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おくみ惣次郎春色江戸紫おくみそうじろうしゅんしょくえどむらさき

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三編中

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おくみ惣次郎春色江戸紫 三編中

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凡例
1.本文の行移りは原本にしたがった。
2.頁移りは、その丁の表および裏の冒頭において、丁数・表裏を括弧書きで示した。また、挿絵の丁には$を付した。
3.仮名は現行の平仮名・片仮名を用いた。
4.仮名のうち、平仮名・片仮名の区別の困難なものは、現行の平仮名に統一した。ただし、形容詞・副詞・感動詞・終助詞・促音・撥音・長音・引用のト等に用いられる片仮名については、原表記で示した場合がある。 〔例〕安イ、モシ、「ハイそれは」ト、意気だヨ、面白くツて、死ンで、それじやア
5.漢字は現行の字体によることを原則としたが、次のものについては原表記に近似の字体を用い、区別した。「云/言」「开/其」「㒵/貌」「匕/匙」「吊/弔」「咡/囁」「哥/歌」「壳/殻」「帒/袋」「无/無」「楳/梅」「皈/帰」「艸/草」「計/斗」「弐/二」「餘/余」
6.繰り返し符号は次のように統一した。ただし、漢字1文字の繰り返しは原本の表記にしたがい、「〻」と「々」を区別して示した。
 平仮名1文字の繰り返し 〔例〕またゝく、たゞ
 片仮名1文字の繰り返し 〔例〕アヽ
 複数文字の繰り返し 〔例〕つら〳〵、ひと〴〵
7.「さ」「つ」「ツ」に付く半濁点符は「さ゜」「つ゜」「ツ゜」として示した。
8.Unicodeで表現できない文字は〓を用いた。
9.句点は原本の位置に付すことを原則としたが、文末に補った場合がある。
10.合字は〔 〕で囲んで示した。 〔例〕殊{〔こと〕}に、なに〔ごと〕、かねて〔より〕
11.傍記・振り仮名は{ }で囲んで示した。 〔例〕人生{じんせい}
12.左側の傍記・振り仮名の場合は、冒頭に#を付けた。 〔例〕めへにち{#毎日}
13.傍記・振り仮名が付く位置の紛らわしい場合、文字列の始まりに|を付けた。 〔例〕十六|歳{さい}
14.原本に会話を示す鉤括弧が付いていない場合も、これを補い示した。また庵点は〽で示した。
15.原本にある話者名は【 】で示した。 〔例〕【はる】
16.割注・角書および長音符「引」「合」は[ ]で囲んで示した。
17.不明字は■で示した。
18.原本の表記に関する注記は*で行末に記入した。 〔例〕〓{たど}りて*〓は「漂+りっとう」
19.花押は〈花押〉、印は〈印〉として示した。
20.画中文字の開始位置に〈画中〉、広告の開始位置に〈広告〉と記入した。

本文の修正
1.翻字本文を修正した場合には、修正履歴を末尾に示す。
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(1オ)
春色{しゆんしよく}江戸紫{えどむらさき}三編中巻
江戸 山々亭有人作
第十五回
人{ひと}しれず待{まち}たれる哉{かな}足曳{あしびき}の。山{やま}よりいづる桂男{かつらをとこ}を。ト
為忠卿{ためたゞきやう}が詠哥{よみうた}の。夫{それ}にはあらで彼{かの}智清{ちせい}は。今宵{こよひ}も丁度{てうど}
立待{たちまち}の月{つき}の。もうけと山{やま}の宿{しゆく}なる。お絹{きぬ}といへる琴{〔こと〕}の師{し}
を。招{まね}ぎて例{れい}の小酒宴{こさかもり}。【智】「サアお絹{きぬ}さん何{なに}も上{あげ}るものも
有{あり}ませんが。今宵{こよひ}は立待月{たちまちづき}とか申て。歌{うた}俳諧{はいかい}にも多{おほ}く

(1ウ)
もて遊{あそ}ぶと申ス事{〔こと〕}。たしかお絹{きぬ}さんはお歌{うた}を。遊{あそば}すやうに
存{ぞん}じましたが。なんぞお持哥{もちうた}のうちに。定{さだ}めし御秀逸{ごしういつ}がござり
ませう。」【絹】「どういたして御奉公{ごほうこう}を。致{いた}した時{とき}姫君様{ひいさま}の。
御|相手{あいて}に拠{よんどころ}なく両三度{りやうさんど}。詠艸{ゑいさう}を直{なほ}していたゞいた。〔こと〕が
ござりましたが。夫{それ}から世帯{せたい}にかまけまして。一向{いつこう}捨{すて}て仕
舞{しまひ}ましたから。中{なか}〳〵存{ぞん}じもよらぬ〔こと〕でござり升。」【智】「少{すこ}し
でもお心懸{こゝろがけ}があれば。結構{けつかう}。定{さた}めしお組{くみ}さんは。諸事{しよじ}お内
端{うちば}でお在{いで}だから。御歌{おうた}抔{など}も出来{でき}ませう。吾儕{わたし}なぞも

