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Shokoku hōgen butsurui shōko

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Volume 3

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物類称呼巻三

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凡例
1.本文の行移りは原本にしたがった。
2.行移りは、その丁の表および裏の冒頭において、丁数・表裏を括弧書きで示した。
3.仮名は現行の平仮名・片仮名を用いた。
4.漢字は常用漢字新字体によることを原則とした。
5.繰り返し符号は次のように統一した。
 平仮名1文字の繰り返し 〔例〕いなゝく、いとゞ
 片仮名1文字の繰り返し 〔例〕タヽミ、イタヾキ
 漢字1文字の繰り返し 〔例〕千々
 複数文字の繰り返し 〔例〕いよ〳〵、ぢう〴〵
6.白ゴマ読点は読点(、)、小さな白丸は中点(・)で代用した。
7.Unicodeで表現できない文字は〓を用いた。
8.傍記・振り仮名は{ }で囲んで表現した。 〔例〕乾坤{けんこん}
9.左側の傍記・振り仮名の場合は、冒頭に#を付けた。 〔例〕乾坤{#あめつち}
10.傍記・振り仮名が付く本文文字列の始まりには|を付けた。
11.割注・角書は[ ]で囲んで表現した。
12.漢文部分(日本語語順でない漢字列)は語順を入れ替えた。
13.訓読記号(レ点・一二点・合符など)は省略した。
14.書名や語形を示す枠囲みは『 』で代用した。
15.原本の表記に関する注記は(*)で記入した。 〔例〕又諸國にて・ざふ(*「ざふ」に傍線)

本文の修正
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(1オ)
物類称呼巻之三
生植
米 こめ[よね]○遠江国天竜の川上にて・ぼさつと称す[此所にては米といはずしてぼさつとのみとなふ]按に
諸国より大峰或は羽黒山なとへ詣るもの一七日|斎{ものいみ}す其内はぼさつと称して
米とは呼ずとなん西国又は朝鮮の方言にも穀を菩薩{ぼさつ}と云よし見えぬ
『東雅』ニ『雑林類事』を引て白米を漢{かん}菩薩といひ粟を田{でん}菩薩といふを記
せりと有又俗間に糠味噌{ぬかみそ}といふは糠と塩とを和して制{つく}れるを名づけてさゝ
ぢんと云是は仏経を書写する早書の法に菩薩の二字の艸冠{さうかう}のみをとりて
〓としるす事有さればさゝとはぼさつの義にて是も又米をぼさつといふ事に
よれる也『秘蔵記』ニ云天竺にて米粒{べいりう}を舎利{しやり}とす仏舎利{ぶつしやり}も又米粒に似たり故
|舎利{しやり}といふと云云是三国同日の談なり又早書の時のならひに〓菩薩点菩

(1ウ)
提とて〓{ぼたい}とよむ〓|声聞{しやうもん}〓|縁覚{ゑんがく}或は弥陀{みだ}を汐{みだ}と書たぐひ是皆経文の早
書キの合文{がうぶん}也
〽上もなき大仏もちの本来をさとれは米のぼさつなりけり 未得
秣 ひつぢ[いねかりたる跡に自生す]○尾州にて・ひうちと云[是は転語なり]佐渡にて・まゝばえといふ
伊勢白子にて・二ばんごと云越前にて・ひとてといふ
蜀黍 たう(*「たう」に傍線)きび○東国にて・もろこしと云中国にて・きみ伊予にて・たかきび加賀
にて・ほきび越後にて・せいたかきび奥州津軽にて・たちぎみ幾内にて・
たう(*「たう」に傍線)きびと云
玉蜀黍 なんばんきび○畿内にて・なんばんきび又菓子{くはし}きびと云伊勢にて・はちぼ
く西国及常陸或は越前にて・たう(*「たう」に傍線)きびと云東国にて・たう(*「たう」に傍線)もろこし遠州
にて・なんばんたう(*「たう」に傍線)のきびと云奥州より越後辺にて・まめきびとも又くは(*「くは」に傍線)し
きびともいふ奥の南部にて・きみといふ[此所にては常の黍をはもろこしといふ]備前にて・さつまきび

(2オ)
因幡にて・たかきびといふ
紅豆 さゝげ○九州及上州信州総州にて・ふらう(*「らう」に傍線)と云関西にて・十八さゝげと云を関東
にて・十六さゝぎといふ案に関東にて大角豆{さゝげ}の短く生るものを・みづら
と呼西国にては・ふたなりといふ『古事記』ニ美豆羅{みづら}又『和名』ニ鬟{みづら}『万葉』ニ髪
臥{みつら}註ニ曰童装束の時は総角{あげまき}とてみづらゆふと有今みづらさゝげといふものゝ
たばねたるも童子の髪に似たりこれによる歟
緑豆 ぶんどう○東国にて・やへなりとよび又・とう(*「とう」に傍線)ろく共よぶ畿内にて・ぶん
どう(*「どう」に傍線)といふ遠江にて・とう(*「とう」に傍線)ごと云備前にて・さなりといふ伊勢にて・かつも
りといふ尾張にて云ぶんどうあづき又十{とを}六寸なといふは別種也
豌豆 ゑんどう○畿内にて・のらまめと云東国にて・ゑんどうと云伊勢にて・ぶん
どうと云上総にて・ゑんづといふ
萊菔 だいこん○はだの大根相州波多野ノ名産也江戸にて・はだなと云是也[これ転語也]

(2ウ)
京にて・ながね大根と云大坂天満にて・ほそね大根といふ又宮の前の大根と云
[河州守口にて是をもつて粕漬とす]西国にて・小大根と云[はだの大根は小大根よりはすこし大也]又畿内にて・なかぬき
大こんといふを江戸にて・をろぬき大こんと云
菘 な○京にて・みづな又・はたけなといふを近江にて・うきな又ひやう(*「ひやう」に傍線)ずなと云
鄙{いなか}にて・京菜といふ江戸にても・水菜といふ有[京都の水菜よりは葉黒ずみて厚く広し京の水菜に及はす]
[葛西菜又小松川本所牛島辺の冬菜におゐては京大坂にもなし風味よくしかも一年の内絶る事なしまことに名産也]又関西にていふ・間引菜{まびきな}と云
を江戸にて・つまみなといふ西国にて・をろぬき菜と云[江戸田舎にて菜にても大根にてもおろぬくと云といへとも名付る]
[時はつまみ菜と云もみ大根といふ]○関西にて・蕪菁{かぶら}と云を東国にて・かぶなといひ根をはかぶと云
韭 にら○上総にて・ふたもじと云是は葱{ねぎ}をひともじと呼故ににらをふたもじと云
冬葱 ねぎ○関西にて・ねぶかと云近江にて・ひともじと云[ひともじは通称なれ共常に用ゆる所をさしていふ]
関東にて・ねぎといふねぶかとは根ぶかく土に入こゝろ胡葱{あさつき}は浅き葱{き}の
意根深{ねふか}に対{たい}したるの名なるべしつは助字なり和名きといふ故に一ト文字と云

