分散形態論(Distributed Morphology)を用いて、連用形名詞は動詞からの派生ではなく範疇未指定の要素√(root)が直接名詞化したものであると分析するVolpe(2005)の議論には1) 自体交替に関わる形態、2) 形容詞派生動詞、3) 受動/使役形態素、の三点で問題が生じることを指摘し、連用形名詞には√が一度動詞化されそれがさらに名詞化されたものが存在するという分析を、同じく分散形態論の枠組みを用いて示す。
本発表では、影山(1996)が提案した二つの視点――結果重視の視点(スル型)と動き重視の視点(ナル型)――を援用し、ナル型言語と他動性の関係についてパイロット的な実験調査を行った結果を報告する。目的は、(1)言語データから理論的に得られた類型論的仮説が、3言語における実際の言語使用の場面ではどのように現れるかを実証的に検証することと、(2)他動性のプロトタイプ理論と上記の類型論的仮説の間には一種の矛盾関係が含まれていることを、実験結果を通して実質的に示すことである。
本論は、「と」との共起に着目し、日本語オノマトペ述語の形式的・機能的特性を捉え直す。「ぶらぶら歩く」は、アスペクト特性等に関して複雑述語「ぶらぶらする」と同様の振る舞いをする(銀座を30分{間/*?で}ぶらぶら{歩い/し}た)。一方、「と」付きのオノマトペは、「ぶーぶーと言う」が「ぶーぶー言う」の持つ拡張義<文句を言う>を持たないように、類像性を保つ。
国立国語研究所では大規模な日本語コーパスを開発したほか,様々なデータベースも公開している。それらを紹介し,レキシコン研究の活性化につなげたい。
動詞的要素と動詞的要素で構成される漢語サ変動詞に関して、四字のものは、二字のもの と異なり、左側主要部タイプはないとされてきた(小林英樹(2004)『現代日本語の漢語 動名詞の研究』ひつじ書房)。本発表では、四字のものにも、左側主要部と考えざるをえ ないもの(「委託製造(する)」)があることを指摘する。
本発表では、[太郎には [花子が 細く/ガリガリに/やせて] 見えた] のような 非時制補文節をとる構文を取り上げ、この構文の統語的特徴を概観した上で、 特にどういった特徴を持った述語がこの構文の補文に許容されるのかを観察しながら、 述語の意味分類と形態との関係について検討する。
統語的複合動詞「~まくる」について歴史的観点から記述し,「語彙的」「統語的」の区別について再考する。また,「~まくる」と近似した意味変化の方向性を示す「~たくる」「~こくる」といった事例を紹介し,「クル型」という形態的観点から一般化を試みる。