(2オ)
殿様{おかみ}が御繁昌{ごはんじやう}の時分{じぶん}。女{をんな}は哥{うた}が出来{でき}ると心{こゝろ}が和{やわら}いで。よい
からと。毎度{まいど}御意{ぎよい}遊{あそ}ばしたが。今{いま}考{かんが}へると彼{あの}時分{じぶん}に。精出{せいだ}
して御|直{なほ}しをいたゞいたら。少{すこ}しは楽{たの}しみにもならうにと。
時{とき}〴〵後悔{こうくわい}いたすのサ。しかし爰{こゝ}には他人{たにん}もなし。吾儕{わたし}も
なんぞ腰折{こしをれ}をいたそうから。お絹{きぬ}さんもお組{くみ}さんも。なんぞ
遊{あそ}ばせナ。」【絹】「どういたしてお歌{うた}じやア有{あり}ません。夫{それ}にお組{くみ}も
御覧{ごらん}の通{とふ}り。久{ひさ}しく眼{め}がわるうござり升{ます}がら。あまり夜{よ}の
更{ふけ}ませぬうち。御暇{おいとま}をいたしませう。ねへお組{くみ}。」【くみ】「ハイ初{はじめ}て

(2ウ)
参上{あがり}まして。種〻{いろ〳〵}難有{ありたう}ぞんじます。」【智】「どういたして*「難有{ありたう}」は「難有{ありがたう}」の脱字か
折角{せつかく}の御出{おいで}に。何{なに}も御愛相{おあいそ}もなくツて。しかしお眼{め}のわる
いのに能{よく}お在{いで}だツけ。だがお絹{きぬ}さん何{なん}だか。此{この}節{せつ}は否{いや}な咄{はな}し
が有{あり}ますから。御止宿{おとまり}なさればよい。夫{それ}にお帰{かへ}りの道{みち}は山下{やました}
も。広徳寺{くわうとくじ}まへも淋{さみ}しいから。間違{まちがひ}のあつた後{あと}じやア。取{とつ}て
返{かへ}しは出来{でき}ないから。御止宿{おとまり}なはい。」【絹】「難有{ありがた}う存{ぞん}じますが。
宿{やど}へも何共{なんとも}申さずに。出{で}ましたから吾儕{わたくし}は。お暇{いとま}を頂{いたゞ}き
ますが。お組{くみ}おまへ一宿{いつしゆく}お願{ねが}ひな。」【くみ】「ナニ私{わたくし}もお暇{いとま}をいたし

(3オ)
ませう。」【智】「お絹{きぬ}さんも宜{いゝ}じやアないか。」【絹】「難有{ありがた}うぞんじ
ます。あれ程{ほど}に被仰{おつしやる}から。おまへはお願{ねが}ひ申なゝ。」【智】「夫{それ}
じやアお組{くみ}さんは。御止宿{おとまり}なさるとして。お絹{きぬ}さんは亦{また}お宅{うち}で
お案事{あんじ}なら。駕籠{かご}を左様{さう}申てあげやう。」ト是{これ}から駕{かご}
をあつらへ供人を附{つけ}。山の宿{しゆく}へ送{おく}らせけるとぞ。
抑{そも〳〵}お絹{きぬ}といへるは。室町{むろまち}に居{ゐ}たりしお組{くみ}の姉{あね}也けるが。
お牧{まき}善次郎{ぜんじらう}が邪{よこしま}より。室町{むろまち}を退転{たいてん}して。山の宿{しゆく}に
引移{ひきうつ}りしが。お組{くみ}も惣次郎{そうじらう}が家出{いへで}の後{のち}。やゝもすれ

(3ウ)
ば善次郎{ぜんじらう}が或{ある}ひは衣類{いるい}。或{ある}ひは天窓{つむり}の物{もの}に。もの
ずき尽{つく}せしを送{おく}りて。いとむ事{〔こと〕}しば〳〵なれど。お組{くみ}は
惣次郎{そうじらう}に操{みさほ}を立{たて}。露{つゆ}ばかりも承引{うけひか}ざれば。終{つひ}に
久松町{ひさまつてう}にも居{ゐ}づらく。お絹{きぬ}がかたへ引{ひき}とりしが。お絹{きぬ}は
外{ほか}にたつきもなければ。習{なら}ひ得{え}たりし琴{〔こと〕}鼓弓{こきう}の。
指南{しなん}せしが極{きは}めて。その業{わざ}に妙{めう}なるものから。町
に呼{よば}れ諸侯{やしき}に召{めさ}れ。富{とむ}にはあらねど足{た}らざる
迄{まで}には成{なり}けるとなり。扨{さて}こそお組{くみ}も姉{あね}もろとも。