(3オ)
分葱{わけぎ}はわかちとる義刈葱{かりき}は刈とる義とぞ又ひともじを詠ぜし歌に
〽引見れは根は白糸のうつほ草ひともしなれと数の多さよ
野蒜 のびる○加賀にて・ねんぶりと云
蒜 ひる○関東にて・ひるといふ関西にて・ろくたう(*「たう」に傍線)と云筑紫にて・にん
にくといふ
芋 いも○駿河及美濃越後高田ノ所在又常陸にて・ぼゞと云○唐芋{たういも}を
遠州にて・女芋と云○蓮芋{はすいも}武州品川にて・八ツがしらと云又|栗芋{くりいも}といふ
所をゝし○芋ノ茎{くき}京にて・いもじといふ東国にて・ずいきと云[これは諸国の通語なり]
美濃尾張にて・だつと云奥州仙台にて・からどりと云『土佐日記』ニいもしあ
らめも歯がためもなきかうやうの国也と云云いもしはいもにてしは助字成共云
仏掌薯 つくねいも○東国にて・つくねいも又つくいも又山のいも又やまとなどゝ称す
関西にても・山のいもといひ[又一名]うぢいもといふ奥州仙台にて・はだいしいも

(3ウ)
と云津軽にては・唐いもと云土佐にて・手{て}いもと云上野にて・みねいもといふ
今按に山のいもと呼所をゝし然ともやまのいもは薯蕷{じよよ}にて東国に長いも
といふ是なり又薬物の山薬{さんやく}は自然薯{じねんじよ}蕷{よ}を用ゆ『南郭遺契』ニ『負暄雑
録』ヲ引テ山薬本薯蕷ト名ク唐ノ代宗ノ諱予ヲ避{サケ}テ改テ薯薬ト名ク宋ノ英宗ノ諱曙ヲ避テ
遂ニ山薬ト名ク云云(*原本「山薬本名薯蕷避唐代宗諱予改名薯薬避宋英宗諱曙遂名山薬云云」の順)又つくねいもを山のいもといふは其形山のごとく又峰のごとし或ハ石
或ハ人の手にも似たり故にかく名つくるなるべし
黄独 けいも○畿内にて・けいもと云東国にて・かしゆう(*「しゆう」に傍線)と云[薬種の何首烏{かしゆう}にあらす同名にして異なり]
駿遠にて・ぜつぷといふ相模にて・ぜんぶと云仙台にて・べんけい芋といふ
零余子 ぬかご○相州にて・くろめと云常陸にて・いもしが子とといふ肥前唐津にて・
ぱんごといふ常陸の国にていふいもしがこはいもがこにてしは助字也平忠盛の
いもが子ははふほどにこそなりにけれとありしも此事とかや故事こゝに略す
甘藷 りうきういも○畿内にて・りうきういもと云東国にて・さつまいもといふ肥

(4オ)
前にて・からいもといふ享保年中薩州より来る味ひ美にして其性よ
ろし又長崎にりう(*「りう」に傍線)きう(*「きう」に傍線)いもてう(*「てう」に傍線)せんいもと称する物有是は別種にして
蕃薯なり
薺 なづな○[おとこなつなをゝなつなをなつな等の名有]○花さく頃・ばちぐさと云江戸にて・ぺん〳〵草
尾張にて・ぢゞのきんちや(*「ちや」に傍線)くばゞのきんちや(*「ちや」に傍線)くと云奥之津軽にて・すゞめのだらこ
といふ是|薺{なづな}の実{み}也形きんちや(*「ちや」に傍線)くの如く又|三線{さみせん}のばちに似たり津軽にては巾着
の事をだらこといふ故に名とす東国の俗四月八日毎に此草をとりて行灯{あんどう}に
釣{つ}りて夏の虫の油灯{ひ}に入らぬ咒{ましな}ひとす
蘩蔞 はこべら[はこべ]○加賀及東尾張にて・あさしらげといふ[西尾張にてははこべとふ]丹波辺に
ては・ひんずりと云
鼠麴草 はゝこぐさ○遠江国にて・ちゝぐさ下野宇都宮にて・ねばりもちと云信濃
にて・かはちゞこといふ尾州にて・とう(*「とう」に傍線)ごと云上総にて・かうじばなと云世俗

(4ウ)
三月三日此草を用ひて餅を制し母子{はゝこ}餅となづくこれを蓬{よもぎ}にかへてよ
もぎ餅と云また草餅と云事実は『文徳実録』に見えたり又|五形蒿{ごきやうよもぎ}と名づく
人日七種の其一ツなり
火焔菜 さんごじゆ(*「じゆ」に傍線)な○播州にて・あかぢさと云江戸にて・たう(*「たう」に傍線)ぢさといふ
蚕豆 そらまめ○東国にて・そらまめといふ西国にて・たう(*「たう」に傍線)まめ出雲にて・なつまめ
尾張にて・のらまめ[同名有別種也是は空豆の転語にや]伊豆駿河にて・五月まめ相模にて・
ふゆまめ下総にて・ゆきわりまめ伊勢及遠江にて・がんまめ中国にて・てん
ぢくまめと云[空豆とは其|実{み}の空に向て生る故になつくとかや]
刀豆 なたまめ〇九州及四国にて・たちはきといふ
眉児豆 ゐんげんまめ○京にて・ゐんげんまめといふ江戸にて・ふぢまめと云西国にて・
なんきんまめと云上総にて・さいまめと云伊勢白子にて・せんごくまめといふ
『農政全書』ニ眉児豆これ扁豆の類と有

(5オ)
黎豆 ゐんげんさゝげ○近江にて・はつしやう(*「しやう」に傍線)まめと云関西にて・ふぢまめといふ西国
にて・てう(*「てう」に傍線)せんさゝげと云勢州白子にて・なたまめといふ[同名有混すへからず]伊勢駿河
にて・にどなりと云奥之南部にて・さゝげと云[此所にていふ十六さゝげは別也]下総佐倉にて
・せんだいさゝげといふ東上総にて・二度十六といふ
莧 ひゆ○東国にて・ひや(*「ひや」に傍線)うと云奥ノ津軽にて・ひや(*「ひや」に傍線)うあかざといふ加賀にて・は
びや(*「びや」に傍線)うと云○馬歯莧{むまびゆ}相模にて・いぬひやうと云○加賀にて・ずんべらびや(*「びや」に傍線)う
と云を江戸にて・すべりひやうと云
萱艸 くはんさう○信州にて・とつ(*「とつ」に傍線)てこうと云肥ノ唐津にて・くはんすと云
䕲蒿 よめがはぎ[よめな]○京江戸共に・よめなといふ畿内の女言に・おはぎと
いふ近江にて・はげといふ今按におはぎといふは薺{なつな}といふ説は非也『源順和名抄』ニ
薺[和名]奈都那又薺蒿[和名]於八木如此出せり薺蒿{せいかう}の二字なづなよもぎ
と訓{よむ}故になづなとす文字になづます其いふ所につきて正すべきか『万葉』ニ宇

