T.B.A.
本発表では日本語の語彙的複合動詞の意味解釈について先行研究の指摘を再考し、生産性の要因を探る。まず、従来生産性が高いとされてきたV1がV2の手段を表す関係の結合には意味的制約があり、これがそれぞれのクオリア構造により説明されることを指摘する。次に、移動や位置変化の方向性を含むV2が様態を表すV1との結合において高い生産性を示すこと、さらに、それらのV2が意味拡張によってV1との意味関係が様態から補文関係へと推移し、それに伴い補助動詞化したことが高生産性の大きな要因となっていることを示す。
拘束形式の複合字音語基のうち、「具体」「国際」「合理」のように、「的」「性」「化」といった接辞を伴って安定する語基15個を対象とし、「機 能分担」「本来的意味」「兼務性」「自立的な用法」といった観点からその内部分類を施すとともに、従来の自立複合字音語基分類との連続性を明示化することを通して、複合字音語基全体の分類とその有する意味合いを明らかにする。
日本語の語彙的複合動詞には外項を有する動詞同士しか複合できない「他動性調和の原則」という現象が基本的に見られる。しかし、その原因は従来十分に検討されていない。量的分布を観察すると、単純動詞には動作様態が透明な使役動詞(有対他動詞)が多く存在し、また語彙的複合動詞には有対他動詞を後項動詞に取る手段複合動詞が多数存在していることがわかる。手段複合動詞は語彙的複合動詞の中で生産性が一番高いものであり、もし手段複合動詞の語形成の動機づけを使役動詞の様態の補充だと仮定すれば、(動作様態は動詞の語彙概念構造の上位事象にあるので)複合動詞は必然的に上位事象、つまり外項を有する動詞を前項動詞に取ると予測できる。また、語彙的複合動詞における他の意味分類は手段複合動詞からの派生だと考えられるので、語彙的複合動詞全般に「他動性調和」が観察されるわけであろう。
理論言語学においてコーパスはどのように利用できるか。NINJAL-LWP +BCCWJを使った分析例を紹介しながらコーパス利用の可能性について探ります。