(4オ)
智清{ちせい}が許{もと}へは来りしなるべし。
かゝる折から腰{こし}もとが。襖{ふすま}を明{あけ}て両手をつき【こ■元】「アノ惣{そう}さんが*「■」は「し」の部分欠損か
|被為入{いらつしやい}ました。」【智】「丁度{てうど}よかつた。此方へと申シな。」【こし元】「ハイ。」と立
ゆく。程なく【惣】「先|夜{や}はいろ〳〵御|馳走{ちそう}。」【智】「最{も}う一ト足{あし}
おはやいと。丁度{てうど}山の宿{しゆく}のお絹{きぬ}さんが来て。居{ゐ}ました
から此間お咄し申シた。吾儕達{わたしたち}が艸紙笑{さうしわら}ひを。貴君{あなた}に
聞{きい}てお貰{もら}ひ申スので有たツけ。」【惣】「夫{それ}はおしい〔こと〕をいたし
ましたツけ。」ト。お組{くみ}を見て不審{ふしん}なるおもひ入{い}れあり。

$(4ウ)
智清。
おくみ智
清が許{もと}に
一宿{いつしゆく}して
惣次郎に
再会{さいくわい}す

$(5オ)
惣次郎
おくみ

(5ウ)
お組{くみ}も惣次郎{そうじらう}を見てしより。飛立{とびたつ}ばかり思ひしが。
素{もと}より内気の性{さが}なるに。智清{ちせい}が素振{そぶり}何{なに}とやら。合点{がてん}
ゆかずとおもふものから。紅絹{もみ}の切{きれ}にて眼{め}を拭ひ。楽{たの}し
からねば詞{〔こと〕ば}もなく。せめてお絹{きぬ}の居たらんには。又せん
術{すべ}もあるべきと。先立ものは泪{なみだ}のみ。惣次郎{こなた}も同{おな}じ思ひ
にて。子細{やうす}問{とは}まくおもへども。智清{ちせい}が心{こゝろ}汲{くみ}兼{かね}て。手を
こまぬきてぞ居たりける。智清{ちせい}はかゝる情合{なか}ぞとは。
神{かみ}ならぬ身のしるよしなければ【智】「惣{そう}さん此お嬢{こ}が

(6オ)
今{いま}お咄{はな}し申シた。山の宿{しゆく}のお絹{きぬ}さんの。お妹嬢{いもうとご}でお組{くみ}さんと
被仰{おつしやる}のサ。アノお組{くみ}さん貴君{あなた}は。三崎町{さんさきまち}にお在{いで}の。惣{そう}さん
といふ好男子{いろをとこ}サ。余{よ}ツ程{ぽど}彦三郎{ひこさぶらう}に。似{に}て。おいでじやア
ないか。ヲホヽヽヽヽヽ。」ト引{ひき}あはされて惣次郎{そうじらう}も。お組{くみ}も左右{とかう}
の詞{〔こと〕ば}もなく。唯{たゞ}「お初{はつ}に。」と言{い}ツたるのみ。なんと返回{いらへ}も
なら柴{しば}の。胸{むね}に火{ひ}を焚{たく}ばかりなり。しばらくありて彼{かの}
お組{くみ}厠{かわや}へ往{ゆき}たるその跡{あと}にて【智】「どうだネ惣{そう}さん。可愛{かあい}ら
しい嬢{こ}じやアないか。」【惣】「さうヨ。ひどく眼{め}がわるいやう

(6ウ)
だネ。左様{さう}してアノ嬢{■}は亭主{ていしゆ}でもあるのか。」此{この}時{とき}智清{ちせい}は惣*「■」は「こ」の部分欠損か
次郎{そうじらう}をしたゝかにつねる。【惣】「アイタヽヽヽヽヽ。ひどい事をなさるねへ。」
【智】「アノ嬢{こ}に亭主{ていしゆ}がなきやア。どうする積{つも}りだヱ。」【惣】「どう
も仕{し}やアしねへが。只{たゝ}聞{きい}たンだはネ。しかし何事{なに〔ごと〕}も縁{えん}だから
どういふ事{〔こと〕}で。アノ嬢{こ}をば女房{にようぼ}に。持{もつ}まいともいへねへが。
そんなら末始終{すゑしじう}お前{まへ}さんと。夫婦{ふうふ}になるといふじやア
なし。斯{かう}して切{き}れずに居{ゐ}せへすりやア。女房{にようぼ}を持{もつ}たツ
ていゝじやアねへか。」【智】「だから誰{だれ}もわるいとは。申ません

(7オ)
から。内室{おかみ}さんにでもお妾{めかけ}にでも被成{なさい}ましヨ。ヒト。ホンとに
アノ嬢{こ}を帰{かへ}して仕舞{しま}やアよかつた。」【惣】「ナニモ。アノ嬢{こ}にとがも
なからうじやアないか。」【智】「坊主{ばうず}が憎{にく}けりやア。袈裟{けさ}迄{まで}
だはネ。」【惣】「今{いま}自己{わたし}の言{い}ツたのは。アノ嬢{こ}と限{かぎつ}た分解{わけ}じやア
ねへ。一生{いつしやう}女房{にようぼ}を持{もた}ずにも。居{ゐ}られないといふ咄{はな}しサ。」【智】「
そりやアあたりまへサ。何{なに}も貴君{あなた}に一生|無妻{むさい}でお暮{くら}し
被成{なさい}と申しやアしません。」【惣】「そんなら夫{それ}で宜{いゝ}じやアねへ
か。」ト。此{この}咄{はな}しのうちお組{くみ}も厠{かはや}より出来{いできた}れば。其{その}夜{よ}は夫