(5ウ)
|波疑{はぎ}又兎牙子{うはぎ}と詠せり後うの字転しておとなりたるもの歟其例多し
女詞に御の字を冠らしめておはぎといふにはあらさるべし
独活 うど○西国にて・しかといふ西国にては土中に有を・独活{とづくはつ}といひ二三寸地上に
生じたるを・うどといふ尺以上になりたる物を・しかと呼阿部氏云松前|千
砂野{ちさごの}の浜より真の独活を出す土人これを・さいきと云京嵐山にも有・し
しうど又いぬうどといふ
迷蕨 ぜんまい○上総にて・ぜんごといふ[別種に前胡といふ有上総にてはぜんまいをいふ]
番椒 たうがらし○京にて・かうらいごせうと云太閣秀吉公朝鮮を伐ち給ふ
時|種{たね}を取来る故に此名有西国及奥の仙台にて・こせう(*「せう」に傍線)といふ[東国にて真の胡椒をゑ]
[のみこせうといふ]出羽にて・とこぼしといふ但奥羽のうちにてもなんばんと称する所
もあり上総及参遠にて・なんばんといふ越前にて・まづものこなしといふ[是は]
[江戸にて番匠の隠語にかけやといふもおなし心なり]

(6オ)
茼蒿 しゆ(*「しゆ」に傍線)んぎく○近江彦根にて・ろう(*「ろう」に傍線)まといふ京大坂にて・かう(*「かう」に傍線)らいぎく又きく
なともいふ関東にて・しゆんぎくといふ
土筆 つく〳〵し○東国にて・つくしともいふ[これ略語なり]作州にて・ほうしといふ
〽佐保姫の筆かとそみるつく〳〵し雪かきわくる春のけしきを 為家卿
冬瓜 かもうり[とう(*「とう」に傍線)ぐは]○畿内及中国北陸道或は上総にて・かもうりといふ東国
にて・とうぐはといふ東国にてとう(*「とう」に傍線)ぐはをとう(*「とう」に傍線)がんとはねてよび又大こんをば
大こといふこそをかしけれそれにつきて摂州伊丹にては古酒{こしゆ}を・こう(*「こう」に傍線)しう(*「しう」に傍線)又
旦那を・だんなん大坂にて朝夷奈{あさいな}を・あさいなん京にて坊{ぼう}を・ぼん畿内にて
牛房{ごぼう}を・ごんぼ又にんじんを・にじ播磨にて粟{あは}の穂{ほ}を・粟のほう(*「ほう」に傍線)又ゐん
らう(*「らう」に傍線)を・ゐんろ伊勢にて米一斗を・いつとう・二斗ウなどゝいへるたぐひ諸国かぞ
ふるにいとまあらず
南瓜 ぼうふら○西国にて・ぼうふら備前にて・さつまゆふがほ津国にて・なんきん

(6ウ)
東上総にて・とう(*「とう」に傍線)ぐは(*「ぐは」に傍線)ん大坂にて・なんきんうり又ぼうぶら江戸にて先年は・ぼう
ふらといひ・今はかぼちやと云
越瓜 しろうり○京にて・あさうりといふ一種筑紫にて・つけうりといふ有江戸
にて・はなまるといふ
菜瓜 なうり○京にて・あをうり大坂にて・なうり大和にて・はなんぼ江戸にて・まる
づけ相模にて・かたうりといふ[東国にあを瓜と称する有別種也]
糸瓜 へちま○信濃にて・とうりと云薩州にて・ながうりと云とうりは糸瓜{いとうり}の上
略なるへし或人の曰へちまといふ名はとうりより出たり其故はとうりのと
の字はいろはのへの字とちの字の間なれはへちの間といふ意にてへちまと
なつくるとぞ又諺にへちまのかはのだんぶくろといふ事有是は此へちまにはあら
ずへちくわんが馬の革{かは}一駄袋といふ事也へちくはんは茶人にて茶器を革{かは}袋
に入馬につけて遊行せしとなり侍の隠遁{いんとん}したるにて粟田口に住めり利久い

(7オ)
また与四郎といひし頃或日粟田くちの庵を尋ける庵主はもとより道化
ものと聞及ひ与四郎ゑぼしひたゝれにて云入けれはあるじむかひに出一礼して
引込み数寄屋にしめを張りあたら敷ひさげに塩水を入て笹の葉にて
与四郎をあたまくだし清め三宝にかはらけ洗米をそなへ神の影向と名づ
け茶をふるまひかへしたりとなんよにをかしき物なりけり
甜瓜 まくはうり○西国にて・あじうり奥の仙台にて・でうり佐渡にて・ちん(*「ちん」に傍線)
めう(*「めう」に傍線)と云○又江戸にて云・ぎんまくはを備前にて・せんしかと云奥の津軽
又松前にて・しまうり南部にては・きんくは(*「くは」に傍線)といふ真桑瓜は美濃国真桑
村の産を上品とす故に名づくとぞ又越前にて・ねづみ真瓜といふ味ひ甘美
なり吐方に用る所の瓜葶是なり其味ひ甚苦し余国の産は吐方に用ひ
て功なし
西瓜 すいくわ○大坂にて・さいうりといふ

(7ウ)
錦茘枝 つるれいし○長崎にて・にがごう(*「ごう」に傍線)りといふ是は苦瓜{にかうり}の転語なるべし
磐梨 いばなし○京及近江にて・いばなしといふ北国にて・すないちごといふ其葉
|平地木{はなたちはな}ににて高サ五六寸三月|実{み}を結ぶ大豆の如くにて円し外の色青く内
は紫黒色味ひ酸{す}く甘{あま}し京畿の小児好んて食ふ漢名未詳
栝蔞 からす瓜○伊勢及紀伊熊野辺にて・うりねと云越前にて・くそうり
といふ土佐にて・ぐどう(*「どう」に傍線)じと云[其根を同国にてこびと云]肥前にて・ごうりといふ[和産二三種有其|核{さね}玉づさの如]
[くなるものは王瓜なり]
桔梗 きゝやう○信州上田にて・くは(*「くは」に傍線)んさう(*「さう」に傍線)と云『古今和哥集』物名の哥に
〽秋ちかう野はなりにけり白露のをける草葉の色かはり行
防風 ぼう(*「ぼう」に傍線)ふう(*「ふう」に傍線)○畿内及芸州信州にて・山にんじんといふ[是和名也]
按に今野菜となす物は浜防風なり江戸の市にあるもの相州鎌倉より
をゝく是を出す茎{くき}葉{は}ふとくして胡羅葡{にんじん}に似たる物真の防風なり

(8オ)
沢瀉 おもだか○北国にて・なゝとゝ云畿内にて・さじおもだかと称す是薬草なり
一種|慈姑{くわい}に似て花さく物をもおもだかといふ同名異物なり
麦門冬 ぜうがひげ○関西及四国共に・ぜうがひげと云東国にて・りう(*「りう」に傍線)のひげと云
奥州にて・たつのひげと云尾州にて・蛇{じや}のひげといふ
石蒜 しびとばな○伊勢にて・せそび中国及武州にて・しびとはな又ひがんばな又
きつねのかみそり・上総或は美作にて・いう(*「いう」に傍線)れいばな又ひがんはな越後信濃に
て・やくびうばな京にて・かみそりばな大和にて・したこじけ出雲にて・きつね
ばな尾州にて・したまがり駿河にて・かはかんじ西国にて・すてごばな・肥ノ唐津
にて・どくずみた土佐にて・しれい又しびと花又すゞかけと云又・まんじゆ(*「じゆ」に傍線)しや(*「しや」に傍線)け
と云有種類なり
酸摸 すいば○畿内にて・すいどう(*「どう」に傍線)と云江戸にて・すかんぼと云西国にて・すいばと
いふ上野にて・すいこきといふ加賀にて・すいこといふ『多識』ニ酸摸すし又すい

