロ=
ビマシタ。トウトウ ネムッテ シ=
マイマシタ。
ソバ ヲ ナガレテ イル 川
ノ 水 ガ ダンダン フエ=
テ 來マシタ。モエモエ ハ、
水 ノ 中 ニ ツカッテ
シマイマシタ。

≪p073≫
木 ノ 枝 ヤ、木 ノ ハ ガ オチテ 來=
テ、モエモエ ノ 上 ニ ツモリマシタ。ソ=
レ デモ、モエモエ ハ ネムッテ イマシタ。
モエモエ ガ カエラナイ ノデ、オトウサン
ト、オカアサン ハ シンパイ シテ、サガシ
ニ 行キマシタ。山 ノ 中 ヲ、アチラ コ=
チラ サガシマシタ ガ、見ツカリマセン。
ネムッテ イル モエモエ ノ ハナ ノ 上

≪p074≫
ニ、ククイ ノ ミ ガ オチマシタ。ソレ
ガ メ ヲ 出シテ、ネ ガ、ハナ ノ 穴
マデ、ハイッテ 行キマシタ。
モエモエ ハ、ヤット
目 ヲ サマシマ=
シタ。
ハラ ヲ 立テテ、
ハナ ノ 上 ノ ククイ

≪p075≫
ノ 木 ヲ、手 デ コスリオトシマシタ。
モエモエ ハ、立ッタ ママ、何 カ 考エテ
イマシタ。
「オウ、ソウ ダ。木 モ、水 モ、僕 ヲ
オコシテ クレタ ノ ダ。ネテ バカリ イ=
タ ノ ハ ワルカッタ。今 カラ 一ショ=
ウケンメイ ハタラコウ。」
ト 言ッテ、急イデ ウチ ヘ カエリマシタ。

≪p076≫
十六 まさちゃん
まさちゃん、
泣く のじゃ ない よ。
さあ、僕 と あそぼう。
きしゃ だ。
ぎちぎち ねじ を
まいて、

≪p077≫
そら、
がらがらっと 走る よ。
あ、つくえ に あたって、
ひっくりかえった。
大きな 音 だ ね。
まさちゃん、
そら、又 やる よ。
面白い だろう。

≪p078≫
十七 花さかじじい
昔 昔、ある所 に、おじいさん が ありま=
した。犬 を 一ぴき
かって、たいそう かわい=
がって いました。
ある日 犬 が、 畠
の すみ で、

≪p079≫
「ここ ほれ、わんわん、
ここ ほれ、わんわん。」
と ほえました。
おじいさん が、そこ
を ほって みます
と、 土 の 中 から、
お金 や たからもの が、たくさん
出ました。

≪p080≫
となり の おじいさん は、よく の ふか=
い 人 でした。この 話 を 聞いて、 犬
を かり に 來ました。そうして、むり に
犬 を なかせて、畠 を、ほって みました
が、きたない もの ばかり 出ました。おじ=
いさん は、おこって 犬 を ころして し=
まいました。
犬 を かわいがって いた おじいさん は、

≪p081≫
たいそう かなしみました。そうして、犬 の
はか を つくって、そこ へ 小さな 松
を 一本 うえました。
松 は ずんずん 大=
きく なりました。
おじいさん は、その
松 の 木 で、うす
を こしらえました。それ

≪p082≫
で 米 を つく と、お金 や たからもの
が たくさん 出ました。
となり の おじいさん
は、又 そのうす を
かり に 來ました。そ=
うして、米 を ついて
みました が、きたない
もの ばかり 出ました。

≪p083≫
又 おこって、うす を こわして、 火 に
くべて しまいました。
犬 を かわいがって いた おじいさん は、
その はい を もらって 來ました。すると、
風 が 吹いて 來て はい を とばしまし=
た。はい が 枯木 の 枝 に かかる と、
一ど に ぱっと 花 が 咲きました。
おじいさん は よろこびました。はい を

≪p084≫
ざる に 入れて、
「花さかじじい、花=
さかじじい、枯木
に 花 を 咲か=
せましょう。」
と 言って 歩きました。とのさま が おと=
うり に なって、
「これ は 面白い。花 を 咲かせて ごら=

≪p085≫
ん。」
と おっしゃいました。
おじいさん は、枯木 に
のぼりました。そうして、
はい を まきます と、
枯木 に 花 が
咲いて、一面 に
花ざかり に な=

≪p086≫
りました。
「これ は ふしぎ だ。きれい だ、きれい
だ。」
と おほめ に なって、ごほうび を たく=
さん 下さいました。
となり の おじいさん は、のこって いた
はい を かき 集めて、枯木 に のぼって、
とのさま の おかえり を 待って いまし=

≪p087≫
た。そこ へ、とのさま が おとうり に
なって、
「もう 一ど、花 を 咲かせて ごらん。」
と おっしゃいました。
おじいさん は、はい を つかんで まきま=
した。いくら まいて も、花 は 咲きませ=
ん。しまい に、はい が とのさま の 目
や 口 に はいりました。

≪p088≫
とのさま は、
「これ は、にせもの だ。にくい やつ だ。」
と おっしゃいました。
おじいさん は、とうとう しばられて しま=
いました。

≪p090≫
あ い う え お
か き く け こ
さ し す せ そ
た ち つ て と
な に ぬ ね の
は ひ ふ へ ほ
ま み む め も
や い ゆ え よ
い ろ は に
ほ へ と ち
り ぬ る を
わ か よ た
れ そ つ ね
な ら む う

≪p091≫
ら り る れ ろ
わ い(ゐ) う え(ゑ) を

が ぎ ぐ げ ご
ざ じ ず ぜ ぞ
だ じ(ぢ) ず(づ) で ど
ば び ぶ べ ぼ
ぱ ぴ ぷ ぺ ぽ
い(ゐ) の お く
や ま け ふ
こ え て あ
さ き ゆ め
み し え(ゑ) ひ
も せ す ん

≪p092≫
卷三 新出漢字
花12 君21 取22 受22 長24 石24 重25 同26 本27 穴29 口30 所31 郎34 次35 毎37 又39 間39
何40 雲44 風47 空47 吹47 天53 雨54 夕55 夜56 星57 右59 面63 左67 朝69 田71 枝73 考75
僕75 急75 走77 音77 昔78 土79 金79 話80 聞80 松81 米82 火83 枯83 咲83 歩84 集86
卷三 讀替漢字
四{よ}4 大{だい}23 來{く}る25 上手{じようず}25 二人{ふたり}27 君{くん}33 三郎{さぶろう}34 方{かた}55 三{みつ}つ57 夜{よ}66 面{めん}85
卷一 新出漢字
子 中 大 立 一 二 三 四 五 行 外 六 七 八 九 十 目
卷二 新出漢字

≪p093≫
赤 小 白 青 今 木 下 持 上 切 入 言 見 畠 泣 出 月
日 光 山 虫 玉 拾 早 來 手 自 分 思 水 戸 方 首 私
前 先 生 休 貝 少 待 門 犬 川 時 男 名 向 刀 人 車
おわり


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底本:ハワイ大学マノア校図書館ハワイ日本語学校教科書文庫蔵本(T566)
底本の出版年:Copyright 1938
入力校正担当者:高田智和
更新履歴:
2021年11月27日公開

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