(7ウ)
なり臥房{ふしど}に入{い}りしが。程{ほど}なく鶏鳴{けいめい}告{つげ}わたり。思{おも}ひ〳〵に
起出{おきいで}て。うがひ手洗{ちやうづ}も早{はや}済{すみ}て。朝飯{あさげ}も喰{すみ}し頃{ころ}なり
けん。お絹{きぬ}が許{もど}より下女{げぢよ}お花{はな}。おくみが迎{むか}ひに来{きた}り*「許{もど}」の濁点ママ
ければ。さらばとて智清{ちせい}に暇{いとま}を告{つげ}。他女中{ほかぢよちう}にも夫〻{それ〳〵}に
暇{いとま}を告{つげ}て立帰{たちかへ}りぬ。惣{そう}次郎はお組{くみ}より。少{すこ}しく
前{さき}に暇を告。三枚橋{さんまいばし}にて。待{まち}あはせしにおくみと
お花は何{なに}やらん。さゝやき合{あひ}て来りければ【惣】「ヲイ〳〵。」ト
呼込{よびこ}むにぞ。おくみは疾{はや}くも聞{きゝ}つけて【くみ】「花や若旦那{わかだんな}

(8オ)
が彼方{あすこ}に|被為入{いらツしやる}ヨ。」【花】「ヲヤほんにねへ若旦那{わかだんな}さまだ。」ト
夫よりお組{くみ}とお花{はな}は。かの山松{やまゝつ}と呼{よび}なせる。茶店{さでん}へ
こそは至{いた}りけれ。
第十六回
案下再説{さてもそのとき}惣{そう}次郎は二人{ふたり}に向{むか}ひ【惣】「ヲイおくみさん。
夕阝{ゆふべ}はおつな所で逢{あつ}て。何{なに}かのやうすも聞{きく}だツたが智清{ちせい}
の前{まへ}で名{な}のり合{あ}ツても。自己{おゐら}は構{かま}はねへが。お前がどう
だらうかと。思{おも}ツて無言{だまつ}て居{ゐ}たが。今{いま}じやア姉{ねへ}さんの

(8ウ)
方{はう}に居{ゐ}るのか。」【くみ】「ハイ貴君{あなた}が|被為入{いらツしやら}なくなつてから。善{ぜん}さんが
種〻{いろ〳〵}な無理{むり}ばかり言{い}ツて。困{こま}り切{きり}ました。左様{さう}致{いた}すうち
に。お牧{まき}さんがお姉{あねへ}さんの所へ往{い}ツて。種〻{いろ〳〵}お咄{はな}しが有{あつ}た
さうでございますが。姉{ねへ}さんがさつぱり取合{とりあは}すに。貴君{あなた}
に娵{め}あはせるつもりで。遣{あげ}たのだから善さんの女房{にようぼ}に
なれと。吾儕{わたくし}の方{はう}からは進{すゝ}められないと。被仰{おつしやつ}たさうで
ございますが。程{ほど}なく吾儕{わたくし}も室町{むろまち}へ帰{かへ}されました。」
【惣】「さうか夫{それ}は嘸{さぞ}苦労{くらう}をしたらう。」【花】「御苦労{ごくらう}を遊{あそば}した

(9オ)
処{どころ}じやアございません。夫{それ}にネ貴君{あなた}お聞{きゝ}遊{あそ}ばせ。お組{くみ}さんの
お道具{だうぐ}も大概{たいがい}。目{め}ぼしい物{もの}は取{とり}あげて。つまらない物{もの}斗{ばか}り
附{つけ}てよこしました。」【惣】「いま〳〵しいべら棒{ぼう}だ。夫はさうとどう
も自己{おゐら}に。合点{がつてん}の往{いか}ねへのは。アノ智清{ちせい}さんの宅{うち}で。山の
宿{しゆく}のお絹{きぬ}さんといふ。琴{〔こと〕}の師匠{しせう}といふ咄{はな}しをするが。今じやア
お絹さんが。琴の師匠{しせう}でも。して居{ゐ}なさるのか。」【花】「ハイ室町{むろまち}
の方{はう}も旦那{だんな}さまが。御亡{おなくなり}遊{あそ}ばして間{ま}もなく。おくみ様{さま}は御|返{かへ}
しになる貴君{あなた}の時分{じぶん}にお貸{かし}被成{なすつ}たといふお金{かね}を小蝿{うるさく}