(8ウ)
とう草と有是也
酢漿草 かたばみ[一名すいものぐさ]○京にて・とんぼぐさ泉州堺にて・すもゝ筑紫にて
・こがねばな出雲にて・すいぐさ相模にて・はすぐさ江戸にて・すぐさ・奥ノ
津軽にて・すかんこ尾張にて・すいもの草と云
白前 しらはぎ○江戸にて・しらはぎと云これ古名なり駿河にて・しかみぐさと云
加賀にて・かもめぐさと云伊勢にて・ひよ(*「ひよ」に傍線)い〳〵草と云按に葉は萩に似て
小白花咲り唐種にろくゑん(*「ゑん」に傍線)さう(*「さう」に傍線)と云有上品なる物也
大蓼 せんにんさう〇九州及東国にて・ふつくさと云尾州にて・くつぐさといふ武州
隅田川辺にて・馬の歯{は}かけ草といふ
立葵 たちあふひ○武州にて・たちあ|ふ{ヲ}ひと云勢州にて・やう(*「やう」に傍線)らう(*「らう」に傍線)ぐさと云阿波
にて・ゑれぐさといふ漢名未詳
莨菪 ほめきぐさ○江戸にて・なゝつぎゝや(*「ゝや」に傍線)うと云肥後にて・はしりどころといふ『広』

(9オ)
『大和本艸』葉商陸に似て小也根野老に似たりあやまつてこれを食へば狂走し
て止ず故にはしりどころといふと云々
鼓子花 ひるがほ○陸奥及上野下野越後にて・あめふりばなと云越前にて・
こう(*「こう」に傍線)づるといふ相州海辺にて・へびあさがほといふ
縑摺艸 もぢずりぐさ[一名ねぢはな]○筑前にて・しんこばなと云今按に果子の類
に真稿{しんこ}といふ物有団子に似て制少し異なりもぢずりの花形かのしんこに
似たり故にねぢはなしんこばななどいふか尾州にて綿|繰{くり}の真木の両の端の
ろくろをしんこといふもおなじ意なるべし又餻の類を果子といふ事は
『説郛』ニ見えたり点心{ちやのこ}ともいふ『勢陽雑記』ニ勢州呑海院は絶景の地にて
駿河の富士も見ゆる此所にて一休和尚発句に
〽海をのむ茶の子か雪の富士の餅
白頭翁 ちごばな[一名しや(*「しや」に傍線)ぐま]○京都にて・うないこ又ぜがいさう(*「さう」に傍線)[善界の謡に大唐の天狗の首領善界坊]

(9ウ)
[と有其髪に似たりと也]大坂にて・ひめばな江戸にて・おきなぐさ[是和名なり]畿内にて・ち
ごはな美濃にて・がくさう(*「さう」に傍線)加賀にて・けし〳〵まないた甲斐にて・けいせい
さう(*「さう」に傍線)木曽にて・かぶろ越中にて・おにごろ又・てんぐのもとゞり仙台にて
・ちゝんこ下野にて・ちゝこ又・かはらちご筑前にて・ねこぐさ・ぜがいさう飛騨
にて・ものぐるひ又・かつ|し{チ}き四国にて・尉{ぜう}どのと云
免糸 ねなしかづら○東国にて・さう(*「さう」に傍線)めんぐさと云筑前にて・うしのさう(*「さう」に傍線)
めんと云案に下野の国日光山さうめん谷の水中に此草をゝし東
武には隅田川に有
三稜 みつかど○伊勢にて・さぎのしりさしと云東武にては井ノ頭の池辺に
多くあり[三稜種類あり]
玉楼春 いはくちなし○武州にて・たまてばこと云
石逍遙 まんねんかづら○北国にて・せんだんかづらといふ

(10オ)
連銭草 れんぜんさう○江戸にて・かんとり草と云駿河にて・かたいかりと云加賀
にて・ねぜりと云此草地に付て生す気味芹の臭{か}有鉄猫児{いかり}の形に似て
花半分有によりて名づけてかたいかりといふ花又蓮の香有故に半辺蓮
の名有なるべし是『広大和本艸』の説なり松岡氏曰唐土の書に半辺蓮
と云草有是日本にて絵に書る唐草と云物也とぞ案にかんとり草は
古説連銭草と云但二種有蔓生なる物こゝに云かんとり草疳疾の薬也
其名によりて小児喰初の器物に此草を画く今の唐草の初也と云[未詳]
又一種犢生なるもの鹿蹄草和名まらはらしと云又・積雪草又げんの
しや(*「しや」に傍線)うこなと云武江本所三囲稲荷社の側に多く有
烏鳳花 しやちく○常陸にて・とんぼはぎといふ
籩箕柴 七だんくわ○甲州にて・ちやうでまりといふ花の色みどりにして四出一ト房
に数百花つく葉茎ねばりて衣に付はなれがたし

(10ウ)
鹿蹄草 すゞらん○大和にて・まきをもてと云江戸にて・べつかう(*「かう」に傍線)さうといふ
鹿蹄草[未詳]江戸には四谷大宮八幡社地に見えたり同名別種あり
羊乳 つるにんじん○江戸にて・つりがねかづらといふ木曽山中にて・ちうぶと呼
淫羊藿 いかりぐさ○江戸にて・くもきりと云
薄荷 はつ(*「はつ」に傍線)か[和名めくさ]○西国にて・めはりぐさといふ[ひきをこしといふは山薄荷なり]
沙参 しや(*「しや」に傍線)じん[和名つりかねにんじん]○山城山科にて・びしや(*「しや」に傍線)〳〵と云越中にて・
しや(*「しや」に傍線)ぐしや(*「しや」に傍線)といふ但馬にて・きゝや(*「ゝや」に傍線)うもどきとよぶ筑紫にて・してんばと云
南部にて・やまだいこんと云上総にて・へびぢやわんといふ
大戟 のうるし○山城伏見にて・きつねのちゝと云江戸にて・たかとう(*「とう」に傍線)だいと云
沢 とう(*「とう」に傍線)だいぐさ[一名すゞふりばな]○備前にて・みこのすゞと云
鴨跖艸 あをばな[つきくさつゆくさうつしばな]○畿内にて・あをばな又つゆくさと云江戸にて
・つゆくさと云上総にて・はたをりぐさと云尾張にて・ぼうしばなといふ

(11オ)
加賀にて・こう(*「こう」に傍線)やめんといふ近江にて・こんやたらう(*「らう」に傍線)と云讃岐にて・かまづか
と云土佐にて・かまづか又ほたるぐさといふ白石翁の云ようづのはなは
朝日影にあたりてこそ咲に此花は月影にあたりてさけば月草とも云
今按に『新古今集』ニかすが野の若紫のすり衣と詠る此すり衣は紫
草にて摺たる衣にて女を紫にたとへたる也惣して摺衣は地に直に草
を摺付るもの也今のもみぢずりの如し摺衣四色有爰に略す又俗
に藍紙といふもの月草にて制したる物といふ
〓〓根 かやつりぐさ○近江にて・とんぼぐさと云常陸にて・ますぐさと云安房
にて・ますげと云一名連銭草又積雪草を連銭草といふは其葉銭
に似たる故なつく同名別種也
蕺菜 じうやく[しぶき]○江戸にて・どくだみといふ武蔵にて・ぢごくそばといふ
上野にて・どく草といふ駿河沼律にて・しびとはなと云越前にて・

(11ウ)
どくなべといふ
升麻 とりあし[あはもり]○京にて・あはぼと云下野陸奥にて・もくだと云
[同国にて葉をくさちや(*「ちや」に傍線)又にがちや(*「ちや」に傍線)と云]
遠志 をんじ○京にて・ひめはぎと云西国にて・野茶と云
天麻 ぬすびとのあし○仙台にて・ぬすびとのあし[和名也]下野にて・のづちと云
㡣牙 だいこんな○江戸にて・たんごなと云備前にて・だいこんさうと云其葉
菘に似て実はさやをむすぶ物也一種狼牙をも大根草と云未詳
免葵 いはぶき○越中にて・はこべらと云加賀にて・はこべといふ是は正月七日
七種のうちのはこべらにはあらず
景天 いきくさ[はちまんさう]○京にて・べんけいさう(*「さう」に傍線)と云筑紫にて・ちとめと
いふ江戸にて・いちやくさう(*「さう」に傍線)と云今按に景天其葉厚く薄白ク
花一所に集り咲て白く口紅有てうるはしき小花ひらく茎を伐て

(12上オ)
糸をもて釣て置にしぼみかはきて後雷の鳴る時必色を増す草なり
故につよきといふ意にて弁慶草と名つくる歟又一種鋸葉なる物有是は
きりんさう也又東国にて冬の日老人|巨燵{こたつ}をはなれかぬるをこたつべんけい
といふ其意は巨燵にのみつよきといふ事也又関西にてな|み{ン}だ弁慶又は泣{なき}
弁慶なといふは人に負{まくる}事きらひにて泣勝{なきかつ}といふ意なるべし又関東にて
巻藁{まきわら}を尺余リに制{つく}り縄{なは}を以て中らにさげて灸{あぶり}たる魚の串{くし}と共に貫{つらぬき}
置物有名づけて弁慶とよぶ是は彼の弁慶か七ツ道具といふ差物に
似たりとて名づくる歟
独頭蘭 ほくり○畿内にて・ほくりといふ播磨にて・ほくろと云四国にて・ゑくり
東国にて・はくりと云又・ほつ(*「ほつ」に傍線)くりと云・ほくりは略{ほゞ}蘭に似て愛しつべき花也
奴僕{ぬぼく}其根をとりて皹{あかゞり}をそくふもの也関西にてそくふと云は東国にてこそ
くると云詞なりそくふとはそくい粘{のり}そくひ板などいふか如し

(12上ウ)
莕 あさゞ[一名すつ(*「すつ」に傍線)ほんのかゞみ]○近江の大津にて・ちや(*「ちや」に傍線)んきんと云尾張にて・とちの
かゞみといふ[同国にて泥亀をとちといふ]甲斐にて・くちじや(*「じや」に傍線)け伊勢にて・どんがめぐさ同国
白子にて・いけのおもだか駿河にて・なぎ加賀にて・いもなぎ周防にて・え
んかう(*「かう」に傍線)いもばといふ[当国にてえんかうといふはかはたらう(*「らう」に傍線)のこと也]肥後にて・かはいも備前にて・すつ(*「すつ」に傍線)
ぽんもく江戸の四方にて・かへるゑんざ又・かはと又・ぜにもく又じやん(*「じやん」に傍線)〴〵もく
又・かつぱのだましなどゝいふ下野にて・くさあ|ふ{ヲ}ひ常陸にて・どぶばす仙台
にて・だぶなぎ越後及越中加賀にて・がめはな[此国にては泥亀をがめといふ]
今按に莕{あさゞ}は蓴菜{じゆんさい}の類夏に至りて黄色の花ひらく一種白花なるもの
有睡蓮{すいれん}といふ京都にひつじぐさと云是なり未ノ剋よりつぼむゆへに名とす
又浮草は惣名{さうめう}也萍{へい}といひ蘋{ひん}といふ種類をゝし葉の裏に水沫{すいまつ}有ものは
蘋{ひん}水沫なきは莕{かう}なり又|田字艸{でんじさう}といふものは則萍にて別種なり莕{かう}は荇{かう}
に同し『詩周南』参差タル荇菜又あさゞと詠る哥

(12オ)
[夫木]〽おもふことそこ深からぬ浮寝より心あさゞのさてそ生ける
浮薔 なぎ○畿内にて・さはぎゝや(*「ゝや」に傍線)う又・水あ|ふ{ヲ}ひといふ東国にては水あふひと云
[沢桔梗の名はなし]中国及九州にて・あぎなしといふ大和及尾張にて・水なぎと云俗に
水葱{なぎ}と書く花を沢ぎゝやう(*「やう」に傍線)といふ夏秋ひらく其色桔梗の如し
石竜苪 たがらし○京江戸共に・たがらし又・たぜりと云西国にて・うしぜり又う
ばぜり又・ひきのかさと云上総にて・かへるのきつけと云下総にて・たゝらび
といふ[但たがらしと称する物二種有]
眼子菜 ひるむしろ○畿内及北越にて・ひるむしろと云関東にて・ひるもといふ信
州にて・びりこといふ奥の津軽にて・びり物といふ田夫とりて瞼{まふた}の腫{はれ}にはる
もの也『救荒本艸』にさゝもと有実に笹の葉に似たり
菰 こも[海草にこもといふ有よつてまこもと云端午にちまきをまくにこもを以てす]〇陸奥にて・かつみと云
[古今]〽みちのくのあさかの沼のはなかつみかつ見る人に恋やわたらん

(12ウ)
燕子花 かきつばた○常陸にて・かほばなと云[これはかほよばなの略語也]
かきつはたを坂東にて筆花といふをきゝて
〽ふではなといふことはりをきくからに一首はかうそかきつはた哉 信海
牛面艸 たそば○賀州にて・かへる草といふ江戸にて・牛のひたいといふ
綿棗児 つるぼ○山城にて・つるぼといふ筑紫にて・ずいべら又・たんぱんぐはゐと云江戸
にて・うしのふし又牛うらう(*「らう」に傍線)と云田野に多く春宿根より生ず夏に至て
藤色の穂の如くなる花さく翁ぐさの花に似たり高さ四五寸根は水仙の如し
蘿摩 ちゝくさ○京にて・ちぐさ又・らまさう(*「さう」に傍線)江戸にて・ちゝぐさ又・らまさう(*「さう」に傍線)
ともいふ上総にて・やいとばな[花灸に似たり]つくしにて・がぶなといふ土佐にて・がゞいも
といふ蘿摩{らま}は腎{じん}を益し精{せい}を補{おきな}ふもの也葉の形細長く厚く両|対{たい}して
をもてにうす白く筋有好事{こうず}の人は茶のかはりとなし又其根を炙{あぶり}て
食す甚甘し葉|茎{くき}ともに日にほして焚{たけ}ば悪臭{あくしう}を消{け}す実{み}は細長く三