(9ウ)
催促{さいそく}なさい升{ます}ゆへ。お絹{きぬ}さまもアノ通{とふ}りの御気性{ごきしやう}。家土蔵{いへくら}
人手{ひとで}にわたし。其{その}金子{きんす}をば御返{おかへ}し被成{なすつ}て。山の宿{しゆく}へお引
移{ひきうつり}。夫{それ}から琴{〔こと〕}のお稽古{けいこ}を。お始{はじ}め遊{あそ}ばした所が。只今{たゞいま}では
御弟子{おでし}も数多{だいぶ}出来{でき}。夫{それ}にお屋敷{やしき}や。蔵{くら}まへあたりから
毎日{まいにち}のお迎{むかひ}で。誠{ま〔こと〕}にお体{からだ}にお隙{ひま}が。ないやうでござり
ます。」【くみ】「夫でも花{はな}が信切{しんせつ}に。久松町{ひさまつてう}を暇{いとま}をとりまして
彼様{あん}な所へ来{き}て。真{ま〔こと〕}に能{よく}世話{せわ}をして呉{くれ}ますは。」【惣】「夫は
誠{ま〔こと〕}に御信切{ごしんせつ}。自己{おゐら}のお為ても忝{かたじけな}い。実{じつ}は自己もその時に。

(10オ)
委敷{くわしく}手紙{てがみ}に書{かい}て置{おい}た通{とふ}り。上州{じやうしう}へ暫時{しばらく}往{い}ツて居{ゐ}たが。
漸{やう〳〵}七月|盆{ぼん}前{まへ}に帰{かへ}ツて来{き}て。段{だん}〳〵様子{やうす}を聞{きい}た所が。由{よし}兵へ
さんは御亡失{おなくなり}。その後{のち}は室町{むろまち}を。仕舞{しまひ}なすつて浅草{あさくさ}の
辺{ほう}に御在{おいで}といふ咄{はな}しは。聞{きい}て居{ゐ}たが薮{やぶ}から棒{ぼう}に。浅艸{あさくさ}で
自己{おゐら}の往{いく}所{ところ}でもしれめへと。ツイ〳〵今日{けふ}の仕義{しぎ}となつたが
お絹{きぬ}さんに小児{ちいさい}のが有{あつ}たツけ。」【花】「坊{ぼう}ちやんも只今{たゞいま}では
乳母{おんば}どんも居{ゐ}ませんから。婦多川{ふたがは}へお預{あづ}け。なすツてで
ございます。」【惣】「夫{それ}じやア自己{わたし}の考{かんが}へた。事{〔こと〕}もあるから今日{けふ}は

(10ウ)
吾儕{わたし}の宅{うち}へお在{いで}な。」【花】「ハイ花{はな}参{あが}ツても宜{よか}らうか。姉{ねへ}さんが*原本話者[花]は[くみ]の誤りか
お案事{あんじ}じやアあるまいか。」【花】「左様{さやう}サ。お案{あん}じではございませう
が。他{ほか}とは違{ちが}ひ若旦那{わかだんな}の御宅{おうち}なら。尊君{あなた}のお宅も同様{とうやう}。
是{これ}から|被為入{いらツしやり}限{ぎり}に遊{あそば}せナ。」【くみ】「花が串戯{じやうだん}ばツかり。」【惣】「串
戯{じやうだん}じやアねへ。真正{ほんとう}の咄{はなし}しヨ。しかし。アンナ彼様{あん}な宅は仕方{しかた}が*「咄{はなし}し」の「し」は衍字か、「アンナ彼様{あん}な」(ママ)
ねへが。今{いま}に宜{いゝ}宅{うち}を持{もつ}はナ。夫{それ}じやアそろ〳〵出懸{でかけ}やうか。」
【花】「貴君方{あなたがた}お二人{ふたり}で|被為入{いらツしやい}ナ。吾儕{わたくし}は鳥渡{ちよつと}お宅{うち}へ参{まい}ツて
左{さ}やう申ませう。」【惣】「夫{それ}でもいゝけれど。自己{おゐら}のうちは奴{やつこ}

(11オ)
ばかりだから。折角{せつかく}お組{くみ}が来たつても。何も構{かま}う〔こと〕が出来ねへ
から。お前{めへ}も一所{いつしよ}に来ねへ。さうして宅{うち}の奴{やつこ}を手|簡{がみ}で。さう
言{い}ツてやらう。」【くみ】「花{はな}おまへ左様{さう}おしな。」【花】「夫{それ}じやア左様{さう}して
いたゞきませう。」【惣】「夫{それ}じやア出かける事にしやう。」ト。夫{それ}より
茶代{ちやだい}を払{はら}ひ抔{など}して。此|茶亭{さてい}を立出{たちいで}しが。程{ほど}遠{とを}からぬ
道{みち}なるに思ふ同士{どし}が連立{つれだち}て引越{ひきこし}かたを語{かた}り合{あひ}。歩行{あゆむ}とも
なく三|崎{さき}の。夫{それ}が門辺{かどべ}に至りければ【惣】「ヲイ爰{こゝ}だ〳〵。」
【花】「ヲヤ。マアとんだ奇麗{きれい}な。お住居{すまゐ}でございますねへ。」【惣】「

$(11ウ)
おくみ
惣次郎

$(12オ)
金太
惣次郎
おくみを
同伴{ともない}て三
崎のかくれ
家にいたり

(12ウ)
余{あん}まり奇麗{きれい}でもないのサ。ヲイ金太{きんた}やお客様{きやくさま}だヨ。」[金太郎は惣次郎が]
[耳{みゝ}に口{くち}をよせ]【金】「ヲイ旦那{だんな}とんだ可愛{かあい}らしいのを。連{つれ}てお出な
すツたネ。」【惣】「ナニ。これやアノ。兼{かね}て咄{はな}して置{おい}た。お組{くみ}といふ
嬢{こ}ヨ。」【金】「さうか成{なる}ほど美{うつく}しいネ。そんならいゝけれども
亀{かめ}の子姥{ばゝ}アなんぞは。最{も}うお止{よし}なさへ。此様な宜{いゝ}御内室{おかみさん}
が在{あり}ながら。モシ御|内室{かみ}さん[おくみは今おかみさんといはれうれしくもあり又はづかしく㒵{かほ}を真赤にしてゐる]
今{いま}にそこへ日が当{あた}ツて来{く}るから。こツちへお出{いで}なせへ。」ト。いひ
ツヽこなたへお花{はな}を見て【金】「お前{まへ}さんはお内室{かみさん}の所{ところ}の。

(13オ)
女中衆{ぢよちうしゆ}かへ。」【花】「ハイ。」【金】「夫{それ}じやア今{いま}自己{おゐら}が。裏{うら}の芋{いも}を掘{ほつ}て
来{き}て。煮{に}てあげるから待{まつ}て居{ゐ}ねへヨ。」【惣】「ヲイ〳〵金太{きんた}や芋{いも}も
いゝがの。手前{てめへ}に少{すこ}し頼{たのみ}がある。山{やま}の宿{しゆく}まで往{いつ}て来{き}て
くんな。」【金】「山{やま}の宿{しゆく}てへナ。何所{どこ}だツけネ。」【惣】「山{やま}の宿{しゆく}といふ
のは。東橋{あづまばし}の直{ぢき}手前{てまへ}の横町{よこてう}ヨ。ソラ此間{こないだ}手前{てまへ}が江戸{えど}で
噂{うはさ}の花川戸{はなかはど}といふなア。爰{こゝ}かといつた横丁{よこてう}ヨ。」【金】「ヘヱそれ
じやア角{かど}に六地蔵{ろくぢざう}のある横丁{よこてう}だネ。」【惣】「その横丁{よこてう}が花川
戸{はなかはど}で其{その}先{さき}が山{やま}の宿{しゆく}だ。ヲイ花{はな}どこらだ。」【花】「湯屋{ゆや}のすじ

(13ウ)
向{むか}ふで。山田{やまだ}といふ琴{〔こと〕}の師匠{しせう}と。聞{きく}と直{ぢき}に知{し}れますヨ。」
【金】「夫{それ}じやア直{すぐ}に往{いき}ますが。」【惣】「今{いま}手簡{でがみ}を書{かく}から。」【金】「其{その}間{あいだ}*「手簡{でがみ}」の濁点(ママ)
に芋{いも}を掘{ほつ}て来{き}て。お内室{かみさん}と女中衆{ぢよちうしゆ}に。あげやうと思{おも}ツて。」
【惣】「それは種〻{いろ〳〵}御苦労{ごくら゛う}だナ。」【金】「ナニ造作{ぞうさ}はありません。」*「御苦労{ごくら゛う}」の濁点ママ
【花】「とんだ気{き}さくな仁{ひと}でございますねへ。」【惣】「無法一鉄{むいつこく}の
替{かは}りにやア。とんだ正直{しやうぢき}でいゝから。上州{じやうしう}から連{つれ}て来{き}たノヨ。
ヲイおくみやお前{まへ}も。姉{ねへ}さんの所{ところ}へやる。手簡{てがみ}をお書{かき}ナ。」【くみ】「ハイ
吾儕{わたくし}も書{かき}ますのかヱ。」【惣】「ウン。」【くみ】「なんと書{かい}て上{あげ}ませう。」

(14オ)
【惣】「さうさノヲ。今朝{けさ}道{みち}で風与{ふと}。自己{おゐら}に逢{あつ}たらこの頃{ごろ}上州{じやうしう}
から。帰{かへ}ツて今{いま}三崎{さんさき}にゐるから。一所{いつしよ}にそこへ往{い}ツた。今夜{こんや}は
止宿{とまつ}て翌{あした}の朝{あさ}。惣次郎{そうじらう}と一所{いつしよ}に。往{いく}とさう書{かい}て遣{や}ン
ねへ。ナア花{はな}モウ一晩{ひとばん}止宿{とまツ}ても宜{いから}う。」【花】「宜{よう}ございます
とも。さうしてお硯箱{すゞりばこ}は。」【惣】「あすこの違棚{ちがひだな}の下{した}にある。
たしか巻紙{まきがみ}もあるはづだ。」是{これ}よりおくみも惣次郎{そうじらう}も
お絹{きぬ}が許{もと}へ送{おく}るなる。手簡{ふみ}認{したゝ}めて上書{うはがき}なし【惣】「金太{きんた}
め。何{なに}をしてゐやアがるだらう。」【金】「サア〳〵沢山{どつさり}掘{ほつ}て来{き}た。

(14ウ)
旦那{だんな}お手簡{てがみ}は出来{でき}ましたか。」【惣】「出来{でき}た〳〵。」【金】「夫{それ}じやア
芋{いも}の泥{どろ}を落{おと}して。直{すぐ}に往{いき}ませう。亀{かめ}の子{こ}姥{ばゝ}アの所{ところ}へなンぞは。
中{なか}〳〵往{い}きやアしねへが。内室{おかみさん}の宅{うち}へなら。直{すぐ}に往{いつ}て来{く}らア。」
【惣】「夫{それ}じやア道{みち}で何{なん}ぞ喰{くつ}て来{こ}い。」ト。自己{おの}が名{な}に呼{よぶ}金太郎{きんたらう}
を。紙{かみ}にひねツて渡{わた}しければ【金】「コリヤア難有{ありがたう}。モシお花{はな}さん
とか。芋{いも}を能{よく}洗{あら}ツて置{おい}たから。お内室{かみさん}に煮{に}て上{あげ}ておくれ。
さうして中飯{おひる}を喰{あかる}なら。糠味噌{ぬかみそ}の右{みぎ}の方{はう}に。夕阝{ゆふべ}つけ
た一口茄子{ひとくちなす}と。胡瓜{きうり}の細{ほそ}があるから。旦那{だんな}に出{だ}してあげて。

(15オ)
お内室{かみ}さんは。生漬{なまづけ}が嫌{きら}ひなら。左{ひだり}の方{ほう}に古漬{ふるづけ}が。いくらも
あるから。かくやにでもしてあげてお呉{くれ}。大{おほ}かた今日{けふ}もお帰{かへ}りは。
遅{おそ}からうと思{おも}ツて。お昼{ひる}の支度{したく}がしてないから。今{いま}に魚屋{さかなや}
でも来{く}るだらう。誠{ま〔こと〕}に旦那{だんな}が居{ゐ}たり。居{ゐ}なかつたりするの
で。お飯{めし}をくさらせるには困{こま}り切{き}るヨ。」【惣】「余斗{よけい}な〔こと〕を言{いは}
ねへで。疾{はや}く往{い}ツて来{き}ねへ。夫{それ}からその前{まへ}に玉屋{たまや}へ往{い}ツて。
三{み}ツ物{もの}をよこすやうに。左様{さう}言{い}ツて来{き}て呉{く}ンな。」【金】「夫{それ}
じやア往{いき}がけに。左様{さう}言{い}ツて往{いき}ませう。」ト。かの二通{につう}をば懐中{くわいちう}

(15ウ)
なし足早{あしばや}にこそ出行{いでゆき}けれ。【花】「彼{あの}仁{かた}とお二人{ふたり}限{ぎ}りじやア。
穢物{よごれもの}が嘸{さぞ}ございませう。チツトお洗濯{すゝぎ}をいたしませう。」
【惣】「夫{それ}じやア気{き}の毒{どく}だが。その箪笥{たんす}の引出{ひきだ}しにあるから。
やツて貰{もら}はふ。」【花】「左様{さやう}いたして吾儕{わたくし}は。お暇{いとま}をいたしますから。
お跡{あと}で思{おも}ひ入{い}りお可愛{かあい}がり。遊{あそ}ばせ。殊{〔こと〕}によつたら。一両日{いちりやうにち}。御逗
留{ごとうりう}でも。宜{よろ}しうございますから。」【惣】「夫{それ}だつて眼{め}のわるいのに。
そんな事{〔こと〕}が出来{でき}るものか。」【花】「貴君{あなた}の〔こと〕をお案{あん}じ遊{あそば}して。
お眼{め}がわるくおなり遊{あそば}したのですから。貴君{あなた}の御療治{ごれうぢ}なら

(16オ)
なら。直{ぢき}に能{よく}なりませう。ヲホヽヽヽヽヽ。」【惣】「あんまり大{おほ}きな声{こゑ}をしな*行頭「なら」は衍字
さんな。庭{には}に居{ゐ}るから聞{きこ}へるはナ。」【花】「ホンニ|被為入{いらツしやら}ないと思{おも}ツたら
お庭{には}に|被為入{いらしツ}た。」【惣】「ヲイ〳〵お組{くみ}〳〵。」【花】「おくみ様{さま}若旦那{わかだんな}様
が。」【くみ】「ハイ召{めし}ますのかヱ。」【惣】「めしますが大造{たいそう}だノ。眼{め}はどうだ。
大分{だいぶ}宜{いゝ}やうじやアねへか。」【くみ】「ハイ貴君にお目にかゝツたせへか
少{すこ}しは宜{よろし}いやうでございます。」【惣】「夫{それ}は何{なに}よりだ。どうしても
昼時分{ひるじぶん}は宜{いゝ}が。晩方{ばんかた}がわるくなるノ。」【くみ】「それに雨{あめ}の降{ふ}る
日{ひ}や晩方{ばんかた}なんぞは。いつでも考{かんが}へ〔ごと〕を致{いた}しますのだから。」

(16ウ)
【惣】「最{も}う斯{かう}して逢{あ}やア。何{なに}も考{かんが}へる〔こと〕も。案{あん}じる〔こと〕も
なからう。」【くみ】「こんな嬉{うれ}しい〔こと〕はございませんが。昨夜{さくばん}の御様{ごやう}
子では。モシ智清{ちせい}さんと。お睦{むつま}しそうでございましたから。いツそ
苦労{くらう}でございます。」【惣】「ナニ人{ひと}。智清{ちせい}さんはお前{まへ}も知{し}ツての通{とふ}り
の身{み}のうへ。末始終{すゑしゞう}どうするの。斯{かう}するのといふ訳{わけ}もなし。
風{ふ}とした〔こと〕で一度{いちど}や。半分{はんぶん}は間違{まちが}ひもあつたけれども。
今{いま}もいふ通{とふ}りの分解{わけ}。最{も}う〳〵是{これ}限{ぎ}りあすこへは。往{い}か
ねへからそんな〔こと〕は。案{あん}じ被成{なさん}な。夫{それ}よりやアお前{まへ}こそ

(17オ)
善{ぜん}さんに初物{はつもの}を振舞{ふるま}ツたらう。」【くみ】「アンな憎{にく}らしい〔こと〕を。花{はな}を
呼{よん}で聞{きい}て御覧{ごらん}遊{あそ}ばせな。」ト[両眼{りやうがん}に泪{なみだ}をうかめる]【惣】「啌{うそ}だから勘忍{かんにん}し
な。」トおくみの脊中{せなか}を撫{なで}る。【くみ】「夫{それ}だツてもあんまりな。事を
被仰{おつしや}るものを。」【惣】「串戯{じやうだん}だはナ。」ト脊中{そびら}をば。撫{なで}し其{その}手{て}で
おくみを抱{かゝ}へ【惣】「苦労{くらう}するせへか痩{やせ}たノヲ。」【くみ】「アレおよし
遊{あそ}ばせ。花{はな}がお台所{だいどころ}にをりますヨヲ。」【惣】「花{はな}は先{さツ}き裏{うら}
の井戸{ゐど}へ。単物{ひとへもの}の洗{せん}たくに往{いつ}たはナ。」【くみ】「さうでござい
ますか。夫{それ}でも直{ぢき}に帰りませう。」【惣】「能{よく}いろンな〔こと〕を

(17ウ)
いふなア。否{いや}なら止{よし}ねへ。」と手{て}をはなす。【くみ】アレサ否{いや}じやアあり
ませんけれども。」【惣】「嫌{いや}でなけりやアじつとして居{ゐ}ねへ。」ト
おくみが手{て}を持{も}て引{ひき}よすれば。引{ひか}れながらに身{み}を寄添{よりそへ}
袖{そで}に顔{かほ}をばうち隠{かく}す折{をり}から【玉やが】「ハイお誂{あつらへ}が出来{でき}ました。」
春色{しゆんしよく}江戸紫{えどむらさき}三編中巻了


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底本:国立国語研究所蔵本(W99/Sa66/3、1002328407)
翻字担当者:島田遼、矢澤由紀、金美眞、銭谷真人
更新履歴:
2016年9月23日公開
2017年10月11日更新
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修正箇所(2017年10月11日修正)
丁・行 誤 → 正
(1オ)5 詠歌{よみうた} → 詠哥{よみうた}
(1ウ)2 お持歌{もちうた} → お持哥{もちうた}
(1ウ)4 詠草{ゑいさう} → 詠艸{ゑいさう}
(2オ)1 歌{うた}が → 哥{うた}が
(4オ)6 草紙笑{さうしわら}ひ → 艸紙笑{さうしわら}ひ
(6オ)1 お咄{はな}し申した → お咄{はな}し申シた
(6ウ)4 聞{きい}たンだハネ → 聞{きい}たンだはネ
(7オ)4 迄{まで}だハネ → 迄{まで}だはネ
(7オ)8 出来{いできた}れバ → 出来{いできた}れば
(7ウ)4 来{きた}りけれバ→来{きた}りければ
(7ウ)4 さらバとて → さらばとて
(8オ)6 夕部{ゆふべ} → 夕阝{ゆふべ}
(9ウ)7 呉{くれ}ますハ → 呉{くれ}ますは
(10オ)4 浅草{あさくさ} → 浅艸{あさくさ}
(10ウ)6 持{もつ}ハナ → 持{もつ}はナ
(12ウ)6 皃{かほ}を → 㒵{かほ}を
(14ウ)7 夕部{ゆふべ} → 夕阝{ゆふべ}
(15ウ)4 やツて貰{もら}ハふ → やツて貰{もら}はふ
(16オ)2 聞{きこ}へるハナ → 聞{きこ}へるはナ
(16オ)8 晩方{ばんかた}なんぞハ → 晩方{ばんかた}なんぞは
(17オ)3 背中{せなか} → 脊中{せなか}
(17オ)4 串戯{じやうだん}だハナ → 串戯{じやうだん}だはナ
(17オ)4 背中{そびら} → 脊中{そびら}
(17オ)7 往{いつ}たハナ → 往{いつ}たはナ

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