(13オ)
四寸ばかり有へちまに似たり名づけて雀瓢といふ秋の末熟し枯て二ツに
われ中より綿の如くなるもの出{いづ}是を東武薬店ニて和のぱんやと云
羊蹄 し[俗ニしのね]○近江及西国にて・ぎし〳〵と云出雲にて・しんざいと云江戸にて
・大黄と云松岡氏ノ曰|薬家{くすりや}穿眼{つなぎ}と称する物真の大黄也片{そぎ}と称するは
真にあらす則羊蹄なりとぞ
蘭菊 らんぎく○京にて・らんぎくと云西国にて・山かうじゆといふ是は香薷の
類にあらす漢名未詳
聚八仙 かいば○筑紫にて・やぶでまりといふ
車前 おほばこ○甲州にて・みちばう(*「ばう」に傍線)きといふ房総にて・ほ|ゝ{ヲ}づきばと云野州及
奥州にて・かへるばといふ
海金砂 うにくさ○京にて・かにくさ又かんつると云近江及美濃或は上野にて・たゝ
きぐさ又いとかづらと云西国にて・はなかづら又さみせんかづらといふ

(13ウ)
菫 すみれ○畿内及近江加賀能登又東海道筋すべて・すまふとりぐさ
と云江戸にて・すみれと云上野にて・すまふばな仙台にて・かぎばなと云大
和の奈良ノ小児・治郎坊太郎坊と云西国にて・とのゝ馬と云菫一名こま
ひき草といふ漢名|剪刀草{せんとうさう}花紫白二色有共に茎{くき}のかたはらに鈎{かぎ}の
形あり両花まじへ相ひきて小児のたはふれとす故にすまふとりくさの
名有又東武にてすまふとり草と称する別種有江戸|鄙{いなか}にてはぐさと
よぶ草の穂に出たるを云漢名知不(*原本「不知」の順)尾州にて・やつまたといふ是也貞砂が
足を空なるすまふとり草と聞えし附句もむかしがたりとなりぬ
砕米菜 げんげ○畿内にて・げんけばなと云江戸にて・れんげはなといふ筑前にて・
宝幢花{ほうどうけ}といふ今按にいにしへにいふすみれ草是なり今げんげばなと
いふ葉は柳の葉に似て花紫色形蓮花のごとし歌人|今古{こんこ}詠賞{ゑいしやう}して
すみれ草といふ又正月七日七種の菜羮{さいかう}のうち仏の坐と云説非なり又

(14オ)
壺すみれ論物也こゝに略す
銭藤 こふぢ○大和及伯耆にて・ときしらずといふ
燕麦 かるかや[一名しもぐさ]○奥州にて・しほがまがやと云是『本艸』ニ謂ル燕麦の事
にて和哥に詠する所の刈萱にはあらすかやは草の惣名か『日本紀』ニ萱姫
惣て草の始て生するの名とす尚異説有又木ノ艸に従{したが}ひ艸ノ木に従{したが}ふ
の文字をゝしたとへば桔梗山茱萸の類にて草木の称も相通して難
なし『丹鉛録』ニ『青史古礼云』男子生レテ天地四方ヲ射ル其文ニ云東方ノ|弧{ゆみ}
梧ヲ以梧ハ者東方ノ艸春木也南方之弧柳ヲ以ス柳者南方之艸夏ノ
木也中央ノ之弧桑ヲ以桑者中央之木也西方之弧棘ヲ以棘者西方ノ
草也秋木也北方之弧棗ヲ以ス棗者北方之艸冬木也是又草ト称ス可キ
也云云(*原本「男子生而射天地四方其文云東方之弧以梧梧者東方之艸春木也南方之弧以柳柳者南方之艸夏木也中央之弧以桑桑者中央之木也西方之弧以棘棘者西方之草也秋木也北方之弧以棗棗者北方之艸冬木也是又可称草也云云」の順)
天南星 をほそひ○京都江戸ともに・むさしあぶみと云

(14ウ)
槖吾 つは○江戸にて・つはぶきと云大和にて・たからこと云
続断 をとりばな○江戸にて・をどりこ草といふ信州にて・へぼくさと云『本艸会志』
続断をどりこぐさ又こもそう草と云と有
巻柏 いはひば○伊勢にて・いはまつと云武州秩父にて・てんぐのもとゞりと云
和名ニいはぐみ又いはごけと有は今云いはひば也
有通 ありどほし[一名とりとまらず]○駿河にて・ねずみばなと云江戸にて・あり
どほしと云九月|実{み}生{な}りて翌年まで持ゆへありどほしといふ
紫羅傘 いちはつ○伊豆及駿河にて・ひでり草又万年草といふ
水仙 すいせん○房州にて・ぎんだいと云一重なる物を金盞銀台といひ
千葉なるを玉|瓏玲{ろうれい}と云
蘡薁 いぬゑび○京にて・いぬゑび西国にて・がらみ東国にて・むまのぶす相
模にて・ゑびぞろ上野にて・山ゑび上総にて・ゑびと云[がまごよみ又ゑびづるなとも云則野蔔萄也]

(15オ)
西番連 とけいさう(*「さう」に傍線)○長崎にて・ぼろんかづらといふ時計草は享保年中始て
わたる西番連となづけて来るよし『笠翁書傅』ニ出
薏苡 ずゝだま○東国にて・ずゞごと云上総にて・はちこくといふ
日向葵 ひうがあ|ふ{ヲ}ひ[丈菊]○江戸にて・ひまはりと云大和及加賀にて・ひぐるまと云
紫金牛 からたちばな○京にて・からたちばなと云関東西国共に・やぶかう(*「かう」に傍線)じと云
鳳尾生 はこねうつぎ○武州にて・をらんださうと云加賀にて・くろはぎといふ
甲州にて・よめがはしと云
海仙花 さつきばな○仙台にて・けたのきといふ常陸にて・山うつぎと云紀州にて
・みやまがすみと云駿州にて・あかてう(*「てう」に傍線)じといふ越中にて・たいほう(*「ほう」に傍線)のきと云
けたのきとは民俗|海参{いりこ}の桁{けた}にする故に名つくといふ
南天燭 なんてん○上総にて・らんてんといふ『南留別志』ニ『八種画譜』蘭天竹と云り
からもやまともらとなとは通ふなるべしと有

(15ウ)
玉紫 たまむらさき○京にて・むらさきしきみといふ筑紫にて・こむらさきと云
荼蘼 ときんいばら○畿内にて・ごやをぎと云江戸にて・ときんばら又・ぼた
んばなといふ西国にて・きくいばらと云
案に花は白牡丹に似て小なる物なり故にぼたんばなといふ歟又とびろく
といへる酒は此花の色に似たりとて或は酴醿漉{どびろく}或は酴釄緑{とびりよく}等の説有
松岡氏とぶろくは濁醪{だくろう}の転語かといへり『文選』に濁醪{だくらう}にごりさけと
訓{くん}ず関西にてはどびろくと云関東にてはどぶろくともにごりさけ共
いふ松岡氏の説によるべきか
郁子 むべ○奥州南部にて・木まんぢうと云或説に是は『本艸』に載る木
蓮の実也秋に至りて熟し味ひ甘し小児好んて食ふ江州高嶋郡
奥ノ島権兵衛といふもの毎年十一月朔日禁中エ献ス文武天皇の
ころより今に絶すといふ土人此葉を採{と}り煎して廱腫{ようしゆ}を洗ふ能

(16オ)
崩れずして平癒すといふと見えたり
天仙花 さるのしり○勢州にて・かきのほゝづきと云駿州にて・さるがきといふ或
説に此樹花なくして実を結ぶうどんげとするも天仙花をさす也
と有今按にうどんげと称するは稀に花さく木をすべて呼にやあらん
無花果『本艸釈名』にうとんげと有又芭蕉の花をもいふ也又天仙花[未詳]
合子草 よめのごき○京にて・ひめうりと云西国にて・よめのごきと云東国にて
・すゞめのうりといふ安房にて・きんぶんしきといふ
堅香子 かたかご[かたかご古名也今かたくりと云]
○奥州南部にて・かたくりと云江戸にて・かたくり又
うばゆり又ぶんだいゆりと云京にて・はつゆりと云野州日光山にて・ごん
べいるといふ松井氏ノ曰奥州南部にかたくりと云草有其形百合に似たり
花もゆりに似て正月頃紫色の花さく其根をとりて葛の如く水飛し
てねり餅となして食ふ『万葉』及『新撰六帖』に詠ずる所の堅香子と

(16ウ)
いふ物なりとぞ
[万葉]〽ものゝふのやそのいもらかくみまかふ寺井のうへのかたかこの花
[六帖]〽ものゝふのやそをとめらかふみまとむ寺井のうへのかたかしの花
辛夷 こぶし○奥ノ南部にて・ひきざくらといふ[一名木筆又迎春花といふ]
笑靨花 こゞめさくら○江戸にて・こゞめざくらと云加賀にて・こめやなぎ畿内及
四国にて・こゞめばな又すゞかけ又ゆきやなぎと云
[夷曲集]〽それはきねこれは木の根にこほれけり粉米の花の風にくたけて
雪毬花 こでまり○奥州津軽にて・しつがけといふ
八手木 やつでのき○上総にて・うしあふ(*「あふ」に傍線)ぎと云[八手木は和品也]
莾艸 しきみ○遠江にて・かう(*「かう」に傍線)しば又かうのきと云因幡にて・はなの木と云
江戸にてしきみの名は勿論たゞ花とばかりもよぶ也是はたてばなの上略
なるへし貝原翁のいはく樒とはあしき実といふこゝろ也或人しきみの実

(17オ)
毒にあらずといへり余考るに毒有誤て食ふべからず又六月廿四日
京師の男女|愛宕{あたご}に詣て樒を求めて下向する事ありしきみが原
名所なり曽根好忠の哥に
〽あたこ山しきみか原に雪つもり花つむ人の跡たにもなし
木槿 むくげ○東国にて・はちすと云京江戸共に・むくげと云常陸及上
総下総にて・きばち又・もつきといふ[もつきんの下畧也]九州にて・ぼてんくわ(*「くわ」に傍線)と云
奥州にて・かきつばき又きばちと云南部にては・きばちすと云[これ和名なり]
『万葉』に〽あさかほは朝露をふてさくといへと夕かけにこそ咲まさりけれ
と詠せし朝顔は槿花ならんか『和名鈔』に牽牛花あさかほと訓す『古
今物ノ名』けにごしと詠るは今云あさがほなり同名異物也
曼陀羅花 まんだらけ○江戸にて・てう(*「てう」に傍線)せんあさがほと云総州にて・木あさがほと云
遠江にて・てう(*「てう」に傍線)せんたばこといふ

(17ウ)
五味 さねかづら○大坂にて・びじんさうといふ東国にて・びなんかづらと云出雲
にて・とろゝかづらと云伊勢白子にて・くつばと云土佐にて・ふのりかづら
といふ又さねかづらの実則薬物の五味子{ごみし}也相州底倉辺にて・五九の伊と云
菝葜 さるとりうばら[さるとりの花]○近江及讃岐にて・からたちと云伊勢にて
・かんたちと云備後にて・ほらくひと云佐渡にて・ないばらと云筑紫にて
・かめいばらといふ上総にて・かごばらといふ越後にて・さるかきばらといふ
俗に倭山帰来とする物是なり西国にて異名・五郎四郎柴と云この
葉をもつて小麦餅を包む其餅を五郎四郎といふ故に此名あり
〽夕かほに鏡みせはや五郎四郎 支考
山茶科 れうぶ[はたつまりはたつもりともに古名なり]○畿内及美濃尾張にて・りやう(*「りやう」に傍線)ぶといふ
遠州にて・ぎやうぶといふ播摩にて・れうぼといふ
今按に『救荒本艸』ニ山茶科和名リヤウ(*「リヤウ」に傍線)ブとある是也山民葉を採りて

(18オ)
蒸{むし}て食のたすけとなす物也
[夫木]〽里人や若葉つむらんはたつもりみやまも今は春めきにけり
柾 まさき○武州にて・まさきといひ又玉つばきと云上総にて・した|は{ワ}れと云
西国にて・くろぎと云[薪のくろきにはあらす]案に西国にて玉つばきと称する物は
柾{まさき}にてはなし白玉椿にて別種也『後拾遺』に式部大輔資業の哥に
〽君か代は白玉椿やちよとも何にかそへんかきりなけれは
とよめる是なり
合歓木 ねふりのき○京にて・ねふりのき中国及四国にて・ねぶのき西国にて
・かうくわ(*「くわ」に傍線)んぼく近江及越後にて・かう(*「かう」に傍線)かのき関東にて・ねぶたの木と云
周防にて・ひぐらし美作にて・かう(*「かう」に傍線)かいと云『万葉』ニねぶ又かをか共詠り
吉利子樹 うぐひすのき○江戸にて・うぐひすと云京にて・うすの木と云伊賀に
て・こしきぐみと云奥ノ津軽にて・しだみといふ木は二三尺に及フ小木

(18ウ)
にて正月小花ひらく三四月実熟す赤くして中くぼみ形臼に似たり
小児好んて食ふ葉はつゝじの如し秋に至て紅葉す立花の下草につか
ふ物也『救荒本草』ニ一名急縻子和名ウグヒと見えたり
蚊子木 ひよ(*「ひよ」に傍線)ん○西国にて・さるびや(*「びや」に傍線)うと云土佐にて・さるぶゑといふ尾州にて
・きひよ(*「ひよ」に傍線)んと云今按に土佐の国にて此木をゆしの木と云又俗にゆ
すの木ともいふ其木より生ふる虫の巣也中より出るむしを尾州に
ていんのこといふ此国にてひよ(*「ひよ」に傍線)んといふ時は瓢{ひよん}の義にてひさご也又駿州にて
は祭礼の笛にして吹|在所{ざいしよ}有又胡椒壺とし或は瓢簟{ひやうたん}にかゆるゆへに
ひよんとよぶとなり
橡実 どんぐり○信州にて・ぢだんぐりと云又どんぐりの蔕{へた}を江戸にて・よめの
ごきといふ伊勢にて・こめのごきといふ越後にて・ならがまと云上野にて
・よめのごうしと云今按にはゝそと云ヒつるばみといふは古名なり今

(19オ)
・くぬぎ又・こなら又・いしならなどいふ西国にては・ならこう(*「こう」に傍線)といふ東
国にて・こならと云越前にて・ほう(*「ほう」に傍線)さといふどんぐりは則くぬぎの実なり
池田炭は此木をもつてやく摂州一倉といふ所にてやくといへとも池田
炭と称す
小梅 こむめ○江戸にて・こむめといふ関西及近江にて・庭むめと云[これ梅の品類なり]
八朔梅 はつさくばい○関東の称号なり西国にて・かんかう(*「かう」に傍線)ばいといふ
寒紅梅 かんかうばい○関東にて称し呼西国にては・浅香山{あさかやま}といふ
水楊 かはやなぎ○京都にて・ゑのころやなぎと云江戸にて・さるやなぎといふ
白楊 はこやなぎ○京師の称也筑紫にて・いぬやなきといふ牙枝{ヤウジ}にけづり
又扇の箱となす木也
接骨木 にはとこ○上総にて・くさじきといふ上野にて・はなの木と云南部にて
・こぶの木といふ

(19ウ)
〓木 ぬるでのき○尾張及上総にて・のでの木と云上野及信濃にて・をつ(*「をつ」に傍線)
かどのきと云陸奥及越前相模にて・かつの木と云[是は勝軍木といふによるの名なるへしなを説有]
奥ノ津軽にて・ごまぎと云[天台真言宗等の僧徒護摩を修行するに此木を用ゆ故に名つく]
楠 たふのき[和名たものき]○山城にて・たつの木といふ長門にて・こがいのきと云西国
にて・つゞの木と云伊予にて・はながと云土佐にて・あぶらぬすびとのきといふ
又・あさだの木とも云上総にて・しほだまといふ伊豆にて・くろだまと云
案に木立葉の形|略{ほゞ}肉桂に似たりたゝ肉桂には葉に筋有此木には筋
なし故にやぶ肉桂とも云
山椒 さんせう○薫{かほり}もなく味{あちはひ}も辛{から}くなき物を丹波にて・ひんせうと云
枸橘 からたち○西国にて・げずといふ
樟 あづさ○山城にて・あかめがしはと云摂州にて・ごさいばといふ
ごさいばといふは朝廷の御祭礼に用らるゝ和名なり中華にはこの木に

(20オ)
書を刻み又弓をつくる故に梓弓ノ名有一名木王
榿 はりのき○東国にて・はんのきと云奥ノ南部にて・やぢはといふ○はん
の木の実を尾張にて・山だんごと云[染色につかふものなり]
枸骨 ひ|ゝ{イ}らぎ○上総にて・ねづみさしと云
釣樟 くろもじ○越前にて・ねそと云信濃にて・ぢしや(*「しや」に傍線)といふ
今按に釣樟{くろもじ}花は黄色にして実は黒し香気有花はつぼみたる儘{まゝ}にて
散る故に信州にて童謡{こうた}につぼやぢしや(*「しや」に傍線)どの咲かで散るといふつぼやとは
可愛{かわい}やといふ事なり再案に越前国にてくろもじの事をねそと名
つくる説非也ねそとは一木をさしていふにはあらずくろもじの条{ずはへ}にても又
外の木のずはへにても山人|伐{きり}てとりたとへは橇{かんじき}の輪或は薪炭俵或は垣など
結ぶにも縄の如く用ゆる物を惣名ねそと云これはねりその略語{りやくご}也古歌にも
〽秋の野に萩かるおのこなはをなみねるやねりそのくだけてそおもふ

(20ウ)
とよめりなはをなみとは縄なきといへる心也山辺赤人がわかの浦にしほみち
くれはかたをなみと詠せしも潟なきと云事にして片男浪にはあらずと也
李 すもゝ○美作にて・すむめといふ
柚 ゆ○畿内にて・ゆと云東国にて・ゆずと云中国にて・香橙{かうとう}といふ
笋 たけのこ○上総及房州にて・たんこと云
柴 しば○関西及中国陸奥辺にて・しばといふ[柴は惣名なり]東国にて・そだ
といふ[美濃尾張にてはくぬ木にかきりてそだといふ]加賀にて・ほゑと云越前にて・ほせと云・上野にて
・ぼやといふ丹波但馬辺にて・おどろと云紀州にて・よどろと云[荊棘{をどろ}の転語か]伊勢
にては葉の付たるを柴といひ葉なきを・こがらけと云○又木の小枝なる物を
関西にて・ほせきれと云伊勢にて・つまをりと云坂東にて・かなぎと云『中
臣秡』ニ天津{あまつ}金木{かなき}『文選』筵{かなき}以{もつて}鐘{かねを}撞{つく}(*原本「以筵撞鐘」の順)註ニ小木ノ枝也云云○畿内ニて・わりき
と云を東国にて・まきといふ能登及加賀陸奥にて・ばいぎと云又ながし木

(21オ)
といふ越中にて・もへしま五郎といふ
榾 ほた○関西にて・ほたと云尾張及出雲辺にて・きりかぶと云伊勢にて・
根こじと云安房にて・ねつ(*「ねつ」に傍線)かと云上下総にて・木下{ぼつか}といふ土佐にて・かくい
といふ[かぶくゐ又はかれぐゐの略か]武蔵にて(*「て」に傍線)・ねつこと云按にねつ(*「ねつ」に傍線)ことは根木{ねこ}也根骨{ねつこ}には
あらざる歟〽川中の根木によころぶすゝみ哉とありし根木も伐株{きりかぶ}
の事にや又よころふは横転{よころぶ}なるべし
菌茸 たけ[きのこ]○中国及九州にて・なばといふ北国又は美濃尾張にて・こけ
と云上野下野にて・もたせと云佐渡にて・みゝといふ○初茸を美濃三
河尾張にて・あをはちと云北国にて・松みゝと云奥の南部及近江辺にて
・あいずりと云因幡にて・あいたけと云中国九州ともに・松なばといふ○
紅茸{べにたけ}を九州にて・じこう(*「こう」に傍線)ばう(*「ばう」に傍線)と云○檜{ひのき}茸を相州塔の沢にて・定源{じやうげん}
坊と云○鼠茸を江東にて・なめすゝきと云筑紫にて・水たゝきといふ

(21ウ)
松毬 まつかさ[まつふぐり]○畿内近辺にて・ちゝりといふ
〽紫のふどしに似たり藤のはな松のふぐりを咲てつゝめば 貞徳
物類称呼巻之三終


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底本:国立国語研究所蔵本(W52-5/Ko85/3、1001089877)
翻字担当者:矢澤由紀、三橋琢璃子
更新履歴:
2015年5月7日